説明

回転軸用制振装置

【課題】 マス−バネ系の耐久性能が十分に確保されると共に、回転軸における回転方向振動が、低周波数域から高周波数域の広い範囲に亘って有利に抑えられる、新規な構造の回転軸用制振装置を提供することにある。
【解決手段】 少なくとも支持部材20の所定速度以上の回転状態下で、マス部材16に及ぼされる遠心力により、連結ゴム弾性体18の弾性変形に基づいてマス部材16が外周側に変位せしめられて当接ゴム弾性体46を介して当接支持部32に対して当接されることによって、マス部材16が支持部材20に対して連結ゴム弾性体18と当接ゴム弾性体46で協働して弾性支持されるように為し、支持部材20の回転速度の増大に伴って当接ゴム弾性体46の圧縮変形量が増大することを利用して、副振動系60における回転方向のチューニング周波数を次第に変化させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のクランクシャフト等の回転軸に装着されて、内燃機関のトルク変動等に起因する回転軸の回転方向の振動に対して制振効果を発揮し得る回転軸用制振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種装置における回転軸では、回転方向の振動が問題となる場合がある。例えば、内燃機関を原動機として搭載する自動車では、内燃機関のトルク変動に起因するクランクシャフトの回転方向の振動が、パワーユニットの防振マウントを介して車両ボデーに伝達される結果、走行時の振動や騒音の原因となり易い。
【0003】
そこで、内燃機関におけるクランクシャフトの回転方向の振動(捩り振動)を抑えるために、従来から、副振動系を備えた制振装置としてトーショナルダンパが提案されている。例えば、特開2004−144248号公報(特許文献1)に記載のものがそれであり、回転軸に取り付けられるハブの外周側に円環形状の環状ダンパマスを配設して、該環状ダンパマスをハブに対してゴム弾性体で弾性連結することにより副振動系を構成している。
【0004】
そして、かかるトーショナルダンパは、一般に、その副振動系を、クランクシャフトの捩り方向の固有振動数にチューニングすることにより、クランクシャフトの捩り共振に起因する振動の発生を抑えるようになっている。ここにおいて、クランクシャフトの固有振動数は、一般に、数百Hz以上とされている。
【0005】
ところが、内燃機関を動力源として搭載した自動車について本発明者が実験と検討を重ねた結果、自動車の発進時等、エンジン回転数が比較的に低い状況で発生する20〜70Hz程度の振動に関して、クランクシャフトの回転方向の振動が大きな原因となっていることが判った。なお、このような低周波数域でのクランクシャフトの振動は、内燃機関におけるトルク変動に起因するものと考えられる。
【0006】
このような低周波数域におけるクランクシャフトの回転振動を低減するために、例えば、上述の如きトーショナルダンパを採用して、その副振動系の固有振動数を20〜70Hzの低周波数域にチューニングすることも考えられる。しかしながら、環状ダンパマスが大径の円環ブロック形状であることから比較的に重量が大きく、低周波数域にチューニングするためにはゴム弾性体を低動ばね化する必要があるが、目的とする低周波数域へのチューニングを実現しようとするとゴム弾性体が柔らかくなり過ぎて、到底、実用的な耐久性が確保され難いという問題があった。
【0007】
しかも、クランクシャフトは内燃機関における各気筒の燃焼行程に伴い回転されることから、クランクシャフトの回転速度が大きくなると、各気筒で燃焼が順次に発生する時間間隔が小さくなってトルク変動の波長が短くなり、以て、回転速度の大きさに略比例して捩り方向の振動周波数が高くなることがある。その結果、所定の周波数域にチューニングされた従来構造の副振動系では、回転速度の変化に伴う捩り方向の振動周波数の変化にうまく対応することが出来ないため、所期の制振効果が得られ難いという問題を内在していた。
【0008】
なお、実開平6−73497号公報(特許文献2)には、回転軸の周上で部分的に独立位置する矩形ブロック状のマス部材を採用し、該マス部材の周方向両端部分を弾性支持せしめて構成された副振動系が開示されている。しかし、かかる副振動系は、回転軸の軸直角方向の防振を目的として提案されているに過ぎず、周方向の低周波数域の振動に対して有効な副振動系を実現し得るものでは、決してない。
【0009】
蓋し、マス部材が回転軸の周上で部分的に独立位置していることから、回転軸の回転に伴ってマス部材には相当の遠心力が作用することとなる。一方、特に提案されているように、周方向の回転振動の入力に際して圧縮/引張変形する連結ゴム弾性体を採用した副振動系において、周方向の固有振動数を低周波数域にチューニングすると、連結ゴム弾性体を相当に柔らかくする必要がある。そのために、回転軸が中乃至高速で回転した場合に、マス部材に作用する遠心力によって連結ゴム弾性体の弾性変形量が相当に大きくなってしまい、要求される耐久性等を実現することが極めて困難となるからである。
【0010】
また、特開2001−153185号公報(特許文献3)には、転動式マスを備えたダイナミックダンパが提案されている。しかしながら、このような転動式マスのダイナミックダンパは、質量マスとゴム弾性体からなるマス−バネ系の副振動系を用いた上述の特許文献1等に記載のダイナミックダンパとは、基本構造において別異のものである。そして、かかる転動式マスによるダイナミックダンパでは、上述の如き質量マスとゴム弾性体からなるマス−バネ系を利用したダイナミックダンパほどに、特定の周波数域で顕著な制振効果を得ることが難しい。また、マスの転動面の摩擦抵抗や表面粗度などのマスの転動条件を高精度に且つ長期間に亘って維持することが難しく、目的とする制振効果の安定性や信頼性が得られ難いという問題もあるのである。
【0011】
【特許文献1】特開2004−144248号公報
【特許文献2】実開平6−73497号公報
【特許文献3】特開2001−153185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、マス−バネ系の耐久性能が十分に確保されると共に、内燃機関のクランクシャフト等の回転軸における回転方向振動が、低周波数域から高周波数域の広い範囲に亘って有利に抑えられる、新規な構造の回転軸用制振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0014】
(回転軸用制振装置に関する本発明の態様1)
回転軸用制振装置に関する本発明の態様1の特徴とするところは、制振対象となる回転軸に取り付けられて該回転軸と一体的に回転せしめられる支持部材に対して、マス部材を離隔配置せしめて、該マス部材を該支持部材に対して連結ゴム弾性体で連結支持せしめることにより、該回転軸の回転方向振動に対する副振動系を構成した回転軸用制振装置において、前記マス部材を、前記支持部材の回転中心軸回りにおける周上で部分的に独立して位置せしめられるブロック状とし、該支持部材の回転中心軸を外れた位置に配設して該支持部材の回転に伴う遠心力が該マス部材に及ぼされるようにする一方、該マス部材に対して該回転軸の外周側に離隔して位置する当接支持部を該支持部材に設けると共に、それらマス部材と当接支持部の対向面の少なくとも一方に当接ゴム弾性体を設けて、少なくとも該支持部材の所定速度以上の回転状態下で、該マス部材に及ぼされる遠心力により、前記連結ゴム弾性体の弾性変形に基づいて該マス部材が外周側に変位せしめられて該当接ゴム弾性体を介して該当接支持部に対して当接されることにより、該マス部材が該支持部材に対して該連結ゴム弾性体と該当接ゴム弾性体で協働して弾性支持されるように為し、該支持部材の回転速度の増大に伴って該当接ゴム弾性体の圧縮変形量が増大することを利用して、前記副振動系における回転方向のチューニング周波数を次第に変化させるようにした回転軸用制振装置にある。
【0015】
このような本態様に従う構造とされた回転軸用制振装置においては、支持部材に回転方向の振動が入力されると、マス部材や連結ゴム弾性体がマス−バネ系を構成して、制振効果が発揮される。また、マス部材が当接ゴム弾性体を介して当接支持部に当接せしめられることによって、マス部材の外方への変位量が制限されて、支持部材に対してマス部材を支持せしめる連結ゴム弾性体の変位量も制限される。それ故、連結ゴム弾性体の耐久性を確保しつつ、ゴム弾性体のチューニングが大きな自由度をもって実現されることから、ゴム弾性体を低動ばね化せしめることに基づいて、回転方向で問題となり易い低周波数域へのチューニングも可能となり、低周波数域の回転方向の制振装置が有利に実現される。
【0016】
また、マス部材が当接ゴム弾性体を介して当接支持部に当接された状態で、支持部材(回転軸)の回転速度が大きくなってマス部材に大きな遠心力が及ぼされると、マス部材の外周側に向かう変位量が大きくなり、それに従って、マス部材と当接支持部の間に配された当接ゴム弾性体の弾性変形量(圧縮量)が大きくなる。これにより、支持部材の回転数上昇に伴いゴムのばね定数が大きくなることを利用して、副振動系における回転方向の固有振動数をチューニング変更することが出来る。また、当接ゴム弾性体の耐久性が十分に確保されると共に、マス部材の当接支持部への当接打音が軽減されるという利点も生じる。
【0017】
また、連結ゴム弾性体の弾性変形に基づいてマス部材が当接ゴム弾性体を介して当接支持部に当接支持された形態では、回転方向の副振動系が、マス部材や連結ゴム弾性体に加えて当接ゴム弾性体を含んで構成される。その結果、単にマスをゴム弾性体でハウジング等に連結した従来構造の副振動系に比して、固有振動数のチューニング自由度が大きくなる。
【0018】
それ故、支持部材の回転数の上昇に伴って問題となる振動の周波数が高くなる場合には、副振動系の固有振動数が当該振動の周波数域に有利に調整されることに基づき、共振作用が有利に発揮されて、比較的に回転数が高い領域下における高周波数域の振動が効果的に低減され得る。
【0019】
要するに、本態様の制振装置においては、広い回転数域に亘って、具体的には例えば、回転軸としてのクランクシャフトを備えた内燃機関にあってアイドリング状態でのシャフトの低回転域から常用回転域、更には高回転域に亘って、一つの制振装置による制振効果が有利に発揮され得るのである。
【0020】
(回転軸用制振装置に関する本発明の態様2)
回転軸用制振装置に関する本発明の態様2の特徴とするところは、本発明の前記態様1に係る回転軸用制振装置において、前記マス部材に対して前記回転軸の内周側に対向位置する内側当接支持部を前記支持部材に設けて、前記連結ゴム弾性体の弾性に基づいて該マス部材を該内側当接支持部に当接させて支持せしめる一方、該支持部材の回転に伴って該マス部材に及ぼされる遠心力により、該連結ゴム弾性体の弾性変形に基づいて該マス部材が外周側に変位せしめられて該内側当接支持部から離隔せしめられるようにしたことにある。
【0021】
このような本態様においては、支持部材が回転していない静的状態下、或いは連結ゴム弾性体の弾性に基づくマス部材の内側当接支持部に対する当接力が支持部材の回転に伴う遠心力よりも大きい状態下において、マス部材が内側当接支持部に当接状態で支持されている。それ故、かかる状態では、マス部材の変位量が制限されて、マス部材が支持部材に繰り返し打ち当たること等による打音が効果的に抑えられる。
【0022】
(回転軸用制振装置に関する本発明の態様3)
回転軸用制振装置に関する本発明の態様3の特徴とするところは、本発明の前記態様2に係る回転軸用制振装置において、前記支持部材が、前記回転軸としての内燃機関のクランクシャフトに取り付けられるようになっており、少なくとも該内燃機関のアイドリング状態での該クランクシャフトの低回転領域では前記マス部材が前記内側当接支持部に対して外周側に離隔位置せしめられて回転方向振動の副振動系として機能し得るようになっていると共に、少なくとも該内燃機関の常用域を越える該クランクシャフトの高回転領域では該マス部材が前記当接ゴム弾性体を介して前記当接支持部に対して当接状態とされて回転方向振動の副振動系として機能し得るようになっていることにある。
【0023】
このような本態様にあっては、少なくともアイドリング状態でのクランクシャフトの低回転領域において、マス部材が回転方向振動に対する副振動系として機能し得ることにより、当該領域の振動に対する制振効果が有利に発揮される。
【0024】
また、少なくとも内燃機関の常用域を越えるクランクシャフトの高回転領域では、遠心力が大きくなることを利用して、マス部材が遠心力の作用により当接ゴム弾性体を介して当接支持部に安定して当接される。その結果、連結ゴム弾性体の弾性変形量が有効に制限され、耐久性能が一層有利に発揮される。加えて、クランクシャフトの高回転領域下でマス部材が当接支持部に繰り返し当接せしめられることが回避されることによって、該繰り返し当接に起因する打音や振動が低減される。
【0025】
(回転軸用制振装置に関する本発明の態様4)
回転軸用制振装置に関する本発明の態様4の特徴とするところは、本発明の前記態様3に係る回転軸用制振装置において、少なくとも前記内燃機関のアイドリング状態での前記クランクシャフトの低回転領域では、前記マス部材と前記連結ゴム弾性体を含んでなる副振動系の固有振動数が該内燃機関のトルク変動の周期に対応した低周波数域にチューニングされていると共に、少なくとも該内燃機関の常用域を越える該クランクシャフトの高回転領域では、該マス部材や該連結ゴム弾性体、前記当接ゴム弾性体を含んでなる副振動系の固有振動数が該内燃機関のトルク変動の周期に対応した高周波数域にチューニングされていることにある。
【0026】
このような本態様においては、低回転領域での副振動系の固有振動数が内燃機関のトルク変動の周期に対応した低周波数域にチューニングされていることによって、トルク変動に起因すると考えられる低周波数域での問題となる振動がより効果的に抑えられる。
【0027】
また、クランクシャフトの高回転領域では、副振動系の固有振動数がトルク変動の周期に対応した高周波数域にチューニングされていることによって、トルク変動に起因すると考えられる高周波数域での問題となる振動に対しても低減効果が有利に発揮される。それ故、目的とする制振効果の更なる向上が図られ得る。
【0028】
なお、本態様において、内燃機関のトルク変動の周期とは、内燃機関の各気筒で燃焼が順次に発生することによりクランクシャフトに及ぼされる回転トルク変動の時間間隔であって、例えば4気筒エンジンであればクランクシャフトの回転2次成分に対応し、6気筒エンジンであればクランクシャフトの回転3次成分に対応した周波数をもって発生する周期のことをいう。
【0029】
(回転軸用制振装置に関する本発明の態様5)
回転軸用制振装置に関する本発明の態様5の特徴とするところは、本発明の前記態様4に係る回転軸用制振装置において、前記内燃機関が自動車用内燃機関であり、自動車のアイドリング状態では前記マス部材が前記内側当接支持部に対して外周側に離隔位置せしめられるようになっている一方、前記クランクシャフトが少なくとも2500回転/分以上の高回転領域では該マス部材が前記当接ゴム弾性体を介して前記当接支持部に対して当接状態とされるようになっていることにある。
【0030】
このような本態様においては、2500回転/分以上の高回転領域でマス部材が当接支持部に対して確実に当接されていることによって、連結ゴム弾性体の耐久性能が有利に発揮される。それ故、自動車用内燃機関のクランクシャフトに取り付けられる制振装置として、実用性が十分に発揮されるのである。
【0031】
(回転軸用制振装置に関する本発明の態様6)
回転軸用制振装置に関する本発明の態様6の特徴とするところは、本発明の前記態様1乃至5の何れかに係る回転軸用制振装置において、前記マス部材が、前記支持部材の周方向で相互に離隔位置して少なくとも3つ配設されていることにある。
【0032】
このような本態様においては、副振動系の回転バランスが良好にとり易くなり、その結果、制振効果が一層安定して得られる。
【0033】
(回転軸用制振装置に関する本発明の態様7)
回転軸用制振装置に関する本発明の態様7の特徴とするところは、本発明の前記態様6に係る回転軸用制振装置において、周方向で隣接位置せしめられた前記マス部材同士を相互に周方向で連結する連結弾性体を設けたことにある。
【0034】
このような本態様においては、マス部材同士が連結弾性体で周方向に連結されていることによって、略同じ位相で変位せしめられる。それ故、複数のマス部材の変位方向が安定とされることに基づいて、所期の制振効果が一層安定して得られる。
【0035】
(回転軸用制振装置に関する本発明の態様8)
回転軸用制振装置に関する本発明の態様8の特徴とするところは、本発明の前記態様1乃至7の何れかに係る回転軸用制振装置において、前記回転軸に固定されるボス部と、該ボス部の外周側に離隔して周方向に連続して延びる外周環状部と、それらボス部と外周環状部の軸直角方向対向面間に跨がって延びて該ボス部と該外周環状部を周上の複数箇所で相互に連結する連結部とを、有する構造をもって前記支持部材を構成することにより、該支持部材において、周方向に隣接する該複数の連結部の間で該ボス部と該外周環状部の軸直角方向対向面間に肉抜状空所を形成して、該肉抜状空所に前記マス部材を配設し、該肉抜状空所の外周壁部を構成する該外周環状部によって前記当接支持部を構成したことにある。
【0036】
このような本態様においては、当接支持部と支持部材が一体形成されることとなり、製造が容易となる。また、当接支持部が連結部を介して支持部材に支持されていることによって、当接支持部を別途支持せしめる部材が削減乃至は省略されることとなり、全体構造の簡略化および回転軸への取り付け作業の簡便化が有利に図られ得る。
【0037】
(回転軸用制振装置に関する本発明の態様9)
回転軸用制振装置に関する本発明の態様9の特徴とするところは、本発明の前記態様8に係る回転軸用制振装置において、前記支持部材の前記肉抜状空所に対して前記マス部材を収容状態で配設すると共に、該マス部材が収容された該肉抜状空所を軸方向両側から覆蓋する蓋部を、該支持部材に設けたことにある。
【0038】
このような本態様においては、マス部材が肉抜状空所から外部に出ることが防止され、安全性が有利に確保される。
【0039】
(回転軸用制振装置に関する本発明の態様10)
回転軸用制振装置に関する本発明の態様10の特徴とするところは、本発明の前記態様1乃至9の何れかに係る回転軸用制振装置において、前記マス部材と前記当接支持部との少なくとも一方の当接面に緩衝ゴムが形成されていることにある。
【0040】
このような本態様においては、マス部材が当接支持部に対して緩衝ゴムを介して当接されることによって、打音の発生が軽減される。
【0041】
(回転軸用制振装置に関する本発明の態様11)
回転軸用制振装置に関する本発明の態様11の特徴とするところは、本発明の前記態様1乃至10の何れかに係る回転軸用制振装置において、前記連結ゴム弾性体を、前記マス部材の周方向両端部分からそれぞれ周方向外方に向かって略周方向に或いは周方向に対して内周側又は外周側に傾斜して延び出す一対の弾性支持脚部によって構成することにより、該マス部材の外周側において該マス部材と前記支持部材との軸直角方向対向面間を軸方向に貫通する外周側空所を形成したことにある。
【0042】
このような本態様においては、連結ゴム弾性体が一対の弾性支持脚部で構成されていることにより、例えば弾性支持脚部の大きさや周方向に対する傾斜角度等を適宜に設計変更することによって、ばね特性や副振動系の固有振動数等のチューニング変更がより大きな自由度をもって実現される。
【0043】
なお、外周側空所における形状や大きさ、構造等の形態は、弾性支持脚部の形態等に応じて適宜に設定変更されるものであって、特に限定されるものでなく、例えば支持部材が回転していない静的状態下において、マス部材が支持部材から離隔して外周側空所が発現されるようになっており、回転して遠心力が所定の大きさになった場合にマス部材が支持部材に当接せしめられて外周側空所が潰されるようになっていても良く、或いは支持部材の回転に伴う遠心力の大きさに応じてマス部材が支持部材に接近/離隔されることに基づく弾性支持脚部の弾性変形に伴い、外周側空所が所定の大きさに拡張変形や縮小変形されるようにしても良い。
【0044】
(回転軸用制振装置に関する本発明の態様12)
回転軸用制振装置に関する本発明の態様12の特徴とするところは、本発明の前記態様1乃至11の何れかに係る回転軸用制振装置において、前記マス部材が、前記連結ゴム弾性体が接着された一体加硫成形品として前記支持部材とは別部材とされており、該支持部材に対して該一体加硫成形品が組み付けられていることにある。
【0045】
このような本態様においては、連結ゴム弾性体の一体加硫成形品が小型化可能となり、成型用金型も小さくて済むことから、成形作業や成形設備が簡易となる。
【0046】
また、本態様は、例えば本発明の前記態様8と組み合わせて有利に採用される。即ち、例えば前記態様8に係る支持部材の肉抜状空所にマス部材を備えた連結ゴム弾性体の一体加硫成形品を嵌め込んで該ゴム弾性体の弾性に基づいてマス部材を当接支持部に当接支持せしめたり、一体加硫成形品における連結ゴム弾性体の外周面に固定金具を固着して、その固定金具を支持部材に圧入や溶接、ボルト等で固定したりすること等によって、支持部材とマス部材をそれぞれ別体形成した後に、連結ゴム弾性体で相互に連結せしめることが可能となる。
【0047】
(回転軸用制振装置に関する本発明の態様13)
回転軸用制振装置に関する本発明の態様13の特徴とするところは、本発明の前記態様1乃至12の何れかに係る回転軸用制振装置において、前記回転軸に固定される前記ボス部に対して、該ボス部の外周側に離隔して周方向に連続して延びる前記外周環状部が一体的に形成されることによって、前記支持部材が構成されており、該ボス部と該外周環状部の軸直角方向対向面間に前記マス部材が配設されていると共に、該外周環状部によって前記当接支持部が構成されている一方、該外周環状部の外周側に離隔位置して円環形状の外周マス部材を、該支持部材と同一中心軸上に配設すると共に、外周連結ゴムによって該外周マス部材を該外周環状部に対して弾性的に連結することにより、トーショナルダンパとして作用する外周副振動系を構成したことにある。
【0048】
このような本態様においては、外周副振動系と前述のマス部材や連結ゴム弾性体若しくは当接ゴム弾性体を含んでなる副振動系があわせて採用されることによって、複数の副振動系が構成される。それ故、それら副振動系の固有振動数を各別にチューニングすることにより、複数の乃至は広い周波数域の振動に対して制振効果が有利に発揮される。
【0049】
(回転軸用制振装置の製造方法に関する本発明)
回転軸用制振装置の製造方法に関する本発明の特徴とするところは、本発明の前記態様1乃至13の何れかに係る回転軸用制振装置を製造するに際して、前記回転軸に固定される前記ボス部と、該ボス部の外周側に離隔して周方向に連続して延びる前記外周環状部と、それらボス部と外周環状部の軸直角方向対向面間に跨がって延びて該ボス部と該外周環状部を相互に連結する連結部とを、有する構造をもって前記支持部材を構成し、該ボス部と該外周環状部の軸直角方向対向面間における該支持部材の該連結部を避けた位置に肉抜状空所を形成して、該肉抜状空所の外周壁部を構成する該外周環状部によって前記当接支持部を構成すると共に、前記マス部材を前記連結ゴム弾性体が接着された一体加硫成形品として該支持部材と別体形成して、該一体加硫成形品を該肉抜状空所に嵌着固定することによって、該当接支持部を該マス部材に対して該回転軸の外周側に対向位置せしめると共に、それらマス部材と当接支持部の対向面の少なくとも一方に当接ゴム弾性体を固着した回転軸用制振装置の製造方法にある。
【0050】
このような本発明方法に従えば、マス部材を備えた連結ゴム弾性体の一体加硫成形品と支持部材を別体形成することによって、成形型等を含む成形設備や成形作業の簡略化が図られ、製造が容易となる。
【発明の効果】
【0051】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた回転軸用制振装置においては、支持部材の回転速度の増大に伴いマス部材に当接された当接ゴム弾性体の圧縮変形量が増大することを利用して、副振動系における回転方向のチューニング周波数を次第に変化させることが出来る。それ故、支持部材の回転数の変化に伴い問題となる振動の周波数域が変化する場合にも、共振作用が有効に機能し得ることとなり、複数の乃至は広い周波数域の振動に対して所期の制振効果が安定して得られるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について説明する。先ず、図1〜2には、本発明の第一の実施形態としてのクランクシャフト用ダンパ10が示されている。このダンパ10は、ハウジング12に設けた収容空所14に金属マス16を収容して、ハウジング12と金属マス16を連結ゴム弾性体18で相互に連結した構造とされており、ハウジング12を図示しない回転軸としての自動車用内燃機関のクランクシャフトに固着することによって、クランクシャフトに装着されるようになっている。
【0053】
より詳細には、ハウジング12は、支持部材としてのハウジング本体20を備えている。ハウジング本体20は、厚肉の略円板形状を有しており、その中央に軸方向(図2中、左右)に延びる円形の嵌着孔22が貫設されている。特に本実施形態では、嵌着孔22に薄肉の長手円筒形状を有する固定スリーブ24が圧入等で固定されている。また、固定スリーブ24の軸方向両端部が、嵌着孔22の両端から軸方向外方に所定長さで突出せしめられている。なお、ハウジング本体20は、弾性率が5×104 MPa以上の剛性材で形成されており、例えばアルミニウム合金や鉄鋼材等によって形成されたものが好適に採用される。
【0054】
また、ハウジング本体20の中心軸26のまわりには、貫通孔28の複数(本実施形態では4つ)が周方向で略等間隔に貫設されている。貫通孔28は、軸直角方向外方に向かって円弧長が大きくなる略平面視扇形形状をもって軸方向に延びていると共に、ハウジング本体20の中心軸26と平行に延びている。その結果、各貫通孔28の内方には、ハウジング本体20の軸方向両端に開口せしめられた肉抜状空所としての収容空所14の4つが、それぞれ、独立して形成されている。このことからも明らかなように、本実施形態では、同一形状の収容空所14がハウジング本体20の周方向で略等間隔に形成されていることによって、ハウジング本体20の重心が中心軸26上に位置せしめられるように、回転バランスが設定されている。
【0055】
また、上述の如き収容空所14の複数がハウジング本体20に形成されていることによって、ハウジング本体20の中央部分が、嵌着孔22を備えた小径の円筒形状のボス部30とされている。更に、ボス部30の軸直角方向外方には、各収容空所14を挟んで外周環状部としての大径の円筒形状を呈するアウタ筒部32が離隔位置せしめられている。これらボス部30とアウタ筒部32は、ハウジング本体20の中心軸26を略同心状に囲むように配置されていることに加え、各収容空所14の周方向間においてハウジング本体20の径方向(軸直角方向)に延びる連結部34の複数(本実施形態では4つ)によって周上の複数箇所で相互に連結されている。即ち、後述のクランクシャフトに固定されるボス部30に対して、該ボス部30の外周側に離隔して周方向に連続して延びるアウタ筒部32が一体的に形成されており、その結果、ハウジング本体20が、ボス部30やアウタ筒部32,これらボス部30とアウタ筒部32を連結する連結部34を含んで構成されている。
【0056】
さらに、ハウジング本体20の軸方向両端面には、蓋部としての蓋体36が、それぞれ、配設されている。蓋体36は、薄肉の略円板形状とされていると共に、中央に円形状の挿通孔38が貫設されている。そして、ハウジング本体20から突出せしめられた固定スリーブ24の両端部が、それぞれ各蓋体36の挿通孔38に内挿されていると共に、蓋体36がハウジング本体20の軸方向端面に重ね合わされてボルトや溶接等で固着されている。これにより、一対の蓋体36,36がハウジング本体20に組み付けられていると共に、各収容空所14が軸方向(図2中、左右)の両側から覆蓋されている。なお、蓋体36は、例えば挿通孔38の縁部に突設されたリブに固定スリーブ24が圧入固定されること等によってハウジング本体20に固着されていても良い。
【0057】
また、ボス部30における収容空所14を挟んでアウタ筒部32と軸直角方向で対向位置せしめられた外周面40には、収容空所14内に向かって突出する当接ゴム42が、該外周面40に沿って固着されている。
【0058】
さらに、アウタ筒部32における収容空所14を挟んでボス部30と軸直角方向で対向位置せしめられた内周面44の略周方向中央には、収容空所14内に向かって突出する当接ゴム弾性体46が、該内周面44に沿って固着されている。これら当接ゴム42と当接ゴム弾性体46は、天然ゴムやイソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンゴム等の公知の各種ゴム材を用いて形成されており、ハウジング本体20と一体加硫成形されることによって一体加硫成形品として構成されている。なお、当接ゴム42や当接ゴム弾性体46は、例えばハウジング本体20と別体形成された後に、接着剤等でボス部30やアウタ筒部32に、それぞれ固着されるようにしても良い。
【0059】
また、各収容空所14には、金属マス16等を備えた連結ゴム弾性体18の一体加硫成形品48が配設されている。このマス部材としての金属マス16は、鉄鋼等の高比重材で形成されていると共に、中実の略平面視円弧形のブロック状とされている。また、金属マス16の内周面50の曲率が、当接ゴム42が被着されたボス部30の外周面40の曲率と略同じとされている。更に、金属マス16の外周面52の曲率が、当接ゴム42が被着されたアウタ筒部32の内周面44の曲率と略同じとされている。
【0060】
また、連結ゴム弾性体18が、天然ゴムやイソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンゴム等の公知の各種ゴム材を用いて形成されていると共に、一対の弾性支持脚部54,54を含んで構成されている。弾性支持脚部54は、金属マス16の周方向両側において略周方向に沿って延びており、その周方向一方の端部が金属マス16の各周方向端部に加硫接着されている。また、弾性支持脚部54の周方向他方の端部には、固定金具56が加硫接着されている。固定金具56は、周方向外方に向かって凸となる略平面視く字状を呈しており、略一定の断面形状で軸方向(図2中、左右)に所定の長さで延びている。それによって、本実施形態に係る一体加硫成形品48が、一対の弾性支持脚部54,54が金属マス16や一対の固定金具56,56と共に一体加硫成形されることによって構成されている。
【0061】
また、金属マス16の内周面50や外周面52には、緩衝ゴムとしての薄肉のゴム弾性体層58が、略全体に亘って被着されている。このゴム弾性体層58は、連結ゴム弾性体18と一体形成されている。また、ゴム弾性体層58のショアD硬さは、特に限定されるものでないが、金属マス16のハウジング12への当接打音が有効に低減されることを考慮して、望ましくは80以下に、より望ましくは20〜40に設定される。
【0062】
そして、各一体加硫成形品48における一対の固定金具56,56が、各収容空所14に圧入されて、収容空所14の径方向外側の周方向両端部を構成する連結部34とアウタ筒部32の連結部分に固定されている。即ち、一体加硫成形品48の複数(本実施形態では4つ)がハウジング本体20の各収容空所14に組み付けられている。その結果、各金属マス16とハウジング本体20が各一対の弾性支持脚部54,54からなる連結ゴム弾性体18によって相互に弾性連結されている。また、金属マス16と連結ゴム弾性体18からなる回転方向振動に対する副振動系60の4つが、ハウジング本体20の中心軸26回りの周上で各別に独立して、周方向に略等間隔に配設されている。なお、各弾性支持脚部54が、金属マス16の端部から周方向外方に行くに従って軸直角方向外方に向かうように延びており、それによって、金属マス16の周方向に対して外周側に延びるように僅かに傾斜せしめられている。
【0063】
また、一体加硫成形品48をハウジング12に組み付けた静的状態下では、金属マス16の内周面50が、一対の弾性支持脚部54,54の弾性に基づいてゴム弾性体層58を介してボス部30に固着された当接ゴム42に、延いてはボス部30に当接支持されている。更に、金属マス16の外周面52が、一対の弾性支持脚部54,54の弾性に基づいてアウタ筒部32に固着された当接ゴム弾性体46と軸直角方向(ハウジング12の径方向)で所定距離を隔てて対向位置せしめられている。このことからも明らかなように、金属マス16の外周側において金属マス16とハウジング本体20との軸直角方向対向面間を軸方向に貫通する外周側空所62が、金属マス16および一対の弾性支持脚部54,54と当接ゴム弾性体46が固着されたアウタ筒部32との軸直角方向対向面間に形成されている。
【0064】
このような構造とされたクランクシャフト用ダンパ10は、ハウジング12の固定スリーブ24に図示しない自動車用内燃機関におけるクランクシャフトが圧入固定されることによって、クランクシャフトの端部等に装着されるようになっている。また、ハウジング12の中心軸26とクランクシャフトの回転中心軸が同一線上に位置せしめられるようになっており、ハウジング12がクランクシャフトと一体的に回転されるようになっている。従って、クランクシャフトの回転方向振動に対する副振動系60が、クランクシャフト(ハウジング12)の中心軸26回りの周上で各別に独立して、回転方向に略等間隔に配設される。
【0065】
また、各金属マス16が中心軸26を外れた位置に位置決めされていることによって、ハウジング12の回転に伴う遠心力が各金属マス16に及ぼされるようになっている。即ち、図3にも示されているように、クランクシャフトと一体的にハウジング12が回転して各金属マス16に所定の大きさの遠心力が作用せしめられると、各金属マス16が、一対の弾性支持脚部54,54の弾性変形に基づいてボス部30に被着された当接ゴム42から外周側に離隔せしめられることとなる。
【0066】
ところで、エンジンの始動時乃至はエンジンが始動してクランクシャフトの回転数が比較的に低い状況では、トルク変動に起因して大きな振動が衝撃的に入力されることがある。そこにおいて、かかる振動が入力されるクランクシャフトの低回転領域下において、各金属マス16が連結ゴム弾性体18の弾性に基づいてハウジング本体20のボス部30に当接支持されるように、連結ゴム弾性体18のばねがチューニングされている。即ち、かかる衝撃的且つ大きな振動が入力される状態(例えば図1, 2に示される状態)では、連結ゴム弾性体18の弾性に基づいて金属マス16をボス部30に当接支持せしめる作用力が、ハウジング12の回転に伴う遠心力によって金属マス16が連結ゴム弾性体18の弾性変形に基づいて当接ゴム42(ボス部30)から離隔せしめられる作用力よりも大きくなるように設定されている。その結果、当該振動入力時にあって、金属マス16がゴム弾性体層58および当接ゴム42を介してボス部30に当接せしめられて、金属マス16の変位量が制限されているのである。
【0067】
また、自動車のアイドリング状態でのクランクシャフトの低回転領域では、エンジンのトルク変動の周期に略対応した20〜70Hz程度の低周波数域において、問題となる捩り振動が惹起されることがある。そこにおいて、特に本実施形態では、各副振動系60の回転方向の固有振動数が、かかる20〜70Hz程度の低周波数域の振動に対して副振動系60に有効な共振現象が生ぜしめられるように、全て同じにチューニングされている。即ち、副振動系60の固有振動数が、クランクシャフトの低回転領域におけるトルク変動の周期に略対応した低周波数域に設定されている。
【0068】
その結果、少なくとも自動車のアイドリング状態(例えば図3に示される状態)では、ハウジング12の回転に伴う遠心力によって金属マス16が軸直角方向外方に変位せしめられることに伴い、一対の弾性支持脚部54,54の弾性変形に基づいて金属マス16がボス部30から軸直角方向外方に離隔せしめられて、当接ゴム42と当接ゴム弾性体46の軸直角方向対向面間に位置せしめられるようになっている。而して、金属マス16と一対の弾性支持脚部54,54を含んでなる回転方向振動の副振動系60において、共振作用が発揮されるようになっている。
【0069】
また、ハウジング12の回転数が高くなって更に大きな遠心力が金属マス16に及ぼされた場合には、図4にも示されているように、金属マス16が更に軸直角方向外方に変位せしめられると共に、当接ゴム弾性体46に当接されて、一対の弾性支持脚部54,54の弾性に基づいて金属マス16が当接ゴム弾性体46を介してアウタ筒部32に当接されるようになっている。要するに、金属マス16が、ハウジング本体20のアウタ筒部32に対して一対の弾性支持脚部54,54と当接ゴム弾性体46で協働して弾性支持されることとなる。その結果、金属マス16の軸直角方向外方への変位量が制限されていると共に、その制限に基づいて一対の弾性支持脚部54,54の弾性変形量も制限されることとなる。そして、ハウジング12が所定の回転数以上で回転し続けること、換言すれば所定の大きさ以上の遠心力が金属マス16に及ぼされ続けることに基づいて、金属マス16が当接ゴム弾性体46を介してアウタ筒部32に対して当接状態で支持されるようになっている。
【0070】
特に本実施形態では、少なくとも自動車用内燃機関の常用域を越える、2500回転/分以上のクランクシャフト(ハウジング12)の高回転領域において、金属マス16が当接ゴム弾性体46を介してアウタ筒部32に対して当接状態とされるように、弾性支持脚部54や当接ゴム弾性体46のばねがチューニングされている。
【0071】
また、クランクシャフトは内燃機関における各気筒の燃焼行程に伴い回転されることから、クランクシャフトの回転速度が大きくなると、それに応じてトルク変動の周期に略対応した振動周波数が高くなる。そこにおいて、ハウジング12の高回転領域(例えば図4に示される状態)では、金属マス16とアウタ筒部32の間に配された当接ゴム弾性体46の圧縮変形量が、ハウジング12の回転速度の増大に伴って金属マス16が軸直角方向外方への変位量が大きくなることに基づいて増大する。本実施形態では、副振動系60における回転方向の固有振動数が、ハウジング12の高回転領域でのトルク変動の周期に略対応した周波数域にチューニングされていると共に、当接ゴム弾性体46の圧縮変形量の増大を利用して、高回転領域でのトルク変動に起因して問題となる振動の周波数域が高くなることに略比例して大きくなるようになっている。
【0072】
上述の如き構造とされたクランクシャフト用ダンパ10にあっては、例えば6気筒エンジンを搭載した車両においてクランクシャフトの回転3次成分に対応した40〜70Hz程度の低周波数域の捩り振動が入力された場合に、各金属マス16が、ボス部30から軸直角方向外方に離隔せしめられると共に、収容空所14におけるボス部30とアウタ筒部32の対向面間に位置せしめられて、副振動系として機能される。その結果、各副振動系60の共振作用に基づいて制振効果が発揮され得る。
【0073】
特に本実施形態では、金属マス16が周上で部分的にハウジング本体20から独立して設けられていることによってチューニング自由度が大きく確保されていることに加え、各副振動系60の固有振動数が20〜70Hz程度の低周波数域にチューニングされていることにより、クランクシャフトのトルク変動に起因する低周波数域の振動に対して共振作用が極めて有効に発揮されるのであり、それによって、所期の制振効果が十分に得られるのである。
【0074】
しかも、ハウジング12の高回転領域では、遠心力の作用により金属マス16が当接ゴム弾性体42を介してアウタ筒部32に当接せしめられて、金属マス16の変位量が制限されることに基づいて、弾性支持脚部54における引張変形や剪断変形等の弾性変形量も制限される。それ故、副振動系60の固有振動数を低周数域の問題となる振動を抑えるために弾性支持脚部54を低動ばね化した場合においても、耐久性が有利に確保されることとなり、それによって、目的とする制振効果が安定して得られる。
【0075】
そこにおいて、ハウジング12の回転速度が更に大きくなることに伴って問題となる振動周波数が高くなる場合には、金属マス16とアウタ筒部32の間で圧縮変形される当接ゴム弾性体46の変形量に基づいて、副振動系60の固有振動数がチューニング変更される。その結果、単一のダンパで、複数の乃至は広い周波数域の振動に対して優れた制振効果が発揮され得るのである。
【0076】
また、本実施形態では、金属マス16の内周面50と外周面52における曲率がボス部30の外周面40とアウタ筒部32の内周面44における曲率と略同じに設定されていることによって、各面が相互に当接される際に安定して重ね合わせられる。しかも、金属マス16の内周面42にゴム弾性体層54が被着されていると共に、金属マス16を挟んで軸直角方向両側に当接ゴム42と当接ゴム弾性体46が配設されていることによって、金属マス16がハウジング本体20(ボス部30やアウタ筒部32等)に当接する際の打音や振動が一層軽減されることに加えて、金属マス16の滑り摩擦が大きくされることに基づき、金属マス16のハウジング本体20に対する当接状態がより安定とされる。それ故、所期の制振効果の安定性や信頼性が更に向上されるのである。
【0077】
また、本実施形態では、金属マス16を挟んで軸直角方向両側に当接ゴム42と当接ゴム弾性体46が配されていることにより、仮に捩り方向以外の振動が入力されて金属マス16が軸直角方向等に過大に変位せしめられた場合にも、ゴムによる緩衝作用が有効に機能せしめられて、金属マス16の当接打音が効果的に抑えられるのである。
【0078】
また、本実施形態では、上述の如き構造とされていることにより、例えばボス部30やアウタ筒部32、連結部34からなるハウジング本体12を備えた当接ゴム42および当接ゴム弾性体46の一体加硫成形品と金属マス16等を備えた連結ゴム弾性体18の一体加硫成形品48を別体形成した後に、ハウジング本体12の収容空所14に連結ゴム弾性体18の一体加硫成形品48を圧入固定することによって当該クランクシャフト用ダンパ10が容易に実現される製造方法が、好適に採用される。
【0079】
次に、図5には、本発明の第二の実施形態としてのクランクシャフト用ダンパ70が示されている。本第二の実施形態は、前記第一の実施形態に係る連結ゴム弾性体の一体加硫成形品の構造等が異なる態様を示すものである。なお、以下の説明において、前記第一の実施形態と実質的に同じ構造とされた部材及び部位については、図中に同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
【0080】
詳細には、本実施形態に係る金属マス16が、ハウジング本体20におけるボス部30とアウタ筒部32の軸直角方向中間部分に位置せしめられている。そして、金属マス16の外周面52が、アウタ筒部32の内周面44に被着された当接ゴム弾性体42と軸直角方向で所定距離を隔てて対向位置せしめられていると共に、金属マス16の内周面50が、ボス部30の外周面40と軸直角方向で所定距離を隔てて対向位置せしめられている。また、金属マス16とボス部30の間には連結ゴム弾性体18が配されている。
【0081】
本実施形態に係る連結ゴム弾性体18は、略平面視円弧形状を呈しており、その外周面が金属マス16の内周面50に加硫接着されていると共に、その内周面がボス部30の外周面40に加硫接着されている。これにより、金属マス16とハウジング本体20におけるボス部30が相互に弾性連結されている。なお、本実施形態では、連結ゴム弾性体18が金属マス16やハウジング本体20と共に一体加硫成形された後に、別途形成した当接ゴム弾性体46がアウタ筒部30の内周面44に接着剤等で固着されるようになっているが、例えば当接ゴム弾性体42を連結ゴム弾性体18と一体加硫成形して金属マス16の外周面52等に被着形成することによって、金属マス16やハウジング本体20を備えた両ゴム弾性体18,46の一体加硫成形品として形成することも勿論可能である。
【0082】
このような構造とされたクランクシャフト用ダンパ70においては、少なくともアイドリング状態でのクランクシャフトの低回転領域で金属マス16が回転方向の副振動系として機能し得ることにより、前記第一の実施形態と同様に、低回転領域における低周波振動が有利に抑えられる。
【0083】
また、ハウジング12の回転数が高くなって大きな遠心力が金属マス16に作用せしめられた場合には、図6にも示されているように、金属マス16が当接ゴム弾性体46を介してアウタ筒部32に当接せしめられる。更に、ハウジング12の回転速度が大きくなって、当接ゴム弾性体46の圧縮変形量が大きくなることに基づいて、副振動系60の固有振動数が高周波数域にチューニングされるようになっている。それ故、第一の実施形態と同様に、高回転領域における高周波数域の振動に対しても優れた制振効果が発揮される。
【0084】
特に本実施形態では、連結ゴム弾性体18がハウジング本体20と金属マス16を備えた一体加硫成形品とされていることによって、部品点数が削減されることに基づき、製造作業の容易化やコスト削減等が図られ得る。
【0085】
次に、図7〜8には、本発明の第三の実施形態としてのクランクシャフト用ダンパ80が示されている。本実施形態は、前記第一の実施形態に係る収容空所や連結ゴム弾性体の構造等に関して異なる態様を示すものである。
【0086】
詳細には、本実施形態に係るハウジング本体20のボス部30とアウタ筒部32の軸直角方向対向面間には、略平面視円環形状の環状凹所82が所定の深さ寸法で凹設せしめられている。そして、環状凹所82が開口したハウジング本体20の軸方向一方(図8中、右)の端面に蓋体36が固着されて覆蓋せしめられていることによって、外部空間に対して密閉された収容空所14が形成されている。要するに、本実施形態の収容空所14が周方向に連続して延びている。また、ボス部30とアウタ筒部32が、環状凹所82の底部側にあるハウジング本体20の軸方向他方(図8中、左)の端部によって実質的に連結されていることによって、それらボス部30とアウタ筒部32を連結する連結部34が、ハウジング本体20の該端部を含んで構成されている。即ち、ボス部30と該ボス部30の外周側に離隔して周方向に延びるアウタ筒部32と、それらボス部30とアウタ筒部32の軸直角方向対向面間に跨って延びてボス部30とアウタ筒部32を相互に連結する連結部34(環状凹所82の底部)とを有する構造をもって、ハウジング本体20が構成されている。
【0087】
また、ハウジング本体20におけるアウタ筒部32のボス部30と軸直角方向で対向位置せしめられる内周面44には、収容空所14に向かって延びる当接ゴム弾性体46の複数(本実施形態では4つ)が周方向に所定距離を隔てて設けられている。
【0088】
また、本実施形態に係る金属マス16を備えた連結ゴム弾性体18の一体加硫成形品84が、環状固定金具86を含んで構成されている。環状固定金具86は、略円筒形状を有していると共に、その内径寸法がボス部30の外径寸法よりも僅かに大きくされている。そして、環状固定金具86の軸直角方向(径方向)外方において、複数(本実施形態では4つ)の金属マス16が周方向に所定距離を隔てて配置されていると共に、環状固定金具86と軸直角方向で離隔して対向位置せしめられている。そして、各金属マス16と環状固定金具86の間に連結ゴム弾性体18が配されて、双方に加硫接着されていることにより、各金属マス16と環状固定金具86が相互に弾性連結されている。
【0089】
また、金属マス16と環状固定金具86を連結する連結ゴム弾性体18の周方向中間部分には、軸方向に貫通して延びる貫通孔88が形成されている。これにより、各金属マス16と環状固定金具86が実質的に周方向で分割せしめられた一対のゴム弾性体によって連結されている。
【0090】
さらに、周方向で隣接位置せしめられた各金属マス16と金属マス16の間には、連結弾性体90が配されている。連結弾性体90は、略平面視円弧形状を呈しており、連結ゴム弾性体18やゴム弾性体層58と一体形成されている。そして、連結弾性体90の周方向両端部が、各金属マス16の周方向端部に加硫接着されていることによって、各金属マス16同士を相互に周方向で連結せしめている。
【0091】
而して、一体加硫成形品84における環状固定金具86にハウジング本体20のボス部30が圧入固定されて、一体加硫成形品84が環状凹所82に収容配置されている。また、各金属マス16が、連結ゴム弾性体18および連結弾性体90の弾性に基づいてアウタ筒部32の内周面44に固着された各当接ゴム弾性体46と軸直角方向で離隔して対向位置せしめられている。
【0092】
本実施形態に従う構造とされたクランクシャフト用ダンパ80においては、少なくともアイドリング状態でのクランクシャフトの低回転領域にあって、連結ゴム弾性体18および連結弾性体90の弾性に基づいて金属マス16が回転方向の副振動系として機能し得ることにより、前記第一の実施形態と同様に、低回転領域における低周波振動が有利に抑えられる。
【0093】
また、ハウジング12の回転数が高くなって大きな遠心力が金属マス16に作用せしめられた場合には、連結ゴム弾性体18および連結弾性体90の弾性変形に基づいて金属マス16が当接ゴム弾性体46を介してアウタ筒部32に当接せしめられる。更に、ハウジング12の回転速度が大きくなって、当接ゴム弾性体46の圧縮変形量が大きくなることに基づいて、副振動系60の固有振動数が高周波数域にチューニングされるようになっている。それ故、第一の実施形態と同様に、高回転領域における高周波数域の振動に対しても優れた制振効果が発揮される。
【0094】
特に本実施形態では、金属マス16同士が連結弾性体90で周方向に連結されていることによって、略同じ位相で変位せしめられることとなり、捩り方向振動に対して複数の金属マス16が安定して変位される。それ故、所期の制振効果が一層安定して得られるのである。
【0095】
加えて、各金属マス16の両端が連結弾性体90によって隣接する他の金属マス16と連結されていることにより、仮に一方の連結弾性体90に亀裂や破断が生ぜしめられるようなことがあった場合においても、他方の連結弾性体90によって金属マス16が連結されていることから、所謂フェイルセーフ効果が有利に発揮される。
【0096】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であり、これら実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能である。また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0097】
例えば、金属マス16と連結ゴム弾性体18からなる副振動系の構造は、前記実施形態に限定されるものでない。例えば図9に示される如きトーショナルダンパ一体型のクランクシャフト用ダンパ100が採用されても良い。即ち、かかるダンパ100においては、アウタ筒部32の外周側に離隔位置して円環形状の外周マス部材102がハウジング本体20と同一中心軸上に配設されていると共に、それらアウタ筒部32と外周マス部材102の軸直角方向対向面間に配された円環形状の外周連結ゴム104によってアウタ筒部32と外周マス部材102が相互に弾性連結されることにより、トーショナルダンパとして作用する外周副振動系106を備えた構造とされている。
【0098】
その結果、外周副振動系106と副振動系60の固有振動数をそれぞれチューニングすることによって、対象とする振動方向や構造は異なるが、例えば特開平9−257118号公報や特開2000−170839号公報、特開平5−60177号公報にも示されているように、主振動系であるクランクシャフトやドライブシャフト等の回転軸に対して複数の副振動系を備えた、所謂ベンディングダンパ等ともいわれる制振装置と略同様に、複数の乃至は広い周波数域の振動に対して制振効果が発揮されることとなる。
【0099】
また、前記第一の実施形態等においては、連結ゴム弾性体18(一対の弾性支持脚部54,54)の一体加硫成形品48を収容空所に圧入固定する際等に、連結ゴム弾性体18の弾性に基づいてボス部30に固着された当接ゴム42に予圧縮が及ぼされるようにして、当接ゴム42の耐久性能を大きく確保しても良い。
【0100】
また、前記実施形態に係る蓋体36や固定スリーブ24等は必要に応じて設けられるものであり、必須の部材でない。
【0101】
また、収容空所14を覆蓋せしめる蓋体36に連通孔を形成して、該連通孔を通じて収容空所14を外部空間に連通せしめることも可能であり、それによって、収容空所14の急激な温度上昇を抑えるようにしても良い。
【0102】
また、前記第一の実施形態等では、金属マス16を備えた連結ゴム弾性体18の一体加硫成形品48が、連結ゴム弾性体18の端部に固着された固定金具56が収容空所14に圧入されること等によってハウジング本体20に固定される嵌め込み式とされていたが、例えば金属マス16の外周側に収容空所14の形状に対応した環状金具を設けて該収容空所に圧入固定する所謂カセットタイプの嵌め込み式としたり、固定金具56を固着しない連結ゴム弾性体18を収容空所14に圧入して、該ゴム弾性体18の弾性に基づいて収容空所14内に支持せしめたり、必要に応じて連結ゴム弾性体18の外周面と収容空所14の壁部を構成するアウタ筒部32の内周面等を接着剤で相互に固着せしめたりすること等によって、ハウジング本体20に固定されるようにしても良い。
【0103】
加えて、前記実施形態では、別途用意したハウジング12をクランクシャフトの端部に組み付けることによって本発明が適用されるものの具体例が示されていたが、本発明はかかる具体例に限定されるものでない。例えば、クランクシャフトに組み付けられるプーリやフライホイール等の本体に収容空所を形成して、該収容空所に金属マスを配置し、連結ゴム弾性体で本体と連結することによって、プーリやフライホイール等に一体的に組み込まれるようにすることも勿論、本発明の適用範囲となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の第一の実施形態としてのクランクシャフト用ダンパを示す横断面説明図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】図1におけるクランクシャフト用ダンパを主振動系たるクランクシャフトに装着して、その一作動形態を示す横断面説明図である。
【図4】図1におけるクランクシャフト用ダンパを主振動系たるクランクシャフトに装着して、その別の一作動形態を示す横断面説明図である。
【図5】本発明の第二の実施形態としてのクランクシャフト用ダンパを示す横断面説明図であって、図1に対応する図である。
【図6】図5におけるクランクシャフト用ダンパを主振動系たるクランクシャフトに装着して、その一作動形態を示す横断面説明図であって、図4対応する図である。
【図7】本発明の第三の実施形態としてのクランクシャフト用ダンパを示す横断面説明図であって、図1に対応する図である。
【図8】図7のVIII−VIII断面図である。
【図9】本発明の別の一具体例としてのクランクシャフト用ダンパを示す横断面説明図であって、図1に対応する図である。
【符号の説明】
【0105】
10 クランクシャフト用ダンパ
16 金属マス
18 連結ゴム弾性体
20 ハウジング本体
26 中心軸
32 アウタ筒部
60 副振動系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制振対象となる回転軸に取り付けられて該回転軸と一体的に回転せしめられる支持部材に対して、マス部材を離隔配置せしめて、該マス部材を該支持部材に対して連結ゴム弾性体で連結支持せしめることにより、該回転軸の回転方向振動に対する副振動系を構成した回転軸用制振装置において、
前記マス部材を、前記支持部材の回転中心軸回りにおける周上で部分的に独立して位置せしめられるブロック状とし、該支持部材の回転中心軸を外れた位置に配設して該支持部材の回転に伴う遠心力が該マス部材に及ぼされるようにする一方、該マス部材に対して該回転軸の外周側に離隔して位置する当接支持部を該支持部材に設けると共に、それらマス部材と当接支持部の対向面の少なくとも一方に当接ゴム弾性体を設けて、少なくとも該支持部材の所定速度以上の回転状態下で、該マス部材に及ぼされる遠心力により、前記連結ゴム弾性体の弾性変形に基づいて該マス部材が外周側に変位せしめられて該当接ゴム弾性体を介して該当接支持部に対して当接されることにより、該マス部材が該支持部材に対して該連結ゴム弾性体と該当接ゴム弾性体で協働して弾性支持されるように為し、該支持部材の回転速度の増大に伴って該当接ゴム弾性体の圧縮変形量が増大することを利用して、前記副振動系における回転方向のチューニング周波数を次第に変化させるようにしたことを特徴とする回転軸用制振装置。
【請求項2】
前記マス部材に対して前記回転軸の内周側に対向位置する内側当接支持部を前記支持部材に設けて、前記連結ゴム弾性体の弾性に基づいて該マス部材を該内側当接支持部に当接させて支持せしめる一方、該支持部材の回転に伴って該マス部材に及ぼされる遠心力により、該連結ゴム弾性体の弾性変形に基づいて該マス部材が外周側に変位せしめられて該内側当接支持部から離隔せしめられるようにした請求項1に記載の回転軸用制振装置。
【請求項3】
前記支持部材が、前記回転軸としての内燃機関のクランクシャフトに取り付けられるようになっており、少なくとも該内燃機関のアイドリング状態での該クランクシャフトの低回転領域では前記マス部材が前記内側当接支持部に対して外周側に離隔位置せしめられて回転方向振動の副振動系として機能し得るようになっていると共に、少なくとも該内燃機関の常用域を越える該クランクシャフトの高回転領域では該マス部材が前記当接ゴム弾性体を介して前記当接支持部に対して当接状態とされて回転方向振動の副振動系として機能し得るようになっている請求項2に記載の回転軸用制振装置。
【請求項4】
少なくとも前記内燃機関のアイドリング状態での前記クランクシャフトの低回転領域では、前記マス部材と前記連結ゴム弾性体を含んでなる副振動系の固有振動数が該内燃機関のトルク変動の周期に対応した低周波数域にチューニングされていると共に、少なくとも該内燃機関の常用域を越える該クランクシャフトの高回転領域では、該マス部材や該連結ゴム弾性体、前記当接ゴム弾性体を含んでなる副振動系の固有振動数が該内燃機関のトルク変動の周期に対応した高周波数域にチューニングされている請求項3に記載の回転軸用制振装置。
【請求項5】
前記内燃機関が自動車用内燃機関であり、自動車のアイドリング状態では前記マス部材が前記内側当接支持部に対して外周側に離隔位置せしめられるようになっている一方、前記クランクシャフトが少なくとも2500回転/分以上の高回転領域では該マス部材が前記当接ゴム弾性体を介して前記当接支持部に対して当接状態とされるようになっている請求項4に記載の回転軸用制振装置。
【請求項6】
前記マス部材が、前記支持部材の周方向で相互に離隔位置して少なくとも3つ配設されている請求項1乃至5の何れかに記載の回転軸用制振装置。
【請求項7】
周方向で隣接位置せしめられた前記マス部材同士を相互に周方向で連結する連結弾性体を設けた請求項6に記載の回転軸用制振装置。
【請求項8】
前記回転軸に固定されるボス部と、該ボス部の外周側に離隔して周方向に連続して延びる外周環状部と、それらボス部と外周環状部の軸直角方向対向面間に跨がって延びて該ボス部と該外周環状部を周上の複数箇所で相互に連結する連結部とを、有する構造をもって前記支持部材を構成することにより、
該支持部材において、周方向に隣接する該複数の連結部の間で該ボス部と該外周環状部の軸直角方向対向面間に肉抜状空所を形成して、該肉抜状空所に前記マス部材を配設し、該肉抜状空所の外周壁部を構成する該外周環状部によって前記当接支持部を構成した請求項1乃至7の何れかに記載の回転軸用制振装置。
【請求項9】
前記支持部材の前記肉抜状空所に対して前記マス部材を収容状態で配設すると共に、該マス部材が収容された該肉抜状空所を軸方向両側から覆蓋する蓋部を、該支持部材に設けた請求項8に記載の回転軸用制振装置。
【請求項10】
前記マス部材と前記当接支持部との少なくとも一方の当接面に緩衝ゴムが形成されている請求項1乃至9の何れかに記載の回転軸用制振装置。
【請求項11】
前記連結ゴム弾性体を、前記マス部材の周方向両端部分からそれぞれ周方向外方に向かって略周方向に或いは周方向に対して内周側又は外周側に傾斜して延び出す一対の弾性支持脚部によって構成することにより、該マス部材の外周側において該マス部材と前記支持部材との軸直角方向対向面間を軸方向に貫通する外周側空所を形成した請求項1乃至10の何れかに記載の回転軸用制振装置。
【請求項12】
前記マス部材が、前記連結ゴム弾性体が接着された一体加硫成形品として前記支持部材とは別部材とされており、該支持部材に対して該一体加硫成形品が組み付けられている請求項1乃至11の何れかに記載の回転軸用制振装置。
【請求項13】
前記回転軸に固定される前記ボス部に対して、該ボス部の外周側に離隔して周方向に連続して延びる前記外周環状部が一体的に形成されることによって、前記支持部材が構成されており、該ボス部と該外周環状部の軸直角方向対向面間に前記マス部材が配設されていると共に、該外周環状部によって前記当接支持部が構成されている一方、該外周環状部の外周側に離隔位置して円環形状の外周マス部材を、該支持部材と同一中心軸上に配設すると共に、外周連結ゴムによって該外周マス部材を該外周環状部に対して弾性的に連結することにより、トーショナルダンパとして作用する外周副振動系を構成した請求項1乃至12の何れかに記載の回転軸用制振装置。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れかに記載の回転軸用制振装置を製造するに際して、
前記回転軸に固定される前記ボス部と、該ボス部の外周側に離隔して周方向に連続して延びる前記外周環状部と、それらボス部と外周環状部の軸直角方向対向面間に跨がって延びて該ボス部と該外周環状部を相互に連結する連結部とを、有する構造をもって前記支持部材を構成し、該ボス部と該外周環状部の軸直角方向対向面間における該支持部材の該連結部を避けた位置に肉抜状空所を形成して、該肉抜状空所の外周壁部を構成する該外周環状部によって前記当接支持部を構成すると共に、前記マス部材を前記連結ゴム弾性体が接着された一体加硫成形品として該支持部材と別体形成して、該一体加硫成形品を該肉抜状空所に嵌着固定することによって、該当接支持部を該マス部材に対して該回転軸の外周側に対向位置せしめると共に、それらマス部材と当接支持部の対向面の少なくとも一方に前記当接ゴム弾性体を固設したことを特徴とする回転軸用制振装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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