説明

回転式手動解放

円筒形リンク機構をロッド状部材に対して挟持及び解放するクランプ及び急速解放機構が、ロッド状部材に配設される止めリングと、挟持リングとを備える。挟持リングの内面及び止めリングの外面は、一方向への挟持リングの回転が止めリングを圧縮し、他方の方向への回転が止めリングの拡張を可能にするように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包括的に、旅客列車用途のための駐車ブレーキを解放するのに特に適したクランプ及び急速解放機構に関する。
【背景技術】
【0002】
「Spring Applied Parking Brake Actuator Having a Collet Style Slack Adjuster」と題する、Cathcart他による米国特許第5,937,974号は、一つの小型アクチュエータユニットにおいて常用ブレーキのピストンと結合している駐車ブレーキのピストンを開示している。Cathart他による特許における駐車ブレーキ機能は、ばね式排気型駐車ブレーキを使用する。空気圧が存在しないとき、駐車ブレーキのばねはブレーキ力を提供する。このタイプのばね式駐車ブレーキに関する他の設計が知られている。1つの車両(a railcar)が列車から連結解除され、ブレーキラインによって提供される圧縮空気源が取り除かれると、駐車ブレーキが自動的にかかる。圧縮空気源が利用可能でないときはばね式ブレーキを取り除く必要がある場合もある。通常、ばねからブレーキ駆動リンク機構を連結解除する手動解放が提供される。空気圧が再び利用可能になると、解放が自動的にリセットされる。このタイプの手動解放は、「Parking Brake Manual Release Mechanism」と題する、Cathcart他による米国特許第5,848,550号において開示されている。本出願は、かかる用途に有用な手動解放に関する。
【発明の概要】
【0003】
簡潔には、本発明の一実施の形態によれば、円筒形リンク機構をロッド状部材に対して挟持及び解放するクランプ及び急速解放機構が提供される。円筒形リンク機構には内面に内側円周方向溝が設けられ、ロッド状部材には、上記内側円周方向溝に面する外面に外側円周方向溝が設けられる。
【0004】
止めリングがロッド状部材に配設され、内側溝内に嵌め込まれるか又は内側溝及び外側溝に架かるようなサイズに合わせられている。止めリングは分割されている。止めリングはまた、円筒形リンク機構のスロット内に受け入れられる半径方向の固定用延長部(anchoring extension)を有し、このため止めリングの回転が防止される。挟持リングが内側円周方向溝内に配置されており、止めリングと同軸となっている。挟持リングは窪み部と対向した間隙を有しており、その結果、挟持リングの制限された回転が止めリングの固定用延長部を妨げることがない。挟持リングの内面及び止めリングの外面は、一方の方向への挟持リングの回転が止めリングを圧縮し、他方の方向への回転が止めリングの拡張を可能とするように構成される。往復動作をする解放機構は、挟持リングを挟持位置と非挟持位置との間で回転させる。
【0005】
簡潔には、本発明の好ましい一実施の形態によれば、円筒形リンク機構をロッド状部材に対して挟持及び解放するクランプ及び急速解放機構が提供される。円筒形リンク機構には内面に内側円周方向溝が設けられ、ロッド状部材には、内側円周方向溝に面する外面に外側円周方向溝が設けられる。
【0006】
止めリングがロッド状部材に配設され、内側円周方向溝内に嵌め込まれるか又は内側溝及び外側溝に架かるようなサイズに合わせられている。止めリングは分割されており、この分割部に隣接した、半径方向に延びるタブを有する。止めリングはまた、円筒形リンク機構のスロット内に受け入れられる、分割部に実質的に対向した半径方向の固定用延長部を有し、このため止めリングの回転が防止される。止めリングは、固定用延長部と分割部との間に半径方向の圧縮タブを有する。挟持リングが内側円周方向溝内に配置されており、止めリングと同軸となっている。挟持リングは、該挟持リングが回転されて分割端部と位置合わせされるときに分割部に隣接した止めリングのタブを受け入れる、第1の窪み部を内面に有する。挟持リングの内面にある第2の窪み部及び第3の窪み部は圧縮タブと位置合わせされる。挟持リングは窪み部と対向した間隙を有しており、その結果、挟持リングの制限された回転が止めリングの固定用延長部を妨げることがない。止めリングのタブ及び挟持リングの窪み部は、挟持リングが回転すると、タブが窪み部と位置合わせされなくなることによって止めリングの半径方向内側への圧縮が生じるように配置される。
【0007】
解放機構は、挟持リングを挟持位置と非挟持位置との間で回転させる。解放機構は、挟持リングから半径方向外側に延びる駆動タブと、一端が駆動タブに枢着される、円筒形リンク機構内のボア内で摺動する牽引バーとを備え、それによって牽引バーの往復動作が挟持リングを内側円周方向溝内で回転させる。牽引バーは、内側溝及び外側溝が再び位置合わせされるときに、挟持リングを挟持位置に回転させるようにばね付勢される(spring biased)。
【0008】
さらなる特徴並びに他の目的及び利点が、図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態によるクランプ及び回転式解放機構の閉/ロック位置での断面図である。
【図2】本発明の一実施形態によるクランプ及び回転式解放機構の開/ロック解除位置での断面図である。
【図3】図1の線A−Aに沿った断面図である。
【図4】図2の線B−Bに沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び図2を参照すると、円筒形リンク機構10をロッド状部材12に対して挟持するクランプ及び急速解放機構が示されている。円筒形リンク機構は、Cathcart他による米国特許第5,937,974号に示されているスリーブ21のように、駐車ブレーキをかけるための駐車ブレーキばねによって付勢され得る。ロッド状部材12は、Cathcart他による特許で示されている中間スリーブ42のように、ブレーキシューの用途のためのブレーキ装置(brake rigging)に連結され得る。ロッド状部材12が円筒形リンク機構から解放されると、相対的な軸方向動作が可能となる。Cathcart他による特許の場合、スリーブ21及び中間スリーブ42の相対的な軸方向移動によって、ブレーキシューが後退することが可能となる。
【0011】
円筒形リンク機構10には内面に内側円周方向溝14が設けられており、ロッド状部材12には内側円周方向溝に面する外面に外側円周方向溝16が設けられている。円筒形リンク機構及びロッド状部材が共に挟持されるときに2つの溝が位置合わせされる。挟持されなくなると、溝は必然的にもはや位置合わせされなくなる。溝は環状であり、通常図3及び図4に示されるような部分的に長方形の断面を有する。
【0012】
止めリング18がロッド状部材12に隣接して配設されており、内側円周方向溝14内に嵌め込まれるか又は内側溝及び外側溝に架かるようなサイズに合わせられている。
止めリング18は分割されており、この分割部に隣接した半径方向に延びるタブ20、22を有する。止めリング18はまた、円筒形リンク機構のスロット26内に受け入れられる、分割部と実質的に対向した半径方向の固定用延長部24を有し、このため、止めリングの回転が防止される。止めリングは、固定用延長部と分割部との間に半径方向の圧縮タブ30、32を有する。
【0013】
挟持リング28が内側円周方向溝14内に配置されており、止めリング18と同軸となっている。挟持リング28は、該挟持リングが回転して分割端部と位置合わせされ挟持が解放されるときに分割部に隣接した止めリング18のタブ20、22を受け入れる、第1の窪み部34を内面に有する。挟持が解放されると、内面にある第2の窪み部36及び第3の窪み部38が、圧縮タブ30、32とそれぞれ位置合わせされる。挟持リングは窪み部と対向した間隙40を有しており、その結果、挟持リングの制限された回転が止めリングの固定用延長部を妨げることがない。止めリングのタブ及び挟持リングの窪み部は、挟持リングが回転すると、タブが窪み部と位置合わせされなくなることによって止めリングの半径方向内側への圧縮が生じるように配置される。
【0014】
解放機構42は、挟持リング28を挟持位置と非挟持位置との間で回転させる。解放機構は、挟持リングから半径方向外側に延びる駆動タブ44と、一端が駆動タブに枢着される、円筒形リンク機構内のボア内で摺動する牽引バー46とを備え、それによって牽引バーの往復動作が挟持リングを内側円周方向溝14内で回転させる。牽引バーは、内側溝及び外側溝が再び位置合わせされるときに、挟持リングを挟持位置に回転させるようにばね48によって付勢される。
【0015】
図2を参照すると、図で明らかなように牽引バー46を右に引くことによって解放が行われ、これにより図で明らかなように挟持リングが時計回りに回転し、したがって窪み部34、36及び38が移動してタブ20、22、30、32に位置合わせされる。これによって、止めリングがロッド状部材の外側溝16から離れて半径方向に拡張することを可能にする。
【0016】
図1を参照すると、内側溝及び外側溝が再び位置合わせされると、ばね48は、図で明らかなように牽引バー46を左に移動させ、図で明らかなように挟持リングを反時計回りに回転させる。これによって、タブ30、32が止めリング18を外側溝内に押すようにする。このとき、止めリングは内側溝及び外側溝に架かり、円筒形リンク機構及びロッド状部材の相対的な軸方向移動を防止する。
【0017】
外側溝及び内側溝は、共通の軸方向幅を有する部分的に長方形の断面を有する。止めリング及び挟持リングも、溝の軸方向幅よりも幾分小さい軸方向幅を有する部分的に長方形の断面を有する。
【0018】
このように、特許法によって求められる詳細及び特殊性に関して本発明を説明したが、特許証による保護が望まれるものは添付の特許請求の範囲に規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形リンク機構をロッド状部材に対して挟持及び解放するクランプ及び急速解放機構であって、
内面に設けられた内側円周方向溝を有する前記円筒形リンク機構と、
挟持中に前記内側円周方向溝に面する外面に設けられた外側円周方向溝を有する前記ロッド状部材と、
前記ロッド状部材に配設され、前記内側円周方向溝内に嵌まるか又は前記内側溝及び前記外側溝に架かるようなサイズに合わせられた止めリングであって、分割されるとともに半径方向の固定用延長部を有し、該固定用延長部は、前記円筒形リンク機構のスロット内に受け入れられて前記止めリングの回転を防止する、止めリングと、
前記内側円周方向溝内に配置され、前記止めリングと同軸となっている挟持リングであって、前記窪み部と対向した間隙を有し、その結果、該挟持リングの制限された回転が、前記止めリングの前記固定用延長部を妨げることがない、挟持リングと、
一方の方向への前記挟持リングの回転が前記止めリングを圧縮し、他方の方向への回転が前記止めリングの拡張を可能とするように構成される、前記挟持リングの内面及び前記止めリングの外面と、
前記挟持リングを挟持位置と非挟持位置との間で回転させる手段と
を備える、クランプ及び急速解放機構。
【請求項2】
円筒形リンク機構をロッド状部材に対して挟持及び解放するクランプ及び急速解放機構であって、
内面に設けられた内側円周方向溝を有する前記円筒形リンク機構と、
挟持中に前記内側円周方向溝に面する外面に設けられた外側円周方向溝を有する前記ロッド状部材と、
前記ロッド状部材に配設され、前記内側円周方向溝内に嵌まるか又は前記内側溝及び前記外側溝に架かるようなサイズに合わせられた止めリングであって、分割されるとともに、この分割部に隣接して半径方向に延びるタブを有し、前記分割部に実質的に対向するとともに、前記円筒形リンク機構のスロット内に受け入れられて前記止めリングの回転を防止する、半径方向の固定用延長部を有し、前記固定用延長部と前記分割部との間に半径方向の圧縮タブを有する、止めリングと、
前記内側円周方向溝内に配置され、前記止めリングと同軸である挟持リングであって、該挟持リングが回転されて前記分割端部と位置合わせされるときに、前記分割部に隣接した前記止めリングの前記タブを受け入れる、第1の窪み部を内面に有し、前記圧縮タブと位置合わせされる第2の窪み部及び第3の窪み部を内面に有し、前記窪み部と対向した間隙を有し、その結果、該挟持リングの制限された回転が、前記止めリングの前記固定用延長部を妨げることがない、挟持リングと、
前記挟持リングが回転すると、前記タブが前記窪み部と位置合わせされなくなることによって前記止めリングの半径方向内側への圧縮が生じるように配置される、前記止めリングの前記タブ及び前記挟持リングの前記窪み部と、
前記挟持リングを挟持位置と非挟持位置との間で回転させる手段であって、前記挟持リングから半径方向外側に延びる駆動タブと、一端が該駆動タブに枢着され、前記円筒形リンク機構内のボア内で摺動する牽引バーとを備え、それによって該牽引バーの往復動作が前記挟持リングを回転させる、回転させる手段と
を備える、クランプ及び急速解放機構。
【請求項3】
前記挟持リングを前記挟持位置に回転させるように前記牽引バーを付勢するばねをさらに備える、請求項2に記載の急速解放機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−510926(P2012−510926A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539682(P2011−539682)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/066526
【国際公開番号】WO2010/077546
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(506190681)ワブテク・ホールディング・コーポレイション (13)
【氏名又は名称原語表記】WABTEC HOLDING CORP.
【住所又は居所原語表記】1001 Air Brake Avenue, Wilmerding, PA 15148, U.S.A.
【Fターム(参考)】