説明

回転体の温度測定装置

【課題】長期間の使用に拘わりなく常に回転体の温度を正確に測定することのできる回転体の温度測定装置を提供する。
【解決手段】回転体11に設けられるとともに一方を回転体に接触させ他方を回転体11から離間させて回転体11の温度を計測する熱電対12と、この熱電対12の他方の温度を計測する基準温度センサ14と、熱電対12が計測した計測温度を非接触で非回転側から取得するピックアップコイル15と、このピックアップコイル15により取得される計測温度と、基準温度センサ14の計測温度とから回転体11の温度を算出する温度算出回路20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばロータなどの回転体の温度を測定する回転体の温度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転する圧延中のロール(回転体)の表面温度を測定する表面温度測定装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる表面温度測定装置は、ロール内に設けた熱電対でロールの表面温度を検出し、この検出した検出信号をスリップリングを介して外部(固定側)へ送り、外部に設けたデータ処理装置によってロールの表面温度を算出して求めるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−241918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような表面温度測定装置にあっては、スリップリングを用いなければならず、このスリップリングはロールとともに回転してブラシに摺接していくものであるから、長期期間の使用によりスリップリングとブラシとに摩耗が生じ、このため熱電対の検出信号が外部へ正しく送られなくなり、ロールの表面温度を正確に測定することができなくなるという問題があった。
【0006】
この発明の目的は、長期間の使用に拘わりなく常に回転体の温度を正確に測定することのできる回転体の温度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回転体に設けられるとともに一方を回転体に接触させ他方を回転体から離間させて該回転体の温度を計測する第1温度計測手段と、この第1温度計測手段の他方の温度を計測する第2温度計測手段と、温度算出手段とを備える。そして、温度算出手段は、第1温度計測手段の計測温度と第2温度計測手段の計測温度とから回転体の温度を算出する。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、長期間の使用に拘わりなく回転体の温度を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施例の回転体の温度測定装置の構成を概念的に示した概略構成図である。
【図2】第2実施例の回転体の温度測定装置の構成を概念的に示した概略構成図である。
【図3】第3実施例の回転体の温度測定装置の構成を概念的に示した概略構成図である。
【図4】第4実施例の回転体の温度測定装置の構成を概念的に示した概略構成図である。
【図5】第5実施例の回転体の温度測定装置の構成を概念的に示した概略構成図である。
【図6】(A)は第6実施例の回転体の温度測定装置の構成を概念的に示した概略構成図、(B)はトラクションローラと熱電対の位置関係を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明に係る回転体の温度測定装置の実施の形態である実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0011】
[第1実施例]
図1に示す回転体の温度測定装置10は、ロータなどの回転体11に設けた熱電対(第1温度計測手段)12と、ケース(非回転部)13内の温度を測定する基準温度センサ(第2温度計測手段)14と、熱電対12に流れる電流を検出するピックアップコイル(非接触取得手段)15と、回転体11の温度を算出する温度算出回路(温度算出手段)20等とを備えている。
【0012】
回転体11はケース13内に回転自在に配置され、回転体11の回転軸11Aはベアリング16を介して回転自在にケース13に保持されている。
【0013】
熱電対12の一端12aは回転体11の側面11bに接触され、その他端12bは回転体11の側面11bから離間されている。そして、熱電対12には、その一端12aと他端12bとの間の温度差に応じた電流が流れる。
【0014】
ピックアップコイル15は、熱電対12と対向するケース13の内壁面に取り付けられており、熱電対12に流れる電流によって磁界が発生すると、回転体11が回転しているとき、ピックアップコイル15にその磁界による電磁誘導によって電磁誘導起電圧が発生する。このピックアップコイル15の電圧は、回転体11の回転速度が一定であれば熱電対12の電流に比例することになる。
【0015】
すなわち、ピックアップコイル15は、熱電対12が計測した計測温度を非接触で非回転側から取得することになる。
【0016】
基準温度センサ14は、ケース13に取り付けられており、ケース13内である回転体11の周囲の温度、つまり、熱電対12の他端12bの温度を検出するものである。基準温度センサ14は例えばサーミスタなどである。
【0017】
温度算出回路20は、ピックアップコイル15に生じる電磁誘導起電圧と、基準温度センサ14が検出する温度とに基づいて回転体11の温度を算出する。
【0018】
この算出は、ピックアップコイル15の電磁誘導起電圧から熱電対12の両端の温度差を求め、この温度差に基準温度センサ14が検出する温度を加算することにより求めるものである。
[動 作]
次に、上記のように構成される温度測定装置10の動作について説明する。
【0019】
回転体11が所定の回転速度で回転しているとき、この回転体11の温度が上昇すると、熱電対12の両端部12a,12b間に温度差が生じ、この温度差に応じた電流が熱電対12に流れる。
【0020】
熱電対12に電流が流れると、回転体11が回転していることによりピックアップコイル15にその電流に応じた電磁誘導起電圧が生じる。
【0021】
温度算出回路20は、ピックアップコイル15の電磁誘導起電圧から熱電対12の温度差を求め、さらに、この温度差に基準温度センサ14が検出する温度を加算して回転体11の温度を算出する。
【0022】
このように、電磁誘導によって熱電対12の電流をピックアップコイル15によって検出するようにしたものであるから、従来のようにスリップリング等の摩耗による不具合は発生しない。このため、長期間の使用に拘わりなく常に回転体11の温度を正確に測定することができる。
【0023】
この実施例では、回転体11が所定速度で回転する場合について説明したが、回転体11の回転速度が変わる場合には、回転体11の回転速度を検出する回転速度センサを設け、この回転速度センサが検出する回転速度とピックアップコイル15の電磁誘導起電圧とから熱電対12の温度差を算出する。これは、回転体11の回転速度が2倍になれば電磁誘導起電圧も2倍になるからである。
【0024】
以上説明したように、この第1実施例によれば下記の効果を有する。
(1)従来のようにスリップリング等の摩耗による不具合は発生しないため、長期間の使用に拘わりなく常に回転体11の温度を正確に測定することができる。
[第2実施例]
図2は、第2実施例の温度測定装置100を示したものである。この温度測定装置100は、熱電対12の他端12bをベアリング16の内輪(図示せず)に固定したものであり、熱電対12は回転体11とともに安定した状態で回転していくので、安定した温度測定が可能となる。
【0025】
この第2実施例によれば、第1実施例の効果の他に下記の効果を有する。
(1)熱電対12の他端12bをベアリング16の内輪に固定したものであるから、熱電対12は回転体11とともに安定した状態で回転していく。このため、安定した温度測定が可能となる。
[第3実施例]
図3は、第3実施例の温度測定装置120を示したものである。この温度測定装置120は、回転体11の側面11bに突起121を設け、この突起121に熱電対12を取り付け、この熱電対12の一端12aを回転体11の側面11bに接触させ、その他端12bを回転体11の側面11bから離間させたものである。
【0026】
この第3実施例によれば、第1実施例の効果の他に下記の効果を有する。
(1)回転体11の突起121に熱電対12を取り付けたものであるから、熱電対12は回転体11とともに安定した状態で回転していき、このため、安定した温度測定が可能となる。
[第4実施例]
図4は、第4実施例の温度測定装置140を示したものである。この温度測定装置140は、熱電対12の他端12b1,12b2間にコイル141を接続して、熱電対12の起電力による磁界を大きくしたものであり、これにより測定精度を高めたものである。
【0027】
この第4実施例によれば、第1実施例の効果の他に下記の効果を有する。
(1)熱電対12にコイル141を接続したものであるから、熱電対12に発生する電流による磁界をコイル141によって大きくすることができ、このため熱電対12による温度測定の測定精度を高めることができる。
[第5実施例]
図5は、第5実施例の温度測定装置160を示したものである。この温度測定装置160は、熱電対12の他端12b1,12b2間に設けたコイル141を回転体11の側面11bに突起121に取り付けて、熱電対12を回転体11に固定したものである。
【0028】
この第5実施例によれば、第4実施例の効果の他に下記の効果を有する。
(1)回転体11の突起121に熱電対12のコイル141を取り付けたものであるから、熱電対12を回転体11に確実に固定することができ、このため安定した温度測定が可能となる。
[第6実施例]
図6は、トラクションローラ200,220に適用した温度測定装置201,221を示したものである。
【0029】
温度測定装置201,221は、トラクションローラ200,220の側面200A,220Aに取り付けた熱電対(第1温度計測手段)202,222と、基準温度センサ(第2温度計測手段)203,223と、ピックアップコイル(非接触取得手段)204,224と、温度算出回路(温度算出手段)210,230とを備えている。
【0030】
熱電対202,222の一端202a,222aはトラクションローラ200,220の回転表面200B,220Bの近傍に接触され(図6(A)では説明の便宜上一端202a,222aは回転表面200B,220Bから離間して示してある)、その他端202b,222bはトラクションローラ200,220の側面200A,220Aの中心側へ位置されるとともにその側面200A,220Aから離間されている。
【0031】
基準温度センサ203,223は、図示しないケースに取り付けられており、その先端部が熱電対202,222の他端202b,222bの近傍に位置し、その他端202b,222bの温度を検出するようになっている。
【0032】
ピックアップコイル204,224は、熱電対202,222と対向する位置に図示しないケースの内壁面に取り付けられている。
【0033】
ここで、トラクションローラ200,220の回転時には回転表面200B,220Bに熱が発生し、トラクション係数に変化が生じる。このため、その表面温度に応じてトラクションローラ200,220間の最適な押し付力を制御する必要がある。
【0034】
この第6実施例によれば、温度測定装置201,221によって回転表面200B,220Bの温度を、長期間の使用に拘わりなく正確に測定することができる。このため、長期間の使用に拘わりなくトラクションローラ200,220間の最適な押し付力の制御が可能となる。
【0035】
以上、回転体の温度測定装置の実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【符号の説明】
【0036】
11 回転体
12 熱電対(第1温度計測手段)
14 基準温度センサ(第2温度計測手段)
15 ピックアップコイル(非接触取得手段)
20 温度算出回路(温度算出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体に設けられるとともに一方を回転体に接触させ他方を回転体から離間させて該回転体の温度を計測する第1温度計測手段と、
この第1温度計測手段の他方の温度を計測する第2温度計測手段と、
前記第1温度計測手段の計測温度と、前記第2温度計測手段の計測温度とから前記回転体の温度を算出する温度算出手段とを備えることを特徴とする回転体の温度測定装置。
【請求項2】
前記第1温度計測手段は熱電対であり、
前記非接触取得手段は、前記熱電対に流れる電流を電磁誘導によって取得するピックアップコイルであることを特徴とする請求項1に記載の回転体の温度測定装置。
【請求項3】
前記回転体はケース内に回転自在に配置され、
前記ピックアップコイルは、前記ケースに設置されていることを特徴とする請求項2に記載の回転体の温度測定装置。
【請求項4】
前記第2温度計測手段は、前記ケース内の温度を検出することを特徴とする請求項3に記載の回転体の温度測定装置。
【請求項5】
前記回転体の側面に突起を設け、この突起に前記熱電対を取り付けたことを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1つに記載の回転体の温度測定装置。
【請求項6】
前記熱電対の他端に、この熱電対によって発生する電流を流すコイルを接続したことを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1つに記載の回転体の温度測定装置。
【請求項7】
前記回転体の側面に突起を設け、この突起に前記コイルを取り付けたことを特徴とする請求項6に記載の回転体の温度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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