説明

固体酸化物形燃料電池スタック

【課題】スタック化された単セルが自重による損傷を受けるのを防止でき、しかも構造が簡単な固体酸化物形燃料電池を提供する。
【解決手段】本発明は、燃料ガスと酸化剤ガスとの混合ガスが供給される固体酸化物形燃料電池であって、板状の電解質11の両面に燃料極12および空気極13がそれぞれ形成された複数の単セル1と、単セル1を支持する基板2と、複数の単セル1間を接続するインターコネクタ3と、を備え、各単セル1の電解質11は、面方向の端部が基板2に固定され、各単セル1は所定間隔をおいて基板2から突出するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、燃料ガス及び酸化剤ガスの混合ガスにより発電を行う固体酸化物形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の固体酸化物形燃料電池としては、板状の電解質の両面に燃料極と空気極をそれぞれ形成した単セルを複数個準備し、これらを重ねるように縦方向にスタックしたものが提案されている。しかしながら、このような燃料電池では、下方に配置された単セルが上方に配置された単セルの自重によって損傷を受けやすく、割れなどの破損の原因となっていた。また、下方に配置された単セルほど、ガスの供給が受けにくいという問題もあった。
【0003】
このような問題を解決するため、特許文献1に記載の燃料電池は、複数の単セルをバイポーラ板を介して横方向に並べている。すなわち、各単セルが垂直方向に延びるように配置されるとともに、各単セルの電極に燃料ガスと酸化剤ガスがそれぞれ行き渡るようにマニホールドが設けられている。このように単セルが垂直方向に延びるように横方向に並べることで、単セルが自重により損傷することを防止している。
【特許文献1】特開平4−267071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の燃料電池は、いわゆる二室型であるため、各電極に燃料ガス及び酸化剤ガスを供給するためのマニホールドが必要となり、構造が複雑になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、スタック化された単セルが自重による損傷を受けるのを防止でき、しかも構造が簡単な固体酸化物形燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、燃料ガスと酸化剤ガスとの混合ガスが供給される固体酸化物形燃料電池であって、上記目的を達成するためになされたものであり、板状の電解質の両面に燃料極(アノード)および空気極(カソード)がそれぞれ形成された複数の単セルと、前記単セルを支持する基板と、前記複数の単セル間を接続するインターコネクタと、を備え、前記各単セルの電解質は、面方向の端部が前記基板に固定され、前記複数の単セルは、所定間隔をおいて前記基板から突出した状態で配置されている。
【0007】
この構成によれば、複数の単セルの電解質の面方向の端部を基板に固定することで、複数の単セルが基板から突出した状態で配置されている。したがって、単セルを縦方向にスタックする場合のように、各単セルの自重が他の単セルに作用することがなく、単セルが破損するのを確実に防止することができる。また、燃料ガスと酸化剤ガスとの混合ガスを供給するいわゆる単室型の燃料電池であるので、ガスを分離するマニホールド等が不要であり、構造を簡素化することが可能となる。さらに、各単セルにおける電解質の面方向の端部を基板に固定しているため、所定間隔をおいて各単セルを基板上に配置することができる。そのため、各単セル間の隙間へガスを供給することができる。その結果、各電極に十分にガスを供給することができ、発電効率を高めることができる。
【0008】
上記電池において、各単セルの電解質は、基板に対して略垂直に立設することができるほか、単セル同士が接触しなければ、斜めに配置することもできる。
【0009】
単セル間を接続するインターコネクタは、種々の構成が考えられるが、例えば、板状の多孔質金属で形成することができる。これにより、インターコネクタが配置されていても単セル間にガスを供給することが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池によれば、スタック化された複数の単セルが自重による損傷を受けるのを防止でき、しかも構造を簡単にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る固体酸化物形燃料電池の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池の断面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池は、電解質11、燃料極12、及び空気極13からなる単セル1を基板2上に複数個(図1では3個)配置したものである。各単セルの間には、板状のインターコネクタ3が配置されており、3つの単セル1を直列に接続している。各単セル1は、矩形の板状に形成された電解質11の両面それぞれに薄膜状の燃料極12および空気極13を形成したものである。また、各電極12,13の表面には集電層4が配置されている。
【0013】
3個の単セル1は、基板2上に垂直に配置されている。すなわち、基板2上に平行に形成された3つの溝部21に、各電解質11の面方向の端部を差し込むことで、単セル1を基板2に固定している。そして、各単セル1間の隙間にインターコネクタ3が配置されている。各インターコネクタ3の下端部は、基板2上に接触している。
【0014】
次に、上記燃料電池を構成する材料について説明する。電解質11の材料としては、固体酸化物形燃料電池の電解質として公知のものを使用することができ、例えば、サマリウムやガドリニウム等をドープしたセリア系酸化物、ストロンチウムやマグネシウムをドープしたランタン・ガレード系酸化物、スカンジウムやイットリウムを含むジルコニア系酸化物などの酸素イオン伝導性セラミックス材料を用いることができる。
【0015】
燃料極12及び空気極13は、セラミックス粉末材料により形成することができる。このとき用いられる粉末の平均粒径は、好ましくは10nm〜100μmであり、さらに好ましくは50nm〜50μmであり、特に好ましくは100nm〜10μmである。なお、平均粒径は、例えば、JISZ8901にしたがって計測することができる。
【0016】
燃料極12は、例えば、金属触媒と酸化物イオン導電体からなるセラミックス粉末材料との混合物を用いることができる。このとき用いられる金属触媒としては、ニッケル、鉄、銅、コバルトや、貴金属(白金、ルテニウム、パラジウム等)等の還元性雰囲気中で安定で、水素酸化活性を有する材料を用いることができる。また、酸化物イオン導電体としては、蛍石型構造又はペロブスカイト型構造を有するものを好ましく用いることができる。蛍石型構造を有するものとしては、例えばサマリウムやガドリニウム等をドープしたセリア系酸化物、スカンジウムやイットリウムを含むジルコニア系酸化物などを挙げることができる。また、ペロブスカイト型構造を有するものとしてはストロンチウムやマグネシウムをドープしたランタン・ガレード系酸化物を挙げることができる。上記材料の中では、酸化物イオン導電体とニッケルとの混合物で、燃料極12を形成することが好ましい。なお、酸化物イオン導電体からなるセラミックス材料とニッケルとの混合形態は、物理的な混合形態であってもよいし、ニッケルへの粉末修飾またはセラミックス材料へのニッケル修飾などの形態であってもよい。また、上述したセラミックス材料は、1種類を単独で、或いは2種類以上を混合して使用することができる。また、燃料極12は、金属触媒を単体で用いて構成することもできる。
【0017】
空気極13を形成するセラミックス粉末材料としては、例えば、ペロブスカイト型構造等を有するCo,Fe,Ni,Cr又はMn等からなる金属酸化物を用いることができる。具体的には(Sm,Sr)CoO,(La,Sr)MnO,(La,Sr)CoO,(La,Sr)(Fe,Co)O,(La,Sr)(Fe,Co,Ni)Oなどの酸化物が挙げられ、好ましくは、(La,Sr)(Fe,Co)Oである。上述したセラミックス材料は、1種を単独で、或いは2種以上を混合して使用することができる。
【0018】
集電層4は、Pt,Au,Pd,Ag,Ni,Cu,SUS等の導電性金属、或いは金属系材料,又はLa(Cr,Mg)O,(La,Ca)CrO,(La,Sr)CrOなどのランタン・クロマイト系等の導電性セラミックス材料によって形成することができ、これらのうちの1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0019】
上記電解質は、上述した材料により形成される。また、上述した電解質の形成方法は、具体的には、押し出し成形、粉末プレス成形、射出成形、鋳込成形、シート成形などである。
【0020】
また、特徴としては電解質の面方向の端部が前記基板に固定されているが、電解質の両端が固定されていても良い。
【0021】
上記燃料極12、及び空気極13は、上述した材料を主成分として、さらにバインダー樹脂、有機溶媒などが適量加えられることにより形成される。より詳細には、上記主成分とバインダー樹脂との混合において、上記主成分が50〜95重量%となるように、バインダー樹脂等を加えることが好ましい。また、集電層用ペーストも上述したように、バインダー樹脂、有機溶媒などが適量加えられることにより形成される。
【0022】
燃料極12、空気極13及び集電層4の形成方法としては、例えば印刷法を用いることができ、具体的には、スクリーン印刷法やナイフコ−ト法、ドクターブレード法、スプレーコート等の印刷方法を用いることができる。これ以外にも、燃料極12、空気極13及び集電層4を、転写シート上に塗布しておき(いわゆるグリーン体)、これらを転写することによって電極を形成することもできる。また、集電層4は、予めメッシュ状に形成したものを電極12,13上に圧接することもできる。このとき、例えば燃料極12に取り付けられる集電層4を白金からなるメッシュで構成するとともに、空気極13に取り付けられる集電層4を金からなるメッシュで構成することができる。
【0023】
インターコネクタ3は、電子導電性を有する多孔質体であって、イオン伝導性が無視できる程度に小さいことが好ましい。また、熱力学的に安定な材料で構成されていることが好ましい。導電率については、燃料電池の運転温度において、2S・cm−1以上であることが好ましい。多孔質体の気孔率は、ガス透過性及びインターコネクタの強度を考慮すると、10〜80%の範囲にあることが好ましい。また、後述するように、インターコネクタ3の周縁の面からガスを流入させる必要があるため、ある程度の厚みが必要となる。
【0024】
以上のような要求を満たすため、インターコネクタ3を構成する材料は、Pt,Au,Ag,Ni,Cu,SUS等の導電性金属、或いは金属系材料,又はLa(Cr,Mg)O,(La,Ca)CrO,(La,Sr)CrOなどのランタン・クロマイト系等の導電性セラミックス材料によって形成することができ、これらのうちの1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
基板2は、絶縁性材料が用いられ、例えば、石英ガラスやバイコールガラスなど一般的な耐熱性ガラスやアルミナ、シリコン窒化物、シリコン炭化物などのセラミックス板を使用することができる。
【0026】
上記のように構成された燃料電池は、次のように発電が行われる。以下、図2を参照しつつ説明する。図2は、本実施形態に係る燃料電池の平面図である。まず、基板2の面方向と平行に、水素、又はメタン、エタンなどの炭化水素からなる燃料ガスと空気等の酸化剤ガスとの混合ガスGを高温の状態(例えば、400〜1000℃)で供給する。混合ガスGは、両側に配置されている単セル1の電極に接触したり、或いはインターコネクタ3が多孔質であることからこれを介して、単セル1間に流入し、各電極12,13に接触する。こうして、燃料極12及び空気極13がそれぞれ混合ガスと接触するため、各単セル1における燃料極12と空気極13との間で、電解質11を介した酸素イオン伝導が起こり、発電が行われる。
【0027】
以上のように、本実施形態によれば、複数の単セル1の電解質11の面方向の端部を基板2に固定することで、単セル1を基板2に垂直に配置している。したがって、単セルを縦方向にスタックする場合のように、各単セルの自重が他の単セルに作用することがなく、自重による単セル1の破損を確実に防止することができる。また、各単セル1における電解質11の面方向の端部を基板1に固定しているため、セパレータが無くても所定間隔をおいて各単セル1を基板2上に配置することができる。そのため、各単セル1間の隙間へガスを供給することができる。その結果、各電極に十分にガスを供給することができ、発電効率を高めることができる。
【0028】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、インターコネクタ3は、上記のように多孔質材料を用いるほか、メッシュ状に形成し、これを電極間に架け渡したてボンディングしたものを用いることができる。或いは、ワイヤボンディングを用い、単セルを接続することもできる。
【0029】
また、各単セル1は、上記のように、基板2に対して垂直に配置するほか、所定間隔をおいて斜めに配置することもできる。また、基板1に対する固定方法としては、溝部21に差し込む以外に、接着剤で固定することも可能であり、その方法は特には限定されない。
【0030】
また、集電層4は、必ずしも設ける必要はない。例えば、電子伝導性を有する多孔質体をインターコネクタとして用いれば、集電層の代わりとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る固体酸化物形燃料電池の側面図である。
【図2】図1の燃料電池の平面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 単セル
11 電解質
12 燃料極
13 空気極
2 基板
3 インターコネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスとの混合ガスが供給される固体酸化物形燃料電池であって、
板状の電解質の両面に燃料極および空気極がそれぞれ形成された複数の単セルと、
前記単セルを支持する基板と、
前記複数の単セル間を接続するインターコネクタと、を備え、
前記各単セルの電解質は、面方向の端部が前記基板に固定され、
前記複数の単セルは、所定間隔をおいて前記基板から突出した状態で配置されている、固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
前記各単セルの電解質は、前記基板に対して略垂直に立設されている、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
前記インターコネクタは、板状の多孔質金属で形成されている請求項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池。

【図1】
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【図2】
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