説明

回転霧化式塗装装置

【課題】従来よりも塗装パターン径を大きくすることができる回転霧化式塗装装置を提供する。
【解決手段】回転霧化式塗装装置は、有底筒状で内周面が開口縁に向って次第に拡径された回転霧化頭22と、回転霧化頭22を回転させる回転駆動機構と、回転霧化頭22内に塗料を供給する塗料供給機構243と、空気を噴出させる噴射口43aとを備える。噴射口43aは、回転霧化頭22の回転軸に対して径方向外側に向って開口する。回転駆動機構により回転霧化頭22を回転させた状態で、塗料供給機構243により回転霧化頭22内に塗料を供給し、供給された塗料が遠心力により回転霧化頭22の開口縁から飛散して霧化され、霧化された塗料が噴射口43aから噴射される空気により所定の塗装パターン径とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転霧化式塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のボディ等の被塗装物を塗装する塗装装置として、例えば回転霧化式塗装装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この回転霧化式塗装装置は、有底筒状で内周面が開口縁に向って次第に拡径された回転霧化頭を備える。そして、回転霧化頭が回転された状態で、高電圧が印加された塗料(液体塗料)が回転霧化頭内に供給される。回転霧化頭内に供給された塗料は遠心力により回転霧化頭の開口縁から飛散して霧化される。
【0003】
又、回転霧化頭の径方向外側には、回転霧化頭と同心に配置された2つの環状の空気噴出口が設けられている。各空気噴出孔は、互いに異なる角度で径方向内側に開口しており、空気噴射量を制御することで塗装パターン径を変更できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−72703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の回転霧化式塗装装置は、2つの空気噴出口が径方向内方側に開口しているため、塗装パターン径を大きくすることに限界があった。
【0006】
本発明は、従来よりも塗装パターン径を大きくすることができる回転霧化式塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、有底筒状で内周面が開口縁に向って次第に拡径された回転霧化頭と、該回転霧化頭を回転させる回転駆動機構と、前記回転霧化頭内に塗料を供給する塗料供給機構と、前記回転霧化頭の径方向外側から空気を噴出させる噴射口とを備え、前記回転駆動機構により前記回転霧化頭を回転させた状態で、前記塗料供給機構により前記回転霧化頭内に塗料を供給し、供給された塗料が遠心力により前記回転霧化頭の開口縁から飛散して霧化され、霧化された塗料が前記噴射口から噴射される空気により所定の塗装パターン径とされる回転霧化式塗装装置において、前記噴射口は前記回転霧化頭の回転軸に対して径方向外側に向って開口すること特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、空気の噴射口が径方向外側に向けて開口されているため、噴射口から噴射される空気が回転霧化頭の回転軸に対して径方向外方に向って噴射される。これにより、塗装パターン径を従来のものよりも大きくすることができ、従来よりも広範囲の塗装が可能となって、塗装作業の効率化を図ることができる。
【0009】
本発明において、前記噴射口を第1の噴射口として、第1の噴射口と回転霧化頭との間に第2の噴射口を設け、第1の噴射口の開口面積を第2の噴射口の開口面積よりも小さく設定することが好ましい。
【0010】
かかる構成によれば、第2の噴射口よりも径方向外方に位置する第1の噴射口から噴射される空気の速度を速くすることができる。これにより、第2の噴射口から噴射される空気で形成されるエアカーテンを突き抜けて飛び出た塗料粒子を第1の噴射口から噴射される空気で被塗装物に向けて軌道修正することができ、塗装パターン径外に飛び散る塗料の量を抑制させることができる。
【0011】
具体的には、第1の噴射口は周方向に間隔を存して穿設された複数の貫通孔で構成し、第2の噴射口は環状に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の回転霧化式塗装装置の実施形態を示す斜視図。
【図2】実施形態の回転霧化式塗装装置の先端部分を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、本発明の実施形態の回転霧化式塗装装置1は、ワーク(被塗装物)たる自動車のボディ2を静電塗装するものであり、ロボットアーム3の先端に取り付けられた円柱状のボディ部10と、ボディ部10の先端に着脱自在に設けられたヘッド部20とを備える。
【0014】
図2に示すように、ヘッド部20は、図外のエアモータ(回転駆動機構)の回転軸21と、回転軸21の先端に設けられた回転霧化頭22と、回転軸21の外周面を覆うハウジング25と、ハウジング25の先端に設けられ回転霧化頭22の外周面を覆うエアキャップ40とを備える。
【0015】
回転霧化頭22には、図外の塗料供給機構から流路243及び貫通孔22aを介して塗料(液体塗料)が供給される。流路243には空気の圧力で開閉する図外の開閉弁が設けられ、流路243に供給する空気の圧力を調整することで、開閉弁の開度を変更し、回転霧化頭22への塗料の供給量を調整する。図2に示す符号244は、洗浄液を回転霧化頭22へ供給する洗浄液供給路である。
【0016】
エアキャップ40は、回転霧化頭22の外周面を囲繞する内部エアキャップ41と、内部エアキャプ41の外周面を囲繞するシェーピングエアキャップ42と、シェーピングエアキャップ42の外周面を囲繞するアシストエアキャップ43とを備える。
【0017】
内部エアキャップ41は、略円筒形状に構成され、外周面先端部には、先端に向かって次第に径が小さくなる傾斜部41aを備えている。内部エアキャップ41の先端は、回転霧化頭22の開口縁の近傍に位置している。
【0018】
シェーピングエアキャップ42は、略円筒形状に構成され、内周面先端部には、先端に向かって次第に径が小さくなる傾斜部42aを備えている。シェーピングエアキャップ42の先端は、内部エアキャップ41の先端よりも回転霧化頭22の開口縁の近傍に位置している。
【0019】
内部エアキャップ41とシェーピングエアキャップ42との間には空間401が画成されている。内部エアキャップ41の後端部には、空間401に空気を供給するための空気供給口41bが設けられている。又、内部エアキャップ41とシェーピングエアキャップ42との間の先端部には、傾斜部41aと傾斜部42aに挟まれるようにして環状の隙間44が形成されている。
【0020】
図外の空気供給源から空気供給口41bを介して空間401に供給された空気は、隙間44から回転霧化頭22の開口縁に向って噴射され、シェーピングエアとなる。即ち、実施形態の隙間44が本発明の第2の噴射口に相当する。
【0021】
アシストエアキャップ43は、略円筒形状に構成され、先端には複数の貫通孔43aが互いに周方向に間隔を存して設けられている。各貫通孔43aは、回転霧化頭22の回転軸に対して径方向外方へ30度外側に傾斜するように穿設されている。
【0022】
シェーピングエアキャップ42とアシストエアキャップ43との間には空間402が画成される。シェーピングエアキャップ42の後端部には、空間402に空気を供給するための空気供給口42bが設けられている。
【0023】
図外の空気供給源から空気供給口42bを介して空間402に供給された空気は、複数の貫通孔43aから径方向外方へ30度の角度で噴射され、アシストエアとなる。即ち、実施形態の複数の貫通孔43aが本発明の第1の噴射口に相当する。
【0024】
第1の噴射口43aの開口面積の合計は、第2の噴射口44の開口面積よりも小さく設定されている。これにより、同一の圧力で空気を噴射させる場合、第1の噴射口43aから噴射される空気の速度は、第2の噴射口44から噴射される空気の速度よりも速くなる。
【0025】
次に、以上のように構成される回転霧化式塗装装置1の作動について説明する。ます、空気供給源からエアモータに空気を供給して、回転霧化頭22を高速回転させる。更に、図外の電源からの電流を昇圧して、図外の塗料供給機構から供給される塗料を帯電させる。
【0026】
そして、図外の開閉弁を開弁させて、回転霧化頭22内に帯電した塗料を供給する。塗料は、回転霧化頭22の回転による遠心力で開口縁から飛散して霧化することにより、回転霧化頭22からワークに向けて噴霧される。このようにして、静電塗装が行われる。
【0027】
ここで、第2の噴射口44からのシェーピングエアの噴射量と、第1の噴射口43aからのアシストエアの噴射量とを適宜調整することで、塗装パターン径を調整することができる。
【0028】
例えば、第1の噴射口43aからアシストエアを噴射すると、アシストエアは遠心力で開口縁から噴霧される塗料パターン径を絞り込むことができる。又、第2の噴射口44からシェーピングエアを噴射すると、シェーピングエアは噴霧される塗料パターン径を更に絞り込むことができる。
【0029】
実施形態の回転霧化式塗装装置1は、第1の噴射口43aが回転霧化頭22の回転軸に対して径方向外方に30度傾いて開口されているため、従来の第1の噴射口が径方向内方に傾いて開口されているものに比し、塗料パターン径をより大きくすることができ、塗装作業の効率化を図ることができる。
【0030】
又、アシストエアが噴射される第1の噴射口43aの合計の開口面積は、シェーピングエアが噴射される第2の噴射口44の開口面積よりも小さく設定されている。これにより、シェーピングエアが構成するエアカーテンを突き抜けて飛び出した塗料粒子をシェーピングエアよりも風速の速いアシストエアでワーク方向に軌道修正することができ、塗料が塗装パターン径の外に飛び散る量、所謂オーバースプレーを減少させることができる。
【0031】
尚、実施形態においては、第1の噴射口43aの開口方向を回転霧化頭22の回転軸に対して30度に設定した。しかしながら、本発明の第1の噴射口43aの開口方向はこれに限られるものではなく、回転軸に対して径方向外方に開口しているればよく、適宜設定可能である。
【0032】
又、実施形態においては、第1の噴射口を複数の貫通孔43aで構成したが、第2の噴射口44と同様にシェーピングエアキャップ42とアシストエアキャップ43との間に形成した環状の隙間で構成してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…回転霧化式塗装装置、2…ボディ、3…ロボットアーム、10…ボディ部、20…ヘッド部、21…エアモータの回転軸、22…回転霧化頭、22a…塗料用貫通孔、243…塗料流路、244…洗浄液供給路、25…ハウジング、40…エアキャップ、41…内部エアキャップ、41a…傾斜部、41b…空気供給口、42…シェーピングエアキャップ、42a…傾斜部、42b…空気供給口、43…アシストエアキャップ、43a…貫通孔(第1の噴射口)、44…隙間(第2の噴射口)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状で内周面が開口縁に向って次第に拡径された回転霧化頭と、該回転霧化頭を回転させる回転駆動機構と、前記回転霧化頭内に塗料を供給する塗料供給機構と、前記回転霧化頭の径方向外側から空気を噴出させる噴射口とを備え、前記回転駆動機構により前記回転霧化頭を回転させた状態で、前記塗料供給機構により前記回転霧化頭内に塗料を供給し、供給された塗料が遠心力により前記回転霧化頭の開口縁から飛散して霧化され、霧化された塗料が前記噴射口から噴射される空気により所定の塗装パターン径とされる回転霧化式塗装装置において、
前記噴射口は前記回転霧化頭の回転軸に対して径方向外側に向って開口すること特徴とする回転霧化式塗装装置。
【請求項2】
請求項1記載の回転霧化式塗装装置において、
前記噴射口を第1の噴射口として、該第1の噴射口と前記回転霧化頭との間に第2の噴射口を設け、
該第1の噴射口の開口面積が前記第2の噴射口の開口面積よりも小さく設定されることを特徴とする回転霧化式塗装装置。
【請求項3】
請求項2記載の回転霧化式塗装装置において、
前記第1の噴射口は、周方向に間隔を存して穿設された複数の貫通孔で構成され、
前記第2の噴射口は、環状に形成されることを特徴とする回転霧化式塗装装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate