説明

回転霧化頭

【課題】良好な塗装が行えるようにする。
【解決手段】回転霧化頭Cは、回転軸11に固着される円筒状の軸取付部21と、前面壁31と後面壁47と周壁27とで囲まれた貯留室55と、前面壁31の外周縁からカップ状に拡径した形態であって面が拡散面30となっている拡径部29と、前面壁31に貫通形態で形成されて貯留室55内の塗料を拡散面30へ流出させる流出孔32を備える。回転霧化頭Cは、軸取付部21と周壁27と前面壁31と拡径部29とが一体に形成された第1部品20と、後面壁47を有する第2部品40とを組み付けて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転霧化頭に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1と特許文献2には、回転軸により回転駆動され、供給された塗料を遠心力により霧化して放出する回転霧化頭が記載されている。これらの特許文献に記載された回転霧化頭は、回転軸に固着される円筒状の軸取付部と、前面壁と後面壁と周壁とにより囲まれた形態であって後面壁の中央の開口から塗料が供給されるようになっている貯留室と、前面壁の外周縁からカップ状に拡径した形態であって前面が拡散面となっている拡径部と、前面壁の外周縁に貫通形態で形成されて貯留室内の塗料を拡散面へ流出させるための流出孔とを備える、という共通構造を有している。そして、特許文献1と特許文献2は、いずれも、回転軸に固着される第1部品と、第1部品に組み付けられる第2部品とによって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3266531号公報
【特許文献2】特開2005−118710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の回転霧化頭を構成する第1部品には、軸取付部と後面壁と拡径部が一体に形成され、第2部品には、周壁と前面壁が一体に形成されている。この特許文献1の回転霧化頭は、回転軸に固着される第1部品に比べて第2部品が小さくて軽量であるため、軸ブレが生じる虞は少ない。しかし、流出孔が形成されている第2部品と、拡散面が形成されている第1部品とが別部品となっているので、貯留室から拡散面に至る塗料の経路の途中に大きな段差や小さな隙間が存在する。そのため、これらの段差や隙間によって塗料にエアが混入したり、段差や隙間に塗料が残留する等の虞がある。エアの混入は、塗料の微粒化に支障を来す等の不具合の原因となるため、好ましくない。また、段差や隙間に残留した塗料が、固化した状態で剥がれて塗装面に塗着すると、塗装面の品質が低下することになる。
【0005】
一方、特許文献2の回転霧化頭を構成する第1部品には、軸取付部と後面壁と周壁とが一体に形成され、第2部品には、前面壁と拡径部が一体に形成されている。この回転霧化頭は、流出孔と拡散面が同一部品(第2部品)に形成されているので、貯留室から拡散面に至る塗料の経路の途中に段差や隙間が存在せず、段差や隙間の存在によって塗料にエアが混入したり、段差や隙間に塗料が残留するという虞はない。しかし、回転軸に固着される第1部品に比べて第2部品が大きくて重量があることから、軸ブレを生じることが懸念される。軸ブレが生じると、塗料の微粒化に悪影響が及んだり、第1部品と第2部品との境目に塗料が残留し易くなる等の虞があるため、良好な塗装が行われなくなる。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、良好な塗装が行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、回転軸により回転駆動され、供給された塗料を遠心力により霧化して放出する回転霧化頭であって、前記回転軸に固着される円筒状の軸取付部と、前面壁と後面壁と周壁とにより囲まれた形態であって、前記後面壁の中央の開口から塗料が供給されるようになっている貯留室と、前記前面壁の外周縁からカップ状に拡径した形態であって、前面が拡散面となっている拡径部と、前記前面壁の外周縁に貫通形態で形成され、前記貯留室内の塗料を前記拡散面へ流出させるための流出孔とを備えている回転霧化頭において、前記軸取付部と前記周壁と前記前面壁と前記拡径部とが一体に形成されている第1部品と、前記後面壁を有し、前記第1部品に対して後方から組み付けられることで前記貯留室を形成する第2部品とを備えて構成されているところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記第1部品と前記第2部品との隙間にシールリングを設け、前記シールリングの弾性により、前記第1部品と前記第2部品との隙間がシールされているとともに、前記第1部品に対して前記第2部品が調芯されるようになっているところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記シールリングが、前記第1部品の内周面と前記第2部品の外周面のうち一方の周面に形成したシール溝内に保持されており、前記シールリングが、前記シール溝の内面の間で軸線方向に挟み付けられているところに特徴を有する。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載のものにおいて、前記第1部品の内周面と前記第2部品の外周面の隙間のうち前記シール溝と前記貯留室とを連通させる連通領域は、他の領域よりも間隔が広くなっているところに特徴を有する。
【0011】
請求項5の発明は、請求項3又は請求項4に記載のものにおいて、前記第1部品の内周面と前記第2部品の外周面のうち前記シール溝が形成されていない側の周面には、前記シールリングを係止させることにより前記第2部品を前記第1部品に対して軸線方向に位置決めする位置決め溝が形成されているところに特徴を有する。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記第1部品の内周には、雌ネジ部と、前方に向かって縮径するテーパ状の受け面とが形成され、前記第2部品の外周には、前記雌ネジ部に螺合される雄ネジ部と、前方に向かって縮径した形態であって前記受け面に当接可能なテーパ状の調芯面とが形成されているところに特徴を有する。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のものにおいて、前記周壁の内周面は、前方に向かって拡径したテーパ状をなし、前記周壁の内周面から斜め後方へ延長して前記第1部品の軸線と交差させた仮想線が、前記第1部品と干渉せずに前記第1部品の後方へ抜けるようになっているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0014】
<請求項1の発明>
第1部品には、前面壁と拡散面が一体に形成されているので、貯留室から拡散面に至る塗料の経路の途中に大きな段差や小さな隙間が存在せず、段差や隙間の存在によって塗料にエアが混入したり、段差や隙間に塗料が残留するという虞はない。回転軸に固着される第1部品には、軸取付部と周壁と前面壁と拡径部が一体に形成されているのに対し、第2部品には後面壁が形成されているだけであり、第1部品に比べて第2部品は比較的軽量となっているので、軸ブレを生じる虞もない。したがって、本発明によれば、塗料にエアが混入すること、塗料が段差や隙間に残留すること、軸ブレを生じることに起因する塗装不良が防止され、良好な塗装を行うことができる。
【0015】
<請求項2の発明>
シールリングは、第1部品と第2部品との隙間をシールする機能と、第1部品に対して第2部品を調芯する機能とを兼ね備えているので、シール手段と調芯手段とを別々に設ける場合に比べて、部品点数が少なくて済む。
【0016】
<請求項3の発明>
貯留室内の塗料の一部は、第1部品の内周面と第2部品の外周面との隙間を通ってシールリング及びシール溝に到達する虞がある。しかし、シールリングはシール溝の内面の間で軸線方向に挟み付けられているので、塗料は、シールリングとシール溝の内面との当接位置を超えてシール溝の溝底面にまで侵入することはない。つまり、塗料の侵入は、シール溝の開口縁のうち第1部品の内周面と第2部品の外周面との隙間に近い側の開口縁の近傍で阻止される。このように、第1部品と第2部品の隙間に塗料が侵入しても、その侵入深さは比較的浅いので、洗浄の際には侵入した塗料を確実に除去することができる。
【0017】
<請求項4の発明>
第1部品の内周面と第2部品の外周面の隙間のうちシール溝と貯留室とを連通させる連通領域は、他の領域よりも間隔が広くなっているので、洗浄液を流動させたときの流動抵抗が小さく抑えられる。したがって、シールリング及びシール溝に供給される洗浄液の流量が多くなり、高い洗浄効果が得られる。
【0018】
<請求項5の発明>
第2部品を第1部品に対して位置決めする手段として、シールリングとシール溝を利用したので、位置決め専用の手段として新たに形成したのは、シール溝が形成されていない側の周面の位置決め溝だけで済んでいる。したがって、位置決め専用の手段を第1部品と第2部品の両方に形成する場合に比べると、形状を簡素化することができる。
【0019】
<請求項6の発明>
第2部品を第1部品に組み付ける際には、雄ネジ部を雌ネジ部に螺合し、調芯面を受け面に当接させる。テーパ状の調芯面とテーパ状の受け面との当接により、第2部品は第1部品に対して同軸状に調芯される。
【0020】
<請求項7の発明>
周壁の内周面は、前方即ち流出孔に向かって拡径したテーパ状をなすので、貯留室内の塗料は、貯留室内に残留することなく、遠心力により確実に流出孔に到達する。また、第2部品を外した状態では、第1部品の後方から周壁の内周面と前面壁を、直接、目視できるので、貯留室内の洗浄の状態を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態1の回転霧化頭の断面図
【図2】シールリングを外した状態をあらわす部分断面図
【図3】回転霧化頭の正面図
【図4】第1部品から第2部品を外した状態をあらわす斜視図
【図5】第2部品を外した状態における第1部品の後方からの斜視図
【図6】回転霧化頭をガン本体に取り付けた状態をあらわす断面図
【図7】シールリングとその近傍の状態をあらわす部分拡大断面図
【図8】実施形態2の回転霧化頭の断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図7を参照して説明する。本実施形態1の塗装ガンAは、図6に示すように、ガン本体Bの前端部に、軸線Caを前後方向に向けた回転霧化頭Cを設け、この回転霧化頭Cを回転駆動することにより、回転霧化頭Cに供給した液体の塗料を霧化状態で噴出して被塗物(図示省略)に塗着させるようにしたものである。
【0023】
ガン本体B内には、回転霧化頭Cと同軸状の円筒形をなす塗料供給管10が固定して収容され、この塗料供給管10の前端の吐出口がガン本体Bの前端に配置されている。同じくガン本体B内には、電動モータやエアタービンモータ等からなる回転駆動手段(図示省略)が設けられ、この回転駆動手段には、回転霧化頭Cと同軸上に配置された円筒形をなす回転軸11が設けられている。回転軸11は、塗料供給管10を包囲するように配置されており、回転軸11の前端部内周には、回転霧化頭Cを固着するための雌ネジ部12が形成されている。
【0024】
回転霧化頭Cは、円筒形をなす第1部品20と、同じ円筒形をなす第2部品40と、弾性材料からなるシールリング50とを組み付けて構成されている。第1部品20の後端部には軸取付部21が一体に形成されており、軸取付部21の外周には、回転軸11に螺合するための雄ネジ部22が形成されている。第1部品20には、軸取付部21から前方に延出した形態の保持部23が一体に形成されている。保持部23は、第2部品40を第1部品20に対して同軸状に(調芯した状態で)保持するためのものである。保持部23の内周面のうち前端部を除いた領域は、軸取付部21の内周面に対して面一状に連なる保持面24となっている。また、保持部23の前端部の位置決め部25の内周は、保持面24よりも小径である。そして、この位置決め部25の内周には、全周に亘って連続する位置決め溝26が形成されている。図2及び図6に示すように、位置決め溝26は、回転霧化頭Cの軸線Caを含む断面において三角形状に凹ませた形態である。
【0025】
第1部品20には、保持部23から前方に延出した形態の周壁27が一体に形成されている。周壁27の内周面は、回転霧化頭Cの軸線Ca方向における全領域に亘り、前方に向かって次第に拡径するテーパ状の誘導面28となっている。図2に示すように、回転霧化頭Cの軸線Caを含む断面において、誘導面28から斜め後方へ延長して第1部品20の軸線Caと交差させた仮想線28aは、第1部品20と干渉せずに第1部品20の後方へ抜けるようになっている。
【0026】
また、図7に示すように、回転霧化頭Cの軸線Caを含む断面において、誘導面28の後端は、位置決め溝26の前側の溝底面に対して鈍角をなすように連なっている。誘導面28の後端(位置決め溝26の開口縁のうち前側の開口縁)の内径寸法は、位置決め溝26の開口縁のうち後側の開口縁の内径と同じ寸法である。第1部品20には、周壁27から前方へ延出した形態の拡径部29が一体に形成されている。拡径部29は、前方に向かってカップ状に拡径した形態であり、拡径部29の前面は、前方に向かって次第に拡径した形態の拡散面30となっている。
【0027】
第1部品20には、周壁27と拡径部29の境界位置において、第1部品20の中心孔を前後に区画する(仕切る)形態の前面壁31が一体に形成されている。つまり、上記の拡径部29は、前面壁31の外周縁から延出した形態となる。前面壁31の前面は、回転霧化頭Cの軸線Caと直角な平面である。前面壁31の後面のうち中央部分は後方に向かって突出した形状をなし、前面壁31の後面のうち周縁部分は、前面壁31の前面とほぼ平行な平面となっている。
【0028】
前面壁31には、その外周縁を前後に貫通した形態の流出孔32が形成されている。流出孔32は、円形をなし、周方向において等角度ピッチで複数形成されている。また、流出孔32の貫通方向は、周壁27の誘導面28の傾斜方向と平行である。そして、回転霧化頭Cの軸線Caを含む断面において、流出孔32の内面と誘導面28は、大きな段差や隙間を介在させることなく連続し、流出孔32の内面と拡散面30も、大きな段差や隙間を介在させることなく連続する。
【0029】
第2部品40は、筒状部41と後面壁47とを一体に形成したものである。筒状部41の後端部外周には、全周に亘ってリブ状に突出した形態の突部42が形成されている。筒状部41の内周には、治具51を螺合させるための雌ネジ部43が形成されている。筒状部41の前端部外周には、シール溝44が全周に亘って形成されている。図7に示すように、シール溝44の内面のうち溝前面44Fと溝後面44Rは、回転霧化頭Cの軸線Caと直角な平面をなし、シール溝44の溝底面44Bは、回転霧化頭Cの軸線Caと平行な円周面である。また、溝前面44Fと溝底面44Bは四半円弧面によって滑らかに連なり、溝後面44Rと溝底面44Bも四半円弧面によって滑らかに連なっている。さらに、回転霧化頭Cの軸線Caを含む断面において、溝後面44Rと筒状部41の外周面とは直角に連なっている。
【0030】
筒状部41の外周のうちシール溝44よりも後方の領域の外径は、保持部23の前端部のうち位置決め溝26の後方に隣接する領域(保持面24よりも前方であって保持面24よりも小径の領域)の内径と同じかそれよりも僅かに小さい寸法とされている。一方、筒状部41の前端の小径部45(筒状部41の外周のうちシール溝44よりも前方の領域)の外径は、シール溝44より後方の領域の外径よりも小さい寸法である。そして、この小径部45の外周には、前方に向かって次第に小径となるテーパ面46が形成されている。
【0031】
シール溝44には、シールリング50が装着されている。シールリング50を装着した状態では、シールリング50が、シール溝44の溝前面44Fと溝後面44Rと溝底面44Bとに当接する。つまり、シールリング50は、回転霧化頭Cの軸線Ca方向(前後方向)において溝前面44Fと溝後面44Rとの間で挟み付けられた状態となる。また、シールリング50の外周側部分は、筒状部41の外周面よりも外側へ突出している。
【0032】
後面壁47は、筒状部41の前端部に配置されている。後面壁47の中央には、円形の貫通孔48が形成されている。貫通孔48の内径は、塗料供給管10の前端部の外径よりも少し大きい寸法とされている。後面壁47の前面における周縁領域は、回転霧化頭Cの軸線Caと直角な平面となっている。後面壁47の前面のうち貫通孔48の後縁の近い領域は、前方に向かって次第に小径となるように突出した形態の転向面49となっている。
【0033】
第2部品40を第1部品20に組み付ける際には、治具51が用いられる。図4に示すように、治具51は、全体として回転霧化頭Cと同軸の円柱状をなし、治具51の後端部には大径の摘み部52が形成され、治具51の前端部には雄ネジ部53が形成されている。両部品20,40を組み付ける際には、予め、第2部品40の後端の雌ネジ部43に治具51の雄ネジ部53を螺合し、治具51に第2部品40を取り付ける。次に、摘み部52を摘んで、第2部品40を後方から第1部品20内に挿入する。
【0034】
挿入の過程では、第2部品40の外周の突部42が、第1部品20の軸取付部21の内周と保持面24とに摺接し、挿入の終期にはシールリング50が位置決め部25の内周に接触して弾性変形する。そして、第2部品40が第1部品20に対して正規の組付け位置に到達すると、シールリング50は、位置決め溝26に嵌合し、シール溝44と位置決め溝26との間(第1部品20と第2部品40との間)で径方向に挟み付けられて弾性変形する。このようにシール溝44内に保持されているシールリング50が位置決め溝26に嵌合することにより、回転霧化頭Cの軸線Ca方向(前後方向)において、第2部品40が第1部品20に対して位置決めされる。また、突部42が保持面24に対し全周に亘って接触すること、及びシールリング50が位置決め溝26の内面に対して弾性的に接触することにより、回転霧化頭Cの軸線Caと直角な径方向においても、第2部品40が第1部品20に対して位置決めされる。
【0035】
第2部品40が第1部品20に対して正規の位置に位置決めされた後は、治具51を回転させることにより、その雄ネジ部53を第2部品40の雌ネジ部43から外し、治具51を第2部品40から抜き取る。以上により、第1部品20と第2部品40の組付けが完了し、回転霧化頭Cが得られる。
【0036】
両部品20,40の組付けが完了した状態では、図1及び図2に示すように、回転霧化頭C内に、前面壁31、周壁27及び後面壁47によって囲まれた貯留室55が形成される。この貯留室55は複数の流出孔32を介して拡径部29の前方空間に連通される。第1部品20の内周と第2部品40の外周との隙間がシールリング50によって液密状にシールされる。また、第1部品20の内周面と第2部品40の外周面の隙間のうち回転霧化頭Cの軸線Ca方向において小径部45と対応する領域は、シール溝44と貯留室55とを連通させる連通領域56となっている。小径部45の外径は、第2部品40の他の領域の外径よりも小さいので、連通領域56の間隔は、第1部品20と第2部品40との隙間のうちシール溝44よりも後方の領域よりも間隔が広くなっている。
【0037】
回転霧化頭Cは、ガン本体Bの回転軸11に取り付けられる。取り付けに際しては、ガン本体Bの前方から回転霧化頭Cを接近させ、貫通孔48に塗料供給管10を貫通させることにより、吐出口を貯留室55内に臨ませるとともに、軸取付部21の雄ネジ部22を回転軸11の雌ネジ部12に螺合する。
【0038】
塗装を行う際には、回転軸11と一体に回転霧化頭Cを回転させた状態で、塗料供給管10を通して液体の塗料が貯留室55内に供給される。貯留室55内に供給された塗料は、遠心力により周壁27の誘導面28に沿って前方へ移動し、流出孔32を通過して拡散面30へ供給される。ここで、周壁27の誘導面28は、前方即ち流出孔32に向かって拡径したテーパ状をなすので、貯留室55内の塗料は、貯留室55内に残留することなく、遠心力により確実に流出孔32に到達する。そして、拡散面30に供給された塗料は、遠心力により拡散面30に沿って拡散されながら外周側へ移動し、拡散面30(拡径部29)の外周縁において微粒化され、霧化塗料となって放射状に噴出(放出)される。
【0039】
また、回転霧化頭Cを洗浄して塗料を洗い流す際には、前方から拡散面30に向けて洗浄液を吹き付ける。すると、吹き付けられた洗浄液は、拡散面30及び前面壁31の前面に付着している塗料を除去する。また、洗浄の際には、洗浄液を前方から流出孔32に向けて吹き付ける。すると、吹き付けられた洗浄液は、流出孔32を通って貯留室55内に流入し、貯留室55内に残留している塗料を除去し、除去された塗料は、洗浄液とともに別の流出孔32を通って回転霧化頭Cの前面側へ排出される。
【0040】
貯留室55内に流入した洗浄液は、後面壁47の前面に当たる。ここで、後面壁47の前面のうち貫通孔48の周囲の部分は、前方に向かって小径となるように突出した形態の転向面49となっている。したがって、後面壁47に当たった洗浄液は、転向面49によって前面壁31側、即ち流出孔32側へ向きを変えるので、貫通孔48を通って後面壁47の後方(即ち、ガン本体Bの内部)へ流出し難くなっている。
【0041】
また、貯留室55内に流入した洗浄液は、誘導面28に沿ってシール溝44及びシールリング50に向かって流れ、シールリング50に付着している塗料と、第1部品20の内周と第2部品40の外周のうち連通領域56と対応する領域(シール溝44及びシールリング50よりも前方の領域)に付着している塗料を除去する。
【0042】
このとき、第1部品20と第2部品40の隙間のうちシール溝44よりも前方の連通領域56では、両部品20,40の隙間が大きくなっている。また、第1部品20の内周面のうち連通領域56との対応領域が誘導面28と面一状に連続し、且つ第2部品の内周面のうち連通領域56と対応する領域にはテーパ面46が形成されているので、連通領域56の間隔は前方(貯留室55側)に向かって拡大した形態となっている。したがって、洗浄液が連通領域56内を流動するときに流動抵抗が小さく、洗浄液が流入し易くなっている。このように、連通領域56では洗浄液の流量が多いので、この連通領域56に付着している塗料、及びシールリング50の外面のうち連通領域56に臨む外面に付着している塗料は、確実に除去される。
【0043】
また、貯留室55内に供給された塗料の一部は、第1部品20の内周面と第2部品40の外周面との隙間を通ってシールリング50及びシール溝44に到達する。この塗料の侵入経路は袋小路状の行き止まりとなっているため、洗浄の際に塗料が除去されずに残留したままになることが懸念される。しかし、本実施形態では、シールリング50を、シール溝44の溝前面44Fと溝後面44Rとの間で回転霧化頭Cの軸線Ca方向(前後方向)に挟み付け、溝前面44Fとシールリング50の前端面とが当接するようになっている。したがって、塗料は、シールリング50と溝前面44Fとの当接位置を超えてシール溝44の溝底面にまで侵入することはない。つまり、塗料の侵入は、シール溝44の開口縁のうち第1部品20の内周面と第2部品40の外周面との隙間(連通領域56)に近い前側の開口縁の近傍で阻止される。このように、第1部品20と第2部品40の隙間に塗料が侵入しても、その侵入深さは比較的浅いので、洗浄の際には侵入した塗料を確実に除去することができる。
【0044】
また、貯留室55の周壁27の内周の誘導面28は、後方に向かって縮径した形態となっているため、第2部品40を外して後方から第1部品20の内部を覗いたときに、前面壁31の後面は目視確認できるものの、周壁27の洗浄状態を目視確認できなくなることが懸念される。その点、本実施形態では、誘導面28から斜め後方へ延長して第1部品20(回転霧化頭C)の軸線Caと交差させた仮想線28aが、第1部品20と干渉せずに第1部品20の後方へ抜けるように、誘導面28のテーパの角度を設定しているので、図5に示すように、第1部品20の後方から周壁27の内周面を、直接、目視できる。したがって、貯留室55内の洗浄の状態を目視確認することができる。
【0045】
上述のように、本実施形態の回転霧化頭Cは、軸取付部21と周壁27と前面壁31と拡径部29とが一体に形成されている第1部品20と、後面壁47を有し、第1部品20に対して後方から組み付けられることで貯留室55を形成する第2部品40とを備えて構成されている。このように、第1部品20には、前面壁31と拡散面30が一体に形成されているので、貯留室55から拡散面30に至る塗料の経路の途中に大きな段差や小さな隙間が存在せず、段差や隙間の存在によって塗料にエアが混入したり、段差や隙間に塗料が残留するという虞はない。
【0046】
また、回転軸11に固着される第1部品20には、軸取付部21と周壁27と前面壁31と拡径部29が一体に形成されているのに対し、第2部品40には後面壁47が形成されているだけであり、第1部品20に比べて第2部品40は比較的軽量となっているので、回転霧化頭Cを高速で回転駆動したときに軸ブレを生じる虞もない。したがって、本実施形態によれば、塗料にエアが混入すること、塗料が段差や隙間に残留すること、軸ブレを生じることに起因する塗装不良が防止され、良好な塗装を行うことができる。
【0047】
また、第1部品20と第2部品40との隙間に防水用のシールリング50を設けているが、回転霧化頭Cを高速で回転駆動したときには、このシールリング50の弾性により、第1部品20に対して第2部品40が調芯されるようになっている。このように、シールリング50は、第1部品20と第2部品40との隙間をシールする機能と、第1部品20に対して第2部品40を調芯する機能とを兼ね備えているので、シール手段と調芯手段とを別々に設ける場合に比べて、部品点数が少なくて済んでいる。
【0048】
また、第1部品20の内周面と第2部品40の外周面のうちシール溝44が形成されていない第1部品20の内周面には、シールリング50を係止させることにより第2部品40を第1部品20に対して軸線Ca方向に位置決めする位置決め溝26が形成されている。このように、第2部品40を第1部品20に対して位置決めする手段として、シールリング50とシール溝44を利用しているので、位置決め専用の手段として新たに形成したのは、シール溝44が形成されていない側の部品である第1部品20の内周面の位置決め溝26だけで済んでいる。したがって、位置決め専用の手段を第1部品20と第2部品40の両方に形成する場合に比べると、形状を簡素化することができる。
【0049】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2を図8を参照して説明する。本実施形態2の回転霧化頭Dは、第2部品70を第1部品60に対して軸線方向に位置決めする手段及び第2部品70を第1部品60に対して調芯する手段を、上記実施形態1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0050】
実施形態1の第1部品20を構成する保持部23の内周には保持面24と位置決め溝26が形成されていたのに対し、本実施形態2の第1部品60を構成する保持部61の内周には、保持面24と位置決め溝26が形成されていない。そして、本実施形態2の保持部61の内周面のうち後端側の領域には雌ネジ部62が形成され、保持部61の内周面のうち雌ネジ部62よりも前方の領域には、前方に向かって次第に小径となる受け面63が形成されている。
【0051】
また、実施形態1の第2部品40を構成する筒状部41の外周には、突部42とシール溝44が形成されていたのに対し、本実施形態2の第2部品70を構成する筒状部71の外周には、突部42とシール溝44は形成されていない。そして、本実施形態2の筒状部71の外周には、第1部品60の雌ネジ部62に螺合される雄ネジ部72と、前方に向かって次第に小径となる形態であって第1部品60の受け面63に対して面接触可能な調芯面73とが形成されている。また、筒状部71には、第2部品70の後端面に開口する一対の治具孔74が形成されている。一対の治具孔74は、第2部品70の軸線を挟んで対称な位置に配置されている。
【0052】
第2部品70を第1部品60に組み付ける際には、治具孔74に治具(図示省略)の突起を差し込み、その状態で、第2部品70を後方から第1部品60内に挿入し、治具を回転させることにより、雄ネジ部72を雌ネジ部62に螺合する。そして、軸線方向において、第2部品70が第1部品60に対して正規の組付位置に到達すると、前方に向かって縮径した調芯面73が同じく前方に向かって縮径した受け面63に当接し、第2部品70が前止まりされる。この後は、治具を第2部品70から抜き取れば、第1部品60と第2部品70の組付けが完了し、回転霧化頭Dが得られる。両部品60,70を組み付けた状態では、テーパ状の調芯面73とテーパ状の受け面63とが面接触することにより、第2部品70が第1部品60に対して同軸状に調芯される。
【0053】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1では、シールリングを第2部品の外周に取り付けたが、シールリングは第1部品の内周に取り付けてもよい。
(2)上記実施形態1では、シールリングを第1部品の内周と第2部品の外周との間で径方向に挟むように配置したが、シールリングは、第1部品と第2部品との間で軸線方向に挟むように配置してもよい。
(3)上記実施形態1では、第1部品の内周面と第2部品の外周面との隙間のうちシール溝と貯留室とを連通させる連通領域が、他の領域よりも間隔を広くなっているが、連通領域の間隔は他の領域と同じ間隔であってもよい。
(4)上記実施形態1では、第2部品を第1部品に対して位置決めする手段として、第2部品のシールリングとシール溝を利用し、専用の位置決め手段である位置決め溝を第1部品のみに形成したが、シールリングとシール溝を利用せずに、位置決め専用の手段を第1部品と第2部品の両部品に形成してもよい。
(5)上記実施形態1では、第2部品を第1部品に対して調芯する手段として、シール機能を有するシールリングを利用したが、調芯手段としてシールリング(シール手段)とは別の弾性体を用いてもよい。
(6)上記実施形態1及び2では、周壁の内周面(誘導面)を前方に向かって拡径したテーパ状としたが、周壁の内周面は、後方に向かって拡径したテーパ状でもよく、全長に亘って内径が一定であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
C…回転霧化頭
Ca…第1部品(回転霧化頭C)の軸線
11…回転軸
20…第1部品
21…軸取付部
26…位置決め溝
27…周壁
28…誘導面(周壁の内周面)
28a…仮想線
29…拡径部
30…拡散面
31…前面壁
32…流出孔
40…第2部品
44…シール溝
47…後面壁
50…シールリング
55…貯留室
56…連通領域
D…回転霧化頭
60…第1部品
62…雌ネジ部
63…受け面
70…第2部品
72…雄ネジ部
73…調芯面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸により回転駆動され、供給された塗料を遠心力により霧化して放出する回転霧化頭であって、
前記回転軸に固着される円筒状の軸取付部と、
前面壁と後面壁と周壁とにより囲まれた形態であって、前記後面壁の中央の開口から塗料が供給されるようになっている貯留室と、
前記前面壁の外周縁からカップ状に拡径した形態であって、前面が拡散面となっている拡径部と、
前記前面壁の外周縁に貫通形態で形成され、前記貯留室内の塗料を前記拡散面へ流出させるための流出孔とを備えている回転霧化頭において、
前記軸取付部と前記周壁と前記前面壁と前記拡径部とが一体に形成されている第1部品と、
前記後面壁を有し、前記第1部品に対して後方から組み付けられることで前記貯留室を形成する第2部品とを備えて構成されていることを特徴とする回転霧化頭。
【請求項2】
前記第1部品と前記第2部品との隙間にシールリングを設け、
前記シールリングの弾性により、前記第1部品と前記第2部品との隙間がシールされているとともに、前記第1部品に対して前記第2部品が調芯されるようになっていることを特徴とする請求項1記載の回転霧化頭。
【請求項3】
前記シールリングが、前記第1部品の内周面と前記第2部品の外周面のうち一方の周面に形成したシール溝内に保持されており、
前記シールリングが、前記シール溝の内面の間で軸線方向に挟み付けられていることを特徴とする請求項2記載の回転霧化頭。
【請求項4】
前記第1部品の内周面と前記第2部品の外周面の隙間のうち前記シール溝と前記貯留室とを連通させる連通領域は、他の領域よりも間隔が広くなっていることを特徴とする請求項3記載の回転霧化頭。
【請求項5】
前記第1部品の内周面と前記第2部品の外周面のうち前記シール溝が形成されていない側の周面には、前記シールリングを係止させることにより前記第2部品を前記第1部品に対して軸線方向に位置決めする位置決め溝が形成されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の回転霧化頭。
【請求項6】
前記第1部品の内周には、雌ネジ部と、前方に向かって縮径するテーパ状の受け面とが形成され、
前記第2部品の外周には、前記雌ネジ部に螺合される雄ネジ部と、前方に向かって縮径した形態であって前記受け面に当接可能なテーパ状の調芯面とが形成されていることを特徴とする請求項1記載の回転霧化頭。
【請求項7】
前記周壁の内周面は、前方に向かって拡径したテーパ状をなし、
前記周壁の内周面から斜め後方へ延長して前記第1部品の軸線と交差させた仮想線が、前記第1部品と干渉せずに前記第1部品の後方へ抜けるようになっていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の回転霧化頭。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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