説明

回転電機の密封油供給装置およびその制御方法

【課題】 運転の継続性をより高めた回転電機の密封油供給装置およびその制御方法を提供する
【解決手段】 冷却媒体が封入された回転電機1の軸シール部2に密封油を供給する密封油供給系統3と、密封油供給系統3に設けられた常用密封油ポンプ6およびこれを駆動する第1の電動機7と、前記密封油供給系統3と並列に設けられ非常時に軸シール部2に密封油を供給させる非常用密封油供給系統30と、非常用密封油供給系統30に設けられた非常用密封油ポンプ10およびこれを駆動する第2の電動機11と、第1の電動機7および常用密封油ポンプ6の少なくともいずれかの状態を検出する常用密封油ポンプ状態検出手段と、常用密封油ポンプ状態検出手段からの検出値が入力され、当該常用密封油ポンプ状態検出手段による検出値が予め定めた範囲から外れた場合に第2の電動機を始動させる始動信号を送出する制御手段と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷却媒体を封入した回転電機の軸シール部へ密封油を供給する密封油供給装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内部冷却のための冷却媒体として例えば水素ガスを封入した回転電機では、本体を回転軸が貫通する部分から冷却媒体である水素ガスが大気中に漏洩するのを防止するために、回転電機本体の両端部の軸貫通部にそれぞれ軸シール部を設ける。このような軸シール部には、密封油と呼ばれる圧油を供給し、これにより冷却媒体である水素ガスをシールしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−230062
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような回転電機の密封油供給装置は、冷却媒体である水素ガスの漏洩を防ぐために回転電機の運転停止に関わらず常に運転を継続させる必要がある。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、運転の継続性をより高めた回転電機の密封油供給装置およびその制御方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る回転電機の密封油供給装置は、冷却媒体が封入された回転電機の軸シール部に密封油を供給する密封油供給系統と、前記密封油供給系統に設けられた常用密封油ポンプおよび当該常用密封油ポンプを駆動する第1の電動機と、前記密封油供給系統と並列に設けられ非常時に前記軸シール部に密封油を供給させる非常用密封油供給系統と、前記非常用密封油供給系統に設けられた非常用密封油ポンプおよび当該非常用密封油ポンプを駆動する第2の電動機と、前記第1の電動機および前記常用密封油ポンプの少なくともいずれかの状態を検出する常用密封油ポンプ状態検出手段と、前記常用密封油ポンプ状態検出手段からの検出値が入力され、当該常用密封油ポンプ状態検出手段による検出値が予め定めた範囲から外れた場合に前記第2の電動機を始動させる始動信号を送出する制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0007】
本発明の実施形態に係る回転電機の密封油供給装置の制御方法は、冷却媒体が封入された回転電機の軸シール部に密封油を供給する密封油供給系統と、前記密封油供給系統に設けられた常用密封油ポンプおよび当該常用密封油ポンプを駆動する第1の電動機と、前記密封油供給系統と並列に設けられ非常時に前記軸シール部に密封油を供給させる非常用密封油供給系統と、前記非常用密封油供給系統に設けられた非常用密封油ポンプおよび当該非常用密封油ポンプを駆動する第2の電動機と、を備える回転電機の密封油供給装置の制御方法において、前記第1の電動機および前記常用密封油ポンプの少なくともいずれかの状態を検出し、検出値が予め定めた範囲を外れた場合に前記第2の電動機を始動させて前記非常用密封油供給系統から前記密封油供給系統に前記密封油を供給させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る回転電機の密封油供給装置を示す系統図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る回転電機の密封油供給装置を示す系統図。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る回転電機の密封油供給装置を示す系統図。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る回転電機の密封油供給装置を示す系統図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る回転電機の密封油供給装置を示す概略系統図である。
【0010】
図1において、符号1は回転電機、符号2は回転電機1の内部に封入された冷却媒体である水素ガスを封止する軸シール部であり、回転電機1の本体両端部の軸貫通部近傍に設けられている。本実施形態に係る密封油供給装置100は、軸シール部2へ密封油を供給する配管系である密封油供給系統3を備える。
【0011】
密封油供給系統3の上流部分には、常用密封油ポンプ6が介挿されておりこの常用密封油ポンプ6により密封油が加圧されて軸シール部2に供給される。常用密封油ポンプ6は、常用密封油ポンプ電動機7により駆動され、常用密封油ポンプ電動機7は、図示しない交流電源より給電された交流電動機始動装置8に接続されている。なお、交流電動機始動装置8は、停電などにより図示しない交流電源からの給電が停止した場合にはこの情報を信号として発するような構成となっている。
【0012】
常用の密封油供給系統3の常用密封油ポンプ6の下流には、常用密封油ポンプ6が吐出する密封油の逆流を防止する逆止弁5、および供給される密封油の圧力を調節する差圧調節弁4が設けられている。ここで、差圧調節弁4の弁開度は、回転電機1の回転速度や機内水素ガス圧力等の条件によって自動的に調節される。これにより、軸シール部2に供給される密封油の圧力は、回転電機1の機内水素ガスの圧力より常に所定の値だけ高くなるように調節される。また、常用密封油供給系統3の常用密封油ポンプ6と逆止弁5との間に、常用密封油ポンプ6が吐出する密封油の圧力を検出する圧力検出器13が設けられている。
【0013】
圧力検出器13の検出した圧力信号は、圧力監視装置22に入力されるように構成されている。圧力監視装置22は、許容される圧力の範囲を予め設定することが可能であり、圧力検出器13が検出した圧力値がこの範囲を逸脱した場合に信号を発するように構成されている。
【0014】
回転電機の密封油供給装置100は、回転電機の運転停止に関わらず常に運転される必要があるため、常用の密封油供給系統3の他に非常用密封油供給系統30が並列に設けられている。本実施形態では、非常用密封油供給系統30は常用の密封油供給系統3の常用密封油ポンプ6の下流側の、逆止弁5と差圧調節弁4との間で密封油供給系統3に接続するように構成されている。このように、本実施形態に係る回転電機の密封油供給装置100は、常用の密封油供給系統3のメンテナンスや、何らかの異常が発生した場合には非常用密封油供給系統30から軸シール部2に継続して密封油を供給させるように二重化されている。
【0015】
非常用密封油供給系統30には、常用密封油ポンプ6が停止した場合にバックアップとして運転されるための非常用密封油ポンプ10が設けられるとともに、非常用密封油ポンプ10の下流には、非常用密封油ポンプ10が吐出する密封油の逆流を防止する逆止弁9が設けられる。非常用密封油ポンプ10は、非常用密封油ポンプ電動機11により駆動され、非常用密封油ポンプ電動機11には、交流電源とは別の電源系統である図示しない直流電源より給電された直流電動機始動装置12が接続されている。
【0016】
直流電動機始動装置12は直流電源からの給電を受けるほか、常用密封油ポンプ6の吐出する密封油の圧力が所定の範囲を逸脱した場合に圧力監視装置22から出力される信号が入力されるように構成されるとともに、交流電動機始動装置8が停電などによる交流電源からの給電の停止を検知した場合の信号も入力されるように構成されている。
【0017】
さらに、本実施形態においては、交流電動機始動装置8から常用密封油ポンプ電動機7への電流を検出する変流器14が、常用密封油ポンプ電動機7の電源線に設けられている。変流器14は、常用密封油ポンプ電動機7の状態を検出する手段であり、変流器14からの出力(電流値)は電流監視装置15に入力される。電流監視装置15は、許容される電流の範囲を設定することが可能であり、変流器14が検出した電流値がこの範囲を逸脱した場合に信号を発するように構成され、この信号も直流電動機始動装置12に入力されるように構成されている。
【0018】
以上の構成において、通常運転時には、密封油は、常用密封油供給系統3の常用密封油ポンプ6により昇圧された後差圧調整弁4で圧力を調節されて回転電機1の軸シール部2へ供給され、油膜により機内水素ガスが外部へ漏洩するのを防止している。
【0019】
ここで、停電などにより交流電源からの給電が停止した場合、交流電動機始動装置8が信号を発し、この信号が直流電動機始動装置12に入力される。直流電動機始動装置12は、交流電動機始動装置8からの信号を受けると非常用密封油ポンプ電動機11を起動し、これにより非常用密封油ポンプ10が駆動されて非常用密封油供給系統30から密封油が供給される。
【0020】
このような非常用密封油供給系統30によるバックアップにより、回転電機1の軸シール部2へは密封油が連続的に供給され、回転電機1の機内に封入された水素ガスは外部へ漏洩することなく回転電機1の運転を継続できるようになっている。
【0021】
また、何らかの異常により常用密封油ポンプ6の吐出圧力が低下するなどして予め設定した範囲を逸脱した場合、圧力監視装置22が信号を発し、この信号が直流電動機始動装置12に入力される。直流電動機始動装置12は、圧力監視装置22からの信号を受けると非常用密封油ポンプ電動機11を起動し、これにより非常用密封油ポンプ10が駆動されて非常用密封油供給系統30から密封油が供給される。
【0022】
このように、常用密封油供給系統3における常用密封油ポンプ6からの密封油の吐出圧を圧力監視装置22により監視することで、常用密封油ポンプ6に機械的な異常が生じた場合にも交流電源の停電時と同様に非常用密封油供給系統30によるバックアップを行ない、回転電機1の軸シール部2へ密封油を供給できるようにしている。
【0023】
ただし、常用密封油ポンプ6に機械的な異常が生じた場合などでは、この異常が密封油の吐出圧の変化となって現れるまでには時間を要することもある。このような場合であっても、常用密封油ポンプ6の機械的な異常は、常用密封油ポンプ6からの密封油の吐出圧の変化が生じる前に、常用密封油ポンプ6を駆動する常用密封油ポンプ電動機7の電流値の変化としてまず現れる。
【0024】
本実施形態では、常用密封油ポンプ6を駆動する常用密封油ポンプ電動機7の状態を検出する手段として、電流値の変化を検出する変流器14が設けられている。そして、変流器14が検出した常用密封油ポンプ電動機7への電流値が、電流監視装置15に予め設定した許容できる電流値の範囲を逸脱した場合に、常用密封油ポンプ6、常用密封油ポンプ電動機7あるいは関連系統に異常が発生していると判断して電流監視装置15から直流電動機始動装置12に信号を発信させ、これにより非常用密封油ポンプ10を始動させる。
【0025】
このように、常用密封油ポンプ電動機7の状態を変流器14により検出することにより、本実施形態では、常用密封油供給系統3の異常が常用密封油ポンプ6の吐出圧力が低下する前に非常用密封油ポンプ10を起動することができる。すなわち、本実施形態によれば、機械系の異常などにより常用密封油供給系統3の密封油の圧力が低下する場合であっても、常用密封油供給系統3の密封油の圧力の低下が起こる前にこれを検知して非常用密封油供給系統30を作動させて回転電機1の軸シール部2への密封油の供給を連続的に行なうことが可能となり、回転電機1の運転の継続性を高めることができる。
【0026】
なお、本実施形態において、常用密封油ポンプ6の吐出圧が変化する場合常用密封油ポンプ電動機7の電流値の変化も現れるのが通常であるため、圧力検出器13および圧力監視装置22により常用密封油ポンプ6の吐出圧を監視して非常用密封油供給系統30からのバックアップを行なう構成については省略することも可能であるが、密封油供給装置100信頼性をより高めるためにはこれらの構成を備えることがより好ましい。
【0027】
また、本実施形態においては、非常用密封油供給系統30を常用密封油供給系統3の差圧調節弁4の上流に接続することによって、非常用密封油供給系統30によるバックアップ運転を行なう場合にも常用密封油供給系統3の差圧調節弁4を用いて回転電機1の軸シール部2へ供給される密封油の圧力を調節するような構成としているが、非常用密封油供給系統30に非常用差圧調節弁を設け、常用密封油供給系統3と非常用密封油供給系統30とを完全に並列な系統として構成することも可能である。
【0028】
次に、本発明の第2の実施形態について図2を参照して説明する。図2は、本発明の第2の実施形態に係る回転電機の密封油供給装置を示す概略系統図である。図2において、図1に示した第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0029】
第1の実施形態においては、常用密封油ポンプ電動機7の状態を検出する手段として変流器14を用いるとともに、変流器14の検出した電流値を電流監視装置15で監視する構成としたのに対し、図2で示した第2の実施形態では、常用密封油ポンプ電動機7の状態を検出する手段として電動機コイル温度検出素子16を設けて、この電動機コイル温度検出素子16が検出した温度をコイル温度監視装置17で監視する構成とした点が異なる。
【0030】
すなわち、本実施形態においては、常用密封油ポンプ電動機7の状態を検出する手段として、常用密封油ポンプ電動機7のコイルの温度を検出する電動機コイル温度検出素子16が常用密封油ポンプ電動機7のコイルに設けられている。電動機コイル温度検出素子16からの出力(温度)はコイル温度監視装置17に入力される。コイル温度監視装置17は、許容される電動機コイル温度の範囲を設定することが可能であり、電動機コイル温度検出素子16が検出した温度がこの範囲を逸脱した場合に信号を発するように構成され、この信号が直流電動機始動装置12に入力されるように構成されている。
【0031】
このような構成により、本実施形態では、電動機コイル温度検出素子16が検出した常用密封油ポンプ電動機7のコイル温度が、コイル温度監視装置17に予め設定した許容できるコイル温度の範囲を逸脱した場合に、常用密封油ポンプ6、常用密封油ポンプ電動機7あるいは関連系統に異常が発生していると判断してコイル温度監視装置17から直流電動機始動装置12に信号を発信させ、これにより非常用密封油ポンプ10を始動させる。
【0032】
このように、常用密封油ポンプ電動機7の状態を電動機コイル温度検出素子16により検出することにより、本実施形態では、常用密封油供給系統3の異常が常用密封油ポンプ6の吐出圧力が低下する前に非常用密封油ポンプ10を起動することができる。すなわち、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、機械系の異常などにより常用密封油供給系統3の密封油の圧力が低下する場合であっても、常用密封油供給系統3の密封油の圧力の低下が起こる前にこれを検知して非常用密封油供給系統30を作動させて回転電機1の軸シール部2への密封油の供給を連続的に行なうことが可能となり、回転電機1の運転の継続性を高めることができる。
【0033】
次に、本発明の第3の実施形態について図3を参照して説明する。図3は、本発明の第3の実施形態に係る回転電機の密封油供給装置を示す概略系統図である。図3において、図1に示した第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0034】
第1の実施形態および第2の実施形態においては常用密封油ポンプ電動機7の状態を検出し、この検出値を監視してバックアップ系統である非常用密封油供給系統30への切り替えを行なわせていたが、本実施形態においては、常用密封油ポンプ電動機7および常用密封油ポンプ6の軸系の状態を検出し、この検出値を監視して非常用密封油供給系統30への切り替えを行なう構成としている。
【0035】
すなわち、本実施形態においては、常用密封油ポンプ電動機7および常用密封油ポンプ6の軸系の状態を検出する手段として、軸受温度を検出する軸受温度検出素子18が常用密封油ポンプ電動機7および常用密封油ポンプ6の軸受にそれぞれ設けられている。これらの軸受温度検出素子18からの出力(温度)は、それぞれ軸受温度監視装置19に入力される。軸受温度監視装置19は、許容される軸受温度の範囲をそれぞれ設定することが可能であり、軸受温度検出素子18がそれぞれ検出した温度が設定した範囲を逸脱した場合に信号を発するように構成され、この信号が直流電動機始動装置12に入力されるように構成されている。
【0036】
このような構成により、本実施形態では、軸受温度検出素子18が検出した常用密封油ポンプ電動機7あるいは常用密封油ポンプ6の軸受温度が、軸受温度監視装置19に予め設定した許容できる軸受温度の範囲を逸脱した場合に、常用密封油ポンプ6、常用密封油ポンプ電動機7あるいは関連系統に異常が発生していると判断して軸受温度監視装置19から直流電動機始動装置12に信号を発信させ、これにより非常用密封油ポンプ10を始動させる。
【0037】
このように、常用密封油ポンプ電動機7および常用密封油ポンプ6の状態を軸受温度検出素子18により検出することにより、本実施形態では、常用密封油供給系統3の異常が常用密封油ポンプ6の吐出圧力が低下する前に非常用密封油ポンプ10を起動することができる。すなわち、本実施形態によれば、第1および第2の実施形態と同様に、機械系の異常などにより常用密封油供給系統3の密封油の圧力が低下する場合であっても、常用密封油供給系統3の密封油の圧力の低下が起こる前にこれを検知して非常用密封油供給系統30を作動させて回転電機1の軸シール部2への密封油の供給を連続的に行なうことが可能となり、回転電機1の運転の継続性を高めることができる。
【0038】
なお、本実施形態において、常用密封油ポンプ電動機7および常用密封油ポンプ6の複数の軸受の温度それぞれを軸受温度検出素子18により検出し、これらそれぞれの軸受温度についての許容値を軸受温度監視装置19にて設定し、いずれかが許容値を逸脱した場合に異常が発生したものと判断させるような構成とすることも可能であり、あるいは、各軸受温度検出素子18の検出値の平均値やこれらを演算した代表温度に基づいて軸受温度監視装置19での監視を行なうような構成とすることも可能である。また、複数の軸受の温度をそれぞれ軸受温度検出素子18により検出する代わりに、代表的ないずれか1つの軸受温度を軸受温度検出素子18により検出する構成とすることもできる。
【0039】
次に、本発明の第4の実施形態について図4を参照して説明する。図4は、本発明の第4の実施形態に係る回転電機の密封油供給装置を示す概略系統図である。図4において、図3に示した第3の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0040】
第4の実施形態も、第3の実施形態と同様に、常用密封油ポンプ電動機7および常用密封油ポンプ6の軸系の状態を検出し、この検出値を監視して非常用密封油供給系統30への切り替えを行なう構成としている。第3の実施形態においては、常用密封油ポンプ電動機7および常用密封油ポンプ6の各軸受の軸受温度を検出したのに対して、本実施形態では、より直接的に各軸受の振動を検出することを特徴としたものである。
【0041】
すなわち、本実施形態においては、常用密封油ポンプ電動機7および常用密封油ポンプ6の軸系の状態を検出する手段として、軸受の振動を検出する軸受振動検出素子20が常用密封油ポンプ電動機7および常用密封油ポンプ6の軸受にそれぞれ設けられている。これらの軸受振動検出素子20からの出力(振動値)は、それぞれ軸受振動監視装置21に入力される。軸受振動監視装置21は、許容される軸受振動値の範囲をそれぞれ設定することが可能であり、軸受振動検出素子18がそれぞれ検出した振動値が設定した範囲を逸脱した場合に信号を発するように構成され、この信号が直流電動機始動装置12に入力されるように構成されている。
【0042】
このような構成により、本実施形態では、軸受振動検出素子20が検出した常用密封油ポンプ電動機7あるいは常用密封油ポンプ6の軸受の振動値が、軸受温度監視装置19に予め設定した許容できる振動値の範囲を逸脱した場合に、常用密封油ポンプ6、常用密封油ポンプ電動機7あるいは関連系統に異常が発生していると判断して軸受振動監視装置21から直流電動機始動装置12に信号を発信させ、これにより非常用密封油ポンプ10を始動させる。
【0043】
このように、常用密封油ポンプ電動機7および常用密封油ポンプ6の状態を軸受振動検出素子20により検出することにより、本実施形態では、常用密封油供給系統3の異常が常用密封油ポンプ6の吐出圧力が低下する前に非常用密封油ポンプ10を起動することができる。すなわち、本実施形態によれば、第1乃至第3の実施形態と同様に、機械系の異常などにより常用密封油供給系統3の密封油の圧力が低下する場合であっても、常用密封油供給系統3の密封油の圧力の低下が起こる前にこれを検知して非常用密封油供給系統30を作動させて回転電機1の軸シール部2への密封油の供給を連続的に行なうことが可能となり、回転電機1の運転の継続性を高めることができる。
【0044】
なお、本実施形態において、常用密封油ポンプ電動機7および常用密封油ポンプ6の複数の軸受の振動それぞれを軸受振動検出素子20により検出し、これらそれぞれの軸受温度についての許容値を軸受振動監視装置21にて設定し、いずれかが許容値を逸脱した場合に異常が発生したものと判断させるような構成とすることも可能であり、あるいは、各軸受振動検出素子20の振動値の平均値やこれらを演算した値に基づいて軸受振動監視装置19での監視を行なうような構成とすることも可能である。また、複数の軸受の振動をそれぞれ軸受振動検出素子20により検出する代わりに、代表的ないずれか1つの軸受振動を軸受振動検出素子20により検出する構成とすることもできる。
【0045】
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。すなわち、各実施形態に記載したとおり、常用密封油供給系統3の常用密封油ポンプ6から吐出される密封油の圧力が異常となることを、常用密封油ポンプ6および常用密封油ポンプ電動機7の少なくともいずれかの状態(例えば機械的あるいは電気的な特性など)を直接に検出することで、常用密封油供給系統3の異常を事前にとらえて非常用密封油供給系統30に切り替えるように構成することが可能である。また、第1乃至第4の各実施形態を適宜組み合わせた構成とすることにより、より信頼性の高いシステムとすることも可能である。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1…回転電機、2…軸シール部、3…常用密封油供給系統、4…差圧調節弁、5,9…逆止弁、6…常用密封油ポンプ、7…常用密封油ポンプ電動機、8…交流電動機始動装置、10…非常用密封油ポンプ、11…非常用密封油ポンプ電動機、12…直流電動機始動装置、13…圧力検出器、14…変流器、15…電流監視装置、16…電動機コイル温度検出素子、17…コイル温度監視装置、18…軸受温度検出素子、19…軸受温度監視装置、20…軸受振動検出素子、21…軸受振動監視装置、22…圧力監視装置、30…非常用密封油供給系統、100…密封油供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却媒体が封入された回転電機の軸シール部に密封油を供給する密封油供給系統と、
前記密封油供給系統に設けられた常用密封油ポンプおよび当該常用密封油ポンプを駆動する第1の電動機と、
前記密封油供給系統と並列に設けられ非常時に前記軸シール部に密封油を供給させる非常用密封油供給系統と、
前記非常用密封油供給系統に設けられた非常用密封油ポンプおよび当該非常用密封油ポンプを駆動する第2の電動機と、
前記第1の電動機および前記常用密封油ポンプの少なくともいずれかの状態を検出する常用密封油ポンプ状態検出手段と、
前記常用密封油ポンプ状態検出手段からの検出値が入力され、当該常用密封油ポンプ状態検出手段による検出値が予め定めた範囲から外れた場合に前記第2の電動機を始動させる始動信号を送出する制御手段と、
を具備することを特徴とする回転電機の密封油供給装置。
【請求項2】
前記非常用密封油供給系統は、前記常用密封油ポンプ下流部にて前記密封油供給系統に接続してなることを特徴とする請求項1記載の回転電機の密封油供給装置。
【請求項3】
前記常用密封油ポンプ状態検出手段は、前記第1の電動機への電流値を検出する電流検出手段であることを特徴とする請求項1あるいは2記載の回転電機の密封油供給装置。
【請求項4】
前記常用密封油ポンプ状態検出手段は、前記第1の電動機のコイル温度を検出する電動機コイル温度検出手段であることを特徴とする請求項1あるいは2記載の回転電機の密封油供給装置。
【請求項5】
前記常用密封油ポンプ状態検出手段は、前記第1の電動機および前記常用密封油ポンプの少なくともいずれか1つの軸受温度を検出する軸受温度検出手段であることを特徴とする請求項1あるいは2記載の回転電機の密封油供給装置。
【請求項6】
前記常用密封油ポンプ状態検出手段は、前記第1の電動機および前記常用密封油ポンプの少なくともいずれか1つの軸受振動を検出する軸受振動検出手段であることを特徴とする請求項1あるいは2記載の回転電機の密封油供給装置。
【請求項7】
冷却媒体が封入された回転電機の軸シール部に密封油を供給する密封油供給系統と、前記密封油供給系統に設けられた常用密封油ポンプおよび当該常用密封油ポンプを駆動する第1の電動機と、前記密封油供給系統と並列に設けられ非常時に前記軸シール部に密封油を供給させる非常用密封油供給系統と、前記非常用密封油供給系統に設けられた非常用密封油ポンプおよび当該非常用密封油ポンプを駆動する第2の電動機と、を備える回転電機の密封油供給装置の制御方法において、
前記第1の電動機および前記常用密封油ポンプの少なくともいずれかの状態を検出し、検出値が予め定めた範囲を外れた場合に前記第2の電動機を始動させて前記非常用密封油供給系統から前記密封油供給系統に前記密封油を供給させることを特徴とする回転電機の密封油供給装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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