説明

回転する機械、特に蒸気タービンのためのロータ

【課題】回転する機械、特に蒸気タービンのための、ロータ(10,20,30)において、密度が減じられた金属構造体、例えば金属発泡体の利点を利用して、遠心力及び温度差による負荷に関して、より高い負荷にさらすことのできるものを提供する。
【解決手段】ロータ(10,20,30)の少なくとも部分領域(16,23)が、密度を減じられた、微細に分配された多数の中空室(31)を有する金属構造体から構成されているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する機械の分野に関連している。本発明は、回転する機械、特に蒸気タービンのためのロータに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンのロータは、遠心力及び温度差により大きい負荷にさらされている。主に遠心力はロータの構成可能な直径を制限し、温度差は、LCF(Low Cycle Fatigue:低サイクル疲労)負荷に基づき耐用寿命を減じる。
【0003】
これまではロータは、リングとリングとを溶接したロータにおいて生じるような、大きい中空室を部分的に使用して、特に鋼合金より作製される(例えば、国際公開第2004/101209号パンフレット参照)。
【0004】
さらに金属を発泡し、これにより、多孔性の金属構造体を作製することが公知である。数多くの試みがアルミニウム発泡体によりなされた(例えば、US−B1−6,840,301号(アメリカ再審査証明書)明細書参照)。同様に発泡は原理的にあらゆる金属において可能であり、したがって、鋼でも可能であることが公知である(アメリカ特許公開第6,263,953号明細書参照)。この場合に、金属発泡体は閉じられた表面を有している。したがって、発泡構造は外側からは見ることができない。
【特許文献1】国際公開第2004/101209号パンフレット
【特許文献2】US−B1−6,840,301号(アメリカ再審査証明書)
【特許文献3】アメリカ特許公開第6,263,953号明細書
【特許文献4】アメリカ特許公開第4,661,043号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の課題は、ロータにおいて、密度が減じられた金属構造体、例えば金属発泡体の利点を利用して、遠心力及び温度差による負荷に関して、より高い負荷にさらすことのできるものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決した本発明による手段によれば、ロータの少なくとも部分領域が、密度を減じられた、微細に分配された多数の中空室を有する金属構造体より構成されていることが重要である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるロータの第1の構成が、密度を減じられた金属構造体が金属発泡体を有しており、この金属発泡体が鋼発泡体又はニッケルをベースとした合金の発泡体であり、金属構造が閉じられた表面を有していることを特徴とする。
【0008】
択一的な第2の構成が、密度を減じられた金属構造体が、中空室を形成した状態で交差する、互いに結合された、特に溶接、ねじ止め又はリベット締めされた多数の薄板を有していることにより優れている。
【0009】
密度を減じられた金属構造体を有する部分領域は、ロータの製造プロセスでロータに一体成形されていてよい。
【0010】
しかしながら、密度を減じられた金属構造体を有する部分領域が別個のエレメントとして形成されており、残りのロータに結合されており、この場合に別個のエレメントが残りのロータに少なくとも形状接続的に結合されており、かつ/又は残りのロータに溶接されているか、又は収縮嵌めにより残りのロータにつなぎ合わされていることも可能である。
【0011】
密度を減じられた金属構造体を有する部分領域は、有利にはこの部分領域に結びついた重量低減及び/又は減じられた熱伝導率が有利であるロータ箇所に設けられている。特にロータが補償ピストンを有している場合には、この補償ピストンに、外側に環状に延びる形で、密度を減じられた金属構造体を有する部分領域が設けられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に本発明の実施の形態を図面につきさらに詳しく説明する。
【0013】
図1には、簡易化された縦断面図で、蒸気タービンのための本発明によるロータの第1実施例が示されている。このロータ10はロータ軸線18に対してほぼ回転対称的になっている。このロータ10は中実に図示されているが、しかしながら、内部には中空室を有していてもよい。ロータ10は両方のロータ端部11,13にローラ継手12,14を有しており、これらのロータ継手12,14により、ロータ10は軸又はこれに類するものに結合することができる。ロータ10の中央の区分には翼配列17が設けられており、この翼配列17では、蒸気タービンを貫流する蒸気が作業を行う。この場合に生じる軸線方向の剪断力を補償するためには、ロータ10には公知のように(アメリカ特許公開第4,661,043号明細書)補償ピストン15が設けられている。
【0014】
本発明によるロータが、いま部分的又は完全に金属発泡体、有利には鋼発泡体より成っているか、又は極めて高温の場合にはニッケルをベースとした合金の発泡体より成っている。部分的には金属発泡体より成っており、部分的には発泡されていない金属より成っているロータの構造が有利である。この場合に発泡されていない、すなわち従来の金属は、特に翼遠心力に基づき高く負荷されている箇所で使用される。発泡された金属は、特にこの発泡された金属に結びついた重量節約による効果、又はこの発泡された金属に結びついた低い熱伝導率に基づく効果が有利となる箇所で使用される。図1に示したように、このような箇所がまず第1に補償ピストン15である。
【0015】
例えば、1変化実施例では、ロータ10の、補償ピストン15の領域内に外側に環状に延びる部分領域16が金属発泡体より作製され、しかしながら、ロータ中央部は発泡されていない金属より作製される(図1、図2及び図3)。
【0016】
金属発泡体が、ロータの選択された箇所でのみ望まれる場合には、採用プロセスに基づきロータ内に局部的にのみ形成することができる(図1)。又は金属発泡体は別個に作製され、次いでまずロータに結合される(図2及び図3)。
【0017】
しかしながら、金属発泡体の代わりに、微細に分配された中空室を有する別の金属構造を使用することもできる(図4及び図5の部分領域23)。例えば、このような中空室構造は、交差する薄板を溶接することにより形成することができる(図5)。
【0018】
補償ピストンの上に述べた構造は次のような利点を有している。補償ピストンの減じられた重量に基づき、ローラ中央の遠心力負荷が著しく減じられている。しかしながら、ロータのロータ中央部が発泡されていない金属より成っている場合には、しかしながら、そこでは従来のロータと等しい負荷に耐えることができる。これにより、より一層大きい補償ピストンが実施可能である。
【0019】
さらに、気泡に基づき、発泡体内の熱伝導率が減じられている。特に流入部の領域内に位置決めされており、それ故、最も熱い蒸気により周囲を流れられる補償ピストンの、金属発泡体より成る表面の領域では、遙かにわずかな熱がロータ内へもたらされる。これにより、熱的な負荷が減じられ、これにより、ロータの耐用寿命が増大する。さらに、ロータ内への比較的低い熱の導入により、補償ピストンの場合にはピストン側のロータ端部(図1の符号11)及びロータ中央部では温度がより低く、これにより、ロータの剛性がそこではさらに増大さえする。
【0020】
図1は、補償ピストン15の環状の部分領域16に金属発泡体を有する、本発明の実施例を示している(図1には断面されたロータの上半分が示されている)。部分領域16の表面では金属発泡体は閉じられており、これにより、内側の(多孔性の)金属構造は外部からは見ることができず、蒸気は金属発泡体の細孔内へは進入することができない。
【0021】
別の実施例が図2及び図3に示されている。上に説明した図1の実施例と同様に、補償ピストン15の外側領域に設けられた部分領域16は金属発泡体により充填されている。しかしながら、この領域はここでは残りのロータ20とは別個に作製された構成部分であり、この構成部分は溶接継ぎ目22によりロータ20に気密に結合されている。さらにこの発泡された構成部分16は、半径方向内側に設けられた境界面19で、形状接続的な(formschluessig)結合を介してロータ20に結合されており、これにより、ロータ20の回転時に作用する遠心力を金属発泡体16からロータ20へ伝達することができる。図3はこのような形状接続的な結合部を、補償ピストン15の横断面図で示している。発泡された構成部分16を残りのロータ20とは別個に作製することは、残りのロータ20を、材料欠陥に関して超音波を用いてより良好に検査することができるという利点を有している。
【0022】
第3実施例では、気密な溶接継ぎ目22が補償ピストン15に向かい合った溶接継ぎ目21により代替される。ほかの点では第2実施例と同一である。
【0023】
第4実施例は、図3による形状接続的な結合及び図2による溶接継ぎ目21,22の代わりに、部分領域16がいまや収縮嵌めによりロータ20に載置されているという相違点を除いては第2実施例及び第3実施例と同じである。
【0024】
図4は第5実施例を示している。多孔性の金属発泡体の代わりに、ここでは補償ピストン15の外側の部分領域23には、微細に分配された複数の中空室31を設けられた金属構造体が使用されており、この金属構造体は、本実施例では境界面19でロータ30に収縮嵌めされている。
【0025】
図5は、金属構造体を有する部分領域23を拡大して示している。この部分領域23は外側をより厚い外側薄板26,27,28,29により取り囲まれており、内部には垂直方向の平面及び水平方向の平面により、薄い内側薄板24若しくは25が取り付けられている。本実施例では、内側薄板24,25は全て溶接により互いに結合されているが、溶接継ぎ目は図5には示されていない。
【0026】
第6実施例は第5実施例に対応しているが、しかしながら、中空室構造体の内側薄板24,25はねじ止めにより互いに結合されている。
【0027】
第7実施例は同様に第5実施例に対応しているが、しかしながら、金属構造体の内側薄板24,25はリベット締めにより互いに結合されている。
【0028】
内側薄板24,25の数及び分配及びこれにより形成された中空室31の大きさ及び分配は、部分領域23の機械的な安定性及び熱伝導率のためには重要である。これらは要求に応じて選択及び規定する必要がある。同様のことが、部分領域(図1,図2の符号16)のために金属発泡体が使用される場合の細孔の大きさ及び分配についてもいえる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】補償ピストンを有する蒸気タービンのための本発明によるロータの第1実施例の概略的な縦断面図である。
【図2】補償ピストンを有する蒸気タービンのための本発明によるロータの第2実施例の図1に比較可能な縦断面図である。
【図3】図2による補償ピストンの横断面図である。
【図4】補償ピストンを有する蒸気タービンのための本発明によるロータの第3実施例の図1に比較可能な縦断面図である。
【図5】図4の外側の補償ピストン部分領域の金属構造体を拡大した縦断面図である。
【符号の説明】
【0030】
10,20,30 ロータ(蒸気タービン)、 11 ロータ端部(ピストン側)、 12 ロータ継手(ピストン側)、 13 ロータ端部(排蒸気側)、 14 ロータ継手(排蒸気側)、 15 補償ピストン、 16,23 部分領域(補償ピストン)、 17 翼配列、 18 ロータ軸線、 19 境界面、 21,22 溶接継ぎ目、 24,25 内側薄板、 26,27,28,29 外側薄板、 31 中空室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する機械、特に蒸気タービンのための、ロータ(10,20,30)において、該ロータ(10,20,30)の少なくとも部分領域(16,23)が、密度を減じられた、微細に分配された多数の中空室(31)を有する金属構造体から構成されていることを特徴とする、回転する機械、特に蒸気タービンのためのロータ(10,20,30)。
【請求項2】
密度を減じられた金属構造体が、金属発泡体を有している、請求項1記載のロータ。
【請求項3】
金属発泡体が、鋼発泡体である、請求項2記載のロータ。
【請求項4】
金属発泡体が、ニッケルをベースとした合金の発泡体である、請求項2記載のロータ。
【請求項5】
金属構造体が、閉じられた表面を有している、請求項2から4までのいずれか1項記載のロータ。
【請求項6】
密度を減じられた金属構造体が、中空室(31)を形成した状態で交差する、互いに結合された、特に溶接、ねじ止め又はリベット締めされた薄板(24,25)を有している、請求項1記載のロータ。
【請求項7】
密度を減じられた金属構造体を有する部分領域(16)が、ロータ(10,20,30)に一体成形されている、請求項1記載のロータ。
【請求項8】
密度を減じられた金属構造体を有する部分領域(16)が、別個のエレメントとして形成されており、残りのロータ(10,20,30)に結合されている、請求項1記載のロータ。
【請求項9】
前記別個のエレメント(16)が、残りのロータ(10,20,30)に、少なくとも形状接続的に結合されている、請求項8記載のロータ。
【請求項10】
別個のエレメント(16)が、残りのロータ(10,20,30)に溶接されている、請求項8記載のロータ。
【請求項11】
別個のエレメント(16)が、残りのロータ(10,20,30)に、収縮嵌めによりつなぎ合わされている、請求項8記載のロータ。
【請求項12】
密度を減じられた金属構造体を有する部分領域(16)が、該部分領域(16)に結びついた重量低減及び/又は減じられた熱伝導率が有利となるロータ(10,20,30)の箇所に設けられている、請求項1から11までのいずれか1項記載のロータ。
【請求項13】
ロータ(10,20,30)が、補償ピストン(15)を有しており、該補償ピストン(15)に外側に環状に延びる形で、密度を減じられた金属構造体を有する部分領域(16,23)が設けられている、請求項12記載のロータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−283760(P2006−283760A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94864(P2006−94864)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】