説明

回転電機

【課題】外周部鉄心と、ひとつずつ別々に作成されたティース部鉄心からなる分割鉄心構造を用いた場合においても、外周部鉄心とティース部鉄心との結合部に大きな歪みが生じることがない固定子鉄心、およびそれを備えるモータを提供する。
【解決手段】ティースごとに分割された分割コア方式のモータにおいて、外周部鉄心を無方向性電磁鋼板で形成し、ティース部鉄心を方向性電磁鋼板で構成する。外周部鉄心とティース部鉄心は、それぞれ中央部と端部で異なる形状をしており、端部にのみ鳩尾形のほぞを設けている。また、隣接するティース先端部には、ティース間部材を付加している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、ティース部鉄心と外周部鉄心とに分割された構造の固定子鉄心を備えるモータが提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
この文献では、ティース部鉄心をひとつずつ別々に作成したものを、外周部鉄心の内側に連結しており、その連結のために鳩尾形のほぞが用いられている。また、ティース部鉄心に径方向に磁化容易方向が向くように方向性電磁鋼板を使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−190038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のものには、ティース部鉄心と外周部鉄心との連結に鳩尾形のほぞを用いているため、ほぞを連結後にほぞ周辺部に大きな歪みが生じ、その歪みが生じた鉄心部分の磁気特性が悪化するという課題があった。また、隣接するティース先端部同士が直接突き当たっているため、漏れ磁束が生じ、モータの発生トルクが多少減少するという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、外周部鉄心と、ひとつずつ別々に作成されたティース部鉄心からなる分割鉄心構造を用いた場合においても、外周部鉄心とティース部鉄心との結合部に大きな歪みが生じにくい回転電機を提供することを第一の目的とする。
また、ティース先端部において、漏れ磁束を減少させ、回転電機の発生トルクの減少を抑えることができる回転電機を提供することを第2の目的とする。
さらに、回転電機の巻線で発生した熱を、効果的に負荷側ブラケットに放熱することができる回転電機を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、ブラケットに回転自在に保持されたシャフトと、前記シャフトに設けられ当該シャフトと共に回転する回転子と、固定子鉄心と当該固定子鉄心に装着されたコイルとを有し前記ブラケットに対して固定された固定子と、を備えた回転電機であって、前記固定子鉄心が、環状の外周部鉄心と、接合面において前記外周部鉄心と接触し、当該外周部鉄心内に放射状に配置されたティース部鉄心と、を含み、前記接合面における前記外周部鉄心及び前記ティース部鉄心の形状が、前記シャフトの軸方向における中央部と端部で異なっていることを特徴とする回転電機が適用される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外周部鉄心と、ひとつずつ別々に作成されたティース部鉄心からなる分割鉄心構造を用いた場合においても、外周部鉄心とティース部鉄心との結合部に大きな歪みが生じにくい回転電機を提供することができる。
また、ティース先端部において、漏れ磁束を減少させ、回転電機の発生トルクの減少を抑えることができる。
さらに、回転電機の巻線で発生した熱を、効果的に負荷側ブラケットに放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のモータの縦断面図
【図2】本発明のティース部鉄心の斜視図
【図3】本発明の固定子鉄心のコア中央部での横断面図
【図4】本発明の固定子鉄心のコア端部での横断面図
【図5】本発明のコア中央部での外周部鉄心
【図6】本発明のコア中央部でのティース部鉄心
【図7】本発明のコア端部での外周部鉄心
【図8】本発明のコア端部でのティース部鉄心
【図9】本発明のティース部鉄心先端部の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明のモータの縦断面図である。図2は、本発明のティース部鉄心の斜視図である。図3は、本発明の固定子鉄心のコア中央部での横断面図であり、図4は固定子鉄心のコア端部での横断面図である。図5は、本発明のコア中央部での外周部鉄心であり、図6は、コア中央部でのティース部鉄心である。図7は、本発明のコア端部での外周部鉄心であり、図8は、コア端部でのティース部鉄心である。図9は、本発明のティース部鉄心先端部の拡大図である。
【0011】
図1から図9において、本発明の固定子鉄心10は、外周部鉄心11とティース部鉄心12を備える。外周部鉄心11とティース部鉄心12は、薄板状の電磁鋼板を複数枚積層して形成している。このように必要な枚数だけ積層し、かしめ、接着、溶接等により、バラバラにならないように固定する。外周部鉄心には、無方向電磁鋼板の積層コアを用いており、ティース部鉄心には、方向性電磁鋼板の積層コアを用いている。その際、方向性電磁鋼板の磁化容易方向は、ティース部鉄心12の長手方向に合わせている。なお、本明細書においては、鉄心のことをコアとも称している。
【0012】
通常固定子鉄心の形状は、すべて同じ形状のコアの積層にて形成するが、本実施の形態では、シャフト23の軸方向における中央部(コア中央部)と端部(コア端部)とで、外周部鉄心11、ティース部鉄心12ともに異なる形状としている。即ち、コア中央部においては、ティース部鉄心12と外周部鉄心11の接合面は、単純な面での接触となっているが、コア端部では、ティース部鉄心12と外周部鉄心11の接合面は、ほぞでの接合となっている。
【0013】
上述したように形成した、ティース部鉄心12に別途空心状で巻装した空心のコイル17を装着した後、外周部鉄心11の内側に放射状に順に装着していく。その装着の際に、コア端部に設けたほぞがかみ合うように装着させ、コア中央部においては、ティース部鉄心12と外周部鉄心11は単純な面での接触となるようにしている。隣接するティース部鉄心12の先端部は、若干の隙間が出来るようにしている。
【0014】
すべてのテイース部鉄心12を装着し終わった後、ティース先端部(ティース部鉄心12の径方向内側の先端)にティース間部材14を装着していく。このティース間部材14は、コイル17の下部に配置し、前述のティース先端部の若干の隙間にぴったりと嵌合するようにしてある。ティース間部材14の材質としては、非磁性でかつ絶縁物、さらに高熱伝導性の材料が望ましい。そのような材料の例としては、アルミナや窒化アルミニウムなどが挙げられる。
すべてのティース間部材14を装着した後、固定子全体をモールド樹脂によりモールドする。その際、ティース間部材14も空心コイル17と一緒にモールドする。
【0015】
このようにして、構成された固定子鉄心10をフレーム30の内部に装着する。シャフト23と回転子コア22(回転子鉄心の一例)と永久磁石21を有する回転子を上記の固定子鉄心10の内部に配置し、軸受33を装着された、負荷側ブラケット31及び反負荷側ブラケット32により支持して回転電機の一例であるモータが構成される。
【0016】
ここで、ティース部鉄心12の磁化容易方向について詳しく説明する。上記のように、ティース部鉄心12を材料である方向性電磁鋼板から打ち抜く際に、その磁化容易方向16をティースの長手方向に合わせていたため、外周部鉄心11内に配置した後は、図3、図4に示すようにティースの径方向に磁化容易方向が向いている。ティース内に流れる磁束の方向は、モータの回転状態に関わらず、ティースのほぼ径方向になるため、磁化容易方向が径方向に合わせてあることから、方向性電磁鋼板の一方向にのみ磁気特性が優れるという長所を最大限に生かせていることになる。ここで、磁気特性が優れるとは、磁束密度が高く、かつ鉄損が小さいという意味である。従って、ティースの磁束密度を高くすることができるため、モータのトルクを大きくすることができる。また、鉄損を小さく抑えることができるため、モータの発熱を低く抑えることができる。
【0017】
次に、ほぞについて説明する。本実施形態の固定子鉄心10においては、ほぞの有る箇所は、コア端部のみとしている。その理由は、ほぞによる締結は、ほぞの周囲に歪みが生じ、この歪みにより、コアの磁気特性が悪化するため、なるべく歪みを少なくするために、ほぞの有る箇所をコア端部のみとしている。コア中央部は、ほぞが無く、外周部鉄心との接合面は単純な面での接触となっているため、歪みが生じなくてコアの磁気特性を悪化させることがない。なお、ティース部鉄心のコア中央部とコア端部は、上述のかしめ、接着、溶接等により、バラバラにならないように固定されているため、コア中央部が脱落することはない。さらに、固定子全体をモールド樹脂によりモールドしているため、機械的な強度には問題がない。
【0018】
次にティース間部材14について詳しく説明する。ティース間部材14は、隣接するティース先端部の隙間を均等にするために装着している。ティース先端部の隙間の不均一はコギングトルクの要因となるため、隙間を均等にすることは非常に重要である。次に、ティース間部材14の長さについて説明する。ティース間部材14の長さは、固定子鉄心10の積層厚と同じ長さで十分であるが、本実施形態のティース間部材の長さは、固定子鉄心10の積層厚よりも長くしている。具体的には、ブラケットの一例である負荷側ブラケット31の方に延長しており、負荷側ブラケット31に接触するようにしている。ティース間部材14を負荷側ブラケット31と接触させる理由は、放熱性能を向上させるためである。即ち、コイル17で発生した熱は、コイル17の下部(コイルの径方向内側)に密着して配置したティース間部材14に伝達し、さらに、ティース間部材14から負荷側ブラケット31に伝達する。モータは負荷側ブラケット31にてモータ取り付け板等に取り付けられているため、負荷側ブラケット31に伝達した熱は、モータ取り付け板を介して、外部に放熱される。以上のように、ティース間部材14に、非磁性でかつ絶縁物、さらに高熱伝導性の材料を用いているため、コイル17で発生した熱を効果的に外部に放熱することができ、コイル17の温度の上昇を抑えることができる。
【0019】
なお、隣接するティース先端部に隙間を設ける理由は、漏れ磁束を少なくするためである。隣接するティース先端部同士が密着していると、ティース先端部の漏れ磁束が多くなり、発生するトルクが減少するためである。本発明では、ティース先端部に若干の隙間を設けて、前述の非磁性材のティース間部材を隙間が均等になるように装着しているため、コギングトルクを低く抑えると同時に、漏れ磁束も少なくすることができる。
【0020】
以上に述べたように、本発明の実施形態によれば、ティース部鉄心と外周部鉄心からなる固定子鉄心を用いたので、ティース部鉄心の外側から巻線を装着できるため、巻線占積率を非常に高くすることができ、一体形鉄心を用いる方式と比べるとモータ特性を格段に向上させることができる。また、ティース部鉄心と外周部鉄心からなる分割構造の固定子鉄心を用いたため、ティース部鉄心に、磁気特性が無方向性電磁鋼板に比べ格段に優れた方向性電磁鋼板を適用でき、鉄心の磁気特性を大幅に向上させることができることから、モータの性能を大幅に向上させることができる。ティース部鉄心と外周部鉄心との締結には、コア端部にのみ設けたほぞに締結しているので、歪みによる磁気特性の低下も抑えることもできる。具体的には、磁束密度が向上することによりモータの発生トルクが大きくなり、かつ鉄損特性が向上することにより鉄損が低減し、モータの発熱を小さくすることができる。また、ティース先端部に装着したティース間部材に、隣接するティース先端部の隙間を均等にすることができるため、コギングトルクを低く抑えることができると同時に、漏れ磁束も少なくすることができる。さらに、ティース間部材を負荷側ブラケットに接触するようにしているため、コイルで発生した熱を負荷側ブラケットと介して外部に効果的に放熱することができるので、コイルの温度を低く抑えることができる。従って、モータの温度を低く抑えることができる。
【0021】
以上、本発明の実施形態について説明した。ただし、いわゆる当業者であればこの実施形態から適宜変更が可能であることは言うまでも無く、このような変更が施された場合でも、本発明の技術的範囲に含まれることも付言しておく。
たとえば、図1〜9においてほぞ形状として鳩尾形のほぞを示しているが、本発明のほぞは鳩尾形に限定されるものではなく、三角形、四角形などの角形およびその他の形状でも同様の働きをすることは勿論である。
【符号の説明】
【0022】
10 固定子鉄心
11 外周部鉄心
12 ティース部鉄心
13 ほぞ
14 ティース間部材
15 モールド樹脂
16 磁化容易方向
17 コイル
20 回転子
21 永久磁石
22 回転子コア
23 シャフト
30 フレーム
31 負荷側ブラケット
32 反負荷側ブラケット
33 軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラケットに回転自在に保持されたシャフトと、
前記シャフトに設けられ当該シャフトと共に回転する回転子と、
固定子鉄心と当該固定子鉄心に装着されたコイルとを有し前記ブラケットに対して固定された固定子と、
を備えた回転電機であって、
前記固定子鉄心が、
環状の外周部鉄心と、
接合面において前記外周部鉄心と接触し、当該外周部鉄心内に放射状に配置されたティース部鉄心と、
を含み、
前記接合面における前記外周部鉄心及び前記ティース部鉄心の形状が、前記シャフトの軸方向における中央部と端部で異なっている
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記外周部鉄心と前記ティース部鉄心は、
前記中央部において、断面円弧状の面で接触し、
前記端部において、ほぞで結合されている
ことを特徴とする請求項1記載の回転電機。
【請求項3】
前記ティース部鉄心が、径方向に磁化容易方向が向くように配向された方向性電磁鋼板で形成された
ことを特徴とする請求項1または2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記ティース部鉄心の径方向内側の先端をティース先端部としたとき、
隣接する2つの前記ティース先端部の間には、ティース間部材が装着されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記ティース間部材が、前記ブラケットと接している
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項6】
前記ティース間部材が、前記コイルの径方向内側と接している
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−17267(P2013−17267A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146984(P2011−146984)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】