説明

回転速度測定装置

【課題】回転速度及び識別情報を記憶可能にする非接触式回転速度計測装置及び方法を提供する。
【解決手段】光学式回転計と、回転体上に前記光学式回転計から照射される光線を反射する光線反射部分及び反射しない光線非反射部分とを備えた反射手段と、を含み、前記反射手段は、前記光線反射部分及び光線非反射部分の組み合わせにより固有の識別情報を構成する、回転速度測定装置による。また、前記反射手段は、前記光線反射部分と前記光線非反射部分とが固有の縞模様を形成し、前記縞模様の形状に基づいて前記固有の識別情報を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転速度測定装置に関連し、特に、回転速度及び識別情報を記憶可能にする非接触式回転速度測定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば工場等において複数のモータ等の定格回転速度を測定する際は、測定員が可搬式回転計(特許文献1)を携行し、所定の測定場所で回転速度を測定し、測定された回転速度を回転計に記憶させ、後刻例えば事務所等に戻った後に記憶させた回転速度の値を呼び出して記録及び管理してきた。
【0003】
しかしながら、上述した方法には、次のように改善の余地がある。
【0004】
上記方法では、可搬式回転計に記憶されるデータは回転速度のみであり、測定する順番を間違えたり、測定箇所を飛ばしたりした場合、どこの測定点の測定値であるか不明になることがあり、後刻測定値を呼び出したときに測定値を正しく管理することが困難であった。
【0005】
そこで、前記可搬式回転計において、測定箇所に割り当てられた識別番号等をあらかじめ可搬式回転計に記憶させ、前記識別番号に測定した回転速度を関連付けて記憶させる方法が検討されてきた。
【特許文献1】特開2006−329815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の方法では、測定員が当初設定された識別番号の測定点と別の測定点を誤って測定してしまっても誤りと判定する手段がないため、誤った測定値が訂正されることなく保存、使用され、時として生産管理上誤った判断を下す原因の一つとなってしまう可能性がある。
【0007】
かかる事態を回避するために、例えば測定箇所ごとにバーコードや二次元コード等の識別用表示を設定し、前記測定箇所ごとに可搬式回転計に読み取らせた後回転速度を測定する方法も検討されているが、可搬式回転計に前記識別用表示入力手段を追加装備する必要があり、設計上複雑な構造になり当然製造コストが上昇するばかりではなく、可搬式回転計自体の重さや大きさが増加し、携帯性や操作性が低下する原因となってしまう。
【0008】
したがって、回転速度測定装置の構造を複雑にすることなく、回転速度を測定する際に測定箇所と測定値との正確な関連付けを可能にする測定装置及び測定方法の開発が必要となった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、従来の可搬式回転計の携帯性や操作性を損なわず、測定箇所の識別情報に関連付けられた回転速度の測定を可能にする装置を提供するものである。
【0010】
より具体的には、次のものを提供する。
【0011】
(1)光学式回転計と、回転体上に前記光学式回転計から照射される光線を反射する光線反射部分及び反射しない光線非反射部分を備えた反射手段と、を含み、
前記反射手段は、前記光線反射部分及び光線非反射部分の組み合わせにより固有の識別情報を構成する、回転速度測定装置。
【0012】
(1)の発明によれば、光学式回転計と、回転体上に前記光学式回転計から照射される光線を反射する光線反射部分及び反射しない光線非反射部分を備えた反射手段と、を含み、前記反射手段は、前記光線反射部分及び光線非反射部分の組み合わせにより固有の識別情報を構成する、回転速度測定装置を提供する。
【0013】
(1)の構成により、前記光学式回転計は、回転速度を測定するのみでなく、回転速度の測定を行いつつ識別情報を読み取って測定した回転速度に関連付けて記憶することにより、例えば、測定箇所ごとに測定した回転速度を表示することができる。したがって、例えば測定し忘れた箇所が明確になる、測定場所と測定した回転速度とを誤った組み合わせで記録する等のうっかりミスの防止のほか、定格回転していない回転部を特定する等回転部が存在する機器や施設における効率的な工程管理等が可能になる。
【0014】
光学式回転計は、例えば前述の特許文献1に記載した可搬式回転計のほか、いかなる光学式回転計をも用いることができるが、後述する光線の拡散を抑止する拡散抑止手段を有することが好ましい。
【0015】
反射手段は、前記光学式回転計から照射された光線を反射する。前記光学式回転計は、前記反射した光線を受光部で受光し、後述する一連の処理を施すことにより、回転速度と識別情報とを認識する。前記反射手段は後述するように、付着した回転体の回転を妨げない限りいかなる素材、形態でよく、また光線反射部分及び光線非反射部分を備えることができる。
【0016】
(2)前記反射手段は、前記光線反射部分と前記光線非反射部分とが固有の縞模様を形成し、前記縞模様の形状に基づいて前記固有の識別情報を構成する、(1)の回転速度測定装置。
【0017】
(2)の発明によれば、前記反射手段は、前記光線反射部分と前記光線非反射部分とが固有の縞模様を形成し、前記縞模様の形状に基づいて前記固有の識別情報を構成する、回転速度測定装置を提供する。
【0018】
ここで、前記光線反射部分は、金属箔等を前記基材上に付着させる、又は光線反射能力が高い原料、染料等によって構成され、前記光線非反射部分は、例えば黒色等暗い色の染料等によって構成される。
【0019】
また、前記縞状の部分の構成(光線反射部分と光線非反射部分との数や配列順序)を変えることにより、前記反射手段は、例えば、バーコードのように識別情報を保有することができる。しかしながら、バーコードの場合と相違して、本願発明に係る反射手段は、回転速度測定箇所が高速回転していても、例えばバーコードリーダー等特別な装備を使用することなく、本願発明に係る光学式回転計が識別情報を読み取ることができる。
【0020】
(3)前記光学式回転計は、測定した回転速度を、前記識別情報に関連付けて記憶する手段を備える、(1)又は(2)の回転速度測定装置。
【0021】
(3)の発明によれば、前記光学式回転計は、測定した回転速度を、前記識別情報に関連付けて記憶する手段を備える回転速度測定装置を提供する。
【0022】
このような構成により、光学式回転計は、測定した回転速度を前記識別情報に関連付けて記憶することが可能になり、(1)と同様の作用、効果を奏する。
【0023】
(4)前記光学式回転計は、前記光線反射部分と前記光線非反射部分に対して照射した光線の反射光を受光する受光部と、受光した前記反射光に基づいてパルス入力パターンを形成し、形成した前記パルス入力パターンに基づいて前記識別情報を認識する認識部と、を備える、(1)から(3)のいずれか1つの回転速度測定装置。
【0024】
(4)の発明によれば、前記光学式回転計は、前記光線反射部分と前記光線非反射部分に対して照射した光線の反射光を受光する受光部と、受光した前記反射光に基づいてパルス入力パターンを形成し、形成した前記パルス入力パターンに基づいて前記識別情報を認識する認識部とを備える回転速度測定装置を提供することができる。
【0025】
このような構成により、回転体の回転速度を測定すると同時に回転体の識別情報を認識し、前記回転速度を前記識別情報に関連付けて提供することが可能になる。
【0026】
(5)前記反射手段の回転方向に対する頭端部の前記光線反射部分が、他の光線反射部分とは異なる幅を有する、(2)から(4)のいずれか1つの回転速度測定装置。
【0027】
(5)の発明によれば、前記反射手段の回転方向に対する頭端部の前記光線反射部分が、他の光線反射部分とは異なる幅を有する、回転速度測定装置を提供する。
【0028】
このような構成により、回転速度計測の際、前記光学式回転計は反射手段の頭端を確実に認識することが可能になり、回転速度の測定の際の精度向上に資することができる。
【0029】
(6)前記反射手段の回転方向に対する終端部を示す前記光線反射部分を有する、(2)から(5)のいずれか1つの回転速度測定装置。
【0030】
(6)の発明によれば、前記反射手段の回転方向に対する終端部を示す前記光線反射部分を有する回転速度測定装置を提供する。
【0031】
このような構成により、(5)と同様に、反射手段の終端を確実に認識することが可能になり、回転速度の測定の際の精度向上に資することができる。
【0032】
(7)前記識別情報が、回転速度測定箇所を特定する情報を含む、(1)から(6)のいずれか1つの回転速度測定装置。
【0033】
(7)の発明によれば、前記識別情報が回転速度測定箇所を特定する情報を含む、回転速度測定装置を提供する。
【0034】
このような構成により、回転速度を測定した箇所を特定することが可能になり、(1)と同様の作用、効果、特に、回転速度測定箇所ごとの回転速度を記録することが可能になる。
【0035】
(8)前記光学式回転計は、光源が照射する光線の拡散を抑止する拡散抑止手段をさらに有する、(1)から(7)のいずれか1つの回転速度測定装置。
【0036】
(8)の発明によれば、前記光学式回転計が光源が照射する光線の拡散を抑止する拡散抑止手段をさらに有する回転速度測定装置を提供する。
【0037】
このような構成により、前記回転速度測定装置における光学式回転計が、光線の拡散を抑止する拡散抑止手段を有し、例えばLEDや電球等照射光が拡散する性質の光源を採用しても、レーザーと同様に照射する光束の拡散を抑制することができる。これにより、高速回転する回転部に対する精密な回転速度の測定と、回転部に付着する反射手段が担持する識別情報(縞模様)の正確な認識が可能となる。
【0038】
(9)前記拡散抑止手段はスリットを含む、(8)に記載の回転速度測定装置。
【0039】
(9)の発明によれば、前記拡散抑止手段はスリットを含む回転速度測定装置を提供する。
【0040】
このような構成により、例えば可動式の絞り、レンズ等複雑な構造を採用しなくても容易に光束の拡散を抑制するように調整することが可能となる。また、スリットの幅と長さとを調整することにより、例えば、照射光を一次元(点状)に調整することにより、前記反射手段が有する光線反射部分と光線非反射部分の縞模様の認識精度を向上することができるほか、前記照射光を二次元(線状)に調整することにより、例えば、パッチコードやQRコード等を認識することが可能となり、前記の縞模様が有する識別情報よりも多量の情報を認識することが可能となる。
【0041】
(10)前記制御部が複数の前記反射手段の時間幅を順次測定し、測定した一連の前記時間幅のばらつきがあらかじめ入力された値以上の場合には回転速度の測定を行わない、(4)から(9)のいずれか1つの回転速度測定装置。
【0042】
(9)の発明によれば、前記制御部が複数の前記反射手段の時間幅を順次測定し、測定した一連の前記時間幅のばらつきがあらかじめ入力された値以上の場合には回転速度の測定を行わないように設定することができる。
【0043】
このような構成により、前記制御部が前記反射手段の両端の時間幅を順次測定し、ここで測定された時間幅のばらつき、すなわち順次測定した回転速度のばらつきがあらかじめ入力した規定値以上の場合には、回転速度を測定した回転部の回転が定格回転(回転速度にばらつきがない)ではないと判定し、回転速度を測定しないように設定することができる。これにより、回転速度を測定しなかった事実が明確になるため、例えばいくつかの回転速度計測点において、回転速度が測定できない箇所(すなわち定格回転していない箇所)を特定することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明により、測定箇所の識別情報に関連付けられた回転速度の測定を可能にする回転速度測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0046】
図1は、本発明の回転速度測定装置の使用の態様の一例を示す概略図である。図2は、本発明の回転速度測定装置の使用の態様の一例において、回転部に貼り付けられた反射手段の一例を示す概略図である。図3は、本発明の回転速度測定装置の一例を示す概略図である。図4は、本発明の回転速度測定装置の概略図の一例における、光源及び受光部の拡大図である。図5は、本発明の回転速度測定装置の一例の機能構成図である。図6は、本発明の回転速度測定装置が有するメモリテーブルの一例を示す図である。図7は、本発明の回転速度測定装置の回転速度計測プロセスを示すフローチャートの一例である。図8は、本発明の回転速度測定装置における回転速度の測定原理を示す模式図である。
【0047】
図1は、本発明の光学式回転計101の使用の態様の一例を示す概略図である。前記概略図では、例えば、モータ105により駆動された回転部110(a、b、c、d、e・・・)に本発明の光学式回転計101(a、b、c、d、e・・・)を指向し、前記光学式回転計101から回転速度計測用の光線を前記回転部110に照射し、前記回転部110に貼り付けれた反射手段200(図示せず、詳細は後述する。)により反射される光線を前記光学式回転計101が受光することにより、回転速度と前記反射手段に関連付けられた識別情報を表示、記憶する。ここで、光学式回転計101の概観及び機能・構成については後述する。回転部110(a、b、c、d、e・・・)は、例えばモータ105のように一つの動力源から回転エネルギーを供給されても、それぞれの回転部110(a、b、c、d、e・・・)が独立した回転エネルギー供給源(例えば、モーター、エンジン、はずみ車等)を有してもよい。また、回転部110は、前記回転エネルギー供給源を有する回転部に連接して、前記回転エネルギー供給源を有する回転部の回転に応じて回転してもよい。さらに、識別情報とは、例えば反射手段200が貼り付けられた箇所を特定するための情報(例えば、測定箇所番号等)を含む。
【0048】
図2は、本発明の回転速度測定装置の使用の態様の一例において、回転部に貼り付けられた反射手段の概略図の一例である。
【0049】
図2aに示すように、反射手段200は、縞模様を有する小片であり、前記縞模様が回転軸とおおむね平行(略平行)になるように、回転部110(a、b、c、d、e・・・)に貼り付けることにより、前記光学式回転計101による回転速度と前記反射手段に関連付けられた識別情報との表示及び記憶が可能になる。前記反射手段200は、光反射性及び光非反射性の縞が回転軸と略平行になるように貼り付けられるのが望ましいが、光学式回転計が前記反射手段200からの反射光のうち、光線反射部分と光線非反射部分を正確に認識できれば、前記の縞と回転軸とが略平行の関係になくても、例えばねじれの位置にあってもよい。また、例えば反射手段を前記の縞模様ではなく、パッチコードやQRコード等、後述する識別情報を記憶できる手段であればいかなる手段でもよい。例えば二次元的な広がりを有する反射手段を採用した場合には、光源から照射する光線の幅や広がりを適切に調整することによって光学式回転計がこれらの反射手段が有する識別情報を認識することができる。
【0050】
図2bに示すように、反射手段200は、基材となる小片上に数本の縞模様を有し構成される。
【0051】
ここで、前記基材は、縞模様を担持するための素材であればいかなる素材でもよいが、好ましくは、正確な回転速度を検出するために、厚さが薄くても十分な強度を呈するプラスチック・フィルム、セロファン・フィルム、ビニル・フィルム等のフィルム又は種々の種類の紙でよい。前記反射手段200の基材の回転部110への固定方法は、接着剤、両面テープ、熱圧着、磁力、被覆フィルム等の周知の方法により達成することができる。
【0052】
反射手段200が担持する縞模様は、光学式回転計101から照射される光線を反射する縞(光線反射部分211、212、231、261、262)と反射しない(非反射)縞(光線非反射部分221、222、232)との2種類から構成され、これらの光線反射縞と光線非反射縞との組み合わせにより、識別情報を形成することができる。前記縞模様を構成する素材のうち光線を反射する縞は、アルミ箔等の金属箔を前記基材に貼付、蒸着、被覆する等いかなる方法によってもよいし、白色や金属光沢を有する光反射性色彩の顔料や染料を前記基材に塗布してもよい。前記縞模様を構成する素材のうち光線を非反射する縞は、黒色等の光非反射性色彩の光反射性色彩の顔料や染料を前記基材に塗布してもよいし、光反射性の縞の光線反射を阻害しないのであれば、前記基材に塗装等を施さなくてもよい。前記のそれぞれの縞の幅や長さは、測定箇所の状況(例えば、回転軸の太さ、長さ、想定する回転速度の値等)及び光線の種類(例えば、レーザー、可視光、赤外線等)によって任意に選択することが可能である。また、光線反射縞と光線非反射縞のそれぞれの幅は等しくても、等しくなくてもよく、任意に選択することができる。例えば、頭端部や終端部の光反射性の縞の太さを他の縞の太さの2倍にする等太くすることにより、前記頭端部や終端部の認識性を向上させることができる。
【0053】
前記反射手段200中の光線反射縞と光線非反射縞との数も任意に設定することができるが、例えば、縞1本で1ビットの値を表現するように設定(例えば反射を「1」、非反射を「0」)しても、縞2本分で1ビットの値を表現する(反射・反射(210)、反射・非反射(230)、非反射・反射(250)、非反射・非反射(220))ように設定してもよいし、さらに多数の縞の数で1ビットの値を表現するように設定してもよい。また、1つの反射手段中で表示する識別情報についても、貼り付けた回転部の回転や回転計の測定機能を妨げない範囲で、縞の数や幅を変えることにより(例えば、識別情報を4ビットにする、6ビットにする等)任意に設定することができる。
【0054】
さらに、前記反射手段200の縞模様の配置において、光学式回転計101が反射手段の端部を明確に識別できるように、例えば一方又は両方の端を「反射・反射(210、260)」の縞とする等、一定の規則を定めてもよい。この場合、両端の縞模様が前記の規則に従った場合には、例えば両端の縞模様の検出により回転速度を演算するように光学式回転計101を設定してもよいし、どちらか一方の端(「ヘッダー」又は「フッター」と呼ぶ)が検出されるタイミングから回転速度を演算するように光学式回転計101を設定してもよい。
【0055】
図3は、本発明の光学式回転計101の一例を示す概略図である。
【0056】
前記光学式回転計101は、表示部31、操作部33、及び照射・受光部35を有する。
【0057】
表示部31は、測定した回転速度、前記測定した回転速度に関連した識別情報のほか、操作部33を介して入力した測定諸条件等を表示する。表示部31は、液晶、プラズマ、有機EL等いかなる周知の表示装置でもよい。操作部33は、電源の投入、切断、測定諸条件の入力、編集、識別情報の入力等を行う。照射・受光部35は、光線を照射する光源と、反射光を受光するセンサー等を内蔵し、回転体への光線の照射と、前記回転体からの反射光の受光を行う。ここで、光源は、レーザー、LED、電球等いかなる周知の光源でよく、また前記センサーも、照射される光線を適切に受光できる組み合わせの中から選ぶことができる。
【0058】
図4は、本発明の回転速度測定装置の概略図の一例における、光源及び受光部の拡大図である。
【0059】
照射・受光部35は、精度よく回転速度を測定するために、例えばLEDや電球等の拡散型の光源を採用した場合には、照射・受光部35にスリット43、可動式の絞り、レンズ等、照射する光線の幅を狭めるための光線拡散抑止手段を有することができる。ここで、前記スリット43等の装備は、前記回転形101の使用条件等に応じて取り外し式としてもよい。前記スリット43を光学式回転計101の照射・受光部35に取り付けた場合には、光源及び受光用センサー45がスリット43によって照射される光線の拡散を抑制する。このため、例えばLEDや電球等の光線拡散型の光源を採用した場合でも、レーザーの場合と同様に照射する光束の拡散を抑制することができる。これにより、高速回転する回転部に対する精密な回転速度の測定と、回転部に付着する反射手段200が担持する識別情報(縞模様)の正確な認識が可能となる。また、前述のように、スリットの幅と長さとを調整することにより、例えば、照射光を一次元(点状)に調整することにより、前記反射手段が有する光線反射部分と光線非反射部分の縞模様の認識精度を向上することができるほか、前記照射光を二次元(線状)に調整することにより、例えば、パッチコードやQRコード等を認識することが可能となり、前記の縞模様が有する識別情報よりも多量の情報を認識することが可能となる。
【0060】
図5は、本発明の光学式回転計101の一例の機能構成図である。
【0061】
前記光学式回転計101は、表示部31、操作部33、照射・受光部35、パルス検出部515、カウンタ用メモリ520、制御部530、タイマ540、タイマ用メモリ545、及び基準クロック発信部550から構成される。
【0062】
表示部31及び操作部33の機能及び構成については、前述のとおりである。
【0063】
照射・受光部35は、光源505及びセンサー510から構成される。
【0064】
光源505は、操作部33を介して入力され、制御部530が出力した命令に応じて、光線を照射する。ここで、光源505は、レーザー、LED、電球等いかなる光源でよい。また、例えばLEDや電球等の光線拡散型の光源を採用した場合は、スリット43等の光線拡散抑止手段を有することができる。前記光線拡散抑止手段により、例えばLEDや電球等の光線拡散型の光源を採用した場合でも、レーザーの場合と同様に照射する光束の拡散を抑制することができる。
【0065】
センサー510は、前記光源505から照射され、回転体110(及び反射手段200)で反射して戻ってきた光線を受光し受光信号を出力する。ここで、前記センサー510は、レーザー、可視光、赤外等いかなるセンサーでもよく、光源505の種類に応じて選択することができる。
【0066】
パルス検出部515は、前記センサー510が受光した後出力した受光信号を入力し、パルス信号を出力する。ここで、前記パルス信号は、前記受光信号が回転体110の一回転を一周期とする繰り返し波形であることを利用して、パルス信号を検出し、カウンタ用メモリ520及びタイマ540に出力する。
【0067】
カウンタ用メモリ520は、前記パルス検出部515が検出したパルス信号を入力、カウントし、前記カウントした値(以下、「パルス計数値」という)を一時的に記憶し、制御部530からの命令に従い、前記制御部530に出力する。
【0068】
制御部530は、演算処理を行うCPU(図示せず)及び前記CPUが実行するプログラムを格納するROM(読み込み専用メモリ、図示せず)のほか、一時記憶部535を含んで構成される。これらCPU、ROM及び一時記憶部は、汎用品を用いることができる。一時記憶部535は、カウンタ用メモリ520やタイマ用メモリ545から読み込んだパルス計測値や、後述するタイマ540が基準クロック発信部550からの基準クロック信号をカウントし、前記パルス信号の時間を計時し、計時した時間(以下、「入力パルス時間」という。)を格納する。ここで、制御部530は、入力されたパルス計測値及び入力パルス時間から、回転体110の回転速度を算出するほか、反射手段200が有する識別情報を認識し、算出した回転速度を前記識別情報に関連付けて一時記憶部535に格納する。
【0069】
タイマ540は、入力パルス時間をタイマ用メモリ545に出力する。
【0070】
タイマ用メモリ545は、前記入力パルス時間を一時的に記憶し、制御部530からの命令に従い、前記制御部530に出力する。
【0071】
基準クロック発信部550は、例えば1マイクロ秒間隔等本願発明に係る光学式回転計101が回転体110の回転速度を計測するのに十分な時間分解能を提供するのに必要な基準クロックを生成し、タイマ540に出力する。
【0072】
次に、反射手段200が有する識別情報について、図6を参照して説明する。
【0073】
図6は、本発明の回転速度測定装が有するメモリテーブルの一例を示す図である。
【0074】
反射手段200において、例えば基材にテープを使用した場合、反射テープに形成した光線反射部分と光線非反射部分の組み合わせにより、二進数で表現される情報を提供することができる。例えば、光線反射部分の縞を「1」、光線非反射部分の縞を「0」とし、識別番号を4桁(4ビット)の前記反射テープの識別情報で表示すると、「0000」から「1111」までの16種類の識別番号を作成することができる。前記識別番号のそれぞれに、回転速度の測定値を関連付けて(例えば、識別番号「1」、反射テープ識別情報「0000」、測定値「3000 r/min」)一時記憶部535に記憶し、後刻前記関連付けを有する回転速度を呼び出すことにより、測定箇所と回転速度とを正確に記録することができる。
【0075】
次に、本発明に係る回転速度測定装置における回転速度の計測と識別情報の認識に係る処理手順を、図7及び図8を参照して説明する。
【0076】
図7は、本発明の回転速度測定装置の回転速度計測プロセスを示すフローチャートの一例である。
【0077】
始めに、ステップS710で、測定者が本発明に係る光学式回転計101から、反射手段200を有する回転部110に対し光線を照射すると、制御部530は、受光した反射光の反射・非反射パターンにもとづいて、前述により出力されたパルス計測値(図8に記載する、パルス入力波形から導出した識別情報)及び入力パルス時間(図8のt1及びT2)を、一時記憶部535に入力、格納し、ステップS720に移行する。ここで、前記一時記憶部535には回転体110の複数回転分の測定データ(パルス計測値及びパルス時間)が格納されるが、前記格納される測定データ数は、例えば10回、20回等と設定しておいてもよいし、一時記憶部535の記憶容量に基づき設定したデータ容量としてもよい。
【0078】
ステップS720では、制御部530は、一時記憶部に格納したパルス時間を読み込み、一周期の時間(t3=t1+t2)の逆数から、回転速度を演算する。ここで、前記演算により求めた回転速度は、反射手段200の頭端部が認識される時間(t3)のみを求めて前記時間の逆数から回転速度を算出してもよいし、反射手段200の両端(頭端部と終端部)が認識されるまでの時間(t1)と前記終端部と再度頭端部とが認識されるまでの時間(t2)とを別々に求めて加算し、前記加算した値の逆数を求めることにより回転速度を算出してもよい。前者の場合は、例えば複数回転分の測定データから算出した回転速度の平均を求め、ステップS750に移行してもよい。後者では、ステップS730以降の処理を実行することにより、前者と比較し回転速度の測定精度が向上する。
【0079】
ステップS730では、制御部530は、複数の測定データ中の前記反射手段200の両端(頭端部と終端部)が認識されるまでの時間(t1)の値のばらつきを計算し、所定値1と比較する。前記t1のばらつきが所定値1以上の場合には本処理を終了し、所定値1未満の場合にはステップS740に移行する。ここで、t1のばらつきは、標準偏差の算出等公知の統計的手法により求めてよい。また、所定値1は、統計学的手法により算出した有意水準を示す値でも、例えば基準回転数プラス・マイナス100回転、プラス・マイナス5%等、回転体110の許容回転数の範囲から求めあらかじめ光学式回転計101に記憶させた値でもよい。当該ステップにより、本発明に係る回転速度測定装置は、定格回転する回転体の回転速度のみを記憶することが可能になり、定格回転ではない回転体の回転速度を例えばエラー表示とすることにより、どの測定箇所の回転体が定格回転していないかを記録することが可能になる。
【0080】
ステップS740では、制御部530は、ステップS730で算出したt1のばらつきの値と、所定値2と比較する。前記t1のばらつきが所定値2以上の場合には、ステップS760に移行し、所定値2未満の場合にはステップS750に移行する。ここで、所定値2は、所定値1と同様に任意に決定することができる値であるが、所定値1よりもさらにばらつきが小さくなる値である。
【0081】
ステップS750では、制御部530は、一時記憶部535が記憶したパルス計測値から識別情報を抽出し、識別番号を一時記憶部535に登録し、ステップS770に移行する。ここで、識別情報は、図8の例では、パルス入力波形を反射光の有無により二進数のコード「11 00 01 11 01 11」から頭端部と終端部の「11」を除く「00 01 11 01」であって、識別番号を十進数で表示すれば「29」となる。
【0082】
ステップS760では、制御部530は、t1の値のばらつきを補正する補正値を演算し、t1の値を補正し、ステップS750に移行する。ここで、前記補正値は、複数回測定したt1の値のばらつきの平均等でよい。
【0083】
ステップS770では、前述の補正等によって補正された回転速度を、ステップS750で得られた識別情報に関連付けて一時記憶部535に格納し、終了する。ここで、前記識別情報は、前述のとおり識別番号に変換されるため、例えば後刻測定した回転速度を呼び出す際には、識別情報に代わり便宜上想定場所を示す識別番号に測定した回転速度を関連付けて表示することにより、測定箇所の回転速度を正確に表示することができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施例に記載されたものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の回転速度測定装置の使用の態様の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の回転速度測定装置の使用の態様の一例において、回転部に貼り付けられた反射手段の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の回転速度測定装置の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の回転速度測定装置の概略図の一例における、光源及び受光部の拡大図である。
【図5】本発明の回転速度測定装置の一例の機能構成図である。
【図6】本発明の回転速度測定装が有するメモリテーブルの一例を示す図である。
【図7】本発明の回転速度測定装置の回転速度計測プロセスを示すフローチャートの一例である。
【図8】本発明の回転速度測定装における回転速度の測定原理を示す模式図である。
【符号の説明】
【0086】
31 表示部
33 操作部
35 照射・受光部
43 スリット
101 光学式回転計
110 回転部
200 反射手段
515 パルス検出部
520 カウンタ用メモリ
530 制御部
540 タイマ
545 タイマ用メモリ
550 基準クロック発信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学式回転計と、回転体上に前記光学式回転計から照射される光線を反射する光線反射部分及び反射しない光線非反射部分を備えた反射手段と、を含み、
前記反射手段は、前記光線反射部分及び光線非反射部分の組み合わせにより固有の識別情報を構成する、回転速度測定装置。
【請求項2】
前記反射手段は、前記光線反射部分と前記光線非反射部分とが固有の縞模様を形成し、前記縞模様の形状に基づいて前記固有の識別情報を構成する、請求項1記載の回転速度測定装置。
【請求項3】
前記光学式回転計は、測定した回転速度を、前記識別情報に関連付けて記憶する手段を備える、請求項1又は2に記載の回転速度測定装置。
【請求項4】
前記光学式回転計は、前記光線反射部分と前記光線非反射部分に対して照射した光線の反射光を受光する受光部と、受光した前記反射光に基づいてパルス入力パターンを形成し、形成した前記パルス入力パターンに基づいて前記識別情報を認識する認識部と、を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の回転速度測定装置。
【請求項5】
前記反射手段の回転方向に対する頭端部の前記光線反射部分が、他の光線反射部分とは異なる幅を有する、請求項2から4のいずれか1項に記載の回転速度測定装置。
【請求項6】
前記反射手段の回転方向に対する終端部を示す前記光線反射部分を有する、請求項2から5のいずれか1項に記載の回転速度測定装置。
【請求項7】
前記識別情報が、回転速度測定箇所を特定する情報を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の回転速度測定装置。
【請求項8】
前記光学式回転計は、光源が照射する光線の拡散を抑止する拡散抑止手段をさらに有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の回転速度測定装置。
【請求項9】
前記拡散抑止手段はスリットを含む、請求項8に記載の回転速度測定装置。
【請求項10】
前記制御部が複数の前記反射部の時間幅を順次測定し、測定した一連の前記時間幅のばらつきがあらかじめ入力された値以上の場合には回転速度の測定を行わない、請求項4から9のいずれか1項に記載の回転速度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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