説明

固体酸化物形燃料電池

【課題】燃料電池単セルを確実に保持することができ、集電抵抗の小さい固体酸化物形燃料電池を提供する。
【解決手段】固体酸化物形燃料電池は、固体電解質層21の一方の面に燃料極層22が形成されると共に、その面と反対側の面に空気極層23が形成された燃料電池単セル11が、燃料極層を覆う導電性及び通気性を有する薄板又はメッシュ(A)32と、空気極層を覆う導電性及び通気性を有する薄板又はメッシュ(B)33とによって挟まれており、薄板又はメッシュ(B)33は、空気極層23に集電材41によって固定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、固体酸化物形燃料電池に関する。固体酸化物形燃料電池の中でも特に、還元炎を生成可能な燃料を燃焼させ、燃焼によって形成される火炎を燃料極にあてて燃料電池単セルを加熱すると共に、火炎中の燃料種を燃料として発電を行う直接火炎型燃料電池に好適に用いられる固体酸化物形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池(以下、SOFCともいう)は、電解質として固体酸化物を使用すること、動作環境(発電可能温度)が高温であることに特徴がある。
【0003】
SOFCは、電解質を挟んで一方の側に燃料極を備え、他方の側に空気極を備え、燃料極側には燃料ガスを、空気極側には酸化剤ガスを供給し、電解質を介して燃料と酸化剤を電気化学的に反応させることにより発電する発電装置である。燃料極側には燃料ガスを、空気極側には酸化剤ガスを供給し、燃料極と空気極を電気回路で接続することで、該電気回路に電流が流れる。
【0004】
燃料極と空気極を備えた電解質は単セルと呼ばれ、この単セルとして、平板型、筒型、又はハニカム型など様々な形状のものが考案され、実用化が図られている。
【0005】
SOFCのひとつの形態として、直接火炎型燃料電池がある(例えば、特許文献1)。直接火炎型燃料電池とは、還元炎を生成可能な燃料を燃焼させ、燃焼によって形成される火炎を燃料極にあてて燃料電池単セルを加熱すると共に、火炎中の燃料種を燃料として発電を行うSOFCである。
【0006】
なお、還元炎とは、一酸化炭素(CO)や水素(H)などの還元成分を含む火炎である。還元成分は、燃料が完全燃焼する過程のガスに含まれ、燃料を燃焼させる際の内炎も還元炎にあたる。
【0007】
還元炎を生成可能な燃料は、気体、液体、或いは固体などがあり、例えば、メタン (CH)、エタン(C)、プロパン(C)、ブタン(C10)等のパラフィン系炭化水素、エチレン(C)、プロピレン(C)、ブチレン(C)等のオレフィン系炭化水素等の炭化水素系ガス、又はこれらの炭化水素系ガスを含む混合ガス等が用いられる。また、メタノール、エタノール、石油、灯油、ジメチルエーテル(DME)等も用いられる。
【0008】
直接火炎型燃料電池を複数の単セルで構成する方法としては、特許文献1に記載された方法(特に、図5、図6、図9など。)や、特許文献2に記載された方法などがある。
【0009】
特許文献2には、カソード電極層とアノード電極層とが固体電解質基板の両面に形成された固体酸化物型燃料電池を備えた固体酸化物型燃料電池発電装置において、前記固体酸化物型燃料電池は、通気性を有して前記カソード電極層に接触して配置された第1の導電体と、通気性を有して前記アノード電極層に接触して配置された第2の導電体とにより挟持され、前記第1の導電体および前記第2の導電体は、絶縁体を介して固定され、前記第1の導電体および前記第2の導電体が、集電部を形成する固体酸化物型燃料電池発電装置が記載されている。また、図1〜6に示す発電装置が、アノード電極層を直接火炎に晒して燃料を供給して発電することができることが記載されている(段落0028など。)。
なお、本明細書では、特許文献2におけるカソード電極は空気極、アノード電極は燃料極、固体酸化物形燃料電池は燃料電池単セル、固体酸化物型燃料電池発電装置は固体酸化物型燃料電池という。
【0010】
特許文献2の発電装置では、集電構造が簡易であって、燃料電池を確実に保持することができるという利点があった。また、複数個の燃料電池を容易に接続することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−190592号公報
【特許文献2】特開2008−159447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献2に記載された固体酸化物形燃料電池のように、燃料電池単セルを導電体によって挟持したものを発電に用いる場合には、燃料極では燃料極の材料が発電時に還元されて電気抵抗が小さくなるため、導電体として金属製メッシュ等を用いても十分に集電抵抗は小さくできた。しかし、空気極では空気極の材料の電気抵抗が大きく金属製メッシュ等を用いても集電抵抗が大きくなってしまう場合があった。また、金属製メッシュの表面が酸化されると、空気極と金属製メッシュとの接触部での電気抵抗が大きくなるため、集電抵抗が大きくなってしまう場合があった。
なお、ここでいう集電抵抗とは、導電体(集電材ともいう)のみの電気抵抗ではなく、集電材と電極材(燃料極材料、空気極材料)とを通じて三相界面に至るまでの電気抵抗である。空気極での集電抵抗が大きいことは、空気極の三相界面への電子の供給する際の電気抵抗が大きいことを意味し、それによって固体酸化物形燃料電池の発電効率が悪くなる。
【0013】
一方、燃料電池単セルを金属製メッシュ(導電体)によって挟持した固体酸化物形燃料電池を直接火炎型燃料電池に用いる場合には、燃料極層を火炎にあてるために、例えば特許文献1の図1のように、固体酸化物形燃料電池の燃料極層が下側となるように設置されるケースが多い。
【0014】
このように設置する場合には、燃料電池単セルの荷重は燃料極層側の金属製メッシュにかかるため、空気極側の金属製メッシュには燃料極層側の導電体ほどの強度は求められない。そのため、空気極側の導電体には、目の粗い金属製メッシュなどを用いることも可能であるが、目の粗い金属製メッシュを用いると空気極との接点が少なくなるため、集電抵抗が大きくなってしまうという問題が発生した。
【0015】
そのため、集電抵抗がより小さい固体酸化物形燃料電池が求められていた。
【0016】
本発明は、燃料電池単セルを確実に保持することができ、集電抵抗の小さい固体酸化物形燃料電池を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決する請求項1に記載の発明は、固体電解質層の一方の面に燃料極層が形成されると共に、その面と反対側の面に空気極層が形成された燃料電池単セルを備えた固体酸化物形燃料電池であって、前記燃料電池単セルが、前記燃料極層を覆う導電性及び通気性を有する薄板又はメッシュ(A)と、前記空気極層を覆う導電性及び通気性を有する薄板又はメッシュ(B)とによって挟まれており、前記薄板又はメッシュ(B)は、空気極層に集電材によって固定されていることを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池において、前記空気極層が集電材によって覆われ、該集電材が通気性を有する層を形成していることを特徴とする。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の固体酸化物形燃料電池において、前記薄板又はメッシュ(A)が、燃料極層に集電材によって固定されていることを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池において、前記薄板又はメッシュ(A)と薄板又はメッシュ(B)との間に、複数個の燃料電池単セルが挟まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、薄板又はメッシュ(A)と薄板又はメッシュ(B)とによって挟み、前記薄板又はメッシュ(B)を空気極層に集電材で固定することによって、燃料電池単セルを確実に保持することがでる。また、前記薄板又はメッシュ(B)を空気極層に集電材で固定することによって、集電抵抗の小さい固体酸化物形燃料電池を提供することができる。
【0022】
また、前記薄板又はメッシュ(B)を空気極層に集電材によって固定する集電材によって空気極層を覆い、集電材によって通気性を有する層を形成することによって、集電抵抗をより小さくくることができる。
【0023】
更に、前記薄板又はメッシュ(A)を燃料極層に集電材によって固定することによって、燃料電池単セルをより強固に保持できると同時に、燃料極の集電抵抗も小さくくることができる。
【0024】
なお、薄板又はメッシュ(A)と薄板又はメッシュ(B)との間に、複数個の燃料電池単セルが挟むことで、複数個の燃料電池単セルを容易に保持することができ、複数個の燃料電池単セルからの集電も容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明を具体化した実施形態を示す。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を損なわない範囲において構成を変えて利用することができる。
【0026】
(第1の実施形態)
第1の実施形態を図1〜2に示す。
なお、図1〜2に示す固体酸化物形燃料電池の図では、電流を取り出すために燃料極層、空気極層、メッシュ、集電材等に接続する配線やインターコネクタ等、本発明の要旨に関係のない部分は図示を省略している。
【0027】
図1には、4個の燃料電池単セル11を有する固体酸化物形燃料電池10が示されている。ここで用いる燃料電池単セル11は矩形の平板型の単セルであって、図2の断面に示されるように、固体電解質層21を挟んで、一方の面に燃料極層22が形成されると共に、その面と反対側の面に空気極層23が形成されている。
【0028】
4個の燃料電池単セル11は、図2に示すように、導電性及び通気性を有するメッシュ(A)32と、導電性及び通気性を有するメッシュ(B)33とによって挟まれている。このとき、燃料電池単セル11の燃料極22はメッシュ(A)32によって覆われ、メッシュ(A)32は燃料極層22と接触している。また、空気極23はメッシュ(B)33によって覆われ、メッシュ(A)33は空気極層23と接触している。
この固体酸化物形燃料電池10では、メッシュ(A)32とメッシュ(B)33は同じ形状のものを使用している。
【0029】
また、空気極層23とメッシュ(B)33は集電材41によって接着されており、メッシュ(B)33は空気極層23に固定されている。
集電材41は、図2に示すように、空気極層23とメッシュ(B)33とを固定すると共に、空気極層23を覆うように形成されている。空気極層23を覆うように形成する場合においては、発電を行なう際に、空気極への酸化剤ガスの供給や、空気極で反応済みの排ガスの排出を妨げないように、集電材41の層が通気性を有する必要がある。
【0030】
なお、メッシュ(A)とメッシュ(B)は導電性を有しており、集電にも寄与するが、本明細書においては、これらのメッシュ(或いは、後述する薄板)は集電部材として、集電材とは区別する。本明細書においては、集電材は、部材ではなく、接着材やコーティング材のように、空気極層或いは燃料極層に付着して形成可能であって、メッシュ(薄板)を電極層(空気極層或いは燃料極層)に接着可能な材料である。
【0031】
なお、図1においては、メッシュ(A)32は、メッシュ(B)33によって隠れるため図示していない。
また、図2においては、メッシュ(A)32及びメッシュ(B)33を構成する繊維のうち、図1において縦線として描かれている繊維のみを図示し、図1において横線として描かれている繊維の図示は省略している。また、断面の構成をわかりやすく示すために、繊維の径は実際より大きく図示している。
【0032】
固体酸化物形燃料電池10をこのように構成すことによって、メッシュ(A)32とメッシュ(B)33とによって燃料電池単セル11を挟み、メッシュ(B)33を空気極層23に集電材41で固定することによって、燃料電池単セル11を確実に保持することがでる。また、メッシュ(B)33を空気極層23に集電材で固定することによって、集電抵抗の小さい固体酸化物形燃料電池10を得ることができる。
【0033】
なお、燃料極層22は発電時には還元されて十分な導電性を有するため、メッシュ(A)32との接点が少なくても、メッシュ(A)32のみで十分な集電が可能であるが、空気極層23は発電時にも還元されないので導電性に乏しいので、集電抵抗を小さくするために集電材41によってメッシュ(B)33との接点を増やす必要がある。
【0034】
また、このように構成であれば、複数個の燃料電池単セルを容易に保持することができ、複数個の燃料電池単セルからの集電も容易に行える。
【0035】
この固体酸化物形燃料電池は、燃料極と空気極を隔離する必要のない単室型固体酸化物形燃料電池や、直接火炎型燃料電池に用いることができる。また、直接火炎型燃料電池に用いる場合には、燃料電池単セル間に隙間を設けることで、燃料極にあてられる還元炎の流れがスムーズになり、燃料極に燃料種を供給しやすくなる効果も期待できる。
【0036】
次に、固体酸化物形燃料電池10の各構成要素の詳細について説明する。
【0037】
固体電解質層21を形成する材料は、酸素イオン導電性を有する公知のセラミックス材料を用いればよく、例えば、イットリア安定化ジルコニア(8YSZ)、イットリア部分安定化ジルコニア(3YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)、ガドリアドープセリア(GDC)、サマリアドープセリア(SDC)、ランタンガレート(LSGM)、コバルト添加ランタンガレート(LSGMC)などを挙げることができる。これらは、1種類で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0038】
燃料極層22を形成する材料は、燃料電池の燃料極の材料として公知のものを用いればよく、例えば、Ni、Fe、Co、Pt、Pd、Ru、Agなどの酸化物、又はこれらの酸化物の混合物などが挙げられる。また、これらを前記固体電解質材料と混合物したものを用いてもよい。
【0039】
空気極層23を形成する材料は、燃料電池の空気極の材料として公知のものを用いればよく、例えば、Co、Fe、Cr、Mnなどの複合酸化物、又はこれらの複合酸化物の混合物などが挙げられる。前記複合酸化物としては、SSC;(Sm,Sr)CoO、LSM;(La,Sr)MnO、LSC;(La,Sr)CoO、(La,Sr)(Fe,Co)O、LNF;(LaNi0.6Fe0.4)、(La,Ca)MnOなどがある。
【0040】
導電性及び通気性を有するメッシュ(A)32及びメッシュ(B)33は、
具体的には、金属繊維あるいはカーボン繊維からなるメッシュである。金属繊維の中でも、耐熱性がよく、酸化されにくい金属が好ましく、具体的には、JISに規定されるSUS316、SUS309S、SUS310Sなどのステンレス(特に好ましくは、オーステナイト系ステンレス或いはニッケル系ステンレス);ハステロイ、インコネル、インコロイ、カーペンター(いずれも登録商標)等のニッケル合金;ニッケル、銀、チタン等の金属、白金、パラジウム、イリジウム等の白金族元素の金属、或いはこれら金属を含有する合金などが挙げられる。
【0041】
メッシュ(A)32は、燃料電池が発電の際に、燃料ガス、及び燃料極で燃料ガスが反応して発生する排ガスを通すだけの通気性を持っているものであれば使用可能である。
また、メッシュ(B)33は、燃料電池が発電の際に、酸化剤ガス、及び空気極で酸化剤ガスが反応して発生する排ガスを通すだけの通気性を持っているものであれば使用可能である。
【0042】
なお、メッシュ(A)32やメッシュ(B)33に変わって、導電性及び通気性を有する薄板を用いることも可能である。薄板の材料は、前記したメッシュと同じ素材のものを持ちいればよい。薄板としては、パンチングメタルのように通気用の多数の穴を有する薄板や、通気可能な連続気孔を有する多孔質な薄板などを用いることができる。
【0043】
これらのメッシュの繊維径・網目の大きさや寸法、薄板の厚みや寸法は、特に限定されず、燃料電池単セルのサイズや重さに応じて、燃料電池単セルを保持することができる寸法および強度があるものを適宜選択して使用すればよい。例えば、繊維径20〜150μm、20〜200メッシュのメッシュなどを用いることができる。
【0044】
集電材41の材料は、導電性があり、固体酸化物形燃料電池の作動温度で溶融しない材料を用いることができる。なお、集電材によって高い集電効果を得るために、空気極層の材料より導電性に優れたものを用いる。空気極層の材料が酸化されている場合には、酸化された空気極層の材料より導電性があればよい。
また、酸化還元雰囲気でも導電性の劣化が小さいものを用いることが好ましい。具体的には、ニッケル、銀等の金属、白金、パラジウム、イリジウム等の白金族元素の金属、又は、銀−パラジウム合金、銀−イリジウム合金等の前記金属を含有する合金などが挙げられる。これらの中でも、酸化されても導電性を失わない銀、或いは銀を含む合金を用いることが特に好ましい。
【0045】
集電材は、メッシュ(B)を空気極層に固定するとともに、メッシュ(B)と空気極層とを電気的に接続する。
集電材でメッシュ(B)を空気極層に固定することによって、メッシュ(B)のみで集電する場合の空気極層と集電部材(メッシュ)との接触部分に比べて、空気極層と集電部材及び集電材との接触部分は広くなるので、空気極からメッシュ(B)を利用して集電する際の集電抵抗を小さくすることができる。即ち、メッシュ(B)が空気極層と接触できない部分、例えばメッシュの網目の部分などとメッシュ(B)が集電材で繋がれるため、発電時には、空気極層に集電材が接着した部分では、空気極層より導電性に優れる集電材を通じてメッシュ(B)に電子が移動するため、集電抵抗は格段に小さくなる。
【0046】
そのため、集電材と空気極との接点を増やすほど集電抵抗は小さくなる。従って、より集電抵抗を小さくくするには、集電材は、空気極層の表面(メッシュが空気極層と接する部分は除く)を覆うように形成することが好ましい。このとき、集電材が空気極層を完全に覆うことが最も好ましいが、空気極層の一部を覆うだけでも集電抵抗を小さくする効果はある。
【0047】
集電材で空気極層を覆う際には、集電材が通気性を有する層を形成していることが必要である。なお、ここでいう通気性とは、酸化剤ガスや排ガスが通過できる程度の通気性である。
集電材層に通気性を持たせるためには、集電材で連続気孔を有する多孔質層、あるいは集電材による三次元網目構造の層を形成すればよい。このとき、層の気孔率は5〜60容量%であることが好ましい。
【0048】
集電材による通気性を有する層の形成方法は、特に限定されないが、例えば、特開2010−123297号工法に記載された導電性積層体の形成方法が挙げられる。この方法以外にも、集電材の材料粉末と造孔剤を含有した組成物を焼結する方法などを利用することもできる。
【0049】
また、メッシュ(B)と空気極層を固定すると、燃料電池単セルがメッシュ(B)に固定されるため、燃料電池単セルを確実に保持することがでる。
【0050】
また、燃料電池単セルとメッシュ(B)とは熱膨張係数に差があり、メッシュ(B)の熱膨張係数が燃料電池単セルの熱膨張係数より大きいと、発電時に過熱されると燃料電池単セルとメッシュ(B)との接触部分が電気的に乖離してしまう恐れがあったが、空気極層とメッシュ(B)とを集電材によって接着することによって、この熱膨張差によって、燃料電池単セルとメッシュ(B)とが乖離してしまうことを防ぐことができる。集電材を多孔質に形成すると、集電材が燃料電池単セルとメッシュ(B)との緩衝材として作用して、空気極層とメッシュ(B)が電気的に特に乖離しにくくなる。
【0051】
図1〜2に示す固体酸化物形燃料電池10では、メッシュ(A)32及びメッシュ(B)33は、非導電性接着材34によって燃料電池単セル11に接着されている。これによって、メッシュ(A)32及びメッシュ(B)33で燃料電池単セル10をより強固に保持できる。
【0052】
非導電性接着材34は、集電材による電極層とメッシュとの接着を補助するものであるので、集電材より優れた耐熱性を有する材料を使用することが重要である。また、集電材より接着力及び強度が強いことが好ましい。具体的には、アルミナゾルおよびシリカゾルまたはこれらの混合物からなる接着剤、金属アルコキシド系の接着材などが挙げられる。これらは、1000℃を超える耐熱性があり、固体酸化物形燃料電池の作動温度で熱軟化しないだけの耐熱性を備えており、電極層とメッシュをより強固に接着できる。
【0053】
なお、第1の実施形態は以下のように構成を変えても効果は損なわれない。
【0054】
固体酸化物形燃料電池10では、メッシュ(B)33は集電材41から露出しているが、メッシュ(B)33は集電材41の中に埋没していてもよい。
【0055】
メッシュ(B)33は、空気極層23に接触させていたが、接触させなくても集電材41を解して空気極層23に電気的に接続されていればよい。
【0056】
非導電性接着材34は必ずしも必要なものではないので、非導電性接着材34を用いないものであってもよい。または、メッシュ(A)32又はメッシュ(B)33のいずれか一方のみに非導電性接着材34が用いられてもよい。
【0057】
(第2の実施形態)
第2の実施形態を図3〜5に示す。
なお、図3〜5に示す固体酸化物形燃料電池の図では、電流を取り出すために燃料極層、空気極層、メッシュ、集電材等に接続する配線やインターコネクタ等、本発明の要旨に関係のない部分は図示を省略している。
【0058】
図3には、4個の燃料電池単セル11を有する固体酸化物形燃料電池10が示されている。この図は、固体酸化物形燃料電池10の空気極層側の面を示している。ここで用いる燃料電池単セル11は第1の実施形態で説明したものと同様のものである。
【0059】
図4は、固体酸化物形燃料電池10の図3とは反対側の面(燃料極層側の面)を示したものである。
【0060】
4個の燃料電池単セル11は、図5に示すように、導電性及び通気性を有するメッシュ(A)32と、導電性及び通気性を有するメッシュ(B)33とによって挟まれている。このとき、燃料電池単セル11の燃料極層22はメッシュ(A)32によって覆われ、メッシュ(A)32は燃料極層22と接触している。また、空気極層23はメッシュ(B)33によって覆われ、メッシュ(A)33は空気極層23と接触している。
この固体酸化物形燃料電池10では、メッシュ(A)32とメッシュ(B)33は同じ形状のものを使用している。
【0061】
また、空気極層23とメッシュ(B)33は集電材41によって接着されており、メッシュ(B)33は空気極層23に固定されている。
空気極側の集電材41は、図5に示すように、空気極層23とメッシュ(B)33とを固定すると共に、空気極層23を覆うように形成されている。
【0062】
また、燃料極層22とメッシュ(A)32は集電材41によって接着されており、メッシュ(A)32は燃料極層22に固定されている。
燃料極層側の集電材41は、図4及び図5に示すように、各燃料電池単セル11の9箇所に形成されており、燃料極層22とメッシュ(A)32とを固定している。このように燃料極層22とメッシュ(A)32とを集電材41で固定することによって、燃料極での集電抵抗をより小さくできる。集電材41は燃料極層22を覆うように形成してもいいが、燃料極層では燃料極の材料が発電時に還元されて電気抵抗が小さくなるため、何箇所かをスポット的に集電材41で接着するだけでも、集電抵抗は十分小さくなる。
【0063】
また、燃料電池単セルとメッシュ(A)とは熱膨張係数に差があり、メッシュ(A)の熱膨張係数が燃料電池単セルの熱膨張係数より大きいと、発電時に過熱されると燃料電池単セルとメッシュ(A)との接触部分が電気的に乖離してしまう恐れがあったが、燃料極層とメッシュ(A)とを集電材によって接着することによって、この熱膨張差によって、燃料電池単セルとメッシュ(A)とが乖離してしまうことを防ぐことができる。集電材を多孔質に形成すると、集電材が燃料電池単セルとメッシュ(A)との緩衝材として作用して、燃料極層とメッシュ(A)が電気的に特に乖離しにくくなる。
【0064】
なお、第2の実施形態は以下のように構成を変えても効果は損なわれない。
【0065】
メッシュ(B)32は、燃料極層22に接触させていたが、接触させなくても集電材41を解して燃料極層22に電気的に接続されていればよい。
【0066】
(製造方法)
集電材によってメッシュと空気極層及び燃料極層とを固定する方法の一例を以下に示す。この例は、集電材と非導電性接着材を併用し、集電材と銀を用いたものである。
【0067】
燃料電池単セルとして、15mm×15mmの平板型の単セル1個を用意する。
加えて、導電性及び通気性を有するメッシュとして、ニッケル製のメッシュ2枚を用意する。メッシュは、例えば、繊維径40μm、網目の粗さは50メッシュ、サイズ20mm×20mmのものを用いる。
【0068】
また、銀粉末を含んだスラリーとして、以下の配合のスラリーを用意する。
スラリーの配合:銀粉末(平均粒径75μm)60質量部、MC(水溶性高分子)9質量部、熱可塑性アクリル樹脂粉末5質量部、無機バインダー(SiO−Al−CaO−NaO)2質量部、水20質量部。
【0069】
まず、燃料電池単セルを2枚のニッケル製メッシュで挟み、空気極層上及び燃料極層上のニッケル製メッシュの上から、非導電性接着材(アルミナ系耐熱性無機接着剤)をメッシュの網目から燃料電池単セルの四隅にスポット的に塗布する。その後、130℃で60分間、非導電性接着材を乾燥させて、2枚のニッケル製メッシュを空気極層と燃料極層とにそれぞれ接着する。
【0070】
その後、空気極層上のニッケル製メッシュの上から、前記スラリーを塗布する。この際、スラリーがメッシュの目を通って空気極層にまで達するように塗布し、空気極層の表面全体をメッシュとスラリーとによって覆う。また、スラリーの塗装厚みは空気極層の表面から約50μm程度とする。
塗布後、温度130℃の環境下で60分程度静置して、スラリーを乾燥させる。
【0071】
次に、燃料極層上のニッケル製メッシュの網目から、前記スラリーを燃料極層の10箇所程度にスポット的に塗布する。この際、スラリーがメッシュの目を通って空気極層にまで達するように塗布する。
塗布後、温度130℃の環境下で60分程度静置して、スラリーを乾燥させる。
【0072】
次に、この燃料電池単セルを、温度800℃で30分加熱(焼成)した後、温度20℃の環境下で1時間静置する。
これによって、乾燥させたスラリーは焼結されて多孔質な銀の集電材を形成する。この集電材は、導電性を有するのはもちろんのこと、多孔質であることによって十分な通気性を有している。また、集電材によってメッシュは燃料電池単セルの燃料極層と空気極層に固定さる。


【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】固体酸化物形燃料電池を示す平面図
【図2】図1に示す固体酸化物形燃料電池のX−X´断面の概略図
【図3】固体酸化物形燃料電池を示す平面図
【図4】図3に示す固体酸化物形燃料電池の裏面を示す平面図
【図5】図1に示す固体酸化物形燃料電池のY−Y´断面の概略図
【符号の説明】
【0074】
10 固体酸化物形燃料電池
11 燃料電池単セル
21 固体電解質
22 空気極
23 燃料極
32 メッシュ(A)
33 メッシュ(B)
34 非導電性接着材
41 集電材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質層の一方の面に燃料極層が形成されると共に、その面と反対側の面に空気極層が形成された燃料電池単セルを備えた固体酸化物形燃料電池であって、
前記燃料電池単セルが、前記燃料極層を覆う導電性及び通気性を有する薄板又はメッシュ(A)と、前記空気極層を覆う導電性及び通気性を有する薄板又はメッシュ(B)とによって挟まれており、
前記薄板又はメッシュ(B)は、空気極層に集電材によって固定されていることを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
前記空気極層が、集電材によって覆われ、該集電材が通気性を有する層を形成していることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
前記薄板又はメッシュ(A)が、燃料極層に集電材によって固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項4】
前記薄板又はメッシュ(A)と薄板又はメッシュ(B)との間に、複数個の燃料電池単セルが挟まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項5】
前記薄板又はメッシュ(A)と薄板又はメッシュ(B)のいずれか又は両方が、非導電性接着材によって燃料極層又は空気極層に接着されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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