回転電機
【課題】固定子巻線の相間における共振を低減させて、最大相間電圧を小さくし、絶縁のために必要な相間距離を短くし得るようにした回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機1は、周方向に複数対の磁極を有する回転子14と、周方向に複数のスロット31を有する固定子鉄心30、及び、スロット31に挿入されて固定子鉄心30に巻装された複数の相巻線41よりなる固定子巻線40を有する固定子20と、を備える。固定子鉄心30は、同一相の相巻線41が収容される同相スロットを前記磁極ごとに周方向に連続してn(n=2)個ずつ有し、各相巻線41は、延伸方向一端から他端までを2n個(4個)に分割されて、延伸方向一端側から順に配置された第1部分巻線a、第2部分巻線b、第3部分巻線c、第4部分巻線dにより構成され、第1部分巻線aと第4部分巻線dが固定子鉄心30の異なる同相スロットに収容されている。
【解決手段】回転電機1は、周方向に複数対の磁極を有する回転子14と、周方向に複数のスロット31を有する固定子鉄心30、及び、スロット31に挿入されて固定子鉄心30に巻装された複数の相巻線41よりなる固定子巻線40を有する固定子20と、を備える。固定子鉄心30は、同一相の相巻線41が収容される同相スロットを前記磁極ごとに周方向に連続してn(n=2)個ずつ有し、各相巻線41は、延伸方向一端から他端までを2n個(4個)に分割されて、延伸方向一端側から順に配置された第1部分巻線a、第2部分巻線b、第3部分巻線c、第4部分巻線dにより構成され、第1部分巻線aと第4部分巻線dが固定子鉄心30の異なる同相スロットに収容されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用の電動機や発電機として使用される回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回転電機として、周方向に配列された複数対の磁極を有する回転子と、周方向に配列された複数のスロットを有し前記回転子と径方向に対向配置された固定子鉄心、及び、前記スロットに挿入されて前記固定子鉄心に巻装された複数の相巻線よりなる固定子巻線を有する固定子と、を備えた回転電機が知られている。このような回転電機においては、高出力化の要請から、固定子鉄心は、同一相の相巻線が収容される同相スロットを磁極ごとに周方向に連続して複数個ずつ有するように構成されている。
【0003】
そして、特許文献1には、各相2倍スロット(同相スロットが2個の場合)の固定子において波巻きにて巻装された三相の固定子巻線が開示されている。この固定子巻線を構成する各相巻線(U相、V相、W相)は、図19(a)に示すように、延伸方向一端側の出力端子から他端側の中性点までを4個に分割されて、出力端子側から順に配置された第1〜第4部分巻線(a)〜(d)により構成されている。この場合の各相巻線は、図19(b)に示すように、第1部分巻線(a)と第4部分巻線(d)が同じ同相スロットU1に収容され、第2部分巻線(b)と第3部分巻線(c)が同じ同相スロットU2に収容されるように接続されている。なお、図19(b)には、代表としてU相の2個の同相スロットU1、U2が示されている。
【0004】
また、特許文献2には、各相3倍スロット(同相スロットが3個の場合)で各スロットに固定子巻線の導体が径方向に6層存在する固定子において、重ね巻きと波巻きを混合した巻線方式について開示されており、内周側の4層を重ね巻きでスロットを充填した後、外周側の2層を波巻きにて充填している。この場合には、各相巻線の第1部分巻線と第6部分巻線が同じ同相スロットに収容されるように接続されることになる。
【0005】
このように最先端の部分巻線と最後端の部分巻線が同じ同相スロットに収容される理由として、コイルエンドが高くなることを防ぐこと、コイルエンド上を径方向に横切る渡り線の形状を出来るだけ統一し造り易くすることが挙げられる。
【0006】
なお、コイルエンドを出来るだけ低く抑えるためには、各相出力線と中性点の位置を固定子鉄心の外径側に揃えることが有効であり、これを達成するように渡り線を配置すると、コイルエンド上を径方向に横切る渡り線の本数は偶数本に限られる。各相2倍スロットの回転電機の場合には0本又は各相2本の計6本となる。
【0007】
コイルエンド上を横切る渡り線の本数が0本の場合、各部分巻線のスロット挿入位置に関わらず、コイルエンド上で巻線は6重に重なる。また、渡り線の形状パターンも9種類で同じである。ここで図20(a)には、第1部分巻線と第4部分巻線が同一スロットに挿入される場合の、図20(b)には、第1部分巻線と第2部分巻線が同一スロットに挿入される場合の渡り線の重なりをそれぞれ示した。各図で、スロットよりも内径側に渡り線を示すが、実際にはこの渡り線は内周側→コイルエンド上→内周側の経路で内径側を避ける様にスロット間をつないでいる。この時、第1部分巻線と第3部分巻線が同一スロットに挿入されることは、コイルエンド上を横切る渡り線が0本である限り有り得ない。
【0008】
一方、コイルエンド上を横切る渡り線の本数が計6本の場合、第1部分巻線と第2部分巻線および第3部分巻線と第4部分巻線がそれぞれ同じスロットに挿入される場合は、図21(c)に示すように、コイルエンド上で巻線は6重に重なり、渡り線の形状パターンが8種類となる。また、第1部分巻線と第3部分巻線および第2部分巻線と第4部分巻線がそれぞれ同じスロットに挿入される場合は、図21(b)に示すように、コイルエンド上での巻線の重なりは4重であり、渡り線の形状パターンは5種類となる。また、第1部分巻線と第4部分巻線および第2部分巻線と第3部分巻線がそれぞれ同じスロットに挿入される場合は、図21(a)に示すように、コイルエンド上での巻線の重なりは4重であり、渡り線の形状パターンは4種類となる。
【0009】
従って、波巻きにおいて、最もコイルエンドが低く、造り易いのは第1部分巻線と第4部分巻線を同じスロットに挿入する構成であり、各相2倍スロットの回転電機では多くの場合この方式が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−69729号公報
【特許文献2】特開2004−64914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、回転電機の固定子巻線には、電動機として作動させる場合に各相出力端子間に図22に示すような最大電圧V0なる方形波の電圧が印加されるが、実際に固定子巻線の相間に発生する最大の電圧は、図23に示す様にV0を超える。図24は、固定子巻線における、入力電圧に対する出力電圧の増幅率を周波数に対してプロットした例であるが、印加された方形波の高周波成分に対し、固定子巻線が共振周波数を持つことが電圧増幅の原因である。
【0012】
このように最大相間電圧が大きくなると、相間の電流短絡を防ぐために固定子巻線の被膜を厚くする等相間距離を広げ、絶縁性能を向上させる必要性が生じる。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、固定子巻線の相間における共振を低減させて、最大相間電圧を小さくし、絶縁のために必要な相間距離を短くし得るようにした回転電機を提供することを解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するためになされた第一の発明は、周方向に配列された複数対の磁極を有する回転子(14)と、周方向に配列された複数のスロット(31)を有し前記回転子(14)と径方向に対向配置された固定子鉄心(30)、及び、前記スロット(31)に挿入されて前記固定子鉄心(30)に巻装された複数の相巻線(41)よりなる固定子巻線(40)を有する固定子(20)と、を備えた回転電機において、前記固定子鉄心(30)は、同一相の前記相巻線(41)が収容される同相スロット(U1,U2)を前記磁極ごとに周方向に連続してn(nは2以上の自然数)個ずつ有し、各前記相巻線(41)は、延伸方向一端から他端までを2n個に分割されて、前記延伸方向一端側から順に配置された第1部分巻線(a)、第2部分巻線(b)、・・・、第2n部分巻線(d)により構成され、前記第1部分巻線(a)と前記第2n部分巻線(d)が前記固定子鉄心(30)の異なる前記同相スロット(U1,U2)に収容されていることを特徴とする。
【0015】
第一の発明によれば、各相巻線は、延伸方向一端から他端までを2n個に分割されて、延伸方向一端側から順に配置された第1部分巻線、第2部分巻線、・・・、第2n部分巻線により構成され、第1部分巻線と第2n部分巻線が固定子鉄心の異なる同相スロットに収容されている。そのため、負の相互インダクタンスによるコイルインダクタンスの低減を抑えることができるので、共振周波数が低くなり且つ共振ピークが低くなる。これにより、固定子巻線の相間における共振を低減させることができる。その結果、最大相間電圧は小さくなり、絶縁のために必要な相間距離を短くすることができる。
【0016】
なお、相間電圧に影響を与える固定子巻線の共振周波数fnは、コイルインダクタンスをL、静電容量をCとした場合に、下記の式1により求められる。
【0017】
fn=1/2π√LC ………式1
ここで、共振要素としてのコイルインダクタンスLは、単独のコイルにより発生する自己インダクタンスと、コイルの結合により発生する相互インダクタンスとで決まる。また、静電容量Cは、主に固定子巻線と固定子鉄心との間に発生する対地容量で決まる。本発明では、同相スロットに収容される各相巻線の部分巻線の収容位置を上記のように変更することで、互いに影響し合う負の相互インダクタンスを0に近づけることができる。これにより、共振周波数fnが低くなり且つ共振ピークが低くなるように、共振特性を変えることができる。
【0018】
また、上記課題を解決するためになされた第二の発明は、周方向に配列された複数対の磁極を有する回転子(14)と、周方向に配列された複数のスロット(31)を有し前記回転子(14)と径方向に対向配置された固定子鉄心(30)、及び、前記スロット(31)に挿入されて前記固定子鉄心(30)に巻装された複数の相巻線(41)よりなる固定子巻線(40)を有する固定子(20)と、を備えた回転電機において、前記固定子鉄心(30)は、同一相の前記相巻線(41)が収容される同相スロット(U1〜U4)を前記磁極ごとに周方向に連続して2k(kは2以上の自然数)個ずつ有し、前記固定子巻線(40)は、延伸方向一端から他端までにおいてk列に並んだ第1〜第k並列巻線(42−1,42−2)よりなり、前記第1〜第k並列巻線(42−1,42−2)を構成する各前記相巻線(41)は、それぞれ延伸方向一端から他端までを2分割されて、それぞれの分割巻線が第1〜第2kの各前記同相スロット(U1〜U4)に独立して収容されていることを特徴とする。
【0019】
第二の発明によれば、第1〜第k並列巻線の延伸方向一端から他端までを2分割された前半と後半の分割巻線が隔離(別の同相スロットに配置)されることとなり、前半と後半の分割巻線の磁気結合が比較的弱くなるため、負の相互インダクタンスによるコイルインダクタンスの低減を抑えることができる。その結果、各分割巻線間の磁気結合を弱め、負の相互インダクタンスによるコイルインダクタンスの低減を抑えることができる。
【0020】
なお、相間電圧に影響を与える固定子巻線の共振周波数fnは、第一の発明の場合と同様に、上記の式1により求められる。第二の発明の場合にも、同相スロットに収容される各相巻線の部分巻線の収容位置を上記のように変更することで、互いに影響し合う負の相互インダクタンスを0に近づけることができる。これにより、共振周波数fnが低くなり且つ共振ピークが低くなるように、共振特性を変えることができる。これにより、固定子巻線の相間における共振を低減させることができるため、最大相間電圧は小さくなり、絶縁のために必要な相間距離を短くすることができる。
【0021】
また、第二の発明によれば、同相内において、電気角が60°/kずれた巻線が形成されることにより、起磁力分布が変化し、合計起磁力の変動幅が小さくなるため、磁気騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態1に係る回転電機の軸方向断面図である。
【図2】実施形態1に係る固定子の全体斜視図である。
【図3】実施形態1において固定子鉄心のスロットに導体セグメントを挿入する状態を示す説明図である。
【図4】実施形態1における各相巻線の巻線方式を示す説明図であって、(a)は斜め上方から見た斜視図であり、(b)は軸方向から見た平面図であり、(c)は周方向に展開した展開図である。
【図5】(a)は実施形態1に係る固定子巻線を構成する各相巻線の結線図であり、(b)は実施形態1に係る固定子鉄心のU相の2個の同相スロット内に収容されたU相部分巻線の収容位置を示す模式図である。
【図6】パッシェンの法則により示される部分放電開始電圧と大気圧および導体間距離との関係を示すグラフである。
【図7】実施形態1(本発明)及び従来1の周波数とゲインとの関係を示すグラフである。
【図8】(a)は試験1における固定子巻線の電圧測定位置を示す説明図であり、(b)は試験1に用いた実施形態1に係る固定子巻線を構成するU相巻線の部分巻線の同相スロット内での収容位置を示す模式図である。
【図9】試験1における実施形態1、従来1及び従来2の電圧測定結果を示すグラフである。
【図10】変形例1における各相巻線の巻線方式を示す説明図であって、(a)は斜め上方から見た斜視図であり、(b)は軸方向から見た平面図である。
【図11】変形例2における各相巻線の巻線方式を示す説明図であって、(a)は斜め上方から見た斜視図であり、(b)は軸方向から見た平面図であり、(c)は周方向に展開した展開図である。
【図12】実施形態2に係る固定子巻線を構成する各相巻線の結線図である。
【図13】実施形態2における各相巻線の第1〜第4部分巻線のスロット内での収容位置を示す説明図である。
【図14】実施形態2に係る固定子巻線の接続状態を示す説明図である。
【図15】比較例1に係る固定子巻線の接続状態を示す説明図である。
【図16】試験2における実施形態2の起磁力分布を示す図である。
【図17】試験2における比較例1の起磁力分布を示す図である。
【図18】試験2における実施形態2及び比較例1の騒音レベルを示すグラフである。
【図19】(a)は従来の回転電機における固定子巻線を構成する各相巻線の結線図であり、(b)は従来の回転電機における固定子鉄心のU相の2個の同相スロット内に収容されたU相部分巻線の収容位置を示す模式図である。
【図20】従来の各相2倍スロットの回転電機において、固定子上を径方向に横切る渡り線の数が0本の時の第1〜第4部分巻線のスロット内での収容位置を示す説明図であって、(a)は第1部分巻線と第4部分巻線が同じスロットに入る場合を示し、(b)は第1部分巻線と第2部分巻線が同じスロットに入る場合を示す。
【図21】従来の各相2倍スロットの回転電機において、固定子上を径方向に横切る渡り線の数が2本の時の第1〜第4部分巻線のスロット内での収容位置を示す説明図であって、(a)は第1部分巻線と第4部分巻線が同じスロットに入る場合を示し、(b)は第1部分巻線と第3部分巻線が同じスロットに入る場合を示し、(c)は第1部分巻線と第2部分巻線が同じスロットに入る場合を示す。
【図22】従来の回転電機において各相出力端子間に印加される電圧波形を示すグラフである。
【図23】従来の回転電機において固定子巻線の共振により増幅された相間の電圧波形を示すグラフである。
【図24】従来の回転電機において周波数に対する固定子巻線の電圧増幅率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る回転電機の実施形態について図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る回転電機の構成を模式的に示す軸方向断面図である。本実施形態に係る回転電機1は、車両用電動機として使用されるものであって、図1に示すように、略有底筒状の一対のハウジング部材10a,10bが開口部同士で接合されてなるハウジング10と、ハウジング10に軸受け11,12を介して回転自在に支承される回転軸13に固定された回転子14と、ハウジング10内の回転子14を包囲する位置でハウジング10に固定された固定子20と、を備えている。
【0025】
回転子14は、固定子20の内周側と径方向に向き合う外周側に、周方向に所定距離を隔てて極性が交互に異なるように配置された複数の磁極を有する。これらの磁極は、回転子14の所定位置に埋設された複数の永久磁石により形成されている。回転子14の磁極の数は、回転電機により異なるため限定されるものではない。本実施形態においては、8極(N極:4、S極:4)の回転子が用いられている。
【0026】
次に、図2〜図6を参照して固定子20について説明する。図2は、実施形態1に係る固定子の全体斜視図である。図3は、実施形態1において固定子鉄心のスロットに導体セグメントを挿入する状態を示す説明図である。図4は、実施形態1における各相巻線の巻線方式を示す説明図であって、(a)斜め上方から見た斜視図であり、(b)は軸方向から見た平面図であり、(c)は周方向に展開した展開図である。図5(a)は、実施形態1に係る固定子巻線を構成する各相巻線の結線図であり、(b)は実施形態1に係る固定子鉄心のU相の2個の同相スロット31内に収容されたU相部分巻線の収容位置を示す模式図である。
【0027】
固定子20は、図2に示すように、周方向に複数のスロット31を有する円環状の固定子鉄心30と、スロット31に挿通配置された略U字形状の複数の導体セグメント50の開放端部の端末部同士が固定子鉄心30の軸方向一方側で溶接により接続されて固定子鉄心30に巻装された三相(U相、V相、W相)の固定子巻線40と、を備えている。
【0028】
固定子鉄心30は、複数枚のコアシート(鋼板)を軸方向に積層して構成されている。固定子鉄心30の内周面には、固定子巻線40を収容できるように、固定子鉄心30を軸方向に貫通し断面略矩形状の複数のスロット31が周方向に等ピッチに、また、径方向に放射状に設けられている。固定子鉄心30に形成されたスロット31の数は、回転子14の磁極数(8磁極)に対し、固定子巻線40の1相あたり2個の割合で形成されており、スロット倍数n(nは2以上の自然数)が2とされている。即ち、固定子鉄心30には、同一相の相巻線41を収容する同相スロット31が前記磁極ごとに周方向に連続して2個ずつ設けられている。よって、本実施形態では、8×3×2=48より、スロット数は48個とされている。
【0029】
固定子鉄心30のスロット31に巻装された固定子巻線40は、略U字形状をなす複数の導体セグメント50の開放端側の端部同士を溶接で互いに接合することにより構成されている。この導体セグメント50は、外周に絶縁被膜(図示せず)が被覆された平角導体をU字形状に折り曲げることにより形成されている。なお、導体セグメント50両端部の溶接で接合される接合部56には、絶縁被膜が剥離されることにより導体露出部(図示せず)が形成されている。
【0030】
略U字形状に形成された導体セグメント50は、図3に示すように、互いに平行な一対の直線部51、51と、一対の直線部51、51の一端を互いに連結するターン部52とからなる。ターン部52の中央部には、固定子鉄心30の端面30aに沿って延びる頭頂段部53が設けられており、頭頂段部53の両側には、固定子鉄心30の端面30aに対して所定の角度で傾斜した傾斜部が設けられている。なお、符号24は、固定子鉄心30と固定子巻線40との間を電気絶縁するインシュレータである。
【0031】
図3には、同一相の隣接する2個のスロット31A、31Bに挿入配置される2個で一組の導体セグメント50A、50Bが示されている。この場合、2個の導体セグメント50A、50Bは、それらの一対の直線部51、51が、同一のスロット31ではなく、隣接した2個のスロット31A、31Bに別々に軸方向一端側から挿入される。即ち、図3の右側にある2個の導体セグメント50A、50Bにおいて、一方の導体セグメント50Aは、一方の直線部51が一のスロット31Aの最外層(第6層)に挿入され、他方の直線部51が固定子鉄心30の反時計回り方向に向けて1磁極ピッチ(NS磁極ピッチ)離れた他のスロット(図示せず)の第5層に挿入される。
【0032】
そして、他方の導体セグメント50Bは、一方の直線部51がスロット31Aと隣接したスロット31Bの最外層(第6層)に挿入され、他方の直線部51が固定子鉄心30の反時計回り方向に向けて1磁極ピッチ(NS磁極ピッチ)離れた他のスロット(図示せず)の第5層に挿入される。即ち、2個の導体セグメント50A、50Bは、周方向に1スロットピッチずれた状態に配置される。このようにして、全スロット31に対して偶数本の導体セグメント50の直線部51が挿入配置される。本実施形態の場合には、各スロット31内に、合計6本の直線部51が径方向1列に積層配置されている。
【0033】
スロット31から軸方向他端側へ延出した一対の直線部51、51の開放端部は、固定子鉄心30の端面30aに対して所定の角度をもって斜めに斜行するように互いに周方向反対側へ捻られて、略半磁極ピッチ分の長さの捻り部54(図2及び図4参照)が形成されている。そして、固定子鉄心30の軸方向他端側において、導体セグメント50の所定の捻り部54の先端部同士が溶接により接合されて所定のパターンで電気的に接続される。即ち、所定の導体セグメント50が直列に接続されることにより、固定子鉄心30のスロット31に沿って周方向に渦巻き状に波巻きで巻回された3本の相巻線(U相、V相、W相)41を有する固定子巻線40が形成される。
【0034】
なお、固定子巻線40の各相について、基本となるU字形状の導体セグメント50により、固定子鉄心30の周りを6周する巻線(コイル)が形成される。しかし、固定子巻線40の各相について、出力用引き出し線及び中性点用引き出し線を一体に有するセグメント、並びに1周目と2周目とを接続するターン部を有するセグメントは、基本となる導体セグメント50とは異なる異形セグメント(図示せず)で構成される。これら異形セグメントを用いて、図5(a)に示すように、固定子巻線40の各相の巻線端が星型結線により結線される。
【0035】
固定子巻線40を構成する3本の相巻線(U相、V相、W相)41は、図5(a)に示すように、延伸方向一端側の出力端子から他端側の中性点までを2n個(本実施形態ではn=2から4個)に分割されて、延伸方向一端側から順に配置された第1部分巻線a、第2部分巻線b、第3部分巻線c、第4部分巻線dにより構成されている。これら第1〜第4部分巻線a〜dの巻線方式は、全て波巻きである。
【0036】
本実施形態では、各相巻線41は、図5(b)に示すように、第1部分巻線aと第4部分巻線dが固定子鉄心30の異なる同相スロット31に収容されている。なお、図5(b)には、代表としてU相の2個の同相スロットU1、U2が示されており、V相及びW相の場合も、U相と同様である。
【0037】
また、各相巻線41は、出力端子側から偶数番目に位置する第2m(mは1≦m≦nを満たす全ての自然数)部分巻線と、第2m部分巻線の1つ前の奇数番目に位置する第(2m−1)部分巻線が、固定子鉄心30の同一の同相スロット31に収容されている。即ち、図5(b)に示すように、U相の相巻線41の第2部分巻線bと第1部分巻線aが同一の同相スロットU1に収容されていると共に、第4部分巻線dと第3部分巻線cが同一の同相スロットU2に収容されている。
【0038】
なお、上記のように構成された固定子巻線40の軸方向一端側には、図2に示すように、固定子鉄心30の一端面から突出した導体セグメント50の複数のターン部52が固定子鉄心30の径方向に積層されてなる第1コイルエンド群47が形成されている。また、固定子巻線40の軸方向他端側には、固定子鉄心30の他端面から突出した導体セグメント50の複数の斜行部55及び溶接による接合部56が固定子鉄心30の径方向に積層されてなる第2コイルエンド群48が形成されている。
【0039】
また、本実施形態の回転電機1は、固定子巻線40を流れる交流電流が各相出力端子間で最大電圧330V以上となるように設定されている。即ち、図6に示すパッシェンの法則に従い、大気圧にて約330V以上で部分放電が発生し得るようにされている。
【0040】
以上のように構成された本実施形態の回転電機1によれば、固定子巻線40を構成する各相巻線41は、2n個(本実施形態では4個)に分割されて、延伸方向一端側から順に配置された第1部分巻線a、第2部分巻線b、第3部分巻線c、第4部分巻線dにより構成され、第1部分巻線aと第4部分巻線dが固定子鉄心30の異なる同相スロット31に収容されている。そのため、負の相互インダクタンスを0に近づけることができるので、図7に示すように、従来の巻線配置に比べて、共振周波数が低くなり且つ共振ピークが低くなる。これにより、固定子巻線40の相間における共振を低減させることができる。その結果、最大相間電圧は小さくなり、絶縁のために必要な相間距離を短くすることができる。
【0041】
また、本実施形態では、各相巻線41の延伸方向一端側から偶数番目に位置する第2m部分巻線と、その1つ前の奇数番目に位置する第(2m−1)部分巻線が、同一の同相スロット31に収容されている。即ち、各相巻線41の第2部分巻線bと第1部分巻線aが同一の同相スロット31に収容されていると共に、第4部分巻線dと第3部分巻線cが同一の同相スロット31に収容されている。これにより、上記の、第1部分巻線aと第4部分巻線dが固定子鉄心30の異なる同相スロット31に収容されていることと相俟って、固定子巻線40の相間における共振を相乗的に低減させることができる。その結果、最大相間電圧は小さくなり、絶縁のために必要な相間距離を短くすることができる。
【0042】
また、本実施形態の回転電機1は、パッシェンの法則に従い、固定子巻線40を流れる交流電流が各相出力端子間で最大電圧330V以上となるように設定されている。そのため、絶縁のための導体間の必要空間距離は、約330V以上の領域にて相間電圧と正の相関を持ち、最大相間電圧の低減により必要相間距離を直接低減させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、各相巻線41の第1〜第4部分巻線a〜dの巻線方式が全て波巻きにされているため、固定子巻線40を容易に形成することできる。また、固定子巻線40の相間における共振の低減効果を確実に得ることができる。
【0044】
また、本実施形態の固定子巻線40は、スロット31に軸方向に挿入配置された複数の導体セグメント50が直列に接続されて固定子鉄心30に巻装された複数の相巻線41により構成され、固定子鉄心30の軸方向一端側には、異なるスロット31から延出した導体セグメント50の端末部同士が互いに接合された接合部が周方向に周期的に且つ放射方向に配置されてなる第1コイルエンド群47が形成され、固定子鉄心30の軸方向他端側には、異なるスロット31に収容されたスロット収容部57同士を前記スロット31の外部で連結する複数のターン部52よりなる第2コイルエンド群48が形成されている。そのため、固定子巻線40を連続線で形成する場合に比べて、導体セグメント50単体は、長さが非常に短く、ハンドリングが容易であるため、固定子巻線40を容易に作製することができる。
【0045】
〔試験1〕
実施形態1の奏する最大電圧低減効果を確認するため、各相2倍スロットで12層の波巻き仕様の回転電機にて、各部分巻線間の結線部のみを操作し、部分巻線のスロット挿入順をふった場合の相間電圧を測定する試験を行った。相間電圧の測定は、図8に示すように、相巻線41間で共振が高くなる部位(例えば、相巻線41の延伸方向において出力端子側から約1/4の位置)で行った。その実測値を図9に示す。
【0046】
図9に示すように、a→c→d→bで示すプロット線(従来1)とa→d→c→bで示すプロット線(従来2)は、特許文献1と同様に第1部分巻線aと第4部分巻線dが同じスロットに収容されている場合である。そして、a→b→c→dで示すプロット線(実施形態1)は、図8(b)に示すように、第1部分巻線aと第4部分巻線dが異なる同相スロットU1、U2に収容されており、実施形態1の条件を満たす結線方式である。
【0047】
実施形態1による結線方式では、共振による電圧波形の揺らぎが顕著に低減されることが図9のグラフより明らかである。また、従来1及び2の結線方式の場合には、最大電圧が入力電圧よりも増大しているのに対して、実施形態1の結線方式の場合には、入力電圧に対して約18%の最大電圧の低減を達成している。
【0048】
〔変形例1〕
図10は、変形例1における各相巻線の巻線方式を示す説明図であって、(a)は斜め上方から見た斜視図であり、(b)は軸方向から見た平面図である。
【0049】
変形例1は、固定子巻線40を構成する各相巻線41が、実施形態1のように、複数の導体セグメント50を接続して形成されたものではなく、それぞれの相巻線41が1本の連続線60により形成されたものである。この場合、各相巻線41の連続線60は、固定子鉄心30のスロット31に収容される直線状の複数(12本)のスロット収容部(図示せず)と、隣り合ったスロット収容部同士をスロット収容部の一端側と他端側とで交互に接続する複数(11個)のターン部62とを有する。この連続線60は、延伸方向の最も一端側に位置する第1スロット収容部が固定子鉄心30のスロット31の最内層(第1層)に収容され、延伸方向の最も他端側に位置する第12スロット収容部が固定子鉄心30のスロット31の最外層(第6層)に収容されて、固定子鉄心30を周方向に11/8周するように波巻により巻装されている。
【0050】
なお、変形例1の場合にも、固定子巻線40を構成する3本の相巻線(U相、V相、W相)41は、実施形態1と同様に、延伸方向一端側の出力端子から他端側の中性点までを2n個(本実施形態ではn=2から4個)に分割されて、延伸方向一端側から順に配置された第1部分巻線a、第2部分巻線b、第3部分巻線c、第4部分巻線dにより構成され、第1部分巻線aと第4部分巻線dが固定子鉄心30の異なる同相スロットに収容されている(図5(a)(b)参照)。これら第1〜第4部分巻線a〜dの巻線方式は、全て波巻きである。
【0051】
また、各相巻線41は、実施形態1と同様に、第2部分巻線bと第1部分巻線aが同一の同相スロットに収容されていると共に、第4部分巻線dと第3部分巻線cが同一の同相スロットに収容されている(図5(b)参照)。
【0052】
以上のように構成された変形例1の場合も、実施形態1と同様に、共振周波数を低くして共振ピークを低くすることができるので、固定子巻線40の相間における共振を低減させることができる。その結果、最大相間電圧を小さくし、絶縁のために必要な相間距離を短くすることができる。
【0053】
〔変形例2〕
図11は、変形例2における各相巻線の巻線方式を示す説明図であって、(a)斜め上方から見た斜視図であり、(b)は軸方向から見た平面図であり、(c)は周方向に展開した展開図である。
【0054】
変形例2は、固定子巻線40を構成する各相巻線41が、実施形態1と同様に、U字形状の複数の導体セグメント50を溶接により接続して形成されたものであるが、実施形態1の各相巻線41が波巻きで形成されているのに対して、変形例2の各相巻線41は重ね巻きで形成されている点でのみ実施形態1と異なる。
【0055】
この場合、各相巻線41は、図11に示すように、2本のスロット収容部が同一の同相スロット31に収容されて、それぞれの同相スロットで2層ずつ重ねられるようにして固定子鉄心30に巻装されている。
【0056】
なお、変形例2の場合にも、固定子巻線40を構成する3本の相巻線(U相、V相、W相)41は、実施形態1と同様に、延伸方向一端側の出力端子から他端側の中性点までを2n個(本実施形態ではn=2から4個)に分割されて、延伸方向一端側から順に配置された第1部分巻線a、第2部分巻線b、第3部分巻線c、第4部分巻線dにより構成され、第1部分巻線aと第4部分巻線dが固定子鉄心30の異なる同相スロットに収容されている(図5(a)(b)参照)。
【0057】
また、各相巻線41は、実施形態1と同様に、第2部分巻線bと第1部分巻線aが同一の同相スロットに収容されていると共に、第4部分巻線dと第3部分巻線cが同一の同相スロットに収容されている(図5(b)参照)。
【0058】
以上のように構成された変形例2の場合も、実施形態1と同様に、共振周波数を低くして共振ピークを低くすることができるので、固定子巻線40の相間における共振を低減させることができる。その結果、最大相間電圧を小さくし、絶縁のために必要な相間距離を短くすることができる。
【0059】
〔実施形態2〕
実施形態2の回転電機は、実施形態1の回転電機と固定子20の構成のみが異なる。即ち、実施形態2では、固定子鉄心30に形成されるスロット31のスロット倍数が2k(kは2以上の自然数)とされ、固定子巻線40を構成する各相巻線41が、延伸方向一端(各相端子43)から他端(中性点44)までをk並列に配置された第1〜第k並列巻線42により構成され、第1〜第k並列巻線42は、それぞれ延伸方向一端から他端までを2分割されて、それぞれの分割巻線が第1〜第2kの各同相スロットに独立して収容されている点で、実施形態1と異なる。よって、実施形態1と共通する部材や構成については詳しい説明を省略し、以下、実施形態1と異なる点及び重要な点について説明する。なお、実施形態1と共通する部材については同じ符号を用いる。
【0060】
実施形態2の固定子20は、周方向に96個のスロット31を有する円環状の固定子鉄心30と、スロット31に挿通配置された略U字形状の複数の導体セグメント50の開放端部の端末部同士が固定子鉄心30の軸方向一方側で溶接により接続されて固定子鉄心30に巻装された三相(U相、V相、W相)の固定子巻線40と、を備えている。そして、実施形態2の固定子鉄心30は、実施形態2ではk=2とされているので、同一相の相巻線41を収容する同相スロットが磁極ごとに周方向に連続して4(2k=4)個ずつ設けられている。即ち、スロット倍数が4とされている。
【0061】
また、固定子巻線40は、実施形態2ではk=2とされているので、図12に示すように、各相端子43から中性点44までにおいて2(k)並列に構成された第1及び第2並列巻線42−1,42−2より構成されている。そして、第1及び第2並列巻線42−1,42−2を構成する各相巻線41は、延伸方向一端から他端までをそれぞれ4個の部分巻線に分割されている。即ち、第1並列巻線42−1を構成する3本の相巻線(U相、V相、W相)41は、それぞれ各相端子43側から順に配置された第1部分巻線1a、第2部分巻線1b、第3部分巻線1c及び第4部分巻線1dにより構成されている。また、第2並列巻線42−2を構成する3本の相巻線(U相、V相、W相)41は、各相端子43側から順に配置された第1部分巻線2a、第2部分巻線2b、第3部分巻線2c及び第4部分巻線2dにより構成されている。
【0062】
第1及び第2並列巻線42−1,42−2は、図13及び図14に示すように、前半側の第1及び第2部分巻線(1a,1b)(2a,2b)と後半側の第3及び第4部分巻線(1c,1d)(2c,2d)が、固定子鉄心30の異なる同相スロット31に独立して収容されている。なお、図13には、第1及び第2並列巻線42−1,42−2を構成する各相巻線41のうち、代表として、U相の相巻線41の同相スロット内での収容位置が示されており、V相及びW相の場合もU相と同様である。
【0063】
図13及び図14において、U相の連続する4個の同相スロットU1〜U4は、右側から左側へ順番に第1〜第4同相スロットU1〜U4が並んでいる。この場合、第1同相スロットU1には、第2並列巻線42−2の前半側の第1及び第2部分巻線(2a,2b)が交互に4本ずつ収容され、第2同相スロットU2には、第2並列巻線42−2の後半側の第3及び第4部分巻線(2c,2d)が交互に4本ずつ収容されている。また、第3同相スロットU3には、第1並列巻線42−1の前半側の第1及び第2部分巻線(1a,1b)が交互に4本ずつ収容され、第4同相スロットU4には、第1並列巻線42−1の後半側の第3及び第4部分巻線(1c,1d)が交互に4本ずつ収容されている。
【0064】
そして、第1同相スロットU1に収容された第2並列巻線42−2の前半側の第1及び第2部分巻線(2a,2b)と、第3同相スロットU3に収容された第1並列巻線42−1の前半側の第1及び第2部分巻線(1a,1b)は、電気角で30°離間している。これと同様に、第2同相スロットU2に収容された第2並列巻線42−2の後半側の第3及び第4部分巻線(2c,2d)と、第4同相スロットU4に収容された第1並列巻線42−1の後半側の第3及び第4部分巻線(1c,1d)も、電気角で30°離間している。即ち、2並列に構成された第1並列巻線42−1と第2並列巻線42−2は、固定子鉄心30に対して電気角で30°離間した状態で巻装されている。
【0065】
以上のように構成された実施形態2の回転電機によれば、各相巻線41は、延伸方向一端から他端までを2(k=2)並列に配置された第1及び第2並列巻線42−1,42−2により構成され、第1及び第2並列巻線42−1,42−2は、それぞれ延伸方向一端から他端までを2分割されて、それぞれの分割巻線が第1〜第4同相スロットに独立して収容されている。そのため、第1及び第2並列巻線42−1,42−2の延伸方向一端から他端までを2分割された前半と後半の分割巻線が隔離(別の同相スロットに配置)されることとなり、前半と後半の分割巻線の磁気結合が比較的弱くなるので、負の相互インダクタンスによるコイルインダクタンスの低減を抑えることができる。これにより、上記実施形態1の場合と同様に、共振周波数が低くなり且つ共振ピークが低くなるため、固定子巻線40の相間における共振を低減させることができる。その結果、最大相間電圧は小さくなり、絶縁のために必要な相間距離を短くすることができる。
【0066】
また、実施形態2の回転電機によれば、同相内において、電気角が30°(60°/(k=2))ずれた巻線が形成されることにより、起磁力分布が変化し、合計起磁力の変動幅が小さくなるため、磁気騒音を低減することができる。この実施形態2の優れた効果は、下記の試験2により確認されている。
【0067】
なお、実施形態2では、固定子巻線40を構成する各相巻線41は、複数の導体セグメント50を接続して形成されたものであるが、実施形態2の場合にも、上記の変形例1のように、それぞれの相巻線41を1本の連続線60で形成するようにしてもよい。また、実施形態2では、固定子巻線40を構成する各相巻線41の巻線方式が波巻きとされているが、上記の変形例2のように、波巻きではなく重ね巻きにしてもよい。
【0068】
〔試験2〕
実施形態2の奏する磁気騒音低減効果を確認するため、図15に示すようなスロット倍数が1とされた点でのみ異なる比較例1を準備し、実施形態2と比較例1の騒音レベルを調べる試験を行った。図16には、実施形態2の起磁力分布の測定結果が示され、図17には、比較例1の起磁力分布の測定結果が示されている。そして、図18には、実施形態2と比較例1のそれぞれの騒音レベル(合計起磁力変動幅)が示されている。
【0069】
図16及び図17において、起磁力分布は、電気角60°周期で変化しており、電気角が0°から30°に変化したときに変動幅が最大となり、この変動幅が大きい程、騒音レベルは高くなる。そして、図16及び図17においてそれぞれの領域に発生する変動幅の差分を累積したものが、図18に騒音レベル(合計起磁力変動幅)として示されている。図18から明らかなように、実施形態2の騒音レベルは、比較例1の半分以下に低減されていることが解る。
【0070】
〔他の実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0071】
例えば、実施形態1では、固定子巻線40を構成する基本となる導体セグメント50として、U字形状のものが採用されているが、U字形状のものに代えてI字形状の導体セグメントを用いてもよい。
【0072】
また、実施形態1では、n(nは2以上の自然数)の値がn=2とされ、実施形態2では、k(kは2以上の自然数)の値がk=2とされていたが、n及びkの値は、任意に設定することができる。
【0073】
また、実施形態1及び2は、本発明に係る回転電機をモータ(電動機)に適用した例であるが、本発明は、車両に搭載される回転電機として、電動機あるいは発電機、さらには両者を選択的に使用しうる回転電機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1…回転電機、 10…ハウジング、 11、12…軸受け、 13…回転軸、 14…回転子、 20…固定子、 30…固定子鉄心、 31…スロット、 40…固定子巻線、 41…相巻線、 42…並列巻線、 42−1…第1並列巻線、 42−2…第2並列巻線、 a,1a,2a…第1部分巻線、 b,1b,2b…第2部分巻線、 c,1c,2c…第3部分巻線、 d,1d,2d…第4部分巻線、 43…相端子、 44…中性点、 47…第1コイルエンド群、 48…第2コイルエンド群、 50…導体セグメント、 51…直状部、 52…ターン部、 53…頭頂段部、 54…傾斜部、 55…斜行部、 56…接合部、 57…スロット収容部、 60…連続線、 62…ターン部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用の電動機や発電機として使用される回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回転電機として、周方向に配列された複数対の磁極を有する回転子と、周方向に配列された複数のスロットを有し前記回転子と径方向に対向配置された固定子鉄心、及び、前記スロットに挿入されて前記固定子鉄心に巻装された複数の相巻線よりなる固定子巻線を有する固定子と、を備えた回転電機が知られている。このような回転電機においては、高出力化の要請から、固定子鉄心は、同一相の相巻線が収容される同相スロットを磁極ごとに周方向に連続して複数個ずつ有するように構成されている。
【0003】
そして、特許文献1には、各相2倍スロット(同相スロットが2個の場合)の固定子において波巻きにて巻装された三相の固定子巻線が開示されている。この固定子巻線を構成する各相巻線(U相、V相、W相)は、図19(a)に示すように、延伸方向一端側の出力端子から他端側の中性点までを4個に分割されて、出力端子側から順に配置された第1〜第4部分巻線(a)〜(d)により構成されている。この場合の各相巻線は、図19(b)に示すように、第1部分巻線(a)と第4部分巻線(d)が同じ同相スロットU1に収容され、第2部分巻線(b)と第3部分巻線(c)が同じ同相スロットU2に収容されるように接続されている。なお、図19(b)には、代表としてU相の2個の同相スロットU1、U2が示されている。
【0004】
また、特許文献2には、各相3倍スロット(同相スロットが3個の場合)で各スロットに固定子巻線の導体が径方向に6層存在する固定子において、重ね巻きと波巻きを混合した巻線方式について開示されており、内周側の4層を重ね巻きでスロットを充填した後、外周側の2層を波巻きにて充填している。この場合には、各相巻線の第1部分巻線と第6部分巻線が同じ同相スロットに収容されるように接続されることになる。
【0005】
このように最先端の部分巻線と最後端の部分巻線が同じ同相スロットに収容される理由として、コイルエンドが高くなることを防ぐこと、コイルエンド上を径方向に横切る渡り線の形状を出来るだけ統一し造り易くすることが挙げられる。
【0006】
なお、コイルエンドを出来るだけ低く抑えるためには、各相出力線と中性点の位置を固定子鉄心の外径側に揃えることが有効であり、これを達成するように渡り線を配置すると、コイルエンド上を径方向に横切る渡り線の本数は偶数本に限られる。各相2倍スロットの回転電機の場合には0本又は各相2本の計6本となる。
【0007】
コイルエンド上を横切る渡り線の本数が0本の場合、各部分巻線のスロット挿入位置に関わらず、コイルエンド上で巻線は6重に重なる。また、渡り線の形状パターンも9種類で同じである。ここで図20(a)には、第1部分巻線と第4部分巻線が同一スロットに挿入される場合の、図20(b)には、第1部分巻線と第2部分巻線が同一スロットに挿入される場合の渡り線の重なりをそれぞれ示した。各図で、スロットよりも内径側に渡り線を示すが、実際にはこの渡り線は内周側→コイルエンド上→内周側の経路で内径側を避ける様にスロット間をつないでいる。この時、第1部分巻線と第3部分巻線が同一スロットに挿入されることは、コイルエンド上を横切る渡り線が0本である限り有り得ない。
【0008】
一方、コイルエンド上を横切る渡り線の本数が計6本の場合、第1部分巻線と第2部分巻線および第3部分巻線と第4部分巻線がそれぞれ同じスロットに挿入される場合は、図21(c)に示すように、コイルエンド上で巻線は6重に重なり、渡り線の形状パターンが8種類となる。また、第1部分巻線と第3部分巻線および第2部分巻線と第4部分巻線がそれぞれ同じスロットに挿入される場合は、図21(b)に示すように、コイルエンド上での巻線の重なりは4重であり、渡り線の形状パターンは5種類となる。また、第1部分巻線と第4部分巻線および第2部分巻線と第3部分巻線がそれぞれ同じスロットに挿入される場合は、図21(a)に示すように、コイルエンド上での巻線の重なりは4重であり、渡り線の形状パターンは4種類となる。
【0009】
従って、波巻きにおいて、最もコイルエンドが低く、造り易いのは第1部分巻線と第4部分巻線を同じスロットに挿入する構成であり、各相2倍スロットの回転電機では多くの場合この方式が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−69729号公報
【特許文献2】特開2004−64914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、回転電機の固定子巻線には、電動機として作動させる場合に各相出力端子間に図22に示すような最大電圧V0なる方形波の電圧が印加されるが、実際に固定子巻線の相間に発生する最大の電圧は、図23に示す様にV0を超える。図24は、固定子巻線における、入力電圧に対する出力電圧の増幅率を周波数に対してプロットした例であるが、印加された方形波の高周波成分に対し、固定子巻線が共振周波数を持つことが電圧増幅の原因である。
【0012】
このように最大相間電圧が大きくなると、相間の電流短絡を防ぐために固定子巻線の被膜を厚くする等相間距離を広げ、絶縁性能を向上させる必要性が生じる。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、固定子巻線の相間における共振を低減させて、最大相間電圧を小さくし、絶縁のために必要な相間距離を短くし得るようにした回転電機を提供することを解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するためになされた第一の発明は、周方向に配列された複数対の磁極を有する回転子(14)と、周方向に配列された複数のスロット(31)を有し前記回転子(14)と径方向に対向配置された固定子鉄心(30)、及び、前記スロット(31)に挿入されて前記固定子鉄心(30)に巻装された複数の相巻線(41)よりなる固定子巻線(40)を有する固定子(20)と、を備えた回転電機において、前記固定子鉄心(30)は、同一相の前記相巻線(41)が収容される同相スロット(U1,U2)を前記磁極ごとに周方向に連続してn(nは2以上の自然数)個ずつ有し、各前記相巻線(41)は、延伸方向一端から他端までを2n個に分割されて、前記延伸方向一端側から順に配置された第1部分巻線(a)、第2部分巻線(b)、・・・、第2n部分巻線(d)により構成され、前記第1部分巻線(a)と前記第2n部分巻線(d)が前記固定子鉄心(30)の異なる前記同相スロット(U1,U2)に収容されていることを特徴とする。
【0015】
第一の発明によれば、各相巻線は、延伸方向一端から他端までを2n個に分割されて、延伸方向一端側から順に配置された第1部分巻線、第2部分巻線、・・・、第2n部分巻線により構成され、第1部分巻線と第2n部分巻線が固定子鉄心の異なる同相スロットに収容されている。そのため、負の相互インダクタンスによるコイルインダクタンスの低減を抑えることができるので、共振周波数が低くなり且つ共振ピークが低くなる。これにより、固定子巻線の相間における共振を低減させることができる。その結果、最大相間電圧は小さくなり、絶縁のために必要な相間距離を短くすることができる。
【0016】
なお、相間電圧に影響を与える固定子巻線の共振周波数fnは、コイルインダクタンスをL、静電容量をCとした場合に、下記の式1により求められる。
【0017】
fn=1/2π√LC ………式1
ここで、共振要素としてのコイルインダクタンスLは、単独のコイルにより発生する自己インダクタンスと、コイルの結合により発生する相互インダクタンスとで決まる。また、静電容量Cは、主に固定子巻線と固定子鉄心との間に発生する対地容量で決まる。本発明では、同相スロットに収容される各相巻線の部分巻線の収容位置を上記のように変更することで、互いに影響し合う負の相互インダクタンスを0に近づけることができる。これにより、共振周波数fnが低くなり且つ共振ピークが低くなるように、共振特性を変えることができる。
【0018】
また、上記課題を解決するためになされた第二の発明は、周方向に配列された複数対の磁極を有する回転子(14)と、周方向に配列された複数のスロット(31)を有し前記回転子(14)と径方向に対向配置された固定子鉄心(30)、及び、前記スロット(31)に挿入されて前記固定子鉄心(30)に巻装された複数の相巻線(41)よりなる固定子巻線(40)を有する固定子(20)と、を備えた回転電機において、前記固定子鉄心(30)は、同一相の前記相巻線(41)が収容される同相スロット(U1〜U4)を前記磁極ごとに周方向に連続して2k(kは2以上の自然数)個ずつ有し、前記固定子巻線(40)は、延伸方向一端から他端までにおいてk列に並んだ第1〜第k並列巻線(42−1,42−2)よりなり、前記第1〜第k並列巻線(42−1,42−2)を構成する各前記相巻線(41)は、それぞれ延伸方向一端から他端までを2分割されて、それぞれの分割巻線が第1〜第2kの各前記同相スロット(U1〜U4)に独立して収容されていることを特徴とする。
【0019】
第二の発明によれば、第1〜第k並列巻線の延伸方向一端から他端までを2分割された前半と後半の分割巻線が隔離(別の同相スロットに配置)されることとなり、前半と後半の分割巻線の磁気結合が比較的弱くなるため、負の相互インダクタンスによるコイルインダクタンスの低減を抑えることができる。その結果、各分割巻線間の磁気結合を弱め、負の相互インダクタンスによるコイルインダクタンスの低減を抑えることができる。
【0020】
なお、相間電圧に影響を与える固定子巻線の共振周波数fnは、第一の発明の場合と同様に、上記の式1により求められる。第二の発明の場合にも、同相スロットに収容される各相巻線の部分巻線の収容位置を上記のように変更することで、互いに影響し合う負の相互インダクタンスを0に近づけることができる。これにより、共振周波数fnが低くなり且つ共振ピークが低くなるように、共振特性を変えることができる。これにより、固定子巻線の相間における共振を低減させることができるため、最大相間電圧は小さくなり、絶縁のために必要な相間距離を短くすることができる。
【0021】
また、第二の発明によれば、同相内において、電気角が60°/kずれた巻線が形成されることにより、起磁力分布が変化し、合計起磁力の変動幅が小さくなるため、磁気騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態1に係る回転電機の軸方向断面図である。
【図2】実施形態1に係る固定子の全体斜視図である。
【図3】実施形態1において固定子鉄心のスロットに導体セグメントを挿入する状態を示す説明図である。
【図4】実施形態1における各相巻線の巻線方式を示す説明図であって、(a)は斜め上方から見た斜視図であり、(b)は軸方向から見た平面図であり、(c)は周方向に展開した展開図である。
【図5】(a)は実施形態1に係る固定子巻線を構成する各相巻線の結線図であり、(b)は実施形態1に係る固定子鉄心のU相の2個の同相スロット内に収容されたU相部分巻線の収容位置を示す模式図である。
【図6】パッシェンの法則により示される部分放電開始電圧と大気圧および導体間距離との関係を示すグラフである。
【図7】実施形態1(本発明)及び従来1の周波数とゲインとの関係を示すグラフである。
【図8】(a)は試験1における固定子巻線の電圧測定位置を示す説明図であり、(b)は試験1に用いた実施形態1に係る固定子巻線を構成するU相巻線の部分巻線の同相スロット内での収容位置を示す模式図である。
【図9】試験1における実施形態1、従来1及び従来2の電圧測定結果を示すグラフである。
【図10】変形例1における各相巻線の巻線方式を示す説明図であって、(a)は斜め上方から見た斜視図であり、(b)は軸方向から見た平面図である。
【図11】変形例2における各相巻線の巻線方式を示す説明図であって、(a)は斜め上方から見た斜視図であり、(b)は軸方向から見た平面図であり、(c)は周方向に展開した展開図である。
【図12】実施形態2に係る固定子巻線を構成する各相巻線の結線図である。
【図13】実施形態2における各相巻線の第1〜第4部分巻線のスロット内での収容位置を示す説明図である。
【図14】実施形態2に係る固定子巻線の接続状態を示す説明図である。
【図15】比較例1に係る固定子巻線の接続状態を示す説明図である。
【図16】試験2における実施形態2の起磁力分布を示す図である。
【図17】試験2における比較例1の起磁力分布を示す図である。
【図18】試験2における実施形態2及び比較例1の騒音レベルを示すグラフである。
【図19】(a)は従来の回転電機における固定子巻線を構成する各相巻線の結線図であり、(b)は従来の回転電機における固定子鉄心のU相の2個の同相スロット内に収容されたU相部分巻線の収容位置を示す模式図である。
【図20】従来の各相2倍スロットの回転電機において、固定子上を径方向に横切る渡り線の数が0本の時の第1〜第4部分巻線のスロット内での収容位置を示す説明図であって、(a)は第1部分巻線と第4部分巻線が同じスロットに入る場合を示し、(b)は第1部分巻線と第2部分巻線が同じスロットに入る場合を示す。
【図21】従来の各相2倍スロットの回転電機において、固定子上を径方向に横切る渡り線の数が2本の時の第1〜第4部分巻線のスロット内での収容位置を示す説明図であって、(a)は第1部分巻線と第4部分巻線が同じスロットに入る場合を示し、(b)は第1部分巻線と第3部分巻線が同じスロットに入る場合を示し、(c)は第1部分巻線と第2部分巻線が同じスロットに入る場合を示す。
【図22】従来の回転電機において各相出力端子間に印加される電圧波形を示すグラフである。
【図23】従来の回転電機において固定子巻線の共振により増幅された相間の電圧波形を示すグラフである。
【図24】従来の回転電機において周波数に対する固定子巻線の電圧増幅率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る回転電機の実施形態について図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る回転電機の構成を模式的に示す軸方向断面図である。本実施形態に係る回転電機1は、車両用電動機として使用されるものであって、図1に示すように、略有底筒状の一対のハウジング部材10a,10bが開口部同士で接合されてなるハウジング10と、ハウジング10に軸受け11,12を介して回転自在に支承される回転軸13に固定された回転子14と、ハウジング10内の回転子14を包囲する位置でハウジング10に固定された固定子20と、を備えている。
【0025】
回転子14は、固定子20の内周側と径方向に向き合う外周側に、周方向に所定距離を隔てて極性が交互に異なるように配置された複数の磁極を有する。これらの磁極は、回転子14の所定位置に埋設された複数の永久磁石により形成されている。回転子14の磁極の数は、回転電機により異なるため限定されるものではない。本実施形態においては、8極(N極:4、S極:4)の回転子が用いられている。
【0026】
次に、図2〜図6を参照して固定子20について説明する。図2は、実施形態1に係る固定子の全体斜視図である。図3は、実施形態1において固定子鉄心のスロットに導体セグメントを挿入する状態を示す説明図である。図4は、実施形態1における各相巻線の巻線方式を示す説明図であって、(a)斜め上方から見た斜視図であり、(b)は軸方向から見た平面図であり、(c)は周方向に展開した展開図である。図5(a)は、実施形態1に係る固定子巻線を構成する各相巻線の結線図であり、(b)は実施形態1に係る固定子鉄心のU相の2個の同相スロット31内に収容されたU相部分巻線の収容位置を示す模式図である。
【0027】
固定子20は、図2に示すように、周方向に複数のスロット31を有する円環状の固定子鉄心30と、スロット31に挿通配置された略U字形状の複数の導体セグメント50の開放端部の端末部同士が固定子鉄心30の軸方向一方側で溶接により接続されて固定子鉄心30に巻装された三相(U相、V相、W相)の固定子巻線40と、を備えている。
【0028】
固定子鉄心30は、複数枚のコアシート(鋼板)を軸方向に積層して構成されている。固定子鉄心30の内周面には、固定子巻線40を収容できるように、固定子鉄心30を軸方向に貫通し断面略矩形状の複数のスロット31が周方向に等ピッチに、また、径方向に放射状に設けられている。固定子鉄心30に形成されたスロット31の数は、回転子14の磁極数(8磁極)に対し、固定子巻線40の1相あたり2個の割合で形成されており、スロット倍数n(nは2以上の自然数)が2とされている。即ち、固定子鉄心30には、同一相の相巻線41を収容する同相スロット31が前記磁極ごとに周方向に連続して2個ずつ設けられている。よって、本実施形態では、8×3×2=48より、スロット数は48個とされている。
【0029】
固定子鉄心30のスロット31に巻装された固定子巻線40は、略U字形状をなす複数の導体セグメント50の開放端側の端部同士を溶接で互いに接合することにより構成されている。この導体セグメント50は、外周に絶縁被膜(図示せず)が被覆された平角導体をU字形状に折り曲げることにより形成されている。なお、導体セグメント50両端部の溶接で接合される接合部56には、絶縁被膜が剥離されることにより導体露出部(図示せず)が形成されている。
【0030】
略U字形状に形成された導体セグメント50は、図3に示すように、互いに平行な一対の直線部51、51と、一対の直線部51、51の一端を互いに連結するターン部52とからなる。ターン部52の中央部には、固定子鉄心30の端面30aに沿って延びる頭頂段部53が設けられており、頭頂段部53の両側には、固定子鉄心30の端面30aに対して所定の角度で傾斜した傾斜部が設けられている。なお、符号24は、固定子鉄心30と固定子巻線40との間を電気絶縁するインシュレータである。
【0031】
図3には、同一相の隣接する2個のスロット31A、31Bに挿入配置される2個で一組の導体セグメント50A、50Bが示されている。この場合、2個の導体セグメント50A、50Bは、それらの一対の直線部51、51が、同一のスロット31ではなく、隣接した2個のスロット31A、31Bに別々に軸方向一端側から挿入される。即ち、図3の右側にある2個の導体セグメント50A、50Bにおいて、一方の導体セグメント50Aは、一方の直線部51が一のスロット31Aの最外層(第6層)に挿入され、他方の直線部51が固定子鉄心30の反時計回り方向に向けて1磁極ピッチ(NS磁極ピッチ)離れた他のスロット(図示せず)の第5層に挿入される。
【0032】
そして、他方の導体セグメント50Bは、一方の直線部51がスロット31Aと隣接したスロット31Bの最外層(第6層)に挿入され、他方の直線部51が固定子鉄心30の反時計回り方向に向けて1磁極ピッチ(NS磁極ピッチ)離れた他のスロット(図示せず)の第5層に挿入される。即ち、2個の導体セグメント50A、50Bは、周方向に1スロットピッチずれた状態に配置される。このようにして、全スロット31に対して偶数本の導体セグメント50の直線部51が挿入配置される。本実施形態の場合には、各スロット31内に、合計6本の直線部51が径方向1列に積層配置されている。
【0033】
スロット31から軸方向他端側へ延出した一対の直線部51、51の開放端部は、固定子鉄心30の端面30aに対して所定の角度をもって斜めに斜行するように互いに周方向反対側へ捻られて、略半磁極ピッチ分の長さの捻り部54(図2及び図4参照)が形成されている。そして、固定子鉄心30の軸方向他端側において、導体セグメント50の所定の捻り部54の先端部同士が溶接により接合されて所定のパターンで電気的に接続される。即ち、所定の導体セグメント50が直列に接続されることにより、固定子鉄心30のスロット31に沿って周方向に渦巻き状に波巻きで巻回された3本の相巻線(U相、V相、W相)41を有する固定子巻線40が形成される。
【0034】
なお、固定子巻線40の各相について、基本となるU字形状の導体セグメント50により、固定子鉄心30の周りを6周する巻線(コイル)が形成される。しかし、固定子巻線40の各相について、出力用引き出し線及び中性点用引き出し線を一体に有するセグメント、並びに1周目と2周目とを接続するターン部を有するセグメントは、基本となる導体セグメント50とは異なる異形セグメント(図示せず)で構成される。これら異形セグメントを用いて、図5(a)に示すように、固定子巻線40の各相の巻線端が星型結線により結線される。
【0035】
固定子巻線40を構成する3本の相巻線(U相、V相、W相)41は、図5(a)に示すように、延伸方向一端側の出力端子から他端側の中性点までを2n個(本実施形態ではn=2から4個)に分割されて、延伸方向一端側から順に配置された第1部分巻線a、第2部分巻線b、第3部分巻線c、第4部分巻線dにより構成されている。これら第1〜第4部分巻線a〜dの巻線方式は、全て波巻きである。
【0036】
本実施形態では、各相巻線41は、図5(b)に示すように、第1部分巻線aと第4部分巻線dが固定子鉄心30の異なる同相スロット31に収容されている。なお、図5(b)には、代表としてU相の2個の同相スロットU1、U2が示されており、V相及びW相の場合も、U相と同様である。
【0037】
また、各相巻線41は、出力端子側から偶数番目に位置する第2m(mは1≦m≦nを満たす全ての自然数)部分巻線と、第2m部分巻線の1つ前の奇数番目に位置する第(2m−1)部分巻線が、固定子鉄心30の同一の同相スロット31に収容されている。即ち、図5(b)に示すように、U相の相巻線41の第2部分巻線bと第1部分巻線aが同一の同相スロットU1に収容されていると共に、第4部分巻線dと第3部分巻線cが同一の同相スロットU2に収容されている。
【0038】
なお、上記のように構成された固定子巻線40の軸方向一端側には、図2に示すように、固定子鉄心30の一端面から突出した導体セグメント50の複数のターン部52が固定子鉄心30の径方向に積層されてなる第1コイルエンド群47が形成されている。また、固定子巻線40の軸方向他端側には、固定子鉄心30の他端面から突出した導体セグメント50の複数の斜行部55及び溶接による接合部56が固定子鉄心30の径方向に積層されてなる第2コイルエンド群48が形成されている。
【0039】
また、本実施形態の回転電機1は、固定子巻線40を流れる交流電流が各相出力端子間で最大電圧330V以上となるように設定されている。即ち、図6に示すパッシェンの法則に従い、大気圧にて約330V以上で部分放電が発生し得るようにされている。
【0040】
以上のように構成された本実施形態の回転電機1によれば、固定子巻線40を構成する各相巻線41は、2n個(本実施形態では4個)に分割されて、延伸方向一端側から順に配置された第1部分巻線a、第2部分巻線b、第3部分巻線c、第4部分巻線dにより構成され、第1部分巻線aと第4部分巻線dが固定子鉄心30の異なる同相スロット31に収容されている。そのため、負の相互インダクタンスを0に近づけることができるので、図7に示すように、従来の巻線配置に比べて、共振周波数が低くなり且つ共振ピークが低くなる。これにより、固定子巻線40の相間における共振を低減させることができる。その結果、最大相間電圧は小さくなり、絶縁のために必要な相間距離を短くすることができる。
【0041】
また、本実施形態では、各相巻線41の延伸方向一端側から偶数番目に位置する第2m部分巻線と、その1つ前の奇数番目に位置する第(2m−1)部分巻線が、同一の同相スロット31に収容されている。即ち、各相巻線41の第2部分巻線bと第1部分巻線aが同一の同相スロット31に収容されていると共に、第4部分巻線dと第3部分巻線cが同一の同相スロット31に収容されている。これにより、上記の、第1部分巻線aと第4部分巻線dが固定子鉄心30の異なる同相スロット31に収容されていることと相俟って、固定子巻線40の相間における共振を相乗的に低減させることができる。その結果、最大相間電圧は小さくなり、絶縁のために必要な相間距離を短くすることができる。
【0042】
また、本実施形態の回転電機1は、パッシェンの法則に従い、固定子巻線40を流れる交流電流が各相出力端子間で最大電圧330V以上となるように設定されている。そのため、絶縁のための導体間の必要空間距離は、約330V以上の領域にて相間電圧と正の相関を持ち、最大相間電圧の低減により必要相間距離を直接低減させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、各相巻線41の第1〜第4部分巻線a〜dの巻線方式が全て波巻きにされているため、固定子巻線40を容易に形成することできる。また、固定子巻線40の相間における共振の低減効果を確実に得ることができる。
【0044】
また、本実施形態の固定子巻線40は、スロット31に軸方向に挿入配置された複数の導体セグメント50が直列に接続されて固定子鉄心30に巻装された複数の相巻線41により構成され、固定子鉄心30の軸方向一端側には、異なるスロット31から延出した導体セグメント50の端末部同士が互いに接合された接合部が周方向に周期的に且つ放射方向に配置されてなる第1コイルエンド群47が形成され、固定子鉄心30の軸方向他端側には、異なるスロット31に収容されたスロット収容部57同士を前記スロット31の外部で連結する複数のターン部52よりなる第2コイルエンド群48が形成されている。そのため、固定子巻線40を連続線で形成する場合に比べて、導体セグメント50単体は、長さが非常に短く、ハンドリングが容易であるため、固定子巻線40を容易に作製することができる。
【0045】
〔試験1〕
実施形態1の奏する最大電圧低減効果を確認するため、各相2倍スロットで12層の波巻き仕様の回転電機にて、各部分巻線間の結線部のみを操作し、部分巻線のスロット挿入順をふった場合の相間電圧を測定する試験を行った。相間電圧の測定は、図8に示すように、相巻線41間で共振が高くなる部位(例えば、相巻線41の延伸方向において出力端子側から約1/4の位置)で行った。その実測値を図9に示す。
【0046】
図9に示すように、a→c→d→bで示すプロット線(従来1)とa→d→c→bで示すプロット線(従来2)は、特許文献1と同様に第1部分巻線aと第4部分巻線dが同じスロットに収容されている場合である。そして、a→b→c→dで示すプロット線(実施形態1)は、図8(b)に示すように、第1部分巻線aと第4部分巻線dが異なる同相スロットU1、U2に収容されており、実施形態1の条件を満たす結線方式である。
【0047】
実施形態1による結線方式では、共振による電圧波形の揺らぎが顕著に低減されることが図9のグラフより明らかである。また、従来1及び2の結線方式の場合には、最大電圧が入力電圧よりも増大しているのに対して、実施形態1の結線方式の場合には、入力電圧に対して約18%の最大電圧の低減を達成している。
【0048】
〔変形例1〕
図10は、変形例1における各相巻線の巻線方式を示す説明図であって、(a)は斜め上方から見た斜視図であり、(b)は軸方向から見た平面図である。
【0049】
変形例1は、固定子巻線40を構成する各相巻線41が、実施形態1のように、複数の導体セグメント50を接続して形成されたものではなく、それぞれの相巻線41が1本の連続線60により形成されたものである。この場合、各相巻線41の連続線60は、固定子鉄心30のスロット31に収容される直線状の複数(12本)のスロット収容部(図示せず)と、隣り合ったスロット収容部同士をスロット収容部の一端側と他端側とで交互に接続する複数(11個)のターン部62とを有する。この連続線60は、延伸方向の最も一端側に位置する第1スロット収容部が固定子鉄心30のスロット31の最内層(第1層)に収容され、延伸方向の最も他端側に位置する第12スロット収容部が固定子鉄心30のスロット31の最外層(第6層)に収容されて、固定子鉄心30を周方向に11/8周するように波巻により巻装されている。
【0050】
なお、変形例1の場合にも、固定子巻線40を構成する3本の相巻線(U相、V相、W相)41は、実施形態1と同様に、延伸方向一端側の出力端子から他端側の中性点までを2n個(本実施形態ではn=2から4個)に分割されて、延伸方向一端側から順に配置された第1部分巻線a、第2部分巻線b、第3部分巻線c、第4部分巻線dにより構成され、第1部分巻線aと第4部分巻線dが固定子鉄心30の異なる同相スロットに収容されている(図5(a)(b)参照)。これら第1〜第4部分巻線a〜dの巻線方式は、全て波巻きである。
【0051】
また、各相巻線41は、実施形態1と同様に、第2部分巻線bと第1部分巻線aが同一の同相スロットに収容されていると共に、第4部分巻線dと第3部分巻線cが同一の同相スロットに収容されている(図5(b)参照)。
【0052】
以上のように構成された変形例1の場合も、実施形態1と同様に、共振周波数を低くして共振ピークを低くすることができるので、固定子巻線40の相間における共振を低減させることができる。その結果、最大相間電圧を小さくし、絶縁のために必要な相間距離を短くすることができる。
【0053】
〔変形例2〕
図11は、変形例2における各相巻線の巻線方式を示す説明図であって、(a)斜め上方から見た斜視図であり、(b)は軸方向から見た平面図であり、(c)は周方向に展開した展開図である。
【0054】
変形例2は、固定子巻線40を構成する各相巻線41が、実施形態1と同様に、U字形状の複数の導体セグメント50を溶接により接続して形成されたものであるが、実施形態1の各相巻線41が波巻きで形成されているのに対して、変形例2の各相巻線41は重ね巻きで形成されている点でのみ実施形態1と異なる。
【0055】
この場合、各相巻線41は、図11に示すように、2本のスロット収容部が同一の同相スロット31に収容されて、それぞれの同相スロットで2層ずつ重ねられるようにして固定子鉄心30に巻装されている。
【0056】
なお、変形例2の場合にも、固定子巻線40を構成する3本の相巻線(U相、V相、W相)41は、実施形態1と同様に、延伸方向一端側の出力端子から他端側の中性点までを2n個(本実施形態ではn=2から4個)に分割されて、延伸方向一端側から順に配置された第1部分巻線a、第2部分巻線b、第3部分巻線c、第4部分巻線dにより構成され、第1部分巻線aと第4部分巻線dが固定子鉄心30の異なる同相スロットに収容されている(図5(a)(b)参照)。
【0057】
また、各相巻線41は、実施形態1と同様に、第2部分巻線bと第1部分巻線aが同一の同相スロットに収容されていると共に、第4部分巻線dと第3部分巻線cが同一の同相スロットに収容されている(図5(b)参照)。
【0058】
以上のように構成された変形例2の場合も、実施形態1と同様に、共振周波数を低くして共振ピークを低くすることができるので、固定子巻線40の相間における共振を低減させることができる。その結果、最大相間電圧を小さくし、絶縁のために必要な相間距離を短くすることができる。
【0059】
〔実施形態2〕
実施形態2の回転電機は、実施形態1の回転電機と固定子20の構成のみが異なる。即ち、実施形態2では、固定子鉄心30に形成されるスロット31のスロット倍数が2k(kは2以上の自然数)とされ、固定子巻線40を構成する各相巻線41が、延伸方向一端(各相端子43)から他端(中性点44)までをk並列に配置された第1〜第k並列巻線42により構成され、第1〜第k並列巻線42は、それぞれ延伸方向一端から他端までを2分割されて、それぞれの分割巻線が第1〜第2kの各同相スロットに独立して収容されている点で、実施形態1と異なる。よって、実施形態1と共通する部材や構成については詳しい説明を省略し、以下、実施形態1と異なる点及び重要な点について説明する。なお、実施形態1と共通する部材については同じ符号を用いる。
【0060】
実施形態2の固定子20は、周方向に96個のスロット31を有する円環状の固定子鉄心30と、スロット31に挿通配置された略U字形状の複数の導体セグメント50の開放端部の端末部同士が固定子鉄心30の軸方向一方側で溶接により接続されて固定子鉄心30に巻装された三相(U相、V相、W相)の固定子巻線40と、を備えている。そして、実施形態2の固定子鉄心30は、実施形態2ではk=2とされているので、同一相の相巻線41を収容する同相スロットが磁極ごとに周方向に連続して4(2k=4)個ずつ設けられている。即ち、スロット倍数が4とされている。
【0061】
また、固定子巻線40は、実施形態2ではk=2とされているので、図12に示すように、各相端子43から中性点44までにおいて2(k)並列に構成された第1及び第2並列巻線42−1,42−2より構成されている。そして、第1及び第2並列巻線42−1,42−2を構成する各相巻線41は、延伸方向一端から他端までをそれぞれ4個の部分巻線に分割されている。即ち、第1並列巻線42−1を構成する3本の相巻線(U相、V相、W相)41は、それぞれ各相端子43側から順に配置された第1部分巻線1a、第2部分巻線1b、第3部分巻線1c及び第4部分巻線1dにより構成されている。また、第2並列巻線42−2を構成する3本の相巻線(U相、V相、W相)41は、各相端子43側から順に配置された第1部分巻線2a、第2部分巻線2b、第3部分巻線2c及び第4部分巻線2dにより構成されている。
【0062】
第1及び第2並列巻線42−1,42−2は、図13及び図14に示すように、前半側の第1及び第2部分巻線(1a,1b)(2a,2b)と後半側の第3及び第4部分巻線(1c,1d)(2c,2d)が、固定子鉄心30の異なる同相スロット31に独立して収容されている。なお、図13には、第1及び第2並列巻線42−1,42−2を構成する各相巻線41のうち、代表として、U相の相巻線41の同相スロット内での収容位置が示されており、V相及びW相の場合もU相と同様である。
【0063】
図13及び図14において、U相の連続する4個の同相スロットU1〜U4は、右側から左側へ順番に第1〜第4同相スロットU1〜U4が並んでいる。この場合、第1同相スロットU1には、第2並列巻線42−2の前半側の第1及び第2部分巻線(2a,2b)が交互に4本ずつ収容され、第2同相スロットU2には、第2並列巻線42−2の後半側の第3及び第4部分巻線(2c,2d)が交互に4本ずつ収容されている。また、第3同相スロットU3には、第1並列巻線42−1の前半側の第1及び第2部分巻線(1a,1b)が交互に4本ずつ収容され、第4同相スロットU4には、第1並列巻線42−1の後半側の第3及び第4部分巻線(1c,1d)が交互に4本ずつ収容されている。
【0064】
そして、第1同相スロットU1に収容された第2並列巻線42−2の前半側の第1及び第2部分巻線(2a,2b)と、第3同相スロットU3に収容された第1並列巻線42−1の前半側の第1及び第2部分巻線(1a,1b)は、電気角で30°離間している。これと同様に、第2同相スロットU2に収容された第2並列巻線42−2の後半側の第3及び第4部分巻線(2c,2d)と、第4同相スロットU4に収容された第1並列巻線42−1の後半側の第3及び第4部分巻線(1c,1d)も、電気角で30°離間している。即ち、2並列に構成された第1並列巻線42−1と第2並列巻線42−2は、固定子鉄心30に対して電気角で30°離間した状態で巻装されている。
【0065】
以上のように構成された実施形態2の回転電機によれば、各相巻線41は、延伸方向一端から他端までを2(k=2)並列に配置された第1及び第2並列巻線42−1,42−2により構成され、第1及び第2並列巻線42−1,42−2は、それぞれ延伸方向一端から他端までを2分割されて、それぞれの分割巻線が第1〜第4同相スロットに独立して収容されている。そのため、第1及び第2並列巻線42−1,42−2の延伸方向一端から他端までを2分割された前半と後半の分割巻線が隔離(別の同相スロットに配置)されることとなり、前半と後半の分割巻線の磁気結合が比較的弱くなるので、負の相互インダクタンスによるコイルインダクタンスの低減を抑えることができる。これにより、上記実施形態1の場合と同様に、共振周波数が低くなり且つ共振ピークが低くなるため、固定子巻線40の相間における共振を低減させることができる。その結果、最大相間電圧は小さくなり、絶縁のために必要な相間距離を短くすることができる。
【0066】
また、実施形態2の回転電機によれば、同相内において、電気角が30°(60°/(k=2))ずれた巻線が形成されることにより、起磁力分布が変化し、合計起磁力の変動幅が小さくなるため、磁気騒音を低減することができる。この実施形態2の優れた効果は、下記の試験2により確認されている。
【0067】
なお、実施形態2では、固定子巻線40を構成する各相巻線41は、複数の導体セグメント50を接続して形成されたものであるが、実施形態2の場合にも、上記の変形例1のように、それぞれの相巻線41を1本の連続線60で形成するようにしてもよい。また、実施形態2では、固定子巻線40を構成する各相巻線41の巻線方式が波巻きとされているが、上記の変形例2のように、波巻きではなく重ね巻きにしてもよい。
【0068】
〔試験2〕
実施形態2の奏する磁気騒音低減効果を確認するため、図15に示すようなスロット倍数が1とされた点でのみ異なる比較例1を準備し、実施形態2と比較例1の騒音レベルを調べる試験を行った。図16には、実施形態2の起磁力分布の測定結果が示され、図17には、比較例1の起磁力分布の測定結果が示されている。そして、図18には、実施形態2と比較例1のそれぞれの騒音レベル(合計起磁力変動幅)が示されている。
【0069】
図16及び図17において、起磁力分布は、電気角60°周期で変化しており、電気角が0°から30°に変化したときに変動幅が最大となり、この変動幅が大きい程、騒音レベルは高くなる。そして、図16及び図17においてそれぞれの領域に発生する変動幅の差分を累積したものが、図18に騒音レベル(合計起磁力変動幅)として示されている。図18から明らかなように、実施形態2の騒音レベルは、比較例1の半分以下に低減されていることが解る。
【0070】
〔他の実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0071】
例えば、実施形態1では、固定子巻線40を構成する基本となる導体セグメント50として、U字形状のものが採用されているが、U字形状のものに代えてI字形状の導体セグメントを用いてもよい。
【0072】
また、実施形態1では、n(nは2以上の自然数)の値がn=2とされ、実施形態2では、k(kは2以上の自然数)の値がk=2とされていたが、n及びkの値は、任意に設定することができる。
【0073】
また、実施形態1及び2は、本発明に係る回転電機をモータ(電動機)に適用した例であるが、本発明は、車両に搭載される回転電機として、電動機あるいは発電機、さらには両者を選択的に使用しうる回転電機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1…回転電機、 10…ハウジング、 11、12…軸受け、 13…回転軸、 14…回転子、 20…固定子、 30…固定子鉄心、 31…スロット、 40…固定子巻線、 41…相巻線、 42…並列巻線、 42−1…第1並列巻線、 42−2…第2並列巻線、 a,1a,2a…第1部分巻線、 b,1b,2b…第2部分巻線、 c,1c,2c…第3部分巻線、 d,1d,2d…第4部分巻線、 43…相端子、 44…中性点、 47…第1コイルエンド群、 48…第2コイルエンド群、 50…導体セグメント、 51…直状部、 52…ターン部、 53…頭頂段部、 54…傾斜部、 55…斜行部、 56…接合部、 57…スロット収容部、 60…連続線、 62…ターン部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に配列された複数対の磁極を有する回転子(14)と、周方向に配列された複数のスロット(31)を有し前記回転子(14)と径方向に対向配置された固定子鉄心(30)、及び、前記スロット(31)に挿入されて前記固定子鉄心(30)に巻装された複数の相巻線(41)よりなる固定子巻線(40)を有する固定子(20)と、を備えた回転電機において、
前記固定子鉄心(30)は、同一相の前記相巻線(41)が収容される同相スロット(U1,U2)を前記磁極ごとに周方向に連続してn(nは2以上の自然数)個ずつ有し、
各前記相巻線(41)は、延伸方向一端から他端までを2n個に分割されて、前記延伸方向一端側から順に配置された第1部分巻線(a)、第2部分巻線(b)、・・・、第2n部分巻線(d)により構成され、前記第1部分巻線(a)と前記第2n部分巻線(d)が前記固定子鉄心(30)の異なる前記同相スロット(U1,U2)に収容されていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、
各前記相巻線(41)は、前記延伸方向一端側から偶数番目に位置する第2m(mは1≦m≦nを満たす全ての自然数)部分巻線と第(2m−1)部分巻線が前記固定子鉄心(30)の同一の前記同相スロットに収容されていることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機において、
前記第1〜第2n部分巻線(a〜d)の巻線方式は全て波巻きであることを特徴とする回転電機。
【請求項4】
周方向に配列された複数対の磁極を有する回転子(14)と、周方向に配列された複数のスロット(31)を有し前記回転子(14)と径方向に対向配置された固定子鉄心(30)、及び、前記スロット(31)に挿入されて前記固定子鉄心(30)に巻装された複数の相巻線(41)よりなる固定子巻線(40)を有する固定子(20)と、を備えた回転電機において、
前記固定子鉄心(30)は、同一相の前記相巻線(41)が収容される同相スロット(U1〜U4)を前記磁極ごとに周方向に連続して2k(kは2以上の自然数)個ずつ有し、
前記固定子巻線(40)は、延伸方向一端から他端までにおいてk並列に構成された第1〜第k並列巻線(42−1,42−2)よりなり、
前記第1〜第k並列巻線(42−1,42−2)を構成する各前記相巻線(41)は、それぞれ延伸方向一端から他端までを2分割されて、それぞれの分割巻線が第1〜第2kの各前記同相スロット(U1〜U4)に独立して収容されていることを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の回転電機において、
前記固定子巻線(40)は、前記スロット(31)に軸方向に挿入配置された複数の導体セグメント(50)が直列に接続されて前記固定子鉄心(30)に巻装された複数の前記相巻線(41)により構成され、前記固定子鉄心(30)の軸方向一端側には、異なる前記スロット(31)から延出した前記導体セグメント(50)の端末部同士が互いに接合された接合部が周方向に周期的に且つ放射方向に配置されてなる第1コイルエンド群(47)が形成され、前記固定子鉄心(30)の軸方向他端側には、異なる前記スロット(31)に収容されたスロット収容部(57)同士を前記スロット(31)の外部で連結する複数のターン部(52)よりなる第2コイルエンド群(48)が形成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の回転電機において、
前記固定子巻線(40)を流れる交流電流は、各相出力端子間で最大電圧330V以上であることを特徴とする回転電機。
【請求項1】
周方向に配列された複数対の磁極を有する回転子(14)と、周方向に配列された複数のスロット(31)を有し前記回転子(14)と径方向に対向配置された固定子鉄心(30)、及び、前記スロット(31)に挿入されて前記固定子鉄心(30)に巻装された複数の相巻線(41)よりなる固定子巻線(40)を有する固定子(20)と、を備えた回転電機において、
前記固定子鉄心(30)は、同一相の前記相巻線(41)が収容される同相スロット(U1,U2)を前記磁極ごとに周方向に連続してn(nは2以上の自然数)個ずつ有し、
各前記相巻線(41)は、延伸方向一端から他端までを2n個に分割されて、前記延伸方向一端側から順に配置された第1部分巻線(a)、第2部分巻線(b)、・・・、第2n部分巻線(d)により構成され、前記第1部分巻線(a)と前記第2n部分巻線(d)が前記固定子鉄心(30)の異なる前記同相スロット(U1,U2)に収容されていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、
各前記相巻線(41)は、前記延伸方向一端側から偶数番目に位置する第2m(mは1≦m≦nを満たす全ての自然数)部分巻線と第(2m−1)部分巻線が前記固定子鉄心(30)の同一の前記同相スロットに収容されていることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機において、
前記第1〜第2n部分巻線(a〜d)の巻線方式は全て波巻きであることを特徴とする回転電機。
【請求項4】
周方向に配列された複数対の磁極を有する回転子(14)と、周方向に配列された複数のスロット(31)を有し前記回転子(14)と径方向に対向配置された固定子鉄心(30)、及び、前記スロット(31)に挿入されて前記固定子鉄心(30)に巻装された複数の相巻線(41)よりなる固定子巻線(40)を有する固定子(20)と、を備えた回転電機において、
前記固定子鉄心(30)は、同一相の前記相巻線(41)が収容される同相スロット(U1〜U4)を前記磁極ごとに周方向に連続して2k(kは2以上の自然数)個ずつ有し、
前記固定子巻線(40)は、延伸方向一端から他端までにおいてk並列に構成された第1〜第k並列巻線(42−1,42−2)よりなり、
前記第1〜第k並列巻線(42−1,42−2)を構成する各前記相巻線(41)は、それぞれ延伸方向一端から他端までを2分割されて、それぞれの分割巻線が第1〜第2kの各前記同相スロット(U1〜U4)に独立して収容されていることを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の回転電機において、
前記固定子巻線(40)は、前記スロット(31)に軸方向に挿入配置された複数の導体セグメント(50)が直列に接続されて前記固定子鉄心(30)に巻装された複数の前記相巻線(41)により構成され、前記固定子鉄心(30)の軸方向一端側には、異なる前記スロット(31)から延出した前記導体セグメント(50)の端末部同士が互いに接合された接合部が周方向に周期的に且つ放射方向に配置されてなる第1コイルエンド群(47)が形成され、前記固定子鉄心(30)の軸方向他端側には、異なる前記スロット(31)に収容されたスロット収容部(57)同士を前記スロット(31)の外部で連結する複数のターン部(52)よりなる第2コイルエンド群(48)が形成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の回転電機において、
前記固定子巻線(40)を流れる交流電流は、各相出力端子間で最大電圧330V以上であることを特徴とする回転電機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2013−81356(P2013−81356A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−148570(P2012−148570)
【出願日】平成24年7月2日(2012.7.2)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月2日(2012.7.2)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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