説明

固体高分子形燃料電池セルカートリッジおよびそのスタック構造

【課題】複数のセルを積層した構造においてメンテナンス性が向上し、かつ、設置自由度が高いスタック構造を実現することが可能な固体高分子形燃料電池セルカートリッジおよびそのスタック構造を提供する。
【解決手段】セルカートリッジ1は、セル2と、一対の電極プレート3、4と、外部接続部材5と、固定バンド6と、電極端子24、25とからなる。外部接続部材5は、セル2および電極プレート3、4の積層体17における外周の縁の一部を閉塞するとともに、水素導入経路5aおよび水素排出経路5bなどを有する。固定バンド6は、積層体17における外周の縁のうちの残りの部分を閉塞する。電極端子24、25は、外部接続部材5を貫通して外部に出ている。固定バンド6は、積層体17を積層方向における前後両端から保持する周方向巻締め部分6aを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子形(型)燃料電池セルカートリッジおよびそのスタック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池としては、互いに積層される複数のセルを備えた、いわゆるスタック構造のものが知られている。ここで、各セルは、一対の平板状のセパレータと、その間に配置された膜電極接合体とから構成され、所定の起電力の性能を発揮できるようになっている。
【0003】
このようなスタック構造としては、必要出力に応じた多数のセルが直列に積層されて1つの積層体を形成し、膜電極接合体の反応部分の外側において前記積層体が数本の締結用貫通ボルトで一体に締結されたものが一般的である(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載されている燃料電池では、セルを複数個積層した積層体を挟んでその両側に、それぞれ電極板、絶縁板およびエンドプレートが順に外側に向けて積層され、両側のエンドプレートが、積層方向に向けてボルトおよびナットからなる締め具によって締結されることにより、セルの積層体が固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−115319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のようにボルトの締結によって複数のセルの積層状態が保持されたスタック構造の場合、多数のセルのうち互いに隣接するセル同士の面圧を均一にするために、各々のボルトおよびナットの締付けの順番や締付トルクが厳重に管理される必要がある。
【0007】
また、共通のボルトやナットによって全セルがまとめて締結されているので、それによるスタック構造の全体の品質・性能面の保証は、スタック構造組立て完了後の発電テスト等でしか確認できないという問題がある。そのため、一部のセルにのみ不具合があった場合でも、不具合があったセルの特定が困難であり、不具合を改善するためには、燃料電池のスタック構造全体を分解する必要がある。
【0008】
さらに、燃料電池として機能中に、スタック構造を構成する複数のセルのうちのある1個のセルについて反応部分の不良などの不具合がある場合には、燃料電池として所定の性能が維持できなくなり、セルの積層体を全体的に取り換える必要があり、メンテナンス性の向上が困難である。
【0009】
また、上記の燃料電池のスタック構造は、複数のセルを一括して積層して共通のボルトおよびナットで保持する構造であるため、セルの個数や各セル間の電気的な接続方式を変更することが困難であり、設置自由度の向上が困難であるという問題もある。
【0010】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、複数のセルを積層した構造においてメンテナンス性が向上し、かつ、設置自由度が高いスタック構造を実現することが可能な固体高分子形燃料電池セルカートリッジおよびそのスタック構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためのものとして、本発明の固体高分子形燃料電池セルカートリッジは、固体高分子形燃料電池のセルカートリッジであって、膜電極接合体および当該膜電極接合体を挟んでその両側に積層された平板状の一対のセパレータを有する少なくとも1個のセルと、前記一対のセパレータの外側において、前記セルを両側から挟むように積層された一対の電極プレートと、前記セルおよび前記電極プレートが互いに積層して構成された積層体における外周の縁の一部を閉塞するとともに、燃料流体を前記セルカートリッジの外部から前記セルへ導入する燃料流体導入経路および前記燃料流体を前記セルから前記セルカートリッジの外部へ排出する燃料流体排出経路を有する第1閉塞部材と、前記積層体における外周の縁のうち前記第1閉塞部材で閉塞されていない残りの部分を閉塞する第2閉塞部材と、前記電極プレートから前記セルカートリッジの外部へ電気を取り出す電極端子とを備えており、前記第2閉塞部材は、前記積層体を積層方向における前後両端から保持する保持部を有していることを特徴としている。
【0012】
かかる構成によれば、セルおよび電極プレートの積層体における外周の縁を第1閉塞部材および第2閉塞部材によって閉塞するとともに、当該第2閉塞部材の保持部によって、積層体の前後両端を保持している。しかも、第1閉塞部材は、燃料流体導入経路および燃料流体排出経路を有しているので、セルカートリッジの内外の間で燃料流体の出入を可能にしている。また、セルで発電した電気を、電極端子を介して電極プレートからセルカートリッジの外部へ取り出すことができる。そのため、セルカートリッジは、単体で燃料電池として機能することができ、それとともに、セルカートリッジ単位でその内部の1個または複数のセルの保持力が厳重に管理された状態で製造され、各セルカートリッジ単位で品質を維持することができる。その結果、そのセルカートリッジを複数個積層するだけで、所定の起電力および持続時間のスタック構造を容易かつ精度よく製造することができる。
【0013】
しかも、電極端子を介して電極プレートからセルカートリッジの外部へ電気を取り出すことによって、セルカートリッジ単位で起電力や持続時間等の電気的試験をすることができる。その結果、複数のセルカートリッジを積層したスタック構造であるにもかかわらず、不良になったセルカートリッジの判別および交換が容易になり、メンテナンス性が向上する。
【0014】
また、セルカートリッジ単体で燃料電池として機能するので、設置スペース等に合わせて、セルカートリッジのスタック構造を、一列または複数列にするなどしてスタックを分割して設置することも可能になり、設置自由度が大幅に向上する。
【0015】
しかも、本発明のセルカートリッジは、第2閉塞部材が積層体の外周の縁を保持することでその積層状態を保持するので、積層体に固定用のボルトを貫通させる必要をなくし、あるいはその本数を削減できる。そのため、膜電極接合体の反応面積を有効に利用でき、セルカートリッジ全体のコンパクト化を図ることができる。
【0016】
また、第1閉塞部材は、燃料流体導入経路および燃料流体排出経路を有しているので、これら燃料流体導入経路および燃料流体排出経路をセルカートリッジの所定の場所に集めて配置することができる。そのため、複数のセルカートリッジを積層してスタック構造を構成する場合に、燃料流体の導入経路や排出経路の一元化が容易になる。
【0017】
前記電極端子は、前記第1閉塞部材に配置されているのが好ましい。
【0018】
この構成によれば、電極端子をセルカートリッジの所定の場所に集めて配置することができる。そのため、複数のセルカートリッジの電極端子同士を電気的に接続しやすくなり、配線が容易になるとともに配線長が短くなるので、送電ロスも低減できる。また、複数のセルカートリッジを積層してスタック構造を構成する場合に、燃料流体の導入経路や排出経路とともに電極端子の一元化も容易になる。
【0019】
前記電極端子は、前記第1閉塞部材または第2閉塞部材を貫通して外部に出ているのが好ましい。
【0020】
この構成によれば、第1閉塞部材または第2閉塞部材を貫通して外部に出ている電極端子を介して、電極プレートからセルカートリッジの外部へ電気を容易に取り出すことができる。
【0021】
前記セパレータは、金属薄板からなるのが好ましい。かかる構成によれば、カーボンなどの材料と比較してセパレータの薄型化を容易に達成でき、かつ、セパレータ表面に燃料流体の供給経路をプレス成形によって容易に形成できる。しかも、従来のカーボン製のセパレータなどと比較して、耐衝撃性も向上する。
【0022】
前記第2閉塞部材は、金属薄板からなり、前記積層体における外周の縁に巻き締められており、前記保持部は、前記金属薄板のうち前記積層体の前後両端に当接する巻締め部分であるのが好ましい。かかる構成によれば、セルカートリッジの気密性が向上し、しかも、積層体に付与される締付圧力の調整を容易かつ精度よく行うことができる。
【0023】
前記第2閉塞部材は、紫外線硬化樹脂でもよい。かかる構成によれば、セルカートリッジの気密性が向上し、しかも、積層体の連結作業を容易に行うことができる。
【0024】
また、前記第2閉塞部材は、射出成形によって形成してもよい。かかる構成によれば、射出成形される材料によって積層体の周縁およびその近傍が被覆されるので、セルカートリッジの気密性が向上する。しかも、積層体の連結作業を容易に行うことができる。
【0025】
本発明の固体高分子形燃料電池セルカートリッジのスタック構造は、複数個積層された、上記のセルカートリッジと、前記セルカートリッジを積層した状態で各セルカートリッジの外周の縁と個別に着脱自在に連結する連結部を有するとともに前記セルカートリッジの積層状態を保持するカートリッジ連結部材と、隣接する前記セルカートリッジの前記電極端子同士を電気的に接続する電極接続部とを備えていることを特徴とする。
【0026】
かかる構成によれば、複数個のセルカートリッジが積層した状態で、各セルカートリッジの外周の縁とカートリッジ連結部材とが個別に着脱自在に連結されている。そのため、個々のセルカートリッジは、他のセルカートリッジがカートリッジ連結部材と連結した状態を維持させながら当該カートリッジ連結部材から自由に着脱することができる。その結果、個々のセルカートリッジのメンテナンスや交換が容易になる。また、電極接続部が隣接するセルカートリッジの電極端子同士を電気的に接続するので、セルカートリッジのスタックの個数や各セルカートリッジ間の電気的な接続方式を容易に変更することが可能であり、設置自由度が高い。
【0027】
前記カートリッジ連結部材は、各々の前記セルカートリッジにおける前記第1閉塞部材と連結されているのが好ましい。
【0028】
かかる構成によれば、各セルカートリッジにおいて燃料流体導入経路および燃料流体排出経路を有しており、かつ電極端子が設けられた第1閉塞部材を、他のセルカートリッジの第1閉塞部材とともにカートリッジ連結部材に連結することにより、カートリッジ連結部材の場所で、燃料流体の導入経路や排出経路の一元化が容易になる。また、電極端子が第1閉塞部材に配置されている場合には、複数のセルカートリッジの電極端子同士がカートリッジ連結部材の場所に集められるので、電気的に接続しやすくなる。そのため、電極端子間の配線が容易になるとともに配線長が短くなるので、送電ロスも低減できる。
【0029】
前記電極接続部は、隣接する前記電極端子同士を電気的に直列に接続するのが好ましい。かかる構成によれば、各セルカートリッジを直列に接続して大きな起電力を得ることができる。
【0030】
前記電極接続部は、隣接する前記電極端子同士を電気的に並列に接続するのが好ましい。かかる構成によれば、各セルカートリッジを並列に接続することが可能になり、燃料電池の持続時間を延ばすことが可能になる。
【0031】
前記電極接続部は、少なくとも第1の系統および第2の系統を有しており、隣接する所定の第1の個数の前記セルカートリッジは、それらの前記電極端子同士が前記電極接続部の第1の系統によって電気的に接続されることによって第1の分割スタック構造を構成し、その他の隣接する所定の第2の個数の前記セルカートリッジは、それらの前記電極端子同士が前記電極接続部の第2の系統によって電気的に接続されることによって第2の分割スタック構造を構成するのが好ましい。
【0032】
かかる構成によれば、隣接する所定のある個数の前記セルカートリッジの単位で複数の分割されたスタック構造を構成することが可能になるので、所定個数単位でセルカートリッジを直列接続または並列接続することが可能になり、設計自由度が大幅に拡大する。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明の固体高分子形燃料電池のセルカートリッジによれば、セルカートリッジ単位でその内部の少なくとも1個のセルの保持力が厳重に管理された状態で製造され、そのセルカートリッジを複数個積層するだけで、所定の起電力および持続時間のスタック構造を容易かつ精度よく製造することができる。
【0034】
しかも、セルカートリッジ単位で起電力や持続時間等の電気的試験をすることができるので、不良になったセルカートリッジの判別および交換が容易になり、メンテナンス性が向上する。また、セルカートリッジ単位で燃料電池として独立しているので、設置スペース等に合わせて、セルカートリッジのスタック構造を、一列または複数列にするなどしてスタックを分割して設置することも可能になり、設置自由度が大幅に向上する。
【0035】
また、本発明の固体高分子形燃料電池のセルカートリッジのスタック構造によれば、複数のセルカートリッジを積層した状態で各セルカートリッジの外周の縁と個別にカートリッジ連結部材に連結することにより、各セルカートリッジは個々に独立してカートリッジ連結部材に連結することが可能になり、個々のセルカートリッジのメンテナンスや交換が容易になる。
【0036】
また、セルカートリッジのスタックの個数や各セルカートリッジ間の電気的な接続方式を容易に変更することが可能であり、設置自由度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の固体高分子形燃料電池のセルカートリッジの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のセルカートリッジの分解斜視図である。
【図3】図1の水素側気体・温調媒体分離パッキンの平面図である。
【図4】図1の水素極メタルセパレータを示す図であって、(a)は平面図、(b)は同(a)のIV−IV線断面図である。
【図5】図1の空気極メタルセパレータのを示す図であって、(a)は平面図、(b)は同(a)のV−V線断面図である。
【図6】図1の空気側気体・温調媒体分離パッキンの平面図である。
【図7】図1のセルカートリッジ内部における水素、空気および温調媒体の流れを示す分解斜視図である。
【図8】図1のセルカートリッジの電極を並列に接続したスタック構造の斜視図である。
【図9】図1のセルカートリッジの電極を直列に接続したスタック構造の斜視図である。
【図10】図1のセルカートリッジの電極を並列に接続した分割スタックと直列に接続した分割スタックとからなるスタック構造の斜視図である。
【図11】図8〜10のスタック構造に適用可能なカートリッジ連結プレートと各セルカートリッジとの間を連結する連結部分の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
つぎに、図面を参照しながら、本発明の固体高分子形燃料電池セルカートリッジおよびそのスタック構造についてさらに詳細に説明する。
【0039】
図1〜2に示されるように、本発明の一実施形態に係わる固体高分子形燃料電池セルカートリッジ1(以下、セルカートリッジ1という)は、少なくとも1個のセル2と、一対の電極プレート3、4と、外部接続部材5と、固定バンド6と、一対の気体・温調媒体分離パッキン7、8と、一対のパックアッププレート9、10と、一対の電極端子24、25とを備えている。
【0040】
矩形平板状のセル2を挟んでその両側にそれぞれ、一対の電極プレート3、4、一対の気体・温調媒体分離パッキン7、8および一対のパックアッププレート9、10が積層されることにより、1つの積層体17が構成されている。その積層体17の外周の縁の一辺は、外部接続部材5によって閉塞され、残りの三辺は、固定バンド6によって閉塞されている。固定バンド6は、積層体17の外周の縁の三辺を閉塞しながらおよび積層体17を保持している。外部接続部材5は、燃料流体および空気の出入が可能な経路5a〜5dを有しており、しかも、外部接続部材5には電極端子24、25が配置されている。そのため、それぞれのセルカートリッジ1は、独立して発電可能な燃料電池として機能することができる。燃料流体は、本実施形態では、水素ガスが採用されているが、他の燃料を用いても良く、気体だけでなく液体も採用することができ、例えば、液体状のメタノールでもよい。また、燃料流体と反応する流体も空気以外の流体を用いても良い。
【0041】
以下、セルカートリッジ1の各部材についてより詳しく説明する。
【0042】
セル2は、平板状の一対の水素極メタルセパレータ11および空気極メタルセパレータ12と、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly)(以下、MEAという)13とを備えている。当該セパレータ11、12は、MEA13を挟んでその両側に積層されている。
【0043】
MEA13は、固体高分子膜(電解膜)14と、当該固体高分子膜14を挟んでその両側に積層された一対の気体拡散層15、16とから構成されている。固体高分子膜14は、水素イオンを透過させる膜である。固体高分子膜14の表面には、触媒が被膜されている。気体拡散層15、16は、それぞれ水素または空気を透過させる膜であり、それらの外周部にはガス漏れ防止のためのパッキンが設けられている。
【0044】
一対の水素極メタルセパレータ11および空気極メタルセパレータ12は、金属薄板からなる。金属薄板としては、耐腐食性を有し、かつ、ガス流路を形成可能なプレス成形などにより形成可能な材料が選択され、例えば、ステンレス鋼やチタン鋼などが用いられる。
【0045】
水素極メタルセパレータ11は、図4(a)、(b)および図7に示されるように、水素が流れる水素通路11aを有する。水素通路11aは、MEA13に向かい合う面(図4(a)における紙面裏側の面)に形成されたジグザグまたは蛇行した溝からなる。水素通路11aは、図4(b)に示されるように、水素極メタルセパレータ11を電極プレート3側に部分的に張り出すことによって形成された張出し部分11gの内側において、溝状に形成される。
【0046】
図4(b)に示されるように、張出部分11gは、電極プレート3に接触しており、水素極メタルセパレータ11と電極プレート3との間を所定距離だけ隔てるスペーサとして機能する。水素極メタルセパレータ11と電極プレート3との間にできる隙間は、パッキン61によって塞がれている。
【0047】
また、水素極メタルセパレータ11におけるMEA13と反対側の面(図4(a)における紙面表側の面)の側には、温調媒体が流れる温調媒体通路11bが形成されている。温調媒体通路11bは、水素通路11aの外周を取り囲む空間と当該水素通路11aのジグザグの谷間に分岐して延びる空間とから構成される。本実施形態では、水素極メタルセパレータ11と電極プレート3との間において、水素極メタルセパレータ11の張出部分11gの周囲に隙間をあけて取り囲むようにパッキン61が設けられている。このパッキン61と張出部分11gとの間の隙間が温調媒体通路11bとして用いられる。
【0048】
水素通路11aの両端部には、それぞれ、水素が導入される導入口11cおよび水素が排出される排出口11dが、水素極メタルセパレータ11の表裏方向を貫通してそれぞれ形成されている。
【0049】
また、温調媒体通路11bにおける水素通路11aを挟んで両端の位置には、温調媒体が導入される導入口11eおよび温調媒体が排出される排出口11fが形成されている。導入口11eおよび排出口11fは、水素極メタルセパレータ11の表裏方向を貫通して形成されている。導入口11eの周囲は、パッキン61で閉塞されているので、温調媒体が水素極メタルセパレータ11の周囲から漏れるおそれがない。
【0050】
空気極メタルセパレータ12は、図5(a)、(b)および図7に示されるように、空気が流れる空気通路12aを有する。空気通路12aは、MEA13に向かい合う面(図5(a)における紙面表側の面)に形成されたジグザグまたは蛇行した溝からなる。空気通路12aは、図5(b)に示されるように、空気極メタルセパレータ12を電極プレート4側に部分的に張り出すことによって形成された張出し部分12gの内側において、溝状に形成される。
【0051】
図5(b)に示されるように、張出部分12gは、電極プレート4に接触しており、空気極メタルセパレータ12と電極プレート4との間を所定距離だけ隔てるスペーサとして機能する。空気極メタルセパレータ12と電極プレート4との間にできる隙間は、パッキン62によって塞がれている。
【0052】
また、空気極メタルセパレータ12におけるMEA13と反対側の面(図5(a)における紙面裏側の面)には、温調媒体が流れる温調媒体通路12bが形成されている。温調媒体通路11bは、空気通路12aの外周を取り囲む空間と当該空気通路12aのジグザグの谷間に分岐して延びる空間とから構成される。本実施形態では、空気極メタルセパレータ12と電極プレート3との間において、空気極メタルセパレータ12の張出部分12gを隙間をあけて取り囲むようにパッキン61が設けられている。このパッキン61と張出部分12gとの間の隙間が温調媒体通路12bとして用いられる。
【0053】
空気通路12aの両端部には、それぞれ、空気が導入される導入口12cおよび空気が排出される排出口12dが、空気極メタルセパレータ12の表裏方向を貫通して形成されている。
【0054】
また、温調媒体通路12bにおける空気通路12aを挟んで両端の位置には、温調媒体が導入される導入口12eおよび温調媒体が排出される排出口12fが形成されている。導入口12eおよび排出口12fは、空気極メタルセパレータ12の表裏方向を貫通して形成されている。導入口12eの周囲は、パッキン61で閉塞されているので、温調媒体が空気極メタルセパレータ12の周囲から漏れるおそれがない。
【0055】
一対の電極プレート3、4は、図2および図7に示されるように、セル2の一対のメタルセパレータ11、12の外側を挟むように、配置されている。
【0056】
水素極メタルセパレータ11に対向する電極プレート3には、貫通孔3a、3b、3cが形成されている。貫通孔3aは、水素極メタルセパレータ11における水素を排出する排出口11dに連通している。貫通孔3bは、水素極メタルセパレータ11における温調媒体を導入する導入口11eに連通している。貫通孔3cは、水素極メタルセパレータ11における水素を導入する導入口11cに連通している。
【0057】
空気極メタルセパレータ12に対向する電極プレート4には、貫通孔4a、4b、4cが形成されている。貫通孔4aは、空気極メタルセパレータ12における空気を排出する排出口12dに連通している。また、貫通孔4bは、空気極メタルセパレータ12における温調媒体を排出する排出口12fに連通している。貫通孔4cは、空気極メタルセパレータ12における空気を導入する導入口12cに連通している。
【0058】
電極端子24、25は、積層体17における外周の縁に設けられ、電極プレート3、4から電気を取り出す端子である。電極端子24は、電極プレート3の外周の縁に設けられ、電極端子25は電極プレート4の外周の縁に設けられている。電極端子24、25は、それぞれ極プレート24,25と一体形成されている。しかも、電極端子24、25は、それらの間で短絡が生じないように、異なる高さになるように互いに離間して配置されている。
【0059】
一対の気体・温調媒体分離パッキン7、8は、図2および図7に示されるように、一対の電極プレート3、4の外側を挟むように配置され、セル2に導入される水素および空気が積層体17の周囲に漏れることを防ぐ。
【0060】
水素側気体・温調媒体分離パッキン7には、図2〜3および図7に示されるように、水素排出スリット7a、温調媒体導入スリット7b、および水素導入スリット7cが形成されている。水素排出スリット7aは、外部接続部材5の水素排出経路5bと電極プレート3の貫通孔3aとの間を連通している。温調媒体導入スリット7bは、外部接続部材5の温調媒体導入経路5eと電極プレート3の貫通孔3bとの間を連通している。水素導入スリット7cは、外部接続部材5の水素導入経路5aと電極プレート3の貫通孔3cとの間を連通している。
【0061】
空気側気体・温調媒体分離パッキン8には、図2、図6および図7に示されるように、空気排出スリット8a、温調媒体排出スリット8b、および空気導入スリット8cが形成されている。空気排出スリット8aは、外部接続部材5の空気排出経路5dと電極プレート4の貫通孔4aとの間を連通している。温調媒体排出スリット8bは、外部接続部材5の温調媒体排出経路5fと電極プレート4の貫通孔4bとの間を連通している。空気導入スリット8cは、外部接続部材5の空気導入経路5cと電極プレート4の貫通孔4cとの間を連通している。
【0062】
一対のパックアッププレート9、10は、図2に示されるように、矩形形状の板状プレートからなり、一対の気体・温調媒体分離パッキン7、8の外側を挟むように配置されている。これらのパックアッププレート9、10は、積層体7の両端を支持するとともに気体・温調媒体分離パッキン7、8に導入される水素および空気が周囲に漏れることを防ぐ。
【0063】
外部接続部材5は、図1〜2に示されるように、側部固定ブロック21と、内側パッキン22と、外側パッキン23とからなる。外部接続部材5は、本発明の第1閉塞部材の概念に含まれる。
【0064】
側部固定ブロック21は、セル2、一対の電極プレート3、4、一対の気体・温調媒体分離パッキン7、8、および一対のパックアッププレート9、10が積層された積層体17の外周の縁に嵌合できるような形状をしている。本実施形態の側部固定ブロック21は、箱形形状をしており、その開口部21aを通して、積層体17の外周の縁に嵌合することができる。また、開口部21aの縁には、積層体17の両端のバックアッププレート9、10を外側から押さえるための突起21bがそれぞれ形成されている。
【0065】
内側パッキン22は、側部固定ブロック21の開口部21aの内側に配置され、側部固定ブロック21と積層体17の縁との間に挟まれ、水素、空気および温調媒体の外部への漏れを防止する。内側パッキン22は、ゴムまたは合成樹脂などの適度な弾力と密着性を有する材料によって製造される。
【0066】
外側パッキン23は、側部固定ブロック21における積層体17と反対側の外表面に接するように配置されている。外側パッキン23は、セルカートリッジ1を複数個積層する際に、カートリッジ連結プレート32(図8参照)と面接触することにより、水素、空気および温調媒体の外部への漏れを防止する。外側パッキン23についても、内側パッキン22と同様に、ゴムまたは合成樹脂などの適度な弾力と密着性を有する材料によって製造される。
【0067】
外部接続部材5は、図1〜2に示されるように、水素を積層体17内部へ導入するための水素導入経路5aと、水素を積層体17の外部へ排出するための水素排出経路5bと、空気を積層体17内部へ導入するための空気導入経路5cと、空気を積層体17の外部へ排出するための空気排出経路5dと、セル2を温度調整するための温調媒体を積層体17内部へ導入するための温調媒体導入経路5eと、温調媒体を積層体17の外部へ排出するための温調媒体排出経路5fとを有している。温調媒体は、純水等が用いられる。
【0068】
これらの水素、空気および温調媒体の経路5a〜5fは、それぞれ、内側パッキン22、側部固定ブロック21および外側パッキン23の積層方向に貫通して形成され、積層体17の内部と外部との間を導通している。また、内側パッキン22における経路5a〜5fに対応する開口の形状はスリット状になっている。
【0069】
さらに、図1に示されるように、外部接続部材5におけるこれら経路5a〜5fの開口端が外部に露出する面には、後述するカートリッジ連結プレート32(図8〜9参照)に対してボルトまたはピンで結合するための複数個(例えば、3個)の取付孔5gが形成されている(なお、取付孔5gは、1個でもよい)。また、その面には、当該外部接続部材5の内外を貫通するスリット5hが2箇所形成されている。電極端子24、25は、スリット5hを通して外部へ突出している。
【0070】
固定バンド6は、積層体17における外周の縁の辺うち外部接続部材5で閉塞されていない残りの3辺を閉塞する部材であり、本発明の第2閉塞部材の概念に含まれる。
【0071】
本実施の形態の固定バンド6は、図1〜2に示されるように、金属薄板からなり、外部接続部材5のうち、側部固定ブロック21および内側パッキン22を積層体17とともに巻き締めている。金属薄板の巻き締めは、例えば、従来公知の製缶技術およびその技術に用いられる巻締め機などを利用して行えばよい。例えば、公知の製缶技術では、缶の円筒状の胴部に上蓋および底蓋を取り付ける場合、上蓋および底蓋となる金属板材の外周縁部を円筒状の胴部の縁に沿って巻き締めることにより、密閉した缶を製造することができる。この技術を応用して、固定バンド6を積層体17の外周縁に巻き締めればよい。
【0072】
固定バンド6は、図2に示されるように、周方向巻締め部分6aと、上下方向巻締め部分6bとを有している。周方向巻締め部分6aは、積層体17の前後両端に当接し、積層体17の周囲を三方向から巻き締めることにより、積層体17を積層方向における前後両端から保持する。周方向巻締め部分6aは、本発明の保持部の概念に含まれる。また、上下方向巻締め部分6bは、外部接続部材5のうち側部固定ブロック21および内側パッキン22を巻き締めている。外部接続部材5のうち外側パッキン23は、固定バンド6の上下方向巻締め部分6bよりも外に配置されている。
【0073】
(水素、空気、温調媒体の流れの説明)
つぎに図3〜7を参照しながらセルカートリッジ1内部における水素、空気および温調媒体の経路について説明する。
【0074】
(水素経路18について)
セルカートリッジ1における水素が流れる水素経路18は、概略的には、図7に示されるように、セルカートリッジ1の内部において、水素極メタルセパレータ11に形成された水素通路11aを通ってMEA13の表面に接触しながらジグザグに通った後、残りの水素がセルカートリッジ1の外部へ排出される。具体的には、以下の通りである。
【0075】
まず、図1に示されるように、外部接続部材5の水素導入経路5aから水素が積層体17の内部へ導入される。ついで、水素は、図3および図7に示されるように、水素側気体・温調媒体分離パッキン7の水素導入スリット7cを通った後、電極プレート3の貫通孔3cおよび水素極メタルセパレータ11の導入口11cを通過して、水素極メタルセパレータ11の水素通路11aに導入される。図4および図7に示されるように、水素通路11aは、水素極メタルセパレータ11におけるMEA13に対向する面に形成され、MEA13に対して開放されている。そのため、水素は、水素通路11a内部をジグザグ通りながらMEA13へ供給される。MEA13では、水素は、図2に示される気体拡散膜15を通して固体高分子膜14に供給される。固体高分子膜14に到達した水素は、電子を放出して水素イオンとなって固体高分子膜14を通過する。水素通路11a内の残りの水素は、水素極メタルセパレータ11の排出口11d、電極プレート3の貫通孔3a、および水素側気体・温調媒体分離パッキン7の水素排出スリット7aを通り、最後に、外部接続部材5の水素排出経路5bから水素が積層体17の外部へ排出される。
【0076】
(空気経路19について)
空気が流れる空気経路19は、概略的には、図7に示されるように、セルカートリッジ1の内部において、空気極メタルセパレータ12に形成された空気通路12aを通ってMEA13の表面に接触しながらジグザグに通った後、残りの空気がセルカートリッジ1の外部へ排出される。具体的には、以下の通りである。
【0077】
まず、図1に示されるように、外部接続部材5の空気導入経路5cから空気が積層体17の内部へ導入される。ついで、空気は、図6〜7に示されるように、空気側気体・温調媒体分離パッキン8の空気導入スリット8cを通った後、電極プレート4の貫通孔4cおよび空気極メタルセパレータ12の導入口12cを通過して、空気極メタルセパレータ12の空気通路12aに導入される。図5および図7に示されるように、空気通路12aは、MEA13に対して開放されているので、空気は、ジグザグ通りながらMEA13へ供給される。MEA13では、空気は、図2に示される気体拡散膜16を通して固体高分子膜14に供給される。固体高分子膜14に到達した空気に含まれる酸素は、固体高分子膜14を通過してきた水素イオンと反応し、その結果、水が生成される。このように水素イオンと酸素の化学反応が行われることによってセル2(MEA13)の内部に電気が発生する。このとき発生した電気は、一対の電極プレート4、5および電極端子24、25を介してセルカートリッジ1の外部に取り出すことができる。
【0078】
空気通路12a内の残りの空気は、水とともに、空気極メタルセパレータ12の排出口12d、電極プレート4の貫通孔4a、および空気側気体・温調媒体分離パッキン8の空気排出スリット8aを通り、最後に、外部接続部材5の空気排出経路5dから空気が積層体17の外部へ排出される。
【0079】
なお、空気極メタルセパレータ12における空気通路12aを通る空気の流れは、自由に設定でき、水素通路11aを通る水素の流れに対して平行流、対向流または直交流のいずれでもよい。
【0080】
(温調媒体経路20について)
純水等の温調媒体が流れる温調媒体経路20は、概略的には、図7に示されるように、セルカートリッジ1の内部において、水素極メタルセパレータ11において水素通路11aの裏側(MEA13に対向する面と反対側)において張出部分11g(図4(b)参照)とパッキン61との間に形成された温調媒体通路11bを通過し、ついで、MEA13を貫通した後に、空気極メタルセパレータ12において空気通路12aの裏側(MEA13に対向する面と反対側)において張出部分12g(図5(b)参照)とパッキン62との間に形成された温調媒体通路12bを通過した後、排出される。具体的には、以下の通りである。
【0081】
まず、図1に示されるように、外部接続部材5の温調媒体導入経路5eから温調媒体が積層体17の内部へ導入される。ついで、温調媒体は、図3および図7に示されるように、水素側気体・温調媒体分離パッキン7の温調媒体導入スリット7bおよび電極プレート3の貫通孔3bを通過した後、水素極メタルセパレータ11において導入口11eから温調媒体通路11bに導入される。温調媒体は、水素通路11aの裏側において水素極メタルセパレータ11と電極プレート3との間に位置する温調媒体通路11b(図4(b)参照)を通りながら、水素極メタルセパレータ11およびMEA13を温度調整する。温調媒体によるMEA13の温度調整は、例えば、運転初期の段階では所定の動作温度になるまでMEA13の温度を上げ、その後、所定の動作温度を維持するためにMEA13を冷却または加温する。
【0082】
水素極メタルセパレータ11およびMEA13を温度調整した後、温調媒体は、水素極メタルセパレータ11の表裏方向に貫通する排出口11fとMEA13の貫通孔13aとを通過し、さらに空気極メタルセパレータ12の表裏方向に貫通する導入口12eを通過して、空気極メタルセパレータ12側の温調媒体通路12bに導入される。温調媒体は、空気通路12aの裏側において空気極メタルセパレータ12と電極プレート4との間に位置する温調媒体通路12b(図5(b)参照)を通りながら、空気極メタルセパレータ12およびMEA13を温度調整する。その後、温調媒体は、空気極メタルセパレータ12の排出口12fから電極プレート4の貫通孔4b、および空気側気体・温調媒体分離パッキン8の温調媒体排出スリット8bを通り、最後に、外部接続部材5の温調媒体排出経路5fから水素が積層体17の外部へ排出される。
【0083】
(並列接続のスタック構造)
上記のように構成されたセルカートリッジ1を複数個積層した状態で互いに連結し、さらに各セルカートリッジ1を所定の接続方式で電気的に接続することにより、1個のスタック構造が形成される。
【0084】
図8に示されるスタック構造31は、並列接続仕様のスタック構造であり、互いに積層して配置された複数のセルカートリッジ1と、カートリッジ連結プレート32と、一対の電極バー33、34とを備えている。
【0085】
カートリッジ連結プレート32は、複数のセルカートリッジ1を積層した状態で各セルカートリッジ1の外周の縁と個別に連結する板状部材であり、本発明のカートリッジ連結部材の概念に含まれるものである。
【0086】
カートリッジ連結プレート32には、複数本(例えば、3本)のボルト50が挿入される貫通孔(図示せず)が形成されており、それぞれの貫通孔には、当該ボルト50が挿入される。これにより、カートリッジ連結プレート32は、当該ボルト50によって各々のセルカートリッジ1における外部接続部材5(図1〜2参照)と連結されている。具体的には、各セルカートリッジ1は、複数本(例えば、3本)のボルト50が外部接続部材5の取付孔5g(図1参照)にねじ込まれることによって、カートリッジ連結プレート32に個別に連結されている。これにより、各セルカートリッジ1は、カートリッジ連結プレート32に対して、個別に着脱することが可能である。なお、ボルト50は、1本でもよい。
【0087】
また、カートリッジ連結プレート32の内部には、各セルカートリッジ1に対して、水素、空気および温調媒体を導入または排出するための通路として、水素導入通路35aと、水素排出通路35bと、空気導入通路35cと、空気排出通路35dと、温調媒体導入通路35eと、温調媒体排出通路35fとが形成されている。各通路35a〜35fは、一端がカートリッジ連結プレート32の側端から外部へ開口し、他端は各セルカートリッジ1における水素、空気および温調媒体の導入または排出用の経路5a〜5fに連通している。すなわち、カートリッジ連結プレート32の水素導入通路35aは、各セルカートリッジ1の水素導入経路5aに連通し、同様に、水素排出通路35bは水素排出経路5bに連通し、空気導入通路35cは空気導入経路5cに連通し、空気排出通路35dは空気排出経路5dに連通し、温調媒体導入通路35eは温調媒体導入経路5eに連通し、温調媒体排出通路35fは温調媒体排出経路5fに連通する。
【0088】
カートリッジ連結プレート32は、種々の材料で製造することが可能であり、例えば、ステンレスなどの金属材料または絶縁材料などで製造することが可能である。カートリッジ連結プレート32が金属などの導体材料で製造される場合には、各セルカートリッジ1の電極端子24、25および電極バー33、34の周囲を絶縁材で被覆してこれらの部位における短絡を防止すればよい。
【0089】
一対の電極バー33、34は、隣接するセルカートリッジ1の電極端子24、25同士を電気的に並列接続する電極接続部である。電極バー33,34は、カートリッジ連結プレート32の外側の面に互いに平行に取り付けられている。なお、電極バー33、34は、カートリッジ連結プレート32の内部に一部または全部埋め込ませてカートリッジ連結プレート32に固定してもよい。
【0090】
各セルカートリッジ1の電極端子24、25は、それぞれ、カートリッジ連結プレート32に形成されたスリット(図示せず)に挿入され、それら先端が対応する電極バー33、34に接触することにより当該電極バー33、34に電気的に接続される。これにより、各セルカートリッジ1は、一対の電極バー33、34を介して互いに並列接続され、その結果、一対の電極バー33、34から、所定の電圧で電流を長時間安定供給することができる。
【0091】
図8に示されるように、複数のセルカートリッジ1は、互いに積層した状態で各セルカートリッジ1の外周の縁と個別にカートリッジ連結プレート32に連結しているので、個々のセルカートリッジ1のメンテナンスや交換が容易になっている。
【0092】
また、各セルカートリッジ1の電極端子24、25に発電能力を監視する装置(発電モニタなど)を接続することで、セルカートリッジ1ごとの発電能力を監視することができる。もし、スタック構造31のうち、ある1つのセルカートリッジ1が不具合が生じた場合には、そのセルカートリッジ1をカートリッジ連結プレート32から外して新しいセルカートリッジ1へ即座に交換することが可能である。また、交換用の予備のセルカートリッジ1がない場合には、取り外したセルカートリッジ1の場所に遮断蓋などを設置することで、漏電の発生を抑え、かつ、燃料流体(水素など)、空気および温調媒体の漏れを防止して、残りの良品のセルカートリッジ1だけで構成されたスタック構造31で運転を継続することができる。
【0093】
(直列接続のスタック構造)
また、図9に示されるスタック構造36のように各セルカートリッジ1同士を直列接続して起電力の大きい燃料電池を構成してもよい。
【0094】
具体的には、図9に示されるスタック構造36は、直列接続のための電極バー37、38、39を備えている。
【0095】
電極バー37、38、39は、それぞれカートリッジ連結プレート32の表面に金属製のピン37a、38a、39aで固定されている。また、それぞれのピン37a、38a、39aは、カートリッジ連結プレート32に形成されたスリットに連通している。そのスリットにセルカートリッジ1の電極端子24,25が挿入されることにより、ピン37a、38a、39aを介して、電極バー37、38、39と電極端子24、25との間が電気的に接続される。
【0096】
電極バー37は、スタック構造36の両端のうちの一端のセルカートリッジ1の電極端子25に接続され、他方、電極バー38は、スタック構造36の両端のうちの他端のセルカートリッジ1の電極端子24に接続されている。また、複数本の電極バー39は、斜め平行に並べられ、隣接するセルカートリッジ1の電極端子24と電極端子25との間をそれぞれ連結している。これにより、スタック構造36内部のすべてのセルカートリッジ1は、直列接続されている。
【0097】
図9に示されるスタック構造36では、カートリッジ連結プレート32の表面に、複数の電極バー39が配置され、図8に示されるスタック構造31のようにボルト締めが困難である。そこで、この構造では、各セルカートリッジ1は、カートリッジ連結プレート32に対してピン51が外部接続部材5の取付孔5g(図1参照)に嵌り込むことによって連結されている。
【0098】
また、図9に示される直列接続のスタック構造36の場合も、不具合のあるセルカートリッジ1があれば、そのセルカートリッジを交換したり、またはその該当場所に遮断蓋を取り付ければよい。なお、この場合、遮断蓋は、直列接続を維持するために、取り出したセルカートリッジ1の電極端子24、25が存在していた2点を電気的に接続するための配線部分が必要である。
【0099】
(並列接続および直列接続を含むスタック構造)
また、図10に示されるスタック構造40のように、複数のセルカートリッジ1を2またはそれ以上のグループ、すなわち、第1の分割スタック、第2の分割スタック、・・・のように分割して共通のカートリッジ連結プレート32にそれぞれ連結し、各分割スタック41、42の中でそれぞれのセルカートリッジ1同士を直列接続または並列接続してもよい。
【0100】
具体的には、図10に示されるスタック構造40は、並列接続の分割スタック41(第1の分割スタック)と、直列接続の分割スタック42(第2の分割スタック)とに構成されている。このスタック構造40では、電極接続部が複数の系統を有するように、カートリッジ連結プレート32には、並列接続用の一対の電極バー43、44と、直列接続用の電極バー47、48、49とが設けられている。
【0101】
並列接続の分割スタック41は、所定の第1の個数(例えば5個)のセルカートリッジ1がカートリッジ連結プレート32の右半分の領域に図9のスタック構造36と同様にピン51によってそれぞれ連結されている。これにより、分割スタック41の内部では、上記の図8のスタック構造31と同様に、カートリッジ連結プレート32に連結されるそれぞれのセルカートリッジの電極端子24、25は、一対の電極バー43、44を介して互いに電気的に並列接続されている。
【0102】
また、直列接続の分割スタック42は、所定の第2の個数(例えば5個)のセルカートリッジ1がカートリッジ連結プレート32の左半分の領域にピン51によってそれぞれ連結されている。これにより、分割スタック42の内部では、上記の図10のスタック構造36と同様に、カートリッジ連結プレート32に連結されるそれぞれのセルカートリッジの電極端子24、25は、一連の電極バー47、48、49を介して互いに電気的に直列接続されている。
【0103】
なお、分割スタック41、42を構成するそれぞれのセルカートリッジ1の個数については、本発明はとくに限定するものではなく、起電力等の諸所の条件に応じて適宜変更してもよい。
【0104】
以上のように1つのスタック構造40が、並列接続の分割スタック41および直列接続の分割スタック42を含むように構成されているので、複数の系統で異なる接続方式を混在させて燃料電池を構成することが可能になり、設計自由度が大幅に拡大する。
【0105】
また、図10のスタック構造40のように、並列接続の分割スタック41および直列接続の分割スタック42を1個ずつ有する構造に本発明は限定されるものではなく、直列接続の分割スタックを複数有する構造や並列接続の分割スタックを複数有する構造、またはそれらの分割スタックが複数ずつ混在された構造でもよい。
統設けてもよい。また、分割スタック41、42の個数をさらに多く増やしても良い。
【0106】
(上記実施形態の特徴)
(1)
本実施形態のセルカートリッジ1では、セル2および電極プレート3、4の積層体17における外周の縁を外部接続部材5および固定バンド6によって閉塞するとともに、当該固定バンド6の周方向巻締め部分6aによって、積層体17の前後両端を保持している。しかも、外部接続部材5は、水素導入経路5a、水素排出経路5b、空気導入経路5c、空気排出経路5d、温調媒体導入経路5eおよび温調媒体排出経路5fを有しているので、セルカートリッジ1の内外の間で水素、空気、および温調媒体の出入を可能にしている。また、セル2で発電した電気を、電極端子24、25を介して、セル2で発電した電気を電極端子24、25を介して電極プレート3、4からセルカートリッジ1の外部へ取り出すことができる。そのため、セルカートリッジ1は、単体で燃料電池として機能することができ、それとともに、セルカートリッジ1単位でその内部の1個または複数のセル2の保持力が厳重に管理された状態で製造され、各セルカートリッジ1単位で品質を維持することができる。その結果、そのセルカートリッジ1を複数個積層するだけで、所定の起電力および持続時間のスタック構造を容易かつ精度よく製造することができる。
【0107】
(2)
しかも、電極端子24、25を介して電極プレート3、4からセルカートリッジ1の外部へ電気を取り出すことによって、セルカートリッジ1単位で起電力や持続時間等の電気的試験をすることができる。その結果、複数のセルカートリッジ1を積層したスタック構造であるにもかかわらず、不良になったセルカートリッジ1の判別および交換が容易になり、メンテナンス性が向上する。
【0108】
また、セルカートリッジ1単体で燃料電池として機能するので、設置スペース等に合わせて、セルカートリッジ1のスタック構造を、一列または複数列にするなどしてスタックを分割して設置することも可能になり、設置自由度が大幅に向上する。
【0109】
(3)
しかも、本発明のセルカートリッジ1は、外部接続部材5および固定バンド6によって積層体17の外周の縁を固定してその積層状態を保持する、いわゆる外周固定法を採用することにより、積層体17に固定用のボルトを貫通させる必要をなくし、あるいはその本数を削減できる。そのため、MEA13の反応面積を有効に利用でき、セルカートリッジ1全体のコンパクト化を図ることができる。このように、本実施形態のセルカートリッジ1の締結方法は、従来のような貫通式のボルトを使用した固定方法ではなく、セル2および電極プレート3、4等などの積層体17の外周の縁を固定バンド6で閉塞しながら固定することにより、簡素かつ強固に固定し、その結果、各セルカートリッジ1の側面を平滑かつコンパクトに構成することができる。
【0110】
また、本実施形態のセルカートリッジ1は、メタルセパレータ11、12を使用したセル2を1〜10個程度の単位で積層することが可能であり、平面薄型のセルカートリッジ1を構成することできる。
【0111】
(4)
また、外部接続部材5は、水素導入経路5a、水素排出経路5b、空気導入経路5c、空気排出経路5d、温調媒体導入経路5eおよび温調媒体排出経路5fを有しているので、これら水素導入経路5a、水素排出経路5b、空気導入経路5c、空気排出経路5d、温調媒体導入経路5eおよび温調媒体排出経路5fをセルカートリッジ1の所定の場所に集めて配置することができる。そのため、複数のセルカートリッジ1を積層してスタック構造を構成する場合に、水素、空気ならびに温調媒体の導入経路や排出経路の一元化が容易になる。
【0112】
(5)
また、本実施形態のセルカートリッジ1では、電極端子24、25が外部接続部材5に配置されているので、電極端子24、25をセルカートリッジ1の所定の場所に集めて配置することができる。そのため、複数のセルカートリッジ1の電極端子24、25同士を電気的に接続しやすくなり、配線が容易になるとともに配線長が短くなるので、送電ロスも低減できる。また、複数のセルカートリッジ1を積層してスタック構造を構成する場合に、水素導入経路5a、水素排出経路5b、空気導入経路5c、空気排出経路5d、温調媒体導入経路5eおよび温調媒体排出経路5fとともに電極端子24、25の一元化も容易になる。
【0113】
(6)
さらに、本実施形態のセルカートリッジ1では、電極端子24、25が外部接続部材5を貫通して外部に出ているので、これらの電極端子24、25を介して、電極プレート3、4からセルカートリッジ1の外部へ電気を容易に取り出すことができる。
【0114】
(7)
また、本実施形態のセルカートリッジ1では、セパレータとして金属薄板からなる水素極メタルセパレータ11および空気極メタルセパレータ12が採用されているので、カーボンなどの材料と比較してセパレータの薄型化を容易に達成でき、かつ、水素極メタルセパレータ11および空気極メタルセパレータ12表面にそれぞれ、水素通路11aおよび空気通路12aをプレス成形によって容易に形成できる。しかも、従来のカーボン製のセパレータなどと比較して、耐衝撃性も向上する。
【0115】
(8)
さらに、本実施形態のセルカートリッジ1では、固定バンド6が、金属薄板からなり、積層体17における外周の縁に巻き締められており、周方向巻締め部分6aが金属薄板のうち積層体17の前後両端に当接して巻き締めるので、セルカートリッジ1の気密性が向上し、しかも、積層体17に付与される締付圧力の調整を容易かつ精度よく行うことができる。
【0116】
(9)
図8〜10に示される本実施形態のセルカートリッジ1のスタック構造31、36、40は、複数個積層された、本実施形態に係るセルカートリッジ1と、セルカートリッジ1を積層した状態で各セルカートリッジ1の外周の縁と個別に着脱自在に連結するカートリッジ連結プレート32と、隣接するセルカートリッジ1の電極端子24、25同士を電気的に接続する電極接続部として、電極バー33〜34、37〜39、43〜44、47〜49を備えている。これらの構成では、複数個のセルカートリッジ1が積層した状態で、各セルカートリッジ1の外周の縁とカートリッジ連結プレート32とが個別に着脱自在に連結されている。そのため、個々のセルカートリッジ1は、他のセルカートリッジ1がカートリッジ連結プレート32部と連結した状態を維持させながら当該カートリッジ連結プレート32から自由に着脱することができる。その結果、個々のセルカートリッジ1のメンテナンスや交換が容易になる。また、図8の電極バー33〜34、図9の37〜39ならびに図11の43〜44および47〜49がそれぞれ、隣接するセルカートリッジ1の電極端子24、25同士を電気的に接続するので、セルカートリッジ1のスタックの個数や各セルカートリッジ1間の電気的な接続方式を容易に変更することが可能であり、その結果、これらのスタック構造31、36、40の設置自由度が高くなる。
【0117】
(10)
また、本実施形態のスタック構造31、36、40では、カートリッジ連結プレート32が各々のセルカートリッジ1における外部接続部材5と連結されている。本実施形態では、各セルカートリッジ1における外部接続部材5は、水素導入経路5a、水素排出経路5b、空気導入経路5c、空気排出経路5d、温調媒体導入経路5eおよび温調媒体排出経路5fを有している。したがって、各セルカートリッジ1における外部接続部材5を、他のセルカートリッジ1の外部接続部材5とともにカートリッジ連結プレート32に連結することにより、カートリッジ連結プレート32の場所で、水素、空気および温調媒体の導入経路や排出経路の一元化が容易になっている。
【0118】
また、電極端子24、25が外部接続部材5に配置されているので、複数のセルカートリッジ1の電極端子24、25同士がカートリッジ連結プレート32の場所に集められるので、電気的に接続しやすくなる。そのため、電極端子24、25間の配線が容易になるとともに配線長が短くなるので、送電ロスも低減できる。
【0119】
(11)
また、図8に示されるスタック構造31のように、電極バー33〜34が隣接する電極端子24、25同士を電気的に並列に接続しているので、各セルカートリッジ1を並列に接続することが可能になり、燃料電池の持続時間を延ばすことが可能になる。
【0120】
(12)
また、図9に示されるスタック構造36のように、電極バー37〜39が隣接する電極端子24、25同士を電気的に直列に接続しているので、各セルカートリッジ1を直列に接続して大きな起電力を得ることができる。
【0121】
(13)
また、図10に示されるスタック構造40では、電極接続部として、少なくとも第1の系統である並列接続用の電極バー43〜44および第2の系統である直列接続用の電極バー47〜49を有している。隣接するある個数のセルカートリッジ1は、それらの電極端子24、25同士が並列接続用の電極バー43〜44によって電気的に接続されることによって第1の分割スタック41を構成し、その他の隣接するある個数のセルカートリッジ1は、それらの電極端子24、25同士が直列接続用の電極バー47〜49によって電気的に接続されることによって第2の分割スタック42を構成している。このような構成によって、隣接する所定のある個数のセルカートリッジ1の単位で複数の分割されたスタック41、42を構成することが可能になるので、所定個数単位でセルカートリッジ1を直列接続または並列接続することが可能になり、スタック構造40の全体の設計自由度が大幅に拡大する。
【0122】
(変形例)
(A)
上記の実施形態では、図2に示されるようにセル2を1個だけ有するセルカートリッジ1の構造が一例として示されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、個々のセルカートリッジ1の内部においてセル2を複数個積層させて互いに直列接続することにより、多数のセル2を積層させたセルカートリッジ1を構成することが可能である。その場合は、外部接続部材5における水素、空気および温調媒体の出入口の構造を変更するとともに、かつ、固定バンド6の幅を変更するなどして多数のセル2に対応するように設計および製造すればよい。
【0123】
(B)
なお、水素と反応する気体として空気を用いる場合には、外部接続部材5から空気導入経路5cを通して空気を導入する代わりに、セルカートリッジ1周囲の外気を取り込むことができるように固定バンドの任意の位置に空気導入口を設けるとともに、固定バンド6の任意の位置に空気および水蒸気のための排出口を設けてもよい。その場合、外部接続部材5とは別の位置で、空気の出入が可能になり、セルカートリッジ1の設計自由度がさらに拡大する。
【0124】
(C)
上記実施形態のセルカートリッジ1では、本発明の第2閉塞部材の一例として、積層体17の外周の縁を金属薄板などからなる固定バンド6を用いて巻き締めて積層体17の外周を固定した例が示されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の形態または材料からなる閉塞部材を採用することができる。
【0125】
例えば、他の外周固定方法として、紫外線硬化樹脂を積層体17の外周縁に塗布した後に紫外線を照射して当該樹脂を固化させることによって積層体17を一体になるように固定してもよい。その場合、セルカートリッジ1の気密性が向上し、しかも、積層体17の連結作業を容易に行うことができる。
【0126】
(D)
さらに他の外周固定方法として、積層体17の外周縁に合成樹脂などの材料を射出成形することによって積層体17と樹脂を一体化させる複合成形固定法を用いてもよい。この場合、第2閉塞部材は、合成樹脂などの材料を射出成形することによって形成される。合成樹脂などの材料は、射出成形時に高圧をかけられた状態で積層体17がセットされた金型内部に注入されるので、積層体17の周縁を被覆するだけでなく、その周縁近傍の積層体17の内部まで入り込んで被覆する。その結果、セルカートリッジ1の気密性が大幅に向上する。しかも、積層体17の連結作業を容易に行うことができる。
【0127】
(E)
上記実施形態の図8〜9に示されるスタック構造31、36では、ボルト50またはピン51によって、カートリッジ連結プレート32に各セルカートリッジ1を個別に着脱自在に連結できるように構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の機構によってセルカートリッジ1とカートリッジ連結プレート32との間の連結を行っても良い。例えば、図11に示されるセルフロック機構54のように、セルカートリッジ1をカートリッジ連結プレート32の所定の位置に当接させるだけでセルカートリッジ1とカートリッジ連結プレート32との間の連結をワンタッチで行うことが可能な構成にしてもよい。
【0128】
図11に示されるセルフロック機構54は、具体的には、各セルカートリッジ1の上下の端面に設けられた突起55と、カートリッジ連結プレート32の上下の端面に設けられた台座57と、台座57に取り付けられたフック56とによって構成されている。
【0129】
突起55は、セルカートリッジ1の上下の端面の表面から突出しており、例えば、三角柱状の突起などが用いられる。
【0130】
台座57は、カートリッジ連結プレート32の上下端に固定されている。
【0131】
フック56は、ヒンジ部58を介して、台座57に対して揺動自在に連結されている。フック56の先端には、突起55と係合可能な爪部56aが形成されている。
【0132】
ヒンジ部58は、回転バネ(図示せず)を内蔵しており、フック56を突起55へ向かう方向へ回転力を常時与えている。
【0133】
このように構成されたセルフロック機構54では、セルカートリッジ1をカートリッジ連結プレート32に近づければ、セルカートリッジ1の上下端の突起55がフック56を一旦押し上げる。さらに、セルカートリッジ1をカートリッジ連結プレート32に近づければ、突起55がフック56の爪部56aを通過したときに、フック56はヒンジ部58の回転バネの付勢力によって元の位置へ戻ることによってフック56は突起55に係合する。その結果、セルフロック機構54によって、セルカートリッジ1をカートリッジ連結プレート32の所定位置にロックすることができる。
【0134】
一方、セルカートリッジ1を取り外すときには、セルカートリッジ1をカートリッジ連結プレート32から離れる方向へ引き抜くときに、突起55がフック56を押し上げ、フック56と突起55との係合が外れるので、それにより、取り外したい所望のセルカートリッジ1だけをスタック構造の中から容易に取り出すことができる。
【0135】
(F)
図10に示されるスタック分割の構造では、第1分割スタック41がセルカートリッジ1同士が並列接続され、第2分割スタック42がセルカートリッジ1同士が直列接続されているのが、本願発明はこれに限定されるものではなく、種々の配線レイアウトを採用することができる。例えば、両方の分割スタック41、42がいずれも直列接続または並列接続するようにしてもよい。
【0136】
(G)
上記の実施形態における図8〜10に示されるスタック構造31、36、40では、セルカートリッジ1を積層した状態で各セルカートリッジ1の外周の縁と個別に連結するカートリッジ連結部材の一例として、板状のカートリッジ連結プレート32を例にあげて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各セルカートリッジ1の外周の縁と個別に連結することが可能な形状および構造であれば、種々の形状または構造を有するカートリッジ連結部材を採用することができる。
【0137】
(H)
また、上記の実施形態における図10に示されるスタック構造40では、各セルカートリッジ1への水素、空気および温調媒体の導入経路および排出経路が共通化されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、各分割スタック41、42ごとに、水素、空気および温調媒体の導入経路および排出経路を設けるようにしてもよい。その場合、各分割スタック41、42単位で、水素、空気および温調媒体の供給を制御することができるので、必要に応じて、スタック構造全体の発電能力を細かく調整することが可能になる。
【0138】
(I)
また、上記の実施形態では、電極端子24、25は、外部閉塞部材5(第1閉塞部材)を貫通して外部に引き出されているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の変形例として、電極端子24、25は、積層体17における外周の縁のうち第1閉塞部材で閉塞されていない残りの部分を閉塞する第2閉塞部材を貫通して外部に引き出されるようにしてもよい。例えば、第2閉塞部材を射出成形によって形成する場合には、電極端子24、25が外部に突出するように、積層体17の外周の縁の部分に第2閉塞部材を射出成形すればよい。これにより、電極端子24、25を射出成形された第2閉塞部材を貫通して任意の位置から外部に引き出すことが可能である。
【符号の説明】
【0139】
1 セルカートリッジ
2 セル
3、4 電極プレート
5 外部接続部材(第1閉塞部材)
5a 水素導入経路(燃料流体導入経路)
5b 水素排出経路(燃料流体排出経路)
5c 空気導入経路
5d 空気排出経路
5e 温調媒体導入経路
5f 温調媒体排出経路
6 固定バンド(第2閉塞部材)
6a 周方向巻締め部分(保持部)
6b 上下方向巻締め部分
11 水素極メタルセパレータ
12 空気極メタルセパレータ
13 MEA(膜電極接合体)
18 水素経路
19 空気経路
20 温調媒体経路
24、25 電極端子
31、36、40 スタック構造
32 カートリッジ連結プレート(カートリッジ連結部材)
33、34 電極バー(図8)
37、38、39 電極バー(図9)
43、44、47、48、49 電極バー(図10)
50 ボルト
51 ピン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子形燃料電池のセルカートリッジであって、
膜電極接合体および当該膜電極接合体を挟んでその両側に積層された平板状の一対のセパレータを有する少なくとも1個のセルと、
前記一対のセパレータの外側において、前記セルを両側から挟むように積層された一対の電極プレートと、
前記セルおよび前記電極プレートが互いに積層して構成された積層体における外周の縁の一部を閉塞するとともに、燃料流体を前記セルカートリッジの外部から前記セルへ導入する燃料流体導入経路および前記燃料流体を前記セルから前記セルカートリッジの外部へ排出する燃料流体排出経路を有する第1閉塞部材と、
前記積層体における外周の縁のうち前記第1閉塞部材で閉塞されていない残りの部分を閉塞する第2閉塞部材と、
前記電極プレートから前記セルカートリッジの外部へ電気を取り出す電極端子と
を備えており、
前記第2閉塞部材は、前記積層体を積層方向における前後両端から保持する保持部を有している、
ことを特徴とする固体高分子形燃料電池セルカートリッジ。
【請求項2】
前記電極端子は、前記第1閉塞部材に配置されている、
請求項1に記載の固体高分子形燃料電池セルカートリッジ。
【請求項3】
前記電極端子は、前記第1閉塞部材または第2閉塞部材を貫通して外部に出ている、
請求項1または2に記載の固体高分子形燃料電池セルカートリッジ。
【請求項4】
前記セパレータは、金属薄板からなる、
請求項1から3のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池セルカートリッジ。
【請求項5】
前記第2閉塞部材は、金属薄板からなり、前記積層体における外周の縁に巻き締められており、
前記保持部は、前記金属薄板のうち前記積層体の前後両端に当接する巻締め部分である、
請求項1から4のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池セルカートリッジ。
【請求項6】
前記第2閉塞部材は、紫外線硬化樹脂からなる、
請求項1から4のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池セルカートリッジ。
【請求項7】
前記第2閉塞部材は、射出成形によって形成されている、
請求項1から4のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池セルカートリッジ。
【請求項8】
固体高分子形燃料電池セルカートリッジのスタック構造であって、
複数個積層された、請求項1から7のいずれかに記載のセルカートリッジと、
前記セルカートリッジを積層した状態で各セルカートリッジの外周の縁と個別に着脱自在に連結する連結部を有するとともに前記セルカートリッジの積層状態を保持するカートリッジ連結部材と、
隣接する前記セルカートリッジの前記電極端子同士を電気的に接続する電極接続部と
を備えていることを特徴とする、固体高分子形燃料電池セルカートリッジのスタック構造。
【請求項9】
前記カートリッジ連結部材は、各々の前記セルカートリッジにおける前記第1閉塞部材と連結されている、
請求項8に記載の固体高分子形燃料電池セルカートリッジのスタック構造。
【請求項10】
前記電極接続部は、隣接する前記電極端子同士を電気的に直列に接続する、
請求項8または9に記載の固体高分子形燃料電池セルカートリッジのスタック構造。
【請求項11】
前記電極接続部は、隣接する前記電極端子同士を電気的に並列に接続する、
請求項8または9に記載の固体高分子形燃料電池セルカートリッジのスタック構造。
【請求項12】
前記電極接続部は、少なくとも第1の系統および第2の系統を有しており、
隣接する所定の第1の個数の前記セルカートリッジは、それらの前記電極端子同士が前記電極接続部の第1の系統によって電気的に接続されることによって第1の分割スタック構造を構成し、その他の隣接する所定の第2の個数の前記セルカートリッジは、それらの前記電極端子同士が前記電極接続部の第2の系統によって電気的に接続されることによって第2の分割スタック構造を構成する、
請求項8から11のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池セルカートリッジのスタック構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−186040(P2012−186040A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48740(P2011−48740)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000191180)新日本工機株式会社 (51)
【Fターム(参考)】