説明

固体支持体に核酸を固定化するための組成物および方法

【課題】固体支持体と対合し更に少なくとも1つの巨大分子(例えば、核酸)と対合した少なくとも1つのビーズを含有する組成物、および該組成物の製造法を提供する。
【解決手段】固体支持体に結合したビーズから形成された得られた表面は、「平坦」な表面と比べて増加した、生物学的粒子または巨大分子(特に核酸)の固定化のための表面積を有利に与える。さらに、所望の官能性を有するビーズを選択することにより、選択した巨大分子または生物学的支持体を固定化するための、固体支持体の化学的性質とは異なる適当な官能基化の化学的性質を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
分子生物学および生化学の分野ならびに疾患の診断においては、核酸ハイブリダイゼーションが、特異的オリゴヌタレオチド配列の検出、単離および分析のための有効な手段となっている。典型的には、そのようなハイブリダイゼーションアッセイ、例えば逆ドットブロット法(Saikiら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 86:6230)では、固体支持体上に固定化されたオリゴデオキシヌクレオチドプローブを使用する。最近、ハイブリダイゼーションによる配列決定(SBH)用に、固体表面に結合した固定化DNAプローブのアレー(配列)が開発された(Drmanacら(1989)Genomics 4:114-128)、(Strezoskaら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.88:10089-10093)。SBHでは、固体支持体に固定化されたオリゴデオキシヌタレオチドの、規則正しいアレーを用いる。未知DNAのサンプルを該アレーに適用し、該ハイブリダイゼーションパターンを観察し、分析して、多数の短い部分配列情報を同時に得る。一本鎖の3'-または5'-突出部を含有する二重プローブを使用する、SBHの拡張形態(ポジショナルSBH(PSBH)と称される)が、開発されている(Broudeら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 91:3072-3076)。現在では、例えばゲル電気泳動により検出可能な配列決定用ラダーを生成させるために、PSBH捕捉アプローチと通常のサンガー配列決定法とを組合せることが可能である(Fuら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:10162-10166)。
【0002】
これらの方法で使用するアレーに関しては、成功させるために満足しなければならない多数の基準がある。例えば、固定化されたDNAは、ハイブリダイゼーション、洗浄または分析中に安定でなければならず脱離してはならない。また、固定化オリゴデオキシヌクレオチドの密度は、分析が保証される程度に十分なものでなければならない。該表面に対するDNAの非特異的結合は、最小でなければならない。また、該固定化方法は、固定化プローブのハイブリダイズ能を損なうものであってはならない。大部分の適用では、該DNAの一点(理想的には末端)のみが固定化されるのが最良である。
【背景技術】
【0003】
近年、前記の基準を満たすべく、固体支持体にDNAを共有的に固定化するための多数の方法が開発された。例えば、適切に修飾されたDNAが、アミノ酸(例えば、Runningら(1990)Biotechniques 8:276-277;Newtonら(1993)Nucl.Acids.Res.21:1155-1162およびNikiforovら(1995)Anal.Biochem.227:201-209を参照されたい)、カルホキシル基(例えば、Zhangら(1991)Nucl.Acids Res.19:3929-3933を参照されたい)、エポキシ基(例えば、Lamtureら(1994)Nucl.Acids.Res.22:2121-2125;Eggersら(1994)BioTechniques 17:516-524を参照されたい)またはアミノ基(例えば、Rasmussenら(1991)Anal.Biochem.198:138-142を参照されたい)で官能化された平坦な表面上に共有結合されている。これらの方法の多くは、二次元の(平坦な)支持体に核酸を結合させるために用いられる場合には、それらの個々の適用において成功しているが、固定化オリゴデオキシヌクレオチドの密度は、しばしば、分析が保証されるには不十分である(例えば、Lamtureら(1994)Nucl.Acids Res.22:2121-2125;Eggersら(1994)BioTechniques17:516-524を参照されたい)。
【0004】
したがって、分析が保証されるためには、より高い結合分子密度を与える改良された固定化方法が必要とされている。したがって、本発明では、固定化された高密度の分子(特に核酸分子)を含有する固体支持体の製造法を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
【0006】
固体支持体と対合(conjugate)し更に少なくとも1つの分子(特に核酸)と対合した少なくとも1つのビーズを含有する組成物を提供する。該ビーズは、当業者に公知の適当な任意のマトリックス物質(膨潤性のもの及び非膨潤性のものを含む)から形成される。該固体支持体は、化学合成および分析において支持体マトリックスとして使用するための当業者に公知の任意の支持体である。
【0007】
好ましくは、該ビーズは、合成用およびアッセイ用の固体支持体として機能する物質から選ばれる物質から調製される。そのような物質には、以下のものが含まれるが、これらに限定されるものではない:シリカゲル、ガラス、磁石、ポリスチレン/1%ジビニルベンゼン樹脂、例えばワン(Wang)樹脂、すなわちFmoc-アミノ酸-4-(ヒドロキシメチル)フェノキシメチルコポリ(スチレン-1%ジビニルベンゼン(DVD))樹脂である)、クロロトリメチル(2-クロロトリチルタロリドコポリスチレン-DVD樹脂)樹脂、メリフィールド(Merrifield)(クロロメチル化コポリスチレン-DVD)樹脂、金属、プラスチック、セルロース、架橋デキストラン、例えばセファデックス(Pharmacia)の商品名で販売されているもの、およびアガロースゲル、例えば水素結合した多糖型アガロースゲルであるセファロース(Pharmacia)の商品名で販売されているゲル、および当業者に公知の他のそのような樹脂および固相支持体。好ましい実施態様では、該ビーズのサイズは、直径約0.1〜500μm、より好ましくは約1〜100μmである。
【0008】
該固体支持体は、ビーズ、毛細管、板、膜、薄延物、櫛状物、ピン、小孔を有する薄延物、小孔またはナノリットルウェルのアレー、および当業者に公知の他の構造体および形態を含む(これらに限定されるものではない)の所望の任意の形態である。
【0009】
支持体にビーズを対合させる方法を提供する。好ましい実施態様では、ビーズと不溶性支持体との間に共有アミド結合を形成させる。特に好ましい実施態様では、該共有アミド結合は、カルボキシル官能化ビーズをアミノ官能化固体支持体と反応させることにより、またはカルボキシル官能化支持体をアミノ官能化ビーズと反応させることにより形成させる。
【0010】
もう1つの態様においては、本発明は、本明細書に記載の対合手段によりサンプルまたは反応混合物から標的核酸を単離する方法を主題とする。特に好ましい方法では、該核酸を質量分析により直接分析する。
【0011】
また、該対合を行なって核酸をビーズリンカーを介して不溶性支持体に固定するための試薬を含有するキットも提供する。
「平坦」な表面と比べて、固体支持体に結合したビーズは、核酸の固定化のための表面積の増加をもたらす。さらに、所望の官能性を有するビーズを選択することにより、実施者は、固体支持体の化学的性質とは異なる、核酸を固定化するための官能化の化学的性質を選択することができる。
【0012】
本発明で提供する組成物および方法の前記および前記以外の主題および利点は、以下の図面、詳細な説明および請求の範囲において明らかとなろう。
【0013】
図面の簡単な説明
図1は、固体支持体に対するビーズの共有結合、および該ビーズに対するDNAの共有結合を示す図である。
【0014】
図2は、実施例1に記載のWang樹脂ビーズ(p-ベンジルオキシベンジルアルコールコポリスチレン-ジビニルベンゼン(DVB)樹脂)の、固体支持体に対する共有結合を示す図である。
【0015】
図3は、実施例2に記載の共有二官能性トリチルリンカーを介した核酸の固定化を表す図である。
【0016】
図4は、実施例3に記載の疎水性トリチルリンカーを介した核酸の固定化を表す図である。
【0017】
図5は、結合オリゴ(5'イミノビオチン-TGCACCTGACTC、配列番号1)を含有するマトリックス処理ダイナビーズ(Dynabeads)の上消のMALDI-TOF質量スペクトルを示す。内部標準(CTGTGGTCGTGC、配列番号2)を、該マトリックス内に含有させた。
【0018】
図6は、結合オリゴ(5'イミノビオチン-TGCACCTGACTC、配列番号1)を含有するビオチン処理ダイナビーズのHALDI-TOF(マトリックス介助レーザーデソープション/イオン化(MALDI)-飛行時間型(TOF))質量スペクトルを示す。内部標準(CTGTGGTCGTGC、配列番号2)を、該マトリックス内に含有させた。
【0019】
図7は、ホウ酸(boronic acid)官能化ビーズと非伸長プライマー上の2',3'-ジオールとの反応を介したビーズに対する該非伸長プライマーの対合を図示する。
【0020】
図8は、ピン手段装置を図示する。
【0021】
図9は、種々のピン構造を示す。図9Aは、真っ直ぐな頭部を有する固形ピンを示す。図9Bは、凹状の頭部を有する固形ピンを示す。図9Cは、切頭角錐状の頭部を有する固形ピンを示す。図9Dは、凹状の頭部と中空の中心部(その中に光ファイバーを通すことが可能である)とを有するピンを示す。図9Eは、切頭角錐状の頭部と中空の中心部とを有するピンを示す。
【0022】
図10は、アミド結合を介したピン(アミノ官能基化されている)へのビーズ(活性化カルホキシル)の対合と、ビーズへのDNA(酸で切断可能なリンカー)の結合とを表す図である。該ビーズを該ピンに対合させるジスルフィドリンカー、および該ビーズと該トリチル基との間のチオエーテル対合は、該ビーズの選択的な切断(DNAは結合したまま)を可能にする。
【0023】
図11は、磁気相互作用を介したピンへの常磁性ビーズ(ストレプトアビジンで官能基化されている)の対合と、該ビーズからDNAを選択的に切断するのを可能にする該DNAの結合(修飾ビオチンまたは光切断性ビオチンなどのリンカーを介するもの)とを図示する。
【0024】
図12A〜Cは、ピン手段装置と台とをそれぞれ別々に図示し、さらに、装着された台および手段の断面図を図示する。
【0025】
図13は、図9A〜Eに示すピン手段用の質量分析計の構造を図示する。
【0026】
図14は、電圧がかけられるピン手段を図示する。電界をかけると、核酸は陽極に誘引される。無荷電分子は溶液中に残存し、一方、正に荷電した分子は陰極へ誘引されるため、この系により核酸が精製される。
【0027】
図15は、生物後捕捉(post-biology capture)を用いる質量分析による配列決定に関与する工程の流れ図を示す。
【0028】
発明の詳細な説明
A.定義
特に示さない限り、本明細書中で使用するすべての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されているのと同意義を有する。本明細書中に引用するすべての特許および刊行物は、特に示さない限り、それらの全体を参考として本明細書に組入れるものとする。本節の定義が他の定義と一致しない場合は、本節に記載の定義が優先する。
【0029】
本発明で用いる分子は、ビーズに結合している任意の分子または化合物を意味する。典型的には、そのような分子は、巨大分子またはその成分または前駆体、例えば、ペプチド、タンパク質、小有機物質、オリゴヌクレオチド、または該ペプチド、有機物質、核酸および他の巨大分子の単量体単位である。単量体単位は、生成する化合物を構成する成分の1つを意味する。したがって、単量体単位には、小有機分子の合成原料となるヌクレオチド、アミノ酸およびファーマコフォア(pharmacophore)が含まれる。
【0030】
本発明で用いる巨大分子は、数百から数百万の分子量を有する任意の分子を意味する。巨大分子には、ペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、および生物により一般に合成されるが合成的に又は組換え分子生物学的方法を用いて製造可能なそのような他の分子が含まれる。
【0031】
本発明で用いる生物学的粒子は、ウイルス、例えばウイルスベクターまたはウイルスカプシド(パッケージングされた核酸を有する又は有さないもの)、ファージ、例えばファージベクターまたはファージカプシド(封入された核酸を有する又は有さないもの)、真核細胞および原核細胞を含む単細胞またはそれらの断片、リポソームまたはミセル剤または他のパッケージング粒子およびそのような他の生物学的物質を意味する。本発明の目的においては、生物学的粒子には、一般的には合成されないために巨大分子と典型的にはみなされないが細胞およびウイルスに由来する分子が含まれる。
【0032】
本発明で用いる「核酸」なる語は、一本鎖および/または二本鎖ポリヌクレオチド、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)ならびにRNAまたはDNAの類似体または誘導体を意味する。また、「核酸」なる語には、核酸の類似体、例えば、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロチオアートDNAおよびそのような他の類似体および誘導体が含まれる。
【0033】
本発明で用いる「対合」なる語は、安定な結合、好ましくはイオン結合または共有結合を意味する。好ましい対合手段としては、ストレプトアビジン−またはアビジン−ビオチン相互作用;疎水性相互作用;磁気相互作用(例えば、Dynal,Inc.GreatNeck,NYおよびOslo Norwayが販売している、ストレプトアビジンで被覆された磁性ビーズであるDYNABEADSなどの官能化磁性ビーズの使用によるもの);極性相互作用、例えば、2つの極性表面の間またはオリゴ/ポリエチレングリコール間の「湿潤」同伴;共有結合、例えばアミド結合、ジスルフィド結合、チオエーテル結合、架橋剤を介した及び酸不安定性または光切断性リンカーを介した結合の形成が挙げられる。
【0034】
B.結合を介してビーズに固定化された巨大分子または生物学的粒子を有する固体支持体の調製
本発明は、ビーズを介して固体支持体に結合した結合巨大分子または生物学的粒子を有する固体支持体を提供する。該ビーズは、そのような結合に関して適切に官能化されており、適当な任意の形状を有する。本明細書においては、例示として核酸を記載する。しかしながら、該方法および結合ビーズを有する固体支持体は、他の巨大分子の固定化に関して、また、生物学的粒子およびそのような支持体に対する固定化に適した他の任意の分子に関して使用することができると理解される。
【0035】
好ましい実施態様においては、該ビーズを核酸の固定化用に官能化し、固体支持体に安定に結合させる。図1は、1以上の共有結合または非共有結合により固体支持体と対合したビーズを示す。核酸を官能基化ビーズ上に固定化するのは、該ビーズを該固体支持体に対合する途中または後に行なうことができる。
【0036】
本発明での使用に好ましい核酸は、少なくとも1つの反応性部分を含有するように誘導体化されている。好ましくは、該反応性部分は、3'または5'末端に位置する。あるいは、修飾されたビーズを使用して核酸を合成することができる。また、常法による3'および5'位以外の位置でのヌクレオチドの糖部分の修飾が意図される。
また、例えば、N7またはN9デアザプリンヌクレオシドを使用することにより、あるいはリンカーアームによるdTのC5の修飾により(例えば、Eckstein編,"Oligonucleotides and Analogues:APractical Approach",IRLPress(1991)を参照されたい)、核酸塩基を修飾することができる。あるいは、バックボーンが修飾された核酸(例えば、ホスホロアミダートDNA)を使用して、修飾リン酸バックボーンにより付与された窒素中心に反応性基を結合させることができる。
【0037】
好ましい実施態様においては、例えば前記の核酸の修飾は、核酸または核酸配列がその相補体にハイブリダイズする能力を実質的に損なわない。したがって、好ましくは、いずれの修飾も、ワトソン・クリック型塩基ペアリングに関与する核酸の官能性を実質的に修飾することを回避すべきである。該核酸は、非末端反応性基が存在するように、また、該核酸が、該支持体に固定化された場合に、二重領域を有する「ヘアピン」構造を形成する自己相補的塩基ペアリングが可能となるように修飾することができる。
【0038】
支持体
支持体は、ビーズ〔シリカゲル、制御多孔質(controlled pore)ガラス、磁性ビーズ、Dynabeads、Wang樹脂;Merrifield樹脂、セファデックス/セファロースビーズ、セルロースビーズなど〕、毛細管、平坦な支持体、例えばガラス繊維フイルター、ガラス表面、金属表面(鋼、金、銀、アルミニウム、ケイ素および銅)、プラスチック物質、例えば多ウェルプレートまたは膜(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリビニリデンジフルオリドからなるもの)、薄延物、櫛状物、ピンまたは針(例えば、コンビナトリアル(combinatorial)合成または分析に適したピンのアレー)、または薄延物(例えば、シリコンウェーハ)、濾過底(filter bottom)を有するまたは有さない有孔薄延物などの平坦な表面のナノリットルウェルまたは小孔のアレー中のビーズを含む任意の形態であることが可能である。
【0039】
したがって、ビーズに結合しており前記のとおり更に固体支持体に結合される固定化核酸または他の巨大分子または生物学的粒子の組合せライブラリーを提供する。
【0040】
ビーズ
本発明での使用に適した「ビーズ」には、固体支持体と対合することが可能であり生物学的粒子および巨大分子(例えば、DNAおよびRNA)の固定化のための表面積の増加をもたらす任意の三次元構造体が含まれる。好ましくは、該ビーズは、直径約1〜約100μmの大きさである。本発明の目的には、ビーズは、実質的に不溶性または固体の任意の物質から調製することが可能である。例えば、該ビーズは、シリカゲル、ガラス(例えば、制御多孔性ガラス(CPG))、ナイロン、Wang樹脂、Merrifield樹脂、セファデックス、セファロース、セルロース、磁性ビーズ、Dynabeads、金属表面(鋼、金、銀、アルミニウム、ケイ素および銅)、プラスチック物質(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF))などから調製することが可能である。ビーズは、膨潤性(例えば、Wang樹脂などの重合性ビーズ)または非膨潤性(例えば、CPG)であることが可能である。
【0041】
対合(conjugation)
生物学的粒子および巨大分子(例えば、核酸分子)は、リンカーを介してビーズに直接結合させることができる。対合は、適当な任意の手段、特に、共有結合または非共有結合によるものであることが可能である。例えば、ビーズに核酸を対合させるための1つの実施態様においては、該対合手段は、ビーズと核酸との間に可変性スペーサーを導入する。もう1つの実施態様においては、該対合は、例えば光切断性結合の場合のように直接切断したり(例えば、ストレプトアビジン−またはアビジン−ビオチン相互作用は、例えば質量分析用にレーザーにより切断することが可能である)、あるいは光切断性リンカー(例えば、来国特許第5,643,722号参照されたい)または酸不安定性リンカー、熱感受性リンカー、酵素切断性リンカーまたはそのような他のリンカーを介して間接的に切断することが可能である。
【0042】
同様に、核酸をビーズに対合するための本発明に記載の手段を含む適当な任意の手段により、ビーズを固体支持体に対合させる。したがって、ビーズに対する核酸の対合に関して以下に記載する対合方法および手段のいずれかを、固体支持体に対するビーズの対合に適用することができる。また、核酸は、ビーズに対合しうる分子の代表例であると理解される。
【0043】
リンカーを介した対合
分子を支持体およびビーズに対合させるため及び/又はビーズを支持体に対合させるために使用するのに適した架橋剤には、それぞれビーズ、不溶性支持体および/または分子(例えば、核酸)の表面上に存在する官能基と反応しうる種々の物質、またはそれぞれ分子、例えば核酸および/またはビーズ中に存在する官能基と反応しうる種々の物質が含まれる。そのような反応性を有する試薬には、ホモおよびヘテロ二官能性試薬が含まれ、それらの多くは、当該技術分野で公知である。ヘテロ二官能性試薬が好ましい。好ましい二官能性架橋剤は、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾアート(SIAB)である。また、他の架橋剤、例えば、ジマレイミド、ジチオ-ビス-ニトロ安息香酸(DTNB)、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオアセタート(SATA)、N−スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)、6-ヒドラジノニコチミド(HYNIC)など(これらに限定されるものではない)を本発明で使用することも可能である。
【0044】
ある実施態様では、該架橋剤は、核酸分子が不溶性支持体上に固定化される場合に選択的に切断可能な結合を付与するように選択することができる。例えば、所望によりビーズまたは不溶性(例えば固体)支持体から核酸を切断するための手段を付与するために、3-アミノ-(2-ニトロフェニル)プロピオン酸(Brownら.(1995)Molecular Diversity 4-12、およびRothschildら.(1996)Nucl.Acids Res.24:351-66、また、米国特許第5,643,722号も参照されたい)などの光不安定性架橋剤を使用することができる。他の架橋試薬は、よく知られている(例えば、Wong(1991)"Chemistry of Protein Conjugation and Cross-Linking,"CRC Press、およびHermanson(1995)"Bioconjugate Techniques,"Academic Press)。
【0045】
もう1つの好ましい実施態様では、カルボキシル官能化ビーズをアミノ官能化固体支持体と反応させることにより(例えば、実施例1に記載のとおり、カルボキシル化官能化Wang樹脂をアミノ官能化ケイ素表面と反応させることにより)、ビーズと不溶性支持体との間にアミド共有結合を形成させる。
【0046】
あるいは、核酸の結合に使用される酸切断性二官能性トリチル保護法を用いて、カルボキシル官能化支持体をアミノ官能化ビーズと反応させることができる。
また、二官能性トリチルリンカーを、アミノ基を介して樹脂(例えば、Wang樹脂)上の4-ニトロフェニル活性エステルに結合させたり、アミノ樹脂を介してカルボキシル基から結合させることができる。該二官能性トリチルアプローチにおいては、該核酸が切断され取り出し可能となるのを保証するために、該ビーズを揮発性酸(例えば、ギ酸、トリフルオロ酢酸など)で処理することが必要かもしれない。その場合、該核酸が固体支持体中のウェルの底に又は固体支持体の平坦な表面上に無ビーズパッチ(beadless patch)として沈殿する可能性がある。マトリックス溶液を加えた後、該核酸を脱着させ、例えば質量分析計にかけることができる。
【0047】
また、揮発性酸または適当なマトリックス溶液(例えば、アミノ結合トリチル基を核酸分子から切断するための3-ヒドロキシピコリン酸(3-HPA)を含有するマトリックス溶液)を用いることにより、酸不安定性リンカーとして疎水性トリチルリンカーを使用することができる。また、酸不安定性を変化させることができる。例えば、トリチル、モノメトキシ、ジメトキシ-またはトリメトキシトリチルを、適当にパラ置換された、また、より一層酸不安定性の核酸トリチルアミン誘導体に変化させることができる(すなわち、核酸に対するトリチルエーテルおよびトリチルアミン結合を作ることかできる)。したがって、該核酸は、例えば、疎水性誘引力を破壊することにより又は酸性または通常の質量分析条件下(この場合、3-HPAなどのマトリックスが酸として作用する)でトリチルエーテルまたはトリチルアミン結合を切断することにより、該疎水性リンカーから取り出すことができる。
【0048】
特に好ましい実施態様では、該ビーズを固体支持体に対合させ、および/または、酸不安定性結合を用いて該核酸を該ビーズに対合させる。例えば、以下の実施例2および3で更に詳しく説明するとおり、トリチルリンカーの使用により、共有結合または疎水性対合を形成させることができる。対合の性質にかかわらず、該トリチル基は、酸性条件中で容易に切断される。
【0049】
ある実施態様では、該ビーズを固体支持体に結合させるために、また、核酸をビーズに結合させるために、直交的に切断可能なリンカーを使用することができる。したがって、ビーズから核酸を切断することなく、ビーズを該表面から選択的に切断することが可能であり、一方、核酸は、後の段階で該ビーズから切断される。例えば、ビーズを固体表面に結合させるためにジスルフィドリンカー(これは、例えばDTTを使用して切断することができる)を使用し、核酸をビーズに固定化するために、酸で切断可能な二官能性トリチル基を含むビーズ−核酸リンカーを使用することが可能であろう。あるいは、支持体に対するビーズの結合を無傷に保ったまま、核酸の結合を切断することができるであろう。
【0050】
非共有結合
前記のとおり、ビーズを、非共有的相互作用により固体支持体に同伴させることも可能である。例えば、磁性ビーズ(例えば、磁化されうるビーズ、例えば、強磁性ビーズ)を磁性固体支持体に誘引することが可能であり、磁界の除去により支持体から引き離すことが可能である。あるいは、ビーズに、イオン性または疎水性部分を設けることが可能であり、それらは、それぞれ、固体支持体のイオン性または疎水性部分と同伴しうる。また、ビーズに特異的結合ペアのメンバーを設けて、相補的結合部分を備えた固体支持体に固定化させることも可能である。例えば、アビジンまたはストレプトアビジンで被覆されたビーズを、ビオチンまたはビオチン誘導体(例えば、イミノ−ビオチン)で被覆された表面に結合させることができる。
【0051】
それらの結合メンバーを逆にすることができると理解されるであろう。例えば、ビオチンで被覆されたビーズを、ストレプトアビジンで被覆された固体支持体に結合させることができる。本発明での使用が意図される他の特異的結合ペアには、ホルモン−受容体、酵素−受容体、核酸−相補的核酸、抗体−抗原および当該技術分野で公知のそのような他のペアが含まれる。
【0052】
好ましい結合ペアまたはリンカー/相互作用の具体例を、以下の表1に示す。
【表1】

【0053】
特に好ましい実施態様においては、ビーズを固体支持体に対合させ、および/または、酸不安定性結合を用いて核酸をビーズに対合させる。例えば、以下の実施例2および3で更に詳しく説明するとおり、トリチルリンカーの使用により、共有結合または疎水性対合を形成させることができる。結合の性質にかかわらず、該トリチル基は、酸性条件中で容易に切断される。ここでは、光切断性リンカーも意図される。
【0054】
ある実施態様では、ビーズを固体支持体に結合させるために、また、核酸をビーズに結合させるために、直交的に切断可能なリンカーを使用することができる。したがって、ビーズから核酸を切断することなく、ビーズを該表面から選択的に切断することが可能であり、一方、核酸は、後の段階で該ビーズから切断する。例えば、ビーズを固体表面に結合させるためにジスルフィドリンカー(これは、例えばDTTを使用して切断することができる)を使用し、核酸をビーズに固定化するために、酸で切断可能な二官能性トリチル基を含むビーズ−核酸リンカーを使用することが可能であろう。あるいは、支持体に対するビーズの結合を無傷に保ったまま、核酸の結合を切断することができるであろう。
【0055】
固体支持体へのビーズの対合
ビーズは、前記の方法および結合および対合手段により固体支持体に結合させることができる。また、ビーズは、固体支持体に対するビーズの高密度結合および/またはビーズに対する核酸の高密度結合が促進されるような長さと化学的性質とを有するように選択されうる連結基を介して固体支持体に結合させることができる。ポリリシン、ポリグルタミン酸、ペンタエリトロール、トリス−ヒドロキシ−アミノメタンなどのように固体支持体上の結合部位1個当たりに多数の官能基を付与する場合には、そのような連結基は「樹木様」構造を有するであろう。
【0056】
ある実施態様では、例えばホモ二官能性架橋試薬を使用して、ビーズを他のビーズと架橋することができる。架橋ビーズは、非架橋ビーズと比べて付加された機械的強度を付与する。
【0057】
用途
ビーズと固定化分子とを有する固体支持体は、固定化分子を有する固体支持体が使用される任意の用途で使用することができる。例えば、本明細書に記載の方法および組成物を用いて、生物学的サンプル(反応)から標的核酸を単離(精製)することができる。例えば、該組成物および方法を用いて、クローニング(Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(C.R.NewtonおよびA.Graham,PCR,BIOSPublishers,1994)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(例えば、Wiedmannら(1994)PCR Methods Appl. 3:57-64;Barany(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 88:189-93を参照されたい)、鎖置換(stranddisplacement)増幅(SDA)(例えば、Walkerら(1994)Nucl.Acids Res. 22:2670-77;欧州特許公開第0 684 315号"Strand Displacement Amplification Using Thermophilic Enzymes"を参照されたい)およびそれらの変法、例えば逆転写(RT)-PCR(Higuchiら(1993)Bio/Technology 11:1026-1030)、対立遺伝子特異的増幅(ASA)、サイクル配列決定および転写に基づく方法により産生される特定の核酸を単離することができる。
【0058】
さらに、該方法および組成物を用いて、ある特定の反応の実施中に特定の核酸を単離し又は移動させることができる。例えば、PCR反応などの増幅反応を行なって、ジデオキシヌクレオチド(d/ddNTP)または配列決定用プライマーを加えることなく「マスター」混合することができる。アリコートを、本明細書に記載の対合手段により単離し、例えば配列決定用プレートに移し、ついで該プレートにd/dNTPおよびプライマーを加えて配列決定反応を行なうことができる。あるいは、該PCRを、A、C、GおよびTのマスター混合物の間で分割することができる。ついでアリコートを配列決定用プレートに移し、配列決定用プライマーを加えることができる。
【0059】
例えば、標準的な条件を用いるサイタル配列決定反応において0.4〜0.5pmolのPCR産物を使用して、各PCRを10個の配列決定反応(10×A、C、GおよびT)で用いる。該配列決定反応は、96個までの配列決定反応(1反応当たり35塩基で3360塩基)を可能にする標準的な384マイクロウェルプレート中に5〜6pmolの5'標識配列決定用プライマーを含有する10μlの容量中で行なうことができる。あるいは、12×16形態の約5×5cmの192マクロウェルプレートを使用することができる。この形態は、1ウェル当たり48個までの配列決定反応を行ない1プレート当たり1680塩基を与える(1反応当たり35塩基)のを可能にする。配列決定用プレートの形態が、移動物質(例えばピン手段)の寸法を決定することになる。
【0060】
ピン手段
ピン手段には、当業者に公知のもの、本明細書に記載のもの、および同時係属米国特許出願第08/786,988号および第08/787,639号の主題である後記のものが含まれる。
【0061】
本明細書で例示するとおり、アレー(4×4アレー、図8に図示)中のピン手段を、配列決定用プレートのウェルに適用し、ピンの先端に結合している本明細書に記載の官能基化ビーズ上に配列決定産物を捕捉することができる(>=1pmol容量)。捕捉/インキュベーション工程中に、該ピンを移動させて(垂直、往復距離1〜2mm)、配列決定反応を混合し、捕捉効率を増大させることができる。あるいは、核酸をピン手段上に直接捕捉することができる。例えば、ピン手段上に結合している官能性により、接触に際して核酸を固定化することができる。さらに、図14に記載のとおり、ピン手段に電界をかけることにより、固定化を行なうことができる。ピン手段に電圧をかけると、核酸は陽極に誘引される。また、無荷電分子は溶液中に残存し、正に荷電した分子は陰極に誘引されるため、この系により核酸が精製される。特異性を増大させるために、部分的または完全に一本鎖のオリゴヌタレオチド(例えば、約5〜12塩基対)を含有するようにピン手段(電圧をかける又はかけない)を修飾することができる。ついで相補的核酸配列(例えば、溶液中)だけを、該ピンに特異的に対合させる。
【0062】
さらにもう1つの実施態様では、PCRプライマーをピン手段の先端に対合させることができる。固相(ピン手段)に結合したプライマーと溶液中のプライマーとを用いてPCRを行なって、PCR産物が該ピン手段に結合するようにすることができる。ついで、増幅産物を有するピン手段を該反応から取り出し、分析(例えば、質量分析)する。
【0063】
種々のピン構造の具体例を図9に示す。例えば、図9a、9bおよび9cは、固体ピン構造を示す。図9dおよび9eは、例えば質量分析検出のための光線維を収容するように中心部を貫通するチャンネルまたは孔を有するピンを示す。該ピンは、平坦な先端または多数のいずれかの構造、例えばナノウェル、凹型、凸型、切頭円錐または切頭角錐(例えば、幅4〜800μ×深さ100μの大きさ)を有する。好ましい実施態様では、個々のピンは、所望の任意の大きさを有することが可能であるが、好ましくは長さ約10mm以下、より好ましくは長さ約5mm以下で、直径約1mmである。ピンおよび装着プレートは、ポリスチレンから調製することができる(例えば、一枚(one-piece)射出成形)。ポリスチレンは、官能基化に理想的な物質であり、非常に高い許容度で成形することができる。ピン同士が接近して全体の大きさが減少するように、ピン手段装置内のピンを折畳式とすることが可能である(例えば、はさみ様機構で制御する)。
【0064】
捕捉された核酸は、例えば、分光技術、例えば、UV/VIS、IR、蛍光、化学発光またはNMR分光学、質量分析、または当該技術分野で公知の他の方法、またはそれらの組合せを含む種々のいずれかの手段で分析することができる。好ましい質量分析形態には、イオン化(I)技術、例えば、マトリッタス介助レーザーデソープションイオン化(MALDI)、連続またはパルス化電子スプレー(ESI)および関連方法(例えば、イオンスプレーまたはサーモスプレー)またはマシブタラスターインパクト(massivecluster impact)(MCI)が含まれ、これらのイオン源は、線形または非線形反射(linear or non-linear reflection)飛行時間型(TOF)、単一または複数四重極、単一または複数扇形磁場、フーリエ変換イオンサイタロトロン共鳴(FTICR)、イオントラップおよびそれらの組合せ(例えば、イオントラップ/飛行時間型)を含む検出形態に適合させることができる。イオン化の場合には、多数のマトリックス/波長の組合せ(HALDI)または溶媒の組合せ(ESI)を用いることができる。
【0065】
捕捉DNAの直接分析が不可能な場合には、DNAを遊離させ、および/また、移動させることができる。この段階ではサンプルの濃度の利点を失わせないことが重要かもしれない。好ましくは、サンプルを何ら喪失させることなく、サンプルを可能な限り小容量の溶離剤中で該表面から除去すべきである。もう1つの別法は、適切な場合には、ビーズ(+サンプル)を該表面から除去し、サンプルをビーズから直接測定することである。
【0066】
例えば、質量分析による検出の場合には、ピン手段を取り出し、例えばクエン酸アンモニウム中で数回洗浄してサンプルを調整した後、マトリックスを加える。例えば、ピンを単にマトリックス溶液に漬けることが可能である。ついで、マトリックス溶液がピンの丁度先端だけに固看するように、マトリックスの濃度を調節する。あるいは、ピン手段を逆にし、マイクロドロップ(microdrop)装置によりマトリックス溶液を各ピンの先端に噴霧することができる。さらに、マトリックスを加える前に、例えばチップ上のナノウェル中に該産物をピンから切断することができる。
【0067】
ピンから直接分析する場合には、1つのスキームにおいてはステンレス鋼の「マスク」プローブをピン上に嵌め合せ(図12)、ついでそれを質量分析計に配置することができる。
【0068】
ピン手段装置(図9を参照されたい)を収容するための2つの質量分析の構造が、図13に提案されている。1番目のものは、固体ピンを収容する。実際には、レーザーが、結晶表面から物質層を除去し、生じたイオンが加速され、イオン光学装置(ionoptics)中に収束する。2番目の構造は、光ファイバーピンを収容するものであり、この場合、サンプルは後方からレーザー照射される。実際には、レーザーは、ピン手段の背部プレート上および短い光ファイバー(直径約100μm、背部プレートの厚さを含めて長さ約7mm)中に収束する。この構造の場合、揮発したサンプルがマトリックス/ビーズ混合物の奥行きを通過し、該イオンを減速し冷却して、ある種の遅延抽出(delayedextraction)を引き起こす必要があり、これにより、実際に分析の分解能が増大するはずである。
【0069】
また、ピンが嵌合するプローブも、種々の構造を有することが可能である。例えば、ピン手段上に嵌合する複数の孔(ピン1個につき1個)を有する大きなプローブが挙げられる。全集合体が、質量分析中、X-Y軸において変換される。あるいは、適当な電界を与えるのに十分に大きいが該ピン間に嵌合するのに十分に小さい単一の孔を有する固定されたプローブであってもよい。ついで該ピン手段を、全部で3つの軸において変換し、後続の分析のために各ピンを孔に導入する。この形態は、より高密度のピン手段(すなわち、384ウェル以上の密度のマイクロプレート形態に基づくもの)に、より適している。前記の2つのプローブは、前記の2つの質量分析計の構造に適している。
【0070】
図14は、前記の生物後捕捉(post biology capture)による質量分析配列決定に関与する工程を図示する。
【0071】
平坦な表面中またはウェル中にビーズを含むアレーの調製
本発明で提供する方法は、ビーズ上に固定化された核酸(これは更に固体支持体に結合する)の空間的にアドレス可能(addressable)なアレーを得るのに有用である。そのような空間的にアドレス可能または前アドレス可能(pre-addressable)なアレーは、種々の方法(例えば、SBH、品質管理、およびDNA配列決定による診断法)において有用である。同時係属米国特許出願第08/786,988号および第08/787,639号に記載の手段は、基体表面上のサンプル物質の複数要素アレーを得るために使用しうる連続的および平行分注手段である。基体表面はビーズを有し平坦であることが可能であり、収容用物質のウェル(好ましくはビーズを含有する)を含むように幾何学的に改変されていることが可能である。1つの実施態様においては、サンプルアレーの平行的な発生を可能にする手段を提供する。この目的には、該手段は、小胞要素またはピンの集合体であり、この場合、該ピンのそれぞれは、ナノリットル容量の流体を収容するのに適した狭い内側チャンバーを含む。該ピンのそれぞれは、内側チャンバーを有するハウジングの内側に嵌合する。該内側ハウジングは、該ピンの内側チャンバーを通過する流体の流動を調節するために内側ハウジングチャンバー内の圧力を制御する圧力源に接続することができる。これは、該小胞からの一定容量の流体の制御された分注を可能にする。
【0072】
もう1つの実施態様では、該手段は、内側チャンバーを有する毛細管ピンと、該ピンに取付けられており該ピンの内側チャンバー内に流体を押し流して該ピンから流体を射出しうるトランスデューサ要素とを含むことが可能なジェットアセンブリ(jet assembly)を含む。このように、該ピンから流体を噴霧することにより基体表面に流体のスポットを分注することが、該手段により可能である。あるいは、流体の液滴を基体の表面に接触させることにより流体が基体に到達しうるように、該トランスデューサーは流体の液滴を毛細管から伸ばすことが可能である。さらに、該手段は、サンプルアレーを形成させるために該ピンを基体表面上の種々の位置に移動させながら、一連の工程でサンプル物質を分注することにより、サンプル物質のアレーを形成することが可能である。さらにもう1つの実施態様では、該手段はついで、質量分析による分析のために、該サンプルアレーが配置されたプレート集合体に、調製されたサンプルアレーを到達させる。設備されている質量分析計は、分析中のサンプル物質の組成を示す一組のスペクトルシグナルを生成する。
【0073】
特に、該ピン手段は、複数の側面および底部(該底部の内部には、複数の開口が形成されている)を有するハウジング(該ハウジングの壁および底部は内部容積を定め、該開口内に取付けられた1以上の流体透過性小胞またはピンは、ナノ容量の流体を収容するためのナノ容量サイズの流体収容チャンバーを有し、該流体収容チャンバーは、該ハウジングの内部容積に流体連絡して配置されている)と、該流体が該小胞の流体収容チャンバーにローディングされた際にナノ容量サイズの流体透過性小胞にナノ容量の流体形態を選択的に分注するための該ハウジングの内部容積に連絡した分注要素とを含む。これは、該開口が該基体土に配置され調整された場合に、該分注要素がナノ容量の流体を該基体の表面上に分注するのを可能にする。
【0074】
1つの実施態様では、該流体透過性小胞は、開口した近位末端と、該開口内に取付けられた場合に該ハウジングの底部を越えて伸長する遠位先端部分とを有する。このように、該開口近位末端には、該開口に取付けられた場合に該内部容積と流体連絡する流体収容チャンバーを配置させることが可能である。所望により、複数の流体透過性小胞を、該ハウジングの開口内に、取外し可能かつ置換可能な様態で取付けたり、あるいは該小胞が、該小胞を該ハウジング内に強固に取付けるための粘着性シールを含むことが可能である。
【0075】
もう1つの実施態様では、該流体収容チャンバーは、毛細管作用により該流体を充填するのに適合した寸法の小さな孔を含み、該流体が毛細管作用により実質的に完全に充填されるような大きさとすることが可能である。複数の流体透過性小胞は流体運搬針のアレーを含み、これは、金属、ガラス、シリカ、重合性物質または他の任意の適当な物質から形成されることが可能であり、本明細書に記載のとおり、固体支持体としても機能することが可能である。
【0076】
1つの実施態様では、該ハウジングは、頭部と、複数の流体透過性小胞を機械的にバイアスさせてハウジングの底部と密封的に接触させるための機械的バイアス要素とを含むことが可能てある。1つの特定の実施態様では、各流体透過性小胞が有する近位末端部分は、フランジを含み、さらに、該内部容積と外部環境とのシールを形成するための、該フランジと該ハウジングの底部の内部表面との間に配置されたシール(密封)要素を含む。該バイアス要素は、機械的であることが可能であり、複数のバネ要素(それらのそれぞれは、複数の流体透過性小胞のそれぞれの近位末端に一方の末端で結合し、ハウジングの頭部の内部表面に他方の末端で結合している)を含むことが可能である。該バネは、小胞近位末端に機械的バイアス力をかけてシールを形成することが可能である。
【0077】
もう1つの実施態様では、該ハウジングは、さらに、頭部と、該ハウジング頭部をハウジング底部に固定するための固定要素とを含む。該固定要素は、該ハウジングの頭部および底部の1つの内部に形成された複数のファスナー受容開口と、該ハウジング頭部および底部を一緒に固定するための該開口内に取付ける複数のファスナーとを含むことが可能である。
【0078】
1つの実施態様では、該分注要素は、選択された圧力条件で内部容積を配置するためのハウジングの内部容積に流体的に結合した圧力源を含む。さらに、流体透過性小胞が毛細管作用で充填される実施態様では、該分注要素は、該ハウジングの内部容積を種々の圧力条件で配置するために圧力源を変化させうる圧力制御装置を含むことが可能である。これは、予め決められた流体量に対応する予め決められた高さまで各小胞の流体収容チャンバーに充填するための毛管作用を補うのに十分な選択された圧力条件で該制御装置改変要素が内部容積を配置するのを可能にする。また、該制御装置はさらに、選択されたナノ容量の流体量を各小胞のチャンバーから選択的に排出させるための流体選択要素を含むことが可能である。1つの特定の実施態様では、該ハウジングの内部チャンバーにかける圧力の可変的制御を与えるデータ処理システム上で作動するコンピュータープログラムの制御下で作動する圧力制御装置が設備される。
【0079】
該流体透過性小胞は、該ハウジングの内部容積に開口する近位末端を有し、該小胞の流体収容チャンバーは、近位開口末端にメニスカスを形成することなく毛細管作用により流体で実質的に完全に充填されるサイズを有する。所望により、該開口は複数の小胞を有し、この場合、複数の小胞の第1部分は第1サイズの流体収容チャンバーを含み、第2部分は第2サイズの流体収容チャンバーを含み、それにより複数の流体容量が分注されることが可能である。
【0080】
もう1つの実施態様では、該手段は、選択された圧力条件で内部容積を配置するための、該ハウジングに結合し内部容積に連絡している圧力源を有する流体選択要素と、ハウジングの内部容積内の圧力を変化させ各流体透過性小胞の流体チャンバー内に正圧をかけてそれから分注される流体の量を変化させるための、圧力源に結合した調節要素とを含むことが可能である。該選択要素および調節要素は、内部チャンバーに接続した圧力制御装置の作動を指令するデータ処理システム上で作動するコンピュータープログラムであることが可能である。
【0081】
さらにもう1つの実施態様では、該ピン手段装置は、複数ウェルの基体の1以上のウェル中に化学的または生物学的方法で流体を分注するためのものである。
該装置は、複数の側面および底部(該底部の内部には、複数の開口が形成されている)を有するハウジング(該壁および底部は内部容積を定め、該開口内に取付けられた複数の流体透過性小胞は、該ハウジングの内部容積に連絡して配置された流体収容チャンバーを有する)と、複数の流体透過性小胞の一組から分注され該小胞の流体収容チャンバー内にローディングされる流体の量を種々選択するための該ハウジングの内部容積に連絡した流体選択および分注手段とを含むことが可能である。したがって、該分注手段は、該装置が該基体上に配置されそれに調節された場合に、選択された量の流体を複数ウェル基体のウェル中に分注する。
【0082】
さらにもう1つの実施態様では、複数ウェルの基体の1以上のウェル中に化学的または生物学的方法で流体を分注するための流体分注装置は、複数の側面および底部(該底部内には、複数の開口が形成されている)を有するハウジング(該ハウジングの壁ならびに頭部および底部は内部容積を定め、該開口内に取付けられた複数の流体透過性小胞は、ナノ容量の流体を収容するサイズの流体収容チャンバーを有し、該流体収容チャンバーは該ハウジングの容積に流体連絡して配置されている)と、複数の流体透過性小胞を機械的にバイアスさせて該ハウジング底部と密封的に接触させるための機械的バイアス要素とを含む。
【0083】
キット
また、ビーズ(これは更に結合される)に核酸を固定化するためのキットも提供する。1つの実施態様では、該キットは、適量のi)ビーズ、および/またはii)不溶性支持体、およびiii)対合手段を含む。本明細書に記載のキットは、所望により、適当な緩衝液、該試薬を収容するための容器、および/または使用説明書を含むことが可能である。
【0084】
以下の実施例は、例示目的に記載されているにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0085】
実施例1
シリコン表面に対する樹脂ビーズの結合
シリコン(ケイ素)表面(例えば、シリコンウェーハの表面)を、3-アミノプロピルトリエトキシシランでの処理によりアミノ基で誘導体化する。Wang樹脂ビーズを無水コハタ酸で処理して、カルボキシルで官能化された樹脂ビーズを得る。ついで該カルポキシ官能化樹脂ビーズを、p-ニトロフェノールの存在下、カップリング試薬(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC))でアミノ官能化シリコン表面に結合させる。該樹脂ビーズは、該シリコン表面に共有結合するようになり、該樹脂の未反応のカルホキシル基をp-ニトロフェニルエステル(核酸とのカップリングに適した活性化エステル)に変換する。
【0086】
別法として、Wang樹脂のカルボキシル基を、該アミノ官能基化シリコン表面と反応させる前にp-ニトロフェニル活性エステルに変換する。
【0087】
このように、樹脂ビーズを、シリコン表面に迅速かつ簡便に結合させることが可能であり、核酸の共有結合に適した反応性形態に同時に変換することが可能である。
【0088】
実施例2
酸不安定性共有二官能性トリチルリンカーを介した固体支持体に対する核酸の固定化
標準的な方法に従い、アミノ結合DNAを調製し、精製した。一部(10当量)をスピードバック(speedvac)上で蒸発乾固させ、無水DMF/ピリジン(9:1、0.1ml)に懸濁させた。これにクロロトリチルクロリド樹脂(1当量、1.05mol/mgローディング)を加え、該混合物を24時間振とうした。該樹脂のサンプルを採取し、80%AcOHを使用してこれを脱トリチル化し、260nmの吸光度を測定することにより、該ローディングを確認した。ローディングは、約150pmol/mg樹脂であった。
【0089】
80%酢酸においては、切断の半減期は実質的に5分未満であることが判明した。これは、パラおよびメタ置換された二官能性ジメトキシトリチルリンカーのそれぞれ105分および39分の半減期の、トリチルエーテルに基づくアプローチに匹敵する。また、予備的結果は、MALDI質量分析中に該DNAを該クロロトリチル樹脂から切断するには3-ヒドロキシピコリン酸マトリックスだけで十分であることを示している。
【0090】
実施例3
疎水性トリチルリンカーを介した固体支持体に対する核酸の固定化
該プライマーは、通常のトリチル化(torityl-on)DNA合成を使用して結合させた5'-ジメトキシトリチル基を含有していた。
【0091】
フィルターチップ内に配置したオリゴ精製カートリッジ(0.2mg)からのC18ビーズをアセトニトリルで洗浄し、ついでDNA(251中の50ng)の溶液を流した。ついで、これをクエン酸アンモニウム緩衝液中の5%アセトニトリルで洗浄した(70mM、2501)。該C18から該DNAを取り出すために、該ビーズを水(10l)中の40%アセトニトリルで洗浄し、Speedvac上で約21に濃縮するか又は直接MALDI質量分析計に付した。
【0092】
別法として、まずC18ビーズをシリコン表面(例えば、シリコン薄延物)に共有結合させるか、または疎水性相互作用により平坦な表面に吸着させた。
【0093】
結果は、疎水性相互作用を解離させるためには約30%以上のレベルのアセトニトリル/水で十分であることを示した。MALDIにおいて使用するマトリツクスは50%アセトニトリルを含有するため、支持体からのDNAの遊離およびMALDIを首尾よく行なうことができる(トリチル基は、MALDI過程中に除去される)。
【0094】
実施例4
シリコンチップに対するビーズの結合
シリコン表面のアミノ誘導体化 表面残渣を除去するためにシリコン薄延物をエタノールで洗浄し、該表面の酸化が保証されるように「真っ赤に焼ける」まで該シリコン薄延物をブンゼンバーナー上で燃焼した。冷却後、該薄延物をトルエン中の3-アミノプロピルトリエトキシシラン(25% v/v)の無水溶液に3時間漬けた。ついで該薄延物をトルエン(3回)、ついで無水ジメチルアセトアミド(3回)で洗浄した。
【0095】
Wang樹脂ビーズの活性化
Novabiochemから入手した真空乾燥されたWang樹脂ビーズ(5g,0.84mmol/gローディング,4.2mmol,直径100〜200メッシュ)を、DMAP(0.1当量,0.42mmol,51mg)と共にピリジン(40ml)に懸濁した。これに無水コハク酸(5当量,21mmol,2.10g)を加え、該反応を室温で12時間振とうした。この時間の経過後、該ビーズをジメチルホルムアミド(3回)、ついでピリジン(3回)で洗浄し、ピリジン/ジメチルホルムアミド(1:1,20ml)に懸濁した。4-ニトロフェノール(2当量,8.4mmol,1.40g)を加え、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(2当量,8.4mmol,1.73g)を加えることにより濃縮を促進し、該反応混合物を12時間振とうした。ついで該ビーズをジメチルホルムアミド、ピリジンおよびヘキサンで洗浄し、4℃で保存した。
【0096】
シリコン薄延物に対するビーズのカップリング
アミノ官能化シリコン薄延物を、4-ニトロフェノールビーズのジメチルアセトアミド(DMA)懸濁液で処理する。5分以内に、該ビーズは該表面に共有結合される。ついで、被覆された表面をDMA、エタノールおよび水で洗浄する(その条件下では、該ビーズは均一な単層のままである)。ビーズ表面を引っ掻かないように注意しなければならない。ついで該ビーズを、アミノ官能化修飾DNAと反応させることができる。
【0097】
実施例5 ストレプトアビジン−イミノビオチンを介した固体支持体に対する核酸の固定化
2-イミノビオチンN-ヒドロキシ-スクシンイミドエステル(Sigma)を、製造業者が提案している条件に従い、3'-または5'-アミノリンカーでオリゴヌクレオチドに対合させた。反応の完了をMALDI-TOF MS分析により確認し、生成物を逆相HPLCにより精製した。
【0098】
各反応には、ストレプトアビジンで被覆された0.1mgの磁性ビーズ(DynalからのDynabeads M-280 Streptavidin)を、対応する80pmolのオリゴと共に、1M NaClおよび50mM炭酸アンモニウム(pH9.5)の存在下、室温で1時間インキュベートした。結合したオリゴヌクレオチドを有するビーズを50mM炭酸アンモニウム(pH9.5)で2回洗浄した。ついで該ビーズを、2μlの3-HPAマトリックス中、室温で2分間インキュベートした。0.5μlの上清のアリコートをMALDI-TOFに適用した。ビオチン置換実験には、1μlの50mMクエン酸アンモニウム中の遊離ビオチン1.6nmol(該結合オリゴに対して80倍過剰)を該ビーズに加えた。室温での5分間のインキュベーションの後、1μlの3-HPAマトリックスを加え、0.5μlの上清をHALDI-TOF MSに適用した。該結合イミノビオチンオリゴの回収を最大にするために、前記処理からのビーズを、2μlの3-HPAマトリックスと共に再びインキュベートし、0.5μlの該上清をHALDI-TOF MSに適用した。
【0099】
図5および6に示すとおり、マトリックス単独および遊離ビオチン処理は、ストレプトアビジンビーズからイミノビオチンを定量的に遊離させた。二次処理(これにより、完全な回収が確認された)の後には、結合オリゴはほとんど認められなかった。
【0100】
均等物
当業者には、本明細書に記載の特定の方法の多数の均等物が認められるか、ごく通常の実験により、それを確認することができるであろう。そのような均等物は、本発明の範囲内とみなされ、以下の請求の範囲により保護される。
【0101】
当業者には修飾は明らかであるため、本発明は添付の請求の範囲の範囲に限定されるに過ぎないと意図される。
【0102】
【表2】

【表3】

【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】固体支持体に対するビーズの共有結合、および該ビーズに対するDNAの共有結合を示す図である。
【図2】実施例1に記載のWang樹脂ビーズ(p-ベンジルオキシベンジルアルコールコポリスチレン-ジビニルベンゼン(DVB)樹脂)の、固体支持体に対する共有結合を示す図である。
【図3】実施例2に記載の共有二官能性トリチルリンカーを介した核酸の固定化を表す図である。
【図4】実施例3に記載の疎水性トリチルリンカーを介した核酸の固定化を表す図である。
【図5】結合オリゴ(5'イミノビオチン-TGCACCTGACTC、配列番号1)を含有するマトリックス処理ダイナビーズ(Dynabeads)の上消のMALDI-TOF質量スペクトルを示す。内部標準(CTGTGGTCGTGC、配列番号2)を、該マトリックス内に含有させた。
【図6】結合オリゴ(5'イミノビオチン-TGCACCTGACTC、配列番号1)を含有するビオチン処理ダイナビーズのHALDI-TOF(マトリックス介助レーザーデソープション/イオン化(MALDI)-飛行時間型(TOF))質量スペクトルを示す。内部標準(CTGTGGTCGTGC、配列番号2)を、該マトリックス内に含有させた。
【図7】ホウ酸(boronic acid)官能化ビーズと非伸長プライマー上の2',3'-ジオールとの反応を介したビーズに対する該非伸長プライマーの対合を図示する。
【図8】ピン手段装置を図示する。
【図9】種々のピン構造を示す。図9Aは、真っ直ぐな頭部を有する固形ピンを示す。図9Bは、凹状の頭部を有する固形ピンを示す。図9Cは、切頭角錐状の頭部を有する固形ピンを示す。図9Dは、凹状の頭部と中空の中心部(その中に光ファイバーを通すことが可能である)とを有するピンを示す。図9Eは、切頭角錐状の頭部と中空の中心部とを有するピンを示す。
【図10】アミド結合を介したピン(アミノ官能基化されている)へのビーズ(活性化カルホキシル)の対合と、ビーズへのDNA(酸で切断可能なリンカー)の結合とを表す図である。該ビーズを該ピンに対合させるジスルフィドリンカー、および該ビーズと該トリチル基との間のチオエーテル対合は、該ビーズの選択的な切断(DNAは結合したまま)を可能にする。
【図11】磁気相互作用を介したピンへの常磁性ビーズ(ストレプトアビジンで官能基化されている)の対合と、該ビーズからDNAを選択的に切断するのを可能にする該DNAの結合(修飾ビオチンまたは光切断性ビオチンなどのリンカーを介するもの)とを図示する。
【図12】図12A〜Cは、ピン手段装置と台とをそれぞれ別々に図示し、さらに、装着された台および手段の断面図を図示する。
【図13】図9A〜Eに示すピン手段用の質量分析計の構造を図示する。
【図14】電圧がかけられるピン手段を図示する。電界をかけると、核酸は陽極に誘引される。無荷電分子は溶液中に残存し、一方、正に荷電した分子は陰極へ誘引されるため、この系により核酸が精製される。
【図15】生物後捕捉(post-biology capture)を用いる質量分析による配列決定に関与する工程の流れ図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体支持体と対合し更に巨大分子または生物学的粒子と対合しているビーズを含んでなる組成物。
【請求項2】
該巨大分子が、核酸、ペプチド、タンパタ質、アミノ酸および有機分子よりなる群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該ビーズが巨大分子と対合しており、該巨大分子が核酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
該ビーズが、シリカゲル、ガラス、磁性体、p−ベンジルオキシベンジルアルコールコポリスチレン−ジビニルベンゼン(DVB)樹脂、クロロトリチルクロリドコポリスチレン−DVB樹脂、クロロメチル化コポリスチレン−DVB樹脂、金属、プラスチック、セルロース、架橋デキストランおよびアガロースゲルよりなる群から選ばれる物質から調製されたものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
該ビーズが膨潤性である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
該ビーズが非膨潤性である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
該ビーズの最大寸法または直径が1から100μmの範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
該固体支持体が、ビーズ、毛細管、板、膜、薄延物、櫛状物、ピン、薄延物、小孔のアレーを有する薄延物およびナノリットルウェル群よりなる群から選ばれる形態である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
該核酸がDNAである、請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
該核酸がRNAである、請求項3に記載の組成物。
【請求項11】
工程(a)ビーズを巨大分子または生物学的粒子と対合させること、および工程(b)ビーズを固体支持体と対合させることを含んでなり、工程(a)および(b)を任意の順序で順次にまたは同時に行う、固体支持体と対合し更に巨大分子または生物学的粒子と対合しているビーズの製造法。
【請求項12】
該巨大分子が、核酸、ペプチド、タンパク質、アミノ酸および有機分子よりなる群から選ばれる、請求項11に記載の製造法。
【請求項13】
該ビーズが巨大分子と対合していて、該巨大分子が核酸である、請求項11に記載の製造法。
【請求項14】
該ビーズが、巨大分子と対合のために官能化されている、請求項11〜13のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項15】
該ビーズが、カルボキシ官能基で官能化されている、請求項11〜13のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項16】
該ビーズが、アミノ官能基で官能化されている、請求項11〜13のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項17】
該ビーズを該固体支持体と対合させる前に、該ビーズを該巨大分子または生物学的粒子と対合させる、請求項11〜13のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項18】
該ビーズを該固体支持体と対合させた後に、該ビーズを該巨大分子または生物学的粒子と対合させる、請求項10に記載の製造法。
【請求項19】
i) ビーズ、および/または ii) 不溶性支持体、および iii)分子を該ビーズに結合させるためのおよび該ビーズを該支持体に結合させるための対合手段、を含んでなるキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−298785(P2008−298785A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152532(P2008−152532)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【分割の表示】特願平10−521764の分割
【原出願日】平成9年11月6日(1997.11.6)
【出願人】(500092402)シークエノム・インコーポレーテツド (4)
【Fターム(参考)】