説明

回路基板検査装置および回路基板検査方法

【課題】回路基板における各導体パターン間の絶縁検査の効率を向上させる。
【解決手段】検査用電圧Veを出力する電源部14と、回路基板における各導体パターンに対する検査用電圧Veの供給によって流れる電流値Imに基づいて各導体パターン間の絶縁検査を実行する制御部18と、各導体パターンと電源部14および制御部18との間の接断を行うスイッチ部15とを備え、制御部18は、電源部14からスイッチ部15に検査用電圧Veが出力されている電圧出力状態においてスイッチ部15に対して接断を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板における各導体パターンの間の絶縁検査を実行する回路基板検査装置および回路基板検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の回路基板検査装置として、特許第3546046号公報に開示された絶縁検査装置が知られている。この絶縁検査装置は、可変電圧源、電圧計、制御部およびスパーク検出回路などを備えて構成されている。この回路基板検査装置では、可変電圧源から出力される直流電圧を印加した配線パターン間の絶縁抵抗値を算出して閾値と比較することにより、その配線パターン間の絶縁状態の良否を判定し、絶縁状態が不良な配線パターンが存在するときには、回路基板が不良品であると判定する。また、この絶縁検査装置では、絶縁検査中において、直流電圧の印加によって配線パターン間で放電(スパーク)が発生したときには、その放電を検出して、回路基板が不良品であると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3546046号公報(第5−6頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記した従来の絶縁検査装置には、以下の問題点がある。すなわち、この絶縁検査装置では、絶縁検査中に発生する放電を検出して回路基板が不良品であると判定する。この場合、印加する直流電圧の電圧値を徐々に上昇させる過程で放電が発生するため、この種の絶縁検査装置では、一般的に、1回の絶縁検査が終了する毎に直流電圧の電圧値を低下させ、絶縁検査の対象の配線パターンを変更した後に、再び直流電圧の電圧値を徐々に上昇させる方法を採用している。しかしながら、この方法を採用する従来の絶縁検査装置では、電圧値の上昇および低下に時間がかかるため、数多くの導体パターンを有する基板を検査する際には、検査時間が増大して、検査効率が低下するという問題点が存在する。この場合、例えば、一群の配線パターンを同電位(低電位)とすると共に、他の一群の配線パターンを同電位(高電位)としつつ、両群の配線パターンに直流電圧を印加して上記の絶縁検査や放電の検出を行うことによって検査回数を減少させ、これによって検査効率を向上させる方法が知られている。しかしながら、この方法では、絶縁検査中に放電が発生したときに、その放電が両群に属するいずれかの配線パターンにおいて発生したことまでは把握できるものの、どの配線パターンにおいて放電が発生したかを特定することが困難であるという問題点が存在する。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、回路基板における各導体パターン間の絶縁検査の効率を向上させ得る回路基板検査装置および回路基板検査方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載の回路基板検査装置は、検査用電圧を出力する電源部と、回路基板における各導体パターンに対する前記検査用電圧の供給によって流れる電流値に基づいて当該各導体パターン間の絶縁検査を実行する検査部と、前記各導体パターンと前記電源部および前記検査部との間の接断を行うスイッチ部と、当該スイッチ部を制御する制御部とを備えた回路基板検査装置であって、前記制御部は、前記電源部から前記スイッチ部に前記検査用電圧が出力されている電圧出力状態において前記スイッチ部に対して前記接断を行わせる。
【0007】
また、請求項2記載の回路基板検査装置は、請求項1記載の回路基板検査装置において、前記制御部は、M個(Mは、2以上の整数)の前記導体パターンを有する前記回路基板における当該各導体パターンのうちの一部の導体パターンを第1グループとして設定して当該第1グループの導体パターンを同電位とすると共に、前記第1グループの導体パターンを除く他の全ての前記導体パターンを第2グループとして設定して当該第2グループの導体パターンを同電位としつつ、前記両グループの前記各導体パターン間に前記検査用電圧が供給されるように前記スイッチ部に対して前記接断を行わせる供給処理を実行し、その際に、当該両グループとしてそれぞれ設定する前記導体パターンの組み合わせを変更しつつN種類(Nは(logM)以上であって(logM)に最も近い整数)の当該組み合わせについて当該供給処理を実行すると共に、当該各供給処理の実行過程において、前記電源部に接続される前記導体パターンの数が1個または複数個ずつ増加するように前記スイッチ部に対して前記電圧出力状態で前記接断を行わせる追加接続処理を実行し、前記検査部は、前記追加接続処理の実行によって前記接続される導体パターンの数が増加する毎に前記検査用電圧の電圧値および前記電流値の少なくとも一方に基づいて当該導体パターンにおける放電の発生の有無を検出すると共に、前記組み合わせを変更して前記各供給処理が実行された後に前記絶縁検査を実行する。
【0008】
また、請求項3記載の回路基板検査装置は、請求項2記載の回路基板検査装置において、前記制御部は、前記追加接続処理において、前記導体パターンの数が1個ずつ増加するように前記スイッチ部に対して前記接断を行わせる。
【0009】
また、請求項4記載の回路基板検査方法は、回路基板における各導体パターンと検査用電圧を出力する電源部および検査部との接断を行うスイッチ部を制御して当該各導体パターンに対して当該検査用電圧を供給させ、当該検査用電圧の供給によって流れる電流値に基づく当該各導体パターン間の絶縁検査を前記検査部に実行させる回路基板検査方法であって、前記電源部から前記スイッチ部に前記検査用電圧が出力されている電圧出力状態において前記スイッチ部に対して前記接断を行わせる。
【0010】
また、請求項5記載の回路基板検査方法は、請求項4記載の回路基板検査方法において、M個(Mは、2以上の整数)の前記導体パターンを有する前記回路基板における当該各導体パターンのうちの一部の導体パターンを第1グループとして設定して当該第1グループの導体パターンを同電位とすると共に、前記第1グループの導体パターンを除く他の全ての前記導体パターンを第2グループとして設定して当該第2グループの導体パターンを同電位としつつ、前記両グループの前記各導体パターン間に前記検査用電圧が供給されるように前記スイッチ部に対して前記接断を行わせる供給処理を実行し、その際に、当該両グループとしてそれぞれ設定する前記導体パターンの組み合わせを変更しつつN種類(Nは(logM)以上であって(logM)に最も近い整数)の当該組み合わせについて当該供給処理を実行すると共に、当該各供給処理の実行過程において、前記電源部に接続される前記導体パターンの数が1個または複数個ずつ増加するように前記スイッチ部に対して前記電圧出力状態で前記接断を行わせる追加接続処理を実行し、前記追加接続処理の実行によって前記接続される導体パターンの数が増加する毎に前記検査用電圧の電圧値および前記電流値の少なくとも一方に基づく当該導体パターンにおける放電の発生の有無を前記検査部に検出させると共に、前記組み合わせを変更して前記各供給処理を実行した後に前記絶縁検査を前記検査部に実行させる。
【0011】
また、請求項6記載の回路基板検査方法は、請求項5記載の回路基板検査方法において、前記追加接続処理において、前記導体パターンの数が1個ずつ増加するように前記スイッチ部に対して前記接断を行わせる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の回路基板検査装置、および請求項4記載の回路基板検査方法によれば、電源部からスイッチ部に検査用電圧が出力されている電圧出力状態においてスイッチ部に対して接断を行わせることにより、スイッチ部による1回の接断毎に検査用電圧の電圧値を上昇および低下させる処理を不要とすることができる結果、電圧値の上昇および低下に要する時間分、検査時間を短縮することができる。このため、この回路基板検査装置および回路基板検査方法によれば、スイッチ部による1回の接断毎に検査用電圧の電圧値を上昇および低下させる従来の構成および方法と比較して、絶縁検査の効率を十分に向上させることができる。
【0013】
また、請求項2記載の回路基板検査装置、および請求項5記載の回路基板検査方法では、第1グループおよび第2グループとして設定する導体パターンの組み合わせを変更しつつN種類の組み合わせについて供給処理を実行し、各供給処理を実行した後に絶縁検査を実行する。このため、この回路基板検査装置および回路基板検査方法によれば、各グループとして設定した複数の導体パターン間の絶縁状態を一度に検査することができる結果、一対の導体パターン間の絶縁状態を順次行う構成および方法や、1つの導体パターンと同電位とした複数の導体パターンとの間の絶縁状態を順次行う構成および方法と比較して、絶縁検査の効率をさらに向上させることができる。また、この回路基板検査装置および回路基板検査方法によれば、供給処理を実行する過程において、電源部に接続される導体パターンの数が1個または複数個ずつ増加するようにスイッチ部に対して電圧出力状態で接断を行わせ、電源部に追加して接続された導体パターンにおける放電の発生の有無を検出するため、絶縁検査において放電が発生した導体パターンを容易に特定することができる。
【0014】
また、請求項3記載の回路基板検査装置、および請求項6記載の回路基板検査方法によれば、追加接続処理において、電源部に接続させる導体パターンの数を1個ずつ増加させることにより、1つの導体パターン毎に放電の発生の有無を検出することができるため、放電が発生した導体パターンを正確かつ確実に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】回路基板検査装置1の構成を示す構成図である。
【図2】回路基板100の構成を示す構成図である。
【図3】回路基板検査方法を説明する第1の説明図である。
【図4】回路基板検査方法を説明する第2の説明図である。
【図5】回路基板検査方法を説明する第3の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る回路基板検査装置および回路基板検査方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0017】
最初に、回路基板検査装置の一例としての回路基板検査装置1の構成について説明する。図1に示す回路基板検査装置1は、M個(Mは2以上の整数であって、この例では10)の導体パターンP1〜P10(図2参照:以下、区別しないときには「導体パターンP」ともいう)を有する回路基板100における各導体パターンPの間の絶縁状態を検査する絶縁検査を後述の回路基板検査方法に従って実行可能に構成されている。具体的には、回路基板検査装置1は、図1に示すように、基板保持部11、プローブユニット12、移動機構13、電源部14、スイッチ部15、測定部16、記憶部17および制御部18を備えて構成されている。
【0018】
基板保持部11は、保持板と、保持板に取り付けられて回路基板100の端部を挟み込んで固定するクランプ機構(いずれも図示せず)とを備えて、回路基板100を保持可能に構成されている。プローブユニット12は、複数のプローブピン21(図1参照)を備えて治具型に構成されている。この場合、プローブユニット12は、回路基板100の各導体パターンPの形状や配設位置などに応じて、プローブピン21の数や配列パターンが予め規定されている。移動機構13は、制御部18の制御に従い、プローブユニット12を上下方向に移動させることによってプロービングを実行する。
【0019】
電源部14は、制御部18の制御に従い、検査用電圧Ve(一例として、電圧値Vmが15V〜250V程度の直流電圧)を生成する。スイッチ部15は、スキャナであって、複数のスイッチ(図示せず)を備えて構成され、制御部18の制御に従って各スイッチをオン状態またはオフ状態に移行させることにより、導体パターンPに接触しているプローブユニット12のプローブピン21と電源部14との接断(接続および接続解除(切断))、およびプローブピン21と測定部16との接断を行う。
【0020】
測定部16は、電源部14からスイッチ部15に対して出力されている検査用電圧Veの電圧値Vmを測定する。また、測定部16は、導体パターンPに対する検査用電圧Veの供給によって導体パターンP間に流れる電流の電流値Imを測定する。記憶部17は、制御部18によって実行される絶縁検査において用いられる導体パターンデータDを記憶する。この場合、導体パターンデータDは、一例として、回路基板100の各導体パターンPに対してユニークに(重複することなく)1番からM番(この例では、10番)までの番号を付したときに、その1番からM番までの番号や、導体パターンPの番号と検査時(プロービング時)において各導体パターンPに接触させるプローブピン21の番号とを関連付けた情報などを含んで構成されている。
【0021】
制御部18は、図外の操作部から出力される操作信号に従って回路基板検査装置1を構成する各構成要素を制御する。
【0022】
また、制御部18は、供給処理を実行して回路基板100における各導体パターンPの間に検査用電圧Veを供給させる。具体的には、この供給処理において、制御部18は、回路基板100における各導体パターンPのうちの一部の導体パターンPを第1グループとして設定すると共に、第1グループの導体パターンPを除く他の全ての導体パターンPを第2グループとして設定する。また、制御部18は、第1グループの導体パターンPを同電位(高電位および低電位のいずれか一方)とすると共に、第2グループの導体パターンPを同電位(高電位および低電位の他方)としつつ、両グループに属する導体パターンP間に検査用電圧Veが供給されるようにスイッチ部15に対して接断を行わせる。
【0023】
この場合、制御部18は、上記した供給処理を、第1グループおよび第2グループとしてそれぞれ設定する導体パターンPの組み合わせを変更しつつN種類(導体パターンPの数をMとしたときに、Nは(logM)以上であって(logM)に最も近い整数)の組み合わせについて実行する。また、制御部18は、各供給処理の実行過程において、電源部14に接続される導体パターンPの数が1個または複数個ずつ(この例では、1個ずつ)増加するように追加して、その状態においてスイッチ部15に対して接断を行わせる追加接続処理を実行する。
【0024】
この場合、制御部18は、追加接続処理を実行する際に、電源部14からスイッチ部15に検査用電圧Veが出力されている電圧出力状態、つまり電源部14とスイッチ部15とを接続する配線に検査用電圧Veが出力されている状態(以下、「活線状態」ともいう)においてスイッチ部15に対して接断を行わせる。なお、活線状態においてスイッチ部15に対して接断を行わせる処理を、以下「活線接断処理」ともいう。
【0025】
また、制御部18は、検査部として機能して、導体パターンPに供給されている検査用電圧Veの電圧値Vm、および検査用電圧Veの供給によって流れる電流の電流値Imを測定部16に測定させ、その電圧値Vmおよび電流値Imに基づく導体パターンP間の絶縁状態の検査(絶縁検査)を、上記した第1グループおよび第2グループとしてそれぞれ設定する導体パターンPの組み合わせを変更して供給処理が実行された後に(つまり、N回)実行する。なお、このような絶縁検査方式を以下「マルチプル方式」ともいう。
【0026】
さらに、制御部18は、追加接続処理の実行によって電源部14に接続される導体パターンPの数が増加する毎に、測定部16によって測定される検査用電圧Veの電圧値Vmが単位時間に変化した値(以下、「変化値」ともいう)、および測定部16によって測定される電流値Imの少なくとも一方(この例では、電圧値Vmの変化値および電流値Imの双方)に基づいて導体パターンPにおける放電の発生の有無を検出する。
【0027】
次に、回路基板検査装置1を用いて回路基板100における各導体パターンPの間の絶縁状態を検査する回路基板検査方法、およびその際の回路基板検査装置1の動作について、図面を参照して説明する。なお、回路基板100は、図2に示すように、10個(M個の一例)の導体パターンP1〜P10を有しているものとする。また、各導体パターンP1〜P10には、1番から10番の番号がユニークに付されているものとする。また、初期状態では、スイッチ部15が、電源部14と各導体パターンPにそれぞれ接触している各プローブピン21とを全て切断(接続解除)しているものとする。
【0028】
まず、検査対象の回路基板100を基板保持部11における保持板(図示せず)に載置し、次いで、基板保持部11のクランプ機構(図示せず)で回路基板100の端部を挟み込んで固定することにより、回路基板100を基板保持部11に保持させる。続いて、図外の操作部を用いて検査開始操作を行う。この際に、制御部18が、操作部から出力された操作信号に従い、移動機構13を制御してプローブユニット12を下向きに移動させる。これにより、プローブユニット12の各プローブピン21の先端部が各導体パターンP1〜P10に接触(プロービング)させられる。
【0029】
次いで、制御部18は、マルチプル方式で絶縁検査を実行する。ここで、この例では、回路基板100における導体パターンPの数Mが「10」のため、マルチプル方式において、第1グループおよび第2グループとしてそれぞれ設定する導体パターンPの組み合わせの数Nは、(logM)以上であって(logM)に最も近い整数である「4」となる。つまり、制御部18が、4種類の組み合わせについて供給処理および絶縁検査を実行することで、全ての導体パターンPについての絶縁状態の良否を検査することができる。
【0030】
1回目の供給処理において、制御部18は、回路基板100の各導体パターンPのうちの第1グループとして設定する導体パターンPと、第2グループとして設定する導体パターンPとを記憶部17に記憶されている導体パターンデータDに基づいて特定する。この場合、制御部18は、例えば、各導体パターンPに付された10進数の番号を2進数としたときの1桁目が「1」である導体パターンP(この例では、1番,3番,5番,7番,9番の番号が付された導体パターンP1,P3,P5,P7,P9)を第1グループとして設定する。また、制御部18は、第1グループとして設定した各導体パターンPを除く他の全ての導体パターンP(この例では、2番,4番,6番,8番,10番の番号が付された導体パターンP2,P4,P6,P8,P10)を第2グループとして設定する(図3における1回目の絶縁検査の列参照)。
【0031】
続いて、制御部18は、図4に示すように、電源部14を制御して検査用電圧Veの電圧値Vmを徐々に上昇させつつ検査用電圧Veをスイッチ部15に出力させることによって活線状態に移行させる。
【0032】
次いで、制御部18は、この活線状態において、電源部14に接続される導体パターンPの数が、初期状態(すべての導体パターンPと電源部14とが切断されている状態)から1個ずつ増加するようにスイッチ部15に対して接断を行わせる追加接続処理(活線接断処理)を実行する。具体的には、制御部18は、スイッチ部15を制御して、まず、第1グループの各導体パターンPに接触しているプローブピン21の1つ(例えば、導体パターンP1に接触しているプローブピン21)と電源部14の高電位側とを接続させる。この場合、この接続の際に、導体パターンP1と他の導体パターンPとの間の容量等に電荷がチャージされることにより、電流(パルス電流)が流れ(図4における導体パターンPの番号「1」の箇所参照)、測定部16がこの電流の電流値Imを測定する。また、測定部16は、電源部14からスイッチ部15に対して供給されている検査用電圧Veの電圧値Vmを測定する。
【0033】
続いて、制御部18は、測定部16によって測定された電流値Imと予め決められた電流の基準値Irとを比較すると共に、測定部16によって測定された電圧値Vmの変化値と予め決められた基準値Vrとを比較し、その比較結果に基づいて導体パターンP1における放電の発生の有無を判定(検出)する。この場合、制御部18は、図4に示すように、電流値Imが基準値Ir以下で、かつ電圧値Vmの変化値が基準値Vr以下のときには、電源部14に接続した導体パターンP(この例では、導体パターンP1)において放電が発生していないと判定する。一方、電流値Imが基準値Irを超えているとき、および電圧値Vmの変化値が基準値Vrを超えているときのいずれかのときには、制御部18は、電源部14に接続した導体パターンPにおいて放電が発生したと判定する。
【0034】
次いで、制御部18は、導体パターンP2に接触しているプローブピン21と電源部14の低電位側とを接続させる。この際に、上記したような電荷のチャージによって電流が流れ(図4における導体パターンPの番号「2」の箇所参照)、制御部18が、測定部16によって測定されたこの電流の電流値Imと基準値Irとを比較すると共に、電圧値Vmの変化値と基準値Vrとを比較して導体パターンP2における放電の発生の有無を判定する。
【0035】
以下、制御部18は、電源部14に接続される導体パターンP(導体パターンPに接触しているプローブピン21)の数が1個ずつ増加するようにスイッチ部15に対して接断を行わせる。また、制御部18は、測定部16によって測定された接続の際に流れる電流の電流値Imと基準値Irとを比較すると共に、電圧値Vmの変化値と基準値Vrとを比較して各導体パターンPにおける放電の発生の有無を判定する。
【0036】
全ての導体パターンPと電源部14との接続が完了し、追加接続処理が終了したときには、第1グループとして設定した導体パターンP1,P3,P5,P7,P9が高電位に接続されて同電位となり、第2グループとして設定した導体パターンP2,P4,P6,P8,P10が低電位に接続されて同電位となる(図3における1回目の絶縁検査の列参照)。
【0037】
続いて、制御部18は、測定部16によって測定された電流値Imおよび電圧値Vmに基づいて抵抗値を算出し、その抵抗値と予め決められた基準値とを比較して第1グループの各導体パターンPと第2グループの各導体パターンPとの間の絶縁状態の良否を検査する。次いで、制御部18は、図4に示すように、電源部14を制御して検査用電圧Veの電圧値Vmを徐々に低下させる。これにより、スイッチ部15における活線状態が解除される。以上により、1回目の供給処理および絶縁検査が終了する。
【0038】
続いて、制御部18は、2回目の供給処理および絶縁検査を実行する。この2回目の供給処理では、制御部18は、例えば、各導体パターンPの番号を2進数としたときの2桁目が「1」である導体パターンP(この例では、2番,3番,6番,7番,10番の導体パターンP2,P3,P6,P7,P10)を第1グループとして設定する。また、制御部18は、第1グループとして設定した各導体パターンPを除く他の全ての導体パターンP(この例では、1番,4番,5番,8番,9番の導体パターンP1,P4,P5,P8,P9)を第2グループとして設定する(図3における2回目の絶縁検査の列参照)。
【0039】
次いで、制御部18は、図5に示すように、電源部14を制御して検査用電圧Veの電圧値Vmを徐々に上昇させつつ検査用電圧Veをスイッチ部15に出力させることによって活線状態に移行させる。
【0040】
続いて、制御部18は、1回目の供給処理の実行過程で実行した工程と同様の工程で追加接続処理(活線接断処理)を実行する。ここで、図5に示すように、導体パターンP7と電源部14とを接続したときに、測定部16によって測定された電流値Imが基準値Irを超えたときには、(この例では、電圧値Vmの変化値も基準値Vrを超えている)制御部18は、導体パターンP7において放電が発生したと判定する。
【0041】
次いで、全ての導体パターンPと電源部14との接続が完了して、追加接続処理が終了したときには、第1グループとして設定した導体パターンP2,P3,P6,P7,P10が高電位に接続されて同電位となり、第2グループとして設定した導体パターンP1,P4,P5,P8,P9が低電位に接続されて同電位となる(図3における2回目の絶縁検査の列参照)。
【0042】
続いて、制御部18は、測定部16によって測定された電流値Imおよび電圧値Vmに基づいて抵抗値を算出し、その抵抗値と予め決められた基準値とを比較して第1グループの各導体パターンPと第2グループの各導体パターンPとの間の絶縁状態の良否を検査する。次いで、制御部18は、図5に示すように、電源部14を制御して検査用電圧Veの電圧値Vmを徐々に低下させる。これにより、スイッチ部15における活線状態が解除される。以上により、2回目の供給処理および絶縁検査が終了する。
【0043】
この回路基板検査装置1および回路基板検査方法では、上記したように、活線状態においてスイッチ部15に対して接断を行わせる。このため、この回路基板検査装置1および回路基板検査方法では、スイッチ部15による1回の接断毎に検査用電圧Veの電圧値Vmを上昇および低下させる必要がないため、その分、検査時間が短縮されている。また、この回路基板検査装置1および回路基板検査方法では、電源部14に接続させる導体パターンPの数を1個ずつ増加させる追加接続処理を実行するため、一群の導体パターンPを同電位(低電位)とし、他の一群の導体パターンPを同電位(高電位)とし、その状態において両群の導体パターンPに検査用電圧Veを印加して放電発生の有無を検出する従来の構成および方法とは異なり、どの導体パターンPにおいて放電が発生したかを確実に特定することが可能となっている。
【0044】
続いて、制御部18は、2回目の供給処理および絶縁検査と同様にして、3回目の供給処理および絶縁検査、並びに4回目の供給処理および絶縁検査を実行する。この場合、制御部18は、3回目の供給処理において、例えば、各導体パターンPの番号を2進数としたときの3桁目が「1」である導体パターンP(この例では、4番〜7番の導体パターンP4〜P7)を第1グループとして設定し、第1グループとして設定した各導体パターンPを除く他の全ての導体パターンP(この例では、1番〜3番,8番〜10番の導体パターンP1〜P3,P8〜P10)を第2グループとして設定する(図3における3回目の絶縁検査の列参照)。
【0045】
また、制御部18は、4回目の供給処理において、例えば、各導体パターンPの番号を2進数としたときの4桁目が「1」である導体パターンP(この例では、8番〜10番の導体パターンP8〜P10)を第1グループとして設定し、第1グループとして設定した各導体パターンPを除く他の全ての導体パターンP(この例では、1番〜7番の導体パターンP1〜P7)を第2グループとして設定する(図3における4回目の絶縁検査の列参照)。
【0046】
次いで、4回目の供給処理および絶縁検査が終了したときには、制御部18は、導体パターンPにおける放電の発生の有無、および放電が発生した場合における放電が発生した導体パターンPを特定可能な情報(導体パターンPの番号など)、並びに絶縁検査の結果を図外の表示部に表示させる。
【0047】
このように、この回路基板検査装置1および回路基板検査方法によれば、電源部14からスイッチ部15に検査用電圧Veが出力されている電圧出力状態においてスイッチ部15に対して接断を行わせることにより、スイッチ部15による1回の接断毎に検査用電圧Veの電圧値Vmを上昇および低下させる処理を不要とすることができる結果、電圧値Vmの上昇および低下に要する時間分、検査時間を短縮することができる。このため、この回路基板検査装置1および回路基板検査方法によれば、スイッチ部15による1回の接断毎に検査用電圧Veの電圧値Vmを上昇および低下させる従来の構成および方法と比較して、絶縁検査の効率を十分に向上させることができる。
【0048】
また、この回路基板検査装置1および回路基板検査方法では、第1グループおよび第2グループとして設定する導体パターンPの組み合わせを変更しつつN種類の組み合わせについて供給処理を実行し、各供給処理を実行した後に絶縁検査を実行する。このため、この回路基板検査装置1および回路基板検査方法によれば、各グループとして設定した複数の導体パターンP間の絶縁状態を一度に検査することができる結果、一対の導体パターンP間の絶縁状態を順次行う構成および方法や、1つの導体パターンPと同電位とした複数の導体パターンPとの間の絶縁状態を順次行う構成および方法と比較して、絶縁検査の効率をさらに向上させることができる。また、この回路基板検査装置1および回路基板検査方法によれば、供給処理を実行する過程において、電源部14に接続される導体パターンPの数が1個ずつ増加するようにスイッチ部15に対して電圧出力状態(活線状態)で接断を行わせて、電源部14に追加して接続された導体パターンPにおける放電の発生の有無を検出するため、絶縁検査において放電が発生した導体パターンPを容易に特定することができる。
【0049】
また、この回路基板検査装置1および回路基板検査方法によれば、追加接続処理において、電源部14に接続させる導体パターンPの数を1個ずつ増加させることにより、1つの導体パターンP毎に放電の発生の有無を検出することができるため、放電が発生した導体パターンPを正確かつ確実に特定することができる。
【0050】
なお、回路基板検査装置および回路基板検査方法は、上記した構成および方法に限定されない。例えば、第1グループおよび第2グループとしてそれぞれ設定する各導体パターンPの組み合わせを変更する毎に、つまり1回の絶縁検査毎に検査用電圧Veの電圧値Vmを上昇および低下させる例について上記したが、全ての組み合わせについての絶縁検査が終了するまで検査用電圧Veの電圧値Vmを低下させずに活線状態を維持してスイッチ部15に対して接断を行わせる構成および方法を採用することもできる。また、放電の発生を検出した時点、または絶縁状態が不良と判定した時点で、その回路基板100に対する検査を終了する構成および方法を採用することもできる。
【0051】
また、追加接続処理において、電源部14に接続させる導体パターンPの数を1個ずつ増加させる構成および方法について上記したが、追加接続処理において、電源部14に接続させる導体パターンPの数を複数個ずつ(例えば、2個ずつ)増加させる構成および方法を採用することもできる。また、電源部14に接続させる導体パターンPの数を1回毎、または複数回毎に変更する構成および方法を採用することもできる。
【0052】
また、マルチプル方式で絶縁検査を行う構成および方法において活線接断処理を実行する例について上記したが、バルクショート方式(1対N方式)や、1対1方式で絶縁検査を行う構成および方法において活線接断処理を実行することもできる。
【0053】
また、測定部16によって測定される電圧値Vm(電圧値Vmの変化値)および電流値Imの双方に基づいて導体パターンPにおける放電の発生の有無を検出する構成および方法について上記したが、電圧値Vm(電圧値Vmの変化値)および電流値Imいずれか一方に基づいて導体パターンPにおける放電の発生の有無を検出する構成および方法を採用することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1,1A 回路基板検査装置
14 検査用信号出力部
15 スキャナ部
16 測定部
18,18A 制御部
100 回路基板
P1〜P10 導体パターン
S1 低電圧信号
S2 高電圧信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査用電圧を出力する電源部と、回路基板における各導体パターンに対する前記検査用電圧の供給によって流れる電流値に基づいて当該各導体パターン間の絶縁検査を実行する検査部と、前記各導体パターンと前記電源部および前記検査部との間の接断を行うスイッチ部と、当該スイッチ部を制御する制御部とを備えた回路基板検査装置であって、
前記制御部は、前記電源部から前記スイッチ部に前記検査用電圧が出力されている電圧出力状態において前記スイッチ部に対して前記接断を行わせる回路基板検査装置。
【請求項2】
前記制御部は、M個(Mは、2以上の整数)の前記導体パターンを有する前記回路基板における当該各導体パターンのうちの一部の導体パターンを第1グループとして設定して当該第1グループの導体パターンを同電位とすると共に、前記第1グループの導体パターンを除く他の全ての前記導体パターンを第2グループとして設定して当該第2グループの導体パターンを同電位としつつ、前記両グループの前記各導体パターン間に前記検査用電圧が供給されるように前記スイッチ部に対して前記接断を行わせる供給処理を実行し、その際に、当該両グループとしてそれぞれ設定する前記導体パターンの組み合わせを変更しつつN種類(Nは(logM)以上であって(logM)に最も近い整数)の当該組み合わせについて当該供給処理を実行すると共に、当該各供給処理の実行過程において、前記電源部に接続される前記導体パターンの数が1個または複数個ずつ増加するように前記スイッチ部に対して前記電圧出力状態で前記接断を行わせる追加接続処理を実行し、
前記検査部は、前記追加接続処理の実行によって前記接続される導体パターンの数が増加する毎に前記検査用電圧の電圧値および前記電流値の少なくとも一方に基づいて当該導体パターンにおける放電の発生の有無を検出すると共に、前記組み合わせを変更して前記各供給処理が実行された後に前記絶縁検査を実行する請求項1記載の回路基板検査装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記追加接続処理において、前記導体パターンの数が1個ずつ増加するように前記スイッチ部に対して前記接断を行わせる請求項2記載の回路基板検査装置。
【請求項4】
回路基板における各導体パターンと検査用電圧を出力する電源部および検査部との接断を行うスイッチ部を制御して当該各導体パターンに対して当該検査用電圧を供給させ、当該検査用電圧の供給によって流れる電流値に基づく当該各導体パターン間の絶縁検査を前記検査部に実行させる回路基板検査方法であって、
前記電源部から前記スイッチ部に前記検査用電圧が出力されている電圧出力状態において前記スイッチ部に対して前記接断を行わせる回路基板検査方法。
【請求項5】
M個(Mは、2以上の整数)の前記導体パターンを有する前記回路基板における当該各導体パターンのうちの一部の導体パターンを第1グループとして設定して当該第1グループの導体パターンを同電位とすると共に、前記第1グループの導体パターンを除く他の全ての前記導体パターンを第2グループとして設定して当該第2グループの導体パターンを同電位としつつ、前記両グループの前記各導体パターン間に前記検査用電圧が供給されるように前記スイッチ部に対して前記接断を行わせる供給処理を実行し、その際に、当該両グループとしてそれぞれ設定する前記導体パターンの組み合わせを変更しつつN種類(Nは(logM)以上であって(logM)に最も近い整数)の当該組み合わせについて当該供給処理を実行すると共に、当該各供給処理の実行過程において、前記電源部に接続される前記導体パターンの数が1個または複数個ずつ増加するように前記スイッチ部に対して前記電圧出力状態で前記接断を行わせる追加接続処理を実行し、
前記追加接続処理の実行によって前記接続される導体パターンの数が増加する毎に前記検査用電圧の電圧値および前記電流値の少なくとも一方に基づく当該導体パターンにおける放電の発生の有無を前記検査部に検出させると共に、前記組み合わせを変更して前記各供給処理を実行した後に前記絶縁検査を前記検査部に実行させる請求項4記載の回路基板検査方法。
【請求項6】
前記追加接続処理において、前記導体パターンの数が1個ずつ増加するように前記スイッチ部に対して前記接断を行わせる請求項5記載の回路基板検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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