説明

回路基板実装部品の検査装置および回路基板実装部品の検査方法

【課題】プローブを各電極に同時に接触させることが困難な検査対象部品についての検査を可能とする。
【解決手段】回路基板2の任意の2点間の電気的特性値Dmを測定する測定部5と、この電気的特性値Dmに基づいて2点間に実装されたコンデンサ14を検査する処理部6とを備え、一方の電極14aが三端子レギュレータ21の出力端子21bに接続され、かつ他方の電極14bが導体パターン32に接続されたコンデンサ14の検査に際し、測定部5は、三端子レギュレータ21の作動用直流電圧にリップル除去率が基準値以下となる周波数の交流電圧を重畳させた測定信号Vsを入力端子21aと導体パターン32との2点間に供給した状態において、第1電気的特性値Dmを測定し、処理部6は、この第1電気的特性値Dmに基づいてコンデンサ14を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に実装された検査対象部品を検査する回路基板実装部品の検査装置および検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の回路基板についての検査装置として、本願出願人は、下記特許文献に開示された回路基板検査装置を既に提案している。この回路基板検査装置は、2つのプローブと、これらのプローブが接続される計測部とを備えている。この回路基板検査装置では、回路基板に実装されている電子部品(一例としてバイパスコンデンサ)の各電極に各プローブを接触させ、この状態における各プローブ間の静電容量を計測部で計測する。この場合、バイパスコンデンサが正常に実装されているときには、計測部は、このバイパスコンデンサの静電容量を測定し、正常に実装されていないとき(例えば、ハンダ付け不良などにより、少なくとも一方の電極がパターン(導体パターン)から浮いているとき)には、浮遊容量を測定する。このため、この回路基板検査装置によれば、測定された静電容量に基づいて、バイパスコンデンサのハンダ付けの良否を検査することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−271294号公報(第6−7頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この従来の回路基板検査装置には、以下の改善すべき課題が存在している。すなわち、この回路基板検査装置では、静電容量値や抵抗値などの電気的特性値を計測すべき電子部品(検査対象部品)が例えば他の電子部品に近接して配置されていることが原因となって、一方の電極およびこの電極に接続されている導体パターンのいずれかと、他方の電極およびこの電極に接続されている導体パターンのいずれかとにプローブを同時に接触させることができないときには、この検査対象部品の電気的特性値を計測できない。このため、回路基板検査装置には、このような検査対象部品について検査を実行するのが困難であるという課題が存在している。
【0005】
本発明は、かかる課題を改善すべくなされたものであり、プローブを各電極に同時に接触させることが困難な検査対象部品についての検査を可能とする回路基板実装部品の検査装置、および回路基板実装部品の検査方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載の回路基板実装部品の検査装置は、電子部品が実装された回路基板における任意の2点間の電気的特性値を測定する測定部と、前記測定された電気的特性値に基づいて前記2点間に実装された前記電子部品を検査対象部品として検査する処理部とを備えている回路基板実装部品の検査装置であって、一方の電極が前記回路基板に実装されたシリーズレギュレータの出力端子に接続され、かつ他方の電極が前記回路基板に形成された導体パターンに接続された前記検査対象部品の検査に際し、前記測定部は、前記シリーズレギュレータの作動用直流電圧に当該シリーズレギュレータのリップル除去率が基準値以下となる周波数の交流電圧を重畳させた測定信号を当該シリーズレギュレータの入力端子と前記他方の電極に接続されている前記導体パターンとの2点間に供給した状態において、当該2点間の前記電気的特性値を測定し、前記処理部は、前記測定された電気的特性値に基づいて前記検査対象部品を検査する。
【0007】
また、請求項2記載の回路基板実装部品の検査装置は、電子部品が実装された回路基板における任意の2点間の電気的特性値を測定する測定部と、前記測定された電気的特性値に基づいて前記2点間に実装された前記電子部品を検査対象部品として検査する処理部とを備えている回路基板実装部品の検査装置であって、一方の電極が前記回路基板に実装された増幅器の出力端子に接続され、かつ他方の電極が前記回路基板に形成された導体パターンに接続された前記検査対象部品の検査に際し、前記測定部は、前記増幅器の作動用直流電圧に予め規定された周波数の交流電圧を重畳させた測定信号を当該増幅器の電源端子と前記他方の電極に接続されている前記導体パターンとの2点間に供給して作動状態を維持した状態において、当該2点間の前記電気的特性値を測定し、前記処理部は、前記測定された電気的特性値に基づいて前記検査対象部品を検査する。
【0008】
また、請求項3記載の回路基板実装部品の検査装置は、電子部品が実装された回路基板における任意の2点間の電気的特性値を測定する測定部と、前記測定された電気的特性値に基づいて前記2点間に実装された前記電子部品を検査対象部品として検査する処理部とを備えている回路基板実装部品の検査装置であって、一方の電極が前記回路基板に実装されたゲート素子の出力端子に接続され、かつ他方の電極が前記回路基板に形成された導体パターンに接続された前記検査対象部品としての第1部品の検査に際し、前記測定部は、前記ゲート素子の作動用直流電圧に予め規定された周波数の交流電圧を重畳させた第1測定信号を当該ゲート素子の電源端子と前記他方の電極に接続されている前記導体パターンとの2点間に供給して作動状態を維持した状態において、当該2点間の前記電気的特性値を第1電気的特性値として測定し、前記処理部は、前記測定された第1電気的特性値に基づいて前記第1部品の電気的特性値を算出し、当該算出した電気的特性値に基づいて当該第1部品を検査する。
【0009】
また、請求項4記載の回路基板実装部品の検査装置は、請求項3記載の回路基板実装部品の検査装置において、前記回路基板には、前記第1部品と同種の他の前記電子部品であって、一方の電極が前記電源端子に接続されると共に他方の電極が前記導体パターンに接続された第2部品が実装され、前記処理部は、前記電源端子と前記第1部品および前記第2部品の前記各他方の電極に接続されている前記導体パターンとの2点間に前記第1測定信号を供給した状態において前記測定部によって測定される前記第1電気的特性値としての前記第1部品および前記第2部品の合成電気的特性値と、前記ゲート素子を非作動状態に移行させ、かつ前記2点間に交流電圧で構成される第2測定信号を供給した状態において前記測定部によって測定される第2電気的特性値としての前記第2部品の電気的特性値とに基づいて、当該第1部品の前記電気的特性値を算出し、当該算出した電気的特性値に基づいて当該第1部品を検査する。
【0010】
また、請求項5記載の回路基板実装部品の検査方法は、回路基板における任意の2点間の電気的特性値を測定すると共に当該測定された電気的特性値に基づいて当該2点間に実装された電子部品を検査対象部品として検査する回路基板実装部品の検査方法であって、一方の電極が前記回路基板に実装されたシリーズレギュレータの出力端子に接続され、かつ他方の電極が前記回路基板に形成された導体パターンに接続された前記検査対象部品の検査に際し、前記シリーズレギュレータの作動用直流電圧に当該シリーズレギュレータのリップル除去率が基準値以下となる周波数の交流電圧を重畳させた測定信号を当該シリーズレギュレータの入力端子と前記他方の電極に接続されている前記導体パターンとの2点間に供給した状態において、当該2点間の前記電気的特性値を測定し、前記測定された電気的特性値に基づいて前記検査対象部品を検査する。
【0011】
また、請求項6記載の回路基板実装部品の検査方法は、回路基板における任意の2点間の電気的特性値を測定すると共に当該測定された電気的特性値に基づいて当該2点間に実装された電子部品を検査対象部品として検査する回路基板実装部品の検査方法であって、一方の電極が前記回路基板に実装された増幅器の出力端子に接続され、かつ他方の電極が前記回路基板に形成された導体パターンに接続された前記検査対象部品の検査に際し、前記増幅器の作動用直流電圧に予め規定された周波数の交流電圧を重畳させた測定信号を当該増幅器の電源端子と前記他方の電極に接続されている前記導体パターンとの2点間に供給して作動状態を維持した状態において、当該2点間の前記電気的特性値を測定し、前記測定された電気的特性値に基づいて前記検査対象部品を検査する。
【0012】
また、請求項7記載の回路基板実装部品の検査方法は、回路基板における任意の2点間の電気的特性値を測定すると共に当該測定された電気的特性値に基づいて当該2点間に実装された電子部品を検査対象部品として検査する回路基板実装部品の検査方法であって、一方の電極が前記回路基板に実装されたゲート素子の出力端子に接続され、かつ他方の電極が前記回路基板に形成された導体パターンに接続された前記検査対象部品としての第1部品の検査に際し、前記ゲート素子の作動用直流電圧に予め規定された周波数の交流電圧を重畳させた第1測定信号を当該ゲート素子の電源端子と前記他方の電極に接続されている前記導体パターンとの2点間に供給して作動状態を維持した状態において、当該2点間の前記電気的特性値を第1電気的特性値として測定し、前記測定された第1電気的特性値に基づいて前記第1部品の電気的特性値を算出し、当該算出した電気的特性値に基づいて当該第1部品を検査する。
【0013】
また、請求項8記載の回路基板実装部品の検査方法は、請求項7記載の回路基板実装部品の検査方法において、前記回路基板には、前記第1部品と同種の他の前記電子部品であって、一方の電極が前記電源端子に接続されると共に他方の電極が前記導体パターンに接続された第2部品が実装され、前記電源端子と前記第1部品および前記第2部品の前記各他方の電極に接続されている前記導体パターンとの2点間に前記第1測定信号を供給した状態において測定される前記第1電気的特性値としての前記第1部品および前記第2部品の合成電気的特性値と、前記ゲート素子を非作動状態に移行させ、かつ前記2点間に交流電圧で構成される第2測定信号を供給した状態において測定される第2電気的特性値としての前記第2部品の電気的特性値とに基づいて、当該第1部品の前記電気的特性値を算出し、前記算出した電気的特性値に基づいて当該第1部品を検査する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の回路基板実装部品の検査装置および請求項5記載の回路基板実装部品の検査方法によれば、シリーズレギュレータの入力端子と検査対象部品の他方の電極に接続されている導体パターンとの2点間に測定信号を供給して、この2点間の電気的特性値を測定することにより、シリーズレギュレータの出力端子に接続されている検査対象部品の状態(正常か異常か(以下、「異常」には、部品の未実装、または実装されていても本来の静電容量値でない状態を含むものとする))によって変化する電気的特性値を測定することができる。このため、この検査対象部品がプローブをその各電極に同時に接触させることが困難な電子部品であっても、測定した電気的特性値に基づいて、この検査対象部品を検査することができる。
【0015】
請求項2記載の回路基板実装部品の検査装置および請求項6記載の回路基板実装部品の検査方法によれば、増幅器の電源端子と検査対象部品の他方の電極に接続されている導体パターンとの2点間に測定信号を供給して、この2点間の電気的特性値を測定することにより、増幅器の出力端子に接続されている検査対象部品の状態(正常か異常か)によって変化する電気的特性値を測定することができる。このため、この検査対象部品がプローブをその各電極に同時に接触させることが困難な電子部品であっても、測定した電気的特性値に基づいて、この検査対象部品を検査することができる。
【0016】
請求項3記載の回路基板実装部品の検査装置および請求項7記載の回路基板実装部品の検査方法によれば、ゲート素子の電源端子と第1部品の他方の電極に接続されている導体パターンとの2点間に第1測定信号を供給して、この2点間の第1電気的特性値を測定することにより、ゲート素子の出力端子に接続されている第1部品の状態(正常か異常か)によって変化する第1電気的特性値を測定することができる。このため、この第1部品がプローブをその各電極に同時に接触させることが困難な電子部品であっても、測定した第1電気的特性値に基づいて、この第1部品を検査することができる。
【0017】
請求項4記載の回路基板実装部品の検査装置および請求項8記載の回路基板実装部品の検査方法によれば、第1部品と同種の他の電子部品であって、一方の電極がゲート素子の電源端子に接続されると共に他方の電極が上記の導体パターンに接続された第2部品が実装されているときには、第1測定信号を供給したときに測定される第1電気的特性値としての第1部品および第2部品の合成電気的特性値と、第2測定信号を供給したときに測定される第2電気的特性値としての第2部品の電気的特性値とに基づいて、第1部品の電気的特性値を算出することができ、この算出した電気的特性値に基づいて第1部品を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】回路基板実装部品の検査装置1および回路基板2の構成図である。
【図2】三端子レギュレータ21,22のリップル除去率の周波数特性図である。
【図3】増幅器23の出力段の構成図である。
【図4】ゲート素子25の出力段の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、回路基板実装部品の検査装置および回路基板実装部品の検査方法の実施の形態について説明する。
【0020】
最初に、検査装置1の構成について、図1を参照して説明する。
【0021】
検査装置1は、一例として、回路基板2に予め規定された接触ポイント3に接触させられる複数(本例では一例として2本)のプローブ4、プローブ4を移動させる移動機構(不図示)、測定部5、処理部6および出力部7を備え、回路基板2に実装されている電子部品(実装部品)のうちの検査対象部品に対する検査を実行する。
【0022】
2本のプローブ4は、処理部6によって制御された移動機構によって移動させられて、回路基板2に規定された複数の接触ポイント3のうちから選択された任意の2つの接触ポイント3に接触させられる。
【0023】
測定部5は、直流電圧に交流電圧を重畳させた信号(電圧信号)、および交流電圧のみで構成される信号(電圧信号)のいずれかを選択的に測定信号Vsとして、2本のプローブ4を介して接続された回路基板2の任意の2点(つまり、2つの接触ポイント3)間に出力する。また、測定部5は、この測定信号Vsの供給によってこの2点間に発生する電流信号Isを検出し、出力した測定信号Vsと検出した電流信号Isとに基づいて、この2点間のインピーダンスを電気的特性値Dmとして測定する。
【0024】
また、上記した直流電圧は、回路基板2に実装されている後述の三端子レギュレータ(シリーズレギュレータの一例)の入力端子とグランド端子間に供給されたときに、三端子レギュレータを規定の出力電圧を出力する作動状態にさせる電圧(作動用直流電圧)に予め規定されている。具体的には、三端子レギュレータが7ボルト以上26ボルト以下の入力電圧の範囲内で作動して規定の5ボルトを出力電圧として出力する電気的特性を有するものである場合には、作動用直流電圧とは、7ボルト以上26ボルト以下の範囲内の任意の電圧である。
【0025】
また、測定部5は、上記した交流電圧として、周波数f1の交流電圧と、周波数f1よりも低い周波数f2の交流電圧とを選択的に出力可能に構成されている。また、測定部5は、処理部6によって制御されることにより、測定信号Vsの仕様(直流電圧に交流電圧を重畳させるか否か、交流電圧の周波数をf1,f2のいずれにするか)を選択して出力する。
【0026】
この場合、交流電圧の周波数f1は、回路基板2に実装されている三端子レギュレータについてのリップル除去率が図2に示すように予め規定された基準値A1以下となる任意の周波数に規定されている。この例では、一例として、交流電圧の周波数f1は、リップル除去率が基準値A1としての10[dB]となる基準周波数fref以上の周波数(例えば、500kHz)に規定されている。この構成により、直流電圧(作動用直流電圧)にこの交流電圧を重畳させた信号を測定信号Vsとして、三端子レギュレータの入力端子に供給したときには、三端子レギュレータは作動状態に移行して、測定信号Vsに含まれる直流電圧については、この直流電圧未満の予め規定された電圧値に降下させて(安定化させて)出力する。また、三端子レギュレータは、測定信号Vsに含まれている交流電圧については、減衰させるものの十分には減衰させることはできず、この交流電圧(入力される交流電圧)の振幅を1としたときに、少なくとも0.3程度の振幅の交流電圧を出力する。また、交流電圧の周波数f2は、回路基板2に実装されている後述の増幅器23の動作周波数範囲に含まれる任意の周波数(例えば、数kHz)に予め規定されている。
【0027】
処理部6は、一例として、CPUおよびメモリ(いずれも図示せず)を備え、移動機構および測定部5に対する制御処理、検査対象部品に対する検査処理、および検査処理の結果を出力部7に出力させる出力処理を実行する。メモリには、検査対象部品毎の接触ポイント3についての位置情報と、測定に使用する測定信号Vsの仕様情報と、検査対象部品毎の基準電気的特性値が予め記憶されている。
【0028】
出力部7は、一例として、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置で構成されている。また、出力部7は、処理部6が実行した検査処理での結果を処理部6から入力して、画面に表示する。
【0029】
次に、検査装置1の動作と併せて回路基板実装部品の検査方法について、図面を参照して説明する。
【0030】
最初に、回路基板2の構成について説明する。本例では、一例として、図1に示すように、回路基板2には,電子部品として、9個のコンデンサ11,12,13,14,15,16,17,18,19、シリーズレギュレータとしての3つの三端子レギュレータ21,22,24、1つの増幅器23および1つのゲート素子(本例では一例としてインバータ)25が実装されている。なお、各コンデンサ11〜19は検査対象部品であるため、処理部6のメモリには、検査対象部品毎の基準電気的特性値として、コンデンサ11〜19のそれぞれに対する基準容量値が予め記憶されている。本例では、各コンデンサ11〜19の基準電気的特性値の一例として、各コンデンサ11〜19として正規の静電容量のコンデンサが正常な状態で実装されているときに、測定部5によって測定される静電容量値の範囲を示す上限容量値および下限容量値が記憶されている。
【0031】
コンデンサ11は、一方の電極が接触ポイント3として規定されると共に導体パターン31に接続され、他方の電極は導体パターン32(本例では一例として回路基板2内の基準電位導体パターン(いわゆるグランドパターン))に接続されている。この導体パターン32の一部は、接触ポイント3として規定されている。コンデンサ12は、一方の電極が接触ポイント3として規定されて導体パターン33に接続され、かつ他方の電極が導体パターン32に接続されている。
【0032】
コンデンサ13(第2部品)は、一方の電極13aが導体パターン34に接続されると共にこの導体パターン34を介して三端子レギュレータ21の入力端子21aに接続され、かつ他方の電極13bが導体パターン32に接続されている。コンデンサ14(第1部品)は、一方の電極14aが導体パターン35に接続されると共にこの導体パターン35を介して三端子レギュレータ21の出力端子21bに接続され、かつ他方の電極14bが導体パターン32に接続されている。
【0033】
この場合、コンデンサ13および三端子レギュレータ21のそれぞれの構造上、コンデンサ13の一方の電極13aおよび三端子レギュレータ21の入力端子21aにはプローブ4を直接接触させることが不能であるものの、一方の電極13aおよび入力端子21aを接続する導体パターン34にはプローブ4を直接接触させることが可能となっている。このため、導体パターン34におけるプローブ4の接触可能な部位上に接触ポイント3が規定されている。一方、コンデンサ14の一方の電極14a、三端子レギュレータ21の出力端子21b、並びに一方の電極14aおよび出力端子21bを接続する導体パターン35については、コンデンサ13および三端子レギュレータ21のそれぞれの構造上、および導体パターン35の引き回しの構造上、いずれにもプローブ4を直接接触させることが不能となっている。このため、コンデンサ14の一方の電極14a、三端子レギュレータ21の出力端子21b、および導体パターン35上のいずれにも接触ポイント3は規定されていない状態となっている。
【0034】
コンデンサ15は、一方の電極15aが導体パターン36に接続されると共にこの導体パターン36を介して三端子レギュレータ22の入力端子22aに接続され、かつ他方の電極15bが導体パターン32に接続されている。コンデンサ16は、一方の電極16aが導体パターン37に接続されると共にこの導体パターン37を介して三端子レギュレータ22の出力端子22bに接続され、かつ他方の電極16bが導体パターン32に接続されている。
【0035】
この場合、コンデンサ15および三端子レギュレータ22のそれぞれの構造上、コンデンサ15の一方の電極15aおよび三端子レギュレータ22の入力端子22aにはプローブ4を直接接触させることが不能であるものの、一方の電極15aおよび入力端子22aを接続する導体パターン36にはプローブ4を直接接触させることが可能となっている。このため、導体パターン36におけるプローブ4の接触可能な部位上に接触ポイント3が規定されている。また、コンデンサ16および三端子レギュレータ22のそれぞれの構造上、コンデンサ16の一方の電極16aおよび三端子レギュレータ22の出力端子22bにはプローブ4を直接接触させることが不能であるものの、一方の電極16aおよび出力端子22bを接続する導体パターン37にはプローブ4を直接接触させることが可能となっている。このため、導体パターン37におけるプローブ4の接触可能な部位上に接触ポイント3が規定されている。
【0036】
コンデンサ17は、一方の電極17aが導体パターン38に接続されると共にこの導体パターン38を介して増幅器23の出力端子23cに接続され、かつ他方の電極17bが導体パターン32に接続されている。この場合、コンデンサ17の一方の電極17a、増幅器23の出力端子23c、並びに一方の電極17aおよび出力端子23cを接続する導体パターン38については、コンデンサ17および増幅器23のそれぞれの構造上、および導体パターン38の引き回しの構造上、いずれにもプローブ4を直接接触させることが不能となっている。このため、コンデンサ17の一方の電極17a、増幅器23の出力端子23c、および導体パターン38上のいずれにも接触ポイント3は規定されていない状態となっている。
【0037】
コンデンサ18は、一方の電極18aが導体パターン39に接続されると共にこの導体パターン39を介して三端子レギュレータ24の出力端子24bに接続され、かつ他方の電極18bが導体パターン32に接続されている。
【0038】
この場合、コンデンサ18および三端子レギュレータ24のそれぞれの構造上、コンデンサ18の一方の電極18aおよび三端子レギュレータ24の出力端子24bにはプローブ4を直接接触させることが不能であるものの、一方の電極18aおよび出力端子24bを接続する導体パターン39にはプローブ4を直接接触させることが可能となっている。このため、導体パターン39におけるプローブ4の接触可能な部位上に接触ポイント3が規定されている。
【0039】
コンデンサ19は、一方の電極19aが導体パターン40に接続されると共にこの導体パターン40を介してゲート素子25の出力端子25cに接続され、かつ他方の電極19bが導体パターン32に接続されている。この場合、コンデンサ19の一方の電極19a、ゲート素子25の出力端子25c、並びに一方の電極19aおよび出力端子25cを接続する導体パターン40については、コンデンサ19およびゲート素子25のそれぞれの構造上、および導体パターン40の引き回しの構造上、いずれにもプローブ4を直接接触させることが不能となっている。このため、コンデンサ19の一方の電極19a、ゲート素子25の出力端子25c、および導体パターン40上のいずれにも接触ポイント3は規定されていない状態となっている。
【0040】
三端子レギュレータ21は、上記したように、入力端子21aが導体パターン34に接続され、出力端子21bが導体パターン35に接続され、グランド端子21cが導体パターン32に接続されている。この構成により、三端子レギュレータ21は、導体パターン34を介して入力する第1入力電圧V1inを第1出力電圧V1outに変換すると共に、変換した第1出力電圧V1outを導体パターン35へ出力する。
【0041】
三端子レギュレータ22は、上記したように、入力端子22aが導体パターン36に接続され、出力端子22bが導体パターン37に接続され、グランド端子22cが導体パターン32に接続されている。この構成により、三端子レギュレータ22は、導体パターン36を介して入力する第2入力電圧V2in(第1入力電圧V1inとは異なる電圧)を第2出力電圧V2out(第1出力電圧V1outとは異なる電圧)に変換すると共に、変換した第2出力電圧V2outを導体パターン37へ出力する。
【0042】
三端子レギュレータ24は、出力端子24bが導体パターン39に接続され、グランド端子24cが導体パターン32に接続されて、入力端子24aに入力される第3入力電圧V3in(第1入力電圧V1in,第2入力電圧V2inとは異なる電圧)を第3出力電圧V3out(第1出力電圧V1out,第2出力電圧V2outとは異なる電圧)に変換すると共に、変換した第3出力電圧V3outを導体パターン39へ出力する。
【0043】
増幅器23は、その電源端子23aが導体パターン37に接続され、その接地端子23bが導体パターン32に接続され、その出力端子23cが導体パターン38に接続されている。この構成により、増幅器23は、三端子レギュレータ22から出力される第2出力電圧V2outを作動用電圧として作動する。また、増幅器23の出力段は、図3に示すように、一例として2つのトランジスタTr1,Tr2を用いたコンプリメンタリ型のバッファ回路で構成されている。
【0044】
ゲート素子25は、その電源端子25aが導体パターン39に接続され、その接地端子25bが導体パターン32に接続され、その出力端子25cが導体パターン40に接続されている。この構成により、ゲート素子25は、三端子レギュレータ24から出力される第3出力電圧V3outを作動用電圧として作動する。また、ゲート素子25の出力段は、図4に示すように、一例として2つの電界効果型トランジスタFET1,FET2およびバイアス抵抗R1を用いた反転バッファ回路で構成されている。このように構成されたゲート素子25の出力段では、作動用電圧である第3出力電圧V3outが供給されている状態において、電界効果型トランジスタFET1はオン状態(オン抵抗が数Ω程度と極めて小さい値でのオン状態)に移行して、ソース端子Sから入力した電流をドレイン端子Dから出力する。一方、電界効果型トランジスタFET2はオフ状態に移行する。なお、図4中において各電界効果型トランジスタFET1,FET2に付した符号Gはゲート端子を示し、符号Dはドレイン端子を示し、符号Sはソース端子を示している。
【0045】
また、各導体パターン31〜40は互いに接続されておらず、また、各導体パターン31〜40には図示したコンデンサ以外のコンデンサは接続されていないものとする。さらに、回路基板2には、検査実行の際にプローブ4を介して供給される電圧以外の電圧は供給されていないものとする。
【0046】
以上のようにして回路基板2に実装されている各コンデンサ11〜19に対して検査を実行する際には、検査装置1では、処理部6が、メモリに記憶されているコンデンサ11〜19(以下、単に、「検査対象部品」ともいう)毎の2つの接触ポイント3についての位置情報を順次読み出して、移動機構に対する制御処理を実行することにより、検査を実施する検査対象部品に対応する2つの接触ポイント3(読み出した位置情報で規定される2つの接触ポイント3)に2つのプローブ4を接触させる。
【0047】
次いで、処理部6は、メモリに記憶されている検査対象部品毎の仕様情報に基づいて使用する測定信号Vsを特定すると共に、測定部5に対する制御処理を実行することにより、この特定した測定信号Vsを測定部5に対して選択的に出力させる。また、処理部6は、測定部5から処理部6に対して出力される2つの接触ポイント3間の電気的特性値(静電容量値)Dmに基づいて、各接触ポイント3に対応する検査対象部品に対する検査処理を実行する。
【0048】
まず、常態において、他のコンデンサと並列接続されておらず、かつ自らの一方の電極に直接規定された接触ポイント3(または一方の電極に接続された導体パターン上に規定された接触ポイント3)と、それぞれの他方の電極が接続された導体パターン32に規定されている共通の接触ポイント3とが、それぞれの2つの接触ポイント3として規定されているコンデンサ11,12,13,15,16,18に対する検査処理について説明する。
【0049】
このコンデンサ11,12,13,15,16,18の検査処理では、処理部6は、上記した各コンデンサに対応する2つの接触ポイント3を使用することにより、各コンデンサ11,12,13,15,16,18の両電極にプローブ4を接触させた状態において、メモリから読み出した各コンデンサ11,12,13,15,16,18についての仕様情報に基づいて測定部5に対する制御処理を実行することにより、測定部5に対して周波数f2の交流電圧のみで構成される測定信号(第2測定信号)Vsを選択させて2つの接触ポイント3間に出力させる。
【0050】
この場合、コンデンサ13が入力端子21aに接続された三端子レギュレータ21、およびコンデンサ15が入力端子22aに接続された三端子レギュレータ22については、各入力端子21a,22aと導体パターン32との間に供給される測定信号Vsに直流電圧が含まれていないため、測定信号Vsによっては作動状態に移行せず、非作動状態に維持される。このため、測定信号Vsの印加に起因する電流信号Isの三端子レギュレータ21,22への流入も殆ど発生しない。
【0051】
また、三端子レギュレータ22の出力端子22bに接続されたコンデンサ16、および三端子レギュレータ24の出力端子24bに接続されたコンデンサ18についても、各コンデンサ16,18に対応する2つの接触ポイント3(コンデンサ16については、導体パターン37,32にそれぞれ規定された接触ポイント3、コンデンサ18については、導体パターン39,32にそれぞれ規定された接触ポイント3)間に測定信号Vsが供給された場合に、測定信号Vsによって各三端子レギュレータ22,24が作動状態に移行せず、非作動状態に維持される。また、非作動状態の各三端子レギュレータ22,24からは、第2出力電圧V2outおよび第3出力電圧V3outは出力されない。これにより、増幅器23およびゲート素子25もまた非作動状態に維持される。このため、測定信号Vsの印加に起因する電流信号Isの三端子レギュレータ22,24の流入、増幅器23への流入、およびゲート素子25への流入も殆ど発生しない。
【0052】
したがって、測定部5は、コンデンサ13,15,16,18についても、2つの導体パターン間に単独で接続されているコンデンサ11,12と同様にして、各コンデンサの静電容量値を測定して電気的特性値Dmとして出力する。
【0053】
処理部6は、測定部5によって測定される電気的特性値(静電容量値)Dmを測定部5から取得(入力)し、この取得した電気的特性値Dmをメモリから読み出した基準電気的特性値(基準容量値)と比較することにより、コンデンサ11,12,13,15,16,18についての検査を実行する。
【0054】
上記したように、各コンデンサ11〜19の電気的特性値Dmに対する基準電気的特性値として、各コンデンサ11〜19として正規の静電容量のコンデンサが正常な状態で実装されているときに測定される2つの接触ポイント3間のインピーダンスについての上限容量値および下限容量値が記憶されている。このため、処理部6は、取得した電気的特性値Dmをメモリから読み出した基準電気的特性値と比較して、取得した電気的特性値Dmが基準電気的特性値の範囲内(下限容量値以上であって上限容量値以下の範囲内)に含まれているときには、検査を実施しているコンデンサは正常であると判別し、基準電気的特性値の範囲内に含まれていないときには、検査を実施しているコンデンサに異常が生じている判別する。また、処理部6は、この判別結果をコンデンサの識別情報と共にメモリに記憶する。
【0055】
次に、他方の電極については、導体パターン32に規定されている共通の接触ポイント3にプローブ4を直接接触させることができるものの、一方の電極については、この電極およびこの電極に接続された導体パターンのいずれにもプローブ4を接触させるための接触ポイント3が規定されていないコンデンサ14,17,19に対する検査処理について説明する。
【0056】
なお、コンデンサ14,17については、後述するように他のコンデンサとの合成電気的特性値を使用して検査処理を実行する。このため、この他のコンデンサ(コンデンサ14では、コンデンサ13が他のコンデンサとなり、コンデンサ17では、コンデンサ16が他のコンデンサとなる)が異常のときには、コンデンサ14,17に対する正確な検査が行えない。したがって、コンデンサ14,17については、この他のコンデンサが正常である場合にのみ検査処理を実行する。
【0057】
まず、コンデンサ14については、導体パターン34に規定された接触ポイント3、および導体パターン32に規定された接触ポイント3、つまりコンデンサ13の各電極13a,13bに接続される2つの接触ポイント3が、プローブ4を接触させる2つの接触ポイント3として規定されている。このため、処理部6は、メモリに記憶されている検査対象部品としてのコンデンサ14に対する2つの接触ポイント3についての位置情報を読み出して、2つのプローブ4をこの2つの接触ポイント3に接触させる。
【0058】
次いで、処理部6は、メモリから読み出したこのコンデンサ14についての仕様情報に基づいて測定部5に対する制御処理を実行することにより、測定部5に対して周波数f1の交流電圧に直流電圧を重畳させた測定信号Vsを選択させて2つの接触ポイント3間に出力させる。また、処理部6は、この状態において測定部5によって測定される電気的特性値Dmを取得(入力)する。
【0059】
この場合、直流電圧(作動用直流電圧)を含む測定信号Vsが入力端子21aに第1入力電圧V1inとして供給されることにより、三端子レギュレータ21は、作動状態、すなわち等価的に抵抗体として機能する状態に移行して、第1出力電圧V1outを出力する。この際に、測定信号Vsに含まれる交流電圧の周波数f1は上記したように三端子レギュレータ21のリップル除去率が基準値A1(本例では10[dB])となる基準周波数fref以上の周波数(例えば、500kHz)に規定されているため、測定信号Vsの交流電圧は、その振幅が減衰させられるものの、コンデンサ14に対して交流電圧として作用し得る振幅を維持したまま(本例では上記したように、入力される交流電圧の少なくとも30%程度の振幅を確保した状態で)三端子レギュレータ21を通過し、その出力端子21bからコンデンサ14に印加される。
【0060】
この際に、電流信号Isのうちのこの交流電圧に起因する電流信号は、コンデンサ13を経由して導体パターン32に流れると共に、三端子レギュレータ21およびコンデンサ14を経由して導体パターン32に流れる。これにより、この周波数f1の交流電圧に対しては、三端子レギュレータ21の入力端子21aに接続されているコンデンサ13と、等価的に抵抗体となる三端子レギュレータ21およびコンデンサ14の直列回路とが、並列接続された状態となる。したがって、処理部6が測定部5から取得した電気的特性値Dmは、コンデンサ13とこの直列回路とで構成される並列回路についての合成電気的特性値(合成インピーダンス)、すなわち、コンデンサ14の状態(正常か異常か)によって変化する電気的特性値Dmとなる。
【0061】
このため、処理部6は、この電気的特性値Dmで示される上記並列回路の合成電気的特性値と、既に測定したこの並列回路の合成電気的特性値(各コンデンサ13,14が正常なときの電気的特性値)とに基づいて、コンデンサ14の検査を実行する。具体的には、処理部6は、メモリからコンデンサ14についての基準電気的特性値(基準容量値)を読み出すと共に、算出した電気的特性値Dmをこの基準電気的特性値と比較して、取得した電気的特性値Dmが基準電気的特性値の範囲内に含まれているときには、コンデンサ13が正常であることから、検査を実施しているコンデンサ14についても正常であると判別し、基準電気的特性値の範囲内に含まれていないときには、コンデンサ13が正常であることから、コンデンサ14に異常が生じていると判別して、判別結果をコンデンサ14の識別情報と共にメモリに記憶する。
【0062】
また、コンデンサ17については、導体パターン37に規定された接触ポイント3、および導体パターン32に規定された接触ポイント3、つまりコンデンサ16の各電極16a,16bに接続される2つの接触ポイント3が、プローブ4を接触させる2つの接触ポイント3として規定されている。このため、処理部6は、メモリに記憶されている検査対象部品としてのコンデンサ17に対する2つの接触ポイント3についての位置情報を読み出して、2つのプローブ4をこの2つの接触ポイント3に接触させる。
【0063】
次いで、処理部6は、メモリから読み出したこのコンデンサ17についての仕様情報に基づいて測定部5に対する制御処理を実行することにより、測定部5に対して周波数f2(または周波数f1)の交流電圧に直流電圧を重畳させた測定信号Vsを選択させて2つの接触ポイント3間に出力させる。また、処理部6は、この状態において測定部5によって測定される電気的特性値Dmを取得(入力)する。
【0064】
この場合、増幅器23の出力段は図3に示す構成となっているため、直流電圧を含む測定信号Vsが導体パターン37を介して増幅器23の電源端子23aと、導体パターン32に接続された接地端子23bとの間に供給されることにより、増幅器23の出力段を構成する2つのトランジスタTr1,Tr2のうちの少なくともトランジスタTr1側は作動状態に移行する(等価的に抵抗体として機能する状態に移行する)。このため、測定信号Vsに含まれている交流電圧は、トランジスタTr1の抵抗値に応じて減衰しつつ作動状態の出力段を通過し、その出力端子23cからコンデンサ17に印加される。
【0065】
この際に、電流信号Isのうちのこの交流電圧に起因する電流信号は、導体パターン37に接続されているコンデンサ16を経由して導体パターン32に流れると共に、増幅器23の出力段およびコンデンサ17を経由して導体パターン32に流れる。これにより、この周波数f2の交流電圧に対しては、導体パターン37に接続されているコンデンサ16と、等価的に抵抗体となる増幅器23の出力段およびコンデンサ17の直列回路とが、並列接続された状態となる。したがって、処理部6が測定部5から取得した電気的特性値Dmは、コンデンサ16とこの直列回路とで構成される並列回路についての合成電気的特性値(合成インピーダンス)、すなわち、コンデンサ17の状態(正常か異常か)によって変化する電気的特性値Dmとなる。
【0066】
このため、処理部6は、この電気的特性値Dmで示される上記並列回路の合成電気的特性値と、既に測定したこの並列回路の合成電気的特性値(各コンデンサ16,17が正常なときの電気的特性値)とに基づいて、コンデンサ17の検査を実行する。具体的には、処理部6は、メモリからコンデンサ17についての基準電気的特性値(基準容量値)を読み出すと共に、算出した電気的特性値Dmをこの基準電気的特性値と比較して、取得した電気的特性値Dmが基準電気的特性値の範囲内に含まれているときには、コンデンサ16が正常であることから、検査を実施しているコンデンサ17についても正常であると判別し、基準電気的特性値の範囲内に含まれていないときには、コンデンサ16が正常であることから、コンデンサ17に異常が生じていると判別して、判別結果をコンデンサ17の識別情報と共にメモリに記憶する。
【0067】
一方、コンデンサ19(第1部品)については、後述するように他のコンデンサ(本例ではコンデンサ18(第2部品))との合成電気的特性値を使用するが、ゲート素子25における出力段の電界効果型トランジスタFET1は極めて小さいオン抵抗の状態で、両コンデンサ18,19を接続する。このため、上記したコンデンサ14,17とは異なり、コンデンサ18,19同士は直接接続された状態に近い状態で並列接続される。これにより、このコンデンサ19については、算出した合成電気的特性値(合成静電容量)からコンデンサ18の静電容量値を減算して、電気的特性値(静電容量)を算出し、この算出した電気的特性値(静電容量)に基づいて検査処理が行われる。
【0068】
コンデンサ19については、導体パターン39に規定された接触ポイント3、および導体パターン32に規定された接触ポイント3がプローブ4を接触させる2つの接触ポイント3として規定されている。このため、処理部6は、メモリに記憶されている検査対象部品としてのコンデンサ19に対する2つの接触ポイント3についての位置情報を読み出して、2つのプローブ4をこの2つの接触ポイント3に接触させる。
【0069】
次いで、処理部6は、メモリから読み出したこのコンデンサ19についての仕様情報に基づいて測定部5に対する制御処理を実行することにより、測定部5に対して周波数f2(または周波数f1)の交流電圧に直流電圧を重畳させた測定信号(第1測定信号)Vsを選択させて2つの接触ポイント3間に出力させる。また、処理部6は、この状態において測定部5によって測定される電気的特性値Dmを取得(入力)する。
【0070】
この場合、ゲート素子25の出力段は図4に示す構成となっているため、直流電圧を含む測定信号Vsが導体パターン39を介してゲート素子25の電源端子25aと、導体パターン32に接続された接地端子25bとの間に供給されることにより、ゲート素子25の出力段を構成する2つの電界効果型トランジスタFET1,FET2のうちの電界効果型トランジスタFET1が作動状態に移行する。また、この状態での電界効果型トランジスタFET1のオン抵抗は数Ω程度と極めて小さい値となる。
【0071】
このため、測定信号Vsに含まれている交流電圧は、殆ど減衰することなく作動状態の電界効果型トランジスタFET1を通過し、出力端子25cからコンデンサ19に印加される。この際に、電流信号Isのうちのこの交流電圧に起因する電流信号は、導体パターン39に接続されているコンデンサ18を経由して導体パターン32に流れると共に、ゲート素子25の出力段およびコンデンサ19を経由して導体パターン32に流れる。これにより、コンデンサ18およびコンデンサ19は、実質的に、直接接続された状態に極めて近い状態で並列接続される。したがって、処理部6が測定部5から取得した電気的特性値Dm(第1電気的特性値Dm1)は、両コンデンサ18,19の並列合成容量(合成電気的特性値)となる。
【0072】
次いで、処理部6は、この第1電気的特性値Dm1で示される両コンデンサ18,19の並列合成容量と、既に測定したコンデンサ18の静電容量(この場合の静電容量は、正常時の静電容量であってもよいし、異常時(取付けなしの状態時を含む異常時)の静電容量であってもよい。第2電気的特性値Dm2)とに基づいて、コンデンサ19の電気的特性値Dmを算出する。具体的には、並列合成容量の容量値からコンデンサ18の静電容量を減算して、コンデンサ19の電気的特性値Dm(=Dm1−Dm2)を算出する。
【0073】
続いて、処理部6は、メモリからコンデンサ19についての基準電気的特性値(基準容量値)を読み出すと共に、算出した電気的特性値Dmをこの基準電気的特性値と比較して、取得した電気的特性値Dmが基準電気的特性値の範囲内に含まれているときには、検査を実施しているコンデンサ19は正常であると判別し、基準電気的特性値の範囲内に含まれていないときには、コンデンサ19に異常が生じていると判別して、判別結果をコンデンサ19の識別情報と共にメモリに記憶する。これにより、検査対象部品として回路基板2に実装されているコンデンサ11〜19に対する検査が完了する。
【0074】
なお、コンデンサ19についての電気的特性値Dmの算出に際して、ゲート素子25の電源端子25aおよびこの電源端子25aに接続されている導体パターン39のいずれにもコンデンサが接続されていないときには、処理部6は、測定部5によって測定された電気的特性値Dmをコンデンサ19の静電容量値を示す電気的特性値として、コンデンサ19に対する検査を実施する。
【0075】
最後に、処理部6は、出力処理を実行して、メモリに記憶している検査対象部品であるコンデンサ11〜19についての検査結果を表示装置で構成されている出力部7に表示させる。
【0076】
このように、この検査装置1およびこの検査方法では、三端子レギュレータ21の出力端子21bと導体パターン32との間に接続されて、両電極14a,14bにプローブ4を同時に直接接触させてその電気的特性値Dmを測定できないコンデンサ14については、作動用直流電圧に交流電圧(周波数f1)を重畳させた測定信号Vsを三端子レギュレータ21の入力端子21aと導体パターン32との2点間に供給して、この2点間の電気的特性値Dmを測定する。この場合、測定信号Vsの交流電圧に起因する電流信号は、三端子レギュレータ21を経由してコンデンサ14に流れるため、測定される電気的特性値Dmは、コンデンサ14の状態(正常か異常か)によって変化する電気的特性値Dmとして測定される。したがって、この検査装置1およびこの検査方法によれば、この測定された電気的特性値Dmに基づいて、このコンデンサ14を検査することができる。また、回路基板2に実装されている検査対象部品(検査すべき電子部品)に占める実際に検査し得る検査対象部品の割合を十分に高めることができる。
【0077】
また、三端子レギュレータ21の入力端子21aに他のコンデンサ13が接続されているときには、電気的特性値Dmは、両コンデンサ13,14の合成電気的特性値として測定されるが、この場合であっても、コンデンサ13が正常であるときには、コンデンサ14の状態(正常か異常か)の如何によって、電気的特性値Dmが変化するため、この電気的特性値Dmに基づいてコンデンサ14を検査することができる。
【0078】
また、この検査装置1およびこの検査方法では、増幅器23の出力端子23cと導体パターン32との間に接続されて、両電極17a,17bにプローブ4を同時に直接接触させてその電気的特性値Dmを測定できないコンデンサ17については、作動用直流電圧に交流電圧(周波数f2(またはf1))を重畳させた測定信号Vsを増幅器23の電源端子23aと導体パターン32との2点間に供給して、この2点間の電気的特性値Dmを測定する。この場合、測定信号Vsの交流電圧に起因する電流信号は、増幅器23を経由してコンデンサ17に流れるため、測定される電気的特性値Dmは、コンデンサ17の状態(正常か異常か)によって変化する電気的特性値Dmとして測定される。したがって、この検査装置1およびこの検査方法によれば、この測定された電気的特性値Dmに基づいて、このコンデンサ17を検査することができる。また、回路基板2に実装されている検査対象部品(検査すべき電子部品)に占める実際に検査し得る検査対象部品の割合をさらに高めることができる。
【0079】
また、増幅器23の電源端子23aに他のコンデンサ16が接続されているときには、電気的特性値Dmは、両コンデンサ16,17の合成電気的特性値として測定されるが、この場合であっても、コンデンサ16が正常であるときには、コンデンサ17の状態(正常か異常か)の如何によって、電気的特性値Dmが変化するため、この電気的特性値Dmに基づいてコンデンサ17を検査することができる。
【0080】
また、この検査装置1およびこの検査方法では、ゲート素子25の出力端子25cと導体パターン32との間に接続されて、両電極19a,19bにプローブ4を同時に直接接触させてその電気的特性値Dmを測定できないコンデンサ19については、作動用直流電圧に交流電圧(周波数f2(またはf1))を重畳させた測定信号Vsをゲート素子25の電源端子25aと導体パターン32との2点間に供給して、この2点間の電気的特性値Dmを測定する。この場合、測定信号Vsの交流電圧に起因する電流信号は、ゲート素子25を経由してコンデンサ19に流れるため、測定される電気的特性値Dmは、コンデンサ19の状態(正常か異常か)によって変化する電気的特性値Dmとして測定される。したがって、この検査装置1およびこの検査方法によれば、この測定された電気的特性値Dmに基づいて、このコンデンサ19を検査することができる。また、回路基板2に実装されている検査対象部品(検査すべき電子部品)に占める実際に検査し得る検査対象部品の割合を一層高めることができる。
【0081】
また、ゲート素子25の電源端子25aに他のコンデンサ18が接続されているときには、電気的特性値Dmは、両コンデンサ16,17の合成電気的特性値(コンデンサ16,17の並列回路の合成電気的特性値)として測定される。このため、この合成電気的特性値からコンデンサ16の電気的特性値(静電容量値)を減算することにより、コンデンサ17の電気的特性値が算出される。したがって、この場合であっても、算出されたコンデンサ17の電気的特性値に基づいて、コンデンサ17を検査することができる。
【0082】
なお、上記の検査装置1および上記の検査方法では、ゲート素子25の出力端子25cに接続されているコンデンサ19に対する検査処理において、コンデンサ19自体の電気的特性値を算出して検査する構成を採用しているが、上記した他のコンデンサ14、17に対する検査処理と同様にして、ゲート素子25の電源端子25aに接続されている他のコンデンサ18が正常なときにのみ、各コンデンサ18,19の合成電気的特性値に基づいて検査する構成を採用することもできる。
【0083】
また、上記の検査装置1および上記の検査方法では、検査対象部品としてコンデンサを例に挙げて説明したが、コンデンサに限定されるものではなく、回路基板2に実装されている抵抗やインダクタに対しても適用できるのは勿論である。また、この場合における電気的特性値は、抵抗のときには抵抗値となり、インダクタのときにはインダクタンスとなる。また、ゲート素子25としてインバータを例に挙げて説明したが、ゲート素子25には、NANDゲートやNORゲートなどインバータ以外のゲート素子が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0084】
1 検査装置
2 回路基板
5 測定部
6 処理部
11〜19 コンデンサ
21,22 三端子レギュレータ
23 増幅器
25 ゲート素子
Dm 電気的特性値
Dm1 第1電気的特性値
Dm2 第2電気的特性値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装された回路基板における任意の2点間の電気的特性値を測定する測定部と、
前記測定された電気的特性値に基づいて前記2点間に実装された前記電子部品を検査対象部品として検査する処理部とを備えている回路基板実装部品の検査装置であって、
一方の電極が前記回路基板に実装されたシリーズレギュレータの出力端子に接続され、かつ他方の電極が前記回路基板に形成された導体パターンに接続された前記検査対象部品の検査に際し、
前記測定部は、前記シリーズレギュレータの作動用直流電圧に当該シリーズレギュレータのリップル除去率が基準値以下となる周波数の交流電圧を重畳させた測定信号を当該シリーズレギュレータの入力端子と前記他方の電極に接続されている前記導体パターンとの2点間に供給した状態において、当該2点間の前記電気的特性値を測定し、
前記処理部は、前記測定された電気的特性値に基づいて前記検査対象部品を検査する回路基板実装部品の検査装置。
【請求項2】
電子部品が実装された回路基板における任意の2点間の電気的特性値を測定する測定部と、
前記測定された電気的特性値に基づいて前記2点間に実装された前記電子部品を検査対象部品として検査する処理部とを備えている回路基板実装部品の検査装置であって、
一方の電極が前記回路基板に実装された増幅器の出力端子に接続され、かつ他方の電極が前記回路基板に形成された導体パターンに接続された前記検査対象部品の検査に際し、
前記測定部は、前記増幅器の作動用直流電圧に予め規定された周波数の交流電圧を重畳させた測定信号を当該増幅器の電源端子と前記他方の電極に接続されている前記導体パターンとの2点間に供給して作動状態を維持した状態において、当該2点間の前記電気的特性値を測定し、
前記処理部は、前記測定された電気的特性値に基づいて前記検査対象部品を検査する回路基板実装部品の検査装置。
【請求項3】
電子部品が実装された回路基板における任意の2点間の電気的特性値を測定する測定部と、
前記測定された電気的特性値に基づいて前記2点間に実装された前記電子部品を検査対象部品として検査する処理部とを備えている回路基板実装部品の検査装置であって、
一方の電極が前記回路基板に実装されたゲート素子の出力端子に接続され、かつ他方の電極が前記回路基板に形成された導体パターンに接続された前記検査対象部品としての第1部品の検査に際し、
前記測定部は、前記ゲート素子の作動用直流電圧に予め規定された周波数の交流電圧を重畳させた第1測定信号を当該ゲート素子の電源端子と前記他方の電極に接続されている前記導体パターンとの2点間に供給して作動状態を維持した状態において、当該2点間の前記電気的特性値を第1電気的特性値として測定し、
前記処理部は、前記測定された第1電気的特性値に基づいて前記第1部品の電気的特性値を算出し、当該算出した電気的特性値に基づいて当該第1部品を検査する回路基板実装部品の検査装置。
【請求項4】
前記回路基板には、前記第1部品と同種の他の前記電子部品であって、一方の電極が前記電源端子に接続されると共に他方の電極が前記導体パターンに接続された第2部品が実装され、
前記処理部は、前記電源端子と前記第1部品および前記第2部品の前記各他方の電極に接続されている前記導体パターンとの2点間に前記第1測定信号を供給した状態において前記測定部によって測定される前記第1電気的特性値としての前記第1部品および前記第2部品の合成電気的特性値と、前記ゲート素子を非作動状態に移行させ、かつ前記2点間に交流電圧で構成される第2測定信号を供給した状態において前記測定部によって測定される第2電気的特性値としての前記第2部品の電気的特性値とに基づいて、当該第1部品の前記電気的特性値を算出し、当該算出した電気的特性値に基づいて当該第1部品を検査する請求項3記載の回路基板実装部品の検査装置。
【請求項5】
回路基板における任意の2点間の電気的特性値を測定すると共に当該測定された電気的特性値に基づいて当該2点間に実装された電子部品を検査対象部品として検査する回路基板実装部品の検査方法であって、
一方の電極が前記回路基板に実装されたシリーズレギュレータの出力端子に接続され、かつ他方の電極が前記回路基板に形成された導体パターンに接続された前記検査対象部品の検査に際し、
前記シリーズレギュレータの作動用直流電圧に当該シリーズレギュレータのリップル除去率が基準値以下となる周波数の交流電圧を重畳させた測定信号を当該シリーズレギュレータの入力端子と前記他方の電極に接続されている前記導体パターンとの2点間に供給した状態において、当該2点間の前記電気的特性値を測定し、
前記測定された電気的特性値に基づいて前記検査対象部品を検査する回路基板実装部品の検査方法。
【請求項6】
回路基板における任意の2点間の電気的特性値を測定すると共に当該測定された電気的特性値に基づいて当該2点間に実装された電子部品を検査対象部品として検査する回路基板実装部品の検査方法であって、
一方の電極が前記回路基板に実装された増幅器の出力端子に接続され、かつ他方の電極が前記回路基板に形成された導体パターンに接続された前記検査対象部品の検査に際し、
前記増幅器の作動用直流電圧に予め規定された周波数の交流電圧を重畳させた測定信号を当該増幅器の電源端子と前記他方の電極に接続されている前記導体パターンとの2点間に供給して作動状態を維持した状態において、当該2点間の前記電気的特性値を測定し、
前記測定された電気的特性値に基づいて前記検査対象部品を検査する回路基板実装部品の検査方法。
【請求項7】
回路基板における任意の2点間の電気的特性値を測定すると共に当該測定された電気的特性値に基づいて当該2点間に実装された電子部品を検査対象部品として検査する回路基板実装部品の検査方法であって、
一方の電極が前記回路基板に実装されたゲート素子の出力端子に接続され、かつ他方の電極が前記回路基板に形成された導体パターンに接続された前記検査対象部品としての第1部品の検査に際し、
前記ゲート素子の作動用直流電圧に予め規定された周波数の交流電圧を重畳させた第1測定信号を当該ゲート素子の電源端子と前記他方の電極に接続されている前記導体パターンとの2点間に供給して作動状態を維持した状態において、当該2点間の前記電気的特性値を第1電気的特性値として測定し、
前記測定された第1電気的特性値に基づいて前記第1部品の電気的特性値を算出し、当該算出した電気的特性値に基づいて当該第1部品を検査する回路基板実装部品の検査方法。
【請求項8】
前記回路基板には、前記第1部品と同種の他の前記電子部品であって、一方の電極が前記電源端子に接続されると共に他方の電極が前記導体パターンに接続された第2部品が実装され、
前記電源端子と前記第1部品および前記第2部品の前記各他方の電極に接続されている前記導体パターンとの2点間に前記第1測定信号を供給した状態において測定される前記第1電気的特性値としての前記第1部品および前記第2部品の合成電気的特性値と、前記ゲート素子を非作動状態に移行させ、かつ前記2点間に交流電圧で構成される第2測定信号を供給した状態において測定される第2電気的特性値としての前記第2部品の電気的特性値とに基づいて、当該第1部品の前記電気的特性値を算出し、
前記算出した電気的特性値に基づいて当該第1部品を検査する請求項7記載の回路基板実装部品の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−7650(P2013−7650A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140539(P2011−140539)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】