説明

回転運動を直線運動に変える運動機構

【課題】回転出力軸の回転に比例させてがたつくことなく雄ねじ部材を直線移動させることができる回転運動を直線運動に変換する運動機構を提供すること。
【解決手段】回転出力軸12が回転すると、ホルダー14、一対の板ばね18、一対のガイド部材16が回転され、一対のガイド部材16の突出板部1604の先端間1604Aで挟持された雄ねじ部材回転用ピン24を介して雄ねじ部材22が回転出力軸12と一体に回転される。一対のガイド部材16は、雄ねじ部材回転用ピン24が回転出力軸12の軸方向のいかなる位置においても、移動可能にかつ回転出力軸12と一体に回転するように雄ねじ部材回転用ピン24を挟持しており、回転出力軸12と雄ねじ部材22との間にがたつきの問題が生じることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転運動を直線運動に変える運動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、モータなどのアクチュエータの回転出力軸と同軸上に配置された雄ねじ部材を、回転出力軸により回転させつつ直線往復運動させる場合、回転出力軸と雄ねじ部材とを一体回転可能にかつ互いに離間接近する方向に移動可能に結合し、さらに、雄ねじ部材の雄ねじに螺合する雌ねじを有する雌ねじ部材を、アクチュエータのハウジングやこのハウジングを支持する基台側で支持することが行なわれる。
従来、回転出力軸と雄ねじ部材とを一体回転可能にかつ互いに離間接近する方向に移動可能に結合する場合、例えば、回転出力軸に長孔が形成された筒体を固定し、雄ねじ部材の端部をこの筒体の内部に移動可能に挿入し、筒体から突設されたピンを筒体の長孔に該長孔の長手方向に移動可能に挿入することが行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−168097
【特許文献2】特開2008−44088
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来技術では、長孔内でピンが長孔の長手方向に移動できるようにするために、長孔の幅よりもピンの直径を若干小さい寸法で形成しなくてはならない。
そのため、長孔の幅とピンの直径との差異ががたつきとなり、回転出力軸の回転に比例させて雄ねじ部材を例えばμm単位で直線移動させることができない。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、回転出力軸の回転に比例させてがたつくことなく雄ねじ部材を直線移動させることができる回転運動を直線運動に変換する運動機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため本発明の回転運動を直線運動に変換する運動機構は、回転出力軸に取着されたホルダーと、前記回転出力軸の軸線を挟んで互いに対向し前記軸線に対して離間接近する方向に移動可能に前記ホルダーで支持された一対のガイド部材と、前記一対のガイド部材を互いに接近する方向に付勢する付勢部材と、前記回転出力軸を支持するフレームで支持され、前記回転出力軸と同軸上に位置する雌ねじを有する雌ねじ部材と、前記雌ねじに螺合する雄ねじが形成された雄ねじ部材とを有し、前記雄ねじ部材に、該雄ねじ部材の径方向に貫通して雄ねじ部材回転用ピンが設けられ、前記雄ねじ部材から突出する前記雄ねじ部材回転用ピンの両端が前記一対のガイド部材により、前記回転出力軸の軸線方向に移動可能にかつ一対のガイド部材と一体回転可能に挟持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、一対のガイド部材は、雄ねじ部材回転用ピンが回転出力軸の軸方向のいかなる位置においても、移動可能にかつ回転出力軸と一体に回転するように雄ねじ部材回転用ピンを挟持しているので、回転出力軸と雄ねじ部材との間にがたつきの問題が生じることはなく、回転出力軸と同一の位相で雄ねじ部材が回転しつつ直線運動を行なう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】雄ねじ部材が最も没入した状態の運動機構の説明図で(A)は運動機構の断面正面図、(B)は運動機構の断面平面図である。
【図2】雄ねじ部材が最も突出した状態の運動機構の説明図で(A)は運動機構の断面正面図、(B)は運動機構の断面平面図である。
【図3】ホルダーの説明図で、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【図4】板ばねの説明図で、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図5】ガイド部材の説明図で、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【図6】雌ねじに雄ねじ部材が螺合した状態の説明図で、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は右側面図である。
【図7】第1の支持部材の説明図で、(A)は断面正面図、(B)は左側面図、(C)は右側面図である。
【図8】第2の支持部材の説明図で、(A)は断面正面図、(B)は左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。
図1、図2に示すように、回転運動を直線運動に変換する運動機構10は、回転出力軸12と、ホルダー14と、一対のガイド部材16と、付勢部材18と、雌ねじ部材20と、雄ねじ部材22と、雄ねじ部材回転用ピン24とを含んで構成されている。
【0009】
回転出力軸12は例えばモータなどのアクチュエータ26の出力軸である。
【0010】
ホルダー14は回転出力軸12に、回転出力軸12と一体に回転するように回転出力軸12に取着されている。
本実施の形態では、ホルダー14の中心孔1402に回転出力軸12が挿入され、ねじ1404により回転出力軸12を押さえ付けることでホルダー14が回転出力軸12に取着されている。
図3に示すように、ホルダー14には、ねじ1404が螺合するねじ孔1406が形成されると共に、中心孔1402を挟んで対向する一対の板ばね取り付け面1408が設けられ、板ばね取り付け面1408にねじ孔1410が形成されている。
中心孔1402の軸方向においてモータ側に配置される一対の板ばね取り付け面1408の端部間の寸法W1は、アクチュエータ26と離れた側に配置される一対の板ばね取り付け面1408の端部間の寸法W2よりも大きく形成されている。
【0011】
付勢部材18は、本実施の形態では一対の板ばね18で構成されている。
一対の板ばね18はそれぞれ板ばね取り付面1408にねじ1802、ねじ孔1410を介して取着され、回転出力軸12の軸線を挟んで対向している。
そして、一対の板ばね取り付け面1408の端部間の寸法W1と寸法W2との差異により、一対の板ばね18は、回転出力軸12から離れるにつれて次第に互いに接近する方向に傾斜して取着されている。
図4に示すように、板ばね18は細長い矩形状を呈し、長手方向の一方の端部に幅方向に間隔をおいてねじ1802を挿通させるためのねじ挿通孔1804が2つ形成され、また、長手方向に間隔をおいてガイド部材16を取り付けるためのねじ挿通孔1806が2つ形成されている。
【0012】
図5に示すように、一対のガイド部材16は、細長い矩形状の中央板部1602と、中央板部1602の幅方向の両側からそれぞれ起立する突出板部1604とを有し、中央板部1602と両側の突出板部1604の内側に凹部1606が形成され、中央板部1602にはねじ孔1608が形成されている。
一対のガイド部材16は、凹部1606が向かい合うように板ばね18に連結されている。
すなわち、凹部1606と反対側の中央板部1602の面が板ばね18に合わされ、ねじ挿通孔1806に挿通したねじ1610がねじ孔1608に螺合することで、一対のガイド部材16が一対の板ばね18に連結されている。
このように一対の板ばね18に連結された状態で、一対のガイド部材16は、回転出力軸12の軸線を挟んで互いに対向している。
そして、一対のガイド部材16は、一対の板ばね18により、回転出力軸12から離れるにつれて次第に互いに接近する方向に傾斜して取着されている。
そして、ガイド部材16に接触することなく凹部1606に雄ねじ部材22が収容され、雄ねじ部材回転用ピン24の両端が一対のガイド部材16の両側の突出板部1604の先端(先端端面)1604A間で挟持されることで、一対のガイド部材16は、回転出力軸12の軸線方向に移動可能にかつ雄ねじ部材回転用ピン24と一体に回転するように結合されている。
なお、一対のガイド部材16は、回転出力軸12から離れるにつれて次第に互いに接近する方向に傾斜して配置されているので、雄ねじ部材回転用ピン24が回転出力軸12の軸線方向のいかなる位置においても、移動可能にかつ雄ねじ部材回転用ピン24と一体に回転するように雄ねじ部材回転用ピン24を支持している。この場合、雄ねじ部材回転用ピン24が回転出力軸12側に位置する場合には、一対の板ばね18の撓み量は小さいもののばね力は大きく、また、雄ねじ部材回転用ピン24が雌ねじ部材20側に位置する場合には、一対の板ばね18の撓み量は大きいもののばね力は小さいため、雄ねじ部材回転用ピン24が回転出力軸12の軸線方向のいかなる位置においてもほぼ同じ値のばね力で挟持される。なお、本実施の形態では、一対のガイド部材16は、回転出力軸12の軸線を挟んで互いに対向し軸線に対して離間接近する方向に移動可能に板ばね18を介してホルダー14で支持されていることになる。
【0013】
雌ねじ部材20は、回転出力軸12と同軸上に位置する雌ねじ20Aを有し、回転出力軸12を支持するフレームで支持されている。
ここで、回転出力軸12を支持するフレームは、例えば、アクチュエータ26のハウジングであってもよく、または、アクチュエータ26を支持する基台であってもよい。
図6に示すように、雌ねじ20Aは、本実施の形態では、バックラッシュを取り除く与圧式のボールねじであり、市販のボールねじユニットを用いており、ボールねじユニットは、筒部2002と、筒部2002の長手方向の端部に設けられたフランジ2004とを有し、フランジ2004にねじ挿通孔2006が形成されている。
【0014】
図1、図2に示すように、雌ねじ部材20は、第1の支持部材30と、第2の支持部材32を介して、回転出力軸12を支持するフレームで支持されている。
図7に示すように、第1の支持部材30は筒状を呈し、第1の支持部材30には、その軸方向に並べて雌ねじ部材20の取り付け孔3002と、一対の板ばね18および一対のガイド部材16を収容する収容孔3004とが設けられている。
また、第1の支持部材30の孔3002側の端面にねじ孔3006が形成され、収容孔3004側の端面にねじ孔3008が形成されている。
雌ねじ部材20は、筒部2002が取り付け孔3002に挿入され、フランジ2004が第1の支持部材30の孔3002側の端面に当て付けられ、ねじ挿通孔2006に挿通したねじ(不図示)がねじ孔3006に螺合することで第1の支持部材30に取着されている。
図8に示すように、第2の支持部材32は、その中心にホルダー14、一対の板ばね18を収容する孔3202が貫通形成された環板状を呈し、第2の支持部材32には、ねじ孔3008と同軸上に設けられたねじ挿通孔3204や座ぐり孔3206が形成されている。
第2の支持部材32は、ねじ挿通孔3204に挿通したねじがねじ孔3008に螺合することで第1の支持部材30に取着されている。
そして、第2支持部材32は、座ぐり孔3206を介して、たとえば、アクチュエータ26のハウジング、または、アクチュエータ26を支持する基台に取着されている。
【0015】
雄ねじ部材22は、回転出力軸12と同軸上に配置され、雌ねじ20Aに螺合されている。
図6に示すように、雄ねじ部材22は、その長手方向の略全長にわたり雌ねじ20Aに螺合する雄ねじ部22Aを有しており、雄ねじ部材22の先部は、球状に突出形成されている。
雄ねじ部材22の基端に、雄ねじ部材22の長手方向と直交する方向に孔2202が貫通形成されている。
【0016】
雄ねじ部材回転用ピン24は孔2202に圧入され、雄ねじ部材回転用ピン24の両端は、雄ねじ部材22の基端において、雄ねじ部材22の長手方向と直交する方向に突出している。
そして、ガイド部材16に接触することなく凹部1606に雄ねじ部材22が収容され、雄ねじ部材回転用ピン24の両端が一対のガイド部材16の両側の突出板部1604の先端1604A間で、移動可能にかつ雄ねじ部材回転用ピン24と一体に回転するように挟持されている。
【0017】
本実施の形態によれば、回転出力軸12が回転すると、ホルダー14、一対の板ばね18、一対のガイド部材16が回転され、一対のガイド部材16の突出板部1604の先端間1604Aで挟持された雄ねじ部材回転用ピン24を介して雄ねじ部材22が回転出力軸12と一体に回転される。
そして、一対のガイド部材16は、雄ねじ部材回転用ピン24が回転出力軸12の軸方向のいかなる位置においても、移動可能にかつ回転出力軸12と一体に回転するように雄ねじ部材回転用ピン24をほぼ同じ値のばね力で挟持しているので、回転出力軸12と雄ねじ部材22との間にがたつきの問題が生じることはなく、回転出力軸12と同一の位相で雄ねじ部材22が回転しつつ直線運動を行なう。詳細には、回転出力軸12が正転または逆転すると、回転出力軸12と同一の位相で雄ねじ部材22が正逆転しつつ往復直線運動を行なう。したがって、回転出力軸12の回転に比例させて雄ねじ部材22をがたつかせることなく例えばμm単位で直線移動することが可能となる。
また、本実施の形態では、回転出力軸12により回転される一対の板ばね18と一対のガイド部材16は、小型で軽量であり、したがって、回転運動を直線運動に変換する運動機構の小型化、軽量化を図る上で有利となる。
また、本実施の形態では、雌ねじ20Aは、バックラッシュを取り除く与圧式のボールねじであり、したがって、回転出力軸12の回転に比例させて雄ねじ部材22を例えばμm単位で直線移動する場合により有利となり、例えば、マイクロメータヘッドに用いられて好適である。
【符号の説明】
【0018】
10……運動機構、12……回転出力軸、14……ホルダー、16……ガイド部材、18……付勢部材、20……雌ねじ部材、22……雄ねじ部材、24……雄ねじ部材回転用ピン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転出力軸に取着されたホルダーと、
前記回転出力軸の軸線を挟んで互いに対向し前記軸線に対して離間接近する方向に移動可能に前記ホルダーで支持された一対のガイド部材と、
前記一対のガイド部材を互いに接近する方向に付勢する付勢部材と、
前記回転出力軸を支持するフレームで支持され、前記回転出力軸と同軸上に位置する雌ねじを有する雌ねじ部材と、
前記雌ねじに螺合する雄ねじが形成された雄ねじ部材とを有し、
前記雄ねじ部材に、該雄ねじ部材の径方向に貫通して雄ねじ部材回転用ピンが設けられ、
前記雄ねじ部材から突出する前記雄ねじ部材回転用ピンの両端が前記一対のガイド部材により、前記回転出力軸の軸線方向に移動可能にかつ一対のガイド部材と一体回転可能に挟持されている、
回転運動を直線運動に変換する運動機構。
【請求項2】
前記付勢部材は、前記ホルダーに取着され前記回転出力軸の軸線を挟んで対向し前記回転出力軸から離れるにつれて次第に互いに接近する一対の板ばねで構成され、
前記一対のガイド部材は、前記軸線方向に細長い矩形状の中央板部と、中央板部の幅方向の両側からそれぞれ起立する突出板部とを有し、前記中央板部と両側の前記突出板部の内側に凹部が形成され、
前記一対のガイド部材は、前記凹部が向かい合うように前記板ばねに連結され、
前記一対のガイド部材の前記凹部に前記雄ねじ部材が収容され、
前記雄ねじ部材から突出する前記雄ねじ部材回転用ピンの両端の前記一対のガイド部材による挟持は、前記一対のガイド部材の両側の突出板部の先端間で行なわれる、
請求項1記載の回転運動を直線運動に変換する運動機構。
【請求項3】
前記雌ねじはバックラッシュを取り除く与圧式のボールねじである、
請求項1または2記載の回転運動を直線運動に変換する運動機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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