説明

固体支持体の官能化及びこれら支持体上への生物学的分子の固定化のための、ヒドラゾンもしくはジアゾ官能基を担持する新規なシラン化合物

本発明は、下式(I):


(式中、R1はメチル基を、R2及びR3は水素原子を表して良く、Aは-O-を表して良く、Eはアルキレン基を表して良く、Xはメトキシシラン基を表して良く、Zは単結合を表して良く、且つYは-N2または-N-NH2基を表してよい)を満たす新規なシラン化合物に関する。固体支持体の官能化及びこれら支持体への生物学的分子の固定化のためのこれらシラン化合物の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体支持体の官能化に使用可能なヒドラゾンもしくはジアゾ官能基を担持する新規なシラン化合物、前記シラン化合物によって官能化された支持体、並びに生物学的分子、特に核酸の固定化におけるこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸の分子の構造、組織、及び配列の分析は、疾患の発生、診断、及び治療において、法医学において、疫学において、及び公衆衛生、並びに遺伝子発現及び発達を制御する因子の解明において、主に重要である。
【0003】
固定化された生物学的分子、例えば核酸を担持する支持体は、生物学的存在の検出及び認識のため、更に別の応用、例えば生物学的分子の分離及び精製のために、有利に使用される。
【0004】
このためには、下記:
・ 懸かる生物学的分子の再現性のある固定化を可能にする特性;
・ 刺激的でない方法で懸かる生物学的分子の固定化を可能にする特性(官能化された固体支持体の感度は固定化の程度及びシグナルの検出方法、更にはバックグラウンドノイズのレベルに依存する);
・ 再利用可能な特性;
を示す、官能化された固体支持体を利用可能にすることが必須である。
固体支持体上の懸かる生物学的分子の固定化は、一般的に、
・ 支持体への生物学的分子の付着を提供するグラフト化カップリング剤による、支持体表面の化学的変性からなる、支持体の官能化の第一工程;
・ 生物学的分子と支持体にグラフト化したカップリング剤との間の相互作用を確立する工程であって、前記相互作用が、生物学的分子とカップリング剤との間の共有結合またはより弱い結合(例えば静電相互作用または配位結合)を形成することからなるものであってよい、固定化の第二工程;
の二工程で行われる。
【0005】
カップリング剤は、支持体の-OH基もしくはヒドリド官能基と作用剤の反応性官能基との反応により支持体の表面にグラフト化されて、カップリング剤と支持体との間に強力なイオン性もしくは共有結合性相互作用を形成し、さらにまた、例えばカップリング剤のグラフト化した分子間にファンデルワースタイプの結合を形成することにより、例えば一般的に表面で組織化される密な単分子層の形態で、支持体の表面に組織化される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【特許文献1】Angew, Chem, Int., Ed., 2003, 42, 2376-2379.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、核酸タイプの生物学的分子を付着させるためには、これらの分子を、直接支持体とまたはカップリング剤と反応することのできる反応性基の導入によって予め変性させる必要がある。しかしながら、こうした変性分子の使用は、これら分子の固定化のための方法を実施する費用をかなり増大させる。
【0008】
したがって、発明者らは、固体支持体の表面にグラフト化させることができ、また生物学的分子の予備変性を必要とせずに共有結合の形成によって前記分子を直接固定化することが可能な基を含む、新規なシランを提供するという目標を定める。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、第一の主題によれば、下式(I):
【化1】

[式中、
・ R1は、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表し;
・ R2及びR3は、互いに別個に、H、NO2、Cl、Br、F、I、OR、SR、NR2、R、NHCOR、CONHR、またはCOORを表し、ここでRはアルキル基またはアリール基を表し;
・ Zは、単結合、またはY基を担持する二重結合と芳香環との共役を可能にしうる少なくとも一つの二重結合を含む有機スペーサー基を表し;
・ Xは、支持体のヒドロキシルもしくはヒドリド官能基との反応後に共有結合を形成しうるシリル基を表し;
・ Eは、有機スペーサー基を表し;
・ Aは、単結合、あるいは-CONH-、-NHCO-、-O-、または-S-から選択される基を表し;
・ Yは、-N2または-N-NH2基を表す]
に相当するシラン化合物を表す。
【0010】
本発明によれば、E基は、その必須の役割が支持体の表面へのシラン化合物のグラフト化により生じるフィルムに特定の特性を付与することである、有機スペーサー基である。
このE基は、一般的に、例えば2乃至24の炭素原子を含み、且つ一つ以上の不飽和及び/または一つ以上の芳香族基及び/または一つ以上のヘテロ原子を任意に含む炭化水素基である。
【0011】
例としては、E基は、アルキレン基、すなわち例えば8乃至24の炭素原子を含む-CH2-タイプの連鎖であってよい。このタイプの基は、いったん支持体にグラフト化されると、鎖間相互作用を作り出すことによって互いに作用しあう能力をシラン化合物に付与し、しかるに組織化単分子層の製造に貢献する。
【0012】
E基は、3乃至24の炭素原子を含むフルオロアルキレン基であってよい。これらの基は、その含まれるシラン化合物のグラフト化によって生じるフィルムへの、これらをクロマトグラフィー及び電気泳動における利用を可能にする特性の付与に貢献する。
【0013】
E基は、一つ以上の不飽和を含む、例えばアセチレンタイプの炭化水素基であってよい。こうした基の例は、以上に定義したように、一つ以上のアセチレン不飽和によって中断されたアルキレン基であってよい。E基が少なくとも二つの不飽和を含む場合、これはいったん支持体に固定化されると、架橋する能力をシラン化合物に付与することができる。
【0014】
E基はまた、一つ以上の芳香族基を含む炭化水素基であってよい。
【0015】
例えば不飽和直鎖状基と共役した芳香族基を含む基、例えばフェニレン−ビニレンまたはフェニレン−アセチレン単位の連鎖から生じる基を挙げてよい。これらの基は、これらを含むシラン化合物のグラフト化から生じるフィルムへの、非線形光学特性の付与に貢献する。
【0016】
例えば、ピロールまたはチオフェン単位を含む基を挙げてよい。これらの基は、これらを含むシラン化合物のグラフト化から生じるフィルムへの、電子伝導特性の付与に貢献する。
【0017】
例えば、一つ以上のヘテロ原子基によって置換された一つ以上の芳香族を含む基、例えばキノン単位またはジアゾ単位の連鎖を含む基を挙げてよい。これらの基は、これらを含むシラン化合物のグラフト化から生じるフィルムへの、フォト/エレクトロルミネッセンス特性の付与に貢献する。
【0018】
本発明によれば、Xは、支持体のヒドロキシルもしくはヒドリド官能基へのシラン化合物の共有結合を可能にするシリル基を表し、この支持体は、例えばシリコン、ITO(インジウムスズ酸化物)、またはチタン製の固体支持体であってよい。
【0019】
このX基は、例えばトリハロシラン基(例えばトリフルオロシラン基またはトリクロロシラン基);トリヒドロシラン基;トリアルコキシシラン基−Si(OR4)3(ここで、R4は、飽和の直鎖状もしくは分枝状C1乃至C6アルキル基またはフェニル基を表す)(例えばトリメトキシシラン基、トリエトキシシラン基、またはトリイソプロポキシシラン基);トリアミノアルコキシアミン基−Si(NR5R6)3(ここでR5及びR6基は、別個に、飽和の直鎖状もしくは分枝状C1乃至C6アルキル基またはフェニル基を表す);有機金属基(例えばオルガノマグネシウム基またはオルガノリチウム基);あるいは加水分解性基を表す。
【0020】
Zは単結合であってよく、この場合はヒドラゾンもしくはジアゾ官能基が隣接する芳香環と直接共役していてよく、あるいはZは芳香環とヒドラゾンもしくはジアゾ官能基との間の共役を可能にする少なくとも一つの二重結合を含む有機基であってよい。「共役」なる語は、有機基の炭素鎖に沿う芳香環の電子の局在化を意味すると理解すべきである。この有機基は、下式:
【化2】

の基であってよい。
【0021】
nは、括弧内に位置する単位の反復数に相当する整数であり、nは1または2であってよい。
【0022】
R1は、例えば1乃至10の炭素原子を含むアルキル基、例えばメチル基、あるいは例えば6乃至18の炭素原子を含むアリール基、例えばフェニル基であってよい。
【0023】
Aは、単結合であってよく、この場合は芳香環がE基に直接結合している。Aはまた、-CONH-、-NHCO-、-S-、または-O-基であってもよい。
【0024】
本発明による化合物の第一の群は、Yが式-N-NH2-の基である群であり、この場合、これら化合物は下式(II):
【化3】

に相当する。
【0025】
この群の定義に含まれる特定の化合物は、Aが-O-に相当し、且つEが8乃至24の炭素原子を含むアルキレン基を表し、且つZが単結合であり、R2、R3、R1、及びXが以上に定義されるものである。
【0026】
例えば、下式(III):
【化4】

に相当する化合物を挙げてよい。
【0027】
本発明による化合物の第二の群は、Yが式-N2の群であり、この場合、これら化合物は下式(IV):
【化5】

に相当する。
【0028】
この群の定義に含まれる特定の化合物は、Aが-O-に相当し、且つEが8乃至24の炭素原子を含むアルキレン基を表し、且つZが単結合であり、R2、R3、R1、及びXが以上に定義されるものである。
【0029】
例えば、下式(V):
【化6】

に相当する化合物を挙げてよい。
【0030】
本発明の化合物は、有機合成におけるスペシャリストである専門家にとって利用し易い従来の合成方法によって調製可能である。
【0031】
例として、Eがアルキレン基であり、Aが-O-であり、且つXが-Si(OR4)3基である化合物を得るためには、調製を下記の反応スキームに従う三工程で構想してよい。
1) フェノール性カルボニル化合物とハロゲン化ビニル前駆体化合物との反応
【化7】

この反応は、ハロゲン原子Halの求核置換からなる。
Halと=の間の波線結合は、Halと=とを結合させる炭化水素基、例えばアルキレン基を表す。
【0032】
2) 工程1の結果得られる化合物は、次いで下記の反応スキームに従うヒドラジン溶液との反応によるヒドラゾン官能基の形成のための反応に処せられる。
【化8】

3) 工程2の結果得られる化合物は、次いで下記の反応スキームに従うカールシュタット触媒Pt[Si(CH3)2HC=CH2]2Oの存在下におけるHSi(OR4)3タイプの反応物とのヒドロシリル化反応に処せられる。
【化9】

【0033】
最後に、以上に得られるヒドラゾン官能基は、例えば酸化マグネシウムMnO2との酸化反応によってジアゾ官能基に転化してよい。
【0034】
当業者は、その得ようとするシラン化合物によってこれらの反応スキームを適合させるであろう。
【0035】
上述のように、本発明のシラン化合物は、(支持体上に存在する)ヒドロキシルもしくはヒドリド官能基と反応して共有結合を形成するために適当なX基の存在により、支持体の表面にグラフト化することができる。
【0036】
このように、本発明は、第二の主題によれば、表面にヒドロキシルもしくはヒドリド官能基を含む固体支持体の官能化方法であって、前記支持体を、以上に定義される少なくとも一つのシラン化合物を含む溶液と接触させる工程を含む方法に関する。
【0037】
この方法は、予め支持体の表面を処理して、グラフト化に必要なヒドロキシルもしくはヒドリド官能基を前記表面上に形成させる工程を含んでよい。
【0038】
然るに、シリコン100製の支持体(例えばウェハー形のもの)については、該支持体を、官能化の前に水酸化ナトリウム溶液と接触させることによって処理して、シラノール官能基を生成させることが好ましい。
【0039】
本発明の方法に従って官能化可能な支持体は、有機支持体(例えばプラスチック製)、無機支持体、例えば金属酸化物(例えばシリカ及びその誘導体、例えばガラス、水晶、インジウムスズ酸化物等)製の支持体、金属支持体(例えばチタン支持体)、またはシリコン製支持体であってよく、重要な点は、これらの支持体が(任意に上述の予備処理工程を伴って)、本発明のシラン化合物のグラフト化のためのヒドロキシルもしくはヒドリド官能基を発現しうることである。
【0040】
本発明の別の主題は、本発明の方法によって得られる官能化された固体支持体である。
【0041】
Y基の性質により、グラフト化したシラン化合物は、生物学的分子と相互作用してこれらを固定化する能力を有する。
【0042】
然るに、本発明の別の主題は、下記の工程:
a)以上に定義される支持体の官能化方法を実行する工程;
b)工程a)で得られた支持体を、固定化しようとする生物学的分子を含む溶液と接触させる工程;
を含む、生物学的分子の固体支持体上への固定化方法である。
【0043】
固定化しようとする分子は、オリゴヌクレオチド、核酸、ポリペプチド(蛋白質、酵素)、脂質、炭化水素、またはホルモン、特にジアゾ官能基と反応して共有結合を形成しうるリン酸基を含む分子であってよい。
【0044】
本発明の目的の範疇において、また以下においては、「核酸」なる語はオリゴヌクレオチド及びDNAまたはRNAのいずれをも意味すると理解される。
【0045】
本発明の別の主題は、本発明による固定化方法を利用することにより得られる固体支持体、すなわち、その上に懸かる生物学的分子が共有結合によって固定化された固体支持体である。
【0046】
然るに、これら固体支持体は、(例えば診断または配列分析用の)分析ツールとして、または製造用の合成ツールとして、例えばコーティング用に使用可能である。
【0047】
このように、前記支持体は多数の分野、例えば固体支持体上での合成、分子の分離及び精製(電気泳動法及びクロマトグラフィー)、またはバイオセンサーに応用を見出す。
【0048】
本発明による官能化された固体支持体の使用により、様々なタイプの生物学的分子の固定化、ひいては様々なタイプのチップ、例えば核酸チップ、例えばDNAチップ、またはポリペプチドチップ、例えばタンパク質チップの調製が可能になる。
【0049】
本発明による変性固体支持体の使用は、DNAチップ、すなわちその上に既知の配列のオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドが共有結合的に結合した支持体の調製において、特に有利である。こうしたDNAチップは、支持体上に固定化されたオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドと標的核酸またはオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションによって、これら標的分子の配列の決定及び遺伝子発現の追跡を可能にする。「DNAチップ」なる語が、多数の捕捉プローブが規定の位置に結合された小サイズの固体支持体を意味することが特記される。
【0050】
したがって、本発明の別の主題は、上述の本発明の固定化方法によって得られる核酸もしくはポリペプチドチップである。
【0051】
本発明を、詳説のために記載され、非限定的である以下の実施例を参照して、ここに説明する。
【0052】
(実施例1)
この実施例は、本発明によるシラン化合物:11-(p-フェニルメチルヒドラゾン)ウンデシルトリメトキシシランの、下記の反応スキーム:
【化10】

に従う調製を例示する。
【0053】
アセトフェノン官能基を、11-ブロモウンデセンと4-ヒドロキシアセトフェノンとのウィリアムソンタイプの反応によって導入する。ヒドラゾン基を、高温条件下でのヒドラジン中における反応により合成する。シリル部分を、カールシュテット触媒の存在下でのヒドロシリル化反応の後に導入する。
【0054】
a) 工程1:11-(p-アセトフェノン)ウンデス-1-エンの合成
【化11】

11-ブロモウンデセン(95%)(15.54g、14.5ml、63mmol)と炭酸カリウム(8.74g、63mmol、1当量)とを、150mlのDMF中に溶解させた4-ヒドロキシアセトフェノン(8.79g、63mmol、1当量)の溶液に添加する。反応は、50℃にて16時間に亘って行う。DMFの蒸発後及びエチルエーテル中に残渣を取り出した後に、反応混合物を脱塩水で(3回)及び飽和塩化ナトリウム溶液で連続的に洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、その後濃縮する。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィー(シクロヘキサン→シクロヘキサン/酢酸エチル 75/25)により精製して白色固体を得る。
【0055】
得られる生成物の特性は下記の通りである。
実測重量:14.46g
収率:79%
融点:35-40℃
【数1A】

【数1B】

【0056】
b) 工程2:11-(p-フェニルメチルヒドラゾン)ウンデス-1-エンの合成
【化12】

ヒドラジン一水和物(20.34g、20.2ml、408mmol、8.1当量)を、200mlのエタノール中に溶解させた4-(11-ウンデス-1-エン)アセトフェノン(14.46g、69mmol)の溶液に添加する。反応は、還流温度にて12時間に亘って行い、その後溶液を-20℃に冷却する。生成する沈殿物をろ過してとり、白色固体を得る。
【0057】
得られる生成物の特性は下記の通りである。
実測重量:14.54g
収率:96%
【数2A】

【数2B】

【0058】
c) 工程3:11-(p-フェニルメチルヒドラゾン)ウンデシルトリメトキシシラン(III)の合成
【化13】

11-(p-フェニルメチルヒドラゾン)ウンデス-1-エン(4g、13mmol)を、トリメトキシシラン(90%)(2.62g、2.7ml、19mmol、1.5当量)と混合する。カールシュテット触媒(0.31g、0.03mmol、0.0025当量)を非常にゆっくりと添加する。反応は、常温で16時間に亘って行う。過剰のトリメトキシシランを蒸発させた後、粗製反応生成物を無水ペンタン中に溶解させ、-20℃に冷却する。全混合物をろ過して黄色固体を得る。
【0059】
得られる生成物の特性は下記の通りである。
実測重量:2.6g
収率:46%
【数3】

【0060】
d) シリコン製支持体の化合物(III)によるシラン化
厚さ5000Åの熱酸化物の層で覆われた、シリコン製の基質のヒドロキシル化を、3.5Mの水酸化ナトリウム溶液中で2時間に亘り攪拌しつつ行う。前記支持体は、次いで超音波の作用下で脱塩水及びエタノールで連続的にすすぐ(各4分間)。
【0061】
無水トリクロロエチレン中10-2Mの濃度のシラン化溶液を使用し、シラン化反応は制御温度2℃にて24時間に亘って実行される。支持体は、超音波の作用下でジクロロメタン、エタノール、及びクロロホルムで連続的にすすぐ(各4分間)。
【0062】
ジアゾ官能基は、ジメチルホルムアミド中に溶解させた活性化MnO2の溶液と変性支持体との30分間に亘るシラン化反応後の間に得られる。その後、前記支持体を、超音波の作用下にてジメチルホルムアミドですすぐ(各4分間)。
【化14】

Rは、CH3を表す。
【0063】
(実施例2)
この実施例は、上述の実施例1による変性基質上へのオリゴヌクレオチドの固定化及びこのオリゴヌクレオチドの相補的標的とのハイブリダイゼーションを例示する。
【0064】
a) 変性化基質上へのオリゴヌクレオチドの固定化
MnO2での酸化による固体支持体の活性化の後に、それぞれが核酸の3スポットを含む3列のブロック2つを、マイクロピペットを使用し、手動で、各スポットについて0.2μlの堆積量で行う堆積により形成する。
【0065】
上部ブロックはPNAに、下部はODN(オリゴヌクレオチド)に相当し、同一の核酸塩基配列(5’-GAT AAA CCC ACT CTA-3’)及び0.3Mのクエン酸バッファ中10μMの同一濃度(pH9)を有する。PNAとODNとの相違は、実際のところ、PNAが、ペプチド骨格を介して結合した上述の核酸配列に相当する一方で、ODNが同一の核酸配列に相当するがリン酸ジエステル骨格を介して結合していることにある。
【0066】
b) 固定化後処理
堆積の後、固体支持体を湿式密閉チャンバ内に設置し、およそ16時間置く。次にこれを水で、その後0.2%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)洗浄剤で、更にその後再度水で濯ぐが、各洗浄工程は10分間継続する。
【0067】
c) ハイブリダイゼーション
次に、固体支持体上に堆積させた核酸のスポットの視覚化を、クエン酸ナトリウムベースの市販のハイブリダイゼーションバッファー(Hybバッファー溶液、Sigma Aldrich 品番:H7140)中の、20nMに希釈したCY3蛍光色素分子基を担持する相補配列(5’-TAG AGT GGG TTT ATC-3’)を有するDNA溶液を用い、40℃にて1時間に亘る表面ハイブリダイゼーション工程によって行う。次に、固体支持体を、0.2Xのクエン酸ナトリウム(Xは、クエン酸ナトリウムについては15×10-3mol・L-1を表す)を用いて5分間すすぐ。
【0068】
d) 測定値及び結果
蛍光シグナルが、AXONによりGenePix(登録商標)の名称で市販のスキャナーを用いて得られる。
低部ブロックのスポットのみが蛍光を発するが、このことは、オリゴヌクレオチドODNのリン酸ジエステル骨格のリン酸官能基と表面アリールジアゾメタン官能基との間の反応の特異性を証明する。PNAが基質の表面に固定化されなかったことから、上部ブロックのスポットは蛍光を発生せず、これら骨格のペプチド基は、表面アリールジアゾメタン官能基と反応することができない。蛍光結果間の優れた同質性もまた観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式:
【化1】

[式中、
・ R1は、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表し;
・ R2及びR3は、互いに別個に、H、NO2、Cl、Br、F、I、OR、SR、NR2、R、NHCOR、CONHR、またはCOORを表し、ここでRはアルキル基またはアリール基を表し;
・ Zは、単結合を表し;
・ Xは、支持体のヒドロキシルもしくはヒドリド官能基との反応後に共有結合を形成しうるシリル基を表し;
・ Eは、8乃至24の炭素原子を含むアルキレン基を表し;
・ Aは、-O-を表す]
のいずれかに相当するシラン化合物。
【請求項2】
Xが、トリハロシラン基;トリヒドロシラン基;トリアルコキシシラン基−Si(OR4)3(ここで、R4は、飽和の直鎖状もしくは分枝状C1乃至C6アルキル基またはフェニル基を表す);トリアミノアルコキシアミン基−Si(NR5R6)3(ここでR5及びR6基は、別個に、飽和の直鎖状もしくは分枝状C1乃至C6アルキル基またはフェニル基を表す);または有機金属基を表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
下式(III):
【化2】

に相当する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
下式(V):
【化3】

に相当する、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
表面にヒドロキシルもしくはヒドリド官能基を含む固体支持体の官能化方法であって、前記支持体を、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の少なくとも一つのシラン化合物を含む溶液と接触させる工程を含む方法。
【請求項6】
前記接触工程の前に、支持体の表面を処理して前記表面上にグラフト化に必要なヒドロキシルもしくはヒドリド官能基を形成する工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記固体支持体が、有機支持体または無機支持体である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記無機支持体が、金属酸化物、金属、またはシリコン製である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれか一項に記載の方法によって得られる固体支持体。
【請求項10】
生物学的分子の固体支持体上への固定化方法であって、連続的に、
a)請求項5乃至8のいずれか一項に記載の方法を実行する工程;
b)工程a)で得られた支持体を、固定化しようとする生物学的分子を含む溶液と接触させる工程;
を含む方法。
【請求項11】
固定化しようとする前記生物学的分子が、核酸、ポリペプチド、脂質、炭化水素、またはホルモンから選択される、請求項10に記載の固定化方法。
【請求項12】
固定化しようとする前記生物学的分子が、核酸である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれか一項に記載の方法によって得られる固体支持体。
【請求項14】
固定化された生物学的分子が核酸またはポリペプチドであって、核酸もしくはポリペプチドチップを構成する、請求項13に記載の固体支持体。

【公表番号】特表2009−537489(P2009−537489A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510467(P2009−510467)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054830
【国際公開番号】WO2007/135096
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】