説明

固体電解コンデンサの製造方法

【課題】 弁金属基体をホルダに容易に且つ高精度に位置決めし保持させることができる固体電解コンデンサの製造方法を提供する。
【解決手段】 固体電解コンデンサを製造する場合、化成処理された弁金属基体7Aをホルダ16で保持する。弁金属基体7Aは、帯状部14と、この帯状部14の一側に形成された複数の素子形成部15とを有している。ホルダ16は、本体部材17と、この本体部材17に対して着脱自在な固定部材18とを有している。本体部材17は、板状部19と、この板状部19上に設けられた凸部20とからなっている。ホルダ16に弁金属基体7Aを保持させるときは、帯状部14の基端エッジを板状部19の上面に突き当てる。その状態で、固定部材18により帯状部14を凸部20の側面に押さえ付ける。その後、弁金属基体7Aの各素子形成部15に固体電解質層及び電極層を順に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化成処理された弁金属基体の陰極領域上に固体電解質層及び電極層を形成してなる固体電解コンデンサの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体電解コンデンサを製造する場合には、例えば帯状部の一側に複数の素子形成部を有する金属箔等の弁金属基体を作製した後、その弁金属基体をホルダに保持させた状態で、各素子形成部の陰極領域上に固体電解質層を形成し、更に固体電解質層上に電極層を形成する。弁金属基体をホルダに保持させる手法としては、弁金属基体の帯状部をホルダに位置決めして溶接するという方法がある。しかし、この方法では、帯状部をホルダに溶接する際に、帯状部の位置がずれないように細心の注意を払う必要がある。さらに、ホルダを繰り返し使用するためには、弁金属基体をホルダから取り外さなければならないが、この弁金属基体の取り外しには手間がかかる。また、弁金属基体をホルダから取り外した後にはホルダに打痕が残るので、これを削り取る作業も必要となる。
【0003】
弁金属基体をホルダに保持させる他の手法としては、例えば特許文献1に記載されている方法もある。この特許文献1に記載のものでは、電極箔(弁金属基体)の帯状部に複数の保持穴を形成すると共に、これらの保持穴に対応する複数の保持用突起をホルダに設ける。そして、ホルダの各保持用突起を電極箔の各保持穴に嵌めることで、電極箔をホルダに取り付ける。
【特許文献1】特開2004−87693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、電極箔をホルダに保持させる際に、保持用突起に対する保持穴の位置決めが困難であるため、電極箔をホルダに精度良く取り付けることができず、電極箔を破損させる虞がある。また、電極箔をホルダに精度良く取り付けないと、固体電解質層及び電極層の形成等といった加工を精度良く行うことが困難となり、結果的に固体電解コンデンサの歩留り低下につながる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、弁金属基体をホルダに容易に且つ高精度に位置決めし保持させることができる固体電解コンデンサの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、化成処理された弁金属基体の陰極領域上に固体電解質層及び電極層を順に積層してなる固体電解コンデンサの製造方法であって、化成処理された弁金属基体として、帯状部の一側に陰極領域を含む素子形成部が複数形成されているものを準備する工程と、弁金属基体をホルダにより保持する工程と、ホルダに保持された弁金属基体における各素子形成部の陰極領域上に固体電解質層及び電極層を順次形成する工程とを含み、ホルダとして、帯状部における素子形成部の反対側のエッジに係合する位置決め部と帯状部の主面に係合する押さえ面とを有する本体部材と、帯状部を押さえ面に対して押さえる固定部材とを有するものを用い、弁金属基体をホルダにより保持するときには、帯状部における素子形成部の反対側のエッジを位置決め部に当接させ、その状態で、固定部材により帯状部を押さえ面に対して押さえ付けることを特徴とするものである。
【0007】
このように本発明においては、弁金属基体をホルダにより保持する際には、弁金属基体の帯状部における素子形成部の反対側のエッジをホルダの本体部材の位置決め部に当接させるだけという簡単な作業によって、弁金属基体を本体部材に対して位置決めする。このとき、帯状部における素子形成部の反対側のエッジが打ち抜き加工等により精度良く形成されていれば、弁金属基体の各素子形成部も本体部材に対して高精度に位置決めされることとなる。そして、そのように各素子形成部が位置決めされた状態で、固定部材により帯状部を押さえ面に対して押さえ付けることにより、帯状部が本体部材及び固定部材に挟み込まれて保持された状態となる。従って、弁金属基体をホルダに容易に且つ高精度に位置決めし保持させることができる。
【0008】
また、例えば上記の特許文献1のように、保持用突起及び保持穴を利用して弁金属基体をホルダに保持させる場合には、保持用突起及び保持穴のいずれか一方を他方に対して3次元で位置決めするためのセンサが必要となるため、ホルダによる弁金属基体の保持動作の自動化が困難になる。また、帯状部の強度を確保するために帯状部の幅(面積)をある程度大きくする必要があるので、コンデンサ素子の形成に直接的には関与しない無駄な領域が増大することになる。帯状部については、強度だけでなく、保持穴の大きさによる面積の増大も問題となる。これに対し本発明では、弁金属基体の帯状部における素子形成部の反対側のエッジを本体部材の位置決め部に当接させるだけで、弁金属基体がホルダに対して高精度に位置決め可能となるので、ホルダによる弁金属基体の保持動作の自動化を容易に実現することができる。また、帯状部に保持穴を形成する必要が無いので、強度確保のために帯状部の幅(面積)を必要以上に増やさなくて済み、帯状部の無駄を抑えることができる。
【0009】
好ましくは、ホルダとして、固定部材が本体部材に磁石により着脱自在に取り付けられているものを用い、弁金属基体をホルダにより保持するときには、固定部材を本体部材から引き離すことで本体部材と固定部材との間に形成された隙間に帯状部を入れて、帯状部における素子形成部の反対側のエッジを位置決め部に当接させる。この場合には、本体部材と固定部材との着脱が簡単に行えるため、弁金属基体をホルダに更に容易に位置決めし保持させることができる。
【0010】
このとき、ホルダとして、固定部材及び本体部材の少なくとも一方の端部における固定部材と本体部材との境界側部分に切り欠きが形成されているものを用い、弁金属基体をホルダにより保持するときには、隙間を形成するための部材を切り欠きから固定部材と本体部材との間に差し込んで、固定部材を本体部材から引き離すことが好ましい。この場合には、隙間を形成するための部材を簡単に固定部材と本体部材との間に差し込んで、両者間に隙間を形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、弁金属基体をホルダに容易に且つ高精度に位置決めし保持させることができる。これにより、ホルダにより弁金属基体を保持した状態で、その後の固体電解コンデンサの製造を実施する際に、各素子形成部への固体電解質層及び電極層の形成等といった加工を精度良く行うことができるので、固体電解コンデンサの歩留り低下を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係わる固体電解コンデンサの製造方法の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係わる固体電解コンデンサの製造方法の一実施形態により製造される固体電解コンデンサを示す断面図である。同図において、固体電解コンデンサ1は、複数(ここでは5つ)のコンデンサ素子2を積層してなる積層体3を備えている。コンデンサ素子2は、陽極部4と、陰極部5と、陽極部4と陰極部5とを電気的に絶縁するレジスト層6とを有している。コンデンサ素子2の一部詳細断面を図2に示す。
【0014】
図1及び図2において、コンデンサ素子2は、陽極部4を形成する箔状または板状の弁金属基体7を有している。この弁金属基体7の表面は、表面積を増やすべく粗面化(拡面化)されてポーラス状になっている。弁金属基体7の金属材料としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ニオブ及びジルコニウムのいずれか或いはこれらの合金が使用される。
【0015】
また、弁金属基体7の表面には、化成処理(陽極酸化)によって絶縁性の酸化アルミニウム皮膜(誘電体層)8が形成されている。このような弁金属基体7の一端側領域は、陽極領域7aを構成している。また、弁金属基体7の他の領域は、表面の粗面化構造が保持された状態となっており、陰極形成領域7bを構成している。
【0016】
化成処理された弁金属基体7における陽極領域7aと陰極形成領域7bとの境界部分の表面には、上記のレジスト層6が形成されている。レジスト層6は、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の絶縁樹脂で形成されている。
【0017】
化成処理された弁金属基体7の陰極形成領域7b上には、導電性高分子化合物を含む固体電解質層9が形成されている。この固体電解質層9は、弁金属基体7の粗面化によって形成された微細穴7cに入り込んだ状態となっている。固体電解質層9を形成する導電性高分子としては、化学酸化重合や電解重合等による合成が可能なものであれば特に制限はなく、例えばポリチオフェン、ポリピロール等が挙げられる。固体電解質層9の厚さは、例えば10μm程度である。
【0018】
固体電解質層9上には、陰極部5を形成する電極層10が形成されている。電極層10は、固体電解質層9上に順に積層されたカーボンペースト層11及び銀ペースト層12からなっている。カーボンペースト層11の厚さは、例えば3μm程度であり、銀ペースト層12の厚さは、例えば10μm程度である。
【0019】
各コンデンサ素子2の陽極部4同士は、導電性を有する金属金具12を介して電気的に接続されている。金属金具12は、例えば鉄、ニッケル、銅のいずれか又はこれらの合金等で形成されている。また、金属金具12は、基板またはリードフレーム上の陽極端子(図示せず)に接続される。金属金具12と各陽極部4及び陽極端子とは、レーザ溶接等により接合される。
【0020】
また、各コンデンサ素子2の陰極部5同士は、導電性接着剤13により電気的に接続されている。導電性接着剤13としては、例えば銀−エポキシ系接着剤が用いられる。また、最下層のコンデンサ素子2の陰極部5は、導電性接着剤13により基板またはリードフレーム上の陰極端子(図示せず)に接着される。
【0021】
次に、上述した固体電解コンデンサ1を製造する方法について、図3に示すフローチャートにより説明する。
【0022】
まず、箔状の弁金属基体7を用意し、例えばエッチングにより弁金属基体7の表面を粗面化する。そして、化成処理(陽極酸化)によって弁金属基体7の表面に誘電体層8を形成する(図3の工程101)。化成処理としては、例えばアジピン酸アンモニウム水溶液中に弁金属基体7を浸漬させた状態で、所望の電圧を印加して陽極酸化を生じさせ、誘電体厚みを得る。
【0023】
続いて、その化成処理が施された弁金属基体7を打ち抜き加工することにより、図4(a)に示すような形状の弁金属基体7(弁金属基体7Aとする)を得る(図3の工程102)。この弁金属基体7Aは、帯状部14と、この帯状部14の一側に所定の間隔をもって一体に形成された複数(ここでは5つ)の素子形成部15とからなっている。このとき、打ち抜き加工を用いて弁金属基体7Aを作るので、弁金属基体7Aの形状及び寸法等を高精度に仕上げることができる。
【0024】
そして、弁金属基体7Aにおける上記の打ち抜き加工が施された加工面に対して化成処理(再化成処理)を行う(図3の工程103)。この再化成処理としては、上記の工程101と同様の方法で実施する。
【0025】
続いて、図4(b)に示すように、スクリーン印刷法等により各素子形成部15の一部領域にエポキシ樹脂等を塗布して、レジスト層6を形成する(図3の工程104)。これにより、各素子形成部15には、レジスト層6により上記の陽極領域7aと陰極形成領域7bとが区画されることとなる。なお、陽極領域7aは、レジスト層6に対して各素子形成部15の根元側(帯状部14側)に形成され、陰極形成領域7bは、レジスト層6に対して各素子形成部15の先端側に形成される。
【0026】
続いて、図5に示すようなホルダ16により2枚の弁金属基体7Aを保持する(図3の工程105)。ホルダ16は、本体部材17と、この本体部材17に対して着脱自在に取り付けられた2つの固定部材18とを有し、本体部材17と各固定部材18とで例えば2枚の弁金属基体7の帯状部14をそれぞれ挟み込んで保持する(図8参照)。ホルダ16の材料としては、軽量化を考慮してアルミニウムを使用するのが望ましいが、特にこれには限られない。
【0027】
本体部材17は、板状部19と、この板状部19上に設けられ、板状部19の長手方向に沿って延在する凸部20とからなっている。板状部19の上面における凸部20の左右両側領域は、弁金属基体7Aの帯状部14における素子形成部15の反対側のエッジ(以下、帯状部14の基端エッジ)14aに係合する位置決め部19aとなっている(図7(a)参照)。凸部20の左右両側面は、帯状部14の表面(主面)14bに係合する押さえ面20aとなっている。凸部20の両端側には、各固定部材18に対して位置合わせするためのピン21がそれぞれ押さえ面20aから突出するように設けられている。
【0028】
固定部材18は、帯状部14を凸部20の押さえ面20aに対して押さえる部材であり、板状部19の各位置決め部19a上に載置されている。固定部材18の両端側には、本体部材17の各ピン21が入り込むピン穴22がそれぞれ形成されている。
【0029】
また、図5及び図6に示すように、凸部20の両端側における各ピン21の内側には、永久磁石23がそれぞれ設けられている。各永久磁石23は、凸部20の両側面(押さえ面)20aの表面部に埋め込まれている。固定部材18の両端側における各ピン穴22の内側には、永久磁石24が本体部材17の永久磁石23と対向するように設けられている。各永久磁石24は、固定部材18における凸部20側の側面の表面部に埋め込まれている。永久磁石23,24は、互いに対向する側が異極となるように配置されている。これにより、固定部材18を凸部20に近づけると永久磁石23,24同士が吸着されるため、簡単な構造で固定部材18を本体部材17に対して着脱自在にすることができる。
【0030】
なお、凸部20及び固定部材18のいずれか一方には、永久磁石の代わりに、永久磁石に吸着可能な鉄等の磁性体を設けても良い。
【0031】
また、凸部20の両端部における両側面(押さえ面)20a側には、テーパ状の切り欠き(面取り)25が形成されている。各固定部材18の両端部における凸部20側には、テーパ状の切り欠き(面取り)26が形成されている。これらの切り欠き25,26は、固定部材18が凸部20に吸着固定されている状態において、凸部20と各固定部材18との境界部分にそれぞれ穴部27を形成するものである。各穴部27は、固定部材18を凸部20から強制的に引き離すための隙間形成部材28(図7参照)が挿入される。
【0032】
なお、切り欠き25を凸部20の一端部のみに形成し、切り欠き26を固定部材18の一端部のみに形成しても良い。また、切り欠き25,26のいずれか一方については、必ずしも設けなくても良い。
【0033】
このように構成されたホルダ16に弁金属基体7Aを保持させる場合には、まず図7に示すように、隙間形成部材28をホルダ16の一端側または両端側から本体部材17の凸部20と固定部材18との間に差し込むことにより、固定部材18を凸部20に対して開いて、凸部20と固定部材18との間に若干の隙間を形成する。このとき、隙間形成部材28をホルダ16の穴部27(切り欠き25,26)に挿入することにより、凸部20と固定部材18との間に隙間形成部材28を容易に差し込むことができる。
【0034】
そして、弁金属基体7Aの各素子形成部15が上側となるように弁金属基体7Aを本体部材17に対して立てた状態で、凸部20と固定部材18との隙間に上から弁金属基体7の帯状部14を差し込み、帯状部14の基端エッジ14aを本体部材17の板状部19の上面(位置決め部)19aに突き当てる。なお、図7(a)では、固定部材18を省略してある。これにより、弁金属基体7Aが本体部材17に対して位置決めされる。
【0035】
このとき、弁金属基体7Aは、上述した打ち抜き加工によって、帯状部14の基端エッジ14aが素子形成部15の配列方向に対して平行に延びるように高精度に作り上げられている。従って、各素子形成部15は、本体部材17に対して傾くことなく水平方向に真っ直ぐ位置決めされるようになる。
【0036】
このように弁金属基体7Aが本体部材17に対して位置決めされた状態で、凸部20と固定部材18との間から隙間形成部材28を抜き出すと、永久磁石23,24同士の吸着力により固定部材18が凸部20に対して閉じられる。これにより、図8に示すように、固定部材18により帯状部14が凸部20の押さえ面20aに押さえ付けられるため、帯状部14が凸部20と固定部材18とに挟み込まれた状態になり、弁金属基体7Aがホルダ16に保持される。
【0037】
次いで、ホルダ16に保持された弁金属基体7Aの各素子形成部15の陰極形成領域7b上に、固体電解質層9を形成する。具体的には、図9に示すように、弁金属基体7Aの各素子形成部15が下側を向くように、ホルダ16をひっくり返した状態で、重合液Pが入った液槽29の上端にホルダ16の板状体19を載せて、各素子形成部15の陰極形成領域7bを重合液Pに浸漬させる(図3の工程106)。このとき、上述したようにホルダ16により弁金属基体7Aを保持した状態では、各素子形成部15がホルダ16に対して傾くことが無いので、各素子形成部15が重合液Pの液面に対して傾くこと無く水平状態に維持される。このため、重合液Pは、各素子形成部15の陰極形成領域7b全体に確実に付着するようになる。
【0038】
ここで、重合液Pは、重合により高分子電解質を形成するためのモノマーと、このモノマーの酸化重合を促進するための酸化剤とを含んでいる。モノマーとしては、重合により導電性ポリマーとなり得るチオフェン系化合物、ピロール系化合物等が挙げられる。酸化剤としては、ヨウ素、臭素等のハロゲン化物、五フッ化珪素等の金属ハロゲン化物等が挙げられる。また、重合液Pには、上記のモノマー及び酸化剤を均一に分散させるための溶媒が含まれていても良い。このような溶媒としては、エタノール、ブタノール、水やこれらの混合溶媒等が挙げられる。さらに、重合液Pには、ポリマー層に導電性を付与するためのドーピング材料が含まれていても良い。このようなドーピング材料としては、パラトルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸や、無機スルホン酸等が挙げられる。
【0039】
次いで、ホルダ16を持ち上げることで、各素子形成部15を重合液Pから引き上げ、各素子形成部15に付着した重合液Pを熱処理等により乾燥させた後、各素子形成部15の固体電解質層9上にカーボンペースト層11を形成する(図3の工程107)。このカーボンペースト層11の形成は、固体電解質層9の形成方法と同様に浸漬法を用いて行ったり、スクリーン印刷法及びスプレー塗布法等によって行う。
【0040】
続いて、各素子形成部15のカーボンペースト層11上に銀ペースト層12を積層することにより、電極層10を形成する(図3の工程108)。銀ペースト層12の形成は、カーボンペースト層11の形成方法と同様にして行う。これにより、各弁金属基体7Aにおいて、複数(ここでは5個)のコンデンサ素子2が一括して形成されることになる。
【0041】
次いで、弁金属基体7Aの帯状部14から各コンデンサ素子2を切断して切り離し、これらのコンデンサ素子2を積層して積層体3を形成する(図3の工程109)。これにより、固体電解コンデンサ1が完成する。
【0042】
以上のように本実施形態にあっては、本体部材17と固定部材18とを有するホルダ16を用意し、弁金属基体7Aの帯状部14の基端エッジ14aを本体部材17の板状部19の上面19aに突き当てて位置決めし、その状態で、固定部材18により帯状部14を本体部材17の凸部20の押さえ面20aに対して押さえ付けることにより、弁金属基体7Aを保持固定する。これにより、弁金属基体7Aの帯状部14をホルダに溶接したり、保持用突起及び保持穴を利用して弁金属基体7Aをホルダに保持させる場合と異なり、弁金属基体7Aをホルダ16に対して容易に且つ精度良く位置決めして保持させることができる。
【0043】
従って、ホルダ16により弁金属基体7Aを保持した状態で、浸漬法等により弁金属基体7Aの各素子形成部15に固体電解質層9及び電極層10を順次積層する際に、固体電解質層9及び電極層10を各素子形成部15に対してほぼ均等になるように精度良く形成することができる。その結果、複数のコンデンサ素子2を積層して、固体電解コンデンサ1を完成させたときに、コンデンサ特性を安定化させることが可能となる。
【0044】
また、帯状部14の基端エッジ14aを板状部19の上面19aに突き当てるという簡単な作業で、弁金属基体7Aをホルダ16に対して精度良く位置決め可能であるため、3方向に対して位置決めするための位置センサを特に設けなくても、弁金属基体7Aをホルダ16に保持させる動作の自動化を簡単に且つ安価に実現することが可能となる。
【0045】
さらに、弁金属基体7Aの帯状部14はコンデンサ素子2の形成に直接寄与しないため、帯状部14から各コンデンサ素子2を切り離した後には、帯状部14は不要となるが、この帯状部14には保持用穴が形成されないので、帯状部14の幅(面積)を必要以上に大きくしなくても、所望の強度が確保されるようになる。従って、弁金属基体7Aを形成する材料の使用量を抑えることが可能となる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、弁金属基体7Aの各素子形成部15に固体電解質層9を形成する工程以降の処理について、弁金属基体7Aをホルダ16に保持させた状態で行ったが、その前に行う弁金属基体7Aの再化成処理等についても、弁金属基体7Aをホルダ16に保持させた状態で行っても良い。
【0047】
また、上記実施形態では、ホルダ16を構成する本体部材17と固定部材18とを永久磁石23,24により吸着固定するものとしたが、ボルトやフック(係止)手段等を用いて、固定部材18を本体部材17に対して着脱自在としても良い。
【0048】
さらに、上記実施形態では、弁金属基体7Aの帯状部14の基端エッジ14aを本体部材17の板状部19の上面19aに当接させることで、弁金属基体7Aをホルダ16に対して位置決めするようにしたが、これ以外にも、例えば帯状部14の基端エッジ14aに係合する位置決め用穴部を板状部19に形成し、基端エッジ14aを当該位置決め用穴部の底に当接させても良い。
【0049】
また、上記実施形態では、ホルダ16において固定部材18を2つ設け、本体部材17と各固定部材18とで弁金属基体7Aの帯状部14を挟むようにしたが、固定部材18は1つであっても勿論構わない。この場合には、本体部材17の形状を例えば断面L字状とすれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係わる固体電解コンデンサの製造方法の一実施形態により製造される固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図2】図1に示すコンデンサ素子の一部構造を詳細に示す拡大断面図である。
【図3】図1に示す固体電解コンデンサを製造する手順を示すフローチャートである。
【図4】図1に示すコンデンサ素子を作成する工程の一部を示す図である。
【図5】図1に示すコンデンサ素子の作製に使用されるホルダの分解斜視図である。
【図6】図5に示すホルダの水平方向断面図である。
【図7】図5に示すホルダに弁金属基体を保持させる方法を示す側面図(一部の部材を省略)及び水平方向断面図である。
【図8】図5に示すホルダに弁金属基体が保持された状態を示す斜視図である。
【図9】図5に示すホルダに保持された弁金属基体の各素子形成部に固体電解質層を形成する方法を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1…固体電解コンデンサ、7,7A…弁金属基体、7b…陰極領域、9…固体電解質層、10…電極層、14…帯状部、14a…基端エッジ(素子形成部の反対側のエッジ)、14b…表面(主面)、15…素子形成部、16…ホルダ、17…本体部材、18…固定部材、19…板状部、19a…上面(位置決め部)、20…凸部、20a…側面(押さえ面)、23,24…永久磁石、25,26…切り欠き、28…隙間形成部材(隙間を形成するための部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化成処理された弁金属基体の陰極領域上に固体電解質層及び電極層を順に積層してなる固体電解コンデンサの製造方法であって、
前記化成処理された弁金属基体として、帯状部の一側に前記陰極領域を含む素子形成部が複数形成されているものを準備する工程と、
前記弁金属基体をホルダにより保持する工程と、
前記ホルダに保持された前記弁金属基体における前記各素子形成部の前記陰極領域上に前記固体電解質層及び前記電極層を順次形成する工程とを含み、
前記ホルダとして、前記帯状部における前記素子形成部の反対側のエッジに係合する位置決め部と前記帯状部の主面に係合する押さえ面とを有する本体部材と、前記帯状部を前記押さえ面に対して押さえる固定部材とを有するものを用い、
前記弁金属基体を前記ホルダにより保持するときには、前記帯状部における前記素子形成部の反対側のエッジを前記位置決め部に当接させ、その状態で、前記固定部材により前記帯状部を前記押さえ面に対して押さえ付けることを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項2】
前記ホルダとして、前記固定部材が前記本体部材に磁石により着脱自在に取り付けられているものを用い、
前記弁金属基体を前記ホルダにより保持するときには、前記固定部材を前記本体部材から引き離すことで前記本体部材と前記固定部材との間に形成された隙間に前記帯状部を入れて、前記帯状部における前記素子形成部の反対側のエッジを前記位置決め部に当接させることを特徴とする請求項1記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項3】
前記ホルダとして、前記固定部材及び前記本体部材の少なくとも一方の端部における前記固定部材と前記本体部材との境界側部分に切り欠きが形成されているものを用い、
前記弁金属基体を前記ホルダにより保持するときには、前記隙間を形成するための部材を前記切り欠きから前記固定部材と前記本体部材との間に差し込んで、前記固定部材を前記本体部材から引き離すことを特徴とする請求項2記載の固体電解コンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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