説明

回転機械、特にガスタービン

【課題】二次的な冷却領域における冷媒質量流量の制御によって、冷却の能率および機械の効率が改善されるガスタービンを提供する。
【解決手段】ガスタービン10が、冷却空気によって冷却されるようになっており、該冷却空気が、ガスタービンを通して主流12と二次流13とで案内されるようになっている。ガスタービンが、ロータ22とステータ28とを有しており、冷却空気の二次流が、ステータに設けられた渦流通路27を通ってプレ渦流ノズル24に案内されるようになっていて、該プレ渦流ノズルでステータから流出するようになっており、プレ渦流ノズルの範囲に、二次流を温度に応じて自動的に制御するための制御手段36〜56が配置されており、該制御手段が、全体的にまたは部分的に形状記憶合金から成っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械、特にガスタービンであって、該回転機械が、冷媒、特に冷却空気によって冷却されるようになっており、該冷媒が、回転機械を通して主流と二次流とで案内されるようになっている回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギを発生させる回転機械、たとえばガスタービンまたは発電機では、強く熱負荷される部材の所要の冷却が、システムの総効率および寿命に影響を与える主要な物理的なパラメータを成している。多くの場合、冷媒として空気が使用される。しかし、同じ目的のためには、蒸気発生器から分岐される蒸気が使用されてもよい。本発明を空冷式のガスタービンの例において説明するが、本発明は、特有の冷却形態に限定されるものではなく、したがって、あらゆる種類の冷媒に対して使用することができる。
【0003】
図1には、断面図でガスタービン10の一部が示してある。このガスタービン10では、吸い込まれた空気が、圧縮機ハウジング31と、圧縮機案内羽根32と、圧縮機回転羽根33とを有する圧縮機11によって、周辺圧から出発して、設定された運転圧に圧縮される。圧縮後、圧縮された空気流は圧縮機空気主流12と二次流13とに分割される。圧縮機空気主流12は、(図1に示していない)燃焼器の高温の部分を冷却した後、燃焼器内で燃料の燃焼のために使用され、これによって、タービンを運転するための高温ガスが発生させられる。圧縮された空気の二次流13は、圧縮機11から冷却通路14を介してガスタービン10の高温範囲15に案内される。そこで、冷媒はタービンの案内羽根16と回転羽根17との内部冷却のために使用される。付加的には、冷媒が、案内羽根固定部材18における温度と、機械軸線34を中心としたロータ22の回転速度21に基づき最も高い遠心力にさらされている回転部材、たとえば羽根根元19および羽根ネック20における温度とを低下させる。
【0004】
空気の一部は、特にガスタービン10の回転部材、たとえばロータ22と、静止部材、たとえばステータ28との間のシール目的のためにも使用される(図1に示したシールシステム23a,23b,23c参照)。その際、ギャップには、高温ガス通路(図1に示した高温ガス主流29参照)内に流出する空気であって、この箇所で高温ガスの流入ひいては局所的な過熱を阻止する空気が押し流される。
【0005】
通常、一般的には、これに関連して、渦流通路27内に配置されたプレ渦流ノズル(Vorwirbelduese:図1に示した符号24参照)と呼ばれる特殊な装置または圧縮機11から分岐された空気をタービンの高温範囲15に案内して、ロータ22と高温の回転部材、たとえば羽根根元19、羽根ネック20および羽根プラットフォーム25とを冷却する渦流発生器が使用される。
【0006】
ガスタービン10が部分負荷下で運転されるかまたは全負荷下で運転されるかに応じて、運転条件のもと、タービンの高温の構成部材に対する熱負荷が増減される。たとえば、ガスタービンの出口出力の低下は、通常、燃焼器内での火炎温度の低下によって引き起こされる。要求された出力に関連して、ガスタービンを全負荷および部分負荷で運転することができる。全負荷は通常の運転条件に対応している。種々異なる運転状態は、圧縮機段に設けられた可変案内羽根(Variable Guide Vanes:VGV)によって制御される。この可変案内羽根はその食違い角を所望の出口出力に関連して変化させる。これによって、コンスタントな回転速度21のまま、最大のまたはより少ない空気質量流量が得られる。
【0007】
渦流通路27内に配置された渦流羽根26の下流側の空気の流速cの量(図1および図2参照)は、渦流通路27内の質量流量に線形に関連している。ガスタービンの全負荷に対応する通常運転に対して、結果的に生じる速度wは、関係式
w=2π・R・Ω・c
によって与えられている。ここで、Ωは、タービンの回転速度21であり、Rは、渦流通路27の出口における平均半径である(図2参照)。結果的に生じる空気速度wは、全体温度Tに関係式
=T+w/(2C
により影響を与える。ここで、Tは、静温度を表しており、Cは、比熱を表している。
【0008】
コンスタントな回転速度Ωに対して、部分負荷は可変案内羽根VGVによって達成される。この可変案内羽根VGVは圧縮機11内の質量流量を減少させる。次いで、渦流装置(渦流羽根26)の下流側の空気速度cが低下させられる。最終的には、これによって、結果的に生じる速度wに影響が与えられる。このことは、高温の回転部材、たとえば羽根根元19、羽根ネック20およびプラットフォーム25の金属温度に直接影響を与える。コンスタントな回転速度のまま、この金属温度が一定に保たれる場合には、相応の機械的な構成要素は低サイクル疲労(Low Cycle Fatigue:LCF)を受けない。このことは、制御される弁によって技術的に達成されてもよい。しかし、実際には、渦流装置は、通常、冷却通路14内の質量流量に影響を与えることができる制御エレメントを備えていない。なぜならば、ロータ22およびステータ28のこの領域には、制限されてしか手を近づけることができないからである。
【0009】
ロータ22、ステータ28およびタービン羽根における冷却空気分配の制御は、逆流を回避するための要求によって付加的に困難となる複雑な試みである。この結果、単純な絞り部材は良好な解決手段を成しておらず、空気力学的に最適化された構成を備えた制御装置を使用することが有利となる。このような装置がプレ渦流ノズル24である。このプレ渦流ノズル24は、通常、タービン案内羽根のような静止羽根列(図3aに示した渦流羽根26参照)によって形成される。この渦流羽根26は圧縮機11と高温範囲15との間でステータ28に固定されている。渦流羽根26の間には、相応の面積F(図3c参照)を備えた隘路35(図3b参照)が形成されている。
【0010】
プレ渦流ノズル24の領域において、質量流量の簡単で機能確実な自動的な調整を簡単に実現することができれば、大きな手間をかけずに、タービンの種々異なる負荷状態において、相応の領域の特に効果的な冷却を実現することができる。
【0011】
英国特許出願公開第2354290号明細書に基づき、ガスタービンにおいて、タービン羽根の内部を通る冷却空気流を、形状記憶合金から成る円形の弁によって制御することが公知である。
【0012】
米国特許出願公開第2009/0226327号明細書に基づき、類似の解決手段が公知である。この公知の解決手段では、タービンの個々のディスク内に、形状記憶合金から成るスリーブが挿入されている。このスリーブは冷媒通路の横断面を温度に応じて変化させる。
【0013】
両例では、冷媒の主流に影響が与えられている。
【0014】
さらに、英国特許出願公開第2470253号明細書には、ガスタービン内の冷媒流を制御するための装置が開示されている。環状のフローリミッタが使用される。このフローリミッタは、全周にわたって分配されて配置された複数の貫通孔を備えている。これらの貫通孔の流れ横断面は、それぞれ弁エレメントによって変化させることができる。この弁エレメントの、孔に対して相対的な位置は、形状記憶金属(SMM)エレメントによって変化させられる。一方の従来例(同明細書の図5参照)が、羽根による主流の公知の調整に関するのに対して、他方の従来例(同明細書の図4参照)は、ロータシャフトのシール領域における二次的な冷媒流の制御に関する。
【0015】
米国特許出願公開第2002/076318号明細書は、回転羽根を冷却するための、外部からガスタービンのロータへの冷却空気の接線方向でのノズル供給に関する。このノズル供給は、2つの別個の流れの混合下で行われる。両流れのうち、一方の流れは、内部から、ノズル供給のために設けられたノズル供給羽根によって放出される。特に形状記憶合金の使用下での横断面変化による制御は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】英国特許出願公開第2354290号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0226327号明細書
【特許文献3】英国特許出願公開第2470253号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/076318号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、二次的な冷却領域における冷媒質量流量(SAF:Secondary Air Flow)の制御によって、冷却の能率および機械の効率が改善される回転機械、特にガスタービンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この課題を解決するために本発明に係る回転機械によれば、回転機械が、ロータとステータとを有しており、前記冷媒の二次流が、ステータに設けられた渦流通路を通ってプレ渦流ノズルに案内されるようになっていて、該プレ渦流ノズルでステータから流出するようになっており、プレ渦流ノズルの範囲に、二次流を温度に応じて自動的に制御するための制御手段が配置されており、該制御手段が、全体的にまたは部分的に形状記憶合金から成っている。
【0019】
本発明に係る回転機械の有利な態様によれば、プレ渦流ノズルの範囲に渦流羽根が配置されており、該渦流羽根の範囲で温度に応じて渦流通路の流れ横断面が可変であるように、制御手段が形成されている。
【0020】
本発明に係る回転機械の有利な態様によれば、制御手段が、渦流通路内に向かって突入した、形状記憶合金から成るそれぞれ1つの湾曲させられたダイヤフラムを有しており、該ダイヤフラムが、曲率の変化によって渦流通路の横断面を変化させるようになっている。
【0021】
本発明に係る回転機械の有利な態様によれば、制御手段が、渦流通路内に壁平行に配置されたそれぞれ1つの壁エレメントを有しており、該壁エレメントが、温度に応じて長さ変化する、形状記憶合金から成る調節エレメントによって壁に対して横方向に移動可能であり、渦流通路の横断面を変化させるようになっている。
【0022】
本発明に係る回転機械の有利な態様によれば、調節エレメントが、ピンまたはばねとして形成されている。
【0023】
本発明に係る回転機械の有利な態様によれば、壁エレメントが、上流側に設置された面に案内金属薄板を備えており、該案内金属薄板が、渦流通路内で流れる媒体を、壁エレメントによって狭隘された横断面に導入するようになっている。
【0024】
本発明に係る回転機械の有利な態様によれば、渦流羽根が、それぞれ横断面を変化させるように渦流通路内に流れ方向に対して横方向に移動可能に配置されており、渦流羽根を温度に応じて移動させるために、形状記憶合金から成る調節エレメントが設けられている。
【0025】
本発明に係る回転機械の有利な態様によれば、移動可能な渦流羽根が、それぞれ上流側に設置された面に案内金属薄板を備えており、該案内金属薄板が、渦流通路内で流れる媒体を、渦流羽根によって狭隘された前記横断面に導入するようになっている。
【0026】
本発明に係る回転機械の有利な態様によれば、前記制御手段が、渦流羽根の長手方向軸線の方向に向けられた、形状記憶合金から成るそれぞれ1つのねじりエレメントを有しており、該ねじりエレメントが、渦流羽根の迎え角ひいては前記流れ横断面を温度に応じて変化させるようになっている。
【0027】
本発明に係る回転機械の有利な態様によれば、渦流通路の出口に、それぞれ出口開口を温度に応じてカバーするための手段が配置されている。
【0028】
本発明に係る回転機械の有利な態様によれば、カバー手段が、温度制御される絞りを有している。
【0029】
本発明に係る回転機械の有利な態様によれば、絞りもしくは絞りの絞りエレメントが、形状記憶合金から成っていて、温度に依存した絞りもしくは絞りエレメントの寸法の変化によって前記出口開口のカバー量を変化させるようになっている。
【0030】
本発明に係る回転機械の有利な態様によれば、前記絞りが、それぞれ複数の絞りエレメントから成っており、該絞りエレメントが、それぞれ形状記憶合金から成るねじりエレメントに連結されており、該ねじりエレメントが、絞りエレメントを、温度制御されてねじるようになっていて、前記出口開口のカバー量を変化させるようになっている。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、回転機械、特にガスタービンであって、この回転機械が、冷媒、特に冷却空気によって冷却されるようになっており、この冷媒が、回転機械を通して主流と二次流とで案内されるようになっている形式の回転機械に関する。本発明は、回転機械が、ロータとステータとを有しており、冷媒の二次流が、ステータに設けられた渦流通路を通ってプレ渦流ノズルに案内されるようになっていて、このプレ渦流ノズルでステータから流出するようになっており、プレ渦流ノズルの範囲に、二次流を温度に応じて自動的に制御するための制御手段が配置されており、この制御手段が、全体的にまたは部分的に形状記憶合金から成っていることを特徴としている。
【0032】
1つの態様は、プレ渦流ノズルの範囲に渦流羽根が配置されており、この渦流羽根の範囲で温度に応じて渦流通路の流れ横断面が可変であるように、制御手段が形成されていることを特徴としている。
【0033】
別の態様によれば、制御手段が、渦流通路内に向かって突入した、形状記憶合金から成るそれぞれ1つの湾曲させられたダイヤフラムを有しており、このダイヤフラムが、曲率の変化によって渦流通路の横断面を変化させるようになっている。
【0034】
本発明の別の態様は、制御手段が、渦流通路内に壁平行に(つまり、渦流通路壁に対して平行に)配置された、それぞれ1つの壁エレメントを有しており、この壁エレメントが、温度に応じて長さ変化する、形状記憶合金から成る調節エレメントによって(渦流通路)壁に対して横方向に移動可能であり、渦流通路の横断面を変化させるようになっていることを特徴としている。
【0035】
特に調節エレメントが、ピンまたはばねとして形成されている。
【0036】
別の態様は、壁エレメントが、上流側に設置された面に案内金属薄板を備えており、この案内金属薄板が、渦流通路内で流れる媒体を、壁エレメントによって狭隘された横断面に導入するようになっていることを特徴としている。
【0037】
更なる態様は、渦流羽根が、それぞれ横断面を変化させるように渦流通路内に流れ方向に対して横方向に移動可能に配置されており、渦流羽根を温度に応じて移動させるために、形状記憶合金から成る調節エレメントが設けられていることを特徴としている。
【0038】
別の態様によれば、移動可能な渦流羽根が、それぞれ上流側に設置された面に案内金属薄板を備えており、この案内金属薄板が、渦流通路内で流れる媒体を、渦流羽根によって狭隘された横断面に導入するようになっている。
【0039】
本発明の更なる態様は、制御手段が、渦流羽根の長手方向軸線の方向に向けられた、形状記憶合金から成るそれぞれ1つのねじりエレメントを有しており、このねじりエレメントが、渦流羽根の迎え角ひいては流れ横断面を温度に応じて変化させるようになっていることを特徴としている。
【0040】
さらに、渦流通路の出口に、それぞれ出口開口を温度に応じてカバーするための手段が配置されていることが可能である。
【0041】
特にカバー手段が、温度制御される絞りを有していてよい。
【0042】
1つの態様によれば、絞りもしくは絞りの絞りエレメントが、形状記憶合金から成っていて、温度に依存した絞りもしくは絞りエレメントの寸法の変化によって出口開口のカバー量を変化させるようになっている。
【0043】
別の態様によれば、絞りが、それぞれ複数の絞りエレメントから成っており、これらの絞りエレメントが、それぞれ形状記憶合金から成るねじりエレメントに連結されており、このねじりエレメントが、絞りエレメントを、温度制御されてねじるようになっていて、出口開口のカバー量を変化させるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】冷却空気を分配するための種々異なる経路を備えたガスタービンの一部の断面図である。
【図2】渦流通路の構成の拡大断面図である。
【図3】プレ渦流ノズル内に配置された渦流羽根をそれぞれ異なる方向から見た図である。
【図4】渦流通路内の冷却空気質量流量を自動的に調整するための本発明に係る種々異なる実施の形態(図4b〜図4f)を、調整されないアッセンブリ(図4a)に対して示す種々異なる部分図である。
【図5】渦流羽根の旋回によって渦流通路内の冷却空気質量流量を自動的に調整するための実施の形態を2つの方向から見た図である。
【図6】出口横断面の自動的な変更によって渦流通路内の冷却空気質量流量を自動的に調整する実施の形態の断面図である。
【図7】出口横断面を自動的に制御するための実施の形態における種々異なる状態を示す複数の部分図である。
【図8】出口横断面を自動的に制御するための別の実施の形態における種々異なる状態を示す複数の部分図である。
【図9】個々のエレメントがそれぞれ軸を中心として自動的にねじられる、図7に対応する構成を示す図である。
【図10】個々のエレメントがそれぞれ軸を中心として自動的にねじられる、図8に対応する構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0046】
本発明の有利な実施の形態によれば、図1に示したガスタービン10に設けられたプレ渦流ノズル24が、全体的にまたは部分的に形状記憶合金(shape memory alloy:SMA)から形成されている。通常の運転温度よりも低くてよい設定された限界温度未満では、プレ渦流ノズル24の、形状記憶合金から成る部分が作動させられ、プレ渦流ノズル24の隘路の範囲における横断面(積)を減少させる。これによって、ガスタービン10の高温範囲15への冷却空気質量流量が有効に減少させられる。その際、形状記憶合金から成る部分の収縮、伸び、ねじれおよび反りを、その他の点で鋼から成る単純なシステムの通流横断面を減少させるためのメカニズムとして利用することができる。図4には、調整なしのアッセンブリ(図4a参照)と比較して、種々異なる実施の形態が示してある。たとえば、形状記憶合金から成る種々異なるアッセンブリの使用によって、それぞれ異なる機械的な変形に基づき、自動的に制御されるプレ渦流ノズル24を実現することができる(図4b〜図4f参照)。全ての実施の形態は、上側の壁エレメント38(図4cおよび図4d)、下側の壁エレメント44(図4e参照)、ダイヤフラム36(図4b参照)または渦流羽根26それ自体(図4f参照)の並進運動に基づく渦流通路27の高さの減少による図3cに示した面積Fの減少に基づいている。
【0047】
図4bの実施の形態では、渦流羽根26の羽根先端の領域に、渦流通路27内に向かって湾曲させられたダイヤフラム36が設けられている。このダイヤフラム36の曲率(湾曲量)ひいては渦流通路27における流れ横断面が変化させられる。
【0048】
図4cの実施の形態では、渦流羽根26の羽根先端の領域に調節装置37が設けられている。この調節装置37は、壁平行な、つまり、渦流通路壁に対して平行な壁エレメント38を備えている。この壁エレメント38は、相応のハウジングに組み付けられた、形状記憶合金から成る調節エレメント40によって、(渦流通路)壁に対して垂直に移動することができる。調節エレメント40は、ピンまたはばねの形を有していてよい。流れ方向で見て壁エレメント38の前方に(上流側に)配置された、この壁エレメント38によって調節可能な案内金属薄板39が、流れを、壁エレメント38によって減少させられた横断面に導く。
【0049】
図4dの実施の形態では、調節装置41が、その他の点では図4cと同じ構造のまま、ピンまたはばねの形の開放した調節エレメント42を有している。
【0050】
図4eの実施の形態では、調節装置43が、渦流羽根26の羽根根元の側に配置された、対応配置された案内金属薄板45を備えた壁平行な壁エレメント44を有している。この壁エレメント44も同じく、形状記憶合金から成る調節エレメント42によって壁に対して垂直に移動することができる。
【0051】
図4fの実施の形態では、渦流羽根26それ自体が、形状記憶合金から成る相応の調節エレメント46によって壁に対して垂直に移動させられ、これによって、(プラットフォームの移動により)渦流通路27の横断面が変化させられる。この実施の形態でも、案内金属薄板47が設けられており、これによって、流れが、狭隘された横断面に向かって導かれる。当然ながら、図4b〜図4fの種々異なる調節機構が互いに組み合わされてもよい。
【0052】
適切な調節機構に対する別の実施の形態が、図5に示してある。部分図a)には、渦流羽根26の側面図が示してあり、部分図b)には、渦流羽根26を上方から見た図が示してある。この実施の形態における渦流羽根26は、羽根長手方向に向けられた、形状記憶合金から成るねじりエレメント48によって形成される軸を中心としてねじり可能である。渦流羽根26の相応のねじれ(図5bに示した実線および破線参照)によって、アッセンブリの自由流れ横断面が変化させられる。
【0053】
別の可能な実施の形態は、図6によれば、渦流通路27の流出開口に絞り49を配置することにある。この絞り49は全体的にまたは部分的に形状記憶合金から成っていて、流出開口を温度に応じて変化させる(図6に示した符号49に対する破線参照)。機械の出力が減少させられ、これによって、高温ガス、圧縮された空気または何らかの部材の金属温度が変化させられると、徐々に絞り49が閉鎖され、冷媒の質量流量を減少させる。
【0054】
絞り49が、図7に示したように、複数の絞りエレメント50から成っている場合には、渦流通路27の出口は撮影機器の絞りと同様に次第に閉鎖される(図7aが、タービンの全負荷に対応しているのに対して、図7bおよび図7cは、タービンの部分負荷に対応している)。
【0055】
しかし、渦流通路27の形状に関連して、絞り49は、図8によれば、複数の絞りエレメント51から形成されたスルースゲートのように形成されていてもよい。全体的にまたは部分的に形状記憶合金から成るこのスルースゲートは、温度に応じて渦流通路27内の冷媒流を減少させるかまたは渦流通路27内の冷媒流を完全に遮断する。この場合には、個々の絞りエレメント51が温度に応じて、冷媒流に影響を与える伸長52を受ける。
【0056】
しかし、図7または図8に示したアッセンブリを従来の材料から製造することも可能である。図9または図10によれば、個々の絞りエレメント53;55に、形状記憶合金から成る対応するねじりエレメント54;56によって、流れ横断面を変化させるための所要のねじり運動が付与される。
【0057】
全体として、本発明は、冷媒消費量を回転機械の負荷状態に関連して、効率が向上するように調整するために、回転機械の二次的な冷媒システムに形状記憶合金を使用することを説明している。上述した実施の形態において説明した渦流手段は、調節機構の相応の変更を要求する種々異なる形状をとることができる。形状記憶合金に基づく前述した自動的な調整機構は、熱遮蔽体で使用されてもよく、これによって、冷媒消費量が(ガスタービンの)出力に関連して制御される。
【0058】
提案したアッセンブリは、回転する基準フレームにおける全体温度に対して相対的に冷媒温度をさらに低下させる点で有利である。これによって、必要となる冷却空気質量流量をさらに減少させ、ひいては、ガスタービンの出力と効率とを高めることが可能となる。
【0059】
形状記憶合金は、種々異なる元素のそれぞれ異なる冶金組成から成っていてよく、種々異なるテクノロジによって製造されてもよい。機械の温度の変化および/または機械の機械的な変更は、形状記憶合金から成る構成部材の幾何学的形状変更のプロセスを開始する。組立て時の誤差の減少に際しては、伸長の代わりに、構成部材の収縮特性が考慮される。
【0060】
提案した機構をガスタービンの例において説明したが、形状記憶合金から成るエレメントに基づく冷媒制御は、冷媒質量流量の能動的な自動的な制御が必要となる別の機械に使用されてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 ガスタービン
11 圧縮機
12 圧縮機空気主流
13 二次流
14 冷却通路
15 高温範囲
16 案内羽根
17 回転羽根
18 案内羽根固定部材
19 羽根根元
20 羽根ネック
21 回転速度
22 ロータ
23a,23b,23c シールシステム
24 プレ渦流ノズル
25 プラットフォーム
26 渦流羽根
27 渦流通路
28 ステータ
29 高温ガス主流
31 圧縮機ハウジング
32 圧縮機案内羽根
33 圧縮機回転羽根
34 機械軸線
35 隘路
36 ダイヤフラム
37 調節装置
38 壁エレメント
39 案内金属薄板
40 調節エレメント
41 調節装置
42 調節エレメント
43 調節装置
44 壁エレメント
45 案内金属薄板
46 調節エレメント
47 案内金属薄板
48 ねじりエレメント
49 絞り
50 絞りエレメント
51 絞りエレメント
52 伸長
53 絞りエレメント
54 ねじりエレメント
55 絞りエレメント
56 ねじりエレメント
F 面積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械(10)、特にガスタービンであって、該回転機械(10)が、冷媒、特に冷却空気によって冷却されるようになっており、該冷媒が、回転機械(10)を通して主流(12)と二次流(13)とで案内されるようになっている回転機械において、回転機械(10)が、ロータ(22)とステータ(28)とを有しており、前記冷媒の二次流(13)が、ステータ(28)に設けられた渦流通路(27)を通ってプレ渦流ノズル(24)に案内されるようになっていて、該プレ渦流ノズル(24)でステータ(28)から流出するようになっており、プレ渦流ノズル(24)の範囲に、二次流(13)を温度に応じて自動的に制御するための制御手段(36〜56)が配置されており、該制御手段(36〜56)が、全体的にまたは部分的に形状記憶合金から成っていることを特徴とする、回転機械。
【請求項2】
プレ渦流ノズル(24)の範囲に渦流羽根(26)が配置されており、該渦流羽根(26)の範囲で温度に応じて渦流通路(27)の流れ横断面が可変であるように、制御手段(36〜48)が形成されている、請求項1記載の回転機械。
【請求項3】
制御手段(36〜47)が、渦流通路(27)内に向かって突入した、形状記憶合金から成るそれぞれ1つの湾曲させられたダイヤフラム(36)を有しており、該ダイヤフラム(36)が、曲率の変化によって渦流通路(27)の横断面を変化させるようになっている、請求項2記載の回転機械。
【請求項4】
制御手段(36〜47)が、渦流通路(27)内に壁平行に配置されたそれぞれ1つの壁エレメント(38,44)を有しており、該壁エレメント(38,44)が、温度に応じて長さ変化する、形状記憶合金から成る調節エレメント(40,42)によって壁に対して横方向に移動可能であり、渦流通路(27)の横断面を変化させるようになっている、請求項2記載の回転機械。
【請求項5】
調節エレメント(40,42)が、ピンまたはばねとして形成されている、請求項4記載の回転機械。
【請求項6】
壁エレメント(38,44)が、上流側に設置された面に案内金属薄板(39,45)を備えており、該案内金属薄板(39,45)が、渦流通路(27)内で流れる媒体を、壁エレメント(38,44)によって狭隘された横断面に導入するようになっている、請求項4または5記載の回転機械。
【請求項7】
渦流羽根(26)が、それぞれ横断面を変化させるように渦流通路(27)内に流れ方向に対して横方向に移動可能に配置されており、渦流羽根(26)を温度に応じて移動させるために、形状記憶合金から成る調節エレメント(46)が設けられている、請求項2記載の回転機械。
【請求項8】
移動可能な渦流羽根(26)が、それぞれ上流側に設置された面に案内金属薄板(47)を備えており、該案内金属薄板(47)が、渦流通路(27)内で流れる媒体を、渦流羽根(26)によって狭隘された前記横断面に導入するようになっている、請求項7記載の回転機械。
【請求項9】
前記制御手段が、渦流羽根(26)の長手方向軸線の方向に向けられた、形状記憶合金から成るそれぞれ1つのねじりエレメント(48)を有しており、該ねじりエレメント(48)が、渦流羽根(26)の迎え角ひいては前記流れ横断面を温度に応じて変化させるようになっている、請求項2記載の回転機械。
【請求項10】
渦流通路(27)の出口に、それぞれ出口開口を温度に応じてカバーするための手段(49〜51,53〜56)が配置されている、請求項1記載の回転機械。
【請求項11】
カバー手段(49〜51,53〜56)が、温度制御される絞り(49〜51,53〜56)を有している、請求項10記載の回転機械。
【請求項12】
絞り(49)もしくは絞り(49)の絞りエレメント(50,51)が、形状記憶合金から成っていて、温度に依存した絞り(49)もしくは絞りエレメント(50,51)の寸法の変化によって前記出口開口のカバー量を変化させるようになっている、請求項11記載の回転機械。
【請求項13】
前記絞りが、それぞれ複数の絞りエレメント(53,55)から成っており、該絞りエレメント(53,55)が、それぞれ形状記憶合金から成るねじりエレメント(54,56)に連結されており、該ねじりエレメント(54,56)が、絞りエレメント(53,55)を、温度制御されてねじるようになっていて、前記出口開口のカバー量を変化させるようになっている、請求項11記載の回転機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−112382(P2012−112382A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253752(P2011−253752)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】