説明

固定された階段または歩道またはスロープ等の側部や中央部に配置・固設して、人の歩行移動を補助する自動手摺り移動機器。

【課題】 自動手摺り移動機器本体のコンパクト化や自動手摺り移動機器本体を構成する各部品の選択範囲を広めた自動手摺り移動機器、さらに、既存や新設の階段の長さや勾配に対応することができる調整機構を備えた自動手摺り移動機器を提供する。
【解決手段】 既存や新設の階段または歩道またはスロープ等の側部や中央部における最適な位置に配置し取り付ける施工時に、固定する側の階段または歩道またはスロープ等に対し、はつり作業等の追加工事や、予め特別な拡張部等を施工することなく、最適な位置に配置して取り付けられる外観形状や寸法を有している自動手摺り移動機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者が固定された階段または歩道またはスロープ等を歩行移動する際に、肉体的な負担の軽減や安定した移動を促進する自動手摺り移動機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各事務所用ビルをはじめ、総合スーパーマーケット・デパート等の商業用ビル、ホテル・マンション等の宿泊用や住居用ビルなど各種建築物における階層間の歩行者の移動や、連絡路とホーム間の平面位置が異なる駅などにおける歩行者の移動においては、階段やエスカレータ、エレベータ等を設置して対応し、また、建築物間を結ぶ歩道やスロープ等などにおける歩行者の移動においては、歩行移動距離が長く、また、往来する歩行者数が多い場合には動く歩道を設置して対応し、それぞれ多くの歩行者に利用されて来た。
そして、前述したエスカレータを始めエレベータや動く歩道においては、人力に頼らずに肉体的な負担の軽減や安定した移動が促進されるなど便利であり広く採用されている。
【0003】
しかし、エスカレータを始めエレベータや動く歩道の設置費用は高額であり、保守点検費用等も嵩むこと等の理由により設置できる範囲が限定される傾向があり、また、既存の建築物に後から配置・固設する場合は勿論のこと、新設の建築物に配置・固設する場合においても取り付け部のスペースの関係等、解決しなければならない問題点も多々あるが、急速に高齢化が進む社会において、外出先や家庭内においても高齢者や膝・腰等体に支障をきたす弱者等が歩行移動する際に肉体的な負担の軽減や安定した移動が促進される環境を整えることは急務でもある。
【発明の開示】

【発明が解決しようとしている課題】
【0004】
そこで、上述した問題に鑑み、歩行者が固定された階段または歩道またはスロープ等を利用して歩行移動する際に、肉体的な負担の軽減や安定した移動が促進される自動手摺り移動機器を本特許出願人と同一出願人による出願番号特願2008−292789おいて提案し、そして初期の目的を達成することができた。
【0005】
本発明は、本特許出願人と同一出願人による出願番号特願2008−292789において提案した自動手摺り移動機器に対して、自動手摺り移動機器本体のコンパクト化や自動手摺り移動機器本体を構成する各部品の選択範囲を広めた自動手摺り移動機器、さらに、既存や新設の階段または歩道またはスロープ等の諸条件に対応できる自動手摺り移動機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の自動手摺り移動機器は、既存や新設の階段または歩道またはスロープ等の側部や中央部における最適な位置に配置し取り付ける施工時に、固定する側の階段または歩道またはスロープ等に対し、はつり作業等の追加工事や、予め特別な拡張部等を施工することなく、最適な位置に配置して取り付けられる外観形状や寸法をしている。
【0007】
また、上記目的を達成するために、請求項2記載の自動手摺り移動機器は、既存や新設の階段または歩道またはスロープ等の側部や中央部における最適な位置に配置し取り付ける施工時に、固定する側の階段または歩道またはスロープ等に対し、はつり作業等の追加工事や、予め拡張部等を施工しておくことによって、最適な位置に配置して取り付けられる外観形状や寸法を有している。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項3記載の自動手摺り移動機器は、階段の長さや階段の勾配に対応することができる調整機構を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自動手摺り移動機器は、以下に記載されるような効果を奏する。
既存や新設の階段または歩道またはスロープ等の側部や中央部における最適な位置に配置し取り付ける施工時に、固定する側の階段または歩道またはスロープ等に対し、はつり作業等の追加工事や、予め特別な拡張部等を施工することなく、最適な位置に配置して取り付けられる外観形状や寸法を有すコンパクト化した自動手摺り移動機器は、はつり作業等の追加工事や、予め特別に拡張部等を設ける施工が不要なため、取り付け施工期間の短縮化や施工費用の低減化を図れ、また、多くの既存や新設の階段または歩道またはスロープ等に対応し配置・固設することができる。
【0010】
既存や新設の階段または歩道またはスロープ等の側部や中央部における最適な位置に配置し取り付ける施工時に、固定する側の階段または歩道またはスロープ等に対し、はつり作業等の追加工事や、予め拡張部等を施工しておくことによって、最適な位置に配置して取り付けられる外観形状や寸法を有す自動手摺り移動機器は、自動手摺り移動機器本体に採用する各種部品の寸法や配置位置等、諸条件が緩和されるために、設計の自由度が高まる。
よって、リング状の手摺りを駆動する電動機に大型で高出力型の電動機の採用や、また、各部位の耐久性を高めた部品及び部材等を採用することにより、複数の利用者にも対応できる高品位で高性能なより完成度を高めた自動手摺り移動機器を提供することができる。
【0011】
また、階段の長さや階段の勾配に対応することができる調整機構を備えた自動手摺り移動機器は、より多くの既存や新設の階段または歩道またはスロープ等に対応することができる。
そして、工場等での量産化が可能なため量産効果で安価に製造・提供でき、そして、受注後に階段の長さや勾配α等、諸条件に適合させた自動手摺り移動機器を素早く組み立て出荷することも可能になる。
さらに、家庭用等の自動手摺り移動機器を取り付け現場において現場合わせで配置し取り付ける場合においても、階段の長さや勾配α等、諸条件に容易に適応させて最適な位置に配置して取り付けることができる。
【0012】
そして、自動手摺り移動機器を家庭内や各種建築物の階段に、また、外出先における歩道またはスロープ等に普及させることによって、高齢者や、膝・腰等体に支障をきたす弱者等が歩行移動する際の肉体的な負担の軽減や安定した移動を可能とするインフラ環境を提供することができる。
さらに、自動手摺り移動機器は、エスカレータやエレベータと比べ確実に能力は劣るが、反面、利用者に対して積極的に又は強制的に歩行移動を要求するため、利用者は必然的に体を動かし運動が促進される効果もある。
また、自動手摺り移動機器は、利用者がリング状の手摺りを握り締め続けることによって、リング状の手摺りが支えとなり、特に、高齢者や、膝・腰等体に支障をきたす弱者等が歩行移動する際の移動に伴う事故を軽減すこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
始めに概要を説明する。
自動手摺り移動機器本体は、既存や新設の階段または歩道またはスロープ等に、はつり作業等の追加施工や、予め特別な拡張部等を施工することなく基礎側の最適な位置に配置して取り付けできるように、自動手摺り移動機器のリング状の手摺り上面部と各両端部、さらに階段面上方の自動手摺り移動機器本体下部で構成する内側部分に、リング状の手摺りを支持する支持部を始め、リング状の手摺り駆動装置や前記手摺り駆動装置を制御する手摺り駆動制御装置等、主要な各種装置や構成部品が極力配置され基部側に固定された設計が望ましい。
【0014】
また、自動手摺り移動機器本体を上下方向から見た全幅においては、階段部分を広く確保できるように可能な限り幅狭く設計することが望ましく、自動手摺り移動機器本体の側面部においては、利用者側と主要な各種装置や構成部品が配置された基部側間がカバー等によって間仕切られ、さらにカバー等の表面は利用者の邪魔にならないよう可能な限り平面状に成形しておくとよい。
さらに、例えば、二台の自動手摺り移動機器本体を背中合わせで組み合わせて階段の中央部に配置して取り付け、互いに反対方向に運転する場合も十分に考えられ、その対応として自動手摺り移動機器本体の背面部においても可能な限り平面状に成形しておくとよい。
【0015】
自動手摺り移動機器本体は、本体基部側の適宜な位置に設定された取り付け部や取り付け部品等を介して既存や新設の階段または歩道またはスロープ等における基礎側にアンカーボルト等の固定具によって堅牢に固設される。
【0016】
詳細に説明する。
図面1は、請求項1記載の自動手摺り移動機器の一実施例を示す側面方向の概略説明図である。
実施例では、階段2の側端部の最適な位置に自動手摺り移動機器1が配置され取り付けられた状態で、自動手摺り移動機器1におけるリング状の手摺り3は、上下方向から見て直線上に摺動し、また、説明上、自動手摺り移動機器1を上り運転状態に設定してある。
【0017】
自動手摺り移動機器1本体は、階段2や床面D・床面F等に堅牢に固設するか、本体背面部が壁面であればその壁面に堅牢に固設する場合も考えられる。
【0018】
図面1において、1は自動手摺り移動機器であり、利用者がリング状の手摺り3を自然な姿勢で握り締め続けられるように、リング状の手摺り3の区間Aが床面Dに、区間Bが階段2の勾配線E−E´に、また、区間Cが床面Fにそれぞれ平行状態で対応するように配置され取り付けられている。
そして、リング状の手摺り3は、位置G付近から戻り走行路となり、利用者の足部や持ち物等と接触しないように自動手摺り移動機器本体内部に入り、位置G´付近から、再び自動手摺り移動機器本体外部へ操出される。
【0019】
そして自動手摺り移動機器1は、リング状の手摺り3上面部の区間A、区間B、区間Cと下端部4及び上端部5さらに、階段2と床面D及び床面Fの各上方の自動手摺り移動機器本体下部6で構成する内側部分7に、リング状の手摺り3を支持する支持部を始め、リング状の手摺りの駆動装置や前記手摺り駆動装置を制御する手摺り駆動制御装置等、主要な各種装置や構成部品が極力配置され自動手摺り移動機器の本体基部に固定されている。
【0020】
また、上述した自動手摺り移動機器1における本体下部6の範囲は、複数の利用者に同時に対応する大型の自動手摺り移動機器の場合、利用者への安全対策上、図面1のように、階段2の各面と床面D及び床面Fまでを最大範囲とし、階段2の各面と床面D及び床面Fまで全てを塞いでおくとよい。
【0021】
図面1の自動手摺り移動機器1では、リング状の手摺り3における区間Aが平面状の床面Dに、区間Bが階段2の勾配線E−E´に、また、区間Cが床面Eにそれぞれ対応しているが、一般的には階段の長さや階段の勾配α等は一定ではない。従って、階段の長さや勾配α等、諸条件に対応できる自動手摺り移動機器を提供することが望ましい。
【0022】
そこで、階段の長さを調整できる長さ調整機構や、階段の勾配αに対応することができる角度調整機構等、諸条件に対応できる調整機構を合わせ備えた自動手摺り移動機器や、階段の長さを調整できる長さ調整機構又は階段の勾配αに対応することができる角度調整機構等、何れかの調整機構を備えた自動手摺り移動機器を予め設計しておくとよい。
さらに、一部部品のみを専用品とし、その専用部品を適宜選択することによって多種多様の階段の長さや階段の勾配α等に対応することができる自動手摺り移動機器を予め設計し提供することも望ましい。
また、階段の長さや階段の勾配α等、諸条件を限定した汎用型の自動手摺り移動機器の提供も十分に考えられる。
【0023】
階段の長さ方向に対応することができる長さ調整機構の一例を説明する。
図面2のように、全体的な基部を基部L・基部M・基部Nで構成し、さらに前記基部Mを階段の勾配線E−E´と平行方向に互いにスライドさせることができる構造を備えた基部Maと基部Mbから構成し、基部Maと基部Mb間を階段の勾配線E−E´と平行方向にスライドさせて長さを調整し、その後、両者間を固定する長さ調整機構が考えられる。
【0024】
この長さ調整機構を採用した場合、図面2のように基部Maの手摺りガイド端部20と基部Mbの手摺りガイド端部21が突き当るまで収縮させるとリング状の手摺りのガイド部は連続するが、反対に基部Maと基部Mb間を拡げ延ばすと、手摺りガイド部の両端部は離れ、その部分におけるリング状の手摺りのガイド部が無くなる。
リング状の手摺りを支持するガイド部の一部が無くなると、リング状の手摺りの支持に支障をきたす場合も考えられ、そこで、図面3のように、基部Maの手摺りガイド端部20と基部Mbの手摺りガイド端部21の隙間に合わせたガイド部22長を有す補助板23を基部Maや基部Mbに固定するとよい。
【0025】
しかし、特に支障が無ければガイド部を有す補助板23を設けない構成や、また、ガイド部両端部の隙間全てに亘って対応せず、ガイド部両端部の隙間の部分に対応するガイド部を有す補助板を設ける構成も考えられ、さらに、長さ方向を最大に伸したときにリング状の手摺りのガイド部が直線的に連続するように設計しておき、長さ方向に短くなったガイド部分を切断することによってリング状の手摺りのガイド部を直線的に連続させる方法も考えられ、諸条件を検討した上で適宜選択するとよい。
【0026】
そして、図面2における基部Lと基部Maを,基部Mbと基部Nをそれぞれ一体で成形・製造しておき、階段の勾配線E−E´と平行方向にスライドさせることによって長さ方向を調整し、その位置で両者を固定する基部も考えられ、この長さ調整機構を採用した自動手摺り移動機器の場合には、設計段階で階段の勾配αが決定され製造されているため、階段の勾配αに対応することができないが、階段の長さ方向には調整することができるため、汎用型の自動手摺り移動機器に採用するとよい。
【0027】
また、図面1の自動手摺り移動機器1の実施例では、リング状の手摺り3上面部の区間Aが床面Dに、区間Bが階段2の勾配線E−E´に、また、区間Cが床面Fにそれぞれ対応しているが、この限りではなく、例えば、図面4の自動手摺り移動機器8のように、階段9区間のみにリング状の手摺り10の上面部Pが対応する他の実施例も考えられる。
【0028】
この自動手摺り移動機器8では、実線で示したリング状の手摺り10の上面部Pと下端部11及び上端部12、さらに階段9上方の自動手摺り移動機器8の本体下部13で構成する内側部分14に、リング状の手摺り10を支持する下側ローラー15や上側ローラー16を始め、上側ローラー16にビルトインされた駆動装置17、さらに、前記駆動装置17を制御する駆動制御装置18やテンショナー19等、主要な各種装置や構成部品を極力配置し基部に固定した。
上述した実施例では、上側ローラー16に駆動装置17をビルトインしたが、駆動装置を下側ローラー15や上側ローラー16と下側ローラー15間に配置する他の方法も十分に考えられる。
【0029】
そして、図面4の自動手摺り移動機器8の場合においても、基部を二分割で製造しておき、分割した各基部間を階段の勾配線E−E´と平行方向にスライドさせて長さ方向を調整することができる長さ調整機構を備えておくと長さの異なる階段にも対応させることができ、特に汎用型の自動手摺り移動機器に採用するとよい。
【0030】
次に、階段の勾配αに対応することができる角度調整機構の一例を説明する。
図面2において、基部Mと基部L間が中心軸Hを中心に回転し、基部Mと基部N間が中心軸Iを中心に回転する構造を採用した角度調整機構が考えられる。
両者を固定する場合は、中心軸H及び中心軸Iのボルトにナットで螺嵌する方法が考えられるが、基部Mと基部L間及び基部Mと基部N間の取り付け剛性を確保するために、中心軸H及び中心軸I以外の位置にも両者間をボルトとナット等で固定しておくとよい。また、工場等で最終的に組み立て完成させる場合は、階段の勾配αに対応した後に両者間を溶接等で固定する方法も考えられる。
【0031】
そして、階段の勾配αに対応させた基部Lと基部M間Jや基部Mと基部N間Kを自然な感じでリング状の手摺りが摺動するように、基部Lと基部M間Jには、図面5のように凹型曲線状に成形されたリング状の手摺りのガイド部を有す補助板24を固定し、また、基部Mと基部N間Kには、図面6のように凸型曲線状に成形されたリング状の手摺りのガイド部を有す補助板25を配置・固設した。
【0032】
さらに、前記補助板24と補助板25は、基部Mと基部L間Jや基部Mと基部N間Kそれぞれの挟み角や間隔の長さに適合する曲線形状や長さに成形したガイド部を有す補助板を予め製造しておく方法と、基部Mと基部L間Jや基部Mと基部N間Kそれぞれの挟み角や間隔の長さに適合する曲線形状や長さに加工することができる構造を有す補助板を製造しておく方法が考えられる。
【0033】
前者のように、基部Mと基部L間Jや基部Mと基部N間Kそれぞれの挟み角や間隔の長さに適合する曲線形状や長さに成形したガイド部を有す補助板を予め製造しておく方法では、基部Mと基部L間Jや基部Mと基部N間Kそれぞれの挟み角や間隔の長さに適合する曲線形状や長さに製造又は加工する方法と、異なるガイド部の長さや曲線形状に対応できるように、ガイド部を短く設定し製造した汎用型の補助板を基部Mと基部L間Jや基部Mと基部N間Kの幾つかのポイントに配置・固定する方法が考えられる。
【0034】
また、後者のように、基部Mと基部L間J、基部Mと基部N間Kそれぞれの挟み角や間隔の長さに適合する曲線形状や長さに加工できる構造を有す補助板を製造しておく方法では、補助板24の一方26と他方27、さらに補助板25の一方28と他方29を工具等で切断や曲線に加工ができる構造で製造しておき、工具等で切断や曲線加工を施すことによってそれぞれの挟み角や間隔の長さに適合させ、ガイド部の長さや曲線形状の最適化を図る方法も考えられる。
【0035】
さらに、リング状の手摺りのガイド部を有す補助板24を基部L側または基部Ma側と一体構成で成形し製造する場合や、リング状の手摺りのガイド部を有す補助板25を基部N側または基部Mb側と一体構成で成形し製造する場合も考えられ、ここでも一体化した後のガイド部端部方向を工具等で切断や曲線加工を施こしガイド部の長さや曲線形状の最適化を図る構造を採用しておくとよい。
【0036】
上述した階段の長さを調整する長さ調整機構や階段の勾配αを調整する角度調整機構で長さや勾配αを決定した後の各基部や各補助板に設けられたガイド部は、上下方向から見て同一直線上に配列されるように成形・製造されている。
【0037】
そして、階段の長さや勾配α等、諸条件に適合させた上で基部Mを構成する基部Maと基部Mb間や、基部Mと基部L間、基部Mと基部N間それぞれをボルトとナットによる螺嵌や溶接等の各種固定方法で堅牢に固定し基部の一体化を図る。
また、自動手摺り移動機器における本体側面部のカバーは、基部を階段の長さや勾配α等、諸条件に適合させた後、各部分の寸法に合わせて製作し取り付けるとよい。
【0038】
上述した階段の長さや勾配α等、諸条件に対応できる調整機能を備えた自動手摺り移動機器や、一部部品のみを専用品とし、その専用部品を適宜選択することによって多種多様の階段の長さや勾配α等、諸条件に対応できる自動手摺り移動機器等に採用するリング状の手摺りは、予め長めに製造しておき、適宜な位置に配置したテンショナーで長さや張力を調整するとよい。
【0039】
基部Mと基部L間Jや基部Mと基部N間Kにおいては、リング状の手摺りが円滑に摺動するように、凹型形状の曲線状に成形されたガイド部付きの補助板24や凸型形状の曲線状に成形されたガイド部付きの補助板25を固定したが、リング状の手摺りが戻り走行路となって自動手摺り移動機器内部に入ると、リング状の手摺りを駆動する手摺り駆動装置や偏向ローラ等の支持部がリング状の手摺りを支持する。
そして、リング状の手摺りは、手摺り駆動装置によって、再び、自動手摺り移動機器本体外部へ操出される。
【0040】
また、リング状の手摺りの駆動装置については、本特許出願人と同一出願人による出願番号特願2008−292789において提案した自動手摺り移動機器の線形ベルト式手摺り駆動装置や反転シーブ式手摺り駆動装置等の採用が考えられる。
【0041】
自動手摺り移動機器本体は、本体基部側の適宜な位置に設定された取り付け部や、さらに取り付け部品等を介して既存や新設の階段または歩道またはスロープ等における基礎側にアンカーボルト等の固定具によって堅牢に固設される。
【0042】
次に、請求項2記載の自動手摺り移動機器では、コンパクト化を図った請求項1記載の自動手摺り移動機器に対し、手摺り駆動装置における電動機の高出力型の採用や各部位の耐久性を高めた部品及び部材の採用を可能とするため、部品配置や一部外観形状及び寸法等の諸条件の緩和を図った。
【0043】
よって、高品位で高性能な自動手摺り移動機器を製造し提供することができるが、半面、前記高出力型の電動機や各部位の耐久性を高めた部品及び部材等の採用は、特に自動手摺り移動機器の裏側部分に張り出し部分が生じることが十分に考えられる。
そこで、既存や新設の各事務所用ビルをはじめ、総合スーパーマーケット・デパート等の商業用ビル、ホテル・マンション等の宿泊用や住居用ビルなど各種建築物の階段や歩道またはスロープ等に、請求項2記載の自動手摺り移動機を配置して取り付ける場合においては、自動手摺り移動機器を固定する側に対して、はつり作業等の追加施工や予め拡張部等を施工することによって対応した。
請求項2記載の自動手摺り移動機器においても、階段の長さを調整できる長さ調整機構や、階段の勾配αに対応することができる角度調整機構等、諸条件に対応できる調整機構を合わせ備えた自動手摺り移動機器や、階段の長さを調整できる長さ調整機構又は階段の勾配αに対応することができる角度調整機構等、何れかの調整機構を備えた自動手摺り移動機器を予め設計しておくとよい。
さらに、一部部品のみを専用品とし、その専用部品を適宜選択することによって多種多様の階段の長さや階段の勾配α等に対応することができる自動手摺り移動機器を予め設計し提供することも望ましい。
【0044】
そして、図面4の実施例のように、階段部分のみにリング状の手摺りの上面部を対応させた自動手摺り移動機器8では、屋内等への常設は勿論のこと、移動・運搬に耐えうる剛性や耐候性を確保した移動型の自動手摺り移動機器を設計・製造しておくと、特定した日時や場所への配置・固設することも可能で、例えば、神社・仏閣等の催し日に移動型の自動手摺り移動機器を配置・固設しておくと、高齢者や、膝・腰等体に支障をきたす弱者等が歩行移動する際に肉体的な負担の軽減や安定した歩行移動を促進する環境を提供することもできる。
【0045】
さらに、途中に踊り場が設けられた階段等に自動手摺り移動機器を配置・固設する場合には、図面7のように一台の自動手摺り移動機器30によって踊り場上下方向の各階段と踊り場全てに亘って連続して対応する方法や、図面8のように踊り場上下方向の各階段にそれぞれ独立した自動手摺り移動機器31及び32を配置・固設する方法、また、図面9のように踊り場上下方向の各階段にそれぞれ独立した自動手摺り移動機器33及び34を配置・固設するとともに、踊り場にも独立した自動手摺り移動機器35を配置・固設する方法が考えられる。
【0046】
図面8や図面9のように自動手摺り移動機器を配置・固設した場合、利用者は一気に上り切ったり、又は下り切ったりせず、各自動手摺り移動機器の間で一息つけることができるため、高齢者や膝・腰等体に支障をきたす弱者等の利用に優しく対応することができる。
また、図面9の踊り場に配置した自動手摺り移動機器35を、固定した手摺りに替えて配置・固設ける方法も考えられる。
【0047】
さらに、家庭や少数の利用者に対応する施設等に自動手摺り移動機器を配置・固設した場合、上り下りの運転の切り替えや運転の継続と停止を切り替えられるコントローラを自動手摺り移動機器本体又は近くの壁面等、判りやすい位置や場所に配置・固設しておくが、上記機能等を備えた携帯式のリモートコントロールを備えておくとよい。
【0048】
前記携帯式のリモートコントロールは、利用者がリング状の手摺りを握った手の反対側の手で持ち続けることによって、万が一、下り運転時に足がもつれ、即時、自動手摺り移動機器を停止させたい場合等、リモコンの運転の継続と停止を切り替えられるスイッチを押すことで即時に運転を停止させることができ、特に下り運転の場合には、利用者の転落事故を未然に防止することも可能となる。
また、本体又は近くの壁面等に配置・固設したコントローラと携帯式のリモートコントロールの指示優先権は、操作した方を優先とするとよい。
【0049】
そして、上述した図面1、図面2、図面4、図面7、図面8、図面9までの各自動手摺り移動機器は、階段または歩道またはスロープ等の側部における最適な位置に配置・固設し、いずれか一方向専用に運転していたが、自動手摺り移動機器を階段または歩道またはスロープ等の中央部分に配置・固設する場合においては、階段の上り下りや歩道またはスロープ等を往来する利用希望者双方に同時に対応可能な往復型の自動手摺り移動機器を提供することが望ましい。
【0050】
そこで、上述した図面1、図面2、図面4、図面7、図面8、図面9の各自動手摺り移動機器における階段または歩道またはスロープ等の左側部に配置・固設する左配置型自動手摺り移動機器と、階段または歩道またはスロープ等の右側部に配置・固設する右配置型自動手摺り移動機器を背中合わせで組み合わせ、階段または歩道またはスロープ等の中央部分に配置・固設し、互いに反対方向に運転することで対応する方法や、左配置型自動手摺り移動機器と右配置型自動手摺り移動機器の各機能を一台に集約した中央配置型自動手摺り移動機器を階段または歩道またはスロープ等の中央部分に配置・固設し、互いに反対方向に運転することで対応する方法等も考えられる。
【0051】
さらに他の実施例として、上述した各自動手摺り移動機器においては、リング状の手摺が垂直状態に配置され、いずれか一方向専用に運転していたが、リング状の手摺を平面状態に配置しリング状の手摺が往来する往復型の自動手摺り移動機器も考えられる。
この往復型自動手摺り移動機器では、ある間隔で並行する2軸にそれぞれ配置した一方のローラーおよび他方のローラーがリング状の手摺を平面状態に配置するように支持し、そして、一方のローラーおよび他方のローラー間それぞれの手摺り部分が互いに反対方向に摺動して対応する。
この往復型自動手摺り移動機器を配置・固設する場合は、予め、リング状の手摺りが平面状態に配置され循環しながら摺動するように設計・製造した往復型自動手摺り移動機器を、階段または歩道またはスロープ等の基準的な平面に対し、リング状の手摺りが平行面状態に配置されるように固設する。
【0052】
図面10〜図面12は、リング状の手摺を平面状態に配置した往復型自動手摺り移動機器の一実施例を示す概略説明図である。
図面10は、往復型自動手摺り移動機器35を上方向から見た一実施例の基本構成を示す概略説明図で、ある間隔で並行する2軸にそれぞれ配置した一方のローラー36および他方のローラー37間に、リング状の手摺り38が平面状態に配置されて支持されている。尚、図面10におけるリング状の手摺り38は、後述するベルト部39のみを示す。
そして、リング状の手摺38は、図面11のように、ベルト部39とベルト部39上方に配置・固設した手摺部40から構成され、また、リング状の手摺38と一方のローラー36および他方のローラー37間の相対的な位置関係が継続的に維持されるように、ベルト部39内周面にはVリブ41が形成され、ベルト部39内周面に形成したVリブ41と相対応する形の溝が一方のローラー36および他方のローラー37に形成されている。
【0053】
リング状の手摺38は、図面10のように、ある間隔で並行する2軸にそれぞれ配置した一方のローラー36と他方のローラー37間の直線区間W及び直線区間Xに位置する場合においても、ベルト部39内周面に形成したVリブ41と相対応する形の溝が形成された単数または複数の内側ローラー42と、ベルト部反対側に相対す単数または複数の外側ローラー43に挟まれた状態で支持されている。
図面11では、外側ローラー43の表面を平面状に成形してあるが、ベルト部の支持力を高める目的でベルト部の内周面及び外周面をVリブに形成した場合には、外側ローラー表面にも内側ローラー42同様、Vリブに対応する形の溝を設けておく。
【0054】
リング状の手摺38は、一方のローラー36および他方のローラー37の一方または双方に連係又は直結された駆動装置によって摺動されるが、ベルト部39に一定の張力を与え続けるために、一方のローラーにテンショナー機能を備えるとともに、ベルト部39の内部には鋼線やガラス繊維あるいはアラミド繊維等、心線を押し込めて一定の張力に対抗する強度を確保した。
ベルト部39上方には、図面11のように、利用者が握り締める手摺部40が固定され、手摺部40は、利用者が握り締めやすい形状や構造で、そして、一方のローラー36および他方のローラー37との同期回転時に繰り返えされる内側部分と外側部分の伸縮等による疲労に対応できる形状や素材によって作られている。
【0055】
一実施例における手摺部40は、図面11のように、中心部が中空またはスポンジ状に構成された伸縮性を有す蛇腹式でリング状のホース44外周に、利用者が握り締めやすいスポンジ状に構成された柔軟性を有す緩衝部45を固定し、さらに緩衝部45表面を合成樹脂等、耐破損性の高い表面部46で被覆した一体構造を採用した。そして、ホース43と一体成形されたつば部分47を複数の螺子48等によってベルト部上方に固定した。
上述した実施例では、手摺部40を複数の螺子48等によってベルト部上方に固定したが、手摺部とベルト部間を接着剤等で貼り合わせる固定方法やベルト部とホースを一体構造で成形加工する方法等も考えられる。
【0056】
往復型自動手摺り移動機器35におけるリング状の手摺り38は、図面12のように、直線区間Wと直線区間Xのみが露出し、一方のローラー36および他方のローラー37部分や手摺り駆動装置等を支持する基部本体部分はカバー等によって覆い隠し、さらに、直線区間Wと直線区間X間には間仕切り板49を設けた。尚、図面12におけるリング状の手摺り38は、手摺部40のみを示す。
また、往復型自動手摺り移動機器35を階段に配置・固設した場合、往復型自動手摺り移動機器35の両端部は階段の勾配を考慮した形状のカバーで覆い隠しておくとよい。
よって、各カバーを外した往復型自動手摺り移動機器35の基部本体部分は共通型として設計・製造することも可能で、さらに、長さ方向を調整できる長さ調整機構を備えておくと汎用型として対応することもできる。
【0057】
このリング状の手摺を平行状態に配置した往復型自動手摺り移動機器35では、階段上方や階段下方の各床面や踊り場部分まで対応することはできないが、リング状の手摺り一本で階段の上り下りや歩道またはスロープの往来等の利用希望者に対応することができ、全体をコンパクト化に、また、往復型自動手摺り移動機器を安価に配置・固設して提供することもできる。
【0058】
尚、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】 本発明の自動手摺り移動機器の一実施例を階段に配置・固設し側面方向から見た概略説明図である。
【図2】 階段の長さ方向に対応することができる長さ調整機構と階段の勾配αに対応することができる角度調整機構の一例を示す概略説明図である。
【図3】 長さ調整機構の構造を示す概略説明図である。
【図4】 本発明の自動手摺り移動機器の他の一実施例を階段に配置・固設し側面方向から見た概略説明図である。
【図5】 基部Lと基部M間Jに配置・固設するリング状の手摺りのガイド部を有す補助板24の外観説明図である。
【図6】 基部Mと基部N間Kに配置・固設するリング状の手摺りのガイド部を有す補助板25の外観説明図である。
【図7】 途中に踊り場が設けられた階段に自動手摺り移動機器を配置・固設した場合の概略説明図である。
【図8】 途中に踊り場が設けられた階段に二台の自動手摺り移動機器を配置・固設した場合の概略説明図である。
【図9】 途中に踊り場が設けられた階段に三台の自動手摺り移動機器を配置・固設した場合の概略説明図である。
【図10】 往復型自動手摺り移動機器を上方向から見た一実施例の基本構造を示す概略説明図である。
【図11】 往復型自動手摺り移動機器の一実施例における構成を示す概略説明図である。
【図12】 往復型自動手摺り移動機器に平面状態に配置されたリング状の手摺を上方向から見た手摺配置説明図である。
【符号の説明】
1、8、30,31,32,33,34,35 自動手摺り移動機器
2、9 階段
3,10,38 リング状の手摺り
4,11 下端部
5,12 上端部
6、13 自動手摺り移動機器本体下部
7,14 内側部分
15 下側ローラー
16 上側ローラー
17 駆動装置
18 駆動制御装置
19 テンショナー
20 基部Maの手摺りガイド端部
21 基部Mbの手摺りガイド端部
22 ガイド部
23,24,25 補助版
26 補助板24の一方
27 補助板24の他方
28 補助板25の一方
29 補助板25の他方
36 一方のローラー
37 他方のローラー
39 ベルト部
40 手摺り部
41 ベルト部39内周面のVリブ
42 内側ローラー
43 外側ローラー
44 リング状のホース
45 緩衝部
46 表面部
47 リング状のホースと一体成形されたつば部分
48 螺子
49 間仕切り板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存や新設の階段または歩道またはスロープ等の側部や中央部における最適な位置に配置し取り付ける施工時に、固定する側の階段または歩道またはスロープ等に対し、はつり作業等の追加工事や、予め特別な拡張部等を施工することなく、最適な位置に配置して取り付けられる外観形状や寸法を有していることを特徴とする自動手摺り移動機器。
【請求項2】
既存や新設の階段または歩道またはスロープ等の側部や中央部における最適な位置に配置し取り付ける施工時に、固定する側の階段または歩道またはスロープ等に対し、はつり作業等の追加工事や、予め拡張部等を施工しておくことによって、最適な位置に配置して取り付けられる外観形状や寸法を有していることを特徴とする自動手摺り移動機器。
【請求項3】
階段の長さや階段の勾配に対応することができる調整機構を備えたことを特徴とする請求項1及び請求項2記載の自動手摺り移動機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−241090(P2011−241090A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126263(P2010−126263)
【出願日】平成22年5月16日(2010.5.16)
【出願人】(592005641)
【Fターム(参考)】