説明

回転角度検出装置

【課題】主に自動車のステアリングの回転角度検出等に用いられる回転角度検出装置に関し、小音化が図れ、確実な回転角度の検出が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】上面中央に磁石5Aが装着された第一の検出歯車12の、下面中央に磁性体19を設け、第一の検出歯車12を下方へ付勢することによって、第一の検出歯車12の上下方向のがたつきがなくなるため、多少の振動や衝撃が加わっても衝突音の発生を防ぐことができ、小音化が図れ、確実な回転角度の検出が可能な回転角度検出装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車のステアリングの回転角度検出等に用いられる回転角度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の高機能化が進むなか、様々な回転角度検出装置を用いてステアリングの回転角度を検出し、これを用いて車両の各種制御を行うものが増えている。
【0003】
このような従来の回転角度検出装置について、図4及び図5を用いて説明する。
【0004】
図4は従来の回転角度検出装置の断面図、図5は同斜視図であり、同図において、1は側面外周に平歯車部1Aが形成された回転歯車で、中央部には挿通するステアリング(図示せず)の軸と係合する係合部1Bが設けられている。
【0005】
そして、2は側面外周に平歯車部2Aが形成された第一の検出歯車、3は側面外周に平歯車部2Aとは歯数の異なる平歯車部3Aが形成された第二の検出歯車で、第一の検出歯車2の平歯車部2Aと第二の検出歯車3の平歯車部3Aが、回転歯車1の平歯車部1Aに各々噛合している。
【0006】
また、4は第一及び第二の検出歯車2、3の上方にほぼ平行に配置された配線基板で、上下面には複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、第一の検出歯車2の中央に装着された磁石5Aと、第二の検出歯車3の中央に装着された磁石6Aとの対向面には、磁気検出素子5Bと6Bが各々装着されている。
【0007】
そして、このように対向した磁石5Aと磁気検出素子5Bによって第一の検出手段5が、同じく磁石6Aと磁気検出素子6Bによって第二の検出手段6が各々形成されると共に、配線基板4にはマイコン等の電子部品によって、磁気検出素子5Bや6Bに接続された制御手段7が形成されている。
【0008】
さらに、この回転歯車1や第一の検出歯車2、第二の検出歯車3が絶縁樹脂製の下ケース8底面に回転可能に保持されると共に、これらの上面を絶縁樹脂製の上ケース(図示せず)が覆って、回転角度検出装置が構成されている。
【0009】
そして、このように構成された回転角度検出装置が、制御手段7がコネクタやリード線(図示せず)等を介して、車両の電子回路(図示せず)に接続されると共に、回転歯車1の係合部1Bにはステアリング軸が挿通されて、自動車に装着される。
【0010】
以上の構成において、ステアリングを回転すると、回転歯車1が回転し、これに連動して第一の検出歯車2と第二の検出歯車3が各々回転するため、これらの中央に装着された磁石5A、6Aも回転して、この磁石5A、6Aの変化する磁力を磁気検出素子5B、6Bが検出し、増減を繰返す正弦波や余弦波、または略鋸歯状の検出信号が制御手段7へ入力される。
【0011】
なお、この時、第一の検出歯車2と第二の検出歯車3は歯数が異なっているため、磁気検出素子5Bと6Bから出力されるデータ波形は、形状が異なり位相差のある検出信号となる。
【0012】
そして、この第一の検出歯車2と第二の検出歯車3からの二つの異なる検出信号と各々の平歯車部の歯数から、制御手段7が所定の演算を行って回転歯車1、すなわちステアリングの回転角度を検出し、これが自動車本体の電子回路へ出力されて、例えばパワーステアリング装置やブレーキ装置等の、車両の様々な制御が行われるように構成されているものであった。
【0013】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−63393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記従来の回転角度検出装置においては、回転歯車1に噛合した第一の検出歯車2や第二の検出歯車3の上下面と、上ケースや下ケース8の間には、各歯車が回転可能なように0.2〜0.3mm程度の小さなものではあるが、隙間が形成されているため、振動や衝撃が加わった場合、これらの歯車が上ケースや下ケース8に当たり、衝突音が生じてしまう場合があるという課題があった。
【0016】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、小音化が図れ、確実な回転角度の検出が可能な回転角度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0018】
本発明の請求項1に記載の発明は、中央に磁石が装着された検出歯車の下面中央に、磁性体を設けて回転角度検出装置を構成したものであり、下面中央の磁性体によって検出歯車が下方へ付勢され、上下方向のがたつきがなくなるため、多少の振動や衝撃が加わっても衝突音の発生を防ぐことができ、小音化が図れ、確実な回転角度の検出が可能な回転角度検出装置を得ることができるという作用を有する。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、検出歯車の歯幅を、上端に対し下端を細幅に形成したものであり、検出歯車と噛合する回転歯車や他の検出歯車も下方へ付勢されるため、これらの小音化も図れると共に、歯車間の隙間による誤差、いわゆるバックラッシのない、高精度な回転角度の検出を行うことができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、小音化が図れ、確実な回転角度の検出が可能な回転角度検出装置を実現できるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態による回転角度検出装置の断面図
【図2】同斜視図
【図3】同部分斜視図
【図4】従来の回転角度検出装置の断面図
【図5】同斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態について、図1〜図3を用いて説明する。
【0023】
なお、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0024】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による回転角度検出装置の断面図、図2は同斜視図であり、同図において、1は絶縁樹脂または金属製の回転歯車で、側面外周には平歯車部1Aが形成されると共に、中央部には挿通するステアリング(図示せず)の軸と係合する係合部1Bが設けられている。
【0025】
また、12は絶縁樹脂または金属製の第一の検出歯車、3は同じく第二の検出歯車で、第一の検出歯車12側面外周の平歯車部12Aが回転歯車1の平歯車部1Aに噛合すると共に、第二の検出歯車3側面外周の平歯車部12Aとは歯数の異なる平歯車部3Aが、第一の検出歯車12の平歯車部12Aに噛合している。
【0026】
そして、第一の検出歯車12の平歯車部12Aは、図3の部分斜視図に示すように、上端の歯幅が太く下端が細くなるように、上端に対し下端が細幅に傾斜して形成されている。
【0027】
なお、これらの歯車の直径及び歯数は、回転歯車1が最も大きく、第一の検出歯車12、第二の検出歯車3の順に小さくなっており、例えば、回転歯車1の歯数が48、第一の検出歯車12の歯数が32、第二の検出歯車3の歯数が28となっている。
【0028】
また、4は第一及び第二の検出歯車12、3の上方にほぼ平行に配置された配線基板で、上下面には複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、第一の検出歯車12の上面中央にインサート成形等により装着された磁石5Aと、第二の検出歯車3の上面中央に装着された磁石6Aとの対向面には、AMR(異方性磁気抵抗)素子等の磁気検出素子5Bと6Bが各々装着されている。
【0029】
そして、このように対向した磁石5Aと磁気検出素子5Bによって第一の検出手段5が、同じく磁石6Aと磁気検出素子6Bによって第二の検出手段6が各々形成されると共に、配線基板4にはマイコン等の電子部品によって、磁気検出素子5Bや6Bに接続された制御手段7が形成されている。
【0030】
さらに、19は略板状の磁性体で、鉄やコバルト、ニッケル、あるいは鉄にコバルトやニッケル、アルミニウム、クロム等を含有させた強磁性材料から形成されると共に、この磁性体19が第一の検出歯車12の下面中央に配設されている。
【0031】
また、20は絶縁樹脂製のカバーで、このカバー20が第一の検出歯車12と第二の検出歯車3を覆うと共に、磁気検出素子5Bや6Bが挿通する開口孔20Aが設けられている。
【0032】
さらに、この回転歯車1や第一の検出歯車12、第二の検出歯車3が絶縁樹脂製の下ケース8底面に回転可能に保持されると共に、これらの上面を絶縁樹脂製の上ケース(図示せず)が覆って、回転角度検出装置が構成されている。
【0033】
そして、このように構成された回転角度検出装置が、制御手段7がコネクタやリード線(図示せず)等を介して、車両の電子回路(図示せず)に接続されると共に、回転歯車1の係合部1Bにはステアリングの軸が挿通されて、自動車に装着される。
【0034】
以上の構成において、ステアリングを回転すると、回転歯車1が回転し、これに連動して第一の検出歯車12が、第一の検出歯車12に連動して第二の検出歯車3が各々回転するため、これらの中央に装着された磁石5A、6Aも回転して、この磁石5A、6Aの変化する磁力を磁気検出素子5B、6Bが検出し、増減を繰返す正弦波や余弦波、または略鋸歯状の検出信号が制御手段7へ入力される。
【0035】
なお、この時、第一の検出歯車12と第二の検出歯車3は歯数が異なっているため、磁気検出素子5Bと6Bから出力されるデータ波形は、形状が異なり位相差のある検出信号となる。
【0036】
そして、この第一の検出歯車12と第二の検出歯車3からの二つの異なる検出信号と各々の平歯車部の歯数から、制御手段7が所定の演算を行って回転歯車1、すなわちステアリングの回転角度を検出し、これが自動車本体の電子回路へ出力されて、例えばパワーステアリング装置やブレーキ装置等の、車両の様々な制御が行われる。
【0037】
また、この時、上面中央に磁石5Aが装着された第一の検出歯車12の、下面中央には磁性体19が設けられ、この磁性体19と磁石5Aによって第一の検出歯車12が下方へ付勢されて、上下方向のがたつきがない状態となっているため、多少の振動や衝撃が加わっても、第一の検出歯車12の上下面と上ケースや下ケース8の間の、衝突音の発生を防ぐことができるようになっている。
【0038】
つまり、接着やインサート成形等により下ケース8底面に固着された磁性体19と、第一の検出歯車12上面中央に装着された磁石5Aを吸引させ、第一の検出歯車12を下方へ付勢することで、多少の振動や衝撃が加わった場合でも、第一の検出歯車12の上下動による衝突音の発生を防ぎ、小音化を図ることが可能なように構成されている。
【0039】
また、第一の検出歯車12の平歯車部12Aが、上端に対し下端が細幅に傾斜して形成されているため、これに噛合した回転歯車1や第二の検出歯車3も、第一の検出歯車12によって下方へ付勢されて、衝突音の発生を防ぎ、小音化が図れるようになっている。
【0040】
さらに、上端に対し下端が細幅の平歯車部12Aによって、回転歯車1の平歯車部1Aや第二の検出歯車3の平歯車部3Aとの、歯車間の隙間も少なくなっているため、この隙間による誤差、いわゆるバックラッシのない、高精度な回転角度の検出を行うことができるように構成されている。
【0041】
なお、以上の説明では、磁性体19を第一の検出歯車12の下面中央にのみ設けた構成について説明したが、第二の検出歯車3の下面中央にも磁性体19を配設し、上面中央の磁石6Aとの吸引力によって、第二の検出歯車3も下方へ付勢して、上下方向のがたつきをなくすようにすれば、さらに小音化を図ることができる。
【0042】
また、磁性体19の上面外周に上方へ突出する突起部等を設け、この突起部によって上方の磁石5Aや6Aの磁束密度を集中させて磁力を強めるようにすれば、第一の検出歯車12や第二の検出歯車3をより確実に下方へ付勢することも可能となる。
【0043】
このように本実施の形態によれば、上面中央に磁石5Aが装着された第一の検出歯車12の、下面中央に磁性体19を設け、第一の検出歯車12を下方へ付勢することによって、第一の検出歯車12の上下方向のがたつきがなくなるため、多少の振動や衝撃が加わっても衝突音の発生を防ぐことができ、小音化が図れ、確実な回転角度の検出が可能な回転角度検出装置を得ることができるものである。
【0044】
また、第一の検出歯車12の歯幅を、上端に対し下端を細幅に形成することによって、噛合する回転歯車1や第二の検出歯車3も下方へ付勢されるため、これらの小音化も図れると共に、歯車間の隙間による誤差、いわゆるバックラッシのない、高精度な回転角度の検出を行うことができる。
【0045】
なお、以上の説明では、回転歯車1に第一の検出歯車12が噛合し、この第一の検出歯車12に第二の検出歯車3が噛合した構成の回転角度検出装置について説明したが、背景技術の項で説明したような、回転歯車1に第一の検出歯車12と第二の検出歯車3の両方を噛合させた構成のものや、あるいは一つだけの検出歯車を回転歯車1に噛合させた構成のものとしても、本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明による回転角度検出装置は、小音化が図れ、確実な回転角度の検出が可能なものが得られ、主に自動車のステアリングの回転角度検出等に有用である。
【符号の説明】
【0047】
1 回転歯車
1A 平歯車部
3 第二の検出歯車
3A 平歯車部
4 配線基板
5 第一の検出手段
5A、6A 磁石
5B、6B 磁気検出素子
6 第二の検出手段
7 制御手段
8 下ケース
12 第一の検出歯車
12A 平歯車部
19 磁性体
20 カバー
20A 開口孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングに連動して回転する回転歯車と、この回転歯車に連動して回転する検出歯車と、この検出歯車の中央に装着された磁石と、この磁石に対向配置された磁気検出素子と、この磁気検出素子からの検出信号により上記回転体の回転角度を検出する制御手段からなり、上記検出歯車の下面中央に磁性体を設けた回転角度検出装置。
【請求項2】
検出歯車の歯幅を、上端に対し下端を細幅に形成した請求項1記載の回転角度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−107916(P2012−107916A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255503(P2010−255503)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】