説明

回転軸支持ケース構造

【課題】横断面円形の軸部ならびに該軸部から半径方向外方に突出する突出部を有する回転軸を回転自在に支持するケースに、ボルト軸を収容して前記突出部に側方から対向するボルト軸収容筒部を有するボルトボスが設けられる回転軸支持ケース構造において、ボルトボスに挿通されるボルトを回転軸に設けられた突出部に極力近接させることを可能とする。
【解決手段】ボルト軸収容筒部62の側壁のうち突出部22,23に対向する部分に、ボルト軸60aの一部を突出部22,23側に臨ませる開口部67が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横断面円形の軸部ならびに該軸部から半径方向外方に突出する突出部を有する回転軸を回転自在に支持するケースに、ボルト軸を収容して前記突出部に側方から対向するボルト軸収容筒部を有するボルトボスが設けられる回転軸支持ケース構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのクランクケースを構成する第1および第2ケース半体を結合するために、クランクシャフトが備えるクランクウエイトに側方から対向する位置で第1および第2ケース半体間に設けられるボルトボスにボルトを挿通するようにしたものが、特許文献1で既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−291951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、第1および第2ケース半体の結合強度を高めるためには、ボルトボスに挿通されるボルトをクランクウエイトに極力近づけることが望ましいが、上記特許文献1で開示されるものでは、ボルトボスが、その軸方向全長にわたって横断面円形の筒状に形成されており、ボルトボスに挿通されるボルトをボルトボスおよびクランクウエイトの干渉を回避しつつ該クランクウエイトに近接させることが困難である。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ボルトボスに挿通されるボルトを回転軸に設けられた突出部に極力近接させることを可能とした回転軸支持ケース構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、横断面円形の軸部ならびに該軸部から半径方向外方に突出する突出部を有する回転軸を回転自在に支持するケースに、ボルト軸を収容して前記突出部に側方から対向するボルト軸収容筒部を有するボルトボスが設けられる回転軸支持ケース構造において、前記ボルト軸収容筒部の側壁のうち前記突出部に対向する部分に、前記ボルト軸の一部を前記突出部側に臨ませる開口部が設けられることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記回転軸が、前記突出部であるクランクウエイトを有するクランクシャフトであり、前記ケースが、前記クランクシャフトの回転軸線に直交する合わせ面に沿うとともに前記クランクウエイトを相互間に挟む第1および第2隔壁をそれぞれ有する第1および第2ケース半体が前記合わせ面で結合されて成るクランクケースであり、第1隔壁に一体に設けられる第1筒部分と、前記合わせ面で第1筒部分に当接するようにして第2隔壁に一体に設けられる第2筒部分とで、第1および第2ケース半体を相互に結合するための複数のボルトのうち少なくとも1つのボルトのボルト軸を収容するとともに第1および第2筒部分間にわたる前記開口部を形成するようにして、前記ボルト軸収容筒部が構成されることを第2の特徴とする。
【0008】
本発明は、第2の特徴の構成に加えて、前記開口部が、前記ボルト軸の軸線に沿う方向に長い長円形状に形成されることを第3の特徴とする。
【0009】
本発明は、第2または第3の特徴の構成に加えて、第1および第2筒部分の第1および第2隔壁への連設部に、前記ボルト軸の軸線に沿う方向での前記開口部の端部と、第1および第2隔壁との間にそれぞれ介在する環状部が形成されることを第4の特徴とする。
【0010】
本発明は、第2〜第4の特徴の構成のいずれかに加えて、前記ボルトボスが、前記ボルト軸収容筒部と、前記ボルト軸の一端に設けられる拡径頭部を当接、係合させるようにして前記ボルト軸収容筒部の一端に設けられるボルト座面と、前記ボルト軸を螺合させるようにして前記ボルト軸収容筒部の他端に同軸に連なるねじ筒部とから成り、前記ボルト座面が、第1隔壁の外面に設けられた凹部の内端に形成され、前記ねじ筒部の少なくとも一部が第2隔壁から内側に突出されることを第5の特徴とする。
【0011】
さらに本発明は、第2〜第5の特徴の構成のいずれかに加えて、前記クランクケースを有して車両に搭載されるエンジン本体のシリンダ軸線が、前記クランクシャフトの回転中心を通って前記シリンダ軸線と平行に延びる直線よりも前方にオフセットして配置され、前記クランクシャフトの後方に前記ボルトボスが配置され、該ボルトボスが備える前記ボルト軸収容筒部の側壁の前部に前記開口部が設けられることを第6の特徴とする。
【0012】
なお実施の形態のクランクシャフト10が本発明の回転軸に対応し、実施の形態のクランクケース12が本発明のケースに対応し、実施の形態のクランクウエイト22,23が本発明の突出部に対応する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の特徴によれば、ボルトボスが備えるボルト軸収容筒部には、ボルト軸の一部を突出部側に臨ませる開口部が設けられるので、ボルトボスが回転軸の突出部と干渉することを回避しつつ、ボルト軸収容筒部に収容されるボルト軸を突出部に近接させることができる。
【0014】
また本発明の第2の特徴によれば、クランクウエイトを有するクランクシャフトの回転軸線に直交する合わせ面に沿うとともにクランクウエイトを相互間に挟む第1および第2隔壁をそれぞれ有する第1および第2ケース半体が前記合わせ面で結合されることでクランクケースが構成され、第1および第2隔壁に一体に設けられるとともに合わせ面で相互に当接する第1および第2筒部分とでボルト軸収容筒部が構成されるので、応力が集中し易い位置に配置されるボルトボスであっても、第1および第2筒部分を相互に当接させることでボルト軸収容筒部の歪みを小さくし、ボルト軸収容筒部に設けられる開口部にかかる応力を小さくすることができる。
【0015】
本発明の第3の特徴によれば、ボルト軸収容筒部に設けられる開口部が長円形に形成されるので、ボルト軸収容筒部の剛性を高く維持することができる。
【0016】
本発明の第4の特徴によれば、ボルト軸の軸線に沿う方向での開口部の端部と、第1および第2隔壁との間に環状部がそれぞれ介在することによって、開口部の両端を補強しつつ第1および第2筒部分の剛性を高く維持することができる。
【0017】
本発明の第5の特徴によれば、ボルトボスの一部を構成してボルト軸収容筒部の一端に設けられるボルト座面が第1隔壁の外面に設けられた凹部の内端に形成され、ボルトボスの一部を構成してボルト軸収容筒部の他端に同軸に連なるねじ筒部の少なくとも一部が第2隔壁から内側に突出するので、ボルト軸収容筒部の長さを短く設定し、ボルト軸収容筒部にかかる応力集中を小さく抑えることができる。
【0018】
さらに本発明の第6の特徴によれば、車両に搭載されるエンジン本体のシリンダ軸線がクランクシャフトの回転中心を通ってシリンダ軸線と平行に延びる直線よりも前方にオフセットしており、クランクシャフトの後方に配置されるボルト収容筒部の側壁の前部に開口部が設けられるので、クランクケースの前後長を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】エンジン本体の縦断側面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図2の3−3線に沿う第1ケース半体の断面図である。
【図4】図2の4−4線に沿う第2ケース半体の断面図である。
【図5】図2の5矢示部拡大図である。
【図6】図5の6−6線拡大断面図である。
【図7】図5からボルトを省略した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面を参照しながら説明する。
【0021】
本発明の実施の形態にについて図1〜図5を参照しながら説明すると、先ず図1において、この単気筒エンジンのエンジン本体11は、たとえば自動二輪車等の小型車両に搭載されるものであり、エンジン本体11は、クランクシャフト10を回転自在に支承するクランクケース12と、該クランクケース12の上部に結合されるシリンダブロック13と、シリンダブロック13の上端に結合されるシリンダヘッド14と、該シリンダヘッド14に結合されるヘッドカバー15とを備える。
【0022】
図2を併せて参照して、クランクケース12は、左側の第1ケース半体16と、右側の第2ケース半体17とが、前記クランクシャフト10の回転軸線に直交する合わせ面18で結合されて成る。また前記シリンダブロック13は、該シリンダブロック13が有するシリンダボア19の軸線すなわちシリンダ軸線Cを前上がりに傾斜させて前記クランクケース12に結合されており、シリンダ軸線Cは、前記クランクシャフト10の回転中心を通ってシリンダ軸線Cと平行に延びる直線Lよりも前方にオフセットして配置される。
【0023】
前記クランクシャフト10は、横断面形状を円形として同軸に配置される第1および第2の軸部20,21と、それらの軸部20,21から半径方向外方に突出するようにして第1および第2の軸部20,21の内端部に一体に設けられる第1および第2のクランクウエイト22,23と、第1および第2の軸部20,21の軸線すなわちクランクシャフト10の回転軸線からオフセットした位置に軸線を配置して第1および第2のクランクウエイト22,23間を連結するクランクピン24とを備える。
【0024】
一方、クランクケース12を相互に構成する第1および第2ケース半体16,17は、前記合わせ面18に沿うととともに第1および第2のクランクウエイト22,23を相互間に挟む第1および第2隔壁25,26をそれぞれ一体に有しており、第1および第2隔壁25,26には、前記クランクシャフト10の両軸部20,21を回転自在に貫通せしめる軸受孔27,28がそれぞれ設けられ、それらの軸受孔27,28の内周と、第1および第2の軸部20,21の外周との間にはボールベアリング29,30がそれぞれ介設される。
【0025】
前記シリンダボア19に摺動自在に嵌合されるピストン31は、前記クランクシャフト10のクランクピン24にコネクティングロッド32を介して連接される。前記シリンダブロック13および前記シリンダヘッド14間には、前記ピストン31の頂部を臨ませる燃焼室33が形成され、前記シリンダヘッド14の後部側面に向けられる吸気ポート34および前記燃焼室33間の連通・遮断を切換える吸気弁35、ならびに前記シリンダヘッド14の前部側面に設けられる排気ポート36および前記燃焼室33間の連通・遮断を切換える排気弁37が、前記シリンダヘッド14に開閉作動可能に配設される。また吸気弁35および排気弁37を開閉駆動する動弁装置38が、前記シリンダヘッド14および前記ヘッドカバー15間に形成される動弁室39に収容される。
【0026】
前記クランクケース12における第1ケース半体16には左クランクケースカバー40が結合されており、左クランクケースカバー40に固定されるステータ41とともに発電機43を構成するロータ42が、前記ステータ41を囲繞するようにして前記クランクシャフト10における第1の軸部20の外端部に固定される。また前記ロータ42との間に一方向クラッチ44を介在させたギヤ45がクランクシャフト10における第1の軸部20に相対回転自在に支承されており、このギヤ45には、図示しないスタータモータからの始動用回転動力を入力可能である。
【0027】
また前記クランクケース12における第2ケース半体17には、右クランクケースカバー46が結合されており、前記クランクシャフト10における第2の軸部21の外端を回転自在に嵌合せしめる円筒状の軸受ハウジング46aが第2ケース半体17の内面に一体に設けられる。また第2の軸部21には遠心フィルタ47が固定されており、右クランクケースカバー46に設けられた油路48に通じて第2の軸部21の外端部に同軸に設けられる第1油孔49と、第1および第2のクランクウエイト22,23と前記クランクピン24との間にオイルを供給するようにして第2の軸部21に同軸に向けられる第2油孔50との間に前記遠心フィルタ47が介装される。
【0028】
前記クランクケース12の第1および第2隔壁25,26間には、前記クランクシャフト10の中央部を収容するクランク室51と、クランクシャフト10と平行な軸線を有してクランクケース12に回転自在に支承されるメインシャフト52およびカムシャフト53間に選択的に確立可能な複数変速段の歯車列が設けられて成る常時噛合式の歯車変速機54を収容する変速機室55とが形成される。
【0029】
前記クランクケース12における第1ケース半体16の外周部には、図3で示すように、複数の挿通孔56…が設けられ、第1ケース半体16とともにクランクケース12を構成する第2ケース半体17の外周には、図4で示すように、前記挿通孔56…に対応した複数のねじ孔57…が設けられており、各挿通孔56…に挿通される複数のボルト58…が各ねじ孔57…に螺合される。また前記クランクシャフト10が備える第1および第2のクランクウエイト22,23に側方から対向する位置で第1および第2ケース半体16,17間にはボルトボス59が設けられており、該ボルトボス59には、ボルト60が挿通、螺合される。すなわち第1および第2ケース半体16,17を相互に結合するための複数のボルト58…,60のうち少なくとも1つのボルトである前記ボルト60を挿通せしめるボルトボス59が第1および第2隔壁25,26間に設けられ、そのボルトボス59は、前記クランクシャフト10の斜め下後方に配置される。
【0030】
図5および図6において、前記ボルト60は、ボルト軸60aの一端に拡径頭部60bが一体に設けられ、ボルト軸60aの他端側外周に雄ねじ61が刻設されて成るものである。
【0031】
図7をさらに併せて参照して、前記ボルトボス59は、前記ボルト60のボルト軸60aを収容して第1および第2のクランクウエイト22,23に斜め下後方側側方から対向するボルト軸収容筒部62と、前記ボルト60の拡径頭部60bを当接、係合させるようにして前記ボルト軸収容筒部62の一端に設けられるボルト座面63と、前記ボルト軸60の他端側の雄ねじ61を螺合させるようにして前記ボルト軸収容筒部62の他端に同軸に連なるねじ筒部64とから成る。
【0032】
前記ボルト軸収容筒部62と、前記ねじ筒部64の少なくとも一部とは、第1隔壁25に一体に設けられる第1筒部分25aと、合わせ面18で第1筒部分25aに当接するようにして第2隔壁26に一体に設けられる第2筒部分26aとで構成される。而してねじ筒部64の少なくとも一部である一端部は、ボルト軸収容筒部62および第2隔壁26間を結ぶようにして第2隔壁26から内側に突出するように配置され、ねじ筒部64の他端は第2隔壁26から外側に突出し、ねじ筒部64に同軸に設けられるねじ孔65にボルト60におけるボルト軸60aの他端側の雄ねじ61が螺合される。また第2隔壁25の外面には、前記ボルト軸収容筒部62と同軸の円形の凹部66が設けられており、その凹部66の内端に前記ボルト座面63が形成される。
【0033】
前記ボルト軸収容筒部62の側壁のうちクランクシャフト10が備える第1および第2のクランクウエイト22,23側に対向する部分、この実施の形態ではボルト軸収容筒部62がクランクシャフト10の斜め下後方に配置されるのでボルト軸収容筒部62の側壁の前部に、ボルト軸60aの一部を第1および第2のクランクウエイト22,23側に臨ませる開口部67が、第1および第2筒部分25a、26a間にわたるようにして設けられ、この開口部67は、図6で明示するように、前記ボルト軸60aの軸線に沿う方向に長い長円形状に形成される。またボルト軸60aの軸線に直交する平面内で前記ボルト軸収容筒部62の軸線を中心とする比較的狭い角度α(図3参照)たとえば35度で開口するように前記開口部67が形成される。
【0034】
而して前記開口部67の一端部および第1隔壁25間には、ボルト軸収容筒部62の一端部を形成する環状部62aが介在し、前記開口部67の他端部および第2隔壁26間には、ねじ筒部64の一端部を形成する環状部64aが介在する。すなわち第1および第2筒部分25a,26aの第1および第2隔壁25,26への連設部に、ボルト軸60aの軸線に沿う方向での開口部67の端部と、第1および第2隔壁25,26との間にそれぞれ介在する環状部62a,64aが形成されることになる。
【0035】
ところで前記ボルトボス59には、前記クランク室51および前記変速機室55間に介在する円弧状のリブ68が連設されており、このリブ68は、変速機室55側からクランク室51側に潤滑オイルが入り込むのを阻止する働きをするとともに、前記ボルトボス59を補強する働きをするものであり、第1隔壁25に一体に設けられる第1円弧壁部25bと、第2隔壁26に一体に設けられる第2円弧壁部26bとが、合わせ面18で相互に当接することで前記リブ68が構成される。しかも前記リブ68が、シリンダボア19内でのピストン31の摺動方向に交差する方向で円弧状に延びるように配置されることで、クランクケース12全体の補強にも寄与することができる。
【0036】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、横断面円形である第1および第2の軸部20,21ならびに第1および第2の軸部20,21から半径方向外方に突出する第1および第2のクランクウエイト22,23を有するクランクシャフト10を回転自在に支持するクランクケース12に、ボルト軸60aを収容して第1および第2のクランクウエイト22,23に側方から対向するボルト軸収容筒部62を有するボルトボス59が設けられるのであるが、ボルト軸収容筒部62の側壁のうち第1および第2のクランクウエイト22,23に対向する部分に、前記ボルト軸60aの一部を第1および第2のクランクウエイト22,23に臨ませる開口部67が設けられるので、ボルトボス59がクランクシャフト10における第1および第2のクランクウエイト22,23と干渉することを回避しつつ、ボルト軸収容筒部62に収容されるボルト軸60aを第1および第2のクランクウエイト22,23に近接させることができ、それにより、第1および第2ケース半体16,17の結合強度を高めることができる。
【0037】
またクランクシャフト10の回転軸線に直交する合わせ面18で相互に結合されてクランクケース12を構成する第1および第2ケース半体16,17は、前記合わせ面18に沿うとともに第1および第2のクランクウエイト22,23を相互間に挟む第1および第2隔壁25,25をそれぞれ有しており、第1隔壁25に一体に設けられる第1筒部分25aと、前記合わせ面18で第1筒部分25aに当接するようにして第2隔壁26に一体に設けられる第2筒部分26aとで、第1および第2ケース半体16,17を相互に結合するための複数のボルト58…,60のうち少なくとも1つのボルトであるボルト60のボルト軸60aを収容するとともに第1および第2筒部分25a,26a間に亘傾向部67を形成するようにして、前記ボルト軸収容筒部62が構成されるので、応力が集中し易い位置に配置されるボルトボス59であっても、第1および第2筒部分を25a,26a相互に当接させることでボルト軸収容筒部62の歪みを小さくし、ボルト軸収容筒部62に設けられる開口部67にかかる応力を小さくすることができる。
【0038】
また前記開口部67がボルト軸60aの軸線に沿う方向に長い長円形状に形成されるので、ボルト軸収容筒部62の剛性を高く維持することができる。
【0039】
また第1および第2筒部分25a,26aの第1および第2隔壁25,26への連設部に、前記ボルト軸60aの軸線に沿う方向での前記開口部67の端部と、第1および第2隔壁25,26との間にそれぞれ介在する環状部62a,64aが形成されるので、開口部67の両端を補強しつつ第1および第2筒部分25a,26aの剛性を高く維持することができる。
【0040】
またボルトボス59は、ボルト軸収容筒部62と、ボルト軸60aの一端に設けられる拡径頭部61を当接、係合させるようにしてボルト軸収容筒部62の一端に設けられるボルト座面63と、ボルト軸60aを螺合させるようにしてボルト軸収容筒部62の他端に同軸に連なるねじ筒部64とから成り、ボルト座面63が、第1隔壁25の外面に設けられた凹部66の内端に形成され、前記ねじ筒部64の少なくとも一部が第2隔壁26から内側に突出されるので、ボルト軸収容筒部62の長さを短く設定し、ボルト軸収容筒部62にかかる応力集中を小さく抑えることができる。
【0041】
さらにエンジン本体11のシリンダ軸線Cが、クランクシャフト10の回転中心を通って前記シリンダ軸線Cと平行に延びる直線Lよりも前方にオフセットして配置され、クランクシャフト10の後方にボルトボス59が配置され、該ボルトボス59が備える前記ボルト軸収容筒部62の側壁の前部に前記開口部67が設けられるので、クランクケース12の前後長を短くすることができる。
【0042】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0043】
たとえば上述の実施の形態では、クランクシャフト10を回転自在に支持するクランクケース12の構造について説明したが、本発明は、横断面円形の軸部ならびに該軸部から半径方向外方に突出する突出部を有する回転軸を回転自在に支持するケースに関連して広く実施することができる。
【符号の説明】
【0044】
10・・・回転軸であるクランクシャフト
11・・・エンジン本体
12・・・ケースであるクランクケース
16・・・第1ケース半体
17・・・第2ケース半体
18・・・合わせ面
20,21・・・軸部
22,23・・・突出部であるクランクウエイト
25・・・第1隔壁
25a・・・第1筒部分
26・・・第2隔壁
26a・・・第2筒部分
58,60・・・ボルト
59・・・ボルトボス
60a・・・ボルト軸
60b・・・拡径頭部
62・・・ボルト軸収容筒部
62a,64a・・・環状部
63・・・ボルト座面
64・・・ねじ筒部
66・・・凹部
67・・・開口部
C・・・シリンダ軸線
L・・・直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面円形の軸部(20,21)ならびに該軸部(20,21)から半径方向外方に突出する突出部(22,23)を有する回転軸(10)を回転自在に支持するケース(12)に、ボルト軸(60a)を収容して前記突出部(22,23)に側方から対向するボルト軸収容筒部(62)を有するボルトボス(59)が設けられる回転軸支持ケース構造において、前記ボルト軸収容筒部(62)の側壁のうち前記突出部(22,23)に対向する部分に、前記ボルト軸(60a)の一部を前記突出部(22,23)側に臨ませる開口部(67)が設けられることを特徴とする回転軸支持ケース構造。
【請求項2】
前記回転軸が、前記突出部であるクランクウエイト(22,23)を有するクランクシャフト(10)であり、前記ケースが、前記クランクシャフト(10)の回転軸線に直交する合わせ面(18)に沿うとともに前記クランクウエイト(22,23)を相互間に挟む第1および第2隔壁(25,26)をそれぞれ有する第1および第2ケース半体(16,17)が前記合わせ面(18)で結合されて成るクランクケース(12)であり、第1隔壁(25)に一体に設けられる第1筒部分(25a)と、前記合わせ面(18)で第1筒部分(25a)に当接するようにして第2隔壁(26)に一体に設けられる第2筒部分(26a)とで、第1および第2ケース半体(16,17)を相互に結合するための複数のボルト(58,60)のうち少なくとも1つのボルト(60)のボルト軸(60a)を収容するとともに第1および第2筒部分(25a,26a)間にわたる前記開口部(67)を形成するようにして、前記ボルト軸収容筒部(62)が構成されることを特徴とする請求項1記載の回転軸支持ケース構造。
【請求項3】
前記開口部(67)が、前記ボルト軸(60a)の軸線に沿う方向に長い長円形状に形成されることを特徴とする請求項2記載の回転軸支持ケース構造。
【請求項4】
第1および第2筒部分(25a,26a)の第1および第2隔壁(25,26)への連設部に、前記ボルト軸(60a)の軸線に沿う方向での前記開口部(67)の端部と、第1および第2隔壁(25,26)との間にそれぞれ介在する環状部(62a,64a)が形成されることを特徴とする請求項2または3記載の回転軸支持ケース構造。
【請求項5】
前記ボルトボス(59)が、前記ボルト軸収容筒部(62)と、前記ボルト軸(60a)の一端に設けられる拡径頭部(60b)を当接、係合させるようにして前記ボルト軸収容筒部(62)の一端に設けられるボルト座面(63)と、前記ボルト軸(60a)を螺合させるようにして前記ボルト軸収容筒部(62)の他端に同軸に連なるねじ筒部(64)とから成り、前記ボルト座面(63)が、第1隔壁(25)の外面に設けられた凹部(66)の内端に形成され、前記ねじ筒部(64)の少なくとも一部が第2隔壁(26)から内側に突出されることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の回転軸支持ケース構造。
【請求項6】
前記クランクケース(12)を有して車両に搭載されるエンジン本体(11)のシリンダ軸線(C)が、前記クランクシャフト(10)の回転中心を通って前記シリンダ軸線(C)と平行に延びる直線(L)よりも前方にオフセットして配置され、前記クランクシャフト(10)の後方に前記ボルトボス(59)が配置され、該ボルトボス(59)が備える前記ボルト軸収容筒部(62)の側壁の前部に前記開口部(67)が設けられることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の回転軸支持ケース構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−281220(P2010−281220A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133040(P2009−133040)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】