説明

図面管理システム及び図面管理装置

【課題】図面管理装置と所定のネットワーク回線で接続された端末群から構成される図面管理システムについて、システムコストを高騰させることなく図面管理上の安全性を確保するとともに、利便性の高いものとする。
【解決手段】図面管理装置4に入力された電子図面データが、図面管理装置4内で2Dグラフィックス用のファイル形式による電子図面データに変換されて管理用図面データとして保存され、端末8,9,10で図面管理装置4に接続することにより管理用図面データを閲覧可能とし、図面管理装置4に接続される図面編集装置11により図面記憶手段43に記憶される管理用図面データを編集を可能にするとともに編集後の電子図面データを編集前の管理用図面データとともに管理用図面データのファイル形式により図面記憶手段43に保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、図面管理システム及びその図面管理装置に関し、殊に、作図ソフト等により作成した電子図面データを、図面管理装置と所定の端末との間で出入力して管理・利用することのできる図面管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子的なデータ管理技術が普及していない時代においては、作成した図面を管理する手法として、紙ベースの元図(正式図面)を定めこれを原紙として図庫で保管・管理するのが一般的であった。そして、正式図面を管理するための規則を定めて管理者及び図面使用者はこれに従い、組織内外における図面の手配は原紙を基に印刷して行っていた。
【0003】
その後、2D−CADソフトのように図面を電子的手段で作成しそのまま電子図面データとして保存する技術が普及すると、その電子図面データを管理用の正式な元図としてコンピュータの記憶手段等からなる電子図庫に保管するものとし、図面を使用する場合にはこれをプリンターで利用できる形式に変換して出力することにより図面を印刷し、紙図面で組織内外への手配を行うようになった。
【0004】
そして、特開2001−350824号公報に記載されているように、図面管理装置と端末とをネットワーク回線で接続して、図面管理装置に保管している電子図面データを端末側から閲覧・利用するものとした図面管理システムが普及しつつある。この場合、図面の利用権限のない者が元図を入手しやすい状態になるとともに、CADによる電子図面を閲覧することにより元図が破損・改竄されてしまうという問題が生じている。
【0005】
また、近年では設計対象を3次元的にとらえて作図・記録することのできる3D−CADソフトも普及しているが、この3D―CADソフトによる電子図面データも含め、新しく高価なグラフィックスソフトで作成・保存した電子図面データを図面管理装置から入手して利用するには、利用する端末側でそのソフトまたはこれと互換性のあるソフトがインストールされていることが条件となることから、利便性に欠けるとともにシステムコストの高騰を招きやすい。そのため、前述した図面管理上の安全性確保目的も含め、図面管理装置の電子図面データを紙図面に印刷して手配することが未だに主流となっている。
【0006】
これらの問題に対し、例えば特開2006−31533号公報に記載されているように、図面管理サーバに所定のネットワークで接続された端末側から元図を閲覧する場合に、所定の認証手段により利用者に許可された範囲内のみ閲覧できるものとし、許可された作業のみ許容する図面管理システムが提案されている。このようにすることで、セキュリティとデータの保全を確保して図面管理上の安全性が実現されやすいものとなる。
【0007】
しかしながら、このようなシステムを採用しても、3D−CADソフト等に代表される最近の作図ソフトによる電子図面はデータ量が大きいため、図面管理装置によりそのままの形式で図面の履歴管理を行う場合、大きな記憶容量が必要となってシステムコストの高騰が避けられないものとなる。また、利用する側の総ての端末に図面の保存形式と互換性のあるソフトのインストールが必要な状況は解消されておらず多方面からの利用は困難な状況であり、システムとしての利便性確保の問題もある。
【0008】
そこで、図面を電子図面データとして保管・管理する図面管理装置と、この図面管理装置に接続して電子図面データの閲覧又は出力の少なくとも一方を行う複数の端末と、この図面管理装置と端末とを接続するネットワーク回線とを備えた図面管理システムにおいて、図面管理装置に入力された電子図面データが、図面管理装置内で2Dグラフィックス用のファイル形式による電子図面データに変換されて管理用図面データとして保存され、端末で図面管理装置に接続することにより管理用図面データを閲覧可能な図面管理システムが考えられる。
【0009】
ところが前記図面管理システムにおいて、一旦、図面管理装置に保存された管理用図面データを何らかの都合で図面編集装置により編集する際に、CAD等の編集ソフトを用いることから、折角、図面管理装置に保存した管理用図面データが破損或いは改竄されてしまうという問題が生じる。
【特許文献1】特開2001−350824号公報
【特許文献2】特開2006−31533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、図面管理装置と所定のネットワーク回線で接続された端末群から構成される図面管理システムについて、システムコストを高騰させることなく図面管理上の安全性を確保するとともに、利便性の高いものとすることを課題とするものであり、特に、一旦、図面管理装置に保存された管理図面を何らかの都合で編集する際に、CAD等の編集ソフトを用いることから、折角、図面管理装置に保存した元図から変換した管理図面が破損・改竄されてしまうという問題も解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するためになされた本発明は、図面を電子図面データとして保管・管理する図面管理装置と、該図面管理装置に接続して前記電子図面データの閲覧又は出力の少なくとも一方を行う複数の端末と、前記図面管理装置と前記端末とを接続するネットワーク回線とを備え、前記図面管理装置に入力された前記電子図面データが、前記図面管理装置内で2Dグラフィックス用のファイル形式による電子図面データに変換されて管理用図面データとして保存され、前記端末で前記図面管理装置に接続することにより前記管理用図面データを閲覧可能とし、且つ、前記図面管理装置に接続される図面編集装置により前記図面記憶手段に記憶される前記管理用図面データの編集を可能にするとともに編集された電子図面データが編集前の管理用図面データとともに前記管理用図面データのファイル形式に変換されて前記図面記憶手段に保存されることを特徴とする。
【0012】
本発明では、3D―CADソフトによる図面等、特殊な形式の電子図面データで図面管理装置に入力される場合であっても、比較的汎用性の高い2Dグラフィックス用ファイル形式の電子図面データに変換されて保存するようにしたことで、端末からの閲覧・利用が容易なものとなって、システムコストを低廉に抑えながら利便性の高いものとなり、しかも管理用図面データが改変される畏れの少ないものとなる。
【0013】
特に、図面管理装置に接続される図面編集装置により前記図面記憶手段に記憶される管理用図面データの編集が可能であるとともに編集後の電子図面データを編集前の管理用図面データともに管理用図面データのファイル形式により保存することで、電子図面データの編集を可能にして常時、編集後である最新の管理用図面データの閲覧を可能にするばかりか、編集の際に管理用図面データを破損・改竄させてしまうこともない。
【0014】
また、その図面管理装置における管理用図面データのファイル形式は、TIFF(TaggedImageFileFormat)であるものとすれば、殆どの端末側で管理用図面データを閲覧してそのまま印刷できるものとなり、また履歴管理において過大なデータ容量を要することがなく、しかも管理用図面データ改変の畏れのない極めて安全性の高いシステムとなる。
【0015】
更に、前記図面管理装置が、最新の編集後における管理用図面データに限り閲覧を許容するものとした場合には、同一事案につき編集前の図面データの存在による混乱もない。
【発明の効果】
【0016】
一つの共通した2Dグラフィックス用のファイル形式で管理用図面データとして図面管理装置に保存するものとした本発明によると、システムコストを高騰させることなく図面管理上の安全性を実現できるとともに、利便性の高いシステムとすることができ、特に、一旦保存した管理用図面データを破損、改竄させてしまう心配もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態の図面管理システム1の簡略化した構成図を示している。複数のPC等からなる端末8,9,10がネットワーク回線50を介して図面管理装置としてのサーバ4に接続されている。このシステムは、例えば機械等の設計・製造を業務として行う企業において、開発・設計対象の設計図である図面を、サーバ4を中心として社内的に一元的に管理する場合等を想定している。
【0019】
従って、これらの端末8,9,10とサーバ4が同一施設内で収まる場合にはネットワーク回線50は社内LANで充分であり、端末8,9,10が、例えば本社、設計開発拠点、製造拠点、試験拠点、製造を請け負う他社、のように異なる場所に広域に亘って存在する場合には、ネットワーク回線50はインターネット回線が適当なものとなる。
【0020】
例えば、サーバ4が本社管理部に配設され、端末8,9,10等がこれとは離れた場所の各拠点に配置されている場合において、開発拠点の設計担当者等は端末10等にインストールされた3D―CADソフトを用い図面を作成し、これをそのソフトによる形式の電子図面データでネットワーク回線50を介してサーバ4に送信し、サーバ4がこれをTIFF等の2Dグラフィックスのファイル形式で管理用図面データとして保存・管理するものである。
【0021】
そして、図面管理システム1において、端末9を用いてサーバ4にアクセスした製造担当者等がプリンター9aで管理用図面データを印刷し、或いは試験担当者等が設計変更を加えた紙図面をスキャナ8aで電子図面データとし、端末8でサーバ4に送信して管理用図面データとして保存させる、等の機能を実現するようになっている。
【0022】
図2は、図面管理装置であるサーバ4の機能ブロック図を示している。サーバ4は汎用のサーバ装置を利用することができ、そのHDD等の記憶手段に制御プログラムである図面管理プログラムが記憶されてその図面管理方法を実行するものであり、以下に述べる各手段はこの図面管理プログラムとCPUとが協働して機能的に実現するものである。尚、サーバ4はこのほかに他の一般的なサーバと同様の構成を有して他の一般的な機能も有しているが、その説明は省略するものとする。
【0023】
サーバ4は、出力インターフェース45,入力インターフェース46を介して外部のネットワーク回線50に接続している。入力インターフェース46を介して入力された各端末からの操作信号や電子図面データは、管理制御手段41に入力されるようになっている。そして、例えば電子図面データが入力された場合、これを元図記憶手段42に格納して保存するようになっている。
【0024】
サーバ4には、3D―CADソフト、2DCAD―ソフト、他の保存形式の複数の画像ソフト、様々な保存形式に対応できるソフトが格納されて複数の形式の電子図面の入力に対応できるようになっており、電子図面データを2D図面保存部42a、3D図面保存部42b、その他保存形式図面保存部42c等、所定の形式ごとに領域を分けて入力された形式のまま保存するようになっている。
【0025】
そして、管理制御手段41は入力された電子図面データを各形式で元図記憶手段42に保存後、これからTIFF図面に変換したコピーデータを作成し、これを元図記憶手段42とは異なる記憶領域のTIFF図面記憶手段43に格納するようになっており、このTIFF図面記憶手段43が、各端末8,9,10から参照可能な管理用図面データを保存する部分となっている。
【0026】
また、管理制御手段41には認証手段を備えており、各端末8,9,10からの図面の参照要求や記憶手段42,43内の保存内容の改変等、所定の操作者に許容された操作についての権限を認証するために、パスワード入力等の認証用操作を促してこれを確認し、権限者として認証された範囲内でのみ操作を許容するようになっている。
【0027】
例えば、TIFF図面記憶手段43内の電子図面データの参照を許可された者でも、元図記憶手段42内へのアクセス及び記憶された図面の改変等は特別の権限を有している者のみ許可することが想定される。尚、図面の履歴管理について、データ量の比較的少ないTIFF図面による電子図面データを主に使用して行うことで、記憶手段の容量を比較的小さく抑えることが可能となる。
【0028】
次に、本実施の形態の図面管理システムの作用例を説明すると、先ず、開発拠点に配置した端末10で、設計担当者が3D−CADソフトを用いて図面を複数枚一連にして作成した場合、端末10内の記憶手段にそのソフトによる形式で電子図面データファイルとしていったん保存する。
【0029】
次に、設計担当者が端末10を用いてサーバ4に接続し、電子図面データの保存操作を開始する。すると、サーバ4は端末10の画面に認証画面を表示させ、パスワードの入力を促す。設計担当者がパスワードを入力すると、予め記憶しておいた図面保存権限者のデータと照合し、一致した場合に電子図面データファイルの入力を受け付ける。
【0030】
サーバ4内において、管理制御手段41は入力された電子図面データファイルを、元図記憶手段42の3D図面保存部42bに送信された形式のまま格納させる。そして、その際、この電子図面データファイルを2D形式のTIFF図面としてコピーしておき、TIFF図面記憶手段43に格納して管理図面として保存する。
【0031】
この保存された電子図面を製造拠点の製造担当者が参照・印刷する場合、製造担当者は端末9を用いてサーバ4にアクセスし、図面の参照操作を行う。この場合も、サーバ4は図面の参照権限者であるか否かの認証を行い、認証された場合のみ操作を許容する。その際、要求された図面はTIFF図面記憶手段43に記憶されたTIFF形式の電子図面データのみを送信するものであり、元図記憶手段42における元図の参照等は許容しない。
【0032】
このようにすることで、元図記憶手段42に保管された元図が改ざんされることがなく、また、管理用図面データが2D方式のTIFF図面であり参照・印刷等のみ許容されるため、これも改ざんや削除などの操作を実行される心配がない。また、端末8側に送信される電子図面データがTIFF形式であることから、高価なグラフィックスソフトを要することなくそのまま表示・印刷等が行えるため、あらゆる端末でそのままシステムを利用できるようになって極めて利便性に優れたシステムとなり、且つシステムコストを低廉に抑えることが可能となる。
【0033】
さらに、試験担当者が試作品を試験した結果、設計変更を要求する際は、例えば製図ソフトを用いずに紙ベースの設計図(修正図)を作成した場合は、これをスキャナ8aで電子データ化して端末8を介してサーバ4に送信する。この場合、スキャナ8aによる電子図面データは当初からTIFF形式であることが一般的であるから、これを送信することによりサーバ4側でそのままの形式でTIFF図面記憶手段43に格納することができる。そして、今度はこれを設計担当者が参照して、3D−CADソフトを用いて修正した設計図面を作成し、再度サーバ4に送信して保存させることもできる。
【0034】
一方、図面管理責任者等がサーバ4内部の保管内容を操作する場合は、より高度な権限を有していることの認証を実施することで、元図記憶手段42内の操作等を許容する。このように、操作者毎にその許容された権限を認証するようにしたことで、図面管理上の安全性をより確実なものとすることができた。
【0035】
尚、本実施の形態において、サーバ4と各端末8,9,10とが離れた場所に配置されてインターネット回線を用いる場合を説明したが、一つの施設内であれば、社内LANでシステムを構築することも可能であり、また、インターネット回線と社内LANとを組み合わせたネットワーク回線50とすることも可能であることは言うまでもない。
【0036】
以上、述べたように、図面管理装置と所定のネットワーク回線で接続された端末群から構成される図面管理システムについて、図面管理装置が2D形式のTIFF図面で図面を統一的に保存・管理するようにした本発明により、いかなる形式の図面であっても管理できるものとなり、また特別なソフトを有しない端末からでもこのシステムを利用できるようになって極めて利便性に優れたものとなった。また、このことにより、システムコストを低廉に抑えることが可能となり、且つ、図面管理上の安全性を確保しやすいものとなった。
【0037】
また、本実施の形態では、例えばネットワーク回線50に図面編集装置11が接続されている。この図面編集装置11は各種のCADソフトおよびなどを備えたPC等からなり、前記サーバ4から特別の認証手段(図示せず)を介して出力されるTIFF図面記憶手段43に保存されている管理用図面データをTIFF形式からCADソフト形式などに変換して編集し、図面編集装置11から編集済みの図面を受信したサーバ4では、前記編集済みの電子図面データがTIFF形式の場合はそのまま、CADソフト形式の場合にはTIFF形式に変換してTIFF図面記憶手段43に記憶させて保存する。
【0038】
このとき、本実施の形態では、管理用図面データは最新の編集済みの管理用図面データ(最新図面)と、前記最新の編集前における管理用図面データ(旧図面)と、それ以前の管理用図面データ(過去図面)に分けて記録保存される。
【0039】
従って、最初に入力された元図から編集後までの全ての電子図面データがTIFFのファイル形式でそれぞれ区分けして保存されるとともに、編集時には改訂を前提としていないTIFFのファイル形式で提供することからTIFF図面記憶手段43に保存されている管理用図面データが破損・改竄されてしまう心配がない。
【0040】
また、例えば、一般には前記最新図面だけについての閲覧を認めることにより編集により複数の図面が存在する不都合を解消することができるし、最新図面について過去の編集経緯等を記録しておくことにより過去の経緯を容易に確認することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態を示す配置図。
【図2】図1のサーバにおける機能ブロック図。
【符号の説明】
【0042】
1 図面管理システム、4 サーバ、8,9,10 端末、8a スキャナ、9a プリンター、11 図面編集装置、41 管理制御手段、42 元図記憶手段、43 TIFF図面記憶手段、50 ネットワーク回線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面を電子図面データとして保管・管理する図面管理装置と、該図面管理装置に接続して前記電子図面データの閲覧又は出力の少なくとも一方を行う複数の端末と、前記図面管理装置と前記端末とを接続するネットワーク回線とを備え、前記図面管理装置に入力された前記電子図面データが、前記図面管理装置内で2Dグラフィックス用のファイル形式による電子図面データに変換されて管理用図面データとして保存され、前記端末で前記図面管理装置に接続することにより前記管理用図面データを閲覧可能とし、且つ、前記図面管理装置に接続される図面編集装置により前記図面記憶手段に記憶される前記管理用図面データの編集を可能にするとともに編集された電子図面データが編集前の管理用図面データとともに前記管理用図面データのファイル形式に変換されて前記図面記憶手段に保存されることを特徴とする図面管理システム。
【請求項2】
前記管理用図面データのファイル形式がTIFFである請求項1に記載した図面管理システム。
【請求項3】
前記図面管理装置が、最新の編集後における管理図面に限り閲覧を許容する請求項1または2に記載した図面管理システム。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−98783(P2009−98783A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267895(P2007−267895)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000153122)株式会社ニッキ (296)
【Fターム(参考)】