説明

回転機械支持装置

【課題】流体により回転駆動される回転機械の回転バランス検査を行うために回転機械を支持する回転機械支持装置であって、回転バランス検査時に、タービンハウジングの流路が回転機械の回転系の振動特性に与える影響を低減できる回転機械支持装置を提供する。
【解決手段】回転機械支持装置10は、タービン翼3を内部に収容するタービンハウジング6を備え、該タービンハウジング6は、流路部分14と支持部分13とからなっており、流路部分14には、回転バランス検査のためにタービン翼3を回転駆動する流体を流す流路14aが形成される。回転機械支持装置10は、さらに押付部材11と支持体15を備える。押付部材11は、回転機械1の被押付部1aに押付力を作用させ、支持部分13は、被押付部1aを押付部材11との間に挟むとともに、支持部分13には押付力により被支持部1aが押し付けられる。支持体15に支持部分13が固定されることで、支持体15が支持部分13を介して回転機械1を支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体により回転駆動される回転機械の回転バランス検査を行うために回転機械を支持する回転機械支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体により回転駆動される回転機械においては、回転バランスを修正することが行われている。このような回転機械には、過給機やターボ圧縮機やガスタービンなどがあるが、過給機を例として、従来における回転バランス修正について説明する。
【0003】
過給機は、車両や船舶などに搭載されるエンジンの排ガスエネルギーを利用して、エンジンに圧縮空気を供給する装置である。過給機は、エンジンの排ガスにより回転駆動されるタービン翼と、タービン翼と一体的に回転することで圧縮空気をエンジンに供給するコンプレッサ翼と、一端部にタービン翼が結合され他端部にコンプレッサ翼が結合される回転軸とを有する。また、過給機は、タービン翼を内部に収容するタービンハウジングと、コンプレッサハウジングを内部に収容するコンプレッサハウジングと、回転軸を支持する軸受けが内部に組み込まれる軸受けハウジングと、を備える。
【0004】
過給機の回転バランス検査は、過給機を製品として出荷する前に行われる。
回転バランス検査は、例えば図9に示す装置により行われる。図9に示すように、全構成部品の組み立てが完成した過給機21からコンプレッサハウジング(図示せず)を取り外す。次いで、この過給機21のタービンハウジング23をボルト25などで支持体27に取り付ける。その後、エンジンの排ガスと同じ程度の圧力を有する圧縮ガスをタービン翼29に供給することで、タービン翼29、コンプレッサ翼31および回転軸33からなる回転体を回転駆動する。回転体が所定の回転速度に達したら、加速度ピックアップ35で回転体の加速度(即ち、振動)を検出しつつ、回転角検出器37により回転体の回転角を検出する。これにより、例えば、演算器38が、所定の回転速度において、どの回転角でどの程度の加速度(振動)が生じているかを検出する。この検出データに基づいてアンバランス量を求める。このアンバランス量を無くすように回転体の一部(例えば、ナット39の一部)を除去加工することでバランス修正を行う。このような過給機21の回転バランス検査および回転バランス修正は、例えば下記の特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2002−39904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来においては、過給機21の回転バランス検査を精度よく行えないおそれがある。
【0006】
その主な理由は次の通りである。タービンハウジング23の内部には、エンジンからの排ガスを最適な給気流量および流速でタービン翼29に案内するために、複雑な3次元形状を持つ流路(スクロール)が形成されている。そのため、タービンハウジング23には、肉厚が薄い箇所、厚い箇所がある。このことがタービンハウジング23の剛性と固有振動数を低下させている。即ち、タービンハウジング23の固有振動数が、上述の回転体(回転系)の検査回転速度範囲内となる。このようなタービンハウジング23を、図9のように支持体27に固定することで過給機21を支持体27に固定しているので、タービンハウジング23の振動特性が、過給機21の回転系の振動特性を計測する際に混在するおそれがある。これによって、過給機21の回転バランス検査の精度が悪化するおそれがある。
【0007】
別の理由は次の通りである。タービンハウジング23の形状、即ち、固有振動数は、過給機21の機種毎に異なるため、タービンハウジング23の固有振動数が回転系の振動特性に与える影響も機種毎に異なる。そのため、過給機21の回転系の計測振動特性が機種毎に大きく異なるおそれがある。これによって、過給機21の回転バランス検査の精度が悪化するおそれがある。
【0008】
このように、従来において、流体により回転駆動される過給機などの回転機械を支持してその回転バランス検査を行う場合に、タービンハウジングの振動特性が回転機械の回転系の振動特性計測値に混在するおそれがあるとともに、タービンハウジングの振動特性が回転系の振動特性に与える影響も機種毎に異なるので、精度よく検査を行えないおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、流体により回転駆動される過給機やターボ圧縮機やガスタービンなどの回転機械の回転バランス検査を行うために回転機械を支持する回転機械支持装置であって、回転バランス検査時に、タービンハウジングの流路が回転機械の回転系の振動特性に与える影響を低減できる回転機械支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明によると、流体により回転駆動される回転機械の回転バランス検査を行うために該回転機械を支持する回転機械支持装置であって、
前記回転機械は、タービン翼と、前記タービン翼が固定される回転軸と、を有するものであり、
前記回転機械支持装置は、前記タービン翼を内部に収容するタービンハウジングを備え、該タービンハウジングは、流路部分と支持部分とからなっており、前記流路部分には、前記タービン翼を回転駆動する流体を流す流路が形成され、
前記回転機械支持装置は、さらに押付部材と支持体を備え、
前記押付部材は、前記回転機械の被押付部に押付力を作用させ、
前記支持部分と前記押付部材との間に前記被押付部を挟むとともに、前記支持部分には前記押付力により前記被支持部が押し付けられ、
前記支持体に前記支持部分が固定されることで、前記支持体が前記支持部分を介して前記回転機械を支持する、ことを特徴とする回転機械支持装が提供される。
【0011】
上述の本発明の構成では、押付部材と支持部分との間に回転機械の被押付部を挟むとともに、押付部材が被押付部に押付力を作用させ、この押付力を受ける支持部分が支持体に固定されることで支持体が該支持部分を介して回転機械を支持する。これにより、剛性・固有振動数が低い流路が形成された流路部分を介さずに回転機械を支持することが可能になる。
即ち、タービンハウジングをタービン翼を駆動させる流体を流す流路を形成する部分(タービン翼を駆動させる機能を持つ部分)である流路部分と、前記流路が形成されず回転機械を支持する機能を持つ部分である支持部分とに分けた(例えば、分割した)ので、剛性・固有振動数が低い流路部分を介さずに回転機械を支持することが可能になる。
よって、回転機械の回転バランス検査において、タービンハウジングの流路が回転機械の回転系の振動特性に与える影響を低減できる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によると、完成品の前記回転機械には、完成品用タービンハウジングが設けられ、該完成品用タービンハウジングには、前記タービン翼を回転駆動する流体を流す流路が形成され、
前記回転機械支持装置の前記タービンハウジングは、前記完成品用タービンハウジングの代わりに設けられ、
前記タービンハウジングと前記完成品用タービンハウジングとは、形状および寸法の少なくともいずれかが異なる。
【0013】
形状や寸法などの制限から完成品用タービンハウジングを前記流路部分と前記支持部分とに分けることができない場合などには、上記のように、完成品用タービンハウジングと形状や寸法の異なるバランス検査用の前記タービンハウジングを用意する。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によると、前記押付部材は、前記押付力を前記支持部分を介して前記支持体に作用させる。
【0015】
上記構成では、前記押付部材は、前記押付力を前記支持部分を介して前記支持体に作用させるので、前記押付力により回転機械を支持体に強固に固定できる。また、この場合でも、上述と同様にタービンハウジングの形状により剛性・固有振動数が低下した部分を介さずに回転機械を支持体に強固に固定できる。よって、回転機械の回転バランス検査において、タービンハウジングの固有振動数が回転機械の回転系の振動特性に与える影響を無くしまたは大幅に低減できる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によると、前記支持体には前記流路部分が取り付けられ、
前記支持部分は、
前記回転軸の半径方向の位置が前記被押付部と同じとなり前記押付力を受ける内側部と、
該内側部から前記半径方向の外方に、前記半径方向に関して前記流路部分の外側まで延び、該外側にて前記支持体に結合される延長部と、を有する。
【0017】
上記構成では、前記支持部分は、前記回転軸の半径方向の位置が前記被押付部と同じとなり前記押付力を受ける内側部と、該内側部から前記半径方向の外方に、前記半径方向に関して前記流路部分の外側まで延び、該外側にて前記支持体に結合される延長部と、を有するので、前記流路部分を前記支持体に取り付ける場合に、前記流路部分を回避する経路で、回転機械の荷重を支持体に伝達できる。
【0018】
また、本発明の好ましい実施形態によると、前記延長部は、前記半径方向に関して前記流路部分の前記外側にて前記支持体に前記押付力を作用させる。
【0019】
上記構成では、前記延長部は、前記半径方向に関して前記流路部分の前記外側にて前記支持体に前記押付力を作用させるので、前記流路部分を前記支持体に取り付ける場合に、前記流路部分を回避する経路で前記押付力を前記被押付部から支持体に伝達できる。
【発明の効果】
【0020】
上述した本発明によると、回転機械の回転バランス検査において、タービンハウジングの流路が回転機械の回転系の振動特性に与える影響を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0022】
図1(A)は、本発明の回転機械支持装置が適用可能な過給機1の構成図である。
過給機1は、図1(A)に示すように、エンジンの排ガスにより回転駆動されるタービン翼3と、タービン翼3と一体的に回転することで圧縮空気をエンジンに供給するコンプレッサ翼5と、一端部にタービン翼3が結合され他端部にコンプレッサ翼5が結合される回転軸7とを有する。また、過給機1は、タービン翼3を内部に収容するタービンハウジング9と、コンプレッサ翼5を内部に収容するコンプレッサハウジング(本願の図面では取り外されている)と、回転軸7を支持する軸受け8a,8bが内部に組み込まれる軸受けハウジング8と、を備える。タービンハウジング9には、タービン翼3を回転駆動する流体(エンジンからの排ガス)を流す流路(スクロール)9aが形成されている。
符号2は、軸受けハウジング8とタービンハウジング9とを結合するカップリング部材を示す。図1(B)は、回転軸7の軸方向から見たカップリング部材2を示す。図1(B)において、カップリング部材2は、互いに分割されている1対の半円弧状部材2aと、1対の半円弧状部材2aを結合するボルト2bおよびナット2cとからなる。なお、カップリング部材2を用いずに、軸受けハウジング8とタービンハウジング9とをボルトなどにより結合してもよい。
【0023】
図2は、本発明の実施形態による回転機械支持装置10の構成図である。図2の例では、回転機械支持装置10が支持する回転機械は、図1(A)に示す過給機1である。図2では、過給機1が回転機械支持装置10に取り付けられた状態を示している。図3は図2のA−A線矢視図であり、図2は図3のB−B線矢視図である。また、図4は、回転機械支持装置10の詳細斜視図である。
【0024】
回転機械支持装置10は、流体により回転駆動される回転機械(この例では、過給機1)の回転バランス検査を行うために過給機1を支持する装置である。
回転機械支持装置10は、タービンハウジング9の代わりに設けられるバランス検査用のタービンハウジング6を備える。即ち、完成品の過給機1からタービンハウジング9(と図示しない前記コンプレッサハウジング)を取り外し、このタービンハウジング9の代わりとなるタービンハウジング6を設ける。タービンハウジング6と完成品用タービンハウジング9とは、形状および寸法の少なくともいずれかが異なる。タービンハウジング6は、流路部分14と支持部分13とからなっている。流路部分14には、回転バランス検査のためにタービン翼を回転駆動する流体を流す流路14aが形成されている。支持部分13には、流路14aは形成されていない。本実施形態では、流路部分14と支持部分13とは、互いに分割されている別個の部材同士である。
【0025】
また、図2に示すように、回転機械支持装置10は、さらに押付部材11と支持体15を備える。
【0026】
押付部材11は、流路14aよりもコンプレッサ翼5側の位置にて過給機1の被押付部1aに押付力を作用させる。図2〜図4の例では、被押付部1aは軸受けハウジング8の一部であり、軸受けハウジング8の外周面から回転軸7の半径方向に突出した突出部である。この突出部1aは、図3のように回転軸7の軸方向から見た場合、環状となっている。
また、押付部材11を被押付部1aに押し付ける押圧力発生装置を設ける。図2〜図4の例では、油圧を用いた押圧力発生装置12を設けている。即ち、図2〜図4の例では、押付部材11は、油圧クランプのクランプロッドである。この場合、押付部材11は、油圧により旋回しながら回転軸7の軸方向に移動させられる公知のスイング式クランプロッドであってもよい。この油圧が供給される油圧室は油圧クランプ本体(押圧力発生装置)12の内部に形成され、油圧クランプ本体12は支持体15に固定される。図2の例では、このようなクランプロッド11と油圧クランプ本体12からなる油圧クランプを、回転軸7の周方向に間隔をおいて4つ設けている。
【0027】
支持部分13は、流路14aよりもコンプレッサ翼5側の位置にて被押付部1aを押付部材11との間に挟むとともに、支持部分13には前記押付力により被押付部1aが押し付けられる。図4において、符号16は、支持部分13を支持体15に固定するためのボルトが挿入されるボルト孔を示す。なお、他の図では、ボルト孔16は省略している。
支持部分13は、図2に示すように、内側部13aと延長部13bを有する。内側部13aは、回転軸7の半径方向の位置が被押付部1aと同じとなり前記押付力を受ける。延長部13bは、該内側部13aから前記半径方向の外方に、前記半径方向に関して流路部分14の外側まで延び、該外側にて支持体15に前記ボルトにより結合され支持体15に前記押付力を作用させる。これにより、前記押圧力をタービンハウジングに9に作用させずに、または、ほとんど作用させずに、前記押圧力を支持体15に作用させることができる。なお、支持部分13は、図3の破線で囲まれた範囲Rにおいて、前記押付力を支持体15に伝達、作用させている。
図2〜図4に示す例では、支持部分13は、回転機械支持装置10の他の構成部材から独立した部材である。また、支持部分13は、剛性の高い材料(例えば、鉄)で形成される。
図5は、図3において支持部分13以外の部材を省略した図であり、支持部分13を示している。図5に示すように、支持部分13には、軸受けハウジング8が挿入される開口13c(図5を参照)が形成されている。即ち、支持部分13は、その開口13cに軸受けハウジング8を挿入することで、軸受けハウジング8に取り付けられる。なお、開口13cは、回転軸7の軸方向から見て円形となっている。一方、軸受けハウジング8の外周面も、開口13cの形状と整合するように前記軸方向から見て円形になっている。この構成で、軸受けハウジング8の外周面を支持部分13の開口13cに挿入かつ嵌合させる。
【0028】
支持体15は過給機1を支持するための土台である。支持体15には、上述のように支持部分13がボルト(図4のボルト孔16を参照)などの結合手段により固定される。これにより、支持体15は支持部分13を介して過給機1を支持する。好ましくは、支持体15には、押付部材11による前記押付力が支持部分13を介して作用させられる。また、図2の例では、支持体15には、流路部分14がボルト17などの結合手段により取り付け固定される。なお、図2において、符号19は、ボルト17が挿入されるボルト孔を示す。また、図示しないが、支持体15には、過給機1の回転バランス検査時に、流路3aおよびタービン翼3に圧縮ガスを通すための通路が内部に形成されてよい。この通路は、例えば支持体15の下面に開口してよい。
【0029】
上述の回転機械支持装置10に過給機1を取り付ける手順を説明する。まず、完成品の過給機1からタービンハウジング9とコンプレッサハウジングを取り外した状態にする。一方、支持体15には、流路部分14と支持部分13とをこの順で取り付ける(固定する)。次いで、開口13cにタービン翼3を通すとともに軸受けハウジング8の一部を支持部分13の開口13cに挿入した状態にする。この状態で、押付部材11により、軸受けハウジング8の被押付部1aを支持部分13を介して支持体15に押し付ける。これにより、過給機1を支持体15に取り付け固定する。なお、流路部分14および支持部分13の支持体15への取り付け(固定)は、上述したようにボルトなどの結合手段により行う。
【0030】
上述した本発明による回転機械支持装置10では、以下の効果(1)〜(5)が得られる。
【0031】
(1)押付部材11と支持部分13との間に過給機1の被押付部1aを挟むとともに、押付部材11が被押付部1aに押付力を作用させ、この押付力を受ける支持部分13が支持体15に固定されることで支持体15が該支持部分13を介して過給機1を支持する。これにより、剛性・固有振動数が低い流路部分14を介さずに過給機1を支持することが可能になる。
即ち、タービンハウジング6を、流路を形成する部分(タービン翼を駆動させる機能を持つ部分)である流路部分14と、回転機械を支持する機能を持つ部分である支持部分13とに分けた(例えば、分割した)ので、剛性・固有振動数が低い流路部分14を介さずに過給機1を支持することが可能になる。
よって、過給機1の回転バランス検査において、タービンハウジング9の流路9a(流路部分14の流路14a)が回転機械の回転系の振動特性に与える影響を低減できる。
【0032】
(2)さらに、上述した本発明の実施形態では、押付部材11は、前記押付力を支持部分13を介して支持体15に作用させるので、前記押付力により過給機1を支持体15に強固に固定できる。また、この場合でも、上述と同様に剛性・固有振動数が低下した流路部分14を介さずに過給機1を支持体15に強固に固定できる。よって、過給機1の回転バランス検査において、流路部分14の流路14aが過給機1の回転系の振動特性に与える影響を無くしまたは大幅に低減できる。
図6は、図2〜図5の構成による回転機械支持装置10に各機種の過給機1を支持させて得られた過給機1の振動特性を示す。図7は、従来において、生じていた振動特性を示す比較図であり、図7(A)は図6(A)に対応し、図7(B)は図6(B)に対応する。図6、図7において、過給機1の機種毎に折れ線グラフが描かれている。即ち、図6、図7において、複数の折れ線グラフは、それぞれ過給機1の互いに異なる機種の場合を示している。
図6(A)、図7(A)において、横軸はタービンの回転数[Krpm]を示し、縦軸は影響係数α[m/s・g]を示す。影響係数αは、α=G/Uで求められる値である。ここで、Gはタービンが回転駆動されている時に、過給機1の軸受け8bが回転軸7から受ける加速度振幅[m/s]であり、Uはタービン翼3、回転軸7およびコンプレッサ翼5からなる回転体のアンバランス量[g]である。このような影響係数αは、回転時の回転体にける振動に影響を及ぼす度合いを示す。
図6(B)、図7(B)において、横軸はタービンの回転数[Krpm]を示し、縦軸は影響係数αの位相(即ち、回転体の回転角)[deg]を示す。
図6と図7に基づいて本実施形態と従来の場合を対比する。従来のように剛性・固有振動数が低いタービンハウジング9を介して過給機1を支持した状態で回転体を回転駆動させた場合には、タービンハウジング9の流路9aが回転体の振動に影響を及ぼす。しかも、タービンハウジング9の流路9aは,過給機1の機種毎に形状が異なるので、タービンハウジング9の振動特性は、過給機1の機種毎に異なる。従って、このような場合には、図7のように、過給機の各機種の振動特性をそれぞれ示す複数の折れ線グラフが重ならない。言い換えると、従来では、図7の複数の折れ線グラフが示すように、影響係数αが過給機1の機種間で大きくばらついている。これに対し、本実施形態では、図6(A)、図6(B)のように、複数の折れ線グラフが重なる。言い換えると、本実施形態では、過給機1の各機種の影響係数がほとんど一致している。このことは、本実施形態の場合には、流路部分14の流路14aが過給機1の回転系の振動特性に与える影響を無くしていることを示している。
【0033】
(3)支持部分13は、前記半径方向の位置が被押付部1aと同じとなり前記押付力を受ける内側部13aと、該内側部13aから前記半径方向の外方に、前記半径方向に関して流路部分14の外側まで延び、該外側にて支持体15に結合される延長部13bと、を有するので、流路部分14を支持体15に取り付ける場合に、流路部分14を回避する経路で、過給機1の荷重を支持体15に伝達できる。
【0034】
(4)支持部分13は、前記半径方向の位置が被押付部1aと同じとなり前記押付力を受ける内側部13aと、該内側部13aから前記半径方向の外方に、前記半径方向に関して流路部分14の外側まで延び、該外側にて支持体15に前記押付力を作用させる延長部13bと、を有するので、流路部分14を支持体15に取り付ける場合に、流路部分14を回避する経路で前記押付力を被押付部1aから支持体15に伝達できる。
【0035】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【0036】
上述の実施形態では、押付部材11は、油圧クランプのクランプロッドであったが、押付部材11は、被押付部1aに押付力を作用させ、この押付力を支持部分13を介して支持体15に作用させる他の適切な押圧部材であってもよい。この場合、押付部材11を被押付部1aに押し付ける押圧力発生装置を設け、これにより、押圧部材11は、被押付部1aに押付力を作用させ、この押付力を支持部分13を介して支持体15に作用させてよい。
なお、本発明では、押付部材11として、被押付部1aに押付力を作用させるが、この押付力を支持部分13を介して支持体15に作用させないものであってもよい。例えば、押付部材11は、図8のように被押付部1aを支持部分13に押圧して結合させるボルトであってもよい。図8において、ボルト11の頭11aが被押付部1aを支持部分13に押圧して結合させている。ボルト11の先端部(ネジ部)は、支持部分13に設けられているネジ孔に螺合されている。また、ボルト11を回転軸の周方向に複数設けてよい。図8において、ボルト11以外の構成は、図2〜図5の構成と同様であってよい。図8の場合でも、上述のようにタービンハウジング9(流路部分14)の振動特性が過給機1の回転系の振動特性に与える影響を低減できる。
【0037】
また、本発明の回転機械支持装置は、過給機以外にターボ圧縮機やガスタービンなどの他の回転機械にも適用可能である。即ち、タービン翼に流体を供給することで回転駆動される回転機械であれば、本発明の回転機械支持装置を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明が適用可能な過給機の構成図である。
【図2】本発明の実施形態による回転機械支持装置の構成図である。
【図3】図2のA−A線矢視図である。
【図4】本発明の実施形態による回転機械支持装置の詳細斜視図である。
【図5】本発明の実施形態による回転機械支持装置の支持部分を示す図である。
【図6】本発明の実施形態による回転機械支持装置で得られる過給機の振動特性を示す。
【図7】従来における過給機の振動特性を示す。
【図8】別の押付部材を用いた場合における回転機械支持装置の構成図である。
【図9】従来における過給機の回転バランス検査を行うための構成図である。
【符号の説明】
【0039】
1・・・過給機、1a・・・被押付部(突出部)、3・・・タービン翼、5・・・コンプレッサ翼、6・・・代替部材、7・・・回転軸、8・・・軸受けハウジング、8a,8b・・・軸受け、9・・・タービンハウジング,9a・・・流路、10・・・回転機械支持装置、11・・・押付部材、12・・・油圧クランプ本体(押圧力発生装置)、13・・・支持部分、13a・・・内側部、13b・・・延長部、13c・・・開口、14・・・流路部分、14a・・・流路、15・・・支持体、16・・・ボルト孔、17・・・ボルト、19・・・ボルト孔、21・・・過給機、23・・・タービンハウジング、25・・・ボルト、27・・・支持体、29・・・タービン翼、31・・・コンプレッサ翼、33・・・回転軸、35・・・加速度ピックアップ、37・・・回転角検出器、38・・・演算器、39・・・ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体により回転駆動される回転機械の回転バランス検査を行うために該回転機械を支持する回転機械支持装置であって、
前記回転機械は、タービン翼と、前記タービン翼が固定される回転軸と、を有するものであり、
前記回転機械支持装置は、前記タービン翼を内部に収容するタービンハウジングを備え、該タービンハウジングは、流路部分と支持部分とからなっており、前記流路部分には、前記タービン翼を回転駆動する流体を流す流路が形成され、
前記回転機械支持装置は、さらに押付部材と支持体を備え、
前記押付部材は、前記回転機械の被押付部に押付力を作用させ、
前記支持部分と前記押付部材との間に前記被押付部を挟むとともに、前記支持部分には前記押付力により前記被支持部が押し付けられ、
前記支持体に前記支持部分が固定されることで、前記支持体が前記支持部分を介して前記回転機械を支持する、ことを特徴とする回転機械支持装置。
【請求項2】
完成品の前記回転機械には、完成品用タービンハウジングが設けられ、該完成品用タービンハウジングには、前記タービン翼を回転駆動する流体を流す流路が形成され、
前記回転機械支持装置の前記タービンハウジングは、前記完成品用タービンハウジングの代わりに設けられ、
前記タービンハウジングと前記完成品用タービンハウジングとは、形状および寸法の少なくともいずれかが異なる、ことを特徴とする請求項1に記載の回転機械支持装置。
【請求項3】
前記押付部材は、前記押付力を前記支持部分を介して前記支持体に作用させる、ことを特徴とする請求項1または2に記載の回転機械支持装置。
【請求項4】
前記支持体には前記流路部分が取り付けられ、
前記支持部分は、
前記回転軸の半径方向の位置が前記被押付部と同じとなり前記押付力を受ける内側部と、
該内側部から前記半径方向の外方に、前記半径方向に関して前記流路部分の外側まで延び、該外側にて前記支持体に結合される延長部と、を有する、ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の回転機械支持装置。
【請求項5】
前記延長部は、前記半径方向に関して前記流路部分の前記外側にて前記支持体に前記押付力を作用させる、ことを特徴とする請求項4に記載の回転機械支持装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−216527(P2009−216527A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60392(P2008−60392)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】