説明

回路基板の製造方法

【課題】必要なときに必要な分だけ生産するための基板の投入が可能となる回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】回路基板10の製造方法において、平面略方形状に形成し、互いに平行な一対の辺部のうちの一方に面方向に突出する凸部13を設けるとともに他方に凸部13に対応する凹部15を設けた板状の基材を、多数製造しておき、基材における凸部13および凹部15を他の基材における凸部13および凹部15に係合させることにより多数の基材を連結し、それぞれの基材における少なくとも表面に電子部品20を実装してから、それぞれの基材を分離して個々の回路基板10を得る。凸部13は、突出方向に沿った基端部の基端幅寸法よりも基端部よりも先端側の先端幅寸法が大きいことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が実装される回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置のプリント基板への電子部品実装において、生産数が多い商品のプリント基板は、経済性を考慮し、製品を多面取りした一つのシートとした基板の形状を採ってきた。多面取りは、ミシン目による接続、Vカットによる接続等を施した基板へ、電子部品を実装し、半田付けし、個片分割を行い製品とする。また、回路基板は、分割時の応力に起因する撓みストレスによる電子部品への影響を回避するため、多面取りを行なわず一個取りの場合もあった。
【0003】
ところで、近年、電子装置のモノづくりは、計画生産から、需要に連動したプル型生産へ移行しつつある。大量にモノづくりすることによる在庫の管理コストが問題になるからである。プル型生産システムは、商品が売れる毎に、生産工程の下流の作業〜上流工程の作業に対して、作業準備や原材料調達、また作業のタイミングを通知・指示する生産システムである。従来型の生産システムやモノの流れに逆らった指示フローで生産活動が行なわれる点が特徴であり、高度な生産管理システム・購買や在庫管理システムとの組合せで、在庫低減等に効果があるとされる。
【0004】
このような実装の効率化を図ることを目的とするものに例えば特許文献1に開示の基板実装装置がある。この基板実装装置は、図8に示すように、一方のプリント基板100のB面と、他方のプリント基板101のA面とを基板連結部材102で接続し、1つのラインでプリント基板100のB面と、プリント基板101のA面の電子部品の実装処理を同時に行う。これにより、両面プリント基板に対する電子部品の実装の効率化を図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−134419号公報(請求項48、図10、段落0073〜段落0076)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の技術は、特に両面プリント基板に対する電子部品の実装の効率化を図るために構成されたものである。すなわち、プリント基板同士を異なる面を上にして連結可能としなければならないため、プリント基板100の両端上部に一対の基板連結部102を設け、両端下部にこの基板連結部102と嵌合が可能な一対の切り欠き部103を設けている。同図に示すように左側にプリント基板100をB面が上となるように載置し、仮想回転軸(縦軸)104を軸としてプリント基板100を180度回転させ、さらに仮想中心点105を中心としてプリント基板100を180度回転させれば、プリント基板100はA面が上となり、図8のプリント基板101の位置に収まる。つまり、プリント基板同士の同一面を同一向きで連結することができない。このため、連結されたそれぞれのプリント基板に対して、電子部品の装着方向が、仮想中心点105を中心として180度交互に反転しまうことになり、生産効率の低下が予想される。このような事情から、このプル型生産に合わせ、プリント基板を製造したい分だけ連結し、電子部品を効率よく実装組立していくことができる回路基板の製造方法が求められていた。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、必要なときに必要な分だけ生産するための基板の投入が可能となる回路基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の回路基板の製造方法は、平面略方形状に形成し、互いに平行な一対の辺部のうちの一方に面方向に突出する凸部を設けるとともに他方に前記凸部に対応する凹部を設けた板状の基材を、多数製造しておき、前記基材における前記凸部および前記凹部を他の基材における前記凸部および前記凹部に係合させることにより多数の前記基材を連結し、それぞれの前記基材における少なくとも表面に電子部品を実装してから、それぞれの前記基材を分離して個々の回路基板を得るものである。
【0009】
また、本発明の回路基板の製造方法は、前記凸部における突出方向に沿った基端部の基端幅寸法よりも前記基端部よりも先端側の先端幅寸法が大きいものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る回路基板の製造方法によれば、必要なときに必要な分だけ生産するための基板の投入を可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(A)は本発明に係る第1実施形態の製造方法に用いられる基材の平面図、(B)は(A)の基材を連結した平面図、(C)は基材を直列多連結した平面図
【図2】(A)は凸部の平面図、(B)は先端幅寸法の大きい凸部の平面図
【図3】(A)は辺部に複数の凸部が設けられる第2実施形態の基材の平面図、(B)は(A)の基材を直列多連結した平面図、(C)は凸部の幅を広げた基材の平面図
【図4】(A)は隣接する辺部に凸部が設けられる第3実施形態の基材の平面図、(B)は(A)の基材を隣接する辺部のそれぞれに連結した平面図、(C)は(A)の基材を直列多連結した平面図
【図5】基材を用いて電子部品を実装する回路基板の製造方法における手順説明図
【図6】(A)は電子部品装着後の連結基材を表す斜視図、(B)は(A)から分割された回路基板の斜視図
【図7】基材の切除部を表した平面図
【図8】基板連結部によって連結された従来技術によるプリント基板の平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を用いて説明する。
図1(A)は本発明に係る第1実施形態の製造方法に用いられる基材の平面図、(B)は(A)の基材を連結した平面図、(C)は基材を直列多連結した平面図、図2(A)は凸部の平面図、(B)は先端幅寸法の大きい凸部の平面図である。
本実施形態に係る回路基板10(図6参照)の製造方法は、基材であるプリント基板11を所望の数だけ連結して用いる。プリント基板11は、平面略方形状に形成される。従って、正方形、長方形で形成できる。プリント基板11は、互いに平行な一対の辺部のうちの一方(第1辺部12)に面方向に突出する凸部13を設けるとともに他方(第2辺部14)に凸部13に対応する凹部15を設けて形成される。このプリント基板11は、多数枚が製造される。
【0013】
図1(B)、(C)に示すように、凸部13および凹部15の設けられたプリント基板11は、電子部品装着のための生産ライン投入前に、プリント基板同士を複数個連結し、基板シート形状とする。凸部13はライン搬送において抜け外れ難いよう、形状を図2に示すa>bの関係で構成することが好ましい。凸部13の形状は、図2(A)に示す方形状以外に、図2(B)に示す例えば八角形状の凸部16等の多角形状(台形状を含む)でもよく、さらには、円形状でもよい。要するに、接続を保持できる形状であればよい。但し、円形状の場合には、連結状態で円中心に回転するので、図例のような多角形状とすることが好ましい。
【0014】
a>bの関係(抜け止め形状)で構成される凸部13や凸部16は、突出方向に沿った基端部の基端幅寸法bよりも基端部よりも先端側の先端幅寸法aが大きい。すなわち、凸部13が、この凸部13に対応する凹部15に係合されると、凸部13と凹部15とは、プリント基板11の面に沿う方向には離反が規制されて連結固定される。プリント基板11同士は、同一面が同一向きで並ぶ相対位置関係のときに、凸部13と凹部15とが係合する位置で設けられる。その結果、凸部13と凹部15とが係合されれば、相対位置が高精度に位置決めされる。
【0015】
また、凸部13が先端幅寸法aの大きい抜け止め形状となって離反不能に係合するので、係合または係合解除時のはめあい力が小さく設定可能となり、プリント基板11の連結や連結解除が容易となる。抜け止め形状でない場合にはしまりばめにして連結固定する必要が生じ、連結や連結解除がし難くなる。なお、凸部13と凹部15との「はめあい」は、「すきまばめ」と、「しまりばめ」と、「中間ばめ」とに大別される。すきまばめは、凹部15の最小許容寸法よりも凸部13の最大許容寸法が小さい(凹部15と凸部13との間にすきまがある)。しまりばめは、凹部15の最大許容寸法より凸部13の最小許容寸法が大きい(凹部15と凸部13との間にしめしろがある)。中間ばめは、凹部15の最小許容寸法より凸部13の最大許容寸法が大きく(両者が等しい場合も含む)、しかも、凹部15の最大許容寸法よりも凸部13の最小許容寸法が小さい。
【0016】
凹部15および凸部16のはめあいは、凹部15と凸部13とのいずれにも公差を許して製造するものであるから、実際のすきまあるいはしめしろは変化する。すなわち、すきまばめでは、凹部15の最小許容寸法と凸部13の最大許容寸法との差が最小すきまとなり、凹部15の最大許容寸法と凸部13の最小許容寸法との差が最大すきまとなる。また、しまりばめでは、凸部13の最大許容寸法と凹部15の最小許容寸法との差が最大しめしろとなり、凸部13の最小許容寸法と凹部15の最大許容寸法との差が最小しめしろとなる。中間ばめでは、凸部13と凹部15の実寸法によって、しめしろができる場合もあり、すきまができることもある。すなわち、中間ばめは、しまりばめより小さいしめしろを必要とする場合に好適となる。従って、プリント基板11には、連結容易性や連結解除の容易性を考慮して、すきまばめ若しくは中間ばめを適宜選択することが好ましい。
【0017】
凸部13および凹部15の形成位置は、辺部の長手方向中央でも、端部でもよい。このようにして凸部13および凹部15を備えたプリント基板11は、必要な数を生産ラインヘ投入方向に直列連結でき、投入数量も自由となる。
【0018】
図3(A)は辺部に複数の凸部16が設けられる第2実施形態の基材の平面図、(B)は(A)の基材を直列多連結した平面図、(C)は凸部13の幅を広げた基材の平面図である。
第2実施形態は、図3(A)に示すように、プリント基板17の第1辺部12に凸部16を二箇所以上の複数で設け、第2辺部14に凹部18を二箇所以上の複数で設けている。そのプリント基板17を、図3(B)に示すように複数個連結する。凸部16および凹部18は、プリント基板17の第1辺部12、第2辺部14のどの位置に形成してもよい。この実施形態によれば、辺部における凸部16および凹部18が複数個とされることにより、接続のガタツキを低減できる。また、図3(C)に示すように、凸部16と凸部16との離間距離cを可能な限り広く空けることで、プリント基板同士のガタツキを小さくした接続を可能にして、連結基板の寸法精度を高めることができる。
【0019】
図4(A)は隣接する辺部に凸部16が設けられる第3実施形態の基材の平面図、(B)は(A)の基材を隣接する辺部のそれぞれに連結した平面図、(C)は(A)の基材を直列多連結した平面図である。
第3実施形態は、図4(A)に示すように、プリント基板19の四辺のうち隣接する二辺に凸部16、または凹部18を備える。従って、プリント基板19は、図4(B)に示す多面連結が可能となる。すなわち、プリント基板19は、隣接する辺部のそれぞれに、他のプリント基板19が連結される。なお、この場合においても、図4(C)に示すように、プリント基板19は、直列多連結されてもよい。
【0020】
プリント基板19は、電子部品装着のための生産ライン投入前に、プリント基板同士を多面連結し、それを生産する基板シート形状とする。この実施形態によれば、限られたライン長の中で、より多く、プリント基板19を生産投入できる。
【0021】
図5は基材を用いて電子部品20を実装する回路基板10の製造方法における手順説明図、図6(A)は電子部品装着後の連結基材を表す斜視図、(B)は(A)から分割された回路基板10の斜視図、図7は基材の切除部を表した平面図である。
本発明に係る回路基板10の製造方法は、上記第1実施形態のプリント基板11、第2実施形態のプリント基板17、第3実施形態のプリント基板19の何れを用いてもよい。以下の説明では、プリント基板11を用いた例で説明する。
回路基板10の製造方法によって、回路基板10を製造するには、先ず、プリント基板11を多数製造しておく。例えば部品実装工程では、所望の数のプリント基板11を、連結して搬送ラインに投入する(S1)。
【0022】
この時、各工程におけるプリント基板11の連結数は固定されず、実生産数に合わせて変わる。また、生産数によっては連結しない個片の場合もある。これにより、先頭工程〜最終工程において、プリント基板11の連結数を変えることで仕掛りや完成品数量を自在に削減でき、適正な在庫管理へ貢献できる。
【0023】
搬送ラインに投入された連結済みのプリント基板11は、図6(A)に示すように、電子部品20を実装し(S2)、その後、別タイプの電子部品21を実装する(S3)。次いで、電子部品20と電子部品21との半田付けを行う(S4)。半田付けは、電子部品20、電子部品21の載置前に、搬送ラインにて、連結済みプリント基板11の半田印刷部分にクリーム状半田を印刷する。半田印刷部分に電子部品20、電子部品21を載置する。連結済みプリント基板11を高温(一例として260度)に加熱して半田を溶解し、電子部品20、電子部品21をプリント基板11に固着する。
【0024】
次いで、裏面実装を行う場合には、プリント基板11を表裏反転し、電子部品20を実装し(S5)、その後、別タイプの電子部品21を実装する(S6)。次いで、上記同様に、電子部品20と電子部品21との半田付けを行う(S7)。次いで、図6(B)に示すように、連結部分の凸部13と凹部15を、プリント基板11の板厚方向で移動して分割する(S8)。この際、分割は、連結のためにはめた凸部13と凹部15を元に戻す作業で容易に行え、Vカットのような応力をプリント基板11に与えることを回避できる。
【0025】
連結から個片へ分割後、凸部13があることで製品等筐体への収納がスッキリ行えない場合は、図7に示すように、凸部13を切除してもよい。
【0026】
このように、回路基板10の製造方法は、プリント基板11における凸部13および凹部15を他のプリント基板11における凸部13および凹部15に係合させる。そして、多数の基材を連結し、それぞれのプリント基板11における少なくとも表面に電子部品20、電子部品21等を実装してから、それぞれのプリント基板11を分離して個々の回路基板10を得る。
【0027】
複数のプリント基板11は、辺部が平行に並べられると、隣接するもの同士が凸部13と凹部15を係合して、同一向きで所望の数だけ連結が可能となる。これにより、電子部品20、電子部品21の装着方向が並び方向で交互に反転せず(部品装着ヘッド等の回転が不要となり)、所望の数のプリント基板11に対して、同方向のままでの装着が可能となり、生産効率が低下しない。
【0028】
また、どの工程でも連結数量が変更可能となり、プル型生産に合わせ、製造したい分だけプリント基板11が連結され、電子部品20が実装されて回路基板10が組み立てられて行く。この結果、仕掛かり在庫が減り(きめ細かな在庫管理が可能となり)、生産効率が向上する。また、ミシン目やVカットによる基板分割が廃止されるので、分割時の電子部品20への撓みストレスが軽減され、製品品質の向上へもつながる。
【0029】
従って、本実施形態に係る回路基板10の製造方法によれば、必要なときに必要な分だけ生産するための基板の投入を可能にできる。
【符号の説明】
【0030】
10 回路基板
11 プリント基板(基材)
12 第1辺部(辺部)
13 凸部
14 第2辺部(辺部)
15 凹部
20 電子部品
a 先端幅寸法
b 基端幅寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面略方形状に形成し、互いに平行な一対の辺部のうちの一方に面方向に突出する凸部を設けるとともに他方に前記凸部に対応する凹部を設けた板状の基材を、多数製造しておき、
前記基材における前記凸部および前記凹部を他の基材における前記凸部および前記凹部に係合させることにより多数の前記基材を連結し、
それぞれの前記基材における少なくとも表面に電子部品を実装してから、それぞれの前記基材を分離して個々の回路基板を得る回路基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の回路基板の製造方法において、
前記凸部における突出方向に沿った基端部の基端幅寸法よりも前記基端部よりも先端側の先端幅寸法が大きい回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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