回転伝達カップリング
【課題】回転方向での高い剛性を得ることができる回転伝達カップリングを提供する。
【解決手段】駆動側部材14に接続される第1ゴムブッシュ20と、従動側部材18に接続される第2ゴムブッシュ22と、これらゴムブッシュを周上で交互に並んだ状態に保持するカップリング本体24とを備えた回転伝達カップリング10において、両ゴムブッシュ20,22はカップリングの回転軸Oに平行な軸部材26と、カップリングの周方向Cに対向して設けられた一対の液室32とを備えてなり、これら液室を、回転伝達カップリングが回転方向に動いたときに圧力が高まる加圧側の液室32A,32D,32E,32H同士、圧力が減少する減圧側の液室32B,32C,32F,32G同士で、それぞれ流路42を介して連結する。
【解決手段】駆動側部材14に接続される第1ゴムブッシュ20と、従動側部材18に接続される第2ゴムブッシュ22と、これらゴムブッシュを周上で交互に並んだ状態に保持するカップリング本体24とを備えた回転伝達カップリング10において、両ゴムブッシュ20,22はカップリングの回転軸Oに平行な軸部材26と、カップリングの周方向Cに対向して設けられた一対の液室32とを備えてなり、これら液室を、回転伝達カップリングが回転方向に動いたときに圧力が高まる加圧側の液室32A,32D,32E,32H同士、圧力が減少する減圧側の液室32B,32C,32F,32G同士で、それぞれ流路42を介して連結する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動側部材と従動側部材との間に介設されて両者を連結し、駆動側部材の回転力を従動側部材に伝達させる回転伝達カップリングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車のドライブシャフトやプロペラシャフト、また最近では電気自動車などのモータを車輪に内蔵したインホイールモータシステムなどにおいては、駆動側から従動側に回転トルクを伝達するための回転伝達カップリングが組み込まれている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、図11に示すような回転伝達カップリング100が開示されている。この回転伝達カップリング100では、カップリング本体である中間ベースプレート102に4つの貫通孔104を設け、該貫通孔104にゴムブッシュ106,108を挿入固定する。該ゴムブッシュは、中間ベースプレート102の面内に平行な面内においてその剛性に異方性を有して駆動側部材120に接続される第1ゴムブッシュ106と、剛性の低い方向が該第1ゴムブッシュ106の剛性の低い方向と直交するように設けられて従動側部材122に接続される第2ゴムブッシュ108からなる。これらのゴムブッシュ106,108は、その軸方向を回転伝達カップリング100の回転軸100Xに平行に設置した上で、それぞれ軸心を挟んだ両側のゴム弾性部110にすぐり112を設けることで、上記剛性の異方性を与えている。
【0004】
この回転伝達カップリング100であると、その回転方向については、第1及び第2ゴムブッシュ106,108がすぐり112のない剛性の高い方向に動くことになるので、回転力を効果的に伝達することができる。一方、駆動側部材120と従動側部材122との間に偏心があった場合、例えば、図11における偏心方向の変位に対しては、第1ゴムブッシュ106におけるすぐり112のある剛性の低い方向と、第2ゴムブッシュ108におけるすぐり112のない剛性の高い方向との直列ばねとなる。直列ばねでは、剛性の低い方のばねが支配的となるので、上記第1ゴムブッシュ106により偏心方向での剛性を下げることができ、従って、偏心方向での反力を下げつつ、回転力を確実に伝達することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−185195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記回転伝達カップリング100においては、すぐり112のサイズを大きくすることで、ゴムブッシュ106,108のすぐり方向とすぐり無し方向の剛性比を大きくし、これにより、回転方向の剛性と偏心方向の剛性との剛性比を大きくすることができる。しかしながら、この構造では、すぐり112を大きくするとゴムブッシュ106,108の剛性の絶対値も低下してしまうので、すぐり方向とすぐり無し方向の剛性比を大きくするのには限界があり、回転方向での高い剛性を得ることが困難となる。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、回転方向での高い剛性を得ることができる回転伝達カップリングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る回転伝達カップリングは、駆動側部材と該駆動側部材によって回転させられる従動側部材との間に介設されて両者を連結する回転伝達カップリングであって、前記駆動側部材に接続される複数の第1ゴムブッシュと、前記従動側部材に接続される複数の第2ゴムブッシュと、これら第1ゴムブッシュと第2ゴムブッシュを、前記回転伝達カップリングの回転軸を取り囲む周上で交互に並んだ状態に保持するカップリング本体と、 を備えるものである。前記第1ゴムブッシュ及び第2ゴムブッシュはそれぞれ、前記回転軸に平行な軸部材と、前記軸部材を挟んで前記回転伝達カップリングの周方向における両側に対向して設けられた一対の液室とを備えてなり、これら第1ゴムブッシュ及び第2ゴムブッシュに設けられた前記液室は、前記回転伝達カップリングが回転方向に動いたときに圧力が高まる加圧側の液室同士、及び該回転方向に動いたときに圧力が減少する減圧側の液室同士が、それぞれ流路を介して連結されたものである。
【0009】
本発明の好ましい態様においては、前記回転軸に垂直な第1の軸直角方向において、前記回転軸を挟んだ両側に一対の前記第1ゴムブッシュが配置されるとともに、前記第1の軸直角方向に垂直な第2の軸直角方向において、前記回転軸を挟んだ両側に一対の前記第2ゴムブッシュが配置されてもよい。この場合、前記カップリング本体は、前記第1の軸直角方向における前記回転軸を挟んだ両側において前記回転伝達カップリングの軸方向に貫通する一対の第1取付孔と、前記第2の軸直角方向における前記回転軸を挟んだ両側において前記回転伝達カップリングの軸方向に貫通する一対の第2取付孔とを備え、前記一対の第1取付孔に前記一対の第1ゴムブッシュが挿入固定されるとともに、前記一対の第2取付孔に前記一対の第2ゴムブッシュが挿入固定されてもよい。
【0010】
本発明の好ましい態様においては、前記一対の第1ゴムブッシュ間において前記回転方向に動いたときの加圧側の液室同士と減圧側の液室同士がそれぞれ流路を介して連結されるともに、前記一対の第2ゴムブッシュ間において前記回転方向に動いたときの加圧側の液室同士と減圧側の液室同士がそれぞれ流路を介して連結されてもよい。
【0011】
本発明の他の好ましい態様においては、一方の前記第1ゴムブッシュと一方の前記第2ゴムブッシュとの間で、前記回転方向に動いたときの加圧側の液室同士と減圧側の液室同士がそれぞれ流路を介して連結されるとともに、他方の前記第1ゴムブッシュと他方の前記第2ゴムブッシュとの間で、前記回転方向に動いたときの加圧側の液室同士と減圧側の液室同士がそれぞれ流路を介して連結されてもよい。
【0012】
本発明の更に他の好ましい態様においては、前記第1ゴムブッシュと第2ゴムブッシュの液室は、互いに異なるゴムブッシュ間で前記回転伝達カップリングの周方向に隣り合う液室同士がそれぞれ流路を介して連結されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る回転伝達カップリングでは、回転方向に動いたときに圧力の高まる加圧側の液室同士、圧力の減少する減圧側の液室同士がそれぞれ連結されている。そのため、回転伝達カップリングが回転方向に動いた場合に、各液室間において流路を介して液体が流れにくく、液体が各液室内に閉じ込められた状態に等しくなる。これにより液圧によってゴムブッシュの回転方向におけるばね定数が高くなり、回転伝達カップリングの回転方向での剛性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る回転伝達カップリングの縦断面図である。
【図2】(a)は図1のa−a線断面図、(b)は図1のb−b線断面図である。
【図3】第1実施形態における回転方向入力時の作用を説明するための図である。
【図4】第1実施形態における偏心方向入力時の作用を説明するための図である。
【図5】第2実施形態に係る回転伝達カップリングの縦断面図である。
【図6】第2実施形態における回転方向入力時の作用を説明するための図である。
【図7】第2実施形態における偏心方向入力時の作用を説明するための図である。
【図8】第3実施形態に係る回転伝達カップリングの縦断面図である。
【図9】第3実施形態における回転方向入力時の作用を説明するための図である。
【図10】第3実施形態における偏心方向入力時の作用を説明するための図である。
【図11】(a)従来の回転伝達カップリングの正面図であり、(b)はそのB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0016】
[第1実施形態]
図1,2に示す実施形態に係る回転伝達カップリング10は、上述した図11に示す回転伝達カップリング100と同様、駆動軸12に接続された駆動側部材としての駆動側プレート14と、従動軸16に接続された従動側部材としての従動側プレート18との間に介設される部材であり、駆動軸12と従動軸16を連結するとともに、駆動軸12から従動軸16に回転力を伝達する。
【0017】
回転伝達カップリング10は、駆動側プレート14に接続される一対の第1ゴムブッシュ20,20と、従動側プレート18に接続される一対の第2ゴムブッシュ22,22と、これら4つの第1及び第2ゴムブッシュ20,20,22,22を保持するカップリング本体としての中間ベースプレート24とを備えてなる。
【0018】
中間ベースプレート24は、上記第1ゴムブッシュ20と第2ゴムブッシュ22を、回転伝達カップリング10の回転軸Oを取り囲む同一円周上で等間隔にて交互に並んだ状態に保持する部材であり、金属や樹脂などの剛性材料からなる。この例では、第1ゴムブッシュ20は、回転伝達カップリング10の回転軸Oに垂直な第1の軸直角方向Y1において、該回転軸Oを挟んだ両側に対向配置されている。第2ゴムブッシュ22は、上記回転軸Oに垂直かつ第1の軸直角方向Y1に垂直な第2の軸直角方向Y2において、該回転軸Oを挟んだ両側に対向配置されている。従って、一対の第1ゴムブッシュ20,20の対向方向と、一対の第2ゴムブッシュ22,22の対向方向とが、互いに垂直に設けられている。
【0019】
これら第1ゴムブッシュ20及び第2ゴムブッシュ22は、それぞれ、軸部材としての内筒26と、該内筒26を軸平行かつ同軸状に取り囲む外筒28と、これら内筒26と外筒28との間に介設されて両者を連結するゴム弾性体30とを備えてなる。内筒26と外筒28は金属などの剛性材料からなり、ゴム弾性体30はこれら内筒26と外筒28との間に加硫接着されている。この例では、外筒28は、ゴム弾性体30が内周面に加硫接着される第1外筒28Aと、該第1外筒28Aが内側に嵌合する第2外筒28Bとからなり、内筒26と第1外筒28Aとの間でゴム弾性体30を加硫成形した後、該加硫成形体を第2外筒28Bの内側に嵌合して絞り加工することにより組み立てられている。
【0020】
第1ゴムブッシュ20及び第2ゴムブッシュ22は、上記内筒26を挟んで径方向に対向する両側に一対の液室32,32を備える。すなわち、内筒26と外筒28の間のゴム弾性体30には、内筒26を挟んで対向する位置に、水やエチレングリコール、シリコーンオイル等の液体が封入された液室32が設けられており、この一対の液室32,32の対向方向(即ち、液室方向)に直交する径方向では、内筒26と外筒28との間が、内筒26を挟んで対向する一対の本体ゴム部34,34により連結されている。また、図2(b)に示すように、液室32の軸方向両側にはゴム弾性体30からなる側壁部36が設けられている。なお、この例では、部材の共通化を図るため、第1ゴムブッシュ20と第2ゴムブッシュ22は同一のものが使用されている。
【0021】
これら第1ゴムブッシュ20と第2ゴムブッシュ22は、内筒26を上記回転軸Oに平行に設定した上で、液室32が回転伝達カップリング10の周方向Cにおいて内筒26を挟んだ両側に対向配置されるように、中間ベースプレート24に保持されている。この例では、中間ベースプレート24は、図1に示す正面視で(即ち、回転軸Oの軸方向Xからみて)略矩形状をなし、上記第1の軸直角方向Y1における回転軸Oを挟んだ両側に、回転伝達カップリング10の軸方向Xに貫通する一対の第1取付孔38,38が設けられるとともに、上記第2の軸直角方向Y2における回転軸Oを挟んだ両側に、該軸方向Xに貫通する一対の第2取付孔40,40が設けられている。
【0022】
そして、この一対の第1取付孔38,38に、上記一対の第1ゴムブッシュ20,20が各別に挿入固定されるとともに、一対の第2取付孔40,40に、上記一対の第2ゴムブッシュ22,22が各別に挿入固定されている。この例では、第1取付孔38と第2取付孔40には、それぞれ第1ゴムブッシュ20及び第2ゴムブッシュ22の外筒28が圧入保持されている。その際、図1に示すように、上記液室方向に直交する本体ゴム部34の対向方向が、上記回転軸Oの軸直角方向に一致するように、ゴムブッシュ20,22を中間ベースプレート24に保持させる。すなわち、第1ゴムブッシュ20については、その本体ゴム部34の対向方向を第1の軸直角方向Y1に一致させ、第2ゴムブッシュ22については、その本体ゴム部34の対向方向を第2の軸直角方向Y2に一致させている。これにより、上記液室方向が周方向Cに沿って配置され、従って、図1に示すように、各ゴムブッシュ20,22において、周方向Cにおける内筒26を挟んだ両側に液室32が対向配置されている。
【0023】
図2に示すように、第1ゴムブッシュ20は、その内筒26が駆動側プレート14に接続固定され、また、第2ゴムブッシュ22は、その内筒26が従動側プレート18に接続固定される。詳細には、駆動側プレート14は、駆動軸12との連結部から上記第1の軸直角方向Y1における両側に延出しており、その先端部に軸方向Xに貫通するボルト穴14Aが設けられている。そして、第1ゴムブッシュ20の内筒26と該ボルト穴14Aを重ねて、ボルト15をこれらに挿通させて締め付けることにより、一対の第1ゴムブッシュ20,20が駆動側プレート14に接続固定される。また、従動側プレート18は、従動軸16との連結部から上記第2の軸直角方向Y2における両側に延出しており、その先端部に軸方向Xに貫通するボルト穴18Aが設けられている。そして、第2ゴムブッシュ22の内筒26と該ボルト穴18Aを重ねて、ボルト19をこれらに挿通させて締め付けることにより、一対の第2ゴムブッシュ22,22が従動側プレート18に接続固定される。
【0024】
以上の構成において、第1ゴムブッシュ20及び第2ゴムブッシュ22に設けられた液室32は、回転伝達カップリング10が回転方向に動いたときに圧力が高まる加圧側の液室32同士、及び該回転方向に動いたときに圧力が減少する減圧側の液室32同士が、それぞれ流路42を介して連結されている。この例では、回転軸Oを挟んで対向する位置にある一対のゴムブッシュ20,20;22,22間で液室32が流路42により連結されている。
【0025】
詳細には、図1に示すように、相対する一対の第1ゴムブッシュ20,20において、回転軸Oを中心として点対称位置にある液室32同士がそれぞれ流路42を介して連結されている。すなわち、一方(図1において上側)の第1ゴムブッシュ20における一方側(図1において左側)の液室32Aが、他方(図1において下側)の第1ゴムブッシュ20において該液室32Aと点対称位置にある液室32Eと、流路42Aを介して連結されており、上記一方の第1ゴムブッシュ20における他方側の液室32Bが、他方の第1ゴムブッシュ20において該液室32Bと点対称位置にある液室32Fと、流路42Bを介して連結されている。
【0026】
また、相対する一対の第2ゴムブッシュ22,22において、回転軸Oを中心として点対称位置にある液室32同士がそれぞれ流路42を介して連結されている。すなわち、一方(図1において右側)の第2ゴムブッシュ22における一方側(図1において上側)の液室32Cが、他方(図1において左側)の第2ゴムブッシュ22において該液室32Cと点対称位置にある液室32Gと、流路42Cを介して連結されており、上記一方の第2ゴムブッシュ22における他方側の液室32Dが、他方の第2ゴムブッシュ22において該液室32Dと点対称位置にある液室32Hと、流路42Dを介して連結されている。
【0027】
図3は、回転伝達カップリング10において、回転方向に力が入った状態を示す図であり、駆動軸12に反時計回りの回転駆動が生じた状態を示している。図示するように、上下一対の第1ゴムブッシュ20,20では回転方向に向かって内筒26,26が変位しようとし、これに伴い中間ベースプレート24が回転方向に回動することにより、左右一対の第2ゴムブッシュ22,22では回転方向と反対側に相対変位しようとする。そのため、図3に示すように、回転方向の動きにより圧力が高まる加圧側の液室32A,32D,32E,32Hと、圧力が減少する減圧側の液室32B,32C,32F,32Gができる。詳細には、第1ゴムブッシュ20の回転方向前方側の液室32A,32Eと、これに隣り合う第2ゴムブッシュ22の回転方向後方側の液室32H,32Dが加圧側となり、第1ゴムブッシュ20の回転方向後方側の液室32B,32Fと、これに隣り合う第2ゴムブッシュ22の回転方向前方側の液室32C,32Gが減圧側となる。
【0028】
本実施形態では、これらの各液室32A〜32Hが上記のように対向するゴムブッシュ間でかつ点対称位置にある液室同士が流路42A〜42Dにより連結されている。そのため、一対の第1ゴムブッシュ20,20間において、回転方向に動いたときの加圧側の液室32A,32E同士と、減圧側の液室32B,32F同士が、それぞれ流路42A,42Bを介して連結されるともに、一対の第2ゴムブッシュ22,22間において、回転方向に動いたときの加圧側の液室32D,32H同士と、減圧側の液室32C,32G同士が、それぞれ流路42D,42Cを介して連結されている。
【0029】
図2に示すように、これらの流路42A〜42Dは、中間ベースプレート24を3層構造とすることにより形成されている。すなわち、図2(a)に示すように、中間ベースプレート24は、駆動軸12に近い側の第1プレート44と、従動軸16に近い側の第3プレート48と、これら第1プレート44と第3プレート48との間に挟まれる第2プレート46とからなる。第2プレート46の両面には、上記流路42A〜42Dを形成するための凹溝50が設けられており、第1プレート44及び第3プレート48と重ね合わせることで流路42A〜42Dが形成されている。なお、これら流路42を各液室32に連結させるために、図2(b)に示すように、外筒28には開口窓52が設けられている。
【0030】
以上よりなる実施形態であると、回転伝達カップリング10に回転方向の力が入った場合、図3に示すように、加圧側の液室同士(32Aと32E,32Dと32H)、減圧側の液室同士(32Bと32F,32Cと32G)がそれぞれ流路42A〜42Dを介して連結された状態となる。そのため、連結された各液室32間において流路42を介して液体が流れにくく、液体が各液室32内に閉じ込められた状態に等しくなり、各液室32の体積を変化させることが困難となる。そのため、液圧により各ゴムブッシュ20,22の回転方向におけるばね定数が大幅に高くなるので、回転伝達カップリング10の回転方向での剛性が大幅に高まる。
【0031】
一方、回転伝達カップリング10の偏心方向(駆動軸12と従動軸16の互いの軸心がずれる方向)に力が入った場合には、図4に示すように、加圧側の液室32D,32Gと減圧側の液室32H,32Cとが連結された状態となる。詳細には、図4では、左右一対の第2ゴムブッシュ22,22の内筒26に対して下方への入力があった場合を示しており、これにより、上記液室方向が偏心方向(変位する方向)となる第2ゴムブッシュ22では、偏心側(即ち、下側)の液室32D,32Gが加圧側の液室となり、偏心方向と反対側(即ち、上側)の液室32C,32Hが減圧側の液室となる。一方、第1ゴムブッシュ20では、上記本体ゴム部34の対向方向が偏心方向となるので、内筒26は偏心方向(即ち、上方)に相対変位するものの、一対の液室間32A,32B;32E,32Fで圧力変化はほとんど生じない。そのため、この場合、一対の第2ゴムブッシュ22,22において、加圧側の液室32D,32Gから減圧側の液室32H,32Cにそれぞれ液体が流れるので、各液室32間で圧力変動がほとんど生じず、第2ゴムブッシュ22,22での偏心方向のばね定数を、本体ゴム部34の剪断変形による低い値に維持することができる。ここで、回転伝達カップリング10については、第1ゴムブッシュ20における液室方向と直交する方向でのばねと、第2ゴムブッシュ20における液室方向でのばねとの直列ばねとなり、その場合、剛性の低い第2ゴムブッシュ22のばねが支配的となるので、偏心方向での剛性を下げることができる。
【0032】
これにより、本実施形態の回転伝達カップリング10であると、回転方向と偏心方向との剛性比を大きくすることができる。よって、回転方向のトルクは確実に伝達しながら、駆動軸12と従動軸16に偏心や偏角があった場合でも、回転力を確実に伝達することができる。
【0033】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態に係る回転伝達カップリング10Aを示したものである。この例では、各液室32A〜32Hを連結する流路42の連結構成が上述した第1実施形態とは異なる。
【0034】
すなわち、第2実施形態では、隣り合う一組のゴムブッシュ20,22間において、回転方向に動いたときの加圧側の液室同士と減圧側の液室同士をそれぞれ連結するようにしている。詳細には、いずれか一方の第1ゴムブッシュ20とこれに隣り合ういずれか一方の第2ゴムブッシュ22との間で、互いに隣り合う液室同士(32Aと32H)を流路42Eを介して連結するとともに、これらゴムブッシュ20,22間の残りの液室同士(32Bと32G)を流路42Fを介して連結する。また、他方の第1ゴムブッシュ20とこれに隣り合う他方の第2ゴムブッシュ22との間で、互いに隣り合う液室同士(32Dと32E)を流路42Gを介して連結するとともに、これらゴムブッシュ20,22間の残りの液室同士(32Cと32F)を流路42Hを介して連結する。なお、図示しないが、これらの流路42E〜42Hは、第1実施形態と同様、中間ベースプレート24を三層構造することにより形成することができる。
【0035】
図6は、回転伝達カップリング10Aにおいて、回転方向に力が入った状態を示す図であり、駆動軸12に反時計回りの回転駆動が生じた状態を示している。この場合も、上述した第1実施形態と同様に、回転方向の動きにより圧力が高まる加圧側の液室32A,32D,32E,32Hと、圧力が減少する減圧側の液室32B,32C,32F,32Gができる。ここで、上記流路42E〜42Hを設けたことにより、一方の第1ゴムブッシュ20と一方の第2ゴムブッシュ22との間で、回転方向入力時における加圧側の液室32A,32H同士と、減圧側の液室32B,32G同士が、それぞれ流路42E,42Fを介して連結されるとともに、他方の第1ゴムブッシュ20と他方の第2ゴムブッシュ22との間で、加圧側の液室32D,32E同士と、減圧側の液室32C,32F同士が、それぞれ流路42G,42Hを介して連結されている。
【0036】
かかる第2実施形態であると、回転伝達カップリング10に回転方向の力が入った場合、図6に示すように、加圧側の液室同士(32Aと32H,32Dと32E)、減圧側の液室同士(32Bと32G,32Cと32F)がそれぞれ流路42E〜42Hを介して連結された状態となる。そのため、第1実施形態と同様、連結された各液室32間において流路42を介して液体が流れにくく、各液室32の体積を変化させることが困難となるので、各ゴムブッシュ20,22の回転方向におけるばね定数が液圧によって高くなり、回転伝達カップリング10の回転方向での剛性を大幅に高めることができる。
【0037】
一方、回転伝達カップリング10の偏心方向に力が入った場合、例えば、図7に示すように、左右一対の第2ゴムブッシュ22,22の内筒26に対して下方への入力があった場合、第1実施形態と同様、上記液室方向が偏心方向となる第2ゴムブッシュ22では、偏心側(即ち、下側)の液室32D,32Gが加圧側の液室となり、偏心方向と反対側(即ち、上側)の液室32C,32Hが減圧側の液室となる。この場合、第2ゴムブッシュ22の加圧側の液室32G,32Dから、流路42F,42Gを介して連結された第1ゴムブッシュ20の液室32B,32Eに、液体が流動し、これにより加圧される被加圧側の液室32B,32Eが圧力変動をある程度吸収する。そのため、第2ゴムブッシュ22,22での偏心方向のばね定数につき、本体ゴム部34の剪断変形による低い値からの上昇を抑えることができる。よって、第1ゴムブッシュ20における液室方向と直交する方向でのばねと、第2ゴムブッシュ20における液室方向でのばねとの直列ばねとなり、その場合、剛性の低い第2ゴムブッシュ22のばねが支配的となるので、偏心方向での剛性を下げることができる。
【0038】
なお、第2実施形態では、偏心方向での入力時に、加圧側の液室32G,32Dから液体が流れ込んで加圧される被加圧側の液室32B,32Eがあり、そこでは図7に示すように液室32B,32Eが押し広げられるが、圧力変動が残ってしまう。そのため、該圧力変動が残った分だけ第2ゴムブッシュ22の剛性が高くなるので、第1実施形態よりも偏心方向での剛性を下げる効果には劣る。その他の構成及び作用効果については第1実施形態と同様であり、同じ構成要素には同じ符号を付して説明は省略する。
【0039】
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態に係る回転伝達カップリング10Bを示したものである。この例も、各液室32A〜32Hを連結する流路42の連結構成が上述した第1実施形態とは異なる。
【0040】
すなわち、第3実施形態では、第1ゴムブッシュ20と第2ゴムブッシュ22の液室は、互いに異なるゴムブッシュ20,22間で周方向Cにおいて隣り合う液室32同士がそれぞれ流路42を介して連結されている。詳細には、いずれか一方の第1ゴムブッシュ20とこれに隣り合ういずれか一方の第2ゴムブッシュ22との間で、互いに隣り合う液室同士(32Bと32C)が流路42Iを介して連結され、該一方の第2ゴムブッシュ22と他方の第1ゴムブッシュ20との間で、互いに隣り合う液室同士(32Dと32E)が流路42Jを介して連結され、該他方の第1ゴムブッシュ20と他方の第2ゴムブッシュ22との間で、互いに隣り合う液室同士(32Fと32G)が流路42Kを介して連結され、該他方の第2ゴムブッシュ22と上記一方の第1ゴムブッシュ20との間で、互いに隣り合う液室同士(32Hと32A)が流路42Lを介して連結されている。なお、図示しないが、これらの流路42I〜42Lは、第1実施形態と同様、中間ベースプレート24を三層構造することにより形成することができる。
【0041】
図9は、回転伝達カップリング10Bにおいて、回転方向に力が入った状態を示す図であり、駆動軸12に反時計回りの回転駆動が生じた状態を示している。この場合も、上述した第1実施形態と同様に、回転方向の動きにより圧力が高まる加圧側の液室32A,32D,32E,32Hと、圧力が減少する減圧側の液室32B,32C,32F,32Gができる。ここで、上記流路42I〜42Lを設けたことにより、回転方向入力時における加圧側の液室同士(32Aと32H,32Dと32E)と、減圧側の液室同士(32Bと32C,32Fと32G)がそれぞれ流路42L,42J,42I,42Kを介して連結された状態となる。そのため、第1実施形態と同様、連結された各液室32間において流路42を介して液体が流れにくく、各液室32の体積を変化させることが困難となるので、各ゴムブッシュ20,22の回転方向におけるばね定数が液圧によって高くなり、回転伝達カップリング10の回転方向での剛性を大幅に高めることができる。
【0042】
一方、回転伝達カップリング10の偏心方向に力が入った場合、例えば、図10に示すように、左右一対の第2ゴムブッシュ22,22の内筒26に対して下方への入力があった場合、第1実施形態と同様、上記液室方向が偏心方向となる第2ゴムブッシュ22では、偏心側(即ち、下側)の液室32D,32Gが加圧側の液室となり、偏心方向と反対側(即ち、上側)の液室32C,32Hが減圧側の液室となる。この場合、第2ゴムブッシュ22の加圧側の液室32D,32Gから、流路42J,42Kを介して連結された第1ゴムブッシュ20の液室32E,32Fに、液体が流動し、これにより加圧される被加圧側の液室32E,32Fが圧力変動をある程度吸収する(この場合、主としてゴム弾性体30の側壁部36が軸方向外方側に拡張することにより圧力変動を吸収する)。そのため、第2ゴムブッシュ22,22での偏心方向のばね定数につき、本体ゴム部34の剪断変形による低い値からの上昇を抑えることができる。よって、第1ゴムブッシュ20における液室方向と直交する方向でのばねと、第2ゴムブッシュ22における液室方向でのばねとの直列ばねとなり、その場合、剛性の低い第2ゴムブッシュ22のばねが支配的となるので、偏心方向での剛性を下げることができる。なお、この場合、減圧側の液室32C,32Hについては、これらと流路42I,42Lを介して連結された液室32B,32Aが液体を供給するための被減圧側の液室となる。
【0043】
第3実施形態では、偏心方向での入力時に、加圧側の液室32D,32Gから液体が流れ込んで加圧される被加圧側の液室32E,32Fにおいて圧力変動が残ってしまうので、該圧力変動が残った分だけ第2ゴムブッシュ22の剛性が高くなり、そのため、第1実施形態よりも偏心方向での剛性を下げる効果には劣る。その他の構成及び作用効果については第1実施形態と同様であり、同じ構成要素には同じ符号を付して説明は省略する。
【0044】
[その他の実施形態]
上記実施形態では、第1ゴムブッシュ20の内筒26を駆動側プレート(駆動側部材)14に接続固定し、外筒28を中間ベースプレート(カップリング本体)24に固定するとともに、第2ゴムブッシュ22の内筒26を従動側プレート(従動側部材)18に接続固定し、外筒28を中間ベースプレート(カップリング本体)24に固定するようにしたが、これとは反対に、両ゴムブッシュの内筒をカップリング本体に固定し、外筒を駆動側部材や従動側部材に接続固定してもよい。また、これらを適宜に組み合わせてもよい。すなわち、第1ゴムブッシュは、駆動側部材に接続される限り、内筒と外筒とのいずれで駆動側部材に接続されてもよく、すなわち、内筒を駆動側部材に接続しても、カップリング本体側に固定してもよい。また、第2ゴムブッシュは、従動側部材に接続される限り、内筒と外筒とのいずれで従動側部材に接続されてもよく、すなわち、内筒を従動側部材に接続しても、カップリング本体側に固定してもよい。
【0045】
なお、回転方向入力時に各液室が加圧側と減圧側のいずれになるかは、両ゴムブッシュを内筒と外筒のいずれでカップリング本体に接続するかによって異なるので、それに応じて流路を設定すればよい。すなわち、上記実施形態のように両ゴムブッシュをともに外筒側でカップリング本体に接続し、あるいはともに内筒側でカップリング本体に接続した場合には、回転方向入力時に周方向で互いに隣り合う液室が加圧側同士又は減圧側同士となるが、両ゴムブッシュでカップリング本体に対する接続部材が異なる場合には、回転方向入力時に加圧側液室と減圧側液室が周方向で互いに隣り合うことになる。そのため、後者の場合には、上記実施形態とは流路の設定は異なることになるが、その場合にも、回転方向入力時の加圧側の液室同士、減圧側の液室同士を、それぞれ流路を介して連結すればよい。
【0046】
また、上記実施形態では、第1ゴムブッシュと第2ゴムブッシュを各2個、合計で4個のゴムブッシュを設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば第1ゴムブッシュと第2ゴムブッシュを各3個、合計で6個設けたり、各4個、合計で8個設けたりすることができ、その数は特に限定されない。但し、上記実施形態のように各2個設ける場合、偏心方向での入力時に、一方のゴムブッシュでの圧縮方向のばねと他方のゴムブッシュでの剪断方向のばねとの直列ばねとして、剛性の低い剪断方向のばねを有利に利用することができるので、より好ましい。なお、第1ゴムブッシュと第2ゴムブッシュを各3個設ける場合、3つの液室間を分岐する流路で連結したり、2本又は3本の流路で3つの液室間を連結したりしてもよい。
【0047】
本発明の回転伝達カップリングは、インホイールモータとホイール又はハブとを連結する部位に設ける態様の他、自動車のドライブシャフトやプロペラシャフトの動力伝達部に設けるなど、自動車をはじめとする各種車両、機械などにおいて、駆動側から従動側に回転力を伝達させる部位に適用することができ、特に限定されない。その他、一々列挙しないが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
10,10A,10B…回転伝達カップリング
14…駆動側プレート(駆動側部材) 18…従動側プレート(従動側部材)
20…第1ゴムブッシュ 22…第2ゴムブッシュ
24…中間ベースプレート(カップリング本体) 26…内筒 28…外筒
32…液室 32A,32D,32E,32H…回転方向時の加圧側液室
32B,32C,32F,32G…回転方向時の減圧側液室
38…第1取付孔 40…第2取付孔 42,42A〜L…流路
O…回転軸 X…回転伝達カップリング(回転軸)の軸方向
Y1…回転伝達カップリングの第1の軸直角方向 Y2…第2の軸直角方向
C…回転伝達カップリングの周方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動側部材と従動側部材との間に介設されて両者を連結し、駆動側部材の回転力を従動側部材に伝達させる回転伝達カップリングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車のドライブシャフトやプロペラシャフト、また最近では電気自動車などのモータを車輪に内蔵したインホイールモータシステムなどにおいては、駆動側から従動側に回転トルクを伝達するための回転伝達カップリングが組み込まれている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、図11に示すような回転伝達カップリング100が開示されている。この回転伝達カップリング100では、カップリング本体である中間ベースプレート102に4つの貫通孔104を設け、該貫通孔104にゴムブッシュ106,108を挿入固定する。該ゴムブッシュは、中間ベースプレート102の面内に平行な面内においてその剛性に異方性を有して駆動側部材120に接続される第1ゴムブッシュ106と、剛性の低い方向が該第1ゴムブッシュ106の剛性の低い方向と直交するように設けられて従動側部材122に接続される第2ゴムブッシュ108からなる。これらのゴムブッシュ106,108は、その軸方向を回転伝達カップリング100の回転軸100Xに平行に設置した上で、それぞれ軸心を挟んだ両側のゴム弾性部110にすぐり112を設けることで、上記剛性の異方性を与えている。
【0004】
この回転伝達カップリング100であると、その回転方向については、第1及び第2ゴムブッシュ106,108がすぐり112のない剛性の高い方向に動くことになるので、回転力を効果的に伝達することができる。一方、駆動側部材120と従動側部材122との間に偏心があった場合、例えば、図11における偏心方向の変位に対しては、第1ゴムブッシュ106におけるすぐり112のある剛性の低い方向と、第2ゴムブッシュ108におけるすぐり112のない剛性の高い方向との直列ばねとなる。直列ばねでは、剛性の低い方のばねが支配的となるので、上記第1ゴムブッシュ106により偏心方向での剛性を下げることができ、従って、偏心方向での反力を下げつつ、回転力を確実に伝達することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−185195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記回転伝達カップリング100においては、すぐり112のサイズを大きくすることで、ゴムブッシュ106,108のすぐり方向とすぐり無し方向の剛性比を大きくし、これにより、回転方向の剛性と偏心方向の剛性との剛性比を大きくすることができる。しかしながら、この構造では、すぐり112を大きくするとゴムブッシュ106,108の剛性の絶対値も低下してしまうので、すぐり方向とすぐり無し方向の剛性比を大きくするのには限界があり、回転方向での高い剛性を得ることが困難となる。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、回転方向での高い剛性を得ることができる回転伝達カップリングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る回転伝達カップリングは、駆動側部材と該駆動側部材によって回転させられる従動側部材との間に介設されて両者を連結する回転伝達カップリングであって、前記駆動側部材に接続される複数の第1ゴムブッシュと、前記従動側部材に接続される複数の第2ゴムブッシュと、これら第1ゴムブッシュと第2ゴムブッシュを、前記回転伝達カップリングの回転軸を取り囲む周上で交互に並んだ状態に保持するカップリング本体と、 を備えるものである。前記第1ゴムブッシュ及び第2ゴムブッシュはそれぞれ、前記回転軸に平行な軸部材と、前記軸部材を挟んで前記回転伝達カップリングの周方向における両側に対向して設けられた一対の液室とを備えてなり、これら第1ゴムブッシュ及び第2ゴムブッシュに設けられた前記液室は、前記回転伝達カップリングが回転方向に動いたときに圧力が高まる加圧側の液室同士、及び該回転方向に動いたときに圧力が減少する減圧側の液室同士が、それぞれ流路を介して連結されたものである。
【0009】
本発明の好ましい態様においては、前記回転軸に垂直な第1の軸直角方向において、前記回転軸を挟んだ両側に一対の前記第1ゴムブッシュが配置されるとともに、前記第1の軸直角方向に垂直な第2の軸直角方向において、前記回転軸を挟んだ両側に一対の前記第2ゴムブッシュが配置されてもよい。この場合、前記カップリング本体は、前記第1の軸直角方向における前記回転軸を挟んだ両側において前記回転伝達カップリングの軸方向に貫通する一対の第1取付孔と、前記第2の軸直角方向における前記回転軸を挟んだ両側において前記回転伝達カップリングの軸方向に貫通する一対の第2取付孔とを備え、前記一対の第1取付孔に前記一対の第1ゴムブッシュが挿入固定されるとともに、前記一対の第2取付孔に前記一対の第2ゴムブッシュが挿入固定されてもよい。
【0010】
本発明の好ましい態様においては、前記一対の第1ゴムブッシュ間において前記回転方向に動いたときの加圧側の液室同士と減圧側の液室同士がそれぞれ流路を介して連結されるともに、前記一対の第2ゴムブッシュ間において前記回転方向に動いたときの加圧側の液室同士と減圧側の液室同士がそれぞれ流路を介して連結されてもよい。
【0011】
本発明の他の好ましい態様においては、一方の前記第1ゴムブッシュと一方の前記第2ゴムブッシュとの間で、前記回転方向に動いたときの加圧側の液室同士と減圧側の液室同士がそれぞれ流路を介して連結されるとともに、他方の前記第1ゴムブッシュと他方の前記第2ゴムブッシュとの間で、前記回転方向に動いたときの加圧側の液室同士と減圧側の液室同士がそれぞれ流路を介して連結されてもよい。
【0012】
本発明の更に他の好ましい態様においては、前記第1ゴムブッシュと第2ゴムブッシュの液室は、互いに異なるゴムブッシュ間で前記回転伝達カップリングの周方向に隣り合う液室同士がそれぞれ流路を介して連結されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る回転伝達カップリングでは、回転方向に動いたときに圧力の高まる加圧側の液室同士、圧力の減少する減圧側の液室同士がそれぞれ連結されている。そのため、回転伝達カップリングが回転方向に動いた場合に、各液室間において流路を介して液体が流れにくく、液体が各液室内に閉じ込められた状態に等しくなる。これにより液圧によってゴムブッシュの回転方向におけるばね定数が高くなり、回転伝達カップリングの回転方向での剛性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る回転伝達カップリングの縦断面図である。
【図2】(a)は図1のa−a線断面図、(b)は図1のb−b線断面図である。
【図3】第1実施形態における回転方向入力時の作用を説明するための図である。
【図4】第1実施形態における偏心方向入力時の作用を説明するための図である。
【図5】第2実施形態に係る回転伝達カップリングの縦断面図である。
【図6】第2実施形態における回転方向入力時の作用を説明するための図である。
【図7】第2実施形態における偏心方向入力時の作用を説明するための図である。
【図8】第3実施形態に係る回転伝達カップリングの縦断面図である。
【図9】第3実施形態における回転方向入力時の作用を説明するための図である。
【図10】第3実施形態における偏心方向入力時の作用を説明するための図である。
【図11】(a)従来の回転伝達カップリングの正面図であり、(b)はそのB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0016】
[第1実施形態]
図1,2に示す実施形態に係る回転伝達カップリング10は、上述した図11に示す回転伝達カップリング100と同様、駆動軸12に接続された駆動側部材としての駆動側プレート14と、従動軸16に接続された従動側部材としての従動側プレート18との間に介設される部材であり、駆動軸12と従動軸16を連結するとともに、駆動軸12から従動軸16に回転力を伝達する。
【0017】
回転伝達カップリング10は、駆動側プレート14に接続される一対の第1ゴムブッシュ20,20と、従動側プレート18に接続される一対の第2ゴムブッシュ22,22と、これら4つの第1及び第2ゴムブッシュ20,20,22,22を保持するカップリング本体としての中間ベースプレート24とを備えてなる。
【0018】
中間ベースプレート24は、上記第1ゴムブッシュ20と第2ゴムブッシュ22を、回転伝達カップリング10の回転軸Oを取り囲む同一円周上で等間隔にて交互に並んだ状態に保持する部材であり、金属や樹脂などの剛性材料からなる。この例では、第1ゴムブッシュ20は、回転伝達カップリング10の回転軸Oに垂直な第1の軸直角方向Y1において、該回転軸Oを挟んだ両側に対向配置されている。第2ゴムブッシュ22は、上記回転軸Oに垂直かつ第1の軸直角方向Y1に垂直な第2の軸直角方向Y2において、該回転軸Oを挟んだ両側に対向配置されている。従って、一対の第1ゴムブッシュ20,20の対向方向と、一対の第2ゴムブッシュ22,22の対向方向とが、互いに垂直に設けられている。
【0019】
これら第1ゴムブッシュ20及び第2ゴムブッシュ22は、それぞれ、軸部材としての内筒26と、該内筒26を軸平行かつ同軸状に取り囲む外筒28と、これら内筒26と外筒28との間に介設されて両者を連結するゴム弾性体30とを備えてなる。内筒26と外筒28は金属などの剛性材料からなり、ゴム弾性体30はこれら内筒26と外筒28との間に加硫接着されている。この例では、外筒28は、ゴム弾性体30が内周面に加硫接着される第1外筒28Aと、該第1外筒28Aが内側に嵌合する第2外筒28Bとからなり、内筒26と第1外筒28Aとの間でゴム弾性体30を加硫成形した後、該加硫成形体を第2外筒28Bの内側に嵌合して絞り加工することにより組み立てられている。
【0020】
第1ゴムブッシュ20及び第2ゴムブッシュ22は、上記内筒26を挟んで径方向に対向する両側に一対の液室32,32を備える。すなわち、内筒26と外筒28の間のゴム弾性体30には、内筒26を挟んで対向する位置に、水やエチレングリコール、シリコーンオイル等の液体が封入された液室32が設けられており、この一対の液室32,32の対向方向(即ち、液室方向)に直交する径方向では、内筒26と外筒28との間が、内筒26を挟んで対向する一対の本体ゴム部34,34により連結されている。また、図2(b)に示すように、液室32の軸方向両側にはゴム弾性体30からなる側壁部36が設けられている。なお、この例では、部材の共通化を図るため、第1ゴムブッシュ20と第2ゴムブッシュ22は同一のものが使用されている。
【0021】
これら第1ゴムブッシュ20と第2ゴムブッシュ22は、内筒26を上記回転軸Oに平行に設定した上で、液室32が回転伝達カップリング10の周方向Cにおいて内筒26を挟んだ両側に対向配置されるように、中間ベースプレート24に保持されている。この例では、中間ベースプレート24は、図1に示す正面視で(即ち、回転軸Oの軸方向Xからみて)略矩形状をなし、上記第1の軸直角方向Y1における回転軸Oを挟んだ両側に、回転伝達カップリング10の軸方向Xに貫通する一対の第1取付孔38,38が設けられるとともに、上記第2の軸直角方向Y2における回転軸Oを挟んだ両側に、該軸方向Xに貫通する一対の第2取付孔40,40が設けられている。
【0022】
そして、この一対の第1取付孔38,38に、上記一対の第1ゴムブッシュ20,20が各別に挿入固定されるとともに、一対の第2取付孔40,40に、上記一対の第2ゴムブッシュ22,22が各別に挿入固定されている。この例では、第1取付孔38と第2取付孔40には、それぞれ第1ゴムブッシュ20及び第2ゴムブッシュ22の外筒28が圧入保持されている。その際、図1に示すように、上記液室方向に直交する本体ゴム部34の対向方向が、上記回転軸Oの軸直角方向に一致するように、ゴムブッシュ20,22を中間ベースプレート24に保持させる。すなわち、第1ゴムブッシュ20については、その本体ゴム部34の対向方向を第1の軸直角方向Y1に一致させ、第2ゴムブッシュ22については、その本体ゴム部34の対向方向を第2の軸直角方向Y2に一致させている。これにより、上記液室方向が周方向Cに沿って配置され、従って、図1に示すように、各ゴムブッシュ20,22において、周方向Cにおける内筒26を挟んだ両側に液室32が対向配置されている。
【0023】
図2に示すように、第1ゴムブッシュ20は、その内筒26が駆動側プレート14に接続固定され、また、第2ゴムブッシュ22は、その内筒26が従動側プレート18に接続固定される。詳細には、駆動側プレート14は、駆動軸12との連結部から上記第1の軸直角方向Y1における両側に延出しており、その先端部に軸方向Xに貫通するボルト穴14Aが設けられている。そして、第1ゴムブッシュ20の内筒26と該ボルト穴14Aを重ねて、ボルト15をこれらに挿通させて締め付けることにより、一対の第1ゴムブッシュ20,20が駆動側プレート14に接続固定される。また、従動側プレート18は、従動軸16との連結部から上記第2の軸直角方向Y2における両側に延出しており、その先端部に軸方向Xに貫通するボルト穴18Aが設けられている。そして、第2ゴムブッシュ22の内筒26と該ボルト穴18Aを重ねて、ボルト19をこれらに挿通させて締め付けることにより、一対の第2ゴムブッシュ22,22が従動側プレート18に接続固定される。
【0024】
以上の構成において、第1ゴムブッシュ20及び第2ゴムブッシュ22に設けられた液室32は、回転伝達カップリング10が回転方向に動いたときに圧力が高まる加圧側の液室32同士、及び該回転方向に動いたときに圧力が減少する減圧側の液室32同士が、それぞれ流路42を介して連結されている。この例では、回転軸Oを挟んで対向する位置にある一対のゴムブッシュ20,20;22,22間で液室32が流路42により連結されている。
【0025】
詳細には、図1に示すように、相対する一対の第1ゴムブッシュ20,20において、回転軸Oを中心として点対称位置にある液室32同士がそれぞれ流路42を介して連結されている。すなわち、一方(図1において上側)の第1ゴムブッシュ20における一方側(図1において左側)の液室32Aが、他方(図1において下側)の第1ゴムブッシュ20において該液室32Aと点対称位置にある液室32Eと、流路42Aを介して連結されており、上記一方の第1ゴムブッシュ20における他方側の液室32Bが、他方の第1ゴムブッシュ20において該液室32Bと点対称位置にある液室32Fと、流路42Bを介して連結されている。
【0026】
また、相対する一対の第2ゴムブッシュ22,22において、回転軸Oを中心として点対称位置にある液室32同士がそれぞれ流路42を介して連結されている。すなわち、一方(図1において右側)の第2ゴムブッシュ22における一方側(図1において上側)の液室32Cが、他方(図1において左側)の第2ゴムブッシュ22において該液室32Cと点対称位置にある液室32Gと、流路42Cを介して連結されており、上記一方の第2ゴムブッシュ22における他方側の液室32Dが、他方の第2ゴムブッシュ22において該液室32Dと点対称位置にある液室32Hと、流路42Dを介して連結されている。
【0027】
図3は、回転伝達カップリング10において、回転方向に力が入った状態を示す図であり、駆動軸12に反時計回りの回転駆動が生じた状態を示している。図示するように、上下一対の第1ゴムブッシュ20,20では回転方向に向かって内筒26,26が変位しようとし、これに伴い中間ベースプレート24が回転方向に回動することにより、左右一対の第2ゴムブッシュ22,22では回転方向と反対側に相対変位しようとする。そのため、図3に示すように、回転方向の動きにより圧力が高まる加圧側の液室32A,32D,32E,32Hと、圧力が減少する減圧側の液室32B,32C,32F,32Gができる。詳細には、第1ゴムブッシュ20の回転方向前方側の液室32A,32Eと、これに隣り合う第2ゴムブッシュ22の回転方向後方側の液室32H,32Dが加圧側となり、第1ゴムブッシュ20の回転方向後方側の液室32B,32Fと、これに隣り合う第2ゴムブッシュ22の回転方向前方側の液室32C,32Gが減圧側となる。
【0028】
本実施形態では、これらの各液室32A〜32Hが上記のように対向するゴムブッシュ間でかつ点対称位置にある液室同士が流路42A〜42Dにより連結されている。そのため、一対の第1ゴムブッシュ20,20間において、回転方向に動いたときの加圧側の液室32A,32E同士と、減圧側の液室32B,32F同士が、それぞれ流路42A,42Bを介して連結されるともに、一対の第2ゴムブッシュ22,22間において、回転方向に動いたときの加圧側の液室32D,32H同士と、減圧側の液室32C,32G同士が、それぞれ流路42D,42Cを介して連結されている。
【0029】
図2に示すように、これらの流路42A〜42Dは、中間ベースプレート24を3層構造とすることにより形成されている。すなわち、図2(a)に示すように、中間ベースプレート24は、駆動軸12に近い側の第1プレート44と、従動軸16に近い側の第3プレート48と、これら第1プレート44と第3プレート48との間に挟まれる第2プレート46とからなる。第2プレート46の両面には、上記流路42A〜42Dを形成するための凹溝50が設けられており、第1プレート44及び第3プレート48と重ね合わせることで流路42A〜42Dが形成されている。なお、これら流路42を各液室32に連結させるために、図2(b)に示すように、外筒28には開口窓52が設けられている。
【0030】
以上よりなる実施形態であると、回転伝達カップリング10に回転方向の力が入った場合、図3に示すように、加圧側の液室同士(32Aと32E,32Dと32H)、減圧側の液室同士(32Bと32F,32Cと32G)がそれぞれ流路42A〜42Dを介して連結された状態となる。そのため、連結された各液室32間において流路42を介して液体が流れにくく、液体が各液室32内に閉じ込められた状態に等しくなり、各液室32の体積を変化させることが困難となる。そのため、液圧により各ゴムブッシュ20,22の回転方向におけるばね定数が大幅に高くなるので、回転伝達カップリング10の回転方向での剛性が大幅に高まる。
【0031】
一方、回転伝達カップリング10の偏心方向(駆動軸12と従動軸16の互いの軸心がずれる方向)に力が入った場合には、図4に示すように、加圧側の液室32D,32Gと減圧側の液室32H,32Cとが連結された状態となる。詳細には、図4では、左右一対の第2ゴムブッシュ22,22の内筒26に対して下方への入力があった場合を示しており、これにより、上記液室方向が偏心方向(変位する方向)となる第2ゴムブッシュ22では、偏心側(即ち、下側)の液室32D,32Gが加圧側の液室となり、偏心方向と反対側(即ち、上側)の液室32C,32Hが減圧側の液室となる。一方、第1ゴムブッシュ20では、上記本体ゴム部34の対向方向が偏心方向となるので、内筒26は偏心方向(即ち、上方)に相対変位するものの、一対の液室間32A,32B;32E,32Fで圧力変化はほとんど生じない。そのため、この場合、一対の第2ゴムブッシュ22,22において、加圧側の液室32D,32Gから減圧側の液室32H,32Cにそれぞれ液体が流れるので、各液室32間で圧力変動がほとんど生じず、第2ゴムブッシュ22,22での偏心方向のばね定数を、本体ゴム部34の剪断変形による低い値に維持することができる。ここで、回転伝達カップリング10については、第1ゴムブッシュ20における液室方向と直交する方向でのばねと、第2ゴムブッシュ20における液室方向でのばねとの直列ばねとなり、その場合、剛性の低い第2ゴムブッシュ22のばねが支配的となるので、偏心方向での剛性を下げることができる。
【0032】
これにより、本実施形態の回転伝達カップリング10であると、回転方向と偏心方向との剛性比を大きくすることができる。よって、回転方向のトルクは確実に伝達しながら、駆動軸12と従動軸16に偏心や偏角があった場合でも、回転力を確実に伝達することができる。
【0033】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態に係る回転伝達カップリング10Aを示したものである。この例では、各液室32A〜32Hを連結する流路42の連結構成が上述した第1実施形態とは異なる。
【0034】
すなわち、第2実施形態では、隣り合う一組のゴムブッシュ20,22間において、回転方向に動いたときの加圧側の液室同士と減圧側の液室同士をそれぞれ連結するようにしている。詳細には、いずれか一方の第1ゴムブッシュ20とこれに隣り合ういずれか一方の第2ゴムブッシュ22との間で、互いに隣り合う液室同士(32Aと32H)を流路42Eを介して連結するとともに、これらゴムブッシュ20,22間の残りの液室同士(32Bと32G)を流路42Fを介して連結する。また、他方の第1ゴムブッシュ20とこれに隣り合う他方の第2ゴムブッシュ22との間で、互いに隣り合う液室同士(32Dと32E)を流路42Gを介して連結するとともに、これらゴムブッシュ20,22間の残りの液室同士(32Cと32F)を流路42Hを介して連結する。なお、図示しないが、これらの流路42E〜42Hは、第1実施形態と同様、中間ベースプレート24を三層構造することにより形成することができる。
【0035】
図6は、回転伝達カップリング10Aにおいて、回転方向に力が入った状態を示す図であり、駆動軸12に反時計回りの回転駆動が生じた状態を示している。この場合も、上述した第1実施形態と同様に、回転方向の動きにより圧力が高まる加圧側の液室32A,32D,32E,32Hと、圧力が減少する減圧側の液室32B,32C,32F,32Gができる。ここで、上記流路42E〜42Hを設けたことにより、一方の第1ゴムブッシュ20と一方の第2ゴムブッシュ22との間で、回転方向入力時における加圧側の液室32A,32H同士と、減圧側の液室32B,32G同士が、それぞれ流路42E,42Fを介して連結されるとともに、他方の第1ゴムブッシュ20と他方の第2ゴムブッシュ22との間で、加圧側の液室32D,32E同士と、減圧側の液室32C,32F同士が、それぞれ流路42G,42Hを介して連結されている。
【0036】
かかる第2実施形態であると、回転伝達カップリング10に回転方向の力が入った場合、図6に示すように、加圧側の液室同士(32Aと32H,32Dと32E)、減圧側の液室同士(32Bと32G,32Cと32F)がそれぞれ流路42E〜42Hを介して連結された状態となる。そのため、第1実施形態と同様、連結された各液室32間において流路42を介して液体が流れにくく、各液室32の体積を変化させることが困難となるので、各ゴムブッシュ20,22の回転方向におけるばね定数が液圧によって高くなり、回転伝達カップリング10の回転方向での剛性を大幅に高めることができる。
【0037】
一方、回転伝達カップリング10の偏心方向に力が入った場合、例えば、図7に示すように、左右一対の第2ゴムブッシュ22,22の内筒26に対して下方への入力があった場合、第1実施形態と同様、上記液室方向が偏心方向となる第2ゴムブッシュ22では、偏心側(即ち、下側)の液室32D,32Gが加圧側の液室となり、偏心方向と反対側(即ち、上側)の液室32C,32Hが減圧側の液室となる。この場合、第2ゴムブッシュ22の加圧側の液室32G,32Dから、流路42F,42Gを介して連結された第1ゴムブッシュ20の液室32B,32Eに、液体が流動し、これにより加圧される被加圧側の液室32B,32Eが圧力変動をある程度吸収する。そのため、第2ゴムブッシュ22,22での偏心方向のばね定数につき、本体ゴム部34の剪断変形による低い値からの上昇を抑えることができる。よって、第1ゴムブッシュ20における液室方向と直交する方向でのばねと、第2ゴムブッシュ20における液室方向でのばねとの直列ばねとなり、その場合、剛性の低い第2ゴムブッシュ22のばねが支配的となるので、偏心方向での剛性を下げることができる。
【0038】
なお、第2実施形態では、偏心方向での入力時に、加圧側の液室32G,32Dから液体が流れ込んで加圧される被加圧側の液室32B,32Eがあり、そこでは図7に示すように液室32B,32Eが押し広げられるが、圧力変動が残ってしまう。そのため、該圧力変動が残った分だけ第2ゴムブッシュ22の剛性が高くなるので、第1実施形態よりも偏心方向での剛性を下げる効果には劣る。その他の構成及び作用効果については第1実施形態と同様であり、同じ構成要素には同じ符号を付して説明は省略する。
【0039】
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態に係る回転伝達カップリング10Bを示したものである。この例も、各液室32A〜32Hを連結する流路42の連結構成が上述した第1実施形態とは異なる。
【0040】
すなわち、第3実施形態では、第1ゴムブッシュ20と第2ゴムブッシュ22の液室は、互いに異なるゴムブッシュ20,22間で周方向Cにおいて隣り合う液室32同士がそれぞれ流路42を介して連結されている。詳細には、いずれか一方の第1ゴムブッシュ20とこれに隣り合ういずれか一方の第2ゴムブッシュ22との間で、互いに隣り合う液室同士(32Bと32C)が流路42Iを介して連結され、該一方の第2ゴムブッシュ22と他方の第1ゴムブッシュ20との間で、互いに隣り合う液室同士(32Dと32E)が流路42Jを介して連結され、該他方の第1ゴムブッシュ20と他方の第2ゴムブッシュ22との間で、互いに隣り合う液室同士(32Fと32G)が流路42Kを介して連結され、該他方の第2ゴムブッシュ22と上記一方の第1ゴムブッシュ20との間で、互いに隣り合う液室同士(32Hと32A)が流路42Lを介して連結されている。なお、図示しないが、これらの流路42I〜42Lは、第1実施形態と同様、中間ベースプレート24を三層構造することにより形成することができる。
【0041】
図9は、回転伝達カップリング10Bにおいて、回転方向に力が入った状態を示す図であり、駆動軸12に反時計回りの回転駆動が生じた状態を示している。この場合も、上述した第1実施形態と同様に、回転方向の動きにより圧力が高まる加圧側の液室32A,32D,32E,32Hと、圧力が減少する減圧側の液室32B,32C,32F,32Gができる。ここで、上記流路42I〜42Lを設けたことにより、回転方向入力時における加圧側の液室同士(32Aと32H,32Dと32E)と、減圧側の液室同士(32Bと32C,32Fと32G)がそれぞれ流路42L,42J,42I,42Kを介して連結された状態となる。そのため、第1実施形態と同様、連結された各液室32間において流路42を介して液体が流れにくく、各液室32の体積を変化させることが困難となるので、各ゴムブッシュ20,22の回転方向におけるばね定数が液圧によって高くなり、回転伝達カップリング10の回転方向での剛性を大幅に高めることができる。
【0042】
一方、回転伝達カップリング10の偏心方向に力が入った場合、例えば、図10に示すように、左右一対の第2ゴムブッシュ22,22の内筒26に対して下方への入力があった場合、第1実施形態と同様、上記液室方向が偏心方向となる第2ゴムブッシュ22では、偏心側(即ち、下側)の液室32D,32Gが加圧側の液室となり、偏心方向と反対側(即ち、上側)の液室32C,32Hが減圧側の液室となる。この場合、第2ゴムブッシュ22の加圧側の液室32D,32Gから、流路42J,42Kを介して連結された第1ゴムブッシュ20の液室32E,32Fに、液体が流動し、これにより加圧される被加圧側の液室32E,32Fが圧力変動をある程度吸収する(この場合、主としてゴム弾性体30の側壁部36が軸方向外方側に拡張することにより圧力変動を吸収する)。そのため、第2ゴムブッシュ22,22での偏心方向のばね定数につき、本体ゴム部34の剪断変形による低い値からの上昇を抑えることができる。よって、第1ゴムブッシュ20における液室方向と直交する方向でのばねと、第2ゴムブッシュ22における液室方向でのばねとの直列ばねとなり、その場合、剛性の低い第2ゴムブッシュ22のばねが支配的となるので、偏心方向での剛性を下げることができる。なお、この場合、減圧側の液室32C,32Hについては、これらと流路42I,42Lを介して連結された液室32B,32Aが液体を供給するための被減圧側の液室となる。
【0043】
第3実施形態では、偏心方向での入力時に、加圧側の液室32D,32Gから液体が流れ込んで加圧される被加圧側の液室32E,32Fにおいて圧力変動が残ってしまうので、該圧力変動が残った分だけ第2ゴムブッシュ22の剛性が高くなり、そのため、第1実施形態よりも偏心方向での剛性を下げる効果には劣る。その他の構成及び作用効果については第1実施形態と同様であり、同じ構成要素には同じ符号を付して説明は省略する。
【0044】
[その他の実施形態]
上記実施形態では、第1ゴムブッシュ20の内筒26を駆動側プレート(駆動側部材)14に接続固定し、外筒28を中間ベースプレート(カップリング本体)24に固定するとともに、第2ゴムブッシュ22の内筒26を従動側プレート(従動側部材)18に接続固定し、外筒28を中間ベースプレート(カップリング本体)24に固定するようにしたが、これとは反対に、両ゴムブッシュの内筒をカップリング本体に固定し、外筒を駆動側部材や従動側部材に接続固定してもよい。また、これらを適宜に組み合わせてもよい。すなわち、第1ゴムブッシュは、駆動側部材に接続される限り、内筒と外筒とのいずれで駆動側部材に接続されてもよく、すなわち、内筒を駆動側部材に接続しても、カップリング本体側に固定してもよい。また、第2ゴムブッシュは、従動側部材に接続される限り、内筒と外筒とのいずれで従動側部材に接続されてもよく、すなわち、内筒を従動側部材に接続しても、カップリング本体側に固定してもよい。
【0045】
なお、回転方向入力時に各液室が加圧側と減圧側のいずれになるかは、両ゴムブッシュを内筒と外筒のいずれでカップリング本体に接続するかによって異なるので、それに応じて流路を設定すればよい。すなわち、上記実施形態のように両ゴムブッシュをともに外筒側でカップリング本体に接続し、あるいはともに内筒側でカップリング本体に接続した場合には、回転方向入力時に周方向で互いに隣り合う液室が加圧側同士又は減圧側同士となるが、両ゴムブッシュでカップリング本体に対する接続部材が異なる場合には、回転方向入力時に加圧側液室と減圧側液室が周方向で互いに隣り合うことになる。そのため、後者の場合には、上記実施形態とは流路の設定は異なることになるが、その場合にも、回転方向入力時の加圧側の液室同士、減圧側の液室同士を、それぞれ流路を介して連結すればよい。
【0046】
また、上記実施形態では、第1ゴムブッシュと第2ゴムブッシュを各2個、合計で4個のゴムブッシュを設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば第1ゴムブッシュと第2ゴムブッシュを各3個、合計で6個設けたり、各4個、合計で8個設けたりすることができ、その数は特に限定されない。但し、上記実施形態のように各2個設ける場合、偏心方向での入力時に、一方のゴムブッシュでの圧縮方向のばねと他方のゴムブッシュでの剪断方向のばねとの直列ばねとして、剛性の低い剪断方向のばねを有利に利用することができるので、より好ましい。なお、第1ゴムブッシュと第2ゴムブッシュを各3個設ける場合、3つの液室間を分岐する流路で連結したり、2本又は3本の流路で3つの液室間を連結したりしてもよい。
【0047】
本発明の回転伝達カップリングは、インホイールモータとホイール又はハブとを連結する部位に設ける態様の他、自動車のドライブシャフトやプロペラシャフトの動力伝達部に設けるなど、自動車をはじめとする各種車両、機械などにおいて、駆動側から従動側に回転力を伝達させる部位に適用することができ、特に限定されない。その他、一々列挙しないが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
10,10A,10B…回転伝達カップリング
14…駆動側プレート(駆動側部材) 18…従動側プレート(従動側部材)
20…第1ゴムブッシュ 22…第2ゴムブッシュ
24…中間ベースプレート(カップリング本体) 26…内筒 28…外筒
32…液室 32A,32D,32E,32H…回転方向時の加圧側液室
32B,32C,32F,32G…回転方向時の減圧側液室
38…第1取付孔 40…第2取付孔 42,42A〜L…流路
O…回転軸 X…回転伝達カップリング(回転軸)の軸方向
Y1…回転伝達カップリングの第1の軸直角方向 Y2…第2の軸直角方向
C…回転伝達カップリングの周方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動側部材と該駆動側部材によって回転させられる従動側部材との間に介設されて両者を連結する回転伝達カップリングであって、
前記駆動側部材に接続される複数の第1ゴムブッシュと、
前記従動側部材に接続される複数の第2ゴムブッシュと、
これら第1ゴムブッシュと第2ゴムブッシュを、前記回転伝達カップリングの回転軸を取り囲む周上で交互に並んだ状態に保持するカップリング本体と、
を備え、
前記第1ゴムブッシュ及び第2ゴムブッシュはそれぞれ、前記回転軸に平行な軸部材と、前記軸部材を挟んで前記回転伝達カップリングの周方向における両側に対向して設けられた一対の液室とを備えてなり、
これら第1ゴムブッシュ及び第2ゴムブッシュに設けられた前記液室は、前記回転伝達カップリングが回転方向に動いたときに圧力が高まる加圧側の液室同士、及び該回転方向に動いたときに圧力が減少する減圧側の液室同士が、それぞれ流路を介して連結された
ことを特徴とする回転伝達カップリング。
【請求項2】
前記回転軸に垂直な第1の軸直角方向において、前記回転軸を挟んだ両側に一対の前記第1ゴムブッシュが配置されるとともに、前記第1の軸直角方向に垂直な第2の軸直角方向において、前記回転軸を挟んだ両側に一対の前記第2ゴムブッシュが配置されたことを特徴とする請求項1記載の回転伝達カップリング。
【請求項3】
前記カップリング本体は、前記第1の軸直角方向における前記回転軸を挟んだ両側において前記回転伝達カップリングの軸方向に貫通する一対の第1取付孔と、前記第2の軸直角方向における前記回転軸を挟んだ両側において前記回転伝達カップリングの軸方向に貫通する一対の第2取付孔とを備え、前記一対の第1取付孔に前記一対の第1ゴムブッシュが挿入固定されるとともに、前記一対の第2取付孔に前記一対の第2ゴムブッシュが挿入固定されたことを特徴とする請求項2記載の回転伝達カップリング。
【請求項4】
前記一対の第1ゴムブッシュ間において前記回転方向に動いたときの加圧側の液室同士と減圧側の液室同士がそれぞれ流路を介して連結されるともに、前記一対の第2ゴムブッシュ間において前記回転方向に動いたときの加圧側の液室同士と減圧側の液室同士がそれぞれ流路を介して連結されたことを特徴とする請求項2又は3記載の回転伝達カップリング。
【請求項5】
一方の前記第1ゴムブッシュと一方の前記第2ゴムブッシュとの間で、前記回転方向に動いたときの加圧側の液室同士と減圧側の液室同士がそれぞれ流路を介して連結されるとともに、他方の前記第1ゴムブッシュと他方の前記第2ゴムブッシュとの間で、前記回転方向に動いたときの加圧側の液室同士と減圧側の液室同士がそれぞれ流路を介して連結されたことを特徴とする請求項2又は3記載の回転伝達カップリング。
【請求項6】
前記第1ゴムブッシュと第2ゴムブッシュの液室は、互いに異なるゴムブッシュ間で前記回転伝達カップリングの周方向に隣り合う液室同士がそれぞれ流路を介して連結されたことを特徴とする請求項2又は3記載の回転伝達カップリング。
【請求項1】
駆動側部材と該駆動側部材によって回転させられる従動側部材との間に介設されて両者を連結する回転伝達カップリングであって、
前記駆動側部材に接続される複数の第1ゴムブッシュと、
前記従動側部材に接続される複数の第2ゴムブッシュと、
これら第1ゴムブッシュと第2ゴムブッシュを、前記回転伝達カップリングの回転軸を取り囲む周上で交互に並んだ状態に保持するカップリング本体と、
を備え、
前記第1ゴムブッシュ及び第2ゴムブッシュはそれぞれ、前記回転軸に平行な軸部材と、前記軸部材を挟んで前記回転伝達カップリングの周方向における両側に対向して設けられた一対の液室とを備えてなり、
これら第1ゴムブッシュ及び第2ゴムブッシュに設けられた前記液室は、前記回転伝達カップリングが回転方向に動いたときに圧力が高まる加圧側の液室同士、及び該回転方向に動いたときに圧力が減少する減圧側の液室同士が、それぞれ流路を介して連結された
ことを特徴とする回転伝達カップリング。
【請求項2】
前記回転軸に垂直な第1の軸直角方向において、前記回転軸を挟んだ両側に一対の前記第1ゴムブッシュが配置されるとともに、前記第1の軸直角方向に垂直な第2の軸直角方向において、前記回転軸を挟んだ両側に一対の前記第2ゴムブッシュが配置されたことを特徴とする請求項1記載の回転伝達カップリング。
【請求項3】
前記カップリング本体は、前記第1の軸直角方向における前記回転軸を挟んだ両側において前記回転伝達カップリングの軸方向に貫通する一対の第1取付孔と、前記第2の軸直角方向における前記回転軸を挟んだ両側において前記回転伝達カップリングの軸方向に貫通する一対の第2取付孔とを備え、前記一対の第1取付孔に前記一対の第1ゴムブッシュが挿入固定されるとともに、前記一対の第2取付孔に前記一対の第2ゴムブッシュが挿入固定されたことを特徴とする請求項2記載の回転伝達カップリング。
【請求項4】
前記一対の第1ゴムブッシュ間において前記回転方向に動いたときの加圧側の液室同士と減圧側の液室同士がそれぞれ流路を介して連結されるともに、前記一対の第2ゴムブッシュ間において前記回転方向に動いたときの加圧側の液室同士と減圧側の液室同士がそれぞれ流路を介して連結されたことを特徴とする請求項2又は3記載の回転伝達カップリング。
【請求項5】
一方の前記第1ゴムブッシュと一方の前記第2ゴムブッシュとの間で、前記回転方向に動いたときの加圧側の液室同士と減圧側の液室同士がそれぞれ流路を介して連結されるとともに、他方の前記第1ゴムブッシュと他方の前記第2ゴムブッシュとの間で、前記回転方向に動いたときの加圧側の液室同士と減圧側の液室同士がそれぞれ流路を介して連結されたことを特徴とする請求項2又は3記載の回転伝達カップリング。
【請求項6】
前記第1ゴムブッシュと第2ゴムブッシュの液室は、互いに異なるゴムブッシュ間で前記回転伝達カップリングの周方向に隣り合う液室同士がそれぞれ流路を介して連結されたことを特徴とする請求項2又は3記載の回転伝達カップリング。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−172789(P2012−172789A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36766(P2011−36766)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
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