説明

固化物自動粉砕装置

【課題】 長期間使用しても粉砕能力を安定的に維持でき、しかも加振機を要することなく篩分網が振動して効率的に篩い分けできる低コストの固化物自動粉砕装置を提供する。
【解決手段】 固化物を投入する投入シュート2と、振動可能に弾支して投入シュート2に投入された固化物を滑落させる傾斜板5と、その傾斜板5上で滑落中の固化物を上方から自重で押圧して粉砕する上下動可能な電動の押圧ローラー7と、傾斜板5の下流位置に設けて押圧ローラー7を通過した固化物を粉粒体と未粉砕の固化物に篩い分ける篩分網12と、その篩分網12に残された未粉砕の固化物を押圧ローラー7の上流位置にブロワー17の送風力で圧送するリターンダクト16と、篩分網12を通過した粉粒体を排出する粉粒体排出シュート13とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体が固化した固化物を粉砕して粉粒体を回収するための固化物自動粉砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳物工場では鋳造後に鋳型を解体して出た鋳物砂塊を粉砕し、鋳物砂を回収して再利用している。これに使用する鋳物砂回収装置が非特許文献1で開示されている。この技術は、環状の枠体間に多数本の丸鋼を小間隔おいて架設して円筒状のトロメルを構成し、これをドラム内にその内面から間隔をおいて取り付けた構造を特徴としている。この技術によれば、ドラムを回転させて鋳物砂塊をトロメル内に投入すると、鋳物砂塊が丸鋼に引っ掛かって回転方向へ持ち上げられた後、自重で落下して粉砕され、その粉砕された鋳物砂が丸鋼間の間隙からドラムの内面に排出され、混入物が丸鋼に引っ掛かってトロメル内に残ることで分別できるようにした、というものである。
【0003】
ところで、非特許文献1記載の技術は、落下による衝撃の繰り返しで粉砕する方法であるが、硬い鋳物砂塊(以下ガラ・ダマという)は落下による衝撃では粉砕されにくく、粉砕不十分のガラ・ダマは丸鋼間の間隙を通過できずにトロメル内に残ってしまい、鋳物砂として再利用されずに混入物とともに産業廃棄物として処理されていた。
【0004】
この問題に対し、硬い鋳物砂塊でも強制的に粉砕できる鋳物砂回収装置が特許文献1で提案されている。この技術は、一対の弾性ローラーを所定間隔おいて軸支し、片方の弾性ローラーの軸を弾性ローラー間が所定間隔以上に拡開できるように圧縮バネを介して架台に取り付け、弾性ローラー間の下方に篩分網を傾斜させて配置した構造を特徴としている。この技術によれば、弾性ローラーを駆動させてガラ・ダマを弾性ローラー間に投入すると、ガラ・ダマが弾性ローラーの表面に埋没又は弾性ローラー間を拡開して通過し、その通過時の弾性ローラーと圧縮バネの反発力でガラ・ダマを圧砕し、その後篩分網で鋳物砂と混入物を分別できるようにした、というものである。
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の技術では以下のような問題があった。
1)長期間使用していると圧縮バネの付勢力が経年劣化で徐々に低下し、弾性ローラー間がわずかな力で拡開されてガラ・ダマが粉砕不十分のまま通過し、鋳物砂の回収率が低下することがある。
2)篩分網は振動しないから、加振機を取り付けて振動を積極的に与えないと篩い分けが効率的に行われ難い。
3)駆動できる弾性ローラーが2体必要で、製作コストがかかる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】”クーラークラッシャー 株式会社清田鋳機”、[online]、株式会社清田鋳機、「平成22年3月19日検索」、インターネット<URL:http://www.kiyotacyuki.ecnet.jp/cooler.html>
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−202360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、長期間使用しても粉砕能力を安定的に維持でき、しかも加振機を要することなく篩分網が振動して効率的に篩い分けできる低コストの固化物自動粉砕装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 粉粒体が固化した固化物を粉砕して粉粒体を回収するための固化物自動粉砕装置であって、固化物を投入する投入シュートと、振動可能に弾支して投入シュートに投入された固化物を滑落させる傾斜板と、その傾斜板上で滑落中の固化物を上方から自重で押圧して粉砕する上下動可能な押圧ローラーと、その押圧ローラーを駆動させる駆動手段と、傾斜板の下流位置に設けて押圧ローラーを通過した固化物を粉粒体と未粉砕の固化物に篩い分ける篩分網と、その篩分網に残された未粉砕の固化物を押圧ローラーの上流位置にブロワーの送風力で圧送するリターンダクトと、篩分網を通過した粉粒体を排出する粉粒体排出シュートとで構成したことを特徴とする、固化物自動粉砕装置
2) 投入シュートに投入された固化物を粉砕可能な固化物と粉砕不能な固化物に篩い分ける予備篩分網を傾斜板の上流位置に設け、その予備篩分網に残された粉砕不能な固化物を排出する粉砕不適物排出シュートを設けた、前記1)記載の固化物自動粉砕装置
3) リターンダクトの途中位置に未粉砕の固化物を比重分離して比重の大きい固化物を排出する比重分離部を設けた、前記1)又は2)記載の固化物自動粉砕装置
4) 固化物が、鋳造後に鋳型から解体した鋳物砂塊である、前記1)〜3)いずれか記載の固化物自動粉砕装置
にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
1)押圧ローラーの自重で固化物を粉砕するから、従来技術で使用していた圧縮バネなど経年劣化し易い箇所がなく、長期間使用しても安定した粉砕能力を維持できる。
2)押圧ローラーと傾斜板の間に固化物が通過する際、押圧ローラーがその厚みに応じて上下動して傾斜板が振動し、その振動が篩分網に伝播して篩い分けが効率的に行われる。したがって、加振機を取り付ける必要がない。
3)押圧ローラーは1体で済むから、製作コストを従来技術より低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例の固化物自動粉砕装置の側面図である。
【図2】実施例の固化物自動粉砕装置の平面図である。
【図3】実施例の固化物自動粉砕装置の縦断面図である。
【図4】実施例の固化物自動粉砕装置の使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を実施例と図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0013】
図1は実施例の固化物自動粉砕装置の側面図、図2は実施例の固化物自動粉砕装置の平面図、図3は実施例の固化物自動粉砕装置の縦断面図、図4は実施例の固化物自動粉砕装置の使用状態を示す説明図である。
【0014】
図中、1は架台、2は投入シュート、3は予備篩分網、4は粉砕不適物排出シュート、5は傾斜板、5aは排出口、6はバネ、7は押圧ローラー、7aはローラー軸、8はアーム、8aはストッパー、9は支軸、10はモーター(駆動手段)、10aは出力軸、11は駆動チェーン、12は篩分網、13は粉粒体排出シュート、14は中粒粉砕不適物篩分網、15はリターン用シュート、16はリターンダクト、17はブロワー、18は比重分離部、19は重量物排出シュート、Aはガラ・ダマ(固化物)、aは鋳物砂(粉粒体)、Bは混入物である。
【0015】
本実施例の固化物自動粉砕装置は、図1〜3に示すように、架台1の上部に投入シュート2を取り付け、その投入シュート2の下方に傾斜板5をバネ6で弾支し、その傾斜板5の始端部に1.5メッシュの予備篩分網3を取り付け、その予備篩分網3の側方に粉砕不適物排出シュート4を取り付けている。架台1の外面は消音マットを張設して密閉し、遮音できるようにしてもよい。
【0016】
傾斜板5の中間には押圧ローラー7を配置し、その押圧ローラー7をアーム8の先端に軸支し、そのアーム8の基端を架台1に支軸9で上下動可能に軸支している。ストッパー8aは、押圧ローラー7の上下動を一定範囲に規制するためのものである。架台1の後部には減速機を備えたモーター10を取り付け、そのモーター10の出力軸10aと押圧ローラー7のローラー軸7aの間に駆動チェーン11を掛架している。傾斜板5は前後上下に移設可能にし、押圧ローラー7との間隙を調節できるようにしてもよい。
【0017】
傾斜板5の下流の途中には8メッシュの篩分網12を斜面に沿って連続的に取り付け、その篩分網12の下方に粉粒体排出シュート13を取り付けている。傾斜板5の下流には3メッシュの中粒粉砕不適物篩分網14を斜面に沿って連続的に取り付け、その中粒粉砕不適物篩分網14の下方にリターン用シュート15を取り付けている。傾斜板5の終端は開口して排出口5aを形成している。
【0018】
架台1の上部にはブロワー17を取り付け、そのブロワー17と投入シュート2の側面との間にリターンダクト16を傾斜板5の下方を迂回させて接続し、そのリターンダクト16の途中とリターン用シュート15の終端を接続している。リターンダクト16の終端部は投入シュート2を周回するように接続している。リターンダクト16の途中は拡幅して比重分離部18を形成し、その比重分離部18の側面に重量物排出シュート19を取り付けている。
【0019】
以下、本実施例の固化物自動粉砕装置を使用したガラ・ダマAの粉砕と分別について説明する。図4に示すように、モーター10を作動させると、押圧ローラー7が最下位置で時計回りに回転する。ブロワー17を作動させると、吸引された空気がリターンダクト16に圧送されて投入シュート2内で渦流を形成し、リターン用シュート15内には負圧が生じる。
【0020】
投入シュート2にガラ・ダマAを投入すると予備篩分網3に落下し、予備篩分網3上に残された大粒(傾斜板5と押圧ローラー7との最大間隔を著しく超える粒径)のガラ・ダマAや混入物Bは粉砕不適として粉砕不適物排出シュート4で排出され、予備篩分網3を通過したガラ・ダマAは傾斜板5の始端部に落下する。
【0021】
傾斜板5に落下したガラ・ダマAは自重で滑落して押圧ローラー7の下方に挟まれ、押圧ローラー7の自重による圧迫と回転と摩擦で粉砕されながら送り出される。このガラ・ダマAの通過時に押圧ローラー7が上下動して傾斜板5が振動し、その振動による押圧ローラー7の下方への動き(叩打作用)でガラ・ダマAの粉砕が促進されるとともに、振動が予備篩分網3と篩分網12に伝播して篩い分けが効率的に行われる。また、押圧ローラー7はストッパー8aで上方への動きが一定以下に規制されているから、ガラ・ダマAが相当に硬くても傾斜板5と押圧ローラー7との最大間隔以下の粒径までに強制的に圧砕される。
【0022】
押圧ローラー7で粉砕された鋳物砂aは傾斜板5上をさらに滑落し、篩分網12で篩い分けられる。篩分網12を通過した鋳物砂aは粉粒体排出シュート13で外部に排出されて回収され、篩分網12に残された粉砕不十分のガラ・ダマAは傾斜板5の終端まで滑落し、中粒粉砕不適物篩分網14でさらに篩い分けられる。中粒粉砕不適物篩分網14を通過した再粉砕可能なガラ・ダマAはリターン用シュート15に落下して負圧によりリターンダクト16に吸引され、中粒粉砕不適物篩分網14上に残された粉砕不十分のガラ・ダマAは粉砕不適として傾斜板5の排出口5aから排出される。
【0023】
リターンダクト16に吸引されたガラ・ダマAはブロワー17の送風で比重分離部18に圧送される。比重分離部18では比重の小さいガラ・ダマAがブロワー17の送気で押し上げられて投入シュート2に戻され、比重の大きい混入物Bは押し上げられずに重量物排出シュート19で排出される。投入シュート2に戻されたガラ・ダマAは再び予備篩分網3に落下し、前記の工程が繰り返されて粉砕・分別され、鋳物砂aが回収される。このようにして、従来技術の鋳物砂回収装置で粉砕できずに廃棄物として処理していたガラ・ダマAが鋳物砂aと廃棄物とに分別され、廃棄物の量を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の技術は、主として鋳造後に鋳型から解体した鋳物砂塊を粉砕して再利用可能な鋳物砂を回収する用途に利用されるが、その他、産業廃棄物の固形物、燃え殻、ガラスくず、コンクリートくず、レンガくず、陶磁器くず、鉱さい、がれき類等や、砥石、貝殻、天然岩石類等の粉砕・粉体化や分別、及び、食料品や家畜の飼料等の製造にも応用できる。
【符号の説明】
【0025】
1 架台
2 投入シュート
3 予備篩分網
4 粉砕不適物排出シュート
5 傾斜板
5a 排出口
6 バネ
7 押圧ローラー
7a ローラー軸
8 アーム
8a ストッパー
9 支軸
10 モーター(駆動手段)
10a 出力軸
11 駆動チェーン
12 篩分網
13 粉粒体排出シュート
14 中粒粉砕不適物篩分網
15 リターン用シュート
16 リターンダクト
17 ブロワー
18 比重分離部
19 重量物排出シュート
A ガラ・ダマ(固化物)
a 鋳物砂(粉粒体)
B 混入物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体が固化した固化物を粉砕して粉粒体を回収するための固化物自動粉砕装置であって、固化物を投入する投入シュートと、振動可能に弾支して投入シュートに投入された固化物を滑落させる傾斜板と、その傾斜板上で滑落中の固化物を上方から自重で押圧して粉砕する上下動可能な押圧ローラーと、その押圧ローラーを駆動させる駆動手段と、傾斜板の下流位置に設けて押圧ローラーを通過した固化物を粉粒体と未粉砕の固化物に篩い分ける篩分網と、その篩分網に残された未粉砕の固化物を押圧ローラーの上流位置にブロワーの送風力で圧送するリターンダクトと、篩分網を通過した粉粒体を排出する粉粒体排出シュートとで構成したことを特徴とする、固化物自動粉砕装置。
【請求項2】
投入シュートに投入された固化物を粉砕可能な固化物と粉砕不能な固化物に篩い分ける予備篩分網を傾斜板の上流位置に設け、その予備篩分網に残された粉砕不能な固化物を排出する粉砕不適物排出シュートを設けた、請求項1記載の固化物自動粉砕装置。
【請求項3】
リターンダクトの途中位置に未粉砕の固化物を比重分離して比重の大きい固化物を排出する比重分離部を設けた、請求項1又は2記載の固化物自動粉砕装置。
【請求項4】
固化物が、鋳造後に鋳型から解体した鋳物砂塊である、請求項1〜3いずれか記載の固化物自動粉砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−194349(P2011−194349A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65497(P2010−65497)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(591159262)株式会社清田鋳機 (5)
【Fターム(参考)】