説明

回転位置検出器

【課題】本発明は、軸方向に沿って設けられた少なくとも一対のロータ及び突出歯のステータ巻線を用いて簡単な構成の回転位置検出器を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明による回転位置検出器は、回転自在で軸方向(A)に並設された一対のロータ(8a,8b)からなる多段ロータ(8)と、各ロータ(8a,8b)に対して各間隙(G1,G2)を介しかつ外周側に1ヶ所のみに固定されたステータ(1)と、このステータ(1)に設けられステータ巻線(12,13)を有する第1、第2突出歯(1a,1b)と、を備え、各ロータ(8a,8b)の外周面(8aA,8bA)は同じ回転角度位置では各突出歯(1a,1b)との間隙(G1,G2)が異なるようにした構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転位置検出器に関し、特に、軸方向に沿って設けられた少なくとも一対のロータ及び突出歯のステータ巻線を用いて簡単な構成の回転位置検出器を得るための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられいたこの種のレゾルバとしては、特許文献1に開示された構成を挙げることができ、その構成は図4に示される通りである。
すなわち、図4において符号1で示されるものは輪状をなすステータであり、このステータ1の内壁には、複数の突出歯1aが所定角度間隔で内方へ向けて突出され、各突出歯1aには、検出コイルであるステータ巻線12が設けられている。
【0003】
前記ステータ1の内側には、輪状をなすロータ8が偏心又は非真円形状で回転自在に設けられており、このロータ8の外周とステータ1の各突出歯1aとの間の隙間が、前記ロータ8の回転によって変化し、この隙間の変化によるギャップパーミアンスの変化により,各突出歯1aのステータ巻線12の出力巻線(図示せず)からは、二相出力信号が出力されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,920,135号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のレゾルバは、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、輪状のステータの内壁には、複数の突出歯とスロットが交互に形成され、ロータの形状も偏心又は非真円形としなければならず、構造が複雑で、工作機や自動車のエンジン回り等に取付けるには多くの工数を必要とすると共に、製造コストの低減化が困難であった。
また、工作機や自動車のエンジン回り等に取付けられたレゾルバを、メンテナンス、又は、故障等によって交換する場合には、その除去作業に多大の労力を必要としていた。
また、ステータが輪状であるため、その取付位置は限られたものとなり、自由度を持たせることが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による回転位置検出器は、回転自在に設けられ軸方向に沿って並設された少なくとも一対の第1、第2ロータと、前記各ロータの各外周面側で前記各外周面と対向して周方向の1ヶ所のみに固定配設されたステータと、前記ステータに設けられ前記軸方向に沿って前記各ロータに対向する第1、第2突出歯と、前記第1、第2突出歯に巻回され励磁巻線及び出力巻線からなる第1、第2ステータ巻線と、を備え、前記各ロータの外周面は、前記各突出歯との間隙が異なるようにした構成であり、また、前記各ロータによって多段ロータが形成される構成であり、また、前記第1、第2ステータ巻線によって同相出力及び逆相出力を得ることができる構成である。
【発明の効果】
【0007】
本発明による回転位置検出器は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、回転自在に設けられ軸方向に沿って並設された少なくとも一対の第1、第2ロータと、前記各ロータの各外周面側で前記各外周面と対向して周方向の1ヶ所のみに固定配設されたステータと、前記ステータに設けられ前記軸方向に沿って前記各ロータに対向する第1、第2突出歯と、前記第1、第2突出歯に巻回され励磁巻線及び出力巻線からなる第1、第2ステータ巻線と、を備え、前記各ロータの外周面は、前記各突出歯との間隙が異なるように構成されていることにより、ステータ側を従来よりも大幅に小型かつ簡略化した構造を得ることができ、相手方への取付自由度を大幅に向上させることができる。
また、一対のロータにより多段ロータを得ることができ、回転の有無及び回転速度を検出することができる。
また、軸方向に沿って設けた一対の各突出歯の各ステータ巻線によって同相出力及び逆相出力を得ることができ、回転位置検出機能を得ることができる。また、従来のゾルバ同様に、角度位置を検出するためには、sin波用とcos波用とした本願の回転位置検出器を2個使うことにより実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による回転位置検出器の要部を示す断面図である。
【図2】図1の右側面図である。
【図3】図1の多段ロータの構成図である。
【図4】図3の他の形態の構成図である。
【図5】図3の他の形態の構成図である。
【図6】図3の他の形態の構成図である。
【図7】図1の回転位置検出器で出力される検出信号を示す特性図である。
【図8】従来のレゾルバを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、軸方向に沿って設けられた少なくとも一対のロータ及び突出歯のステータ巻線を用いて簡単な構成の回転位置検出器を提供することを目的とする。
【実施例】
【0010】
以下、図面と共に本発明による回転位置検出器の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分については、同一符号を用いて説明する。
図1において、符号1で示されるものは、ステータであり、このステータ1は従来のように輪状ではなく、後述の第1、第2ロータ8a,8bの軸方向Aに沿って長手形状をなすステータであり、このステータ1には、前記軸方向Aに沿って一対の第1、第2突出歯10,11が前記各ロータ8a,8bに対向して下方へ向けて突出すると共に互いに離間して配設されている。
【0011】
前記各突出歯10,11には、周知の励磁/出力巻線からなる第1、第2ステータ巻線12,13が巻回されており、励磁巻線12a,13aに励磁信号を印加した状態で各出力巻線12b,13bから回転位置信号が出力されるように構成されている。
【0012】
前記ステータ1に隣接する位置、すなわち、図1でステータ1の下方位置には、一対の前述の第1、第2ロータ8a,8bが互いに軸方向Aに沿って並設されており、各ロータ8a,8bは、図1で示されるように、その第1、第2外周面8aA,8bAが同じ回転角度位置では、前記各突出歯10,11との第1、第2間隙G,Gが互いに異なるように構成されている。尚、前述の各ロータ8a,8bは、軸倍角が1Xであるため、真円で互いに偏心させて並設するか、非真円形状で互いにずらせて前述の各間隙G,Gが形成されるように構成されている。
前記ステータ1は、図2にも特に示されているように、前記各ロータ8a,8bの各外周面8aA,8bA側で前記各外周面8aA,8bAと対向して周方向Bの1ヶ所のみに固定配設されており、このステータ1は1個のみで構成されていることにより、図示しない機械装置及び自動車等の被取付部に前記ステータ1を取付ける場合の取付け性が従来の輪状ステータの場合よりも大幅に向上できるものである。
【0013】
次に、前述の構成において、前記各ロータ8a,8bからなる多段ロータ8(Xは周知の軸倍角)を図示しない前述の機械装置及び自動車等の被回転検出軸に取付け、前記ステータ1を前記多段ロータ8の近傍位置に取付け、前記各励磁巻線12a,13aに励磁信号を印加した状態で、前記多段ロータ8が回転すると、この多段ロータ8の各ロータ8a,8bの各外周面8aA,8bAとこの外周面8aA,8bAと各々対向する各突出歯10,11との間隙G,Gの変化に応じて図3で示される出力電圧特性を得ることができる。
尚、前述の場合、図3に示されるように、前記第1ロータ8aによって逆相出力を検出すると共に、第2ロータ8bによって同相出力を検出することができる。また、図示していないが、前記ステータ1を90度間隔で一対配設すると、従来のレゾルバと同一機能を得ることができる。
また、前記多段ロータ8は、前述の1Xのみではなく、図4から図6で示されるように、軸倍角が2X用、3X用、4X用、・・・・nX用として構成することができ、どの極数でも対応可能である。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明による回転位置検出器は、回転位置検出だけではなく、回転速度の検出も可能であり、回転部材を有するあらゆる分野の検出へ適用が可能である。
【符号の説明】
【0015】
1 ステータ
1a,1b 第1、第2突出歯
8 多段ロータ
8a,8b 第1、第2ロータ
8aA,8bA 第1、第2外周面
12,13 第1、第2ステータ巻線
12a,13a 励磁巻線
12b,13b 出力巻線
,G 第1、第2間隙
A 軸方向
B 周方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に設けられ軸方向(A)に沿って並設された少なくとも一対の第1、第2ロータ(8a,8b)と、前記各ロータ(8a,8b)の各外周面(8aA,8bA)側で前記各外周面(8aA,8bA)と対向して周方向(B)の1ヶ所のみに固定配設されたステータ(1)と、前記ステータ(1)に設けられ前記軸方向(A)に沿って前記各ロータ(8a,8b)に対向する第1、第2突出歯(1a,1b)と、前記第1、第2突出歯(1a,1b)に巻回され励磁巻線(12a,13a)及び出力巻線(12b,13b)からなる第1、第2ステータ巻線(12,13)と、を備え、
前記各ロータ(8a,8b)の外周面(8aA,8bA)は、前記各突出歯(1a,1b)との間隙(G1,G2)が異なるように構成されていることを特徴とする回転位置検出器。
【請求項2】
前記各ロータ(8a,8b)によって多段ロータ(8)が構成されることを特徴とする請求項1記載の回転位置検出器。
【請求項3】
前記第1、第2ステータ巻線(12,13)によって同相出力及び逆相出力を得ることができることを特徴とする請求項1又は2記載の回転位置検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−112628(P2011−112628A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272242(P2009−272242)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】