説明

回転体装置

【課題】簡易で省スペースな構成により回転体の回転範囲を規制することができる回転体装置を提供すること。
【解決手段】接続板51と一体的に回転する出力部66と、出力部66が180°以上回転したときの回転角度が180°未満となるよう出力部66より多くの歯数を有し、内周面で出力部66に歯合するとともに外周面にドグ71bが設けられた内歯歯車71と、内歯歯車71の一方向の回転に伴ってドグ71bが位置Eまで回転したことを電気的に検出するリミットスイッチ31と、リミットスイッチ31と同一円周上となるよう固定板14に設けられ、内歯歯車71の他方向の回転に伴ってドグ71bが位置Fまで回転したことを電気的に検出するリミットスイッチ32と、を備え、主軸11、固定板14、ストッパ固定板16等の非回転体に対する回転ベース41、接続板51等の回転体の回転可能角度を192°に電気的に規制するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体装置に関し、特に、回転体が回転端まで回転したときに回転体の回転を停止させるようにした回転体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットにおけるロボット基部と旋回胴、あるいはアンテナ装置の基台とアンテナ装置を搭載する回転体、監視カメラの基台と監視カメラ等はそれぞれ互いに回転自在に連結されており、一方を非回転体としたときに他方の回転体の左右方向の回転量の限度を設定して、回転体が左右の回転端まで回転したときに、回転体を回転駆動する駆動手段の駆動を停止するようにしたものがある。
【0003】
従来、この種の回転体装置としては、回転側の回転を、固定側に対して所定の位置で停止させる回転機構における回転端リミット構造において、回転側あるいは固定側に、渦巻状で、且つその両端部に浅溝部を有するガイド溝を形成し、そのガイド溝とは反対側となる固定側あるいは回転側に、回転側の回転を停止するためのリミットスイッチを設け、ガイド溝に挿入されるガイド溝側突起部と、そのガイド溝側突起部をガイド溝に追従させて移動自在に支持するとともに、ガイド溝側突起部とは逆方向のリミットスイッチ側に延びたリミットスイッチ側突起部を備えた固定部材とを有したリミットドグを設け、このリミットドグをガイド溝側に付勢する付勢手段を設けて、回転端にて浅溝部でリミットドグのガイド溝側突起部がリミットスイッチ側に押し戻されてリミットスイッチ側突起部がリミットスイッチを押して回転を停止させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、回転体上に第2の取付け板、第2の回転部材、第1の取付け板および第1の回転部材からなる四層構造のリミット機構によって回転体の一方向および他方向への回転範囲がそれぞれ略190°になるよう規制するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−63832号公報
【特許文献2】特開2008−293688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の回転体装置にあっては、回転側あるいは固定側に、渦巻状で、且つその両端部に浅溝部を有するガイド溝を形成しているため、ガイド溝の加工が非常に複雑なものとなってしまい、回転側または固定側の加工コストが増大してしまった。この結果、回転体装置の製造コストが増大してしまうという問題があった。また、リミット機構を回転側と固定側の間に位置させているため、このリミット機構の調整や交換および保守が困難となるという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載の回転体装置にあっては、回転体の両方向へのそれぞれの回転範囲が190°になるように規制するために、回転範囲を検知する四層構造のリミット機構の各構成部材を回転軸の軸線方向に並べて配列しているため、軸線方向に空間を消費してしまい、回転体の高さが高くなってしまうという問題があった。すなわち、仮に回転体の両方向への回転範囲がそれぞれ180°未満になるように規制するのであれば、一方向の回転限界位置を検知するリミットセンサと他方向の回転限界位置を検知するリミットセンサとを同一円周上に並べて配置することが可能であるが、回転体の両方向へのそれぞれの回転範囲が180°以上である190°になるように規制する場合は、回転範囲の重なりを避けるように2つのリミットセンサを軸線方向にオフセットする必要があるため、軸線方向に空間を消費してしまっていた。
【0008】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、簡易で省スペースな構成により回転体の回転範囲を規制することができる回転体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る回転体装置は、上記目的達成のため、(1)被搭載物に固定される非回転体と、前記非回転体に対して回転自在に設けられた回転体と、前記回転体を回転駆動する駆動手段と、前記非回転体に対する前記回転体の回転可能角度を180°以上且つ360°未満の所定角度に規制する回転規制手段と、を備えた回転体装置において、前記回転規制手段が、前記回転体に設けられ、前記回転体と一体的に回転する外歯歯車と、前記外歯歯車が180°以上回転したときの回転角度が180°未満となるよう前記外歯歯車より多くの歯数を有し、内周面で前記外歯歯車に歯合するとともに外周面に突出部が設けられた内歯歯車と、前記非回転体に固定され、前記内歯歯車の一方向の回転に伴って前記突出部が第1の所定位置まで回転したときに、前記突出部に接触して前記突出部が前記第1の所定位置にあることを電気的に検出する第1のリミットスイッチと、前記第1のリミットスイッチと同一円周上となるよう前記非回転体に設けられ、前記内歯歯車の他方向の回転に伴って前記突出部が第2の所定位置まで回転したときに、前記突出部に接触して前記突出部が前記第2の所定位置にあることを電気的に検出する第2のリミットスイッチと、から構成され、前記非回転体に対する前記回転体の回転可能角度を第1の所定角度に規制する電気的回転規制手段を備えた構成を有している。
【0010】
この構成により、回転体が180°以上回転したときに、内歯歯車が180°未満回転するとともに、第1のリミットスイッチと第2のリミットスイッチとを同一円周上に配置しているので、第1のリミットスイッチと第2のリミットスイッチとを軸線方向に離隔する必要がなく、省スペースな構成により回転体の回転範囲を規制することができる。
【0011】
また、従来の回転体装置のように、加工が非常に複雑である、渦巻状で、且つその両端部に浅溝部を有するガイド溝を形成する必要がないので、簡易で低コストな構成により回転体の回転範囲を規制することができる。
【0012】
したがって、簡易で省スペースな構成により回転体の回転範囲を規制することができる。
【0013】
また、外歯歯車と内歯歯車との双方の歯数の比を変更するだけで、回転体の回転可能角度を簡単に増減することができるので、回転体の回転可能角度を第1の所定角度以上に容易に増加することができる。
【0014】
また、第1のリミットスイッチと第2のリミットスイッチとを、同一円周上となるよう非回転体に設けているので、第1のリミットスイッチと第2のリミットスイッチの位置が変化せず、且つ、第1のリミットスイッチと第2のリミットスイッチとを隣接して配置することができるため、非回転体に対する第1のリミットスイッチと第2のリミットスイッチの取り付け位置を容易に調整することができる。
【0015】
また、本発明に係る回転体装置は、上記(1)に記載の回転体装置において、(2)前記回転規制手段が、前記外歯歯車の下面に180°以上且つ360°未満の所定角度に渡り形成された円弧状の第1の溝と、前記第1の溝の下部の前記非回転体の上面に180°以上且つ360°未満の所定角度に渡り形成された円弧状の第2の溝と、前記第1の溝と前記第2の溝とにより形成される空間に配置された鋼球と、から構成され、前記非回転体に対する前記回転体の回転可能角度を第1の所定角度より大きい第2の所定角度に規制する機械的回転規制手段を更に備えた構成を有している。
【0016】
この構成により、第1のリミットスイッチと第2のリミットスイッチに故障が発生した場合であっても、これら円弧上の第1の溝および第2の溝と鋼球によって、回転体の回転可能角度を機械的に規制することができる。
【0017】
また、回転体の回転可能角度を電気的に規制するための構成部材である外歯歯車の下面に、回転体の回転可能角度を機械的に規制するための構成部材である第1の溝を形成したため、外歯歯車に2つの機能を持たせることができ、新たな部材を設ける必要がないので、省スペースで低コストな構成により回転体の回転範囲を規制することができる。
【0018】
また、本発明に係る回転体装置は、上記(1)または(2)に記載の回転体装置において、(3)前記内歯歯車を前記内歯歯車の内周面で前記外歯歯車に歯合するように保持する保持手段を備えた構成を有している。
【0019】
この構成により、内歯歯車が常に外歯歯車に歯合して回転することができ、内歯歯車とともに回転する突出部を第1のリミットスイッチと第2のリミットスイッチにより確実に検知することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡易で省スペースな構成により回転体の回転範囲を規制することができる回転体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態に係る回転体装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る回転体装置の要部構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る回転体装置の断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る回転体装置のリミットスイッチを示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る回転体装置の減速機を示す斜視図であり、減速機を上方から見た図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る回転体装置の減速機を示す斜視図であり、減速機を下方から見た図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る回転体装置のリミットスイッチを示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る回転体装置のリミットスイッチを示す上面図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る回転体装置の保持部材を示す斜視図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係る回転体装置のリミットスイッチの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る回転体装置の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0023】
図1〜図10は本発明に係る回転体装置の一実施の形態を示す図である。
【0024】
まず、構成を説明する。
【0025】
図1〜図8において、回転体装置1は、非回転体としての円筒形状の主軸11を有し、この主軸11は、例えば、車両等の被搭載物に固定されている。主軸11には軸受12、13を介して回転体としての回転ベース41が回転自在に支持されている。
【0026】
初めに、主軸11を含めた非回転体を構成する部材について説明する。
【0027】
主軸11の上部には円盤状の固定板14がボルト締結により固定されている。また、固定板14の上部には、柱状の4つのスペーサ15を介して環状のストッパ固定板16がボルト締結により固定されている。ストッパ固定板16の上面には、円弧状の溝16a(図7、図8参照)が形成されている。溝16aは、本発明における第2の溝を構成している。ストッパ固定板16の外周縁部の上面には、円筒形状のガイド板17がボルト締結により固定されている。ガイド板17は、例えば、ポリアセタールから構成されている。固定板14の外周側面には、第1のリミットスイッチとしてのリミットスイッチ31および第2のリミットスイッチとしてのリミットスイッチ32が固定されている。固定板14の中心部の上面には、円形の凸部14aが形成されており、この凸部14aに減速機61のカップ部62に形成された円形の凹部62aが嵌合した状態で、固定板14の上部に減速機61のカップ部62がボルト締結により固定されている。
【0028】
次に、回転ベース41を含めた回転体を構成する部材、および回転体を回転させる駆動手段について説明する。
【0029】
回転ベース41の上には、仰角変更機構42を介してアンテナ43が設けられている。仰角変更機構42は、図示しないモータ、減速機等を備えており、アンテナ43の仰角を変更するようになっている。
【0030】
回転ベース41の上部には、垂直方法に延在する固定部材44がボルト締結により固定されており、固定部材44の上部には、水平方向に延在する固定部材45の一端がボルト締結により固定されている。固定部材45の他端は、接続板51の上部にボルト締結により固定されている。接続板51の下部には、減速機61の出力部66を構成する外歯歯車64がボルト締結により固定されている。このため、減速機61の出力部66が回転すると、接続板51および接続板51に固定部材44、45を介して接続された回転ベース41が一体となって減速機61の出力部66の回転中心を中心として回転するようになっている。
【0031】
固定部材45と回転ベース41の間には、駆動手段としてのモータ46がボルト締結により固定されており、モータ46の出力軸46aには、駆動プーリ47が固定されている。駆動プーリ47には、タイミングベルト48が架け渡されており、タイミングベルト48を介して駆動プーリ47の回転が従動プーリ49に伝達されるようになっている。従動プーリ49は、減速機61の入力軸63に固定されている。なお、駆動プーリ47の回転は、1/2.2の減速比で従動プーリ49に伝達される。
【0032】
減速機61は、上部に配置された入力軸63と、底部に配置され固定板14に固定されたカップ部62と、外周部に配置された環状の出力部66とを備えており、タイミングベルト48を介してモータ46からの駆動力が入力軸63に入力されると、減速された回転数で出力部66を回転させるようになっている。減速機61は、公知の波動歯車装置から構成されており、図示しないサーキュラスプライン、ウェーブジェネレータおよびフレックススプラインとを備えている。本実施の形態では、入力軸63と一体となって図示しないウェーブジェネレータが回転するが、一般的な波動歯車装置とは異なり、固定板14に固定されたカップ部62が図示しないフレックススプラインに接続され、図示しないサーキュラスプラインが出力部66に接続されている。モータ46、減速機61、駆動プーリ47、タイミングベルト48、従動プーリ49は、本発明における駆動手段を構成している。
【0033】
出力部66は、環状の外歯歯車64と、外歯歯車64の下部において外歯歯車64と一体的に構成された環状の環状部65とを備えている。
【0034】
外歯歯車64は、外周面に歯が形成された外歯平歯車として構成されており、上面においてボルト締結により接続板51と固定されている。外歯歯車64は、外歯歯車64の外側に配置された内歯歯車71の内周面と歯合して内歯歯車71を回転させるようになっている。このため、外歯歯車64は、外歯歯車64にボルト締結された接続板51を回転させるとともに、外歯歯車64と歯合する内歯歯車71を回転させるようになっている。
【0035】
環状部65の下面には、円弧状の溝65aが形成されている。溝65aは、本発明における第1の溝を構成している。環状部65の下面の溝65aは、ストッパ固定板16の上面の溝16aと対向しており、溝65aおよび溝16aにより形成される空間には、複数(本実施の形態では3つ)の鋼球70が設けられている。このため、減速機61の出力部66と接続板51および固定部材44、45を介して接続された回転ベース41は、環状部65の下面の溝65aと、ストッパ固定板16の上面の溝16aと、これらの溝65a、16aの間に設けられた鋼球70とからなる機構により、回転可能な角度が一定範囲に制限されるようになっている。本実施の形態では、上記機構による回転可能な角度は、中立位置から一方向および他方向にそれぞれ194°(一方の回転端から他方の回転端まで388°)となっている。ここで、中立位置とは、ストッパ固定板16の上面の溝16aの上に、環状部65の下面の溝65aが全て重なった状態における、回転体、すなわち減速機61の出力部66、接続板51、固定部材44、45、回転ベース41等の位置となる。なお、円弧上の溝65aおよび溝16aは、鋼球70の数に応じて、180°以上且つ360°未満の範囲で形成される。
【0036】
このように、減速機61の出力部66は、外歯歯車64と環状部65とを備え、外歯歯車64によって接続板51と内歯歯車71とを回転させるとともに、これらの回転体の回転範囲を鋼球70およびストッパ固定板16の溝16aとともに環状部65の溝65aによって規制するようになっている。溝16a、65aおよび鋼球70は、本発明における回転規制手段および機械的回転規制手段を構成している。
【0037】
次に、回転ベース41の回転可能な角度を電気的に一定範囲に制限するためのリミットスイッチ31、32について詳細を説明する。なお、鋼球70と溝65a、16aの機構による両方向の回転角度の制限がそれぞれ194°であるのに対して、リミットスイッチ31、32による両方向の回転角度の制限は、これより2°小さい192°にそれぞれ設定している。ここで、本実施の形態において、回転ベース41の回転可能な角度は、192°や194°に限らず、180°以上360°未満の範囲で設定してもよいが、回転ベース41の回転可能な角度を電気的および機械的に概ね190°に設定しているのは、一方向に190°回転し、他方向に190°回転できれば、合わせて360°以上となり、回転ベース41を所望の方向に向けることができるためである。また、仮に、回転ベース41の回転可能な角度を更に大きくして例えば270°とした場合は、一方向の回転可能範囲と他方向の回転可能範囲の重複が必要以上に大きくなってしまい、構造が複雑化する等の不都合が発生する恐れがあるためである。
【0038】
リミットスイッチ31は、ガイド板17の側面の切欠き部17a内に配置されており、固定板14の外周部において固定されている。リミットスイッチ31は、検知部31aを上部に備えている。リミットスイッチ31は、リミットスイッチ31の内周側に配置された内歯歯車71の外周面の凸形状のドグ71bが反時計回りに回転して検知部31aを押下げると、モータ46を駆動する図示しない制御回路に検知信号を送るようになっている。リミットスイッチ31は、ドグ71bの回転方向に長辺を有する長穴形状の2つの固定穴31bを備えており、固定板14に対する固定位置が調整可能であるため、ドグ71bに対する相対位置を変更可能となっている。
【0039】
リミットスイッチ32は、リミットスイッチ31と同様に、ガイド板17の側面の切欠き部17a内に配置されており、固定板14の外周部において固定されている。リミットスイッチ32とリミットスイッチ31は、回転ベース41とともに回転する回転体の回転軸(入力軸63の軸芯と一致する)の軸線方向や放射方向には離隔しておらず、同一円周上に互いに隣接して配置されている。リミットスイッチ32は、検知部32aを上部に備えている。リミットスイッチ32は、リミットスイッチ32の内周側に配置された内歯歯車71の外周面の凸形状のドグ71bが時計回りに回転して検知部32aを押下げると、モータ46を駆動する図示しない制御回路に検知信号を送るようになっている。リミットスイッチ32は、ドグ71bの回転方向に長辺を有する長穴形状の2つの固定穴32bを備えており、固定板14に対する固定位置が調整可能であるため、ドグ71bに対する相対位置を変更可能となっている。
【0040】
内歯歯車71は、内周面に歯が形成された内歯平歯車として構成されており、内歯歯車71の内側に配置された減速機61の出力部66の外歯歯車64の外周面の歯と歯合することにより回転するようになっている。本実施の形態では、内歯歯車71の歯数が98に設定されるとともに、外歯歯車64の歯数が88に設定されている。このため、外歯歯車64から内歯歯車71に回転が減速して伝達され、例えば、外歯歯車64が中立位置から反時計回りに192°回転したとき、内歯歯車71は中立位置から反時計周りに172°回転するようになっている。
【0041】
したがって、リミットスイッチ31は、外歯歯車64が中立位置から反時計回りに192°回転したことを検知するために、内歯歯車71が中立位置から反時計周りに172°回転したことを検知すればよく、同様に、リミットスイッチ32は、外歯歯車64が中立位置から時計回りに192°回転したことを検知するために、内歯歯車71が中立位置から時計周りに172°回転したことを検知すればよいこととなるため、リミットスイッチ31とリミットスイッチ32とを同一円周上に併設することができる。また、本実施の形態では、リミットスイッチ31とリミットスイッチ32とが、回転中心に対して16°の角度をなしているため、リミットスイッチ31とリミットスイッチ32とを近接して配置することができる。外歯歯車64が形成された出力部66、リミットスイッチ31、32、内歯歯車71、ドグ71bは、本発明における回転規制手段および電気的回転規制手段を構成している。
【0042】
図9に示すように、内歯歯車71は、その外周部がガイド板17の内周部の上端により支持されるとともに、ガイド板17の内周部の上端に設けられた保持部材75により回転自在に支持されている。保持部材75は、ガイド板17の上端に設けられた押え板76と、押え板76内に配置され内歯歯車71の外周面に接触して回転する円筒状のカラー77と、カラー77を押え板76内で回転可能に支持する位置決めピン78とを備えている。なお、位置決めピン78は、上部に配置された接続板51により上方への移動が規制されるため、ガイド板17から脱落することがない。ガイド板17および保持部材75は、本発明における保持手段を構成している。
【0043】
次に、回転体装置1の動作について説明する。
【0044】
まず、モータ46が一方に回転すると、タイミングベルト48を介して伝達された駆動力が減速機61の入力軸63に入力され、減速機61の出力部66が減速機61の仕様に基づいた減速比で回転する。
【0045】
出力部66が回転すると、出力部66に接続板51、固定部材44、45を介して接続された回転ベース41が回転する。
【0046】
図10に示すように、出力部66が例えば中立位置Aから回転中心X1を中心として位置Cまで時計周りに192°回転したとき、内歯歯車71のドグ71bは中立位置Dから回転中心X2を中心としてリミットスイッチ32が配置された第2の所定位置としての位置Fまで時計周りに172°回転するため、ドグ71bがリミットスイッチ32により検知されモータ46が停止する。
【0047】
また、モータ46が他方に回転して、出力部66が例えば中立位置Aから回転中心X1を中心として位置Bまで反時計周りに192°回転したとき、内歯歯車71のドグ71bは中立位置Dから回転中心X2を中心としてリミットスイッチ31が配置された第1の所定位置としての位置Eまで反時計周りに172°回転するため、ドグ71bがリミットスイッチ31により検知されモータ46が停止する。
【0048】
なお、仮にリミットスイッチ31、32が故障しているために、出力部66が第1の所定角度としての192°を超えて回り続けた場合、前述した鋼球70と溝65a、16aの機構により中立位置Dから第2の所定角度としての194°回転した位置で出力部66が停止する。
【0049】
このように本実施の形態では、接続板51に固定され、接続板51と一体的に回転する出力部66と、出力部66が180°以上回転したときの回転角度が180°未満となるよう出力部66より多くの歯数を有し、内周面で出力部66に歯合するとともに外周面にドグ71bが設けられた内歯歯車71と、固定板14に設けられ、内歯歯車71の一方向の回転に伴ってドグ71bが位置Eまで回転したときに、ドグ71bに接触してドグ71bが位置Eにあることを電気的に検出するリミットスイッチ31と、リミットスイッチ31と同一円周上となるよう固定板14に設けられ、内歯歯車71の他方向の回転に伴ってドグ71bが位置Fまで回転したときに、ドグ71bに接触してドグ71bが位置Fにあることを電気的に検出するリミットスイッチ32と、を備え、主軸11、固定板14、ストッパ固定板16等の非回転体に対する回転ベース41、接続板51等の回転体の回転可能角度を192°に電気的に規制するようになっている。
【0050】
このため、出力部66および出力部66と一体的に回転する回転ベース41、接続板51等の回転体が180°以上である192°回転したときに、ドグ71bが設けられた内歯歯車71が180°未満である172°回転させるとともに、リミットスイッチ31とリミットスイッチ32とを同一円周上に配置しているので、リミットスイッチ31とリミットスイッチ32とを主軸11の軸線方向に離隔する必要がなく、省スペースな構成により回転体の回転範囲を規制することができる。
【0051】
また、従来の回転体装置のように、加工が非常に複雑である、渦巻状で、且つその両端部に浅溝部を有するガイド溝を形成する必要がないので、簡易で低コストな構成により回転体の回転範囲を規制することができる。
【0052】
したがって、簡易で省スペースな構成により回転体の回転範囲を規制することができる。
【0053】
また、出力部66の外歯歯車64と内歯歯車71との双方の歯数の比を変更するだけで、回転体の回転可能角度を簡単に増減することができるので、回転体の回転可能角度を192°以上に容易に設定することができる。
【0054】
また、リミットスイッチ31とリミットスイッチ32とを、同一円周上となるよう非回転体である固定板14に設けているので、リミットスイッチ31とリミットスイッチ32の位置が変化せず、且つ、リミットスイッチ31とリミットスイッチ32とを隣接して配置することができるため、固定板14に対するリミットスイッチ31とリミットスイッチ32の取り付け位置を容易に調整することができる。
【0055】
また、本実施の形態では、出力部66の下面に180°以上且つ360°未満の所定角度に渡り形成された円弧状の溝65aと、溝65aの下部のストッパ固定板16の上面に180°以上且つ360°未満の所定角度に渡り形成された円弧状の溝16aと、溝65aと溝16aとにより形成される空間に配置された鋼球70と、を備え、主軸11、固定板14、ストッパ固定板16等の非回転体に対する回転ベース41、接続板51等の回転体の回転可能角度を192°より大きい194°に機械的に規制するようになっている。
【0056】
このため、リミットスイッチ31とリミットスイッチ32に故障が発生した場合であっても、これら円弧上の溝65a、16aと鋼球70によって、接続板51等の回転体の回転可能角度を機械的に規制することができる。
【0057】
また、接続板51等の回転体の回転可能角度を電気的に規制するための構成部材である出力部66の下面に、接続板51等の回転体の回転可能角度を機械的に規制するための構成部材である溝65aを形成したため、出力部66に2つの機能を持たせることができ、新たな部材を設ける必要がないので、省スペースで低コストな構成により回転体の回転範囲を規制することができる。
【0058】
また、本実施の形態では、内歯歯車71をこの内歯歯車71の内周面で出力部66に歯合するように保持するガイド板17および保持部材75を備えたことを特徴とする。
【0059】
このため、内歯歯車71が常に出力部66に歯合して回転することができ、内歯歯車71とともに回転するドグ71bをリミットスイッチ31とリミットスイッチ32により確実に検知することができる。
【0060】
また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明に係る回転体装置は、簡易で省スペースな構成により回転体の回転範囲を規制することができるという効果を有し、回転体が回転端まで回転したときに回転体の回転を停止させるようにした回転体装置等として有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 回転体装置
11 主軸(非回転体)
12、13 軸受
14 固定板(非回転体)
15 スペーサ
16 ストッパ固定板(非回転体)
16a 溝(第2の溝、機械的回転規制手段)
17 ガイド板(保持手段)
31 リミットスイッチ(第1のリミットスイッチ、回転規制手段、電気的回転規制手段)
32 リミットスイッチ(第2のリミットスイッチ、回転規制手段、電気的回転規制手段)
41 回転ベース(回転体)
42 仰角変更機構
43 アンテナ
44、45 固定部材
46 モータ(駆動手段)
46a 出力軸
47 駆動プーリ(駆動手段)
48 タイミングベルト(駆動手段)
49 従動プーリ(駆動手段)
51 接続板(回転体)
61 減速機(駆動手段)
62 カップ部
63 入力軸
64 外歯歯車
65 環状部
65a 溝(第1の溝、機械的回転規制手段)
66 出力部(回転規制手段、電気的回転規制手段、機械的回転規制手段)
70 鋼球(回転規制手段、機械的回転規制手段)
71 内歯歯車(回転規制手段、電気的回転規制手段)
71b ドグ(回転規制手段、電気的回転規制手段)
75 保持部材(保持手段)
76 押え板
77 カラー
78 位置決めピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搭載物に固定される非回転体と、
前記非回転体に対して回転自在に設けられた回転体と、
前記回転体を回転駆動する駆動手段と、
前記非回転体に対する前記回転体の回転可能角度を180°以上且つ360°未満の所定角度に規制する回転規制手段と、を備えた回転体装置において、
前記回転規制手段が、
前記回転体に設けられ、前記回転体と一体的に回転する外歯歯車と、
前記外歯歯車が180°以上回転したときの回転角度が180°未満となるよう前記外歯歯車より多くの歯数を有し、内周面で前記外歯歯車に歯合するとともに外周面に突出部が設けられた内歯歯車と、
前記非回転体に固定され、前記内歯歯車の一方向の回転に伴って前記突出部が第1の所定位置まで回転したときに、前記突出部に接触して前記突出部が前記第1の所定位置にあることを電気的に検出する第1のリミットスイッチと、
前記第1のリミットスイッチと同一円周上となるよう前記非回転体に設けられ、前記内歯歯車の他方向の回転に伴って前記突出部が第2の所定位置まで回転したときに、前記突出部に接触して前記突出部が前記第2の所定位置にあることを電気的に検出する第2のリミットスイッチと、から構成され、前記非回転体に対する前記回転体の回転可能角度を第1の所定角度に規制する電気的回転規制手段を備えたことを特徴とする回転体装置。
【請求項2】
前記回転規制手段が、
前記外歯歯車の下面に180°以上且つ360°未満の所定角度に渡り形成された円弧状の第1の溝と、
前記第1の溝の下部の前記非回転体の上面に180°以上且つ360°未満の所定角度に渡り形成された円弧状の第2の溝と、
前記第1の溝と前記第2の溝とにより形成される空間に配置された鋼球と、から構成され、前記非回転体に対する前記回転体の回転可能角度を第1の所定角度より大きい第2の所定角度に規制する機械的回転規制手段を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の回転体装置。
【請求項3】
前記内歯歯車を前記内歯歯車の内周面で前記外歯歯車に歯合するように保持する保持手段を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−192402(P2010−192402A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38171(P2009−38171)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】