説明

固体電解コンデンサ及びその製造方法

【課題】簡単な構造でコンデンサ素子の耐圧性の向上と低ESL化の双方を実現できる固体電解コンデンサ、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】固体電解コンデンサ1では、コンデンサ素子2の陰極部13を積層体3の底部から頂部に向かって流れる電流の経路と、庇部22から連結部21を通って陰極端子7に流れる電流の経路とが互いに逆方向になることにより、簡単な構造で相互インダクタンス効果による低ESL化が図られる。また、樹脂モールド4内に複数の積層体3が配置されることで、電流の経路が互いに逆方向となる箇所が複数存在するため、低ESL化がより促進される。さらに、固体電解コンデンサ1では、庇部22と連結部21とによって積層体3が囲われるので、樹脂注入の際のコンデンサ素子2の耐圧性を十分に確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解コンデンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の固体電解コンデンサとして、例えば特許文献1に記載のチップ形固体電解コンデンサがある。この従来のチップ形固体電解コンデンサ素子は、リードフレームとして、コンデンサ素子の陽極部が接合されると共に実装用の陽極端子部を備えた陽極リードフレームと、コンデンサ素子の陰極部が接合されると共に実装用の陰極端子部を備えた陰極リードフレームとを備えている。
【0003】
このチップ形固体電解コンデンサ素子では、リードフレームによって一対の陽極端子及び陰極端子を有する2端子のコンデンサ素子を多端子変換しており、基板実装時の多端子接続を可能としている。また、陽極リードフレームを流れる電流の向きと、陰極リードフレームとを流れる電流の向きとが逆方向になることにより、低ESL化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−80423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来の固体電解コンデンサでは、最終的にコンデンサ素子と陽極リードフレームと陰極リードフレームとを絶縁性の外装樹脂で封止している。封止方法としては、耐熱性・耐湿性に優れる利点があることから、例えばコンデンサ素子を収容した型に封止用の樹脂を高温に溶かして流し込むトランスファーモールドを用いることが好ましい。しかしながら、従来の固体電解コンデンサの構造では、樹脂注入の際に剥き出しとなっているコンデンサ素子に過剰な圧力がかかりやすいといった問題があった。
【0006】
一方、上述のような端子変換構造を備えた固体電解コンデンサでは、製造コスト等の観点から、より簡単な構造で低ESL化を図ることができる構造が望まれている。そのため、簡単な構造でコンデンサ素子の耐圧性の確保と低ESL化の双方を実現できる構造の実現が課題となっている。
【0007】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、簡単な構造でコンデンサ素子の耐圧性の確保と低ESL化の双方を実現できる固体電解コンデンサ、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の解決のため、本発明に係る固体電解コンデンサは、陽極部及び陰極部を有するコンデンサ素子を有する素子部と、素子部を被覆すると共に電気絶縁性を有する樹脂モールドと、陽極部及び陰極部に接続され、樹脂モールドの底部から突出する複数対の陽極端子及び陰極端子を、を備えた固体電解コンデンサであって、素子部は、樹脂モールド内に所定の間隔をもって複数配置され、陰極端子は、素子部の頂部に位置するコンデンサ素子の陰極部の少なくとも一部を覆うように当該陰極部に接続された庇部と、素子部の側面と離間した状態で庇部と陰極端子との間に延在する連結部とによって陰極部と電気的に接続されていることを特徴としている。
【0009】
この固体電解コンデンサでは、コンデンサ素子の陰極部を素子部の底部から頂部に向かって流れる電流の経路と、庇部から連結部を通って陰極端子に流れる電流の経路とが互いに逆方向になることにより、簡単な構造で相互インダクタンス効果による低ESL化が図られる。また、樹脂モールド内に複数の素子部が配置されることで、電流の経路が互いに逆方向となる箇所が複数存在するため、低ESL化がより促進される。さらに、この固体電解コンデンサでは、庇部と連結部とによって素子部が囲われるので、樹脂注入の際のコンデンサ素子の耐圧性を十分に確保できる。このため、トランスファーモールドによって素子部の被覆を行う樹脂モールドを形成できるので、耐熱性・耐湿性に優れたものとなる。
【0010】
また、各素子部において、コンデンサ素子の陽極端子には、金属部材が接続されており、陽極端子は、金属部材と、非導電性材料を介した状態で素子部の底部側に固定された導電板とによって陽極部と電気的に接続されていることが好ましい。このような構成により、簡単な構造で2端子のコンデンサ素子を多端子変換することが可能となる。
【0011】
また、陽極端子及び陰極端子は、素子部の側面側において交互に配列されていることが好ましい。この場合、陽極端子を流れる電流の経路と、陰極端子を流れる電流の経路とが互いに逆方向になることにより、一層の低ESL化が図られる。
【0012】
また、庇部は、隣接する素子部の頂部に位置するコンデンサ素子の陰極部同士を連結していることが好ましい。この場合、隣接する素子部間の隙間が庇部で覆われるので、樹脂注入の際のコンデンサ素子の耐圧性を一層確保できる。
【0013】
また、本発明に係る固体電解コンデンサの製造方法は、上記の固体電解コンデンサの製造方法であって、平板状のベース部と、ベース部から突出する陰極端子と、陰極端子から立ち上がる連結部と、連結部の先端部に接続される庇部とがパターン形成された第1の導電板を用意する工程と、ベース部を載置可能な第1の載置部と、複数の素子部を載置可能な第2の載置部と、第2の載置部から突出する陽極端子とがパターン形成された第2の導電板を用意する工程と、第2の載置部に非導電性材料を介して複数の素子部を固定する工程と、ベース部が第1の載置部と一致するように第1の導電板を第2の導電板に重ね合わせて接合する工程と、庇部と素子部の頂部に位置するコンデンサ素子の陰極部との間に導電性材料を充填する工程と、陽極端子及び陰極端子が突出するように、電気絶縁性を有する樹脂モールドで素子部を被覆する工程とを備えたことを特徴としている。
【0014】
この固体電解コンデンサの製造方法では、陽極端子がパターン形成された第2の導電板に、陰極端子、連結部、及び庇部がパターン形成された第1の導電板を重ね合わせて接合する簡単な手順で上述した構成を有する固体電解コンデンサを作製することができる。得られた固体電解コンデンサでは、各コンデンサ素子の陰極部を素子部の底部から頂部に向かって流れる電流の経路と、庇部から連結部を通って陰極端子に流れる電流の経路とが互いに逆方向になることにより、簡単な構造で相互インダクタンス効果による低ESL化が図られる。また、樹脂モールド内に複数の素子部が配置されることで、電流の経路が互いに逆方向となる箇所が複数存在するため、低ESL化がより促進される。さらに、庇部と連結部とによって素子部が囲われるので、樹脂注入の際のコンデンサ素子の耐圧性を十分に確保できる。このため、トランスファーモールドによって素子部の被覆を行う樹脂モールドを形成できるので、耐熱性・耐湿性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な構造でコンデンサ素子の耐圧性の確保と低ESL化の双方を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る固体電解コンデンサ素子の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1におけるII−II線断面図である。
【図3】図1におけるIII−III線断面図である。
【図4】本発明に係る固体電解コンデンサ素子の製造方法の一実施形態に用いる一方のリードフレームを示す斜視図である。
【図5】本発明に係る固体電解コンデンサ素子の製造方法の一実施形態に用いる他方のリードフレームを示す斜視図である。
【図6】図5に示したリードフレームに積層体を載置した状態を示す斜視図である。
【図7】図4に示したリードフレームの一部を切断加工した状態を示す斜視図である。
【図8】図7に示したリードフレームを折り曲げ加工した状態を示す斜視図である。
【図9】図6及び図8の後続の工程を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る固体電解コンデンサ素子の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る固体電解コンデンサ及びその製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る固体電解コンデンサの一実施形態を示す斜視図である。また、図2は、図1におけるII−II線断面図であり、図3は、そのIII−III線断面図である。図1〜図3に示すように、固体電解コンデンサ1は、複数のコンデンサ素子2を積層してなる複数の積層体(素子部)3と、電気絶縁性を有し、積層体3を被覆する樹脂モールド4と、樹脂モールド4の底部から突出する複数の陽極端子6及び陰極端子7とを備えている。本実施形態では、樹脂モールド4内に4体の積層体3がマトリクス状に配置されているものを例示する。
【0019】
積層体3を構成する各コンデンサ素子2は、箔状または板状のアルミニウム基体11を有している。アルミニウム基体11の表面は、その表面積を増大させるため、粗面化によってポーラス状となっている。アルミニウム基体11のポーラス状の表面には、化成処理によって絶縁性の酸化アルミニウム被膜(不図示)が形成されている。
【0020】
化成処理されたアルミニウム基体11の一端側領域は、表面の粗面化構造が破壊された状態となっており、陽極部12が形成されている。また、アルミニウム基体11の他端側領域の表面には、導電性高分子化合物を含む固体高分子電解質層、グラファイトペースト層、及び銀ペースト層が順に形成されることにより、陰極部13が形成されている。陽極部12と陰極部13との間の領域には、レジスト部14が形成されている。このレジスト部14は、例えばスクリーン印刷法を用いてエポキシ樹脂等を塗布することで形成されている。
【0021】
各コンデンサ素子2の陽極部12同士は、導電性を有する金属部材16を介して電気的に接続されている。金属部材16は、例えば鉄、ニッケル、銅及びこれらの合金等で形成され、各陽極部12とは、例えばレーザ溶接によって接合されている。また、各コンデンサ素子2の陰極部13間には、導電性接着層17が介在している。導電性接着層17は、陰極部13同士を電気的に接続するものであり、例えば銀−エポキシ系接着剤が用いられる。
【0022】
陽極端子6及び陰極端子7は、樹脂モールド4において、積層体3の幅方向に対応する側面4aの底部と、当該側面4aに対向する側面4bの底部とから所定の間隔をもってそれぞれ突出している。陽極端子6及び陰極端子7は、交互に配列されている。
【0023】
具体的には、図1の手前側から見て、側面4a側には、陽極端子6a、陰極端子7a、陽極端子6b、陰極端子7b、陽極端子6cが順に配置されている。また、図1の手前側から見て、側面4b側には、陽極端子6d、陰極端子7c、陽極端子6e、陰極端子7d、陽極端子6fが順に配置されている。
【0024】
なお、図1において、陽極端子6a〜6f及び陰極端子7a〜7dは、後述する製造方法により、2枚の導電板が重ね合わされて形成されているが、構成上は1枚の導電板によって形成されていてもよい。陰極端子7a〜7dの幅は、陽極端子6a〜6fの幅に比べて2倍程度に大きくなっていてもよい。
【0025】
各コンデンサ素子2の陽極部12と陽極端子6との接続には、陽極端子6と一体的に形成された導電板18が用いられている。導電板18は、積層体3を2×2のマトリクス状に配置可能な長方形状をなしており、非導電性接着層19を介した状態で各積層体3の底部側に固定されている。
【0026】
陽極端子6a〜6fの基端は、導電板18の側面に接続され、導電板18の端部は、金属部材16の下端部に接続されている。これにより、各コンデンサ素子2の陽極部12と陽極端子6とは、互いに電気的に接続されている。非導電性接着層19の形成には、例えば導電性フィラーの入っていないエポキシ系樹脂が用いられる。
【0027】
また、各コンデンサ素子2の陰極部13と陰極端子7との接続には、導電板18と同じ材料で陰極端子7と一体的に形成された連結部21と庇部22とが用いられている。連結部21は、図2に示すように、積層体3の幅方向の側面3aから離間した状態で陰極端子7a〜7dの基端部からそれぞれ立ち上がり、積層体3の最上層に位置するコンデンサ素子2の陰極部13に向かって伸びている。
【0028】
庇部22は、各積層体3の最上層に位置するコンデンサ素子2の陰極部13の大部分を覆うように帯状に形成されている。庇部22は、陰極端子7a〜7dから伸びる連結部21の上端部にそれぞれ繋がると共に、導電性接着剤層20を介して最上層のコンデンサ素子2の陰極部13に接続されている。このような連結部21及び庇部22により、各コンデンサ素子2の陰極部13と陰極端子7とは、互いに電気的に接続されている。また、連結部21及び庇部22は、積層体3を覆う構造をなしているので、樹脂注入の際のコンデンサ素子2の耐圧性を高める保護部材としても機能する。
【0029】
積層体3を封止する樹脂モールド4は、例えばエポキシ樹脂を用いたトランスファーモールドによって形成される。樹脂モールド4は、積層体3、陽極端子6a〜6fの基端部、陰極端子7a〜7dの基端部、連結部21、及び庇部22を覆うように略直方体形状をなしている。
【0030】
続いて、上述した構成を有する固体電解コンデンサ1の製造方法について説明する。なお、積層体3の作製は、公知の技術を適用可能であり、詳細な説明を省略する。
【0031】
固体電解コンデンサ1の製造にあたっては、まず、2種類のリードフレーム(第1の導電板)31及びリードフレーム(第2の導電板)41を用意する。リードフレーム31,41は、例えばCu、Fe、Ni、或いはこれらの合金によって形成され、打抜型を用いることによって以下に示すパターンが形成されている。
【0032】
一方のリードフレーム31には、図4に示すように、帯状をなすベース部32と、ベース部32の両側面から所定の間隔をもって交互に突出する陽極端子相当部33a〜33f及び陰極端子相当部34a〜34dと、陰極端子相当部34a〜34dから伸びる連結部相当部35とがパターン形成されている。
【0033】
また、リードフレーム31には、陰極端子相当部34aから伸びる連結部相当部35の先端部と陰極端子相当部34bから伸びる連結部相当部35の先端部とを結ぶように形成された第1の帯状部36aと、陰極端子相当部34cから伸びる連結部相当部35の先端部と陰極端子相当部34dから伸びる連結部相当部35の先端部とを結ぶように形成された第2の帯状部36bとがパターン形成されている。
【0034】
他方のリードフレーム41には、図5に示すように、ベース部32を載置可能な帯状の第1の載置部42aと、第1の載置部42a,42a間に配置され、複数の積層体3を載置可能な帯状の第2の載置部42b(導電板18に相当する部分)と、第2の載置部42bの側面と隣接する第1の載置部42aの側面とを結ぶ陽極端子相当部43a〜43fと、陽極端子相当部43a〜43fと交互に第1の載置部42aの側面から突出する陰極相当部44a〜44dとがパターン形成されている。陰極相当部44a〜44dの先端部は、第2の載置部42bの側面に対して離間した状態となっている。
【0035】
また、リードフレーム31の縁部には、ベース部32に対応する位置を含むように、円形の位置決め用孔37が等間隔に設けられている。同様に、リードフレーム41の縁部には、第1の載置部42aに対応する位置と、第2の載置部に対応する位置とに、リードフレーム31の位置決め用孔37と同径の位置決め用孔47が等間隔に設けられている。
【0036】
次に、図6に示すように、リードフレーム41の第2の載置部42bに、金属部材16を固定済みの積層体3を2×2のマトリクス状に載置する。このとき、積層体3の最下層に位置するコンデンサ素子2の陰極部13は、非導電性接着層19を介して第2の載置部42bに固定し、各陽極部12を接続する金属部材16の下端部は、例えばYAGレーザ溶接やハンダ接合によって第2の載置部42bに固定する。また、積層体3の最上層に位置するコンデンサ素子2の陰極部13の表面には、導電性接着層20を形成する。
【0037】
続いて、図7に示すように、リードフレーム31において、第1の帯状部36aの中間部分と第2の帯状部36bの中間部分とを切断し、陰極端子相当部34a〜34dに繋がる庇部相当部39を形成する。庇部相当部39を形成した後、リードフレーム31の連結部相当部35を上方に折り曲げ、連結部相当部35が陰極端子相当部34a〜34dの先端部から立ち上がるように加工する。これにより、連結部21が形成される。
【0038】
さらに、陰極端子相当部34a〜34dと概ね平行になるように、各連結部21の先端部で庇部相当部39を折り曲げ、庇部22を形成する。その後、位置決め用孔37を含むようにリードフレーム31の縁部を切断し、図8に示すように、ベース部32、陽極端子相当部33a〜33f、陰極端子相当部34a〜34d、連結部21、及び庇部22が一体となったフレーム体38を得る。
【0039】
次に、図9に示すように、位置決め用孔37と位置決め用孔47とが一致するようにしてリードフレーム41にフレーム体38を重ね合わせ、リードフレーム41の第1の載置部42aにフレーム体38のベース部32を載置する。これにより、陽極端子相当部33a〜33fと陽極端子相当部43a〜43fが互いに重なり合い、陰極端子相当部34a〜34dと陰極端子相当部44a〜44dが互いに重なり合う。また、連結部21の先端部に位置する庇部22が、導電性接着層20を介して積層体3の最上層に位置するコンデンサ素子2の陰極部13を覆うように固定される。
【0040】
次に、陽極端子相当部33a〜33fと陽極端子相当部43a〜43fとの重なり部分、及び陰極端子相当部34a〜34dと陰極端子相当部44a〜44dとの重なり部分を例えば抵抗溶接やYAGレーザ溶接によって接合し、陽極端子6a〜6d及び陰極端子7a〜7dを形成する。陽極端子6a〜6d及び陰極端子7a〜7dを形成した後、非導電性接着層19及び導電性接着層20を十分に乾燥・硬化させる。
【0041】
この後、例えばトランスファーモールドによって積層体3を囲う所定の型にエポキシ樹脂を注入し、積層体3、陽極端子6a〜6fの基端部、陰極端子7a〜7dの基端部、連結部21、及び庇部22を覆うように略直方体形状の樹脂モールド4を形成する。そして、陽極端子6a〜6fの先端部及び陰極端子7a〜7dの先端部を切断し、これらを第1の載置部42aとベース部32との重なり部分から切り離すことにより、図1〜図3に示した固体電解コンデンサ1が完成する。
【0042】
以上説明したように、固体電解コンデンサ1では、コンデンサ素子2の陰極部13を積層体3の底部から頂部に向かって流れる電流の経路と、庇部22から連結部21を通って陰極端子7に流れる電流の経路とが互いに逆方向になることにより、簡単な構造で相互インダクタンス効果による低ESL化が図られる。また、樹脂モールド4内に複数の積層体3が配置されることで、電流の経路が互いに逆方向となる箇所が複数存在するため、低ESL化がより促進される。さらに、この固体電解コンデンサ1では、庇部22と連結部21とによって積層体3が囲われるので、樹脂注入の際のコンデンサ素子2の耐圧性を十分に確保できる。このため、トランスファーモールドによって積層体3の被覆を行う樹脂モールド4を形成できるので、耐熱性・耐湿性に優れたものとなる。
【0043】
また、各積層体3において、コンデンサ素子2の陽極端子6には、金属部材16が接続されており、陽極端子16は、金属部材16と、非導電性接着層19を介した状態で積層体3の底部側に固定された導電板18とによって陽極部12と電気的に接続されている。このような構成により、簡単な構造で2端子のコンデンサ素子を多端子変換することが可能となる。
【0044】
また、陽極端子6a〜6f及び陰極端子7a〜7dは、積層体3の側面側において交互に配列されている。このため、陽極端子6a〜6fを流れる電流の経路と、陰極端子7a〜7dを流れる電流の経路とが互いに逆方向になることにより、一層の低ESL化が図られる。
【0045】
また、上述した固体電解コンデンサ1の製造方法では、陽極端子相当部43a〜43fがパターン形成されたリードフレーム41に、陰極端子相当部34a〜34d、連結部21、及び庇部22がパターン形成されたリードフレーム31を重ね合わせて接合する簡単な手順で固体電解コンデンサ1を作製することができる。
【0046】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上述した実施形態では、積層体3の最下層に位置するコンデンサ素子2の陰極部13と導電板18との間に非導電性接着層19を介在させているが、非導電性接着層19を用いる代わりに、導電板18の表面に予めレジストを塗布しておいてもよい。また、リードフレーム31,41は、表面に金属めっきを施したものであってもよい。さらに、素子部は、上述した積層体3のような構成に限られず、アルミニウム以外の焼結体からなるものであってもよい。
【0047】
また、上述した実施形態では、庇部22は、積層体3ごとに分離されているが、例えば図10に示すように、隣接する積層体3の頂部に位置するコンデンサ素子2の陰極部13同士を連結するように形成されていてもよい。この場合、隣接する積層体3,3間の隙間が庇部22で覆われるので、樹脂注入の際のコンデンサ素子2の耐圧性を一層確保できる。
【符号の説明】
【0048】
1…固体電解コンデンサ、2…コンデンサ素子、3…積層体(素子部)、3a…側面、4…樹脂モールド、6…陽極端子、7…陰極端子、12…陽極部、13…陰極部、16…金属部材、17…導電性接着層、18…導電板、19…非導電性接着層、20…導電性接着層、21…連結部、22…庇部、31…リードフレーム(第1の導電板)、32…ベース部、34a〜34d…陰極端子相当部、35…連結部相当部、39…庇部相当部、41…リードフレーム(第2の導電板)、42a…第1の載置部、42b…第2の載置部、43a〜43f…陽極端子相当部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極部及び陰極部を有するコンデンサ素子を有する素子部と、
前記素子部を被覆すると共に電気絶縁性を有する樹脂モールドと、
前記陽極部及び前記陰極部に接続され、前記樹脂モールドの底部から突出する複数対の陽極端子及び陰極端子を、を備えた固体電解コンデンサであって、
前記素子部は、前記樹脂モールド内に所定の間隔をもって複数配置され、
前記陰極端子は、前記素子部の頂部に位置する前記コンデンサ素子の前記陰極部の少なくとも一部を覆うように当該陰極部に接続された庇部と、前記素子部の側面と離間した状態で前記庇部と前記陰極端子との間に延在する連結部とによって前記陰極部と電気的に接続されていることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項2】
各素子部において、前記コンデンサ素子の前記陽極端子には、金属部材が接続されており、
前記陽極端子は、前記金属部材と、非導電性材料を介した状態で前記素子部の底部側に固定された導電板とによって前記陽極部と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記陽極端子及び前記陰極端子は、前記素子部の側面側において交互に配列されていることを特徴とする請求項1又は2記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
前記庇部は、隣接する前記素子部の頂部に位置する前記コンデンサ素子の前記陰極部同士を連結していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載の固体電解コンデンサの製造方法であって、
平板状のベース部と、前記ベース部から突出する陰極端子と、前記陰極端子から立ち上がる連結部と、前記連結部の先端部に接続される庇部とがパターン形成された第1の導電板を用意する工程と、
前記ベース部を載置可能な第1の載置部と、前記複数の素子部を載置可能な第2の載置部と、前記第2の載置部から突出する陽極端子とがパターン形成された第2の導電板を用意する工程と、
前記第2の載置部に非導電性材料を介して前記複数の素子部を固定する工程と、
前記ベース部が前記第1の載置部と一致するように前記第1の導電板を前記第2の導電板に重ね合わせて接合する工程と、
前記庇部と前記素子部の頂部に位置する前記コンデンサ素子の前記陰極部との間に導電性材料を充填する工程と、
前記陽極端子及び前記陰極端子が突出するように、電気絶縁性を有する樹脂モールドで前記素子部を被覆する工程とを備えたことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図6】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−198833(P2011−198833A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61334(P2010−61334)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)