説明

固体酸化物形燃料電池

【課題】燃料電池セル本体とコネクタ間の電気的導通の確実性を向上した固体酸化物形燃料電池を提供する。
【解決手段】 固体酸化物形燃料電池は,空気極層,固体電解質層,燃料極層を有する板状の燃料電池セル本体と,前記空気極層,前記燃料極層の一方と面的に接触して電気的に接続される第1の主面と,前記第1の主面の反対側に位置する第2の主面とを有する集電体と,前記集電体の第2の主面と面的に接触して電気的に接続される,板状のコネクタと,前記燃料電池本体と前記コネクタで挟まれた空間に位置し,前記燃料電池セル本体の前記空気極層または前記燃料極層に接続される一端と,前記コネクタに接続される他端とを有し,かつ前記燃料電池セル本体と前記コネクタ間の距離の変動に対して,前記集電体より追随変形容易な導電性部材と,を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,固体酸化物形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電解質に固体酸化物を用いた固体酸化物形燃料電池(以下,「SOFC」又は単に「燃料電池」とも記す場合がある)が知られている。SOFCは,例えば,板状の固体電解質体の各面に燃料極と空気極とを備えた燃料電池セルを多数積層したスタック(燃料電池スタック)を有する。燃料極および空気極それぞれに,燃料ガスおよび酸化剤ガス(例えば,空気中の酸素)を供給し,固体電解質体を介して化学反応させることで,電力を発生させる。
【0003】
燃料電池セルは,一対のインターコネクタ,燃料電池セル本体(空気極,固体電解質体,燃料極が積層されたもの)を有する。燃料電池セル本体とインターコネクタの電気的接続のために,集電体が配置される。
ここで,燃料電池セルが温度変化等により変形した際に,燃料電池セル本体とインターコネクタの電気的接続が解除される可能性がある。例えば,集電体が塑性変形することで(例えば,座屈),集電体−燃料電池セル本体間,または集電体−インターコネクタ間の接触が断たれ,燃料電池セル本体とインターコネクタの電気的接続が解除される可能性がある。
【0004】
次のような場合,集電体が変形しやすくなる。即ち,集電体に塑性変形し易い材料を用いる可能性が有る。固体電解質層,集電体,インターコネクタ,フレーム等の部材の全てに硬い材質を用い,SOFCのスタックを作製,組み付けると(ボルト締め付け),固体電解質層が割れる可能性がある。このため,アノード側の集電体に軟らかい材質,若しくはスポンジ状の材質が用いられることがある。この場合,高温により集電体が塑性変形(例えば,座屈)する可能性が高くなる。
【0005】
なお,集電体の緻密化やずれによる集電体とセル,セパレータ相互の電気的な接続不良を防止することができ,良好な導通性を発揮する集電構造を有する固体酸化物形燃料電池の技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−12453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は,燃料電池セル本体とコネクタ間の電気的導通の確実性を向上した固体酸化物形燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池は,空気極層,固体電解質層,燃料極層を有する板状の燃料電池セル本体と,前記空気極層,前記燃料極層の一方と面的に接触して電気的に接続される第1の主面と,前記第1の主面の反対側に位置する第2の主面とを有する集電体と,前記集電体の第2の主面と面的に接触して電気的に接続される,板状のコネクタと,前記燃料電池本体と前記コネクタで挟まれた空間に位置し,前記燃料電池セル本体の前記空気極層または前記燃料極層に接続される一端と,前記コネクタに接続される他端とを有し,かつ前記燃料電池セル本体と前記コネクタ間の距離の変動に対して,前記集電体より追随変形容易な導電性部材と,を具備する。
集電体が変形した場合でも,追随変形容易な導電性部材によって,空気極層,前記燃料極層の一方と,コネクタの間での電気的導通が確保される。
なお,「板状の」コネクタもしくは燃料電池本体は,その表面にガス流路を形成する凹凸状を有するものも含む。
【0009】
ここで,導電性部材を次の(1)〜(3)のように構成することで,追随変形が容易となる。
(1)前記導電性部材の少なくとも一部が,屈曲される。
(2)前記導電性部材が,互いに曲率半径の正負が異なる第1,第2の屈曲部を有する。
(3)前記導電性部材の長さLに対する厚さDの比(D/L)が1/2以下である。
【0010】
また,前記導電性部材が,Fe,Ni,およびPtの少なくとも何れかを含む金属から構成できる。
このような金属材料を用いて,導電性部材の導電性と耐久性の両立が可能である。
【0011】
更に,前記一端と前記燃料電池セル本体間,及び前記他端と前記コネクタ間,の少なくとも一方が,金属または金属ペーストで接続されてもよい。
このようにすることで,導電性部材と,燃料電池セル本体またはコネクタとの間の電気的接続の確実性を向上できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば,燃料電池セル本体とコネクタ間の電気的導通の確実性を向上した固体酸化物形燃料電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池10を表す斜視図である。
【図2】燃料電池セル100の断面図である。
【図3】燃料電池セル100の分解斜視図である。
【図4】燃料電池セル100の断面図である(集電体181変形時)。
【図5】本発明の比較例に係る燃料電池セル100xの断面図である。
【図6】燃料電池セル100xの断面図である(集電体181変形時)。
【図7】本発明の変形例1に係る燃料電池セル100aの断面図である。
【図8】本発明の変形例2に係る燃料電池セル100bの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下,図面を参照して,本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は,本発明の第1の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(燃料電池スタック)10を表す斜視図である。固体酸化物形燃料電池10は,燃料ガスと酸化剤ガスの供給を受けて発電する装置である。
【0015】
燃料ガスとしては,水素,還元剤となる炭化水素,水素と炭化水素との混合ガス,及びこれらのガスを所定温度の水中を通過させ加湿した燃料ガス,これらのガスに水蒸気を混合させた燃料ガス等が挙げられる。炭化水素は特に限定されず,例えば,天然ガス,ナフサ,石炭ガス化ガス等が挙げられる。この燃料ガスとしては水素が好ましい。これらの燃料ガスは1種のみを用いてもよいし,2種以上を併用することもできる。また,50体積%以下の窒素及びアルゴン等の不活性ガスを含有していてもよい。
【0016】
酸化剤ガスとしては,酸素と他の気体との混合ガス等が挙げられる。更に,この混合ガスには80体積%以下の窒素及びアルゴン等の不活性ガスが含有されていてもよい。これらの酸化剤ガスのうちでは安全であって,且つ安価であるため,空気(約80体積%の窒素が含まれている。)が好ましい。
【0017】
固体酸化物形燃料電池10は,略直方体形状をなし,上面11,底面12,貫通孔21〜28を有する。貫通孔21〜24は,上面11,底面12の辺近傍(後述の燃料極フレーム160の辺近傍)を貫通し,貫通孔25〜28は,上面11,底面12の頂点近傍(後述の燃料極フレーム160の頂点近傍)を貫通する。貫通孔21〜28にはそれぞれ,連結部材(締結具であるボルト41〜48,ナット51〜58)が取り付けられる。なお,ナット53,54,57は,判りやすさのために,図示を省略している。
【0018】
上面11側の貫通孔21〜24の開口に,部材60が配置される。部材60(部材62)の貫通孔,貫通孔21〜24にボルト41〜44が挿通され,ナット51〜54がねじ込まれる。
【0019】
部材60は,部材62,導入管61を有する。部材62は,略円筒形状をなし,略平面状の上面および底面,曲面状の側面に,導入管61は上面と底面間を貫通する貫通孔を有する。部材62の貫通孔と導入管61の貫通孔とが連通する。
【0020】
部材62の貫通孔と貫通孔21〜24の径は略同一である。これらの径より,ボルト41〜44の軸の径が小さいことで,部材62の貫通孔とボルト41〜44の軸間,および貫通孔21〜24とボルト41〜44の軸間をガス(酸化剤ガス(空気),発電後の残余の燃料ガス,発電後の残余の酸化剤ガス,燃料ガス)が通過する。即ち,酸化剤ガス(空気),燃料ガスが導入管61から流入し,貫通孔21,24をそれぞれ経由して,固体酸化物形燃料電池10内に流入する。発電後の残余の酸化剤ガス(空気),発電後の残余の燃料ガスが固体酸化物形燃料電池10から流入し,貫通孔23,22をそれぞれ経由して,導入管61から流出する。
【0021】
固体酸化物形燃料電池10は,発電単位である平板形の燃料電池セル100が複数個積層されて構成される。複数個の燃料電池セル100が電気的に直列に接続される。
【0022】
図2は,燃料電池セル100の断面図である。図3は,燃料電池セル100の分解斜視図である。
図2に示すように,前記燃料電池セル100は,いわゆる燃料極支持形タイプの燃料電池セルであり,上下一対の金属製のインターコネクタ110(1),110(2)の間に,燃料電池セル本体140が配置される。燃料電池セル本体140とインターコネクタ110(1),110(2)の間に,空気流路101,燃料ガス流路102が配置される。
【0023】
燃料電池セル本体140は,空気極(カソード)機能層141,反応防止層142,固体電解質層143,燃料極(アノード)機能層144,燃料極(アノード)基板層145が積層されて構成される。
【0024】
空気極機能層141は,空気極層として機能する。空気極機能層141の材料としては,例えば,各種の金属,金属の酸化物,金属の複酸化物等を用いることができる。金属としては,Pt,Au,Ag,Pd,Ir,Ru及びRh等の金属又は2種以上の金属を含有する合金が挙げられる。更に,金属の酸化物としては,La,Sr,Ce,Co,Mn及びFe等の酸化物(La,SrO,Ce,Co,MnO及びFeO等)が挙げられる。また,複酸化物としては,少なくともLa,Pr,Sm,Sr,Ba,Co,Fe及びMn等を含有する複酸化物(La1−xSrCoO系複酸化物,La1−xSrFeO系複酸化物,La1−xSrCo1−yFe系複酸化物,La1−xSrMnO系複酸化物,Pr1−xBaCoO系複酸化物及びSm1−xSrCoO系複酸化物等)が挙げられる。
【0025】
反応防止層142は,空気極機能層141,固体電解質層143間での反応を制限するためのものである。その材質は特に限定されず,例えば,通常,CeOのCeの一部が少なくとも1種の希土類元素により置換されたCeO系酸化物が用いられる。
【0026】
固体電解質層143の材料としては,例えばZrO系セラミック,LaGaO系セラミック,BaCeO系セラミック,SrCeO系セラミック,SrZrO系セラミック,及びCaZrO系セラミック等が挙げられる。
【0027】
燃料極機能層144,燃料極基板層145の全体が燃料極層として機能する。
燃料極機能層144,燃料極基板層145の構成材料は同一でもよく,同一でなくても良い。燃料極機能層144,燃料極基板層145の構成材料を同一とする場合,これらの熱膨張係数が同程度となり,熱処理時や高温での作動時にこれらの間での剥離を抑制する効果がより大きい。
【0028】
なお,燃料極機能層144,燃料極基板層145の構成材料として,例えば,金属,金属の酸化物,金属の複酸化物,金属と金属の酸化物の混合物などを用いることができる。
金属としては,Pt,Au,Ag,Pd,Ir,Ru,Ni及びRh等の金属又は2種以上の金属を含有する合金が挙げられる。
更に金属の酸化物としては,固体電解質層143と同等の材料で,例えばZrO系セラミック,LaGaO系セラミック,BaCeO系セラミック,SrCeO系セラミック,SrZrO系セラミック,及びCaZrO系セラミック等が挙げられる。
金属と金属の酸化物の混合物として,例えば,Ni金属とZrO系セラミックの混合物が挙げられる。なお,この場合,NiOとZrO系セラミックの混合物を初期材料(燃料電池セル100動作開始前の構成材料)として用いることができる。燃料極側では還元雰囲気に曝されるために,還元反応が進行した結果,NiOとZrO系セラミックの混合物が,Ni金属とZrO系セラミックの混合物に変化するからである。
【0029】
また,燃料極基板層145内での燃料の拡散を促進するため,燃料極基板層145の空孔率を燃料極機能層144より高く設定することが望ましい。
【0030】
図3に示すように,燃料電池セル100は,上下一対のインターコネクタ110(1),110(2)の間に,ガスシール部120,セパレータ130,ガスシール部150,燃料極フレーム160,ガスシール部170,集電体181を備え,それらが積層されて一体に構成されている。
【0031】
空気極機能層141とインターコネクタ110(1)との間に,その導通を確保するために集電体147が配置されている。燃料極基板層145とインターコネクタ110(2)との間に,その導通を確保するために集電体181が配置されている。集電体181の上面(第1の主面)が燃料極基板層145と電気的に接続される。集電体181の下面(第2の主面)がインターコネクタ110(2)(コネクタ)と電気的に接続される。
【0032】
集電体181は,多孔質の金属(例えば,Ni)から構成される。集電体181は,多孔質のため,潰れ易く,後述のように,高温等に起因する応力の印加により塑性変形する可能性がある。
一方,集電体147は,非多孔質(多孔質でない)の金属(例えばステンレス)から構成され,座屈等の塑性変形は事実上無視できる。なお,集電体147を多孔質とすることも可能である。
【0033】
以下,燃料電池セル100を構成する各部材について,更に詳細に説明する。なお,燃料電池セル100の平面形状は正方形であるので,燃料電池セル100を構成する各部材の平面形状も正方形に形成することが望ましい。各部材を正方形とする場合,ボルトで締め付けた際に燃料電池セル本体140面内にほぼ均一に荷重を印加することが可能となり,荷重の不均一による燃料電池セル本体140の割れなどを抑制する効果が大きい。
なお,各部材の平面形状は,「正方形」に限らず,他の平面形状とすることも可能である。例えば,長方形,円形などが挙げられる。他の平面形状とした場合では,燃料電池セル本体140面内の荷重をある程度均一にすることができる。
【0034】
インターコネクタ110(1),110(2)は,例えばフェライト系ステンレスからなる厚み0.3〜2.0mmの板材であり,その外縁部には,前記ボルト41〜48が貫挿される例えば直径10mmの丸孔である貫通孔21〜28が,等間隔に形成されている。インターコネクタ110(2)は,「前記集電体の第2の主面と電気的に接続される,コネクタ」に対応する。
【0035】
ガスシール部120は,空気極機能層141側に配置され,例えばマイカからなる厚み0.2〜1.0mmの枠状の板材であり,その四隅の角部には,前記ボルト45〜48が貫挿される各貫通孔25〜28が形成されている。
【0036】
このガスシール部120の四方の各辺の縁部には,前記ボルト41〜44が貫挿される各貫通孔21〜24と連通するように,その辺に沿って,ガスの流路となる略長方形状(長さ100mm×幅10mm)の貫通孔121〜124が形成されている。つまり,各貫通孔121〜124は,積層方向から見た場合,各貫通孔21〜24を含むように形成されている。
【0037】
ガスシール部120には,中央の正方形の開口部125と左右の貫通孔121,123と連通するように,ガスシール部120の右左の枠部分に,細径(長さ20mm×幅5mm)のガス流路となる長方形の切り欠き127がそれぞれ4本ずつ形成されている。
【0038】
なお,この切り欠き127は,貫通孔として形成しても良く,ガスシール部120の一方の表面を掘って形成された溝でも良い。また,切り欠き127は,レーザやプレス加工によって形成できる。
【0039】
この切り欠き127のガス流路の流れ方向(図3左右方向)における断面積(流れ方向と垂直の断面積)は,各貫通孔121,123の流れ方向(図3上下方向:積層方向)における断面積(流れ方向と垂直の断面積)より小さく設定されている。また,各切り欠き127は,左右の辺の中点を結んだ線を中心とした線対称となるように配置されているが,その本数については,例えば1つの辺について6本以上など,適宜設定すればよい。
【0040】
セパレータ130は,燃料電池セル本体140の外縁部の上面に接合して空気流路101と燃料ガス流路102との間を遮断するものであり,「固体電解質層に接続され,前記空気極層側,前記燃料極層側の空間を分画する,導電性セパレータ」として機能する。セパレータ130は,例えばフェライト系ステンレスからなる厚み0.02〜0.30mmの枠状の板状であり,その中央の正方形の開口部135には,開口部135を閉塞するように前記燃料電池セル本体140が接合される。
【0041】
このセパレータ130においても,前記ガスシール部120と同様に,その四隅の角部に同形状の各貫通孔25〜28が形成されるとともに,四方の各辺に沿って(第1ガス流路となる)同形状の各貫通孔131〜134が形成されている。
【0042】
ガスシール部150は,燃料極基板層145側に配置され,例えばマイカからなる厚み0.2〜1.0mmの枠状の板材であり,その四隅の角部には,前記ボルト45〜48が貫挿される各貫通孔25〜28が形成されている。
【0043】
このガスシール部150の四方の各辺の縁部には,前記ボルト41〜44が貫挿される各貫通孔21〜24と連通するように,その辺に沿って,ガスの流路となる略長方形状(長さ100mm×幅10mm)の貫通孔151〜154が形成されている。つまり,各貫通孔151〜154は,積層方向から見た場合,各貫通孔21〜24を含むように形成されている。
ガスシール部150は,中央に正方形の開口部155を有する。
【0044】
燃料極フレーム160は,燃料ガス流路102側に配置され,中央に開口部165を備えた例えばフェライト系ステンレスからなる厚み0.5〜2.0mmの枠状の板材である。前記燃料極フレーム160は,前記セパレータ130と同様に,その四隅の角部に同形状の各貫通孔25〜28が形成されるとともに,四方の各辺に沿って,ガス流路となる各貫通孔161〜164が形成されている。
【0045】
ガスシール部170は,燃料極フレーム160より図3下方の燃料極機能層144側に配置され,ガスシール部120と同様に,中央に開口部175を備えた例えばマイカからなる厚み0.2〜1.0mmの枠状の板材である。ガスシール部170は,その四隅の角部には同形状の各貫通孔25〜28が形成されるとともに,四方の各辺に沿って,ガス流路となる同形状の各貫通孔171〜174が形成されている。
【0046】
このガスシール部170にも,対向する各枠部分に,開口部175と貫通孔1172,174と連通するように,細径(長さ20mm×幅5mm)のガス流路となる切り欠き176が,それぞれ4本ずつ設けられている。
【0047】
本実施形態に係る燃料電池セル100は,導電性部材182を有する。
導電性部材182は,燃料電池セル本体140,インターコネクタ110(2)間に配置され,「燃料電池セル本体に接続される一端と,前記コネクタに接続される他端とを有し,かつ前記燃料電池セル本体と前記コネクタ間の距離の変動に対して,前記集電体より追随変形容易な導電性部材」として機能する。
【0048】
導電性部材182は,例えば,Fe,Ni,およびPtの少なくとも何れかを含む金属からなる金属板あるいは金属箔から構成できる。このような材料を用いることで,導電性部材182の導電性と耐久性の両立が可能である。また,導電性部材182の変形容易性を確保するために,導電性部材182の長さLに対する厚さDの比(D/L)が1/2以下であることが好ましい。
【0049】
導電性部材182は,曲率半径の正負が異なる,2つの屈曲部(屈曲された部位,山および谷)を有する。このように,導電性部材182が屈曲部を有することで,屈曲部が変形し,燃料電池セル本体140,インターコネクタ110(2)間の間隔の変化に追随する変形が容易となる。
【0050】
導電性部材182の一端および他端がそれぞれ,燃料電池セル本体140(燃料極基板層145)の下面およびインターコネクタ110(2)の上面に接続され,これらが電気的に接続される。この電気的接続に,金属または金属ペーストを用いることができる。具体的には,ろう付け(導電性部材182の構成材料より低融点の金属を接着剤として用いる固着)を利用できる。また,金属を含むペーストを導電性部材182の端部と,燃料電池セル本体140またはインターコネクタ110(2)の間に塗布し,焼成することにより電気的接続しても良い。
【0051】
図3に示すように,導電性部材182は,開口部175(開口部165)の対向する2辺それぞれに,2つずつ配置されている。即ち,各辺それぞれで,導電性部材182が分割して配置されている。ここでは,分割の個数を2としているが,3以上とすることも可能である。導電性部材182を分割することで,その柔軟性(追随変形性)を向上できる。
【0052】
導電性部材182を分割せず,導電性部材182の幅が,開口部175の辺の全長に近くすることも可能である。この場合,導電性部材182の幅がその長さよりも大きくなる(図3の例では,導電性部材182の幅がその長さよりも小さい)。この場合,導電性部材182の取り付けが容易となる。
【0053】
以上の結果,図2に示すように,インターコネクタ110(1),110(2)間の電気的接続は,次の2つの経路によって確保される。
(1)燃料極基板層145,集電体181を経由する経路(電流I1)
(2)燃料極基板層145,導電性部材182を経由する経路(電流I2)
【0054】
このため,図4に示すように,集電体181による燃料極基板層145,インターコネクタ110(2)間の電気的接続が遮断された場合でも,経路(2)での導通(電流I2)が確保される(インターコネクタ110(1),110(2)間の導通確保)。
【0055】
既述のように,集電体181は,比較的潰れやすい材料から構成される。これは,インターコネクタ110(1),110(2),燃料電池セル本体140,集電体147,181を積層し,締結具(ボルト41〜48,ナット51〜58)で締め付けたときに,燃料電池セル本体140,特に,固体電解質層143が割れることを防止するためである。集電体181が変形することで,燃料電池セル本体140に印加される応力が緩和される。
【0056】
しかし,集電体181を比較的潰れやすい材料から構成したことで,例えば,固体酸化物形燃料電池10の運転時の高温による熱応力により,集電体181が塑性変形する(例えば,座屈)可能性が高くなっている。図4では,集電体181の変形により,集電体181−燃料電池セル本体140間,または集電体181−インターコネクタ110(2)間での接触が断たれている。この結果,燃料電池セル本体140−集電体181−インターコネクタ110(2)間での直接的な電気的導通が遮断されている。
【0057】
本実施形態では,集電体181が座屈等変形した場合でも,導電性部材182によって,燃料電池セル本体140−インターコネクタ110(2)間での電気的導通が確保される。
【0058】
(比較例)
図5,図6は,本発明の比較例に係る燃料電池セル100xの断面図であり,それぞれ図2,図4に対応する。
燃料電池セル100xは,導電性部材182を有せず,インターコネクタ110(1),110(2)間の電気的接続は,燃料極基板層145および集電体181を経由する経路(電流I1)のみに限定される。
このため,図6に示すように,集電体181による燃料極基板層145,インターコネクタ110(2)間の電気的接続が遮断された場合,インターコネクタ110(1),110(2)間の導通が確保されない。
【0059】
(変形例1)
図7は,本発明の第1の実施形態の変形例1に係る燃料電池セル100aの断面図であり,図2に対応する。
燃料電池セル100aは,導電性部材182aの形状が燃料電池セル100の導電性部材182と異なる。ここでは,導電性部材182aの屈曲部が1つのみとしている。1つの屈曲部によっても,導電性部材182aの追随変形が可能である。
【0060】
(変形例2)
図8は,本発明の第1の実施形態の変形例2に係る燃料電池セル100bの断面図であり,図2に対応する。
燃料電池セル100bは,導電性部材182bの形状が燃料電池セル100の導電性部材182と異なる。ここでは,導電性部材182bが3つの屈曲部を有し,各屈曲部が折り曲げて形成されている。即ち,導電性部材182の屈曲部が曲線的形状であるのに対し,導電性部材182bは直線的形状と言える。このように,折り曲げて形成された屈曲部によっても,導電性部材182bの追随変形が可能である。
【0061】
(その他の実施形態)
本発明の実施形態は上記の実施形態に限られず拡張,変更可能であり,拡張,変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0062】
(1)上記実施形態では,燃料極側に導電性部材182を配置し,集電体181が変形した場合でも,燃料電池セル本体140の燃料極側とインターコネクタ110(2)間の電気的導通を確保している。
これに対して,空気極側に導電性部材182を配置しても良い。この場合,集電体147が変形した場合でも,燃料電池セル本体140の空気極側とインターコネクタ110(1)間の電気的導通の確保が可能となる。
【0063】
(2)上記実施形態では,燃料電池セル本体140とインターコネクタ110(2)間の電気的導通を確保している。
インターコネクタ110は,燃料電池セル100間での電気的導通を確保するために,燃料電池セル100間に配置される。このインターコネクタ110(2)を,固体酸化物形燃料電池10の上端または下端の端末コネクタとしてもよい。即ち,インターコネクタ110(2)に替えて,コネクタ一般への適用が可能である。
【0064】
(3)導電性部材182として種々の形状が可能である。屈曲部の個数,各屈曲部の形状(直線的形状(折り曲げ),曲線的形状)に関し,種々の組み合わせが可能である。例えば,直線的形状の屈曲部と曲線的形状の屈曲部を組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0065】
10 固体酸化物形燃料電池
11 上面
12 底面
21-28 貫通孔
41-48 ボルト
51-58 ナット
60 部材
61 導入管
62 部材
100 燃料電池セル
101 空気流路
102 燃料ガス流路
110 インターコネクタ
120 ガスシール部
121-124 貫通孔
125 開口部
127 切り欠き
130 セパレータ
131-134 貫通孔
135 開口部
140 燃料電池セル本体
141 空気極機能層
142 反応防止層
143 固体電解質層
144 燃料極機能層
145 燃料極基板層
147 集電体
150 ガスシール部
151-154 貫通孔
155 開口部
160 燃料極フレーム
161-164 貫通孔
165 開口部
170 ガスシール部
171-174 貫通孔
175 開口部
176 切り欠き
181 集電体
182 導電性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気極層,固体電解質層,燃料極層を有する板状の燃料電池セル本体と,
前記空気極層,前記燃料極層の一方と面的に接触して電気的に接続される第1の主面と,前記第1の主面の反対側に位置する第2の主面とを有する集電体と,
前記集電体の第2の主面と面的に接触して電気的に接続される,板状のコネクタと,
前記燃料電池本体と前記コネクタで挟まれた空間に位置し,前記燃料電池セル本体の前記空気極層または前記燃料極層に接続される一端と,前記コネクタに接続される他端とを有し,かつ前記燃料電池セル本体と前記コネクタ間の距離の変動に対して,前記集電体より追随変形容易な導電性部材と,
を具備することを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
前記導電性部材の少なくとも一部が,屈曲されている
ことを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
前記導電性部材が,互いに曲率半径の正負が異なる第1,第2の屈曲部を有する,
ことを特徴とする請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項4】
前記導電性部材の長さLに対する厚さDの比(D/L)が1/2以下である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項5】
前記導電性部材が,Fe,Ni,およびPtの少なくとも何れかを含む金属から構成される
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項6】
前記一端と前記燃料電池セル本体間,及び前記他端と前記コネクタ間,の少なくとも一方が,金属または金属ペーストで接続される
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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