説明

固体電解コンデンサ

【課題】固体電解コンデンサの高周波性能の良好なものが望まれているが、コンデンサ素子が多孔性焼結体の場合にはある程度の厚みを必要とするため高周波性能が低下しやすい。
【解決手段】弁作用金属の焼結体よりなる陽極基体の一端に、陽極部を残し、陽極部を除く残部の表面に誘電体酸化皮膜層、その上に半導体層、さらにその上に導電体層が順次形成されて導電体層形成部が形成された固体電解コンデンサ素子の複数個が、方向を揃えて並列に水平に隙間なく載置され且つ導電体層形成部および陽極部をそれぞれリードフレームに接合され、リードフレームの一部を残して樹脂封口されていることを特徴とする高周波性能(ESR)の優れた固体電解コンデンサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高周波性能(ESR)の良好な固体電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の固体電解コンデンサは、図3にその構造を斜視図として示してあるように、1個の固体電解コンデンサ素子2の表面に形成された導電体層3の一部と陽極リード4bをリードフレーム1に一対の対向して配置された凸部1a、1bに載置し、それぞれ接合した後、リードフレームの凸部の一部のみを残して樹脂で封口して外装部5を形成したものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平02−178912号公報
【特許文献2】特開平03−167816号公報
【特許文献3】特開平02−230707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年の電子機器の高周波化に対応して、固体電解コンデンサにおいても高周波性能(ESR)の良好なものが望まれているが、例えば固体電解コンデンサ素子が多孔性焼結体の場合、焼結体の強度を維持するためにある程度の厚みを必要とし、その結果、高周波性能(ESR)が良好でないという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前述した問題点を解決するためになされたものであって、その要旨は
[1] 弁作用金属の焼結体よりなる陽極基体の一端に、陽極部を残し、陽極部を除く残部の表面に誘電体酸化皮膜層、その上に半導体層、さらにその上に導電体層が順次形成されて導電体層形成部が形成された固体電解コンデンサ素子の複数個が、方向を揃えて並列に水平に隙間なく載置され且つ導電体層形成部および陽極部をそれぞれリードフレームに接合され、リードフレームの一部を残して樹脂封口されていることを特徴とする高周波性能(ESR)の優れた固体電解コンデンサ、
[2] 100KHzにおけるESRが優れている上記[1]に記載の固体電解コンデンサ、
[3] 弁作用金属がタンタルである上記[1]又は[2]に記載の固体電解コンデンサ、及び
[4] 半導体層が導電性高分子化合物である上記[1]ないし[3]のいずれかに記載の固体電解コンデンサを開発することにより上記の課題を解決した。
【発明の効果】
【0006】
一対の対向して配置されたリードフレームの凸部に複数個の固体電解コンデンサ素子が並列に載置、接合されており、結果として、陽極基体が複数個に分割されていることになり、陽極基体内部から導電体層を通して、リードフレームへ流れる電流の距離がある程度短くなるため、その間の抵抗値が小さくなり高周波性能(ESR)が良好になる。
本発明の固体電解コンデンサは、固体電解コンデンサ素子を複数個並列にリードフレームの一つの凸部に載置して接合しているので作製した固体電解コンデンサは高周波性能(ESR)が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の固体電解コンデンサを説明する一例を示す斜視図である。図1は、リードフレーム1に設けられている一対の対向して配置された凸部1a、1bに3個の固体電解コンデンサ素子2の表面にそれぞれ形成された導電体層3の一部と陽極部となる陽極リード4bが載置されており、前者は銀ペースト等で、後者は熔接等で接続した状態を示している。そしてリードフレームの一部を残して樹脂で封口して外装部5を形成している。
【0008】
3個の固体電解コンデンサ素子は、後述するように導電体層まで形成した後、リードフレームの凸部に方向を揃えて並列に載置することが肝要で、この場合、隙間なく載置することが、全体としての固体電解コンデンサの小型化のために好都合である。なお、リードフレームの一対の凸部に載置する固体電解コンデンサ素子は3個に限定されるものではなく、複数個である。また、リードフレームに対して垂直に固体電解コンデンサ素子を重ねて載置することは、全体としての固体電解コンデンサの高さが高くなるために不都合である。
【0009】
本発明を構成する固体電解コンデンサ素子は、以下のようにして作製される。まず、弁作用を有する陽極基体としては、例えばアルミニウム、タンタル、及びこれらを基質とする合金等、弁作用を有する金属がいずれも使用できる。そして陽極基体の形状としては、アルミニウムの板やタンタルの焼結体がある。
【0010】
陽極基体の表面に設ける誘電体酸化皮膜層は、弁作用金属の表面上に設けられた他の誘電体酸化物の層であってもよいが、特に弁作用金属自体の酸化物からなる層であることが好ましい。いずれの場合にも酸化物層を設ける方法としては、電解液を用いた陽極化成法など従来公知の方法を用いることができる。
【0011】
次に、誘電体酸化皮膜層上に半導体層を形成させるが、誘電体酸化皮膜層まで形成した部分の一部を図2に示したように陽極部4aとして設けるか、又は図1で示したようにこの部分の一部に陽極リード4bを接続して陽極部としておく。陽極リードを陽極部として使用するには、前述した以外に、例えば陽極基体を作製する時に、あらかじめ陽極リードの一部を陽極基体中に埋設しておいてもよい。
【0012】
そして半導体層は、これらの陽極部とした部分を除いて誘電体酸化皮膜層上に設けられ、さらにその上に導電体層を積層して導電体層形成部を形成する。誘電体酸化皮膜層上に設けられる半導体層の種類には特に制限は無く、従来公知の半導体層を使用できるが、とりわけ本願出願人の出願による二酸化鉛、又は二酸化鉛と硫酸鉛からなる半導体層(特開昭62−256423号公報、特開昭63−51621号公報)が、作製したコンデンサの高周波性能(ESR)が良好なために好ましい。
【0013】
また酸化剤と有機酸を用いて気相重合によってポリアニリン、ポリピロール等の電導性高分子化合物を半導体層として形成させる方法(特開昭62−47109号公報)や、タリウムイオン及び過硫酸イオンを含んだ反応母液から化学的に酸化第2タリウムを半導体層として析出させる方法(特開昭62−38715号公報)もその一例である。
【0014】
このような半導体層上には、例えばカーボンペースト及び/又は銀ペースト等の従来公知の導電ペーストを積層して導電体層が形成されている。図1はこのようにして形成された固体電解コンデンサ素子2に陽極リード4bが接続されており、図2は3個の固体電解コンデンサ素子2が一対のリードフレームの凸部1a、1bに載置された斜視図であり、固体電解コンデンサ素子2自身の一部分に陽極部4aが形成されている。
【0015】
このようにして形成された固体電解コンデンサ素子は前述したように、複数個方向を揃えて、一対の対向して配置されたリードフレームの凸部に載置後、接合され、図1及び図2の破線部で示したようにリードフレームの凸部1a、1bの一部を除いて封口され外装部5が形成される。外装部5の封口材として、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アリルエステル樹脂等が用いられ、トランスファー成型、射出成型、注型成型等によって封口作業が行われる。
【実施例】
【0016】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を説明する。
(実施例1、2)
りん酸水溶液中で化成処理して表面に誘電体酸化皮膜層を形成し、タンタルの陽極リードの一部を埋設したタンタル焼結体を陽極基体として用意しその寸法を表1に示した。次に酢酸鉛三水和物2.4モル/lの水溶液と過硫酸アンモニウム4.0モル/l水溶液の混合液に、前記陽極基体を浸漬し、60℃で20分放置した。この操作を4回行って、二酸化鉛と硫酸鉛からなる半導体層を形成した。次いで、半導体層上にカーボンペースト及び銀ペーストを順に積層して導電体層を形成した。
【0017】
一方、別に用意した厚さ0.1mm、材質が42アロイ、導電体層形成部が載る凸部の寸法を表1に並記した一対の凸部を有するリードフレームに、前記した導電体層まで形成した固体電解コンデンサ素子を3個、並列に載置し、導電体層形成部は銀ペーストで、陽極リードは熔接で各々電気的かつ機械的に接続した後、リードフレームの凸部の一部を残して、エポキシ樹脂で封口し、固体電解コンデンサを作製した。
【0018】
(実施例3、4)
実施例1、2で、陽極基体を表1に寸法を記載した長方形状で、りん酸アンモニウム水溶液で誘電体酸化皮膜層を形成したエッチングアルミニウム板にし、陽極基体の一部(端面から2mm)を陽極部とし、さらに半導体層を酢酸鉛三水和物2.0モル/l水溶液に陽極基体の一部を浸漬して、別に用意した白金陰極との間で電気化学的に形成して二酸化鉛にした以外は実施例1、2と同様に3個の固体電解コンデンサ素子を並列に接合して固体電解コンデンサを作製した。
【0019】
(比較例1)
実施例1でタンタル焼結体の大きさを表1に記載した大きさにし、リードフレームに固体電解コンデンサ素子を1個載置して接合した以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
【0020】
【表1】


以上作製した直後の固体電解コンデンサの性能を表2にまとめて示した。なお、全数値はn=20点の平均値である。
【0021】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の固体電解コンデンサは、近年の電子機器の高周波化に対応するものであり、固体電解コンデンサ本体の薄さと高周波性能(ESR)の良好なところから広範囲な分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】陽極リードを有する固体電解コンデンサ素子を3個並列にリードフレームに載置した状態を示す斜視図である。
【図2】固体電解コンデンサ素子自体に陽極部を有する固体電解コンデンサ素子を3個、リードフレームに載置した状態を示す斜視図である。
【図3】リードフレームに接続した固体電解コンデンサ素子を示す従来例の斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1 リードフレーム
1a リードフレームの一方の凸部
1b リードフレームのたほうの凸部
2 固体電解コンデンサ素子
3 導電体層
4a 陽極部
4b 陽極リード
5 外装部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁作用金属の焼結体よりなる陽極基体の一端に、陽極部を残し、陽極部を除く残部の表面に誘電体酸化皮膜層、その上に半導体層、さらにその上に導電体層が順次形成されて導電体層形成部が形成された固体電解コンデンサ素子の複数個が、方向を揃えて並列に水平に隙間なく載置され且つ導電体層形成部および陽極部をそれぞれリードフレームに接合され、リードフレームの一部を残して樹脂封口されていることを特徴とする高周波性能(ESR)の優れた固体電解コンデンサ。
【請求項2】
100KHzにおけるESRが優れている請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
弁作用金属がタンタルである請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
半導体層が導電性高分子化合物である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−41556(P2006−41556A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299871(P2005−299871)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【分割の表示】特願2003−44157(P2003−44157)の分割
【原出願日】平成4年2月20日(1992.2.20)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)