説明

固体酸化物形燃料電池

【課題】セル本体と隔離セパレータと接合する場合、発電面積を減少させることなく良好な電気的信頼性を確保し得る固体酸化物形燃料電池を提供する。
【解決手段】固体酸化物形燃料電池は、燃料極層と固体電解質層12と空気極層13とが積層されたセル本体10と、燃料ガス流路と空気流路とを隔離する枠体状の隔離セパレータ25とを含む単位セルを備えている。セル本体と隔離セパレータが接合され、セル本体の所定の層(空気極層)の表面が隔離セパレータの開口部33から露出する。隔離セパレータの開口部は方形の四隅が面取りされた第1の平面形状を有し、所定の層は方形の四隅が面取りされた第2の平面形状を有し、第1の平面形状が所定の間隔を介して第2の平面形状を取り囲む位置関係にある。よって、発電面積を減少させることなく、隔離セパレータと所定の層との電気的ショートを防止して電気的信頼性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも燃料極層と空気極層と固体電解質層とが積層されたセル本体と、燃料ガス流路と空気流路を隔離する隔離セパレータとが一体化された構造を有する平板型の固体酸化物形燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、平板型の固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)が知られている。一般に平板型のSOFCは、固体電解質層の一方の側に燃料ガスと接する燃料極層を配置し、他方の側に酸化剤ガス(空気)と接する空気極層を配置してセル本体を形成し、このセル本体を隔離セパレータに接合することで、燃料ガスの流路と酸化剤ガスの流路とを隔離する構造を有している。隔離セパレータは、例えば枠体状の金属板からなり、その開口部を取り囲んで接合する領域にロウ材等(接合部)を介してセル本体と一体的に接合されている。一般に、セル本体と隔離セパレータは方形の平面形状で形成されるが、隔離セパレータは軽量化等のため極めて薄く形成され、セル本体との接合部で破損しやすいことから、セル本体の各角部を面取りする構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。隔離セパレータによる良好なガスシール性を確保するには、接合部(以下、接合領域とも称する)を介してセル本体と隔離セパレータとを十分に密着した状態に保つことが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−4678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、セル本体と隔離セパレータとの接合領域は、セル本体の外周側と隔離セパレータの内周側(開口部)とに囲まれた方形のリング状となる。一般に、このような形状を有する接合領域においては、四辺の領域に比べて、四隅の角部に応力が集中しやすい傾向がある。接合領域の各角部に応力が集中すると、その部分でセル本体と隔離セパレータの密着性が保たれなくなり、ガスリークを発生させる要因となる。接合領域の四隅の角部への応力集中を緩和する構造としては、隔離セパレータの開口部の形状を、方形の各角部を面取りした形状にすることが有効である。しかし、このような構造を有する隔離セパレータにセル本体を接合した状態で、例えば、セル本体の上層側の方形の空気極層を開口部に露出させる構造とする場合、隔離セパレータの角部の面取り部分と空気極層の角部の間隔が狭くなる。その結果、空気極層が隔離セパレータ又は接合部と接触したり、あるいは接合部のロウ材等のマイグレーションが発生するなどにより電気的ショートが生じる恐れがある。一方、空気極層のサイズを中央寄りに縮小すれば、隔離セパレータの角部の面取り部分と空気極層の角部の間隔を十分に確保できるが、この場合は、単位セルの発電面積が小さくなることが避けられない。このように、隔離セパレータの内周側の四隅を面取りする構造を採用する場合、単位セルの良好な電気的信頼性と十分な発電面積の確保とを両立させることは困難であった。
【0005】
本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、単位セルの発電面積の減少を防止しつつ、セル本体と隔離セパレータとの十分な間隔を保って良好な電気的信頼性を確保し得る固体酸化物形燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の固体酸化物形燃料電池は、少なくとも、燃料ガスに接する燃料極層と、酸化剤ガスに接する空気極層と、一方の面側に前記燃料極が配置され他方の面側に前記空気極が配置された固体電解質層とが積層されたセル本体と、前記セル本体の一方の面側に配置されて、厚み方向に貫通する開口部を備え、少なくとも前記セル本体の所定の層の表面を前記開口部より露出させるとともに、前記セル本体と接合する接合部を有する枠体状の隔離セパレータとを備えて構成され、前記隔離セパレータの前記開口部は、方形の四隅において面取りされた第1の平面形状を有し、前記所定の層は、方形の四隅において面取りされた第2の平面形状を有し、前記第1の平面形状が所定の間隔を介して前記第2の平面形状を取り囲む位置関係にあることを特徴としている。
【0007】
本発明の固体酸化物形燃料電池によれば、燃料極層と空気極層と固体電解質層とが積層されたセル本体を隔離セパレータに接合し、開口部にセル本体の所定の層の表面を露出させる構造において、開口部の第1の平面形状が所定の間隔を介して所定の層の第2の平面形状を取り囲み、第1及び第2の平面形状がそれぞれ方形の四隅において面取りされている。よって、隔離セパレータと所定の層との距離を、所定の層の外周を面取りしない構造に比べ、第2の平面形状の角部の面取り量に応じて長くすることができる。そのため、隔離セパレータと所定の層が近接配置されたとき、接触や接合部のマイグレーション等に起因する電気的ショートを防止することができる。また、所定の層の外周を面取りしない構造では、隔離セパレータと所定の層との距離を確保するために所定の層のサイズを中央寄りに縮小する際に発電面積が減少するのに対し、本発明の構造によれば十分な発電面積を確保することができる。
【0008】
前記セル本体は多様な構造で形成することができる。例えば、前記開口部に露出する所定の層を前記空気極層としてもよい。また例えば、前記セル本体の支持基体となる層は前記燃料極層としてもよい。すなわち、下層側から順に前記燃料極層、前記固体電解質層、前記空気極層を積層し、この順に平面サイズを縮小していくことで、前記空気極層の表面が前記開口部から露出する構造を実現することができる。なお、前記セル本体は、前記燃料極層、前記空気極層、前記固体電解質層に加えて他の機能層を含んでいてもよく、各層のうち支持基体とする層も特に制約されない。
【0009】
前記第1及び第2の平面形状は、方形の各角部が除去されている限り多様な形状を適用することができるが、例えば、前記第1及び第2の平面形状の各角部を円弧状に面取りしたR面取り形状とすることができる。この場合、外側に位置する「隔離セパレータ」の内周形状:第1の平面形状のR面取りの曲率半径R1に比べ、内側に位置する「所定層」の外周形状:第2の平面形状のR面取りの曲率半径R2が小さくならないように(即ち、R1≦R2+W)設定することが望ましい。この場合の曲率半径をそれぞれ適切に設定することで、前記第1及び第2の平面形状の間の領域を一定幅の帯状の領域とすることができ、部分的に幅が狭くなる箇所(特に、四隅などの電気的ショートしやすい箇所)における電気的信頼性(電気的ショートし難い)の低下を防止することができる。なお、R1=R2+Wに設定されたときに、第1の平面形状と第2の平面形状が四隅も含み一定の帯状幅として設けることができ、四隅において電気的ショートし難い構造に加え、所定層(例えば空気極層)の面積をより広く設けることもできる。また例えば、前記第1及び第2の平面形状の各角部を直線状に面取りしたC面取り形状としてもよい。
【0010】
前記第1及び第2の平面形状に加えて、前記セル本体の外周側の端部の前記第3の平面形状を、方形の四隅において面取りしてもよい。これにより、前記第2及び第3の平面形状に囲まれた前記接合部において角部の鋭角や直角の部分に集中しやすい応力を緩和することができ、セル本体と隔離セパレータとの十分な密着性を保って単位セルのガスシール性を高めることができる。
【0011】
前記接合領域における前記隔離セパレータと前記セル本体との接合は、特に制約されないが、例えば、ロウ材を用いることができる。例えば、前記隔離セパレータと前記セル本体のそれぞれの前記接合領域に相当する部分領域にロウ材を塗布した状態で、両者を位置合わせして加熱することにより、前記接合領域を介して前記セル本体を前記隔離セパレータに一体化することができる。また、前記隔離セパレータは、例えば、可撓性を有する金属材料により形成することができる。なお、本発明は、単位セルである固体酸化物形燃料電池セルに適用する場合のほか、複数の単位セルを積層して構成された固体酸化物形燃料電池スタックに対しても適用可能である。
【発明の効果】
【0012】
以上述べたように、本発明によれば、単位セルのセル本体と隔離セパレータとを接合する構造において、隔離セパレータの開口部と、開口部に露出するセル本体の所定の層とを、それぞれ方形の四隅において面取りした平面形状としたので、隔離セパレータと所定の層を近距離で配置する場合に問題となる電気的ショートを有効に防止し、電気的信頼性を向上させるとともに、所定の層をサイズの縮小を不要として、単位セルの十分な発電面積を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の固体酸化物形燃料電池の側面図である。
【図2】図1の固体酸化物形燃料電池の上面図である。
【図3】1個の単位セルに関し、各構成要素を分解した状態の模式的な断面構造図である。
【図4】単位セル内のインターコネクタの平面構造図である。
【図5】単位セル内のガスシール部の平面構造図である。
【図6】単位セル内の燃料極フレームの平面構造図である。
【図7】単位セル内の隔離セパレータの平面構造図である。
【図8】単位セル内のセル本体の平面構造図である。
【図9】図7の隔離セパレータに図8のセル本体を接合した状態の平面構造図である。
【図10】第1実施形態の単位セルにおいて図7の隔離セパレータの構造と図8のセル本体の構造を採用する場合の効果を説明する図である。
【図11】第1実施形態の単位セルの製造工程のうち、主に隔離セパレータとセル本体との接合工程について説明する図である。
【図12】第2実施形態の単位セル内のセル本体の平面構造図である。
【図13】図7の隔離セパレータに図12のセル本体を接合した状態の平面構造図である。
【図14】第2実施形態の単位セルにおいて図7の隔離セパレータの構造と図12のセル本体の構造を採用する場合の効果を説明する図である。
【図15】第3実施形態の単位セルにおいて、第1実施形態又は第2実施形態の隔離セパレータ及びセル本体の面取り形状を変形した第1の例である。
【図16】第3実施形態の単位セルにおいて、第1実施形態又は第2実施形態の隔離セパレータ及びセル本体の面取り形状を変形した第2の例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、以下に述べる実施形態は本発明の技術思想を適用した形態の一例であって、本発明が本実施形態の内容により限定されることはない。
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明を適用した固体酸化物形燃料電池の第1実施形態について具体的に説明する。図1は、第1実施形態の固体酸化物形燃料電池1の側面図を示し、図2は、図1の固体酸化物形燃料電池1の上面図を示している。なお、図1は、図2の矢印A方向から見た側面図に対応する。
【0016】
図1及び図2に示すように、第1実施形態の固体酸化物形燃料電池1は、基本的な構成単位である燃料電池セル(以下、単位セルと呼ぶ)3を複数個積層した燃料電池スタック2を備えている。また、燃料電池スタック2は、複数のボルトB1〜B8及び複数のナットNによって一体的に固定されている。各ボルトB1〜B8のうち、図2の方形平面内の四隅に位置する4個のボルトB1、B3、B5、B7は、燃料電池スタック2を固定する連結部材としてのみ用いられる。一方、各ボルトB1〜B8のうち、図2の方形平面内の四辺に位置する4個のボルトB2、B4、B6、B8は、上記連結部材に加えて、積層方向に沿う貫通孔に連通し、それぞれ燃料ガスの流路(燃料ガス流路)又は酸化剤ガスの流路(空気流路)の一部として機能する。具体的には、ボルトB2は燃料ガス流路の入口側の燃料ガス導入管Finに連通し、ボルトB2の対向位置のボルトB6は燃料ガス流路の出口側の燃料ガス排出管Foutに連通する。また、ボルトB4は空気流路の入口側の空気導入管Ainに連通し、ボルトB4の対向位置のボルトB8は空気流路の出口側の空気排出管Aoutに連通する。
【0017】
次に、図1の固体酸化物形燃料電池1に含まれる単位セル3の基本構造について説明する。図3は、1個の単位セル3に関し、各構成要素を分解した状態の模式的な断面構造を示している。図3に示す単位セル3には、発電機能を担うセル本体10を備えている。セル本体10は、下層側から順に、燃料極層11と、固体電解質層12と、空気極層13とが積層形成されてなる。また、単位セル3は、上下1対のインターコネクタ20、21と、下側のインターコネクタ20と燃料極層11との間に配置された燃料極側集電体22と、上側のインターコネクタ21と空気極層13との間に配置された空気極側集電体23と、燃料極層11の側面を取り囲む燃料極フレーム24と、セル本体10と一体的に接合され、燃料極層11の側の燃料ガス流路Fpと空気極層13の側の空気流路Apとを隔離する隔離セパレータ25と、燃料極フレーム24と下側のインターコネクタ20との間に配置されたガスシール部26と、隔離セパレータ25と上側のインターコネクタ21との間に配置されたガスシール部27と、を備えている。
【0018】
燃料極層11は、水素源となる燃料ガスに接触し、単位セル3のアノードとして機能する。燃料極層11は、セル本体10を支持する支持基体層となるので、機械的強度を確保できる程度の十分な厚みで形成することが望ましい。例えば、燃料極層11の材料としては、Ni等の金属粒子とセラミック粒子からなるサーメットを用いることができる。固体電解質層12は、イオン導電性を有する各種の固体電解質からなる。例えば、固体電解質層12の材料としては、YSZ、ScSZ、SDC、GDC、ペロブスカイト系酸化物等を用いることができる。空気極層13は、酸素源となる空気ガスに接触し、単位セル3のカソードとして機能する。例えば、空気極層13の材料としては、ペロブスカイト系酸化物、各種貴金属及び貴金属とセラミックとのサーメットを用いることができる。なお、燃料極層11、固体電解質層12、空気極層13は、いずれも方形(例えば、正方形)の平面形状を有する。
【0019】
以下、単位セル3内の主な構成部材の構造について、図4〜図9を参照して説明する。なお、図4〜図9は、いずれも図2と平面内で方向が一致する。まず、下側のインターコネクタ20は下層に隣接する単位セル3との電気的接続を担い、上側のインターコネクタ21は上層に隣接する単位セル3との電気的接続を担う。図4に示すように、インターコネクタ20、21は、例えばフェライト系ステンレスからなる薄型の金属板であり、その外縁部には上記ボルトB1〜B8が貫通する8つの丸孔が形成されている。また、下側のインターコネクタ20に接合された燃料極側集電体22は、例えば、通気性を有するNiフェルトからなり、上側のインターコネクタ21に接合された空気極側集電体23は、例えば、金属及び導電性セラミックからなる。
【0020】
下側のガスシール部26は、例えば、マイカ等の絶縁材料からなり、単位セル3における燃料ガス流路Fpをシールする役割がある。図5に示すように、ガスシール部26の中央には開口部30が形成されるとともに、外縁部には上記ボルトB1〜B8が貫通する8つの丸孔が形成されている。このうち、開口部30には、方形の対向する2辺において、外縁部に延伸される各4本の切り欠きが形成されている。後述するように、開口部30に形成される切り欠きは、燃料ガス流路Fpの一部となる。なお、上側のガスシール部27は、図5のガスシール部26を、平面内で90度回転させた平面構造を有するので、その説明は省略する。この場合、上側のガスシール部27の開口部30に形成される切り欠きは、空気流路Apの一部となる。
【0021】
燃料極フレーム24は、例えばフェライト系ステンレス等の金属材料からなり、セル本体10及び隔離セパレータ25を単位セル3に固定する役割がある。図6に示すように、燃料極フレーム24の中央には開口部31が形成され、四方の各辺に沿って4つの開口部32が形成され、4つの角部には上記ボルトB1、B3、B5、B7に対応する4つの丸孔が形成されている。中央の開口部31は、ガスシール部26の開口部30(図5)の方形部分に対向しているが切り欠きは形成されていない。各辺の4つの開口部32は、インターコネクタ20及びガスシール部26の各丸孔に重なる部分から辺方向の両側に延びる溝状に形成されている。よって、入口側のボルトB2から燃料極層11の表面を経由して出口側のボルトB6に至る燃料ガス流路Fpは、インターコネクタ20及びガスシール部26の各2辺の丸孔と、燃料極フレーム24の2辺の開口部32と、ガスシール部26の開口部30の切り欠きのそれぞれを含んで構成される。
【0022】
次に第1実施形態の単位セル3の特徴的な構造として、隔離セパレータ25及びセル本体10の構造を説明する。図7は、隔離セパレータ25の平面構造を示している。隔離セパレータ25は、可撓性を有する金属材料として、例えばフェライト系ステンレス等の金属材料を用いて、厚み0.02〜0.3mm程度の枠体状の薄板に形成されている。図7に示すように、隔離セパレータ25の中央には開口部33が形成され、四方の各辺に沿って4つの開口部34が形成され、4つの角部には上記ボルトB1、B3、B5、B7に対応する4つの丸孔が形成されている。このうち、4つの開口部34及び4つの丸孔については、燃料極フレーム24と同位置及び同形状に形成されている。一方、中央の開口部33は、燃料極フレーム24の開口部31と対向する方形のうち四隅の角部を曲率半径R1の円弧状に面取りした形状(R面取り形状)を有する。
【0023】
また、図8は、セル本体10の平面構造を示している。図8に示すように、セル本体10は、方形の外周形状を有する。一方、セル本体10の上層の空気極層13の外周形状は、セル本体10の外周形状よりも小さいサイズであって、方形の四隅の角部を曲率半径R2の円弧状に面取りした形状(R面取り形状)を有する。空気極層13のサイズを小さくしたのは、図3の断面構造を用いて説明したように、隔離セパレータ25の開口部33に空気極層13が露出可能な構造としたものである。
【0024】
なお、入口側のボルトB4から空気極層13の表面を経由して出口側のボルトB8に至る空気流路Apは、インターコネクタ21及びガスシール部27の各2辺の丸孔と、隔離セパレータ25の2辺の開口部34と、ガスシール部27の開口部30の切り欠き(図5のガスシール部26の開口部30の切り欠きを90度回転させた位置に形成)のそれぞれを含んで構成される。
【0025】
ここで、図9は、図7の隔離セパレータ25に図8のセル本体10を接合した状態の平面構造を示している。図9に示すように、隔離セパレータ25の内周側の裏面とセル本体10の外周側の表面が接合領域40を介して接合されている。この接合領域40は、セル本体10の外周に一致する外周形状と、隔離セパレータ25の内周(開口部33)に一致する内周形状とに囲まれた所定幅の帯状の領域である。また、空気極層13が開口部33に露出した状態で配置されている。接合領域40の外周形状は図8のセル本体10の外周形状と同様の方形であり、接合領域40の内周形状の各角部は図7と同様の曲率半径R1で円弧状に面取りされている。なお、接合領域40における隔離セパレータ25とセル本体10との接合は、特に制約されないが、例えばロウ材を用いて接合される。
【0026】
図10を参照して、第1実施形態の単位セル3において、図7の隔離セパレータ25の構造と図8のセル本体10の構造に基づく効果を説明する。図10(A)は、図9と同様の平面構造のうちの中央付近を模式的に示した図であり、図10(B)は、第1実施形態との対比のため、図10(A)と同形状の隔離セパレータ25と、外周側に面取り部分がない空気極層13aを用いる場合の平面構造を比較例として模式的に示した図である。ここで、図10(A)及び図10(B)においては、隔離セパレータ25の内周側(開口部33)と空気極層13、13aの外周側とに挟まれたギャップ領域Gを示している。なお、図9の接合領域40は図示していない。ギャップ領域Gは、固体電解質層12の上部表面が帯状に露出した領域である。図10(A)及び図10(B)では、それぞれのギャップ領域Gは、面取り部分を除いた外周形状と内周形状がともに共通のサイズであるとする。よって、ギャップ領域Gの四辺における幅W1は、図10(A)と図10(B)とで共通であることがわかる。
【0027】
一方、図10(A)のギャップ領域Gの各角部(四隅)は、外側の円弧と内側の円弧に挟まれた幅W2であり、図10(B)のギャップ領域Gの各角部は、外側の円弧と内側の直角形状とに挟まれた幅W3であり、W2>W3の関係を満たすことがわかる。また、図10(B)の空気極層13aの内側には、図10(A)と同様の幅W2となる位置に角部が配置可能なように、外周形状を中央寄りに縮小した空気極層13bを破線にて重ねて示している。
【0028】
第1実施形態の図10(A)のギャップ領域Gと、比較例の図10(B)で空気極層13aを配置する場合のギャップ領域Gとを比べると、図10(B)では角部付近で内周側が面取りされない分だけ幅W3が小さくなるので、例えば、空気極層13と隔離セパレータ25又は接合領域40との接触や、接合領域40のロウ材のマイグレーション等に起因する電気的ショートが生じ、これにより電気的信頼性の低下を招く。また、第1実施形態の図10(A)のギャップ領域Gと、比較例の図10(B)のような小サイズの空気極層13bを配置する場合のギャップ領域Gとを比べると、角部付近の幅W2は同じになるが、図10(B)の空気極層13bのサイズが小さくなって発電面積が減少するので、単位セル3の発電性能が低下することになる。このように、第1実施形態の構造を採用することにより、電気的信頼性の向上と発電面積の確保とを両立することができる。
【0029】
第1実施形態の構造において、図10(A)の各辺の幅W1と角部の幅W2との関係については特に制約されないが、例えば、W1=W2の関係に設定することにより、接合領域40を一定幅の帯状の領域に形成してもよい。この場合、ギャップ領域Gでは、外周側(隔離セパレータ25の開口部33)のR面取り形状の曲率半径R1と内周側(空気極層13の外周)のR面取り形状の曲率半径R2とを、R1≦R2+Wの関係に設定することが望ましい。それぞれの曲率半径R1、R2を大きくし過ぎると、空気極層13の面積制約になるので好ましくなく、逆にそれぞれの曲率半径を小さくし過ぎると、接合領域40(図9)における応力集中を緩和する効果が不十分になる。具体的な寸法例としては、例えば、隔離セパレータ25の開口部33の1辺が110mmで、空気極層13の1辺が107mmのとき、W1=W2=1.5mm、R1=5mm、R2=3.5mm程度に設定することができる。この場合、R1=R2+Wになり、電気的ショートの防止と空気極面積の確保が両立できるので、採用することが好ましい。なお、この条件では、図10(B)の空気極層13bの1辺が105mmになり、図10(A)の空気極層13の面積は、図10(B)の空気極層13bの面積に比べて約4%大きくでき、その分だけ発電面積が拡大する。
【0030】
次に、第1実施形態の単位セル3の製造工程のうち、特徴的な構造に関連する工程について説明する。まず、周知の手法で、金属の板材に対する打ち抜き加工により、図7に示す平面構造を有する隔離セパレータ25を作製する。このとき、隔離セパレータ25の中央に、例えば打ち抜き加工を施すことで、方形の各角部が曲率半径R1で面取りされた開口部33が形成される。
【0031】
一方、周知の手法で、支持基体層となる燃料極グリーンシートを形成するとともに、固体電解質グリーンシートを形成し、燃料極グリーンシートの上層に固体電解質グリーンシートとの積層体を形成する。次いで、得られた積層体を所定の方形形状に加工した後に焼成し、燃料極層11と固体電解質層12からなる焼結体を得る。続いて、得られた焼結体の上層の所定位置に空気極層13を積層形成することで、図8の平面構造を有するセル本体10を作製する。このとき、空気極層13は、方形の各角部が曲率半径R2で面取りされた積層パターンにより形成される。
【0032】
次に、図11(A)に示すように、隔離セパレータ25の下面において接合領域40に相当する内周領域にロウ材を塗布するとともに、セル本体10の固体電解質層12の上面において接合領域40に相当する外周領域にロウ材を塗布する。ロウ材としては、例えば、Agを主成分とするAg系ロウ材が用いられる。この状態で、図11(B)に示すように、隔離セパレータ25とセル本体10を、互いの接合領域40が重なるように位置合わせし、ロウ材を加熱することによってセル本体10が隔離セパレータ25に一体化される。以上のようにして得られた隔離セパレータ25及びセル本体10を組み込むことにより、単位セル3を得ることができる。
【0033】
[第2実施形態]
以下、本発明を適用した固体酸化物形燃料電池の第2実施形態について具体的に説明する。第2実施形態は、第1実施形態と多くの点で共通するので、以下では主に第1実施形態と異なる点について説明する。第1実施形態で示した図1〜図7、図11は、第2実施形態においても共通であるので、説明を省略する。
【0034】
図12は、第2実施形態のセル本体10の平面構造を示す図であり、第1実施形態の図8に対応する。図12に示すセル本体10は、図8とは異なり、方形の外周形状のうちの4つの角部を曲率半径R3の円弧状に面取りした形状(R面取り形状)を有する。なお、図12のセル本体10のうち、面取り部分を除いた外周及び内周の基本形状は図8と共通のサイズであるとする。また、図13は、第2実施形態の隔離セパレータ25(図7)に図12のセル本体10を接合した状態の平面構造を示している。図13に示すように、第2実施形態の隔離セパレータ25は第1実施形態と同じ形状であるが、接合領域40の形状については第1実施形態(図9)とは異なっている。すなわち、第2実施形態の接合領域40は、内周形状に加えて、図12のセル本体10の構造を反映して外周形状の各角部が上述の曲率半径R3でR面取りされている。
【0035】
図14は、第2実施形態において、図7の隔離セパレータ25及び図12のセル本体10を含む平面構造のうちの中央付近を模式的に示した図であり、第1実施形態の図10に対応する。図14のギャップ領域Gにおける幅W1、W2については、図10と同様である。一方、図14の接合領域40において、四辺における幅W11と、角部における幅W12を併せて示している。幅W11と幅W12との関係については特に制約されないが、例えば、W11=W12の関係に設定することにより、接合領域40を一定幅の帯状の領域に形成してもよい。この場合、接合領域40では、外周側の四隅にR面取り形状の曲率半径R3と内周側のR面取り形状の曲率半径R1とを、R3<R1の関係に設定することが望ましい。
【0036】
第2実施形態においては、接合領域40を図14に示す形状にすることで、接合領域40における全ての直角部分が存在しなくなるため、その分だけ応力が集中しにくい効果を一層高めることができる。これにより、接合領域40における接合信頼性を向上させて隔離セパレータ25のガスシール性のさらなる向上が可能となる。第2実施形態において、ギャップ領域Gの形状に由来する電気的信頼性及び発電面積に関する効果については、第1実施形態と同様であることは当然である。
【0037】
[第3実施形態]
以下、本発明を適用した固体酸化物形燃料電池の第3実施形態について具体的に説明する。第3実施形態は、隔離セパレータ25及びセル本体10の面取り形状を変形したものである。図15(A)は、第1実施形態の図10(A)のギャップ領域Gの各角部のR面取り形状を、直線状に面取りした形状(C面取り形状)で置き換えた例を示している。図15(A)のギャップ領域Gは、図10(A)とは異なり、ギャップ領域Gの各角部の外周側(開口部33)と内周側(空気極層13)が、両側の各2辺と45度で交差する直線で面取りされている。ギャップ領域Gの四辺における幅W1と、各角部の外周と内周の間の幅W4は、特に制約されないが、W1=W4又はW1<W4に設定可能である。
【0038】
また、図15(B)は、図15(A)のギャップ領域GにおけるC面取り部分の両端をさらに直線状に面取りした形状(3本の直線からなる面取り形状)を有する例を示している。なお、ギャップ領域Gの四辺における幅W1と、各角部の外周と内周の間の幅W5は、特に制約されないが、W1=W5又はW1<W5に設定可能である。
【0039】
一方、図16(A)は、第2実施形態の図14のギャップ領域G及び接合領域40の各角部のR面取り形状を、直線状に面取りした形状(C面取り形状)で置き換えた例を示している。図16(A)のギャップ領域Gの形状は図15(A)と同様である。また、図16(A)の接合領域40は、図14とは異なり、各角部の内周側と外周側が、両側の各2辺と45度で交差する直線で面取りされている。接合領域40の四辺における幅W11と、各角部の外周と内周の間の幅W13は、特に制約されないが、W11=W13又はW11<W13に設定可能である。
【0040】
また、図16(B)は、図16(A)のギャップ領域G及び接合領域40におけるC面取り部分の両端をさらに直線状に面取りした形状(3本の直線からなる面取り形状)を有する例を示している。図16(B)のギャップ領域Gの形状は図15(B)と同様である。また、図16(B)の接合領域40は、各角部のうち各辺及び各直線部分が互いになす角度が図16(A)に比べても一層大きな鈍角になるので、応力の集中を避ける効果が高くなる。なお、接合領域40の四辺における幅W11と、各角部の外周と内周の間の幅W14は、特に制約されないが、W11=W14又はW11<W14に設定可能である。
【0041】
第3実施形態においては、図15及び図16に示す構造に限られず、直線や曲線を含む多様な面取り形状を採用することができる。この場合の面取り部分は、ギャップ領域Gにおける各角部の幅(及び接合領域40における各角部の幅)を適切に設定し得る範囲内で自在な形状にすることができる。第3実施形態において、ギャップ領域Gの形状に由来する電気的信頼性及び発電面積に関する効果については、第1及び第2実施形態と同様であることは当然である。
【0042】
以上、第1及び第2実施形態に基づき本発明の内容を具体的に説明したが、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で多様な変更を施すことができる。例えば、セル本体10を構成する各層は、燃料極層11、固体電解質層12、空気極層13に限らず、多様な役割を有する機能層が含まれていてもよい。この場合、セル本体10のうち支持基体とする層も、燃料極層11には限られず他の層であってもよい。また、セル本体10のうち接合領域40を介して隔離セパレータ25と接合される層も、固体電解質層12には限られず他の層であってもよい。その他の点についても上記各実施形態により本発明の内容が限定されるものではなく、本発明の作用効果を得られる限り、適宜に変更可能である。例えば、単位セル3内の各構成部材の構造、形状、材料、形成方法等については、本発明の作用効果を得られる限り、適宜に変更することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…固体酸化物形燃料電池
2…燃料電池スタック
3…単位セル(燃料電池セル)
10…セル本体
11…燃料極層
12…固体電解質層
13…空気極層
20、21…インターコネクタ
22…燃料極側集電体
23…空気極側集電体
24…燃料極フレーム
25…隔離セパレータ
26、27…ガスシール部
B1〜B8…ボルト
N…ナット
Ain…空気導入管
Aout…空気排出管
Ap…空気流路
Fin…燃料ガス導入管
Fout…燃料ガス排出管
Fp…燃料ガス流路
G…ギャップ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、燃料ガスに接する燃料極層と、酸化剤ガスに接する空気極層と、一方の面側に前記燃料極が配置され他方の面側に前記空気極が配置された固体電解質層とが積層されたセル本体と、
前記セル本体の一方の面側に配置されて、厚み方向に貫通する開口部を備え、少なくとも前記セル本体の所定の層の表面を前記開口部より露出させるとともに、前記セル本体と接合する接合部を有する枠体状の隔離セパレータと、
を備えた固体酸化物形燃料電池であって、
前記隔離セパレータの前記開口部は、方形の四隅において面取りされた第1の平面形状を有し、
前記所定の層は、方形の四隅において面取りされた第2の平面形状を有し、
前記第1の平面形状が所定の間隔を介して前記第2の平面形状を取り囲む位置関係にあることを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
前記所定の層は前記空気極層であることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
前記セル本体の支持基体となる層は、前記燃料極層であることを特徴とする請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項4】
前記第1の平面形状及び前記第2の平面形状のそれぞれの面取りされた平面形状は、R面取り形状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項5】
前記第1の平面形状の前記R面取り形状の曲率半径をR1とし、前記第2の平面形状の前記R面取り形状の曲率半径をR2とし、前記第1の平面形状と前記第2の平面形状の間の幅をWとしたとき、R1≦R2+Wであることを特徴とする請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項6】
前記第1の平面形状及び前記第2の平面形状のそれぞれの面取りされた平面形状は、C面取り形状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項7】
前記第1の平面形状と前記第2の平面形状の間の領域は、一定幅の帯状の領域であることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項8】
前記セル本体の外周側の端部は、方形の四隅において面取りされた第3の平面形状を有することを特徴とする1乃至7のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項9】
前記接合部は、ロウ材によりなり、前記セル本体と前記隔離セパレータとがロウ付けにより接合されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項10】
前記隔離セパレータは、可撓性を有する金属材料により形成されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−230818(P2012−230818A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98245(P2011−98245)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】