説明

固体高分子型燃料電池用電極触媒および燃料電池

【課題】微小細孔の多い、比表面積が大きな導電性炭素材料を用いても、貴金属微粒子の微小細孔内への担持が抑制されていて、担持貴金属利用率が高く、しかも、貴金属微粒子が高分散の状態で担持されているという、高性能な固体高分子型燃料電池用電極触媒、およびこの電極触媒を用いた固体高分子型燃料電池を提供する。
【解決手段】この電極触媒は、担持貴金属微粒子の平均粒子径が5nm未満であり、かつ、下記式により示されるα値が20%未満であることを特徴とする。α={(Sco−Sepsa)/Sco}x100(%)(Sco=COパルス吸着測定法により測定された全貴金属表面積(m/g−触媒)、Sepsa=電気化学的方法により測定された電気化学的に有効な貴金属の表面積(m/g−触媒))

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体高分子型燃料電池用電極触媒、およびこの電極触媒を用いた固体高分子型燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池用電極触媒としては、白金などの貴金属を導電性炭素材料に担持した電極触媒が一般に用いられている。固体高分子型燃料電池の高出力化を実現するためには、高活性な電極触媒が不可欠であり、通常、触媒成分である貴金属を導電性炭素材料に微細粒子として高分散担持し、その表面積を増加させて触媒性能の向上を図ることが検討されている。
【0003】
導電性炭素材料として比表面積の大きいものを用いることにより貴金属粒子をより微細化できることが報告されている。比表面積が大きい導電性炭素材料とは、細孔構造が発達した材料ということができ、通常、微小細孔を多く有している。しかし、白金などの貴金属微粒子は直径2.5〜7.5nmの微小細孔を優先的な吸着サイトとして吸着するため、比表面積が大きい炭素材料、換言すれば、微小細孔を多く有する炭素材料を担体材料として用いると、貴金属微粒子はこれら微小細孔内にその多くが担持されることになる。貴金属微粒子をより微細化すると更に微小細孔内への担持が進行しやすくなる。
【0004】
しかしながら、固体高分子型燃料電池に用いる固体高分子電解質は、通常、5〜20nmのサイズを有するため直径5nm以下の極めて微小な細孔内に進入することができない。そのため、直径5nm以下となるような微小細孔内に存在する貴金属微粒子は固体高分子電解質と接触することができず、電気化学的に不活性となり担持貴金属利用率が低下するという問題があった。
【0005】
上記問題を解決するために、担持貴金属利用率を低下させずに効率よく貴金属微粒子を高分散担持させる方法として、固体高分子電解質が進入できないような微小細孔が少ない導電性炭素材料を担持材料として使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかし、この方法では、担持貴金属利用率の低下を抑制するために担持材料として、微小細孔の少ない導電性炭素材料、つまり、比表面積の小さい導電性炭素材料を使用しているため、貴金属の微細化、高分散化が必ずしも十分でないという問題が生じる。
【0006】
【特許文献1】特開平9−167622号公報
【特許文献2】特開2000−100448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、微小細孔の多い、比表面積が大きな導電性炭素材料を用いても、貴金属微粒子の微小細孔内への担持が抑制されていて、担持貴金属利用率が高く、しかも、貴金属微粒子が高分散の状態で担持されているという、高性能な固体高分子型燃料電池用電極触媒を提供することにある。また、他の目的は、高性能の固体高分子型燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記発明によって達成される。
(1)導電性炭素材料に貴金属微粒子を担持してなる固体高分子型燃料電池用電極触媒であって、貴金属微粒子の平均粒子径が5nm未満であり、かつ、下記式(I)により示されるα値が20%未満であることを特徴とする固体高分子型燃料電池用電極触媒。
α={(Sco−Sepsa)/Sco}x100(%) (I)
Sco=COパルス吸着測定法により測定された全貴金属表面積(m/g−触媒)
Sepsa=電気化学的方法により測定された電気化学的に有効な貴金属の表面積(m/g−触媒)
(2)導電性炭素材料の比表面積が850m/g以上である上記(1)の固体高分子型燃料電池用電極触媒。
(3)上記(1)の固体高分子型燃料電池用電極触媒を用いてなる固体高分子型燃料電池。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電極触媒は次のような効果を有する。
(1)貴金属微粒子の微小細孔内への担持が抑制されているため、固体高分子電解質との接触ができない貴金属微粒子の量は限定的である。したがって、担持貴金属利用率が高く、導電性炭素材料に担持された貴金属微粒子が効果的に触媒性能を発揮する。
(2)微小細孔の多い、比表面積の大きな導電性炭素材料であっても用いることができるので、貴金属微粒子は高分散の状態で導電性炭素材料に担持されていて、高い触媒性能が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いる「導電性炭素材料」としては、電極触媒の製造において、貴金属微粒子を担持するための担体として一般に用いられている導電性炭素材料であればいずれも使用することができる。なかでも、比表面積が850m/g以上、好ましくは1000〜3500m/g、より好ましくは1200〜2500m/gの導電性炭素材料が好適に用いられる。このような比表面積の大きな導電性炭素材料を用いることにより、貴金属微粒子を高分散に担持させることができる。なお、比表面積は、BET一点法(湯浅アイオニクス(株)製全自動表面積測定装置4−ソーブ)により測定したものである。
【0011】
上記導電性炭素材料の代表例としては、例えば、ケッチェンブラックEC600JD(ライオン(Lion)社製、比表面積:1270m/g)、ブラックパールズ(キャボット(Cabot)社製、比表面積:1376m/g)、SA−1000(フタムラ化学(株)製、比表面積:1420m/g)、CW−130A(フタムラ化学(株)製、比表面積:1310m/g)、CW−480SZ(フタムラ化学(株)製、比表面積:1900m/g)などを挙げることができる。上記のケッチェンブラックEC600JDは、前記特許文献1において、貴金属微粒子を担持する担体として使用するには不適当とされる、直径が8nm以下の細孔の占める容積が500cm/g以上の導電性炭素材料として、また、前記特許文献2において、貴金属微粒子を担持する担体として使用するには不適当とされる、直径が60Å以下の細孔を全細孔に対して20%以上の割合で有する導電性炭素材料として例示されている。
【0012】
上記のような高い比表面積を有する導電性炭素材料を担体として用いることにより、貴金属微粒子を高分散の状態で担持し得るが、このような導電性炭素材料には、一般に用いられている固体高分子電解質が進入し得ない微小細孔が多く存在し、このような微小細孔内にまで貴金属微粒子が担持されることになる。しかし、上記の微小細孔内には固体高分子電解質が進入し得ないため、固体高分子電解質と貴金属微粒子とが接触できず、担持した貴金属微粒子の一部が有効に利用されないことになり、結果として、高価な貴金属の担持量に見合った十分な触媒性能が得られないことがある。しかし、本発明の電極触媒においては、このような導電性炭素材料を担体として用いても、微小細孔内に担持される貴金属微粒子が極力抑制されているため、担持された貴金属微粒子の利用率が極めて高く、必要量の貴金属を担持させるだけで十分な触媒性能が得られる。
【0013】
本発明の電極触媒における「貴金属微粒子の平均粒子径」は5nm未満、好ましくは5〜1nm、より好ましくは4〜2nmである。平均粒子径が5nm以上では、貴金属表面積が低下するため、十分な触媒性能が発揮されない。また、小さすぎても、貴金属表面積の増加に見合った性能向上が得られず、逆に微細粒子同士の凝縮が起こりやすくなり耐久性が低下する場合がある。なお、「貴金属微粒子の平均粒子径」とは、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製透過型電子顕微鏡JEM−100SX、加圧電圧:100kV)を用いて触媒上の貴金属微粒子を直接観察することにより測定したものである。
【0014】
次に、式(I)について詳しく説明する。式(I)のScoとは、COパルス吸着測定法により測定された全貴金属表面積(m/g−触媒)を示す。また、Sepsaとは、電気化学的方法により測定された電気化学的に有効な貴金属の表面積(m/g−触媒)を示す。ここで、電気化学的に有効な貴金属の表面積とは、特定の固体高分子電解質(ナフィオン溶液(アルドリッチ(Aldrich)社製))の固体高分子電解質(フッ素系高分子電解質ナフィオン117)が実質的に進入し得ない微小細孔内に存在する貴金属を除いた、残りの貴金属の表面積、すなわち、上記特定の固体高分子電解質が実質的に進入し得ない微小細孔内以外の位置に存在する貴金属の表面積(m/g−触媒)を意味する。したがって、式(I)で示されるα値とは、導電性炭素材料に担持された全貴金属の表面積(m/g−触媒)に対する、上記特定の固体高分子電解質が実質的に進入し得ない微小細孔内に存在する貴金属の表面積(m/g−触媒)の割合を意味するものである。α値が小さい程、担持貴金属利用率が高いということになる。
【0015】
なお、ナフィオン溶液中の固体高分子電解質の粒径は5〜20nmとされているので(アルドリッチ社カタログ)、具体的な概念としては、α値とは、導電性炭素材料に担持された全貴金属の表面積(m/g−触媒)に対する、直径がおおよそ5nm以下の微小細孔の内部に存在する貴金属の表面積(m/g−触媒)の割合ということもできる。
【0016】
本発明の「COパルス吸着測定法」とは、COガスをプローブ分子として用い、その貴金属表面への吸着量を測定することにより貴金属の表面積を求めるものである。COガスの分子サイズは0.4nm程度であるので、導電性炭素材料が有する微小細孔内に担持されている貴金属微粒子へも到着して吸着されることが可能である。このため、COパルス吸着測定法により測定される全貴金属表面積は導電性炭素材料に担持されている全ての貴金属粒子に由来する表面積となる。なお、本発明の「COパルス吸着測定法」の実施条件は次のとおりである。
装置:日本ベル株式会社製、触媒分析装置BEL−CAT
前処理条件:150℃にて15分間ヘリウム気流中で処理→150℃にて15分間水素(5%)/ヘリウム混合ガス中で還元処理→150℃にて15分間ヘリウム気流中で処理→50℃まで降温
プローブ:CO
吸着温度:50℃
サンプル量:10〜20mg程度
本発明の「電気化学的方法」による電気化学的に有効な貴金属の表面積(m/g−触媒)の測定は次のとおりである。なお、試験電極は次のようにして作成した。
(試験電極の作成)
サンプル10mgを5%ナフィオン溶液(アルドリッチ(Aldrich)社製)1mLに加え、超音波により均一分散させて触媒インクを作成した。この触媒インク5μLをグラッシーカーボンディスク電極上に均一に展開し(塗布面積:0.196cm)、室温で12時間乾燥させて電極触媒層をグラッシーカーボンディスク電極上に固定化して試験電極とする。
装置:北斗電工株式会社製、ポテンショガルバノスタット HAG−5010
溶液:0.1M過塩素酸水溶液
温度:25℃
参照電極:可逆水素電極(RHE)
試験電極:上記電極
電位走査範囲:50〜1300mVvs.RHE
電位走査速度:50mV/sec
上記方法により得られるサイクリックボルタモグラムにおける50〜400mVvs.RHEにみられるプロトン離脱ピークの電気量を210μC/cm−貴金属の値を用いて電気化学的に有効な貴金属表面積を算出する(技報堂出版株式会社 電気化学測定法(上)86頁/白金電極の表面積の求め方/参照)。
【0017】
上記電気化学的方法は、固体高分子型燃料電池の電極構造と同様の電極触媒と前記特定の固体高分子電解質とから形成された電極層を用い、固体高分子電解質を伝導するプロトンの吸着−脱離に伴う電気量を用いて電気化学的に有効な貴金属表面積を測定するものである。ここで、固体高分子電解質は電極触媒表面を覆う状態で存在しており、電極触媒が有する細孔内部にも進入した状態になっている。しかし、前記特定の固体高分子電解質は、その直径よりも小さな直径を有する微小細孔内には進入することができない。そのため、このような微小細孔内に存在する貴金属微粒子は固体高分子電解質と接触することができず、電気化学的には不活性となる。したがって、Sepsaとは、電気化学的に不活性な貴金属表面積を除いた電気化学的に有効な貴金属の表面積を測定したものとなる。
【0018】
本発明の電極触媒のα値は、20%未満であり、なかでもα値が10%、あるいは5%を超えないものが好ましい。α値が小さいほど、担持貴金属利用率が高くなり、好ましいものである。
【0019】
本発明の電極触媒は、例えば、以下の方法によって製造することができる。
【0020】
貴金属塩または貴金属錯体を、少なくとも1種の多価アルコールを含む溶媒に溶解し、この溶液のpHを上昇させた後、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下に加熱、還流して貴金属のコロイド溶液を調製する。また、十分に乾燥した導電性炭素材料を、pHを上昇させた少なくとも1種の多価アルコールを含む溶媒に添加し、十分に攪拌して導電性炭素材料の分散溶液を調製する。次に、これら貴金属コロイド溶液と導電性炭素材料分散溶液とを混合した後、混合液のpHを低下させることにより、貴金属のコロイド粒子を導電性炭素材料に担持させる。
【0021】
上記のように、貴金属コロイド溶液と導電性炭素材料分散溶液との混合液のpHを低下させて、貴金属コロイド粒子を導電性炭素材料に担持させることにより、本発明のα値が20%未満の電極触媒が得られる。この理由は、導電性炭素材料の分散溶液の調製の際に、導電性炭素材料の微小細孔内にpHを上昇させた少なくとも1種の多価アルコールを含む溶媒を浸透させているため、混合液のpH低下工程においても、導電性炭素材料の微小細孔内では、その影響を受けにくく、混合液のpHがそのまま維持されるか、あるいは、pH低下が抑制されるために、微小細孔内での貴金属コロイド粒子の担持が抑制され、その結果、α値が20%未満の電極触媒が得られるものと考えられている。
【実施例】
【0022】
本発明の有利な実施態様を示している以下の実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。
(実施例1)
水酸化ナトリウム2gをエチレングリコール100gに添加し、窒素雰囲気下にて70℃で溶解させた後、25℃に冷却した。次に、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液(白金0.77g含有)9.43gをエチレングリコール100gに加えたものを、上記に調製した水酸化ナトリウムのエチレングリコール溶液に添加した後、窒素雰囲気下にて攪拌しながら150℃で5時間加熱することにより白金コロイド溶液を調製した。
【0023】
次に、水酸化ナトリウム0.1gをエチレングリコール10gに添加し、窒素雰囲気下にて70℃で溶解させた溶液に、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC600JD、ライオン(株)製)0.51gを加え、攪拌することでカーボンブラック分散溶液を調製した。
【0024】
このカーボンブラック分散溶液を前記白金コロイド溶液に添加し、6時間室温で攪拌した。その後、攪拌を続けながら1Mギ酸水溶液を徐々に添加しながらpH3に調整した。6時間後、固体をろ別し、イオン交換水で十分に洗浄した後、窒素雰囲気下110℃で乾燥して触媒Aを得た。
【0025】
触媒Aの組成は、白金:カーボンブラック=60:40(質量比)であった。COパルス吸着測定により算出された全貴金属(白金)表面積は、触媒の単位質量当たり、41m/gであった。サイクリックボルタモグラムにより求めた電気化学的に有効な貴金属(白金)表面積は、触媒の単位質量当たり、40m/gであった。また、透過型電子顕微鏡により測定した貴金属(白金)平均粒子径は4.0nmであった。触媒Aの貴金属平均粒子径およびα値を表1に示す。
(比較例1)
ジニトロジアンミン白金硝酸溶液9.43g(白金0.77g含有)に純水を加えて40mLとした。この水溶液にカーボンブラック(ケッチェンブラックEC600JD、ライオン(株)製)0.51gを加えて攪拌した後、98質量%のエタノール水溶液5mLを添加した。次いで、この溶液を窒素雰囲気下95℃で6時間攪拌しながら還流した。その後、室温まで降温し、固体をろ別して、イオン交換水で十分に洗浄した後、窒素雰囲気下110℃で乾燥して触媒Bを得た。
【0026】
触媒Bの組成は、白金:カーボンブラック=60:40(質量%)であった。COパルス吸着測定により算出された全貴金属表面積は、触媒の単位質量当たり、55m/gであった。サイクリックボルタモグラムにより求めた電気化学的に有効な貴金属表面積は、触媒の単位質量当たり、24m/gであった。また、透過型電子顕微鏡により測定した貴金属平均粒子径は3.0nmであった。触媒Bの貴金属平均粒子径およびα値を表1に示す。
(比較例2)
カーボンブラック(ケッチェンブラックEC600JD、ライオン(株)製)1.0gを純水100mLに懸濁させた。この懸濁液に攪拌下、ジニトロジアンミン白金硝酸水溶液(白金濃度8.18質量%)18.3gを添加し、その後、純水にて液量を150mLに調整した。次いで、5質量%の水素化ホウ素ナトリウム水溶液143mLを攪拌下に滴下して懸濁液中に溶解している白金前駆体を還元し、カーボンブラックにその全量を担持させた。このようにして得られた粉末をろ別し、純水で十分に洗浄した後、窒素雰囲気下、110℃にて乾燥して触媒Cを得た。
【0027】
触媒Cの組成は、白金:カーボンブラック=60:40(質量%)であった。COパルス吸着測定により算出された全貴金属表面積は、触媒の単位質量当たり、21m/gであった。サイクリックボルタモグラムにより求めた電気化学的に有効は貴金属表面は、触媒の単位質量当たり、20m/gであった。また、透過型電子顕微鏡により測定した貴金属平均粒子径は8.0nmであった。触媒Cの貴金属平均粒子径およびα値を表1に示す。
(性能評価)
実施例1および比較例1、2で得られた触媒A〜C(触媒B、Cは比較用)の電極触媒としての性能を評価した。触媒性能の評価は、固体高分子型燃料電池用電極触媒の評価に有効であり、かつ、燃料電池性能と良い相関が得られる回転電極法にて実施した。
<評価法>
触媒10mgを5%ナフィオン溶液(アルドリッチ社製)1mLに加え、超音波により十分に分散させて触媒ペーストを作成した。次いで、この触媒ペーストの所定量をグラッシーカーボンディスク電極上に塗布し、十分に乾燥させて触媒層を回転グラッシーカーボン電極上に固定した試験電極とした。次いで、触媒層を固定した回転電極を酸素で飽和した25℃に保持された0.1M過塩素酸水溶液中に浸漬し、可逆水素電極(RHE)を参照極として酸素還元電流と電極電位の関係を測定した。0.75Vvs.RHEでの酸素還元電流値の評価結果を表1に示した。なお、酸素還元電流値は、測定された還元電流値をグラッシーカーボン電極上に塗布した触媒中に含有される貴金属質量で除した値(貴金属質量当たりの還元電流値)とした。
【0028】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性炭素材料に貴金属微粒子を担持してなる固体高分子型燃料電池用電極触媒であって、貴金属微粒子の平均粒子径が5nm未満であり、かつ、下記式(I)により示されるα値が20%未満であることを特徴とする固体高分子型燃料電池用電極触媒。
α={(Sco−Sepsa)/Sco}x100(%) (I)
Sco=COパルス吸着測定法により測定された全貴金属表面積(m/g−触媒)
Sepsa=電気化学的方法により測定された電気化学的に有効な貴金属の表面積(m/g−触媒)
【請求項2】
導電性炭素材料の比表面積が850m/g以上である請求項1記載の固体高分子型燃料電池用電極触媒。
【請求項3】
請求項1の固体高分子型燃料電池用電極触媒を用いてなる固体高分子型燃料電池。

【公開番号】特開2007−109456(P2007−109456A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297305(P2005−297305)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】