説明

固体電解コンデンサおよび固体電解コンデンサの製造方法

【課題】 高容量化と小型化とを両立させることが可能な構成を備えた固体電解コンデンサおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 固体電解コンデンサ101は、コンデンサ素子2と、コンデンサ素子2を覆う樹脂パッケージ1と、長手方向における一方の端部がコンデンサ素子2に接続された陽極ワイヤ3と、陽極ワイヤ3に導通する陽極部材4と、を備えている。樹脂パッケージ1は、x方向に長く延びる辺を有する第1の側面11と、y方向に長く延びる辺を有する第2の側面12と、を有しており、第1の側面11および第2の側面12はいずれもz方向に長く延びる辺を有している。コンデンサ素子2は、第1の側面11と平行な第1の面21と、第2の側面12と平行な第2の面22と、Lx方向視において第1の面21と第2の面22とに挟まれた第3の面23とを有している。陽極ワイヤ3は第3の面23から突出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ素子を樹脂パッケージで覆う構成を備える固体電解コンデンサおよび固体電解コンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図21は、従来の固体電解コンデンサの一例を示している(たとえば特許文献1参照)。図21に示す固体電解コンデンサ90は、直方体形状の樹脂パッケージ91、コンデンサ素子92、陽極ワイヤ93、陽極用リード94、枕電極95、および、陰極用リード96を備えている。樹脂パッケージ91は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなり、コンデンサ素子92、陽極ワイヤ93および枕電極95の全体を覆い、陽極用リード94および陰極用リード96の一部を覆っている。陽極用リード94および陰極用リード96の一部は樹脂パッケージ91からの露出しており、これらの露出部分が固体電解コンデンサ90の端子部として機能する。固体電解コンデンサ90は、たとえばプリント配線基板に実装されて用いられる。前述の端子部は、固体電解コンデンサ90をプリント配線基板に実装する際に用いられる。
【0003】
コンデンサ素子92は、図21示すように直方体状に形成されており、長手方向における一方の端面から陽極ワイヤ93が延び出している。枕電極95は、コンデンサ素子92の長手方向における一方側に配置されており、陽極ワイヤ93と溶接されている。このような構成であるため、樹脂パッケージ91は、陽極ワイヤ93および枕電極95の分だけコンデンサ素子92よりも長手方向に長く形成される。
【0004】
固体電解コンデンサ90では、近年、高容量化のニーズが高まっている。一般に、固体電解コンデンサ90において高容量を得るためには、コンデンサ素子92の体積を大きくする必要がある。この場合、コンデンサ素子92を覆う樹脂パッケージ91の体積も大きくしなければならず、固体電解コンデンサ90の大型化を招いてしまう。
【0005】
一方で、固体電解コンデンサ90が実装されるプリント配線基板は、電子部品の小型化に伴い、ますます高密度化されている。固体電解コンデンサ90においても小型化の要請は避けられなくなっている。しかしながら、上述したように、固体電電解コンデンサ90の高容量化を図るには樹脂パッケージ91の大型化が避けがたく、固体電解コンデンサ90の小型化を図ることが困難となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−367862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、高容量化と小型化とを両立させることが可能な構成を備えた固体電解コンデンサ、および、固体電解コンデンサの製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面によって提供される固体電解コンデンサは、コンデンサ素子と、上記コンデンサ素子を覆う樹脂パッケージと、長手方向における一方の端部が上記コンデンサ素子に接続された陽極ワイヤと、上記陽極ワイヤに導通する陽極部材と、を備えた固体電解コンデンサであって、上記樹脂パッケージは、第1の方向に長く延びる辺を有する第1の側面と、上記第1の方向と直交する第2の方向に長く延びる辺を有する第2の側面と、を有しており、第1の側面および第2の側面はいずれも、上記第1の方向および上記第2の方向と直交する第3の方向に長く延びる辺を有しており、上記コンデンサ素子は、上記第1の側面と平行な第1の面と、上記第2の側面と平行な第2の面と、上記陽極ワイヤの長手方向視において上記第1の面と上記第2の面とに挟まれた第3の面と、を有しており、上記陽極ワイヤが上記第3の面から突出していることを特徴とする。
【0009】
好ましい実施形態においては、上記陽極ワイヤの長手方向は、上記第1の方向および上記第2の方向のいずれに対しても傾斜している。
【0010】
より好ましい実施形態においては、上記陽極ワイヤの長手方向は上記第3の面に対して垂直である。
【0011】
より好ましい実施形態においては、上記陽極ワイヤの長手方向は上記第3の方向と直交する方向である。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記陽極ワイヤは、上記第1の側面と面一な第1のワイヤ露出面を有する。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記陽極ワイヤは、上記第2の側面と面一な第2のワイヤ露出面を有する。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記陽極部材は、上記陽極ワイヤに溶接された枕電極を備えており、上記枕電極は、上記第1の方向視において上記コンデンサ素子と重なる位置に配置されており、かつ、上記第2の方向視においても上記コンデンサ素子と重なる位置に配置されている。
【0015】
好ましくは、上記枕電極は、上記第1の側面と面一な第1の露出面を有する。
【0016】
より好ましくは、上記第3の方向視において、上記第1の露出面の上記第1の方向における一方の端縁は、上記第1の側面の上記第1の方向における端縁と重なっている。
【0017】
より好ましくは、上記枕電極は、上記第2の側面と面一な第2の露出面を有する。
【0018】
より好ましくは、上記第3の方向視において、上記第2の露出面の上記第2の方向における一方の端縁は、上記第2の側面の上記第2の方向における端縁と重なっている。
【0019】
より好ましくは、上記陽極ワイヤの長手方向は、上記第1の方向に対して45°傾斜している。
【0020】
より好ましくは、上記陽極ワイヤは、上記第3の面から突出する露出部と、上記コンデンサ素子に埋設された埋設部とを有している。
【0021】
本発明の第2の側面によって提供される固体電解コンデンサの製造方法は、第1の方向に長く延びる辺を有する第1の面、上記第1の方向と直交する第2の方向に長く延びる辺を有する第2の面、および、上記第1の方向における上記第1の面の一方の端縁と上記第2の方向における上記第2の面の一方の端縁とを繋ぐ第3の面を具備するコンデンサ素子と、上記第3の面から突出する製造用ワイヤとを具備する中間素子を形成する工程と、上記コンデンサ素子を覆い、上記第1の面と平行な第1の側面と、上記第2の面と平行な第2の側面とを具備する樹脂パッケージを形成する工程と、を備えていることを特徴とする。
【0022】
好ましい製造方法においては、上記中間素子を形成する工程は、上記コンデンサ素子を形成する工程を有しており、上記コンデンサ素子を形成する工程は、加圧用金型を用いて金属粉末を加圧し、上記第1の面、上記第2の面、および、上記第3の面を具備する粉末固形物を形成する加圧工程を有している。
【0023】
より好ましい製造方法においては、上記製造用ワイヤを上記加圧用金型に設置する工程を有しており、上記製造用ワイヤを上記加圧用金型に設置する工程を行った後に、上記加圧工程が行われる。
【0024】
より好ましい製造方法においては、上記樹脂パッケージを形成する工程は、上記コンデンサ素子を覆う樹脂材料を形成する工程と、上記樹脂材料を切断する工程と、を有しており、上記樹脂材料を切断する工程では、上記第1の方向に沿って上記樹脂材料を切断することにより上記第1の側面を形成し、上記第2の方向に沿って上記樹脂材料を切断することにより上記第2の側面を形成する。
【0025】
より好ましい製造方法においては、上記樹脂材料を切断する工程では、上記製造用ワイヤも切断する。
【0026】
より好ましい製造方法においては、枕電極用リードを設置する工程と、上記枕電極用リードと上記製造用ワイヤとを当接させる工程と、を備えており、上記樹脂材料を切断する工程では、上記枕電極用リードも切断する。
【0027】
より好ましい製造方法においては、上記製造用ワイヤの長手方向における他方の端部を、細長形状のワイヤ支持具に固定する工程と、上記製造用ワイヤを屈曲させる工程と、を備えており、上記製造用ワイヤを屈曲させることで上記ワイヤ支持具の長手方向が上記第2の方向と一致する。
【0028】
従来の構成では、直方体状のコンデンサ素子の一つの面から陽極ワイヤが突出しており、陽極ワイヤが突出する分だけ、陽極ワイヤの長手方向において樹脂パッケージをコンデンサ素子よりも長くする必要があった。それに対して、本発明の構成では、上記コンデンサ素子は、上記陽極ワイヤの長手方向視において上記樹脂パッケージの第1,2の側面に平行な第1,2の面に挟まれた第3の面を有しており、上記陽極ワイヤはこの第3の面から突出している。このような第3の面は第1,2の面に対して傾斜した面となり、上記樹脂パッケージが直方体の場合、直方体の角部と第3の面との間に利用可能な空間が生じることになる。本発明に基づく固体電解コンデンサでは、この空間を利用することにより、第1,2の面から陽極ワイヤを突出させた場合と比較して、上記樹脂パッケージの大きさを上記コンデンサ素子に近づけることが可能である。換言すれば、本発明に基づく固体電解コンデンサは、上記樹脂パッケージ内で上記コンデンサ素子が占める体積比率を向上させることが可能となっている。このため、本発明に基づく固体電解コンデンサは、上記コンデンサ素子の体積を増加させつつ、上記樹脂パッケージの縮小を図りやすくなっており、高容量化と小型化とを両立させやすい構成を備えている。
【0029】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す斜視図である。
【図2】図1に示す固体電解コンデンサの要部平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1に示すコンデンサ素子を形成するための一工程を示す図である。
【図5】図4に続く工程を示す図である。
【図6】図5に示す工程で形成された粉末固形物を金型から取り出した状態を示す図である。
【図7】コンデンサ素子と製造用ワイヤとからなる中間素子を示す図である。
【図8】複数の中間素子を用いて複数の固体電解コンデンサを製造する際の一工程を示す図である。
【図9】各中間素子の製造用ワイヤを屈曲させた後の状態を示す図である。
【図10】複数の中間素子を製造用リードに設置した状態を示す図である。
【図11】中間素子を覆う樹脂材料を形成する工程を示す図である。
【図12】樹脂材料を切断して樹脂パッケージを形成する工程を示す図である。
【図13】上記実施形態とは異なる形状の粉末固形物を形成するための一工程を示す図である。
【図14】本発明の第2実施形態に基づく固体電解コンデンサの要部平面図である。
【図15】図14のXV−XV線に沿う断面図である。
【図16】本発明の第3実施形態に基づく固体電解コンデンサの要部平面図である。
【図17】本発明の第4実施形態に基づく固体電解コンデンサの要部平面図である。
【図18】図17のXVIII−XVIII線に沿う断面図である。
【図19】本発明の第5実施形態に基づく固体電解コンデンサの要部平面図である。
【図20】図19のXX−XX線に沿う断面図である。
【図21】従来の固体電解コンデンサの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0032】
図1〜図3には、本発明の第1実施形態に基づく固体電解コンデンサの一例を示している。図1〜図3に示す固体電解コンデンサ101は、樹脂パッケージ1、コンデンサ素子2、陽極ワイヤ3、陽極部材4、および、陰極リード5を備えている、図2では、樹脂パッケージ1を省略している。図3には図2のIII−III線に沿う断面を示している。
【0033】
樹脂パッケージ1は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなり、コンデンサ素子2の全体を覆っている。さらに、樹脂パッケージ1は、陽極ワイヤ3の一部を露出させるように陽極ワイヤ3を覆っている。樹脂パッケージ1は、陽極部材4の一部を露出させるように陽極部材4を覆っている。樹脂パッケージ1は、陰極リード5の一部を露出させるように陰極リード5を覆っている。
【0034】
図1に示すように、樹脂パッケージ1は直方体状に形成されており、第1の側面11と、第1の側面11と直交する第2の側面12を有している。以下の説明で用いるx,y,z方向は互いに直交する方向である。第1の側面11は、x方向に長く延びる長辺と、z方向に長く延びる短辺とを有する長方形状である。第2の側面12は、y方向に長く延びる辺と、z方向に長く延びる辺とを有する矩形状である。第1の側面11のx方向における一方の端縁を成す辺111は、第2の側面12のy方向における一方の端縁を成している。この辺111は、第1の側面11のz方向に長く延びる辺であり、かつ、第2の側面12のz方向に長く延びる辺である。樹脂パッケージ1のx方向寸法は、たとえば1.6mmであり、y方向寸法は0.85mmであり、z方向寸法は0.8mmである。
【0035】
コンデンサ素子2は、図2に示すように、z方向視において四隅の一角が削れた矩形状に形成されており、第1の面21と、第2の面22と、第3の面23とを備えている。第1の面21は、第1の側面11と平行な面であり、x方向に長く延びる長辺と、z方向に長く延びる短辺とを有する長方形状である。第2の面22は、第2の側面12と平行な面であり、y方向に長く延びる辺と、z方向に長く延びる辺とを有する矩形状である。第3の面23は、x,y方向に対して45°傾斜し、かつ、z方向に対して90°傾斜するLy方向に長く延びる辺と、z方向に長く延びる辺とを有する矩形状である。図2に示すように、Ly方向と直交するLx方向視において、第3の面23は第1の面21と第2の面22との間に挟まれている。第3の面23はLx方向に対して垂直な面である。第1の面21のx方向における一方の端辺は、y方向視において第2の面22よりもx方向における他方に位置している。また、第2の面22のy方向における一方の端辺は、x方向視において第1の面21よりもy方向における他方に位置している。
【0036】
コンデンサ素子2は、図3に示すように、多孔質焼結体201と、多孔質焼結体201の大部分を覆う陰極金属膜202とを備えている。多孔質焼結体201はタンタルもしくはニオブなどの弁作用金属よりなる。陰極金属膜202は、たとえば銀製であり、多孔質焼結体201の大部分を覆うように形成されている。図2に示すように、コンデンサ素子2の第3の面23では陰極金属膜202が設けられておらず、多孔質焼結体201が露出している。
【0037】
陽極ワイヤ3は、タンタルもしくはニオブなどの弁作用金属よりなり、図2に示すように、Lx方向に沿って長く延び、かつ、第3の面23から突出している。すなわち、Lx方向は、陽極ワイヤ3の長手方向に相当している。Lx方向は、x,y方向に対して45°傾斜しており、z方向と直交している。陽極ワイヤ3の直径は、たとえば0.15mmである。
【0038】
陽極ワイヤ3は、多孔質焼結体201から露出する露出部31と、多孔質焼結体201に埋設されている埋設部32とを備えている。埋設部32は、陽極ワイヤ3のLx方向における一方の端部を含む部分であり、多孔質焼結体201に接続されている。図1に示すように、露出部31のLx方向における他方の端部には、樹脂パッケージ1から露出する第1のワイヤ露出面311と第2のワイヤ露出面312とを備えている。第1のワイヤ露出面311は、第1の側面11と面一となるように形成されている。第2のワイヤ露出面312は、第2の側面12と面一となるように形成されている。図1に示すように、第1のワイヤ露出面311のx方向における一方の端縁はz方向視において辺111と重なっている。第2のワイヤ露出面312のy方向における一方の端縁はz方向視において辺111と重なっている。
【0039】
陽極部材4は、陽極リード41と枕電極42とを備えている。陽極リード41は、図2に示すように、z方向視において、y方向に長い長矩形状に形成されており、その一部がコンデンサ素子2のx方向における一方側の端部と重なるように配置されている。図3に示すように、陽極リード41は樹脂パッケージ1の外部に露出している。枕電極42は、陽極リード41のy方向における一方の端部付近からz方向に起立するように形成されており、陽極リード41と導通している。枕電極42は陽極リード41に固定されており、かつ、樹脂パッケージ1に包まれており、樹脂パッケージ1に固定されている。さらに、枕電極42のz方向における図3中上端は陽極ワイヤ3に接しており、枕電極42と陽極ワイヤ3とは導通している。
【0040】
図3に示すように、枕電極42は、Lx方向において第1の側面11のx方向における一方の端縁111と第3の面23との間に配置されている。図2に示すように、x方向視において枕電極42の大部分はコンデンサ素子2と重なる位置にある。また、y方向視においても枕電極42の大部分はコンデンサ素子2と重なる位置にある。図1および図2に示すように、枕電極42は、z方向視台形状であり、Ly方向における両端部に樹脂パッケージ1から露出する第1の露出面421および第2の露出面422を備えている。第1の露出面421は、第1の側面11と面一となるように形成されている。第2の露出面422は、第2の側面12と面一となるように形成されている。
【0041】
陰極リード5は、図2に示すように、z方向視において、y方向に長い長矩形状に形成されており、その一部がコンデンサ素子2のx方向における他方側の端部と重なるように配置されている。図3に示すように、陰極リード5のz方向における図中下端部は樹脂パッケージ1の外部に露出している。陰極リード5のz方向における図中上端部は樹脂パッケージ1内に食い込んでおり、コンデンサ素子2と接している。陰極リード5は、図示しない銀ペーストにより陰極金属膜202に接合されている。
【0042】
次に、固体電解コンデンサ101の製造方法について図4〜図12を参照にしつつ説明を行う。
【0043】
固体電解コンデンサ101の製造方法は、製造用ワイヤ30とコンデンサ素子2とを具備する中間素子2Aを形成する工程と、コンデンサ素子2Aを覆う樹脂パッケージ1を形成する工程とを備えている。図4〜図7では中間素子2Aを形成する工程を示している。
【0044】
中間素子2Aを形成する工程は、製造用ワイヤ30を加圧用金型6に設置する工程と、製造用ワイヤ30が設置された加圧用金型6を用いてコンデンサ素子2を形成する工程とを有している。以下、中間素子2Aを形成する工程について詳細な説明を行う。
【0045】
まず、タンタルもしくはニオブなどの弁作用金属からなる製造用ワイヤ30と、タンタルもしくはニオブなどの弁作用金属からなる金属粉末201aとを用意する。そして、図4に示すように、用意した製造用ワイヤ30を加圧用金型6に設置する工程を行う。このときの製造用ワイヤ30の長手方向をLx方向とする。加圧用金型6は、Lx方向に離間する1対の固定金型61,62と、Lx方向と直交するLy方向に離間し、Ly方向に移動可能な可動金型63,64とを備えている。固定金型61は、Lx方向と直交する内面611を有し、製造用ワイヤ30を通すためのLx方向に貫通する孔部612が形成されている。固定金型62は、内面611と対向する内面621を有している。可動金型63は、x方向に長く延びる長辺と、z方向に長く延びる短辺とを有する長方形状である押圧面631と、y方向に長く延びる辺と、z方向に長く延びる辺とを有する矩形状である押圧面632とを有している。可動金型64は、x方向に長く延びる長辺と、z方向に長く延びる短辺とを有する長方形状である押圧面641と、y方向に長く延びる辺と、z方向に長く延びる辺とを有する矩形状である押圧面642とを有している。この工程ではさらに、先に用意した金属粉末201aを固定金型61,62および可動金型63,64で囲まれる領域に設置する。図4に示すように、製造用ワイヤ30のLx方向における一方側(図4中下方側)は金属粉末201a内に埋まった状態となる。
【0046】
製造用ワイヤ30および金属粉末201aを加圧用金型6に設置する工程を行った後に、金属粉末201aに加圧する加圧工程を行う。この工程では、図5に示すように、可動金型63,64をLy方向において互いに近付くように移動させることにより、金属粉末201aを押し固める。押し固められた金属粉末201aは粉末固形物201bとなる。この工程では、押圧面631に対応してx方向に長く延びる長辺と、z方向に長く延びる短辺を有する長方形状の第1の面21aが形成される。この工程では、押圧面642に対応して、y方向に長く延びる辺とz方向に長く延びる辺とを有する矩形状の第2の面22aが形成される。さらに、図5に示すように、可動金型63,64のLx方向における他方側(図中上方側)の端部同士はLy方向に離間している。このため、この工程では、内面611に沿って、Ly方向に長く延びる辺とz方向に長く延びる辺とを有する矩形状の第3の面23aが形成される。また、製造用ワイヤ30の粉末固形物201bから露出している部分を露出部31aとし、粉末固形物201bの内部にある部分を埋設部32aとする。
【0047】
次に、製造用ワイヤ30および粉末固形物201bを加圧用金型6から取り出し、粉末固形物201bから多孔質焼結体201を形成する工程を行う。図6には、製造用ワイヤ30および粉末固形物201bを加圧用金型6から取り出した状態を示している。
【0048】
この工程では、まず、粉末固形物201bを真空において焼結する工程を行う。次に、焼結させた粉末固形物201bを強酸性の液中に浸漬するとともに電圧を印加する。この処理により、粉末固形物201bの粉末粒子表面に誘電体酸化被膜が形成される。誘電体酸化被膜は、五酸化タンタルまたは五酸化ニオブからなる。さらに次に、粉末固形物201bの粉末同士の隙間に固体電解質を充填する。固体電解質は、二酸化マンガンや導電性ポリマーよりなる。その後、固体電解質で充填された粉末固形物201bをグラファイト層で覆うことで多孔質焼結体201は形成される。
【0049】
次に、多孔質焼結体201を覆うように陰極金属膜202を形成する工程を行う。図7には、陰極金属膜202が形成された状態を示している。この工程は、多孔質焼結体201の第3の面23aを露出させるように多孔質焼結体201を銀メッキで覆うことにより行われる。この工程で形成される銀メッキが陰極金属膜202となる。多孔質焼結体201に陰極金属膜202を形成したものがコンデンサ素子2となる。陰極金属膜202の厚みはほぼ一定に形成されるため、コンデンサ素子2の外形は多孔質焼結体201の形状に沿うものとなる。図7に示すように、コンデンサ素子2は、多孔質焼結体201の第1の面21aに沿う第1の面21と、第2の面22aに沿う第2の面22と、第3の面23とを有するように形成される。第3の面23は、第3の面23aと同一である。
【0050】
以上の工程によって中間素子2Aは形成される。このような製造方法によれば、自然と製造用ワイヤ30がコンデンサ素子2の第3の面23から突出する形態となる。
【0051】
次に、図8に示すように複数の中間素子2Aをワイヤ支持リード300に固定する工程を行う。この工程は、たとえば、製造用ワイヤ30の長手方向Lxにおける他方の端部を、Ly方向に長く延びる金属製のワイヤ支持リード300に溶接することで行われる。なお、この工程を行うかわりに、予めワイヤ支持リード300に多数の製造用ワイヤ30を取り付けておき、各製造ワイヤ30のLx方向における一方の端部を覆うコンデンサ素子2を形成することで図8に示す状態を実現してもよい。図8に示すように、ワイヤ支持リード300に複数の中間素子2Aを吊り下げたものを中間体2Bとする。
【0052】
次に、製造用ワイヤ30を屈曲させる屈曲工程を行う。図9には、中間体2Bに対して各製造用ワイヤ30を屈曲させる工程を行った後の状態を示している。この工程により、図9に示すように、製造用ワイヤ30の長手方向における他方の端部はx方向に延びるようになり、その他の部分に対して45°傾斜するようになる。図9に示す状態では、ワイヤ支持リード300はy方向に長く延びるようになり、y方向視において多数の中間素子2Aが重なるような配置となる。
【0053】
上述の工程と並列して、製造用リード410および製造用リード50を用意する。製造用リード410は、たとえば金属板に対して打ち抜き加工を施すことにより、y方向に長く延びるz方向視帯状に形成される。製造用リード50は、たとえば、製造用リード410よりもz方向における厚みが厚い金属板に対して打ち抜き加工を施すことにより、y方向に長く延びるz方向視帯状に形成される。製造用リード410と製造用リード50はx方向に離間するように配置される。
【0054】
次に、製造用リード410の適所に複数に枕電極用リード420を設置する。この工程では、たとえば、Lx方向を厚み方向とし、Ly方向に延びる板状の枕電極用リード420を製造用リード410に対して起立するように設置し、その後、溶接により固定する。
【0055】
次に、図10に示すように、中間体2Bを製造用リード410および製造用リード50に設置する工程を行う。この工程では、製造用ワイヤ30を各枕電極用リード420に当接させ、各コンデンサ素子2を製造用リード50に当接させる。さらに、その後、各製造用ワイヤ30と、それぞれに当接する枕電極用リード420とを溶接する。
【0056】
次に、樹脂パッケージ1を形成する工程を行う。この工程では、まず、図11に示すように、中間体2Bおよび製造用リード410,50を金型10A,10Bの間に設置する。次に、金型10A,10B内にエポキシ樹脂を流し込み、硬化させることによりコンデンサ素子2を覆う樹脂材料10を形成する工程を行う。その後に、樹脂材料10を切断する樹脂切断工程を行う。樹脂切断工程では、図12において二点鎖線で示した切断ラインC1〜C4に沿って樹脂材料10を切断する。切断ラインC1,C3はx方向に沿って延びており、切断ラインC2,C4はy方向に沿って延びている。樹脂材料10を切断することにより樹脂パッケージ1が形成される。切断ラインC1に沿って形成される切断面が第1の側面11となり、切断ラインC2に沿って形成される切断面が第2の側面12となる。
【0057】
図12に示すように、切断ラインC1,C2は、枕電極用リード420を通っており、上記樹脂切断工程では枕電極用リード420も切断される。枕電極用リード420を切断することで、枕電極42が形成される。切断ラインC1に沿って枕電極用リード420を切断することにより形成される切断面が、第1の露出面421となる。切断ラインC2に沿って枕電極用リード420を切断することにより形成される切断面が第2の露出面422となる。このような製造工程によれば、第1の露出面421は自然と第1の側面11と面一となり、第2の露出面422は自然と第2の側面12と面一となる。
【0058】
さらに、切断ラインC1,C2は、製造用ワイヤ30を通っており、上記樹脂切断工程では製造用リード30も切断される。製造用ワイヤ30を切断することで陽極ワイヤ3が形成される。製造用ワイヤ30の埋設部32bはそれぞれ陽極ワイヤ3の埋設部32となる。製造用ワイヤ30の露出部31aのうち、上記樹脂切断工程で残った部分が露出部31となる。切断ラインC1に沿って製造用ワイヤ30を切断することにより形成される切断面が第1のワイヤ露出面311となる。切断ラインC2に沿って製造用ワイヤ30を切断することにより形成される切断面が第2のワイヤ露出面312となる。このような製造工程によれば、第1のワイヤ露出面311は自然と第1の側面11と面一となり、第2のワイヤ露出面312は自然と第2の側面12と面一となる。
【0059】
なお、図12に示した切断ラインC1〜C4は好ましい一例に過ぎず、上記の例以外の切断ラインを設定することも可能である。
【0060】
次に、固体電解コンデンサ101の作用について説明を行う。
【0061】
固体電解コンデンサ101では、コンデンサ素子2がx,y方向に対して傾斜する第3の面23を有しており、z方向視において四隅の一つが欠けた形状となっている。このようなコンデンサ素子2を直方体状の樹脂パッケージ1に収容するとき、コンデンサ素子2の角が欠けている分だけ利用可能なスペースが生じる。上述した実施形態ではこのスペースに枕電極42が設置されている。このため、固体電解コンデンサ101は樹脂パッケージ1の小型化を図ることができる構成を備えている。
【0062】
また、たとえば、樹脂パッケージ1の大きさを従来のものと同じとした場合には、枕電極42の分だけコンデンサ素子2のx方向寸法を長くすることができる。コンデンサ素子2は角が欠けた形状であるが、x方向寸法を長くすることで角が欠けることによって減少する体積分以上に体積を増加させることができる。コンデンサ素子2の体積を増加させることは、コンデンサ素子2の大部分を占める多孔質焼結体201の体積を増加させることである。多孔質焼結体201の体積を増加させることは固体電解コンデンサ101の電気容量を向上させることに繋がる。
【0063】
上述したように、コンデンサ素子2の角が欠けた部分に枕電極42を配置することにより、固体電解コンデンサ101では、樹脂パッケージ1内に収容されるコンデンサ素子2の体積を増加させることが可能である。このため、固体電解コンデンサ101では、樹脂パッケージ1内でコンデンサ素子2が占める体積比率を向上させることが可能となっている。従って、固体電解コンデンサ101は、コンデンサ素子2の体積を増加させつつ、樹脂パッケージ1の縮小を図ることが可能であり、高容量化と小型化とを両立させることが可能な構成を備えている。
【0064】
また、上述した製造方法では、製造用ワイヤ30を屈曲させる屈曲工程を行っている。この屈曲工程を行う前の状態は図8に示されている。図8によると、各コンデンサ素子2はy方向視において互いにずれるように配置されている。このような配置のままでは複数の中間素子2Aを同一の製造用リード410,50に設置することが困難である。一方、屈曲工程を行った後の状態を示す図9では、各コンデンサ素子2はy方向視において互いに重なるように配置されている。このような配置であれば、図10に示すようにy方向に沿って並ぶ全てのコンデンサ素子2をy方向に延びる製造用リード410,50に設置することが可能である。従って、製造用ワイヤ30を屈曲させる屈曲工程は、固体電解コンデンサ101を大量生産する上で大きな便益をもたらすものである。
【0065】
なお、上述した製造方法では、製造用ワイヤ30のLx方向における一方の端部を覆うように粉末材料201aを形成しているが、製造用ワイヤ30を後付する製造方法も実施可能である。この場合、先に粉末材料201aを加圧成形し、粉末材料201aを焼結させる前に製造用ワイヤ30を第3の面23aに突き刺すことにより、図4に示す状態とほぼ同一の状態を実現可能である。
【0066】
また、上述した固体電解コンデンサ101では、コンデンサ素子2の欠けている角は一つであるが、コンデンサ素子2の他の角も欠けている構成としてもよい。図13には四隅が欠けた形状の粉末固形物201bと、それを形成するための加圧用金型6’を示している。加圧用金型6’の可動金型63’は、押圧面631,632の間にLy方向に垂直な押圧面633を有している。可動金型64’は、押圧面641,642の間にLy方向に垂直な押圧面643を有している。また、両者を近接させた状態でも、可動金型63’,64’のLx方向における一方側(図13中下方側)の端部同士が離間しており、粉末固形物201bには内面621に沿う面が形成される。
【0067】
図14〜図18は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。上記実施形態と同一または類似の要素については一部の説明を省略する。
【0068】
図14および図15は、本発明の第2実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態における固体電解コンデンサ102は、陽極部材4および陰極リード5のかわりに陽極部材4Aおよび陰極部材5Aを備えており、その他の構成は固体電解コンデンサ101と同様となっている。なお、図14では、樹脂パッケージ1を省略している。
【0069】
陽極部材4Aは、枕電極42と、端子電極43とを備えている。本実施形態における枕電極42は、図14に示すようにz方向視形状が直角三角形である三角柱状に形成されている。この枕電極42も、第1の露出面421および第2の露出面422を有している。端子電極43は、たとえばメッキにより形成された薄膜状の金属端子である。この端子電極43は枕電極42に固定されている。
【0070】
図14に示すように、z方向視において、第1の露出面421のx方向における一方の端縁は、第1のワイヤ露出面311のx方向における一方の端縁と重なっている。同様に、第2の露出面422のy方向における一方の端縁は、第2のワイヤ露出面312のy方向における一方の端縁と重なっている。固体電解コンデンサ101の説明で記したように、z方向視において第1のワイヤ露出面311のx方向における一方の端縁は樹脂パッケージ1の辺111と重なり、第2のワイヤ露出面312のy方向における一方の端縁も辺111と重なっている。すなわち、z方向視において、第1の露出面421のx方向における一方の端縁は辺111と重なっており、第2の露出面422のy方向における一方の端縁も辺111と重なっている。
【0071】
本実施形態においても、陽極ワイヤ3と枕電極42とは溶接されている。溶接される面積が小さい場合には力が加わったときに陽極ワイヤ3と枕電極42とが離れてしまうことが起こり得るため、陽極ワイヤ3と枕電極42との接触面積をある程度大きくする必要がある。図14に示す枕電極42は、台形状の枕電極42よりも、陽極ワイヤ3との接触面積を増やす上で好ましい形状である。
【0072】
陰極部材5Aは、たとえばメッキにより形成された薄膜状の金属からなる端子電極51と端子電極51と陰極電極膜202とを接合させる接合部材52とを備えている。接合部材52はたとえば銀ペーストからなり、z方向における図15中下面が樹脂パッケージ1から露出するように形成されている。
【0073】
端子電極43,51をメッキで形成することにより、固体電解コンデンサ102はz方向における厚みを減らすことができる。
【0074】
図16は、本発明の第3実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態における固体電解コンデンサ103では、陽極ワイヤ3の長手方向であるLx方向がx方向に対して60°傾斜している。図16に示すように、Ly方向はLx方向と直交しており、y方向に対して60°傾斜しており、これにあわせて第3の側面23の傾斜が固体電解コンデンサ102の場合と異なっている。陽極ワイヤ3は、樹脂パッケージ1の第2の側面12までは届いておらず、第1の側面11と面一な第1のワイヤ露出面311を有している。また、枕電極42も第3の側面23と平行な面を有する三角柱状に形成されている。固体電解コンデンサ103のその他の構成は固体電解コンデンサ102と同様である。なお、図16では、樹脂パッケージ1を省略している。
【0075】
このような実施形態においても、固体電解コンデンサ102のようにLx方向がx方向に対して45°傾斜している場合と同様の効果を得ることが可能である。
【0076】
図17および図18は、本発明の第4実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態における固体電解コンデンサ104では、陽極ワイヤ3の長手方向であるLx方向がx方向に対して30°傾斜している。図17に示すように、Ly方向はLx方向と直交しており、y方向に対して30°傾斜しており、これにあわせて第3の側面23の傾斜が固体電解コンデンサ101の場合と異なっている。さらに、本実施形態では、陽極部材4が陽極リード44からなり、陰極リード5のかわりに陰極リード53が用いられている。また、図18に示すように、陽極ワイヤ3が、多孔質焼結体201のz方向における中央ではなく、図中下方に偏って設置されている。固体電解コンデンサ104のその他の構成は固体電解コンデンサ101と同様となっている。なお、図17では、樹脂パッケージ1を省略している。
【0077】
本実施形態における陽極ワイヤ3は、図17に示すように、樹脂パッケージ1の第1の側面11と交差する位置まで延びておらず、第2の側面12と面一な第2のワイヤ露出面312を有している。
【0078】
陽極リード44は、図18に示すように、樹脂パッケージ1のz方向における図中下端に接する端子部441、端子部441の端部からz方向に起立する起立部442、および、起立部442の図中上端からx方向に延び出す枕部443を備えている。たとえば、このような陽極リード44は一様な厚みを有する金属板を屈曲加工することにより比較的容易に形成することができる。起立部442および枕部443は、固体電解コンデンサ101における枕電極42に相当する。
【0079】
上述したように、陽極ワイヤ3は、図18中下方に偏って配置されている。このことは起立部442の長さを短くする効果がある。起立部442を短くすることで、陽極リード44を製造するための製造用リードのx方向における幅を短くすることができる。
【0080】
陰極リード53は、図18に示すように、樹脂パッケージ1のz方向における図中下端に接する端子部531、端子部531の端部からz方向に起立する起立部532、および、起立部532の図中上端からx方向に延び出す枕部533を備えている。起立部532は、陰極電極膜202に当接している。枕部533のz方向における位置は枕部443のz方向における位置と同一である。なお、起立部532と陰極電極膜202とが、直接には接さず銀ペーストなどを介して導通する構成としても構わない。
【0081】
図18に示すように、本実施形態における樹脂パッケージ1は、端子部441,531のみならず、起立部442,532および枕部443,533を露出させるように形成されている。このような構成によれば、たとえば固体電解コンデンサ104を、はんだを用いて図示しない基板に実装する際に、端子部441,531のみならず、起立部442,532および枕部443,533にはんだを付着させることができる。はんだの付着面積が増加することで、固体電解コンデンサ104はより強固に基板に固定されることとなる。
【0082】
固体電解コンデンサ104では、図17に示すように、y方向に長く延びる帯状の枕部443に対してLx方向に延びる陽極ワイヤ3が溶接されている。このような配置によれば、陽極ワイヤ3をx方向に真っ直ぐ延びる配置とした場合と比較して、z方向視において陽極ワイヤ3と枕部443とが重なる面積を増加させることができる。換言すれば、枕部443のx方向における寸法を小さくした場合でも、陽極ワイヤ3と枕部443とを十分な強度で溶接可能である。このため、固体電解コンデンサ104のような構成でも、樹脂パッケージ1の小型化を図ることが可能となっている。
【0083】
図19および図20は、本発明の第5実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。図19では、樹脂パッケージ1を省略している。本実施形態における固体電解コンデンサ105では、陽極ワイヤ3のLx方向における一方の端部が第3の面23に溶接により接続されている。換言すれば、本実施形態における陽極ワイヤ3は固体電解コンデンサ101の陽極ワイヤ3における露出部31のみを有し、埋設部32を有さない構成となっている。固体電解コンデンサ105のその他の構成は固体電解コンデンサ101と同様となっている。
【0084】
このような固体電解コンデンサ105を製造する際には、加圧用金型6に製造用ワイヤ30を設置せずに粉末固形物201bを成形する。その後、粉末固形物201bに形成された第3の面23aに製造用ワイヤ30を溶接する工程が行われる。
【0085】
本発明の範囲は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る固体電解コンデンサおよびその製造方法で用いられる機材の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。たとえば、固体電解コンデンサ101〜105において示した各部の構成は適宜組み合わせて使用可能である。
【0086】
上記実施形態では、樹脂パッケージ1が直方体形状であり、第1の側面11および第2の側面12が共通の辺111を有するようになっているが、樹脂パッケージ1の形状はこのような形状に限定されず、略直方体形状であればよい。たとえば、第1の側面11と第2の側面12との間に傾斜面が配置されるような形状であっても構わない。
【0087】
上記実施形態では、陽極ワイヤ3はz方向と直交するように配置されているが、陽極ワイヤ3がz方向に対して90°以外の角度で傾斜するようにしても構わない。その場合、第3の面23がz方向に対して傾斜する面となるのが望ましい。具体的にはコンデンサ素子2の形状が、直方体の角の一つを切り落としたような形状となる。この場合、たとえば、上述した実施形態の場合と比較して、コンデンサ素子2の体積の減少を抑えることが可能となる。
【符号の説明】
【0088】
x (第1の)方向
y (第2の)方向
z (第3の)方向
Lx (陽極ワイヤの長手)方向
Ly 方向
101〜105 固体電解コンデンサ
1 樹脂パッケージ
10 樹脂材料
10A,10B 金型
11 第1の側面
111 辺
12 第2の側面
2 コンデンサ素子
2A 中間素子
2B 中間体
21 第1の面
22 第2の面
23 第3の面
201 多孔質焼結体
201a 金属粉末
201b 粉末固形物
202 陰極金属膜
3 陰極ワイヤ
30 製造用ワイヤ
31,31a 露出部
32,32a 埋設部
311 第1のワイヤ露出面
312 第2のワイヤ露出面
4,4A 陽極部材
41,44 陽極リード
42 枕電極
43 端子電極
410 製造用リード
420 枕電極用リード
421 第1の露出面
422 第2の露出面
441 端子部
442 起立部
443 枕部
5,53 陰極リード
5A 陰極部材
51 端子電極
52 接合部材
531 端子部
532 起立部
533 枕部
6 加圧用金型
61,62 固定金型
611,621 内面
612 孔部
63,64 可動金型
631,632,633,641,642,643 押圧面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子と、
上記コンデンサ素子を覆う樹脂パッケージと、
長手方向における一方の端部が上記コンデンサ素子に接続された陽極ワイヤと、
上記陽極ワイヤに導通する陽極部材と、
を備えた固体電解コンデンサであって、
上記樹脂パッケージは、第1の方向に長く延びる辺を有する第1の側面と、上記第1の方向と直交する第2の方向に長く延びる辺を有する第2の側面と、を有しており、
第1の側面および第2の側面はいずれも、上記第1の方向および上記第2の方向と直交する第3の方向に長く延びる辺を有しており、
上記コンデンサ素子は、上記第1の側面と平行な第1の面と、上記第2の側面と平行な第2の面と、上記陽極ワイヤの長手方向視において上記第1の面と上記第2の面とに挟まれた第3の面と、を有しており、
上記陽極ワイヤが上記第3の面から突出していることを特徴とする、固体電解コンデンサ。
【請求項2】
上記陽極ワイヤの長手方向は、上記第1の方向および上記第2の方向のいずれに対しても傾斜している、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
上記陽極ワイヤの長手方向は上記第3の面に対して垂直である、請求項2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
上記陽極ワイヤの長手方向は上記第3の方向と直交する方向である、請求項1ないし3のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
上記陽極ワイヤは、上記第1の側面と面一な第1のワイヤ露出面を有する、請求項1ないし4のいずれか記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】
上記陽極ワイヤは、上記第2の側面と面一な第2のワイヤ露出面を有する、請求項1ないし5のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項7】
上記陽極部材は、上記陽極ワイヤに溶接された枕電極を備えており、
上記枕電極は、上記第1の方向視において上記コンデンサ素子と重なる位置に配置されており、かつ、上記第2の方向視においても上記コンデンサ素子と重なる位置に配置されている、請求項1ないし6のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項8】
上記枕電極は、上記第1の側面と面一な第1の露出面を有する、請求項7に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項9】
上記第3の方向視において、上記第1の露出面の上記第1の方向における一方の端縁は、上記第1の側面の上記第1の方向における端縁と重なっている、請求項8に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項10】
上記枕電極は、上記第2の側面と面一な第2の露出面を有する、請求項7ないし9のいずれか記載の固体電解コンデンサ。
【請求項11】
上記第3の方向視において、上記第2の露出面の上記第2の方向における一方の端縁は、上記第2の側面の上記第2の方向における端縁と重なっている、請求項10に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項12】
上記陽極ワイヤの長手方向は、上記第1の方向に対して45°傾斜している、請求項1ないし11のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項13】
上記陽極ワイヤは、上記第3の面から突出する露出部と、上記コンデンサ素子に埋設された埋設部とを有している、請求項1ないし12のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項14】
第1の方向に長く延びる辺を有する第1の面、上記第1の方向と直交する第2の方向に長く延びる辺を有する第2の面、および、上記第1の方向における上記第1の面の一方の端縁と上記第2の方向における上記第2の面の一方の端縁とを繋ぐ第3の面を具備するコンデンサ素子と、上記第3の面から突出する製造用ワイヤとを具備する中間素子を形成する工程と、
上記コンデンサ素子を覆い、上記第1の面と平行な第1の側面と、上記第2の面と平行な第2の側面とを具備する樹脂パッケージを形成する工程と、を備えていることを特徴とする、固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項15】
上記中間素子を形成する工程は、上記コンデンサ素子を形成する工程を有しており、
上記コンデンサ素子を形成する工程は、加圧用金型を用いて金属粉末を加圧し、上記第1の面、上記第2の面、および、上記第3の面を具備する粉末固形物を形成する加圧工程を有している、請求項14に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項16】
上記製造用ワイヤを上記加圧用金型に設置する工程を有しており、
上記製造用ワイヤを上記加圧用金型に設置する工程を行った後に、上記加圧工程が行われる、請求項15に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項17】
上記樹脂パッケージを形成する工程は、上記コンデンサ素子を覆う樹脂材料を形成する工程と、上記樹脂材料を切断する工程と、を有しており、
上記樹脂材料を切断する工程では、上記第1の方向に沿って上記樹脂材料を切断することにより上記第1の側面を形成し、上記第2の方向に沿って上記樹脂材料を切断することにより上記第2の側面を形成する、請求項14ないし16のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項18】
上記樹脂材料を切断する工程では、上記製造用ワイヤも切断する、請求項17に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項19】
枕電極用リードを設置する工程と、
上記枕電極用リードと上記製造用ワイヤとを当接させる工程と、を備えており、
上記樹脂材料を切断する工程では、上記枕電極用リードも切断する、請求項17または18に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項20】
上記製造用ワイヤの長手方向における他方の端部を、細長形状のワイヤ支持具に固定する工程と、
上記製造用ワイヤを屈曲させる工程と、を備えており、
上記製造用ワイヤを屈曲させることで上記ワイヤ支持具の長手方向が上記第2の方向と一致する、請求項14ないし請求項19に記載の固体電解コンデンサの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2012−238803(P2012−238803A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108412(P2011−108412)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)