説明

回転コネクタ

【課題】ロータハウジングとステータハウジングとの摺動による異音の発生を抑制できる回転コネクタを提供すること。
【解決手段】中心孔7aを有する下カバー(底板)7の外縁部に外筒体6が立設されたステータハウジング1と、天板8aおよび内筒体8bを有してステータハウジング1に回転可能に装着された上部ロータ8と、筒状部9aおよび環状鍔部9bを有して筒状部9aが内筒体8bに固定される下部ロータ9と、環状の収納空間3内に巻き締めおよび巻き戻し可能に収納されたフラットケーブル5とを備えた回転コネクタにおいて、下カバー7の内縁部に軸線方向に起立する起立部7cを設け、この起立部7cの内周面が筒状部9aの摺動面となるように起立部7cを筒状部9aと対向させると共に、内筒体8bの底部と環状鍔部9bとの間に起立部7cを配置させ、上部ロータ8および下部ロータ9の軸線方向と径方向の移動が起立部7cによって抑制されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転可能に組み合わされたステータハウジングとロータハウジングとが可撓性ケーブルによって電気的に接続されている回転コネクタに係り、特に、スナップ結合などで一体的に連結された上部ロータと下部ロータとによってロータハウジングが構成されている回転コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
回転コネクタは、自動車のステアリング装置に具備されるコンビネーションスイッチの組立体等に固定されるステータハウジングと、ステアリングホイール側に取り付けられるロータハウジングと、これら両ハウジング間に形成された環状の収納空間内に収納された可撓性ケーブル等を備えており、回転数が有限であるステアリングホイールに付設されたエアバッグ・インフレータ等の電気的接続手段として使用されている。
【0003】
従来より、このような回転コネクタにおいて、ロータハウジングを上部ロータと下部ロータとによって構成し、組立工程の最終段階で下部ロータを上部ロータに結合して両者を一体化することにより、ステータハウジングに対してロータハウジングを回転可能に装着するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。図8はかかる従来の回転コネクタの概略構成を説明するための断面図であり、同図に示す回転コネクタは、ステータハウジング20と、このステータハウジング20に回転可能に装着されたロータハウジング21と、これら両ハウジング20,21間に形成された環状の収納空間22内に回動可能に配置された移動体23と、この収納空間22内に巻き締めおよび巻き戻し可能に収納された帯状のフラットケーブル(可撓性ケーブル)24とで概略構成されている。
【0004】
ステータハウジング20は合成樹脂製の外筒体25と下カバー(底板)26をスナップ結合等で一体化して構成されている。外筒体25の上端部には保持壁25aが内方へ向けて突出形成されており、下カバー26の中央には円形の中心孔26aが形成されている。また、ロータハウジング21は合成樹脂製の上部ロータ27と下部ロータ28をスナップ結合等で一体化して構成されており、上部ロータ27にはリング状の天板27aとその内周縁から下方へ延びる内筒体27bが一体成形されている。下部ロータ28には円筒状壁部28aとその下端部から外方へ向けて突出する鍔部28bが一体成形されており、この円筒状壁部28aを内筒体27bの内壁部にスナップ結合等で固定することによって上部ロータ27と下部ロータ28が一体化される。なお、こうして上部ロータ27と下部ロータ28を一体化する際には、上部ロータ27の天板27aの外周縁部を外筒体25の保持壁25aの上面に摺動可能に対向させると共に、下部ロータ28の鍔部28bを下カバー26の内周縁部の下面に摺動可能に対向させればよい。このような構成により、ロータハウジング21は軸線方向のガタが抑制された状態でステータハウジング20に回転可能に装着される。また、鍔部28bの外周面が所要のクリアランスを介して下カバー26と対向させてあるため、ロータハウジング21はステータハウジング20に対して径方向のガタが抑制された状態となっている。
【0005】
収納空間22内には、移動体23とフラットケーブル24とが収納されている。移動体23は複数のローラ23aとリング状の回動板(ローラホルダ)23bとで構成されており、合成樹脂で成形された回動板23bは下カバー26の上面に回動可能に載置されている。各ローラ23aは回動板23bの上面に回転可能に支持されている。また、フラットケーブル24は収納空間22内において特定のローラ23aによって巻き方向を途中で反転させている。なお、図示していないが、フラットケーブル24の長手方向の両端部はリードブロックと接続されており、これらリードブロックはそれぞれステータハウジング20とロータハウジング21の所定位置に固定されている。そして、これらリードブロックに外部コネクタや外部リードを接続することによって、フラットケーブル24が外部回路と電気的に接続されるようになっている。
【0006】
このように構成された回転コネクタでは、ロータハウジング21(上部ロータ27および下部ロータ28)をステータハウジング20(外筒体25および下カバー26)に対して正逆いずれかの方向に回転させると、フラットケーブル24の反転部が上部ロータ27よりも少ない回転量だけ同方向に移動し、それに伴って移動体23も同方向に移動する。その結果、この移動量の約2倍の長さのフラットケーブル24が上部ロータ27の内筒体27b側から繰り出されて外筒体25側に巻き戻されるか、あるいは逆に外筒体25側から繰り出されて内筒体27b側に巻き締められる。
【特許文献1】特開2002−58150号公報(第4−6頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した従来の回転コネクタにおいては、天板27aの外周縁部を外筒体25の保持壁25aの上面に当接させることにより、ロータハウジング21の軸線方向下向きへの移動が抑制され、また、下カバー26の中心孔26aの内周縁部の上面に下部ロータ28の鍔部28bの下面を対向させることにより、ロータハウジング21の軸線方向上向きへの移動が抑制されるようになっている。また、径方向において、天板27aの外周縁部を外筒体25の保持壁25aに対向させると共に、下部ロータ28の鍔部28bの外周縁部を下カバー26と対向させることにより、ロータハウジング21の径方向への移動が所定範囲内に抑制されるようになっている。しかしながら、天板27aの外周縁部はロータハウジング21の回転中心から大きく離れているため、樹脂成形時や高温時の熱膨張等の影響によって、天板27aの外周縁部が反り等の変形や回転時の位置ずれを起こしやすく、且つ天板27aの外周縁部の回転速度は他の部分よりも比較的大きくなっている。それゆえ、ロータハウジング21の回転時に天板27aの外周縁部が外筒体25の保持壁25aに対して滑らかに摺動しなくなり、その摺動部分から異音が発生しやすいという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、ロータハウジングとステータハウジングとの摺動による異音の発生を抑制できる回転コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の回転コネクタは、中心孔を有する底板の外縁部に外筒体が立設されたステータハウジングと、前記底板に対向する天板および前記外筒体に対向する内筒体を有して前記ステータハウジングに回転可能に装着された上部ロータと、前記底板から前記天面に向けて前記中心孔に挿通されて前記内筒体に固定される筒状部および該筒状部から径方向外側へ突出して前記底板と対向する環状鍔部を有する下部ロータと、前記ステータハウジングと前記上部ロータとの間に形成される環状の収納空間内に巻き締めおよび巻き戻し可能に収納され、一端部が前記ステータハウジングに取り付けられて他端部が前記上部ロータに取り付けられた可撓性ケーブルとを備え、前記底板の内縁部に軸線方向に起立する起立部を設けて、この起立部の内周面が前記筒状部の摺動面となるように前記起立部を前記筒状部と対向させると共に、前記内筒体の底部と前記環状鍔部との間に前記起立部を配置させて、前記上部ロータおよび前記下部ロータの軸線方向の移動が前記起立部によって抑制されるように構成した。
【0010】
このように構成された回転コネクタでは、樹脂成形時や高温時の熱膨張等の影響による反り等の変形や回転時の位置ずれが少なく回転速度が比較的小さな回転中心近傍において、ステータハウジングの底板の内縁部に設けた起立部が、内筒体と環状鍔部との間に挟み込まれて上部ロータおよび下部ロータの軸線方向の移動を抑制するため、ステータハウジングに対するロータハウジングの軸線方向の移動を抑制でき、また、この起立部が下部ロータの筒状部の摺動面となるため、ステータハウジングに対するロータハウジングの径方向の移動を抑制でき、よってロータハウジングとステータハウジングとの摺動部分から異音が発生するのを抑制することができる。
【0011】
上記の構成において、上部ロータの内筒体の底面に設けられた環状凹溝に、ステータハウジングの底板とは異種の合成樹脂材の成形品であるリング部材を固定し、このリング部材を底板の起立部に摺接させた場合、リング部材をなす合成樹脂として、底板をなす合成樹脂に対して摩擦抵抗の小さな材料を選択できるため、ステータハウジングとロータハウジング間の摺動をスムーズにして摺動音を発生しにくくすることができて好ましい。また、このようなリング部材を上部ロータと底板との間に介在させることによって、上部ロータと底板を同じ合成樹脂材で成形することができるので、製造条件の設定も容易となって製造上の効率を高めることができる。この場合において、リング部材の底面に複数の突部を形成し、これら突部を起立部の天面に摺接させるという構成を採用すると、突部に塗布されるグリスを複数の突部の周りに溜めておくことができるため、長期に亘ってリング部材を起立部に対して極めて円滑に摺動させることができる。
【0012】
また、上記の構成において、収納空間内に複数のローラを回転可能に支持する回転板を収納し、該回転板の内周部と係合する段差部を内筒体の外周下端部に設け、複数のローラの少なくとも1つで可撓性ケーブルを反転させ、起立部を段差部の径方向内方に配置させることが好ましい。かかる構成を採用すると、起立部の内周部の高さ方向の寸法を大きくすることによって、ステータハウジングに対するロータハウジングの軸線方向のガイド長を大きくしても、回転コネクタの高さ方向の寸法を小さく抑制することが可能となる。
【0013】
また、上記の構成において、下部ロータの筒状部が、上部ロータの内筒体に嵌入される上側筒状部と、該上側筒状部よりも下方に延設されて起立部に対向する下側筒状部とを有し、該下側筒状部の外径寸法が上側筒状部の外径寸法よりも大きく設定されていると、ロータハウジングに装着するステアリングシャフトの外周部とロータハウジングに配設するキャンセル突起の半径方向での位置との間の距離が大きい場合であっても、前記上側筒状部、前記下側筒状部およびこれら上側筒状部と下側筒状部との連設部のそれぞれの肉厚をほぼ均一の厚みで成形できるので、変形がなく寸法精度にも優れた下部ロータを形成でき、ロータハウジングとステータハウジングとの摺動部分から異音が発生するのをより効果的に抑制することができて好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の回転コネクタは、樹脂成形時や高温時の熱膨張等の影響による反り等の変形や回転時の位置ずれが少なく回転速度が比較的小さな回転中心近傍において、ステータハウジングの底板の内縁部に設けた起立部が内筒体と環状鍔部との間に挟み込まれており、かつ、この起立部が下部ロータの筒状部の摺動面となるため、ステータハウジングに対する上部ロータおよび下部ロータの軸線方向の移動を抑制でき、また、この起立部が下部ロータの筒状部の摺動面となるため、ステータハウジングに対するロータハウジングの径方向の移動を抑制でき、よってロータハウジングとステータハウジングとの摺動部分からの異音の発生を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明の実施の形態を図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係る回転コネクタの分解斜視図、図2は図1の回転コネクタの上面図、図3は図2のA−A線に沿う断面図、図4は図3のB部拡大図、図5は図1の回転コネクタに用いられたリング部材の底面形状を示す斜視図、図6は図5のリング部材の底面図、図7は図5のリング部材の側面図である。
【0016】
本実施形態例に係る回転コネクタは、ステータハウジング1と、このステータハウジング1に回転可能に装着されたロータハウジング2と、これら両ハウジング1,2間に形成された環状の収納空間3内に回動可能に配置された移動体4と、この収納空間3内に巻き締めおよび巻き戻し可能に収納された帯状のフラットケーブル(可撓性ケーブル)5とで概略構成されている。
【0017】
ステータハウジング1は合成樹脂製で、POM(ポリアセタール)からなる外筒体6とPBT(ポリブチレンテレフタレート)からなる下カバー(底板)7とをスナップ結合等で一体化して構成されている。外筒体6の外周部には蓋部6aと複数の取付片(図示せず)が一体成形されており、これら取付片はステアリング装置のコンビネーションスイッチの組立体等にネジ止めされるようになっている。下カバー7の中央には円形の中心孔7aが形成されており、下カバー7の外周部には前記蓋部6aと対応する位置に保持部7bが一体成形されている。また、下カバー7の内縁部には軸線方向に起立する円環状の起立部7cが形成されている。なお、本実施形態例では、別々に成形した外筒体6と下カバー7をスナップ結合等で一体化しているが、これら外筒体6と下カバー7を一体成形することも可能である。
【0018】
ロータハウジング2は合成樹脂製で、PBT(ポリブチレンテレフタレート)からなる上部ロータ8とPP(ポリプロピレン)からなる下部ロータ9とをスナップ結合等で一体化して構成されている。ただし、上部ロータ8の底部にはPOM(ポリアセタール)からなるリング部材10が固定されている。この上部ロータ8には、リング状の天板8aとその内周縁から下方へ延びる内筒体8bが一体成形されている。図4に示すように、内筒体8bの底面には内周縁近傍に環状凹溝8cが形成されていると共に、環状凹溝8cの外側に複数の弧状突起8dが形成されている。環状凹溝8cは全周に亘って円環状に延びており、この環状凹溝8c内にリング部材10が圧入等の適宜手段で固定されている。また、弧状突起8dは環状凹溝8cの外周縁に沿って分散配置されており、その外周部には段差部8eが形成されている。ここで弧状突起8dは周方向に連続形成されていてもよく、また、段差部8eは内筒体8bの外周下端部、すなわち内筒体8bの収納空間3に面する側部の下方において、弧状突起8dに沿って形成されている。なお、上部ロータ8の天板8aには保持壁8fと複数の駆動ピン8gが立設されており、これら駆動ピン8gをステアリングホイール(図示せず)に係合させることによって、ステアリングホイールの回転力が駆動ピン8gを介して上部ロータ8に伝達されるようになっている。
【0019】
図5〜図7に示すように、リング部材10の底面には周方向に延びて複数箇所が凹段部10bにより分断された略環状の突堤部(突部)10aが形成されている。図4に示すように、この突堤部10aは下カバー7の起立部7cの天面に摺接するようになっている。また、リング部材10の突堤部10aには摺動特性を高めるためのグリスが塗布され、突堤部10aの周り、特に凹段部10bがグリス溜りとして機能するようになっており、ロータハウジング2の回転に伴って凹段部10b等に溜まったグリスが突堤部10aと起立部7c間に常に供給されるようになっている。
【0020】
一方、下部ロータ9には、略円筒状の筒状部9aとその外周面から径方向外側へ突出する環状鍔部9bが一体成形されている。筒状部9aは、下カバー(底板)7から天板8aへ向けて下カバー7の中心孔7aに挿通されて上部ロータ8の内筒体8bにスナップ結合等で固定されており、こうすることによって、内筒体8bと環状鍔部9bとの間に下カバー7の起立部7cを挟み込むように配置させた状態で、上部ロータ8と下部ロータ9とが一体化されることとなる(図3参照)。
【0021】
すなわち、上部ロータ8と下部ロータ9は、ステータハウジング1を上下方向から挟み込むように組み合わされて一体品のロータハウジング2となる。このときリング部材10の突堤部10aが下カバー7の起立部7cの天面に摺接し、且つ環状鍔部9bが所要のクリアランスを存して起立部7cの底面と対向するように配置されて、ロータハウジング2を構成する内筒体8bの底部と環状鍔部9bとの間に下カバー7の起立部7cが配置されるため、ロータハウジング2(上部ロータ8および下部ロータ9)の軸線方向の移動が起立部7cによって抑制されるようになっている。また、下カバー7の起立部7cの内周面が下部ロータ9の筒状部9aの摺動面となるように、これら筒状部9aの内周面と起立部7cの外周面とが対向して配置されるため、ロータハウジング2の径方向の移動が起立部7cによって抑制されるようになっている。それゆえ、ステータハウジング1とロータハウジング2との摺動部分から異音が発生するのを抑制することができる。
【0022】
なお、下部ロータ9の筒状部9aは、上部ロータ8の内筒体8bに嵌入される上側筒状部9a−1と、上側筒状部9a−1よりも下方に延設されて起立部7cに対向する下側筒状部9a−2とを連設してなり、下側筒状部9a−2の外径寸法が上側筒状部9a−1の外径寸法よりも大きく設定されていることから、ロータハウジング2に設けるキャンセル突起(図示せず)の半径方向の位置がロータハウジング2に装着するステアリングシャフト(図示せず)の外周部から大きく離れている場合であっても、上側筒状部9a−1、下側筒状部9a−2およびこれら上側筒状部9a−1と下側筒状部9a−2との連設部のそれぞれの肉厚をほぼ均一の厚みで成形できる。したがって、下部ロータ9を変形のない高精度の寸法で成形加工することができ、ロータハウジング1とステータハウジング2との摺動部分から異音が発生するのをより効果的に抑制することができる。
【0023】
収納空間3はステータハウジング1の外筒体6および下カバー7とロータハウジング1の天板8aおよび内筒体8bとによって形成されており、この収納空間3内に移動体4とフラットケーブル5が収納されている。移動体4は複数のローラ4aとリング状の回動板(ローラホルダ)4bとで構成されており、合成樹脂で成形された回動板4bは下カバー7の上面に回動可能に載置されている。この回動板4bの内周部は内筒体8bの弧状突起8dおよび段差部8eと係合しているため、回動板4bは径方向および軸線方向に位置規制されている(図4参照)。なお、段差部8eは、内筒体8bの外周下端において弧状突起8dの外周部に沿って形成されている。各ローラ4aは回動板4bの上面に回転可能に支持されている。また、フラットケーブル5は収納空間3内において特定のローラ4aによって巻き方向を途中で反転されている。フラットケーブル5の長手方向の両端部はそれぞれリードブロック(図示せず)と接続されている。一方のリードブロックは下カバー7の保持部7b内に固定されて外筒体6の蓋部6aで覆われており、他方のリードブロックは上部ロータ8の保持壁8f内に固定されている。そして、これらリードブロックに外部コネクタや外部リードを接続することによって、フラットケーブル5が外部回路と電気的に接続されるようになっている。
【0024】
なお、起立部7cは、段差部8eに起立部7cを係合させるように配置するのではなく、図4に示すように段差部8eよりも径方向の内方寄り、すなわち内筒体8bの弧状突起8dよりも径方向内側に配置されるので、起立部7cの内側部の高さ方向の寸法を大きくしてステータハウジング1に対するロータハウジング2の軸線方向のガイド長を大きくしたとしても、回転コネクタの高さ方向の寸法を小さく抑制することが可能である。
【0025】
このように構成された回転コネクタは自動車のステアリング装置に組み込まれて使用されるが、その際、ステータハウジング1(外筒体6および下カバー7)はコンビネーションスイッチの組立体等に固定される。また、ロータハウジング2は、下部ロータ9の筒状部9aがステアリングシャフトに外装されて、上部ロータ8の駆動ピン8gがステアリングホイールに係合される。
【0026】
そして、運転者がステアリングホイールを時計方向あるいは反時計方向に回転操作すると、その回転力が駆動ピン8gを介して上部ロータ8に伝達されるため、ロータハウジング2はステータハウジング1に対して時計方向あるいは反時計方向に回転する。例えば、ステアリングホイールの中立位置から上部ロータ8が時計方向に回転すると、フラットケーブル5の反転部は上部ロータ8よりも少ない回転量だけ時計方向に移動し、それに伴ってフラットケーブル5の反転部が通過する移動体4も時計方向に移動する。その結果、この移動量の約2倍の長さのフラットケーブル5が、収納空間3内で上部ロータ8の内筒体8b側から繰り出されて外筒体6側に巻き戻される。これとは逆にステアリングホイールの中立位置から上部ロータ8が反時計方向に回転すると、フラットケーブル5の反転部は上部ロータ8よりも少ない回転量だけ反時計方向に移動し、それに伴って移動体4も反時計方向に移動する。その結果、この移動量の約2倍の長さのフラットケーブル5が、収納空間3内で外筒体6側から繰り出されて内筒体8b側に巻き締められる。
【0027】
以上説明したように本実施形態例に係る回転コネクタでは、樹脂成形時や高温時の熱膨張等の影響による反り等の変形や回転時の位置ずれが少なく回転速度が比較的小さな回転中心近傍において、ステータハウジング1の下カバー7の内縁部に設けた起立部7cが、ロータハウジング2の内筒体8bの底部と環状鍔部9bとの間に挟み込まれている構成としたため、上部ロータ8および下部ロータ9の軸線方向の移動を抑制でき、また、この起立部7cが下部ロータ9の筒状部9aの摺動面となるため、ステータハウジング1に対するロータハウジング2の径方向の移動を抑制でき、よってステータハウジング1とロータハウジング2との摺動部分から異音が発生しにくくなる。
【0028】
しかも、この回転コネクタは、上部ロータ8の内筒体8bの底面に設けられた環状凹溝8cに、ステータハウジング1の下カバー7とは異種の合成樹脂材からなるリング部材10を固定したため、上部ロータ8と下カバー7を同じ合成樹脂材で成形し、この合成樹脂に対して摩擦抵抗の小さな樹脂材料でリング部材10を形成することにより、ステータハウジング1とロータハウジング2との摺動をスムーズにして摺動音をさらに発生しにくくすることができる。また、上部ロータ8と下カバー7を同じ合成樹脂材で成形することができるので、製造条件の設定も容易となって製造上の効率を高めることができる。
【0029】
また、本実施形態例に係る回転コネクタでは、リング部材10の底面に周方向に延びて複数箇所が分断された略環状の突堤部10aを形成し、これら複数の突堤部10aにグリスを塗布したので、起立部7cに摺接するリング部材10の各突堤部10a間に形成される凹段部10bがグリス溜りとして機能することになり、長期に亘ってリング部材10を起立部7cに対して極めて円滑に摺動させることができる。また、図4に示すように、起立部7cは段差部8eよりも径方向の内方寄り、すなわち内筒体8bの弧状突起8dよりも径方向内側に配置されるので、起立部7cの内側部の高さ方向の寸法を大きくしてステータハウジング1に対するロータハウジング2の軸線方向のガイド長を大きくしたとしても、回転コネクタの高さ方向の寸法を小さく抑制することができる。
【0030】
なお、上記の実施形態例では、上部ロータ8の内筒体8bにリング部材10を固定して、このリング部材10を下カバー7の起立部7cに摺接させているが、上部ロータ8が下カバー7とは異種の合成樹脂材で成形されている場合には、リング部材10を省略して内筒体8bの底面を起立部7cに直接摺接させる構成とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態例に係る回転コネクタの分解斜視図である。
【図2】図1の回転コネクタの上面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図3のB部拡大図である。
【図5】図1の回転コネクタに用いられたリング部材の底面形状を示す斜視図である。
【図6】図5のリング部材の底面図である。
【図7】図5のリング部材の側面図である。
【図8】従来例に係る回転コネクタの断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ステータハウジング
2 ロータハウジング
3 収納空間
4 移動体
5 フラットケーブル(可撓性ケーブル)
6 外筒体
7 下カバー(底板)
7a 中心孔
7c 起立部
8 上部ロータ
8a 天板
8b 内筒体
8c 環状凹溝
9 下部ロータ
9a 筒状部
9b 環状鍔部
10 リング部材
10a 突堤部(突部)
10b 凹段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心孔を有する底板の外縁部に外筒体が立設されたステータハウジングと、前記底板に対向する天板および前記外筒体に対向する内筒体を有して前記ステータハウジングに回転可能に装着された上部ロータと、前記底板から前記天面に向けて前記中心孔に挿通されて前記内筒体に固定される筒状部および該筒状部から径方向外側へ突出して前記底板と対向する環状鍔部を有する下部ロータと、前記ステータハウジングと前記上部ロータとの間に形成される環状の収納空間内に巻き締めおよび巻き戻し可能に収納され、一端部が前記ステータハウジングに取り付けられて他端部が前記上部ロータに取り付けられた可撓性ケーブルとを備え、
前記底板の内縁部に軸線方向に起立する起立部を設けて、この起立部の内周面が前記筒状部の摺動面となるように前記起立部を前記筒状部と対向させると共に、前記内筒体の底部と前記環状鍔部との間に前記起立部を配置させて、前記上部ロータおよび前記下部ロータの軸線方向の移動が前記起立部によって抑制されるようにしたことを特徴とする回転コネクタ。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記内筒体の底面に設けられた環状凹溝に、前記底板とは異種の合成樹脂材の成形品であるリング部材を固定し、このリング部材を前記起立部に摺接させたことを特徴とする回転コネクタ。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記リング部材の底面に複数の突部を形成し、これら突部を前記起立部の天面に摺接させたことを特徴とする回転コネクタ。
【請求項4】
請求項1の記載において、前記収納空間内に複数のローラを回転可能に支持する回転板を収納し、該回転板の内周部と係合する段差部を前記内筒体の外周下端部に設け、前記複数のローラの少なくとも1つで前記可撓性ケーブルを反転させ、前記起立部を前記段差部の径方向内方に配置させたことを特徴とする回転コネクタ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項の記載において、前記筒状部が、前記内筒体に嵌入される上側筒状部と、該上側筒状部よりも下方に延設されて前記起立部に対向する下側筒状部とを有し、該下側筒状部の外径寸法が前記上側筒状部の外径寸法よりも大きく設定されていることを特徴とする回転コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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