説明

回転円盤製麹装置

【課題】回転円盤製麹装置における培養床の洗浄性及び清浄性を高める。
【解決手段】培養室11の培養床2中央を貫通し、底面111から天井面112に立設された中心支柱114を備え、ネジ棒121,131及びガイドバー122,132を前記中心支柱114に沿って垂下し、前記ネジ棒121,131に支持させた手入れ機12又は排出スクリュー13を、ネジ棒121,131の回転によりガイドバー122,132に沿って昇降させる回転円盤製麹装置1において、中心円筒3は、天井面112に位置固定して垂下する上部筒31と培養床2にフル溶接して立設している下部筒32とに原料4の堆積表面より上方で分割し、前記上部筒31及び下部筒32により中心支柱114、ネジ棒121,131及びガイドバー122,132を囲み、培養床2は、側板21を外周にフル溶接したタライ型構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転円盤製麹装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転円盤製麹装置は、培養室の培養床中央を貫通し、底面から天井面に立設された中心支柱を備え、手入れ機又は排出スクリューのネジ棒及びガイドバーを前記中心支柱に沿って天井面側から垂下している。手入れ機又は排出スクリューは、昇降台を介して前記ネジ棒と培養室外側に付設されているネジ棒とに架設され、ネジ棒の回転によりガイドバーに沿って昇降する。こうしたネジ棒及びガイドバーは、通常グリースが塗布されているため、内周側のネジ棒及びガイドバーがそのまま培養床に対して露出していると、例えば洗浄時にグリースが飛び散り、培養床ほかに付着する。また、培養床の外周と側板の摺接部分から原料がこぼれたり、付着して溜まったりして、培養床の洗浄効率が悪い。
【0003】
例えば特許文献1が開示する回転円盤製麹装置は、中心円筒(内筒)を上部筒(上部内筒)と下部筒(下部内筒)とに分割し、下部筒を培養床(回転円盤床)に位置固定し、原料堆積層表面より上方に下部筒の上端周縁(下部内筒上縁)を位置させ、上部筒の周面と下部筒の周面とを重ね合わせている(重合部を形成している)。上部筒及び下部筒は、ネジ棒及びガイドバーを囲んでいるので、洗浄時にグリースが飛び散り、培養床ほかに付着する虞がない。しかし、下部筒と培養床は位置固定されているため、下部筒下縁から原料や洗浄水が入り込んだり、付着して溜まる虞があった。また、上部筒と下部等の重合部には隙間があり、上部筒が下部等の内側に位置しているために原料や洗浄水が入り込む虞があった。
【0004】
また、特許文献1が開示する回転円盤製麹装置は、培養床の外周の構造が不明であるが、同時期の一般的な培養床の構造から、培養床の外周を摺接させた構造と考えられる。これに対し、近年見られる回転円盤製麹装置は、側板を外周にフル溶接したタライ型構造とする培養床を用いている例が多い。こうした培養床は、培養床の外周と側板の摺接部分から、原料がこぼれたり、付着して溜まる虞がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭62-003040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既述したところから明らかなように、特許文献1が開示する回転円盤製麹装置は、洗浄時にグリースが飛び散り、培養床ほかに付着する虞はないが、中心円筒下縁や上部筒と下部筒の重合部から原料や洗浄水が入り込んだり、培養床の外周と側板の摺接部分から、原料がこぼれたり、付着して溜まる虞があった。
【0007】
そこで、ネジ棒及びガイドバーから洗浄時にグリースが飛び散り、培養床ほかに付着する虞や中心円筒下縁や上部筒と下部筒の重合部から原料や洗浄水が中心円筒内部に入り込む虞、培養床の外周と側板の摺接部分から原料がこぼれたり、付着して溜まる虞を解消し、培養床の洗浄性及び清浄性を高めるため、回転円盤製麹装置の培養床及び中心円筒について、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
検討の結果、培養室の培養床中央を貫通し、底面から天井面に立設された中心支柱を備え、ネジ棒及びガイドバーを前記中心支柱に沿って垂下し、前記ネジ棒に支持させた手入れ機又は排出スクリューを、ネジ棒の回転によりガイドバーに沿って昇降させる回転円盤製麹装置において、中心円筒は、天井面に位置固定して垂下する上部筒と培養床にフル溶接して立設している下部筒を原料の堆積表面より上方で分割し、前記上部筒及び下部筒により中心支柱、ネジ棒及びガイドバーを囲み、培養床は、側板を外周にフル溶接したタライ型構造としたことを特徴とする回転円盤製麹装置を開発した。
【0009】
本発明の回転円盤製麹装置は、中心円筒により中心支柱、ネジ棒及びガイドバーを囲むことにより、前記ネジ棒及びガイドバーから洗浄時にグリースが飛び散る虞をなくしている。また、中心円筒は、原料の堆積表面より上方で上部筒及び下部筒に分割して摺接させ、下部筒を培養床にフル溶接して立設しているので、中心円筒下縁や上部筒と下部筒の重合部から中心円筒内部へ原料や洗浄水が溜まる虞をなくしている。そして、培養床は、側板を外周にフル溶接したタライ型構造としているので、培養床の外周と側板の摺接部分から、原料がこぼれたり、付着して溜まる虞がない。
【0010】
上部筒が支持アームを突出させる部分は、特許文献1に見られる構造、すなわち周面に上下方向に延在する長孔を開口した構造を利用するとよい。具体的には、上部筒は、昇降する支持アームを突出させる周面の長孔から前記支持アームを除いた残余の開口を、前記支持アームの昇降に従って昇降する上カバー及び下カバーを長孔周囲の周面に慴接させて塞ぐ。上カバー及び下カバーは、周面に慴接させて昇降するので、隙間なく長孔から支持アームを除いた残余の開口を塞ぐことができる。周面が湾曲していることも考えられるので、上カバー及び下カバーは、支持アームの上面及び下面それぞれに取り付けられる薄い金属板がよい。
【0011】
中心円筒は、上部筒の下端周縁と下部筒の上端周縁との隙間を、上部筒又は下部筒の一方の周縁又は周面から延設したシールリングを残る他方の周縁又は周面に摺接させて塞ぐとよい。特許文献1が開示する回転円盤製麹装置は、上部筒と下部筒とをそれぞれの周面を重ね合わせることにより、隙間の発生を防止しているが、回転しない上部筒に対して下部筒が回転することから、前記重ね合わせは少なからず隙間を残す。本発明の回転円盤製麹装置は、上部筒又は下部筒の一方の周縁又は周面から延設したシールリングを残る他方の周縁又は周面に摺接させることにより隙間をなくし、原料や洗浄水が中心円筒内に侵入する虞を完全になくしている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の回転円盤製麹装置は、ネジ棒及びガイドバーから洗浄時にグリースが飛び散り、培養床ほかに付着する虞や原料や洗浄水が中心円筒下縁や重合部から中心円筒内に侵入する虞、そして培養床の外周と側板の摺接部分から、原料がこぼれたり、付着して溜まる虞を解消し、培養床の洗浄性及び清浄性を高めている。洗浄性の向上は、培養床の自動洗浄を容易にする効果をもたらす。また、清浄性の向上は、より高品質な製品が得られる効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した回転円盤製麹装置の一例において、培養床を表す縦断面図である。
【図2】培養床と側板との接合部分を表す図1中A矢視部拡大図である。
【図3】培養床と下部筒との接合部分を表す図1中B矢視部拡大図である。
【図4】中心円筒の分割部分を表す図1中C矢視部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本例の回転円盤製麹装置1は、図1に見られるように、培養室11の培養床2中央を貫通し、底面111から天井面112に立設された中心支柱114を備え、手入れ機12又は排出スクリュー13のネジ棒121,131及びガイドバー122,132を前記中心支柱114に沿って垂下している。
【0015】
内周側のネジ棒121,131は、中心支柱114に設けた減速機台115にそれぞれの減速機126,136を載せて上端を支持させ、同じく中心支柱114に設けた受台116に下端を支持させ、垂下している。内周側のガイドバー122,132は、前記減速機台115及び受台116に上端及び下端を支持し、垂下している。外周側のネジ棒124,134は、培養室11の壁面113外側に設けた減速機台117にそれぞれの減速機128,138を載せて上端を支持させ、同じく培養室11の壁面113外側に設けた受台118に下端を支持させ、垂下している。外周側のガイドバー125,135は、前記減速機台117及び受台118に上端及び下端を支持し、垂下している。
【0016】
手入れ機12は、ネジ棒121,124に螺合した内周側昇降台127及び外周側昇降台129それぞれに設けた支持アーム123,123に架設され、前記ネジ棒121,124の回転により、ガイドバー122,125に沿って昇降する。同様に、排出スクリュー13は、ネジ棒131,134に螺合した内周側昇降台137及び外周側昇降台139それぞれに設けた支持アーム133,133に架設され、前記ネジ棒131,134の回転により、ガイドバー132,135に沿って昇降する。
【0017】
培養床2は、目開きがあり、通気培養できる円盤であり、外周に沿って側板21を立設し、両者をフル溶接してタライ型構造を構成している。側板21は、壁面113との間を閉鎖板211により塞いでいる。本例の培養床2は、図2に見られるように、培養床2の外周に対して側板21下端を隅肉溶接している(図2中、溶接部分を溶接ビード22により図示)。これにより、培養床2の外周と側板21との隙間から底面111に向けて原料4がこぼれたり、溜まったりすることがなくなる。
【0018】
中心円筒3は、天井面112に位置固定して垂下する上部筒31と、培養床2にフル溶接して立設している下部筒32を原料4の堆積表面より上方で分割し、前記上部筒31及び下部筒32により中心支柱114、ネジ棒121,131及びガイドバー122,132を囲んでいる。本例の上部筒31及び下部筒32は、いずれもステンレス製である。上部筒31及び下部筒32の分割部分は、原料4の堆積表面より上方としているので、洗浄に際して、前記分割部分の隙間を塞ぐシールリング33に、飛び散った洗浄水や原料4が付着しない。
【0019】
上部筒31は、昇降する手入れ機12及び排出スクリュー13の各支持アーム123,133を昇降自在としながら半径方向に突出させるため、特許文献1に見られる構造、すなわち周面に上下方向に延在する長孔を開口している(図示略)。長孔は、支持アーム123,133を除いた残余の開口を、支持アーム123,133の上下に溶接した上カバー及び下カバーを摺接させて塞いでいる。上カバー及び下カバーは、弾力性のある薄い金属板で形成する。これにより、支持アーム123,133を突出させる長孔から原料4が中心円筒3の内部に侵入することが防止される。下部筒32は、図3に見られるように、培養床2の内周に対して下端を隅肉溶接している(図3中、溶接部分を溶接ビード321により図示)。これにより、下部筒32の下端と培養床2との隙間から中心円筒3の内部へ原料4や洗浄水が入ったりすることがなくなる。
【0020】
本例の中心円筒3は、図4(ネジ棒121の図示略)に見られるように、上部筒31の下端周縁と下部筒32の上端周縁との隙間を、上部筒31の内周面にボルト331及びナット332により取り付けたシールリング33を、下部筒32の外周面に摺接させて塞いでいる。このように、上部筒31の下端周縁と下部筒32の上端周縁との隙間はシールリング33により塞がれるので、上部筒31の下端周縁と下部筒32の上端周縁とが直接接触しないように、上下方向に離隔させることが好ましい。具体的な離隔距離は、5mm程度を目安とする。シールリング33は樹脂製で、例えば上部筒31の下端周縁と下部筒32の上端周縁との隙間が5mmの場合、上部筒31の下端周縁からシールリング33を20mm突出させ、シールリング33と下部筒32の外周面とを15mm幅で摺接させるとよい。
【0021】
中心円筒3における上部筒31と下部筒32との関係において、(1)両者が同径である構成、(2)上部筒31が下部筒32より大きい構成又は(3)下部筒32が上部筒31より大きい構成が考えられる。いずれの構成であっても、培養床2が回転する際、上部筒31の下端周縁と下部筒32の上端周縁との隙間をシールリング33により塞ぐことが出来ればよい。しかし、厳密にはシールリング33の厚み等を考慮し、本例のように、上部筒31を下部筒32より大きくし、前記上部筒31の内周面に取り付けたシールリング33を下部筒32の外周面により摺接させるとよい。これにより、例えば洗浄に際し、上部筒31の外周面に付着した洗浄水が垂れても、シールリング33は上部筒31より内側にあるため、上部筒31とシールリング33との接触面から中心円筒3内に入り込まなくなるし、原料4が上方から堆積する段差もなくすことができる。
【符号の説明】
【0022】
1 回転円盤製麹装置
11 培養室
114 中心支柱
12 手入れ機
121 内周側のネジ棒
122 内周側のガイドバー
13 排出スクリュー
131 内周側のネジ棒
132 内周側のガイドバー
2 培養床
21 側板
3 中心円筒
31 上部筒
32 下部筒
33 シールリング
4 原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養室の培養床中央を貫通し、底面から天井面に立設された中心支柱を備え、ネジ棒及びガイドバーを前記中心支柱に沿って垂下し、前記ネジ棒に支持させた手入れ機又は排出スクリューを、ネジ棒の回転によりガイドバーに沿って昇降させる回転円盤製麹装置において、
中心円筒は、天井面に位置固定して垂下する上部筒と培養床にフル溶接して立設している下部筒を原料の堆積表面より上方で分割し、前記上部筒及び下部筒により中心支柱、ネジ棒及びガイドバーを囲み、培養床は、側板を外周にフル溶接したタライ型構造としたことを特徴とする回転円盤製麹装置。
【請求項2】
中心円筒は、上部筒の下端周縁と下部筒の上端周縁との隙間を、上部筒又は下部筒の一方の周縁又は周面から延設したシールリングを残る他方の周縁又は周面に摺接させて塞いだ請求項1記載の回転円盤製麹装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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