説明

回路装置及び印刷装置

【課題】記憶装置に供給する電源電圧の変動を抑制できる回路装置及び印刷装置等を提供すること。
【解決手段】回路装置は、電源端子VDD1、VSS1、VSS2と、端子群PG1、PG2と、を含む。端子群PG1は、電源端子VDD1、VSS1からの電源電圧を第1記憶装置に対して供給する電源供給端子P_VDD1、P_VSS1を有する。端子群PG2は、電源端子VDD1、VSS2からの電源電圧を第2記憶装置に対して供給する電源供給端子P_VDD2、P_VSS2を有する。端子群PG1の少なくとも電源供給端子P_VDD1、P_VSS1と、端子群PG2の少なくとも電源供給端子P_VDD2、P_VSS2とは、電源端子VDD1に対して端子の配置順が対称である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置及び印刷装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
インクカートリッジ(印刷材収容体)に記憶装置が備えられ、その記憶装置には、インクカートリッジの種類の情報や、インクカートリッジに収容されるインク(印刷材)の量のレベルの情報が記憶され、印刷装置が記憶装置と通信することにより、それらの情報を取得する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−196664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷装置と記憶装置の通信は、インクカートリッジを装着するカートリッジホルダーに設けられた回路装置を介して行われ、回路装置の電源端子には印刷装置からの電源電圧が供給され、回路装置はその電源電圧を電源供給端子から記憶装置に対して供給する。このとき、電源端子から電源供給端子までの配線長が長くなると、記憶装置に供給する電源電圧の変動が大きくなるという課題がある。
【0005】
本発明の幾つかの態様によれば、記憶装置に供給する電源電圧の変動を抑制できる回路装置及び印刷装置等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、複数の印刷材収容体に設けられる複数の記憶装置と通信を行う回路装置であって、高電位側電源電圧及び低電位側電源電圧の一方が供給される第1電位電源端子と、前記高電位側電源電圧及び前記低電位側電源電圧の他方が供給される第1の第2電位電源端子及び第2の第2電位電源端子と、前記第1電位電源端子と前記第1の第2電位電源端子との間に設けられる第1端子群と、前記第1電位電源端子と前記第2の第2電位電源端子との間に設けられる第2端子群と、を含み、前記第1端子群は、前記第1電位電源端子からの電源電圧を、前記複数の記憶装置のうちの第1記憶装置に対して供給する第1の第1電位電源供給端子と、前記第1の第2電位電源端子からの電源電圧を、前記第1記憶装置に対して供給する第1の第2電位電源供給端子と、を有し、前記第2端子群は、前記第1電位電源端子からの電源電圧を、前記複数の記憶装置のうちの第2記憶装置に対して供給する第2の第1電位電源供給端子と、前記第2の第2電位電源端子からの電源電圧を、前記第2記憶装置に対して供給する第2の第2電位電源供給端子と、を有し、前記第1端子群の少なくとも前記第1の第1電位電源供給端子及び前記第1の第2電位電源供給端子と、前記第2端子群の少なくとも前記第2の第1電位電源供給端子及び前記第2の第2電位電源供給端子とは、前記第1電位電源端子に対して端子の配置順が対称である回路装置に関係する。
【0007】
本発明の一態様によれば、第1端子群の少なくとも第1の第1電位電源供給端子及び第1の第2電位電源供給端子と、第2端子群の少なくとも第2の第1電位電源供給端子及び第2の第2電位電源供給端子とが、第1電位電源端子に対して対称な配置順で配置される。これにより、記憶装置に供給する電源電圧の変動を抑制することが可能となる。
【0008】
また本発明の一態様では、前記第1端子群が有する端子の中で前記第1の第1電位電源供給端子が前記第1電位電源端子に最も近く、前記第2端子群が有する端子の中で前記第2の第1電位電源供給端子が前記第1電位電源端子に最も近くてもよい。
【0009】
このようにすれば、第1電位電源端子から第1、第2の第1電位電源供給端子までの距離を近くできるため、第1、第2の第1電位電源供給端子から第1、第2記憶装置に対して供給する高電位側電源電圧及び低電位側電源電圧の一方の電圧変動を抑制できる。
【0010】
また本発明の一態様では、前記第1端子群が有する端子の中で前記第1の第2電位電源供給端子が前記第1の第2電位電源端子に最も近く、前記第2端子群が有する端子の中で前記第2の第2電位電源供給端子が前記第2の第2電位電源端子に最も近くてもよい。
【0011】
このようにすれば、第1、第2の第2電位電源端子から第1、第2の第1電位電源供給端子までの距離を短くできるため、第1、第2の第2電位電源供給端子から第1、第2記憶装置に対して供給する高電位側電源電圧及び低電位側電源電圧の他方の電圧変動を抑制できる。
【0012】
また本発明の一態様では、前記第1端子群は、前記第1の第1電位電源供給端子及び前記第1の第2電位電源供給端子からの電源電圧に基づくデータ信号、リセット信号、クロック信号を、それぞれ前記第1記憶装置に対して供給する第1データ端子、第1リセット端子、第1クロック端子を有し、前記第2端子群は、前記第2の第1電位電源供給端子及び前記第2の第2電位電源供給端子からの電源電圧に基づくデータ信号、リセット信号、クロック信号を、それぞれ前記第2記憶装置に対して供給する第2データ端子、第2リセット端子、第2クロック端子を有し、前記第1データ端子、前記第1リセット端子及び前記第1クロック端子と、前記第2データ端子、前記第2リセット端子及び前記第2クロック端子とは、前記第1電位電源端子に対して端子の配置順が対称であってもよい。
【0013】
このようにすれば、第1、第2の第1電位電源供給端子の電圧変動と、第1、第2の第2電位電源供給端子の電圧変動との差を小さくできる。これにより、その電圧に基づくデータ信号、リセット信号、クロック信号の信号レベルの電圧変動について、第1端子群と第2端子群で差を小さくできる。
【0014】
また本発明の一態様では、前記第1データ端子、前記第1リセット端子及び前記第1クロック端子は、前記第1の第1電位電源供給端子と前記第1の第2電位電源供給端子との間に配置され、前記第2データ端子、前記第2リセット端子及び前記第2クロック端子は、前記第2の第1電位電源供給端子と前記第2の第2電位電源供給端子との間に配置されてもよい。
【0015】
このようにすれば、第1、第2の第1電位電源供給端子の電圧変動と、第1、第2の第2電位電源供給端子の電圧変動を小さくできるため、その電圧に基づくデータ信号、リセット信号、クロック信号の信号レベルの電圧変動を小さくできる。
【0016】
また本発明の一態様では、前記第1電位電源端子及び前記第1の第2電位電源端子のいずれか一方からの前記高電位側電源電圧を、前記第1の第1電位電源供給端子に対して出力する第1バッファー回路と、前記第1電位電源端子又は前記第2の第2電位電源端子からの前記高電位側電源電圧を、前記第2の第1電位電源供給端子に対して出力する第2バッファー回路と、を含んでもよい。
【0017】
このようにすれば、第1バッファー回路を介して、第1電位電源端子又は第1の第2電位電源端子からの高電位側電源電圧を、第1の第1電位電源供給端子に対して出力できる。また、第2バッファー回路を介して、第1電位電源端子又は第2の第2電位電源端子からの高電位側電源電圧を、第2の第1電位電源供給端子に対して出力できる。
【0018】
また本発明の一態様では、前記第1記憶装置に対する非アクセス時には、前記第1バッファー回路は、前記第1の第1電位電源供給端子を高インピーダンス状態に設定し、前記第2記憶装置に対する非アクセス時には、前記第2バッファー回路は、前記第2の第1電位電源供給端子を高インピーダンス状態に設定してもよい。
【0019】
このようにすれば、高電位側電源電圧よりも高い電圧が印加される端子と、第1、第2の第1電位電源供給端子がショートしている可能性がある場合に、その高い電圧が回路装置に対して印加されることを防止できる。
【0020】
また本発明の一態様では、前記回路装置の端子配置領域に沿って配線され、前記第1電位電源端子に接続された第1電源配線と、前記端子配置領域に沿って配線され、前記第1の第2電位電源端子及び前記第2の第2電位電源端子に接続された第2電源配線と、を含み、前記第1電源配線及び前記第2電源配線は、前記第1の第1電位電源供給端子のI/O領域(入出力領域)に配置された前記第1バッファー回路、及び前記第2の第1電位電源供給端子のI/O領域に配置された前記第2バッファー回路の上に配線され、前記第1バッファー回路及び前記第2バッファー回路に対して前記高電位側電源電圧及び前記低電位側電源電圧を供給してもよい。
【0021】
このようにすれば、第1電位電源端子から第1バッファー回路、第2バッファー回路までの配線長を短くできるため、第1バッファー回路、第2バッファー回路が出力する電圧の電圧変動を抑制できる。
【0022】
また本発明の一態様では、前記高電位側電源電圧及び前記低電位側電源電圧の前記一方が供給される第2の第1電位電源端子と、前記第2の第1電位電源端子と前記第2の第2電位電源端子との間に設けられる第3端子群と、を含み、前記第1の端子群は、前記複数の記憶装置である第1〜第n記憶装置のうち前記第1記憶装置に対して、電源電圧と制御信号を供給し、前記第2の端子群は、前記第1〜第n記憶装置のうち前記第2記憶装置及び第3〜第n−1記憶装置に対して、共通のバスを介して電源電圧と制御信号を供給し、前記第3端子群は、前記第1〜第n記憶装置のうち第n記憶装置に対して、電源電圧と制御信号を供給してもよい。
【0023】
このようにすれば、第1、第n記憶装置の端子に短絡が発生した場合であっても、第2〜第n−1記憶装置と分離されているから、回路装置と第2〜第n−1記憶装置との間の通信に影響を与えることを防止できる。
【0024】
また本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載された回路装置と、前記複数の記憶装置が設けられた前記複数の印刷材収容体と、を含む印刷装置に関係する。
【0025】
また本発明の他の態様では、前記高電位側電源電圧及び前記低電位側電源電圧を前記回路装置に対して供給する主制御部を含んでもよい。
【0026】
また本発明の他の態様では、前記回路装置が設けられた回路基板が設けられ、前記複数の印刷材収容体が装着される装着部を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態の回路装置におけるパッド配置例。
【図2】本実施形態の回路装置における電源配線のレイアウト配置例。
【図3】本実施形態の回路装置におけるバッファー回路のレイアウト配置例。
【図4】印刷装置の構成例を示す斜視図。
【図5】図5(A)、図5(B)は、印刷材収容体の外観を示す斜視図。
【図6】図6(A)、図6(B)は、基板の構成例。
【図7】印刷材収容体及び回路基板等の構成例。
【図8】印刷装置の電気的構成の基本的な構成例。
【図9】装着検出及びメモリーアクセスのフローチャート。
【図10】図10(A)〜図10(D)は、出力回路及び入出力回路の詳細な構成例。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0029】
1.回路装置
図1に、本実施形態の回路装置10(集積回路装置)におけるパッド配置例を示す。図1には、半導体プロセスにより回路素子が形成される面側から、回路装置10のシリコン基板を平面視した図を示す。
【0030】
図1に示す回路装置10は、第1の低電位側電源端子VSS1、第2の低電位側電源端子VSS2、第1の高電位側電源端子VDD1、第2の高電位側電源端子VDD2、第1〜第3の端子群PG1〜PG3を含む。これらの端子は、半導体回路の形成プロセスにより形成されたパッドに相当する。
【0031】
回路装置10は、図8で後述するように、印刷材収容体100(例えばインクカートリッジ)に設けられた記憶装置203との通信処理を行う制御部300に対応している。回路装置10は、主制御部400とバスBUSを介して通信処理を行い、その通信処理に基づいて端子群PG1(又はPG2、PG3)を介して記憶装置203との通信処理を行う。また、回路装置10の電源端子VDD1、VDD2、VSS1、VSS2には、図8の主制御部400の低電圧電源441から電源電圧VDD、VSSが供給され、回路装置10は、端子群PG1(又はPG2、PG3)を介して記憶装置203に対して電源電圧VDD、VSSを供給する。なお、図8の主制御部400、制御部300、記憶装置203は、それぞれ図4の印刷装置1000、ホルダー1100、印刷材収容体100に設けられている。
【0032】
図1に示すように、端子群PG1は、高電位側電源電圧VDDを出力する第1の高電位側電源供給端子P_VDD1と、低電位側電源電圧VSSを出力する第1の低電位側電源供給端子P_VSS1と、クロック信号を出力する第1のクロック端子P_SCK1と、リセット信号を出力する第1のリセット端子P_XRST1と、データ信号の入出力を行う第1のデータ端子P_SDA1と、テスト信号の入出力を行う第1のテスト端子TCV1とを有する。ここで、高電位側電源電圧VDDは、例えば図8の低電圧電源441が出力する高電位側の電源電圧VDDに対応し、低電位側電源電圧VSSは、例えば図8の低電圧電源441が出力する低電位側の電源電圧VSSに対応する。
【0033】
同様に、端子群PG2は、第2の高電位側電源供給端子P_VDD2、第2の低電位側電源供給端子P_VSS2、第2のクロック端子P_SCK2、第2のリセット端子P_XRST2、第2のデータ端子P_SDA2、第2のテスト端子TCV2を有する。
【0034】
これらの端子群PG1、PG2の端子と、電源端子VSS1、VDD1、VSS2は、回路装置10のペリフェラルに沿って配置されている。回路装置10の平面視においてペリフェラルに沿って反時計回りの方向を第1方向D1とし、ペリフェラルに沿って時計回りの方向を第2方向D2とする。このとき、電源端子VDD1を起点として、方向D1に端子群PG1、電源端子VSS1の順に配置され、方向D2に端子群PG2、電源端子VSS2の順に配置される。
【0035】
より具体的には、端子群PG1の方向D1における端子配置順と、端子群PG2の方向D2における端子配置順とは、電源端子VDD1を中心として対称である。即ち、端子群PG1では、電源端子VDD1の方向D1側の隣に電源供給端子P_VDD1が設けられ、電源端子VSS1の方向D2側の隣に電源供給端子P_VSS2が設けられる。それと対称に、端子群PG2では、電源端子VDD1の方向D2側の隣に電源供給端子P_VDD2が設けられ、電源端子VSS2の方向D1側の隣に電源供給端子P_VSS2が設けられる。端子群PG1の制御端子P_SCK1、P_XRST1、P_SDA1は、電源供給端子P_VDD1、P_VSS1の間に設けられ、それと対称に、端子群PG2の制御端子P_SCK2、P_XRST2、P_SDA2は、電源供給端子P_VDD2、P_VSS2の間に設けられる。制御端子の配置順は、電源端子VDD1を中心に対称である。
【0036】
また、端子群PG3は、第3の高電位側電源供給端子P_VDD3、第3の低電位側電源供給端子P_VSS3、第3のクロック端子P_SCK3、第3のリセット端子P_XRST3、第3のデータ端子P_SDA3、第3のテスト端子TCV3を有する。端子群PG3の端子と、電源端子VDD2は、回路装置10のペリフェラルに沿って配置され、端子群PG2の方向D1における端子配置順と、端子群PG3の方向D2における端子配置順とは、電源端子VSS2を中心として対称である。
【0037】
このように電源端子VDD1、VSS1、VSS2と端子群PG1、PG2の配置順を対称にすることで、電源端子VDD1、VSS1、VSS2から電源供給端子P_VDD1、P_VSS1、P_VDD2、P_VSS2までの配線抵抗を小さくすることが可能となる。同様に、電源端子VSS2、VDD1、VDD2と端子群PG2、PG3の配置順を対称にすることで、電源端子VSS2、VDD1、VDD2から電源供給端子P_VDD2、P_VSS2、P_VDD3、P_VSS3までの配線抵抗を小さくすることが可能となる。これにより、電源供給端子が出力する電圧の変動(例えば電圧ドロップ)を抑制できる。また、端子群PG1〜PG3で、ほぼ同等の電圧変動にすることが可能である。
【0038】
なお、回路装置10のシリコン基板の辺やコーナーと端子との位置関係は、図1の構成に限定されず、端子の配置順が上述のように対称となっていればよい。
【0039】
2.電源配線レイアウト
図2に、回路装置10における電源配線のレイアウト配置例を示す。図2に示すように、回路装置10の配線層には、低電位側電源端子VSS1、VSS2に接続される配線LSと、高電位側電源端子VDD1、VDD2に接続される配線LDと、端子群PG1〜PG3の低電位側電源供給端子P_VSS1〜P_VSS3にそれぞれ接続される配線LPS1〜LPS3と、端子群PG1〜PG3の高電位側電源供給端子P_VDD1〜P_VDD3にそれぞれ接続される配線LPD1〜LPD3とが、配線されている。
【0040】
配線LS、LDは、端子の配置方向D1(又はD2)に沿って、端子よりも内側に配線される。図2には配線LS、LDの一部を図示しているが、配線LS、LDは、端子の配置方向に沿って環状に配線されてもよい。例えば回路装置10内において、共通の電圧VSSをグランド電圧として用いる場合、配線LSが環状であってもよい。
【0041】
配線LPS1〜LPS3は、電源供給端子P_VSS1〜P_VSS3側から方向D2へ伸びるように配線される。また、配線LPD1〜LPD3は、電源供給端子P_VDD1〜P_VDD3側から方向D1へ伸びるように配線される。回路装置10のペリフェラルから中央に向かって見た場合、配線LS、配線LPS1〜LPS3、配線LPD1〜LPD3、配線LDの順に配置されている。なお、配線の配置順はこれに限定されない。
【0042】
上記の各配線は、例えば半導体プロセスの金属(例えばアルミ)配線層により形成される。配線LDの内側には、端子群PG1〜PG3に対して制御信号を出力する回路等の回路が配置される。
【0043】
図3に、各端子のI/O領域(入出力領域)に配置されるバッファー回路のレイアウト配置例を示す。図3には、端子群PG1、PG2に対応するバッファー回路を示すが、省略した端子群PG3に対応するバッファー回路についても同様である。
【0044】
回路装置10は、配線LSから供給された電源電圧VSSを配線LPS1を介して端子P_VSS1に対して出力するバッファー回路BS1と、配線LDから供給された電源電圧VDDを配線LPD1を介して端子P_VDD1に対して出力するバッファー回路BD1とを含む。また回路装置10は、電源供給端子P_VSS1、P_VDD1の電圧を信号レベルとして、端子P_SCK1に対してクロック信号を出力するバッファー回路BC1と、電源供給端子P_VSS1、P_VDD1の電圧を信号レベルとして、端子P_XRST1に対してリセット信号を出力するバッファー回路BR1と、電源供給端子P_VSS1、P_VDD1の電圧を信号レベルとして、端子P_SDA1を介してデータ信号の入出力を行うバッファー回路IO1とを含む。
【0045】
バッファー回路BS1、BC1、BR1、IO1、BD1は、端子群PG1の端子に対応して配置されており、端子の配置方向に沿って端子の配置順と同じ順序で配置される。バッファー回路BS1、BC1、BR1、IO1、BD1の上には、端子側に配線LSが配置され、端子から離れた側に配線LSが配置される。また、バッファー回路BC1、BR1、IO1の上には、配線LS、LDの間に配線LPS1、LPD1が配置される。
【0046】
また回路装置10は、端子群PG2に対応するバッファー回路として、バッファー回路BS2、BC2、BR2、IO2、BD2を含む。これらのバッファー回路BS2、BC2、BR2、IO2、BD2は、端子の配置順が対称であることに対応して、端子群PG1のバッファー回路BS1、BC1、BR1、IO1、BD1と対称な配置順で配置されている。
【0047】
なお、上記のバッファー回路の詳細な構成については、図10(A)〜図10(D)で後述する。
【0048】
このように端子及びバッファー回路が対称な配置順で配置されることで、端子群PG1、PG2で電源供給端子の電圧変動をほぼ同一にすることが可能となるため、電源供給端子の電圧を信号レベルとする制御信号の電圧変動が、端子群PG1、PG2でほぼ同一となる。これにより、信号レベルの変動がノイズとなって後段の回路(図8の記憶装置203)が誤動作してしまうことを抑制できる。
【0049】
さて、一組の高電位側電源端子と低電位側電源端子から各端子群に対して電源が供給された場合、電源端子から端子群までの配線抵抗が異なるため、電源端子から遠い端子群ほど電圧ドロップ等が生じやすく、電源電圧が変動しやすいという課題がある。電源電圧が変動すると、後段の記憶装置に安定した電圧の電源を供給できず、また、制御信号のノイズ増大につながる可能性がある。
【0050】
この点、本実施形態によれば、図1に示すように、第1の端子群(例えば端子群PG1)は、第1電位電源端子(例えば高電位側電源端子VDD1)と第1の第2電位電源端子(例えば低電位側電源端子VSS1)との間に設けられる。第2の端子群(例えば端子群PG2)は、第1電位電源端子VDD1と第2の第2電位電源端子(例えば低電位側電源端子VSS2)との間に設けられる。そして、第1端子群PG1の少なくとも第1の第1電位電源供給端子(例えば高電位側電源供給端子P_VDD1)及び第1の第2電位電源供給端子(例えば低電位側電源供給端子P_VSS1)と、第2端子群PG2の少なくとも第2の第1電位電源供給端子(例えば高電位側電源供給端子P_VDD2)及び第2の第2電位電源供給端子(例えば低電位側電源供給端子P_VSS2)とは、第1電位電源端子VDD1に対して端子の配置順が対称である。
【0051】
なお、第1電位電源端子、第2電位電源端子が、それぞれ高電位側電源電圧VDD、低電位側電源電圧VSSが供給される端子である場合を例に説明するが、本実施形態ではこれに限定されず、第1電位電源端子、第2電位電源端子が、それぞれ低電位側電源電圧VSS、高電位側電源電圧VDDが供給される端子であってもよい。即ち、第1電位電源端子、第1の第2電位電源端子、第2の第2電位電源端子、第1端子群、第2端子群が、それぞれ図1の低電位側電源端子VSS2、高電位側電源端子VDD2、高電位側電源端子VDD1、端子群PG3、端子群PG2に対応してもよく、この場合にも以下に述べるのと同様のことが言える。
【0052】
これにより、電源端子VDD1から電源供給端子P_VDD1、P_VDD2、までの配線抵抗、及び電源端子VSS1、VSS2から電源供給端子P_VSS1、P_VSS2までの配線抵抗を小さくすることが可能となるため、電源供給端子が出力する電圧の変動(例えば電圧ドロップ)を抑制できる。また、配置順が対称であることにより、端子群PG1、PG2で、電源端子VDD1から電源供給端子P_VDD1までの配線抵抗と電源端子VDD1から電源供給端子P_VDD2までの配線抵抗との差が小さくなる。同様に、電源端子VSS1から電源供給端子P_VSS1までの配線抵抗と電源端子VSS2から電源供給端子P_VSS2までの配線抵抗との差が小さくなる。これにより、電源端子から離れた特定の端子群が存在しなくなるため、そのような特定の端子群に接続される記憶装置に不具合が生じてしまうことを防止できる。また、理想的には各端子群に1組ずつ電源端子を設ければよいが、本実施形態では対称に配置して電源端子VDD1を端子群PG1、PG2で共有できるため、回路装置10の面積を削減できる。
【0053】
また本実施形態では、第1端子群PG1が有する端子の中で第1の第1電位電源供給端子P_VDD1が第1電位電源端子VDD1に最も近く、第2端子群PG2が有する端子の中で第2の第1電位電源供給端子P_VDD2が第1電位電源端子VDD1に最も近い。
【0054】
このようにすれば、第1電位電源端子VDD1から第1、第2の第1電位電源供給端子P_VDD1、P_VDD2までの距離を近くできるため、第1、第2の第1電位電源供給端子P_VDD1、P_VDD2における電圧変動を軽減できる。例えば図10(C)で後述するように、端子VDD1から供給される電源電圧VDDは、トランジスターTP5を介して電源電圧CVDDとして端子P_VDD1、P_VDD2に供給される。この場合に、トランジスターTP5までの配線が短くなることで、CVDDの電圧ドロップを軽減できる。また、端子間の距離が近いことで配線の幅を小さくできるため、回路装置10のレイアウト面積を削減できる。
【0055】
また本実施形態では、第1端子群PG1が有する端子の中で第1の第2電位電源供給端子P_VSS1が第1の第2電位電源端子VSS1に最も近く、第2端子群PG2が有する端子の中で第2の第2電位電源供給端子P_VSS2が第2の第2電位電源端子VSS2に最も近い。
【0056】
このようにすれば、第1、第2の第2電位電源端子VSS1、VSS2から第1、第2の第1電位電源供給端子P_VSS1、P_VSS2までの距離を短くできるため、第1、第2の第2電位電源供給端子P_VSS1、P_VSS2における電圧変動を軽減できる。例えば図10(B)で後述するように、端子VSS1から供給される電源電圧VSSは、トランジスターTN4を介して電源電圧CVSSとして端子P_VSS1、P_VSS2に供給される。この場合に、トランジスターTN4までの配線が短くなることで、CVSSの電圧ドロップを軽減できる。また、端子間の距離が近いことで配線の幅を小さくできるため、回路装置10のレイアウト面積を削減できる。
【0057】
また本実施形態では、第1端子群PG1が有する第1データ端子P_SDA1、第1リセット端子P_XRST1及び第1クロック端子P_SCK1と、第2端子群PG2が有する第2データ端子P_SDA2、第2リセット端子P_XRST2及び第2クロック端子P_SCK2とは、第1電位電源端子VDD1に対して端子の配置順が対称である。
【0058】
また本実施形態では、第1データ端子P_SDA1、第1リセット端子P_XRST1及び第1クロック端子P_SCK1は、第1の第1電位電源供給端子P_VDD1と第1の第2電位電源供給端子P_VSS1との間に配置される。第2データ端子P_SDA2、第2リセット端子P_XRST2及び第2クロック端子P_SCK2は、第2の第1電位電源供給端子P_VDD2と第2の第2電位電源供給端子P_VSS2との間に配置される。
【0059】
このようにすれば、図2に示すように、端子配置順が対称であることで、CVSSを供給する配線LPS1、LPS2の長さをほぼ同一にでき、CVDDを供給する配線LPD1、LPD2の長さをほぼ同一にできる。図10(A)、図10(D)で後述するように、制御信号CSDA、CRST、CSCKは、CVDD、CVSSにより動作するトランジスターTP2、TN2、TP7、TN7から出力される。この場合に、配線長が同一であることで、制御信号CSDA、CRST、CSCKのノイズ量(CVDD、CVSSの変動によるノイズ)の差を、端子群PG1とPG2で小さくできる。また、上述のようにCVDD、CVSSの電圧変動を小さくできるため、そのCVDD、CVSSを信号レベルとする制御信号CSDA、CRST、CSCKの信号レベルの変動を小さくできる。これにより、ノイズに起因する記憶装置の誤動作を抑制できる。
【0060】
また本実施形態では、図3に示すように、第1電源配線LD及び第2電源配線LSは、第1の第1電位電源供給端子P_VDD1のI/O領域に配置された第1バッファー回路BD1、及び第2の第1電位電源供給端子P_VDD2のI/O領域に配置された第2バッファー回路BD2の上に配線され、第1バッファー回路BD1及び第2バッファー回路BD2に対して高電位側電源電圧VDD及び低電位側電源電圧VSSを供給する。
【0061】
ここで、「上に配線」の「上」とは、回路装置10のシリコン基板の平面のうち半導体プロセスにより回路が形成される平面に垂直な方向において、平面から離れる方向のことである。即ち、シリコン基板の平面にバッファー回路BD1及びBD2が形成され、そのバッファー回路BD1及びBD2よりもシリコン基板の平面から離れる方向側に更に配線LD及びLSが積層されるということである。
【0062】
このようにすれば、第1電位電源端子VDD1から第1バッファー回路BD1、第2バッファー回路BD2までの配線長を短くできるため、第1バッファー回路BD1、第2バッファー回路BD2が出力する電圧CVDDの電圧変動を抑制できる。
【0063】
3.印刷装置
図4は、本実施形態における印刷装置の構成例を示す斜視図である。なお以下では、印刷材収容体が、印刷材としてインクを収容するインクカートリッジである場合を例に説明するが、本実施形態はこれに限定されず、印刷材収容体がインク以外の印刷材を収容する場合にも本実施形態を適用可能である。
【0064】
印刷装置1000は、インクカートリッジ(広義には印刷材収容体)が装着されるカートリッジ装着部1100と、回動自在なカバー1200と、操作部1300とを有する。カートリッジ装着部1100を「カートリッジホルダー」又は単に「ホルダー」とも呼ぶ。図4に示す例では、カートリッジ装着部1100には、4つのインクカートリッジが独立に装着可能であり、例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4種類のインクカートリッジ(印刷材収容体)100が装着される。カバー1200は省略可能である。操作部1300は、ユーザーが各種の指示や設定を行うための入力装置であり、また、ユーザーに各種の通知を行うための表示部を備えている。
【0065】
図5(A)、図5(B)は、インクカートリッジ100の外観を示す斜視図である。図5(A)、図5(B)におけるXYZ軸は、図4のXYZ軸に対応している。なお、インクカートリッジを単に「カートリッジ」とも呼ぶ。このカートリッジ100は、扁平な略直方体の外観形状を有しており、3方向の寸法L1、L2、L3のうちで、長さL1(挿入方向のサイズ)が最も大きく、幅L2が最も小さく、高さL3が長さL1と幅L2の中間である。
【0066】
カートリッジ100は、先端面(第1の面)Sfと、後端面(第2の面)Srと、天井面(第3の面)Stと、底面(第4の面)Sbと、2つの側面(第5及び第6の面)Sc、Sdとを備えている。カートリッジ100の内部には、可撓性材料で形成されたインク収容室120(「インク収容袋」とも呼ぶ)が設けられている。先端面Sfは、2つの位置決め穴131,132と、インク供給口110とを有している。天井面stには、記憶装置が実装される基板200が設けられている。基板200には、インクに関する情報を格納するための不揮発性の記憶装置が搭載されている。第1の側面Scと第2の側面Sdは互いに対向しており、また、先端面Sf、天井面St、後端面Sr、及び、底面Sbと直交する。第2の側面Sdと先端面Sfが交わる位置には、凹凸嵌合部134が配置されている。
【0067】
図6(A)は、本実施形態における基板200の構成を示している。基板200の表面は、カートリッジ100に基板200が装着されたときに外側に露出している面である。図6(B)は、基板200の側面から見た図を示している。基板200の上端部には、ボス溝201が形成され、基板200の下端部には、ボス穴202が形成されている。
【0068】
図6(A)における矢印SDは、カートリッジ装着部1100へのカートリッジ100の装着方向を示している。この装着方向SDは、図5(A)に示すカートリッジの装着方向(X方向)と一致する。基板200は、裏面に記憶装置203を有しており、表面には9つの端子からなる端子群が設けられている。図示を省略するが、基板200の表面と裏面には、端子と記憶装置203を接続するための配線やその他の配線、基板表面の配線と基板の裏面の配線を電気的に接続するためのスルーホールが配置されている。記憶装置203は、カートリッジ100に関する情報や、カートリッジ100に収容されているインクに関する情報(例えばインク量情報、インク残量、インク消費量)を格納する。これらの端子は、略矩形状に形成され、装着方向SDと略垂直な列を2列形成するように配置されている。
【0069】
基板200には、複数の記憶装置用端子RST、SCK、SDA、VDD、VSSと、第1の装着検出端子DT1と、第2の装着検出端子DT2と、第1の短絡検出端子CO1と、第2の短絡検出端子CO2とが設けられる。
【0070】
2つの列のうち、装着方向SDの手前側の例(図6(A)における上側に位置する列)を上側列A1(第1列)と呼び、装着方向SDの奥側の列(図6(A)における下側に位置する列)を下側列A2(第2列)と呼ぶ。なお、これらの列A1、A2は、複数の端子の接触部cpによって形成される列であると考えることも可能である。複数の端子の接触部cpは、カートリッジがホルダーに装着されたときに、ホルダー側回路基板450とカートリッジ側基板200を接続するためにホルダー内部に設けられたコネクターが複数の端子と接触する部分である。
【0071】
上側列A1を形成する端子CO1、RST、SCK、CO2と、下側列A2を形成する端子DT1、VDD、VSS、SDA、DT2は、それぞれ以下の機能(用途)を有する。
<上側列A1>
(1)第1の短絡検出端子CO1
(2)リセット端子RST
(3)クロック端子SCK
(4)第2の短絡検出端子CO2
<下側列A2>
(5)第1の装着検出端子DT1
(6)第1の電源端子(電源端子)VDD
(7)第2の電源端子(接地端子)VSS
(8)データ端子SDA
(9)第2の装着検出端子DT2
【0072】
第1、第2の装着検出端子DT1、DT2は、後述するように、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部1100に正しく装着されているか否かを検出する際に使用される。また、第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2は、第1、第2の装着検出端子DT1、DT2との短絡を検出する際に使用されるものである。他の5つの端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAは、記憶装置203用の端子であり、「メモリー端子」とも呼ぶ。
【0073】
各端子は、その中央部に、複数の装置側端子のうちの対応する端子と接触する接触部cpを含んでいる。上側列A1を形成する端子の各接触部cpと、下側列A2を形成する端子の各接触部cpは、互い違いに配置され、いわゆる千鳥状の配置を構成している。また、上側列A1を形成する端子と、下側列A2を形成する端子も、互いの端子中心が装着方向SDに並ばないように、互い違いに配置され、千鳥状の配置を構成している。
【0074】
上側列A1の第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2の各接触部は、上側列A1の両端部、すなわち、上側列A1の最も外側にそれぞれ配置されている。また、下側列A2の第1、第2の装着検出端子DT1、DT2の各接触部は、下側列A2の両端部、すなわち、下側列A2の最も外側に配置されている。メモリー端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAの接触部は、9つの端子の全体が配置されている領域内の略中央に集合して配置されている。また、第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2及び第1、第2の装着検出端子DT1、DT2の接触部は、メモリー端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAの集合の四隅に配置されている。
【0075】
インクジェットプリンターなどの印刷装置においては、導電性のインク等が基板200の端子側に付着する可能性がある。図6(A)に示したように、第1の短絡検出端子CO1と第1の装着検出端子DT1とは隣り合っており、第2の短絡検出端子CO2と第2の装着検出端子DT2とは隣り合っている。そのために、例えば導電性のインク等が基板200の端子側に付着することで、隣り合っている2つの端子CO1とDT1、或いはCO2とDT2が導電性のインク等によって短絡(リーク)する可能性がある。また、第1の装着検出端子DT1と電源端子VDDとが短絡したり、第2の装着検出端子DT2とデータ端子SDAとが短絡したりする可能性もある。
【0076】
第1、第2の装着検出端子DT1、DT2は、印刷材収容体100の装着を検出するための端子であるが、この装着検出の際には高電圧(例えば42V)がDT1、DT2に印加される。そのため、DT1又はDT2が他の端子と導電性のインク等によって短絡している場合には、例えば記憶装置203などの回路に高電圧が印加され、回路が破壊されるおそれがある。
【0077】
以下に説明するように、本実施形態の印刷装置では、導電性のインク等による端子間の短絡が生じた場合でも、装着検出時に装着検出端子DT1、DT2に印加される高電圧によって記憶装置203などの回路が破壊されることを防止している。
【0078】
図7に、本実施形態の印刷装置における印刷材収容体及び回路基板等の構成例を示す。この構成例は、第1の印刷材収容体100−1〜第4(広義には第n(nは2以上の整数))の印刷材収容体100−4、制御部300及び回路基板450を含む。なお、本実施形態の印刷装置は図7の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0079】
印刷材収容体100−1〜100−4は、印刷材情報を記憶する記憶装置203(203−1〜203−4)、複数の記憶装置用端子RST、SCK、VDD、VSS、SDA、装着検出端子DT1、DT2及び短絡検出端子CO1、CO2をそれぞれ有する。DT1とDT2との間には、装着検出用抵抗素子RDが設けられる。CO1、CO2は、印刷材収容体100の内部で配線により電気的に接続されている。
【0080】
制御部300は、図1〜図3の回路装置10に対応している。制御部300の端子群PG1〜PG3は、第1〜第4の印刷材収容体100−1〜100−4の複数の記憶装置用端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAに接続され、制御部300は、記憶装置203に対してデータの読み出し又は書き込みの制御を行う。
【0081】
第1〜第4の印刷材収容体100−1〜100−4のうちの第2(広義には第i(iは1<i<n−1である整数))〜第3(広義には第j(jはi<j<nである整数))の印刷材収容体100−2、100−3の各々の複数の記憶装置用端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAは、バスMBSにより制御部300と共通接続される。第1の印刷材収容体100−1の複数の記憶装置用端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAは、バスMBSと分離されて制御部300と接続される。第4(広義には第n)の印刷材収容体100−4の複数の記憶装置用端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAは、バスMBSと分離されて制御部300と接続される。
【0082】
回路基板450は印刷装置用回路基板であって、制御部300が実装され、高電位側電源端子TVDと、低電位側電源端子TVSと、第1〜第4(広義には第n)の端子群TG1〜TG4と、バスMBSのバス配線とを有する。第1〜第4の端子群TG1〜TG4には、第1〜第4の印刷材収容体100−1〜100−4が接続される。第1〜第4の端子群TG1〜TG4は、第1〜第4の印刷材収容体100−1〜100−4が有する記憶装置203−1〜203−4にアクセスするための複数の記憶装置用端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAをそれぞれ有する。また、第1〜第4の端子群TG1〜TG4は、第1〜第4の印刷材収容体100−1〜100−4の装着を検出するための装着検出端子DT1、DT2をそれぞれ有する。
【0083】
第1の端子群TG1は、回路基板450の第1の端辺側に配置され、第4(広義には第n)の端子群TG4は、回路基板450の第1の端辺に対向する第2の端辺側に配置される。第1〜第4(広義には第n)の端子群TG1〜TG4のうちの第2(広義には第i(iは1<i<n−1である整数))〜第3(広義には第j(jはi<j<nである整数))の端子群TG2、TG3は、バスMBSのバス配線により制御部300に共通接続される。また、第1の端子群TG1は、バスMBSのバス配線と分離されて制御部300と接続される。また、第4(広義には第n)の端子群TG4は、バスMBSのバス配線と分離されて制御部300と接続される。
【0084】
電源端子TVDは、制御部300の高電位側電源端子VDD1、VDD2に接続され、電源端子TVSは、制御部300の低電位側電源端子VSS1、VSS2に接続される。電源端子TVD、TVSは、例えば回路基板450に接続されるFPC(フラットフレキシブルケーブル)を介して、図8で後述する主制御部400に接続される。制御部300の電源端子VDD1、VDD2には、主制御部400から供給された高電位側電源電圧VDDが供給され、制御部300の電源端子VSS1、VSS2には、主制御部400から供給された低電位側電源電圧VSSが供給される。
【0085】
図7に示すように、本実施形態の印刷装置では、回路基板450の第1の端辺側に配置される第1の端子群TG1及び第1の端辺に対向する第2の端辺側に配置される第4の端子群TG4は、共通バスMBSと分離されて制御部300の端子群PG1、PG3にそれぞれ接続される。即ち、第1、第4の印刷材収容体100−1、100−4の記憶装置(第1、第nの記憶装置)用端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAは、他の印刷材収容体100−2、100−3の記憶装置(第2〜第n−1記憶装置)用端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAとは分離されて制御部300に接続される。
【0086】
インクジェット方式の印刷装置などでは、印刷ヘッドからインクが吐出される際にインクの一部が霧状(ミスト)になって空気中に放出される。このインクミストは、回路基板450の端辺側から回り込むから、端辺から離れた印刷材収容体100−2、100−3よりも端辺側にある印刷材収容体100−1、100−4の方がインクミストの付着による端子間の短絡が発生する可能性が大きい。
【0087】
本実施形態の印刷装置では、端辺側にある印刷材収容体100−1、100−4に短絡が発生した場合であっても、他の印刷材収容体100−2、100−3と分離されているから、制御部300と他の印刷材収容体の記憶装置203−2、203−3との間の通信に影響を与えることを防止できる。また、装着検出の際に記憶装置203−2、203−3に高電圧が印加されることなどを防止できる。その結果、印刷材収容体100−1〜100−4の装着検出を確実で安全に行うことなどが可能になる。
【0088】
4.回路の構成
図8に、本実施形態における印刷装置の電気的構成の基本的な構成例を示す。本構成例の印刷装置は、印刷材収容体(インクカートリッジ)100、回路基板450、制御部300、主制御部400、低電圧電源441、高電圧電源442、表示部430を含む。制御部300は、短絡検出部310、電圧印加部320、装着検出部330、CO(カートリッジアウト)検出部340及び通信処理部350を含む。なお、本実施形態の印刷装置は図8の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0089】
図8では例として1個の印刷材収容体100について示しているが、本構成例の印刷装置は複数の印刷材収容体100を含むことができる。即ち、印刷装置は、印刷材情報を記憶する記憶装置203と複数の記憶装置用端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAとをそれぞれ有する第1〜第n(nは2以上の整数)の印刷材収容体100−1〜100−nを含む。また、第1〜第nの印刷材収容体100−1〜100−の複数の記憶装置用端子に接続され、記憶装置203に対してデータの読み出し又は書き込みの制御を行う制御部300をさらに含む。
【0090】
回路基板450は、9個の端子を有する端子群及び端子群の各端子と制御部300とを電気的に接続する複数の配線を含む。具体的には、端子群はリセット端子CRST、クロック端子CSCK、電源端子CVDD、接地端子CVSS、データ端子CSDA、第1の装着検出端子CDT1、第2の装着検出端子CDT2、第1の短絡検出端子CCO1、第2の短絡検出端子CCO2を含む。回路基板450は、例えば図4のカートリッジ装着部1100に設けられる。回路基板450には、制御部300が設けられる(実装される)。
【0091】
制御部300は、通信処理部350を含み、主制御部400と共に記憶装置203に対してデータの読み出し又は書き込みの制御を行う。例えば、主制御部400が記憶装置203に対するデータの書き込み又は読み出しの制御を行う場合に、通信処理部350は、書き込みデータ又は読み出しデータの通信の中継などを行う。また制御部300は、装着検出部330、CO検出部340、短絡検出部310、電圧印加部320、高電圧制御部360を含み、装着検出、CO検出、短絡検出、高電圧の遮断などの処理を行う。制御部300は、例えばCMOSトランジスターなどで構成されるロジック回路で実現することができ、1チップの集積回路装置であってもよい。
【0092】
主制御部400は、CPU410と、メモリー420とを含み、印刷処理の制御を行う。また、制御部300との間でバスBUSを介して必要な通信を行う。図8に示す構成例では、制御部が主制御部400と制御部300とに分かれているが、1つの制御部として構成してもよい。
【0093】
表示部430は、ユーザーに印刷装置1000の動作状態やカートリッジの装着状態などの各種の通知を行うためのものである。表示部430は、例えば、図4の操作部1300に設けられる。
【0094】
低電圧電源441は、低電圧の電源電圧(第1の電源電圧)VDDを生成する。第1の電源電圧VDDは、ロジック回路に用いられる通常の電源電圧(定格3.3V)である。高電圧電源442は、高電圧の電源電圧(第2の電源電圧)VHVを生成する。第2の電源電圧VHVは、印刷ヘッドを駆動してインクを吐出させるために用いられる高い電圧(例えば定格42V)であり、第1の装着検出端子DT1に印加される装着検出用電圧VHOを生成するためにも用いられる。これらの電圧VDD、VHVは、制御部300に供給され、また、必要に応じて他の回路にも供給される。具体的には、例えば電源電圧VHVは、高電圧電源442から制御部300の電圧印加部320に供給され、電圧印加部320から出力される装着検出用電圧VHOがインクカートリッジ100の第1の装着検出端子DT1及び装着検出部330に供給される。装着検出用電圧VHOは、記憶装置203に供給される電源電圧(例えば3.3V)よりも高い。
【0095】
印刷材収容体100の基板200(図6(A))に設けられた9つの端子のうち、リセット端子RSTと、クロック端子SCKと、電源端子VDDと、データ端子SDAと、接地端子VSSとは、記憶装置203に電気的に接続されている。記憶装置203は、アドレス端子を持たず、クロック端子SCKから入力されるクロック信号のパルス数と、データ端子SDAから入力されるコマンドデータとに基づいてアクセスするメモリーセルが決定され、クロック信号に同期して、データ端子SDAよりデータを受信し、若しくは、データ端子SDAからデータを送信する不揮発性メモリーである。クロック端子SCKは、制御部300から記憶装置203にクロック信号を供給するために用いられる。
【0096】
電源端子VDDと接地端子VSSには、印刷装置1000からの記憶装置203を駆動するための電源電圧(例えば3.3V)と接地電圧(0V)がそれぞれ供給されている。この記憶装置203を駆動するための電源電圧は、低電圧電源441をもとに制御部300により生成され供給される。
【0097】
データ端子SDAは、制御部300と記憶装置203との間で、データ信号をやり取りするために用いられる。リセット端子RSTは、制御部300から記憶装置203にリセット信号を供給するために用いられる。
【0098】
第1、第2の装着検出端子DT1、DT2は、印刷材収容体100がカートリッジ装着部1100に正しく装着されているか否かを検出する際に使用される。第1の装着検出端子DT1と第2の装着検出端子DT2との間には、装着検出用抵抗素子RDが設けられる。装着検出部330は、電圧印加部320から出力される装着検出用電圧VHOと、装着検出用抵抗素子RDを流れる電流とに基づいて、印刷材収容体100の装着を検出する。具体的には、電圧印加部320から出力される装着検出用電圧VHOが第1の装着検出端子DT1に印加されることで、装着検出用抵抗素子RDに電圧が印加されて電流が流れ、この電流を装着検出部330が検出することで、装着を検出する。この装着検出の方法については、後で詳細に説明する。
【0099】
第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2は、印刷材収容体100(具体的には、基板200)の内部で、配線により電気的に接続されている。CO検出部340は、後述するように、CO1とCO2との間の電気的導通を検出することで、CO1及びCO2がカートリッジ装着部1100の対応する端子にそれぞれ電気的に接触しているか否か、即ち、印刷材収容体100が正しく装着されているか否かを検出することができる。もっとも、本実施形態の印刷装置では、第1、第2の装着検出端子DT1、DT2及び装着検出部330が設けられており、これらを用いることでインクカートリッジ100の装着を検出することができるから、CO検出部340を省略することができる。CO検出部340を省略した場合、或いはCO検出部340を用いた装着検出(カートリッジアウト検出)を実行しない場合には、CO1とCO2とを電気的に接続しなくてもよい。
【0100】
なお、以下の説明において、装着検出部330による装着検出を「装着検出」と呼び、CO検出部340による装着検出を「カートリッジアウト検出」、又は「CO検出」と呼ぶ。
【0101】
第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2と検出ノードNDとの間にダイオードD1、D2が設けられているが、CO検出(カートリッジアウト検出)を行わない場合には、ダイオードを介さずに、CO1、CO2を検出ノードNDに直接接続してもよい。
【0102】
短絡検出部310は、第1の短絡検出端子CO1及び第2の短絡検出端子CO2に直接に、又はダイオードD1、D2(広義には所与の回路素子)を介して接続される。そして例えば、第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2の少なくとも一方と、第1、第2の装着検出端子DT1、DT2の少なくとも一方との間の短絡により、第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2に本来印加されることのない高い電圧が印加されたこと(異常電圧の印加)を、検出ノードNDの電圧と参照電圧との比較に基づいて検出する。即ち、検出ノードNDの電圧が参照電圧より高くなる場合に、短絡(異常電圧)を検出する。短絡検出部310は、短絡を検出すると、高電圧制御部360に対して短絡検出信号VSHTを出力し、高電圧制御部360は、短絡検出信号VSHTに基づいて、電圧印加部320に対して制御信号VCNTを出力する。電圧印加部320は、高電圧制御部360からの制御信号VCNTに基づいて、装着検出用電圧VHOの供給を停止する。
【0103】
ここで、参照電圧は、上記の短絡が生じた場合に、記憶装置203(或いは、CO検出部340などの回路)が破壊されない電圧値に設定される。こうすることで、短絡検出部310は、検出ノードNDの電圧が記憶装置203などの回路を破壊する電圧値に到達する前に、短絡を検出することができる。
【0104】
通信処理部350は、出力回路OB1〜OB4及び入出力回路IOBを有する。出力回路OB1〜OB4は、回路基板450に設けられたリセット端子CRST、クロック端子CSCK、電源端子CVDD、接地端子CVSSに信号又は電圧をそれぞれ出力する。また、入出力回路IOBは、回路基板450に設けられたデータ端子CSDAに対してデータ信号の入出力を行う。リセット端子CRST、クロック端子CSCK、電源端子CVDD、接地端子CVSS、データ端子CSDAは、印刷材収容体100に設けられたリセット端子RST、クロック端子SCK、電源端子VDD、接地端子VSS、データ端子SDAにそれぞれ接続される。出力回路OB1〜OB4及び入出力回路IOBの詳細な構成は、後述する。
【0105】
先に図6(A)に示したように、第1の短絡検出端子CO1と第1の装着検出端子DT1とは隣り合っており、第2の短絡検出端子CO2と第2の装着検出端子DT2とは隣り合っている。そのために、例えば導電性のインク等が基板200の端子側に付着することで、隣り合っている2つの端子CO1とDT1、或いはCO2とDT2が導電性のインク等によって短絡(リーク)する可能性がある。また、第1の装着検出端子DT1と電源端子VDDとが短絡したり、第2の装着検出端子DT2とデータ端子SDAとが短絡したりする可能性もある。
【0106】
上述したように、装着検出部330による装着検出時には、装着検出用電圧VHOが第1の装着検出端子DT1に印加される。従って、導電性インク等により第1、第2の装着検出端子DT1、DT2と第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2とが短絡(リーク)している場合には、装着検出時にCO検出部340に高電圧が印加されるおそれがある。また、第1、第2の装着検出端子DT1、DT2と電源端子VDD又はデータ端子SDAとが短絡している場合には、記憶装置203に高電圧が印加されるおそれがある。
【0107】
本実施形態の印刷装置によれば、短絡検出部310が端子間に短絡が発生している可能性があることを検出し、短絡が発生している可能性があることが検出された場合には、電圧印加部320が装着検出用電圧VHOの供給を停止することができる。
【0108】
具体的には、例えば図8のB1に示すように、DT1とCO1とが短絡している場合には、DT1からCO1へ、そしてCO1から検出ノードNDへダイオードD1の順方向電流が流れ、その結果、検出ノードNDの電位が上昇する。また、図8のB2に示すように、DT2とCO2とが短絡している場合には、DT2からCO2へ、そしてCO2から検出ノードNDへダイオードD2の順方向電流が流れ、その結果、検出ノードNDの電位が上昇する。短絡検出部310は、この検出ノードNDの電圧と参照電圧とを比較することで、短絡を検出することができる。
【0109】
また、本実施形態の印刷装置によれば、制御部300は、電圧印加部320が第1の装着検出端子DT1に装着検出用電圧VHOを印加する際に、複数の記憶装置用端子(メモリー端子)RST、SCK、VDD、VSS、SDAを高インピーダンス状態(フローティング状態)に設定する。こうすることで、例えばDT1とCO1及びVDD、或いはDT2とCO2及びSDAとが短絡している場合であっても、装着検出時に記憶装置203に高電圧が印加される前に、短絡検出部310が過電圧がノードNDに印加されたことを検出し、これに基づき制御部300が装着検出用電圧VHOの供給を停止するので、記憶装置203に、記憶装置203の最大定格以上の電圧が印加されることを防止できる。
【0110】
このように、本実施形態の印刷装置によれば、インクなどの印刷材の付着等による端子間の短絡が発生した場合であっても、装着検出時において記憶装置203に高電圧が印加される可能性を少なくすることができる。また、記憶装置203へのアクセス前にメモリー端子を同一電位にし、アクセス中には高電圧の印加を停止することができる。その結果、確実で安全な装着検出及び信頼性の高いメモリーアクセスを実現することなどができる。
【0111】
図9は、本実施形態の印刷装置における装着検出及びメモリーアクセスのフローチャートである。上述したように、本実施形態の印刷装置では、インクカートリッジ100に設けられた記憶装置203にインク情報(例えば、インクカートリッジ内のインク使用量、インクカートリッジの製造情報など)が記憶される。このインク情報は、ヘッドのクリーニングや、印刷実行によりインクカートリッジ内のインクが所定単位量消費される毎に、或いは印刷装置の電源オフ時などに、主制御部400により、制御部300を介して記憶装置203に書き込まれる。また、インク量情報は、印刷装置の電源オン時に、主制御部400の要求により、制御部300を介して、記憶装置203から読み出される。このフローは主制御部400と制御部300の制御により実行される。
【0112】
メモリーアクセスの時を除き、印刷装置の電源がオンになった以降、主制御部400と制御部300は、メモリー端子を常に高インピーダンス状態に設定している。また、装着検出とCO検出を、常に、若しくは、定期的に実行している。なお、CO検出(カートリッジアウト検出)は、メモリーアクセス中でも実行される。
【0113】
主制御部400がメモリーアクセスを開始すると、まず、装着検出を停止する。すなわち、VHOを印加して装着検出をする処理を停止する(ステップSP1)。
【0114】
ステップSP2では、メモリー端子を高インピーダンス状態HZからGNDレベル(接地レベル、VSSレベル)に設定する。このときにCO端子(CO1もしくはCO2)とメモリー端子間例えばCO1−VDD間、CO2−SDA間)に短絡が発生している場合には、CO検出部340が短絡を検出することができる。
【0115】
ステップSP3では、印刷材収容体100が正常であるか否かを判断する。即ち、印刷材収容体100が適正に装着され、且つ、端子間の短絡が発生していないかどうかを判断する。正常である場合には次のステップSP4に進み、正常でない場合にはエラー処理が実行される。エラー処理は、例えば表示部430にエラーメッセージを表示するなどの処理である。
【0116】
ステップSP4では、記憶装置203へのメモリーアクセスが行われる。即ち、制御部300が各メモリー端子に必要な信号及び電源電圧を供給して、記憶装置203に対してデータの書き込み処理、若しくは読み出し処理を行う。
【0117】
ステップSP5では、メモリーアクセスが正常に行われたか否かを判断する。具体的には、書き込み時には、制御部300が記憶装置203に対して、書き込みコマンドと書き込みデータを送信した後の所定のタイミングで、記憶装置203から制御部300に対して書き込み完了信号が送信される。この書き込み完了信号の受信により、制御部300はメモリーアクセスが正常に完了したかどうか判断する。読み出し時には、記憶装置203から読み出され、制御部300に送信されたデータにはパリティビットが付加されているのでパリティチェックを行い、記憶装置203から読み出されたデータが正常であるか否かを判定することができる。メモリーアクセスが正常である場合にはステップSP6に進み、正常でない場合にはエラー処理が実行される。
【0118】
メモリーアクセスが正常に終了すると、ステップSP6では、メモリー端子をGNDレベルに設定する。ここでCO検出部340によるカートリッジアウト検出を行うことができる。このときに端子間の短絡(例えばCO1−VDD、CO2−SDA)が発生している場合には、CO検出部340が短絡を検出することができる。
【0119】
ステップSP7では、装着検出用電圧VHOを装着検出端子DT1、DT2に印加して、装着検出を再開する。
【0120】
ステップSP8では、メモリー端子を高インピーダンス状態HZに設定する。ここで端子間の短絡(例えばDT1−CO1、DT2−CO2)が発生している場合には、短絡検出部310がこれを検出することができる。
【0121】
図9のフローチャートに示すように、本実施形態の印刷装置によれば、メモリー非アクセス時には、メモリー端子を高インピーダンス状態とすることで、装着検出端子DT1、DT2と短絡検出端子CO1、CO2が短絡すれば、メモリー端子も装着検出端子DT1、DT2と短絡している可能性があるとしてVHOの印加を停止し、記憶装置203にVHOが印加される可能性を低くすることができる。その結果、装着検出を実行しつつ、信頼性の高いメモリーアクセスを実現することなどができる。
【0122】
図10(A)〜図10(D)に、出力回路OB1〜OB4及び入出力回路IOBの詳細な構成例を示す。図10(A)はOB1、OB2、図10(B)はOB4、図10(C)はOB3、図10(D)はIOBの各構成例である。出力回路OB1、OB2、OB3、OB4、入出力回路IOBは、それぞれ図3のバッファー回路BR1、BC1、BD1、BS1、IO1(又はBR2、BC2、BD2、BS2、IO2)に対応する。なお、本実施形態の出力回路OB1〜OB4及び入出力回路IOBは図10(A)〜図10(D)の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0123】
図10(A)に示すように、出力回路OB1、OB2は、P型トランジスターTP1、TP2及びN型トランジスターTN1、TN2、TN3を含む。TP1、TN1は、静電気放電(ESD)による素子破壊(静電破壊)を防止するためのものである。TP2、TN2は、制御信号S1、S2によりそれぞれ制御され、端子CSCK(又はCRST)をHレベル、Lレベル、又は高インピーダンス状態に設定する。具体的には、S1、S2が共にLレベルである場合には端子CSCK(CRST)はHレベルに設定され、S1、S2が共にHレベルである場合にはLレベルに設定され、S1がHレベルでS2がLレベルである場合は高インピーダンス状態に設定される。TN3は制御信号S3により制御され、正常時にはS3はLレベルであるが、例えば高電圧が検出されるなどの異常時にはS3がHレベルになり、端子CSCK(CRST)をLレベルに引き下げるための増幅用バッファーとして動作する。
【0124】
図10(B)に示すように、出力回路OB4は、制御信号S4により制御されるP型トランジスターTP4及びN型トランジスターTN4を含む。制御信号S4がHレベルである場合には端子CVSSはVSSレベル(接地レベル)に設定され、S4がLレベルである場合には高インピーダンス状態に設定される。TP4は静電破壊防止用素子であり、またTN4は静電破壊防止用素子としても動作する。
【0125】
図10(C)に示すように、出力回路OB3は、制御信号S5により制御されるP型トランジスターTP5及び制御信号S6により制御されるN型トランジスターTN5を含む。制御信号S5、S6が共にLレベルである場合には端子CVDDはVDDレベルに設定され、S5、S6が共にHレベルである場合には端子CVDDはVSSレベルに設定される。またS5がHレベルでS6がLレベルである場合は高インピーダンス状態に設定される。なお、TP5、TN5は静電破壊防止用素子としても動作する。
【0126】
図10(D)に示すように、入出力回路IOBは、P型トランジスターTP6、TP7、TP11及びN型トランジスターTN6、TN7、TN8、TN11を含む。TP6、TN6は静電破壊防止用素子である。TP7、TN7は制御信号S7、S8によりそれぞれ制御される。具体的には、S7、S8が共にLレベルである場合には端子CSDAはHレベルに設定され、S7、S8が共にHレベルである場合にはLレベルに設定され、S7がHレベルでS8がLレベルである場合は高インピーダンス状態に設定される。また、TP11及びTN11はトランスミッションゲート(アナログスイッチ)を構成し、制御信号S11、S12によりオン・オフされる。具体的には、端子CSDAが出力端子として用いられる場合には、S11がHレベル、S12がLレベルに設定されてトランスミッションゲートがオフ状態となる。一方、端子CSDAが入力端子として用いられる場合には、S11がLレベル、S12がHレベルに設定されてトランスミッションゲートがオン状態となり、端子CSDAに入力されたデータ信号がトランスミッションゲートを通過することができる。
【0127】
このように図10(A)〜図10(D)の出力回路OB1〜OB4及び入出力回路IOBにより、メモリー端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAを装着検出時には高インピーダンス状態に設定し、メモリーへのアクセス前にはVSSレベル(広義には一定の電圧レベル)に設定することができる。なお、制御信号S1〜S9、S11、S12は、上述した装着検出及びメモリーアクセスのフロー(図9)に従って、制御部300により生成される。
【0128】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また回路装置、記憶装置、印刷材収容体、印刷装置等の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定に限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0129】
10 回路装置、100 印刷材収容体、110 インク供給口、
120 インク収容室、131,132 穴、134 凹凸嵌合部、
200 基板、201 ボス溝、202 ボス穴、203 記憶装置、
300 制御部、310 短絡検出部、320 電圧印加部、
330 装着検出部、340 CO検出部、350 通信処理部、
360 高電圧制御部、400 主制御部、410 CPU、
420 メモリー、430 表示部、441 低電圧電源、
442 高電圧電源、450 回路基板、1000 印刷装置、
1100 カートリッジ装着部、1200 カバー、1300 操作部、
BC1,BD1,BR1,BS1,IO1 バッファー回路、
BUS バス、CCO1 短絡検出端子、CDT1 装着検出端子、
CO1 短絡検出端子、CRST リセット端子、CSCK クロック端子、
CSDA データ端子、CVDD 電源端子、CVSS 接地端子、
DT1 装着検出端子、IOB 入出力回路、
LD,LS,LPD1,LPS1 配線、MBS 共通バス、
OB1 出力回路、P_SCK1 クロック端子、P_SDA1 データ端子、
P_VDD1 高電位側電源供給端子、P_VSS1 低電位側電源供給端子、
P_XRST1 リセット端子、PG1 第1端子群、
RD 装着検出用抵抗素子、RST リセット端子、S1 制御信号、
SCK クロック端子、SDA データ端子、TCV1 テスト端子、
TG1 端子群、TN1 N型トランジスター、TP1 P型トランジスター、
TVD 高電位側電源端子、TVS 低電位側電源端子、VCNT 制御信号、
VDD 高電位側電源電圧、VDD1 高電位側電源端子、
VHO 装着検出用電圧、VHV 高電圧の電源電圧、VSHT 短絡検出信号、
VSS 低電位側電源電圧、VSS1 低電位側電源端子、cp 接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の印刷材収容体に設けられる複数の記憶装置と通信を行う回路装置であって、
高電位側電源電圧及び低電位側電源電圧の一方が供給される第1電位電源端子と、
前記高電位側電源電圧及び前記低電位側電源電圧の他方が供給される第1の第2電位電源端子及び第2の第2電位電源端子と、
前記第1電位電源端子と前記第1の第2電位電源端子との間に設けられる第1端子群と、
前記第1電位電源端子と前記第2の第2電位電源端子との間に設けられる第2端子群と、
を含み、
前記第1端子群は、
前記第1電位電源端子からの電源電圧を、前記複数の記憶装置のうちの第1記憶装置に対して供給する第1の第1電位電源供給端子と、
前記第1の第2電位電源端子からの電源電圧を、前記第1記憶装置に対して供給する第1の第2電位電源供給端子と、
を有し、
前記第2端子群は、
前記第1電位電源端子からの電源電圧を、前記複数の記憶装置のうちの第2記憶装置に対して供給する第2の第1電位電源供給端子と、
前記第2の第2電位電源端子からの電源電圧を、前記第2記憶装置に対して供給する第2の第2電位電源供給端子と、
を有し、
前記第1端子群の少なくとも前記第1の第1電位電源供給端子及び前記第1の第2電位電源供給端子と、前記第2端子群の少なくとも前記第2の第1電位電源供給端子及び前記第2の第2電位電源供給端子とは、前記第1電位電源端子に対して端子の配置順が対称であることを特徴とする回路装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1端子群が有する端子の中で前記第1の第1電位電源供給端子が前記第1電位電源端子に最も近く、
前記第2端子群が有する端子の中で前記第2の第1電位電源供給端子が前記第1電位電源端子に最も近いことを特徴とする回路装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記第1端子群が有する端子の中で前記第1の第2電位電源供給端子が前記第1の第2電位電源端子に最も近く、
前記第2端子群が有する端子の中で前記第2の第2電位電源供給端子が前記第2の第2電位電源端子に最も近いことを特徴とする回路装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記第1端子群は、
前記第1の第1電位電源供給端子及び前記第1の第2電位電源供給端子からの電源電圧に基づくデータ信号、リセット信号、クロック信号を、それぞれ前記第1記憶装置に対して供給する第1データ端子、第1リセット端子、第1クロック端子を有し、
前記第2端子群は、
前記第2の第1電位電源供給端子及び前記第2の第2電位電源供給端子からの電源電圧に基づくデータ信号、リセット信号、クロック信号を、それぞれ前記第2記憶装置に対して供給する第2データ端子、第2リセット端子、第2クロック端子を有し、
前記第1データ端子、前記第1リセット端子及び前記第1クロック端子と、前記第2データ端子、前記第2リセット端子及び前記第2クロック端子とは、前記第1電位電源端子に対して端子の配置順が対称であることを特徴とする回路装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1データ端子、前記第1リセット端子及び前記第1クロック端子は、前記第1の第1電位電源供給端子と前記第1の第2電位電源供給端子との間に配置され、
前記第2データ端子、前記第2リセット端子及び前記第2クロック端子は、前記第2の第1電位電源供給端子と前記第2の第2電位電源供給端子との間に配置されることを特徴とする回路装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記第1電位電源端子及び前記第1の第2電位電源端子のいずれか一方からの前記高電位側電源電圧を、前記第1の第1電位電源供給端子に対して出力する第1バッファー回路と、
前記第1電位電源端子又は前記第2の第2電位電源端子からの前記高電位側電源電圧を、前記第2の第1電位電源供給端子に対して出力する第2バッファー回路と、
を含むことを特徴とする回路装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1記憶装置に対する非アクセス時には、前記第1バッファー回路は、前記第1の第1電位電源供給端子を高インピーダンス状態に設定し、
前記第2記憶装置に対する非アクセス時には、前記第2バッファー回路は、前記第2の第1電位電源供給端子を高インピーダンス状態に設定することを特徴とする回路装置。
【請求項8】
請求項6又は7において、
前記回路装置の端子配置領域に沿って配線され、前記第1電位電源端子に接続された第1電源配線と、
前記端子配置領域に沿って配線され、前記第1の第2電位電源端子及び前記第2の第2電位電源端子に接続された第2電源配線と、
を含み、
前記第1電源配線及び前記第2電源配線は、
前記第1の第1電位電源供給端子のI/O領域に配置された前記第1バッファー回路、及び前記第2の第1電位電源供給端子のI/O領域に配置された前記第2バッファー回路の上に配線され、前記第1バッファー回路及び前記第2バッファー回路に対して前記高電位側電源電圧及び前記低電位側電源電圧を供給することを特徴とする回路装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかにおいて、
前記高電位側電源電圧及び前記低電位側電源電圧の前記一方が供給される第2の第1電位電源端子と、
前記第2の第1電位電源端子と前記第2の第2電位電源端子との間に設けられる第3端子群と、
を含み、
前記第1の端子群は、
前記複数の記憶装置である第1〜第n記憶装置のうち前記第1記憶装置に対して、電源電圧と制御信号を供給し、
前記第2の端子群は、
前記第1〜第n記憶装置のうち前記第2記憶装置及び第3〜第n−1記憶装置に対して、共通のバスを介して電源電圧と制御信号を供給し、
前記第3端子群は、
前記第1〜第n記憶装置のうち第n記憶装置に対して、電源電圧と制御信号を供給することを特徴とする回路装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載された回路装置と、
前記複数の記憶装置が設けられた前記複数の印刷材収容体と、
を含むことを特徴とする印刷装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記高電位側電源電圧及び前記低電位側電源電圧を前記回路装置に対して供給する主制御部を含むことを特徴とする印刷装置。
【請求項12】
請求項10又は11において、
前記回路装置が設けられた回路基板が設けられ、前記複数の印刷材収容体が装着される装着部を含むことを特徴とする印刷装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate