説明

回転ダンパ

【課題】ロータの製造容易性を阻害することなく可動体である弁体を予めロータに組み付けたサブアッシィ化を可能にし、更には、弁体の設置箇所の自由度が高く、回動方向の違いでダンパ作用トルクの差異が大きいワンウェイ型の回転ダンパを構成できるようにすること。
【解決手段】ベーンに一体形成されて連通路内に突出した突出部56を含み、当該突出部56によって弁体60が弁座部48より離れる方向への移動量を規制して弁体60を連通路42内に移動可能に保持する弾性変形爪50を設け、弁座部48は弾性変形爪50の突出部56とは、連通路42を貫通する方向の投影面で見て重ならない部位にのみ形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ダンパに関し、特に、ワンウェイ型の回転ダンパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のグローブボックスのリッド等の回動物に用いられる回転ダンパとして、回動物の降下方向の回動時には、その回動に対して大きい抵抗力(ダンパ作用トルク)を与え、それとは逆の上昇方向の回動時には、その回動に対して抵抗力を与えないか或いは小さい抵抗力を与えるワンウェイ型の回転ダンパが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この回転ダンパは、円筒状のロータ室を画定するハウジングと、ロータ室に回転可能に配置されてロータ室を回転することにより流体圧を受けるベーンを具備したロータと、一端をロータに連結され他端がロータ室外に突出した回転入力軸とを有しており、ベーンの先端面部に形成された凹溝状の収容部にコロ形状の可動体が配置されている。
【0004】
この回転ダンパでは、例えば、ロータがハウジングに対して時計廻り方向に回動する場合には、この回動に伴う方向の流体圧によって可動体が収容部の一方の側の傾斜面を駆け上がり、可動体がベーン先端とロータ室内周との間の間隙を塞くことにより、ハウジングとロータとの相対的な回転運動に大きい抵抗を与え、これとは反対に、ロータがハウジングに対して反時計廻り方向に回動する場合には、可動体が時計廻り方向の回動時とは逆の動作をし、可動体がベーン先端とロータ室内周との間の間隙を開放する位置に位置することにより、ハウジングとロータとの相対的な回転運動に大きい抵抗を与えなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−68993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術によるワンウェイ型の回転ダンパは、可動体の組み付けを、ハウジングに対するロータの組み付けと同時に行う必要があり、可動体を予め組み付けたサブアッシィとしてハウジングに組み付けることができない。このため、組立作業性が悪く、可動体を予めロータに組み付けたサブアッシィ状態で、可動体の正常な動き等を確認することができない。
【0007】
また、従来のものは、可動体の設置箇所がベーン先端に限られ、ダンパ作用トルクの設定に制約があり、回動方向の違いでダンパ作用トルクの差異が大きいワンウェイ型の回転ダンパを構成することが難しい。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、ロータの製造容易性を阻害することなく可動体である弁体を予めロータに組み付けたサブアッシィ化を可能にし、更には、弁体の設置箇所の自由度が高く、回動方向の違いでダンパ作用トルクの差異が大きいワンウェイ型の回転ダンパを構成できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による回転ダンパは、円筒状のロータ室(18)を画定するハウジング(12)と、前記ロータ室(18)に回転可能に配置され前記ロータ室(18)を回転することにより流体圧を受けるベーン(26)を具備したロータ(20)と、一端を前記ロータ(20)に連結され他端が前記ロータ室(18)外に突出した回転入力軸(34)とを有し、前記ハウジング(12)と前記ロータ(20)との相対的な回転運動に抵抗を与える回転ダンパ(10)であって、前記ベーン(26)に貫通形成され、途中に弁座部(48)を有する連通路(42)と、前記連通路(42)に移動可能に配置され、前記ロータ(20)が前記ハウジング(12)に対して時計廻り方向に回動する場合には前記弁座部(48)に着座する方向に流体圧を受けて前記弁座部(48)に着座して前記連通路(42)を閉塞し、前記ロータ(20)が前記ハウジング(12)に対して反時計廻り方向に回動する場合には前記弁座部(48)より離れる方向に流体圧を受けて前記弁座部(48)より離間して前記連通路(42)の連通を確立する弁体(60)と、前記ベーン(26)に一体形成されて前記連通路(42)内に突出した突出部(56)を含み、当該突出部(56)によって前記弁体(60)が前記弁座部(48)より離れる方向への移動量を規制し前記弁体(60)を前記連通路(42)内に移動可能に保持する少なくとも一つの弾性変形爪(50)とを有し、前記弁座部(48)は前記弾性変形爪(50)の突出部(56)とは、前記連通路(42)を貫通する方向の投影面で見て重ならない部位にのみ形成されている。
【0010】
この構成によれば、突出部(56)によって弁体(60)を連通路(42)内に移動可能に保持する弾性変形爪(50)が設けられているから、予め連通路(42)に弁体(60)を組み込んだサブアッシィ状態で、ロータ(20)をハウジング(12)内に組み付けることができる。そして、弁座部(48)は弾性変形爪(50)の突出部(56)とは、連通路(42)を貫通する方向の投影面で見て重ならない部位にのみ形成されているので、ベーン(26)に連通路(42)を有するロータ(20)を、二面割りの金型によって射出成形することができる。
【0011】
本発明による回転ダンパは、好ましくは、更に、前記弾性変形爪(50)は、前記弁体(60)との当接による弾性変形によって前記弁体(60)を前記弁座部(48)に着座する方向に付勢する分力を生じる付勢傾斜面部(54A)を有する。
【0012】
この構成によれば、別途の閉弁ばね等を必要とすることなく、弁体(60)が閉弁方向に付勢され、弁体(60)が不必要にがた付き移動することが回避される。
【0013】
本発明による回転ダンパは、好ましい一つの実施形態として、前記弾性変形爪(50)の前記突出部(56)は、前記連通路(42)の貫通方向の軸線に対して傾斜した前記弁体(60)の挿入案内傾斜面(56A)と、前記軸線に対して直交する方向に延在して前記弁体(60)が前記連通路(42)より離脱しないようにする係止面(56B)とを具備した逆止形状をしている。
【0014】
この構成によれば、突出部(56)の挿入案内傾斜面(56A)上を滑らせて弾性変形爪(50)を撓ませながら弁体(60)を連通路(42)内に押し込むことができ、弁体(60)の組み付けが工具等を必要とすることなく作業性よく行われる。
【0015】
本発明による回転ダンパは、好ましくは、前記弁体(60)は球体あるいは円柱体により構成され、前記連通路(42)は前記弁体(60)を受け入れる円横断面形状あるいは矩形横断面形状をしている
【0016】
この構成によれば、この構成によれば、連通路(42)、弁体(60)の寸法、個数によって、回動方向の違いでダンパ作用トルクの差異が大きいワンウェイ型の回転ダンパの設計の自由度が大きくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明による回転ダンパは、突出部によって弁体を連通路内に移動可能に保持する弾性変形爪が設けられているから、予め連通路に弁体を組み込んだサブアッシィ状態で、ロータをハウジング内に組み付けることができる。そして、弁座部は弾性変形爪の突出部とは、連通路を貫通する方向の投影面で見て重ならない部位にのみ形成されているので、ベーンに連通路を有するロータを、二面割りの金型によって射出成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による回転ダンパの一つの実施形態を示す縦断面図。
【図2】図1の線II−IIに沿った拡大断面図。
【図3】図2のA矢視図。
【図4】本実施形態による回転ダンパのロータ成形金型の一例の一部を示す断面図。
【図5】本発明による回転ダンパの他の実施形態を示す縦断面図。
【図6】本発明による回転ダンパの他の実施形態の図1の線II−IIに沿った拡大断面図相当の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による回転ダンパの一つの実施形態を、図1〜図3を参照して説明する。なお、本実施形態による回転ダンパの構成部品は、材料のことわりがない限り、すべて合成樹脂による成形品である。
【0020】
図1に示されているように、回転ダンパ10は外郭をなすハウジング12を有する。ハウジング12は、一端(上端)が開口(開口部14A)した有底の円筒形状(カップ形状)のハウジング本体14と、ハウジング本体14の開口部14Aを塞ぐようにハウジング本体14の一端側に取り付けられた円盤状の蓋体16とにより構成されている。
【0021】
ハウジング本体14に対する蓋体16の固定は、接着、溶着等によって行われてよく、それ以外に、ハウジング本体14と蓋体16との嵌合部に形成された円環凹溝と円環凸部との嵌合や、他の締結具を用いたものによって行われてもよい。
【0022】
ハウジング12は内側に円筒状のロータ室18を画定する。ロータ室18は、後述するOリング28によって気密室とされ、粘性流体としてシリコンオイル等を充填される。
【0023】
ロータ室18には、ロータ20が、同心配置で、自身の中心軸線周りに回転可能に配置されている。ロータ20は、中心円柱部22と、中心円柱部22の図1で見て上端に一体成形された円盤状のフランジ部24と、中心円柱部22の外周部に径方向外方へ突出成形されたベーン26とを有する。フランジ部24と蓋部材16との間には、加硫ゴム、シリコンゴム等のゴム状弾性体製のOリング28がハウジング本体14の内周面に密着する形態で設けられている。この配置により、Oリング28は、ロータ室18を気密室にしている。
【0024】
中心円柱部22の下端部中央には軸部30が突出成形されている。軸部30はハウジング本体14の底部中央に形成された軸受凹部32に回転可能に嵌合している。フランジ部24の上面中央部には一端(下端)を連結された形態で回転入力軸(ロータ軸)34が一体形成されている。回転入力軸34は、蓋体16の中央部に貫通形成された中心孔36を回転可能に貫通し、他端(上端)がロータ室18外に突出している。ロータ20は、これら軸部30、回転入力軸34によってハウジング12より自身の中心軸線周りに回転可能に支持されている。
【0025】
ベーン26は、本実施形態では、中心円柱部22の中心軸線周りに180度回転変位した2箇所に各々形成され、ハウジング本体14の内周面と底面との間に、各々絞り流路38、40を画成している。
【0026】
各ベーン26の高さ方向の任意の位置に連通路42がベーン26の厚さ方向(ロータ回転方向と同等の方向)に貫通形成されている。連通路42は、図2、図3に示されているように、円形横断面の弁ポート44と、弁ポート44の一方の側(図2、図3で見て右側)に偏心した円形横断面の弁体収容室46とを連通状態で有し、弁ポート44と弁体収容室46との間に図2で見て下向きの弁座部48を形成されている。
【0027】
ベーン26の弁体収容室46の部分には弾性変形爪50が一体成形されている。弾性変形爪50は、上辺を除く下辺と両側片の3辺をスリット状の空隙52によってベーン26の主部より隔離されることにより、上辺部分を樹脂ヒンジとして、弁体収容室46の径方向に弾性変形する弾性片部54と、弾性片部54の自由端(図2で見て下端)側に一体形成されて連通路42の弁体収容室46内に突出した突出部56とにより構成されている。
【0028】
突出部56は、弁体収容室46が弁ポート44に連通する側の端部(図2で見て上端)とは反対側の端部(図2で見て下端)近傍にあり、連通路42の貫通方向の軸線に対して、弁ポート44に近付くほど弁体収容室46の中心側に向かい、弁ポート44に近付くほど弁体収容室46への突出量を増大する方向に傾斜した挿入案内傾斜面56Aと、挿入案内傾斜面56Aの図2で見て上縁(最大突出側の縁部)に接続されて連通路42の貫通方向の軸線に対して直交する方向に延在する図2で見て上向きの係止面56Bとを具備した側面形状が直角三角形状の逆止形状をしている。係止面56Bは後述する弁体60が連通路42より離脱しないようにする弁体60との当接面であり、必ずしも連通路42の貫通方向の軸線に対して直交する方向に延在している必要はない。
【0029】
弁体収容室46には球状の弁体60が移動可能に配置されている。弁体60は、図2に実線により示されているように、弁座部48に着座する閉弁位置と、図2に仮想線により示されているように、突出部56の係止面56Bに当接し、連通路42より離脱しないように連通路42内に保持される開弁位置との間を移動可能になっている。
【0030】
このようにして、弾性変形爪50は、突出部56によって弁体60が弁座部48より離れる方向への移動量を規制し、弁体60を連通路42内に移動可能に保持する。
【0031】
弁体60は、ロータ20がハウジング12に対して図2で見て時計廻り方向に回動する場合には、弁座部48に着座する方向に流体圧を受けて弁座部48に着座する閉弁位置へ移動し、連通路46の弁ポート44を閉塞する。これに対し、ロータ20がハウジング10に対して図2で見て反時計廻り方向に回動する場合には、弁体60は、弁座部48より離れる方向に流体圧を受けて弁座部48より離間した開弁位置へ移動し、連通路46の弁ポート44の連通を確立する。
【0032】
これにより、ロータ20が回転入力軸34による回転入力によってハウジング12に対して図2で見て時計廻り方向に回動する場合には、弁体60によって弁ポート44が閉じられることにより、大きい流動抵抗のもとに大きいダンパ作用トルクを生じる。なお、弁ポート44は必ずしも弁体60によって完全に閉じられる必要はなく、絞り流路38、40との兼ね合いにより要求仕様に応じて定められればよい。
【0033】
これとは反対に、ロータ20が回転入力軸34による回転入力によってハウジング12に対して図2で見て反時計廻り方向に回動する場合には、弁体60が弁座部48より離れて弁ポート44が開かれることにより、ベーン外側の絞り流路38、40に加えて弁ポート44も粘性流体の流路になるので、大きい流動抵抗が生じなくなり、ダンパ作用トルクを減少する。
【0034】
なお、弁ポート44が開かれている状態の時に、連通路46を粘性流体が大きい絞り作用を受けることなく流れるよう、弁体収容室46の内側壁に軸線方向に延在する拡張通路溝58が形成されていてよい。拡張通路溝58は、弾性変形爪50とは異なった周方向位置に設けられる。
【0035】
このようにして、回動方向の違いでダンパ作用トルクの差異があるワンウェイ型の回転ダンパ10が得られる。
【0036】
上述したように、弾性変形爪50が突出部56によって弁体60を連通路42の弁体収容室46内に移動可能に保持するから、予め連通路42に弁体60を組み込んだサブアッシィ状態で、ロータ20をハウジング本体14内に組み付けることができる。これにより、弁体60を含むロータ20のハウジング本体14に対する組み付け作業性が改善される。また、ロータ20のハウジング本体14に対する組み付け前に、ロータ20の連通路42に弁体60を組み込んだサブアッシィ状態、つまり、実際の使用時と同等の状態で、弁体60の正常な動きを目視で確認することができる。
【0037】
弁体60の組み付けは、図2で見て弁体収容室46の下側から突出部56の挿入案内傾斜面56A上を滑らせて弾性変形爪50を弁体収容室46の径方向外方に撓ませながら弁体60を弁体収容室46内に押し込む。弁体60が突出部56を乗り越えると、弾性変形爪50が図2に示されているような元の状態に自ずと復元することにより、弁体60の組み付けが完了する。このようにして、弁体60の組み付けが、工具等を必要とすることなく作業性よく行われる。
【0038】
図3に示されているように、弾性変形爪50は、弁ポート44に対する弁体収容室46の最大偏心部位に対して弁体収容室46の中心軸線周りに180度回転変位した部位にあり、弁座部48が弾性変形爪50の突出部56とは、連通路42を貫通する方向の投影面で見て重ならない部位にのみ形成されているので、ベーン26に連通路42を有するロータ20を、二面割りの金型によって射出成形することができる。
【0039】
図4は、ロータ20を射出成形する金型構成の一例を示している。この例では、弁ポート44と弾性変形爪50の突出部56より図4で見て上側を成形する第1の金型100Aと、弁体収容室46と空隙52と弾性変形爪50の突出部56と拡張通路溝58とを成形する第2の金型100Bとにより、ロータ20の成形金型が構成されている。この成形金型では、パーテイション面Sをもって第1の金型100Aと第2の金型100Bとが型合わせされ、第1の金型100Aは図4で見て上側に、第2の金型100Bは図4で見て下側に各々型抜きすることができる。これにより、ロータ20の成形金型が複雑なものになることがなく、金型コストの低減が図られる。
【0040】
連通路42と弁体60とによるワンウェイ構造は、ベーン26の全域に配置可能であるから、必要されるワンウェイ特性、つまり、回動方向の違いより相違するダンパ作用トルクの必要値に応じて、連通路42、弁体60の大きさ、ベーン26に設置する連通路42、弁体60の個数を、大きい設計の自由度をもって選定することができる。これにより、回動方向の違いでダンパ作用トルクの差異が大きいワンウェイ型の回転ダンパ10を構成することができる。
【0041】
弁体60の形状は、球形に限られることなく、図5に示されているように、円柱状のものであってもよい。この場合、連通路42は、弁体60の形状に合わせて横断面形状がベーン26の長手方向(軸線方向)に長い矩形をしていればよい。このことによっても、回動方向の違いでダンパ作用トルクの差異が大きいワンウェイ型の回転ダンパ10を、大きい設計の自由度をもって構成することができる。
【0042】
この場合も、弾性変形爪50は、弁ポート44に対する弁体収容室46の最大偏心部位に対して弁体収容室46の中心軸線周りに180度回転変位した部位にあり、弁座部48が弾性変形爪50の突出部56とは、連通路42を貫通する方向の投影面で見て重ならない部位にのみ形成することができ、ベーン26に連通路42を有するロータ20を、二面割りの金型によって射出成形することができる。
【0043】
本発明による回転ダンパの他の実施形態を、図6を参照して説明する。なお、図6において、図2に対応する部分は、図2に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0044】
この実施形態では、弾性変形爪50の弾性片部54の弁体収容室46の弁体収容室46の側の面が付勢傾斜面部54Aになっている。付勢傾斜面部54Aは、弁ポート44より離れる方向に進むに従って弁体収容室46の中心側に変位する方向の傾斜であり、弁体60との当接によって弾性片部54が弾性変形することにより、弁体60を弁ポート44の側、つまり、弁座部48に着座する方向に付勢する分力を生じる。
【0045】
これにより、別途の閉弁ばね等を必要とすることなく、弁体60が閉弁方向に付勢され、弁体60が不必要にがた付き移動することがなくなり、弁体60の耐久性が向上すると共に、がた付きによる異音の発生が回避される。
【0046】
なお、弾性変形爪50の個数は、一つに限られることはなく、連通路42を貫通する方向の投影面で見て、弁座部48と重ならない部位であれば、複数個、形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 回転ダンパ
12 ハウジング
18 ロータ室
20 ロータ
26 ベーン
38、40 絞り流路
42 連通路
44 弁ポート
46 弁体収容室
48 弁座部
50 弾性変形爪
56 突出部
60 弁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のロータ室を画定するハウジングと、前記ロータ室に回転可能に配置され前記ロータ室を回転することにより流体圧を受けるベーンを具備したロータと、一端を前記ロータに連結され他端が前記ロータ室外に突出した回転入力軸とを有し、前記ハウジングと前記ロータとの相対的な回転運動に抵抗を与える回転ダンパであって、
前記ベーンに貫通形成され、途中に弁座部を有する連通路と、
前記連通路に移動可能に配置され、前記ロータが前記ハウジングに対して時計廻り方向に回動する場合には前記弁座部に着座する方向に流体圧を受けて前記弁座部に着座して前記連通路を閉塞し、前記ロータが前記ハウジングに対して反時計廻り方向に回動する場合には前記弁座部より離れる方向に流体圧を受けて前記弁座部より離間して前記連通路の連通を確立する弁体と、
前記ベーンに一体形成されて前記連通路内に突出した突出部を含み、当該突出部によって前記弁体が前記弁座部より離れる方向への移動量を規制し前記弁体を前記連通路内に移動可能に保持する少なくとも一つの弾性変形爪とを有し、
前記弁座部は前記弾性変形爪の突出部とは、前記連通路を貫通する方向の投影面で見て重ならない部位にのみ形成されている回転ダンパ。
【請求項2】
前記弾性変形爪は、前記弁体との当接による弾性変形によって前記弁体を前記弁座部に着座する方向に付勢する分力を生じる付勢傾斜面部を有する請求項1に記載の回転ダンパ。
【請求項3】
前記弾性変形爪の前記突出部は、前記連通路の貫通方向の軸線に対して傾斜した前記弁体の挿入案内傾斜面と、前記軸線に対して直交する方向に延在して前記弁体が前記連通路より離脱しないようにする係止面とを具備した逆止形状をしている請求項請求項1または2に記載の回転ダンパ。
【請求項4】
前記弁体は球体あるいは円柱体により構成され、前記連通路は前記弁体を受け入れる円形横断面形状あるいは矩形横断面形状をしている請求項1から3の何れか一項に記載の回転ダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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