説明

固定具

【課題】板状部材に取り付けたときにがたつきが発生せず、板状部材から取り外す作業にも手間取ることのない固定具を提供する。
【解決手段】複数の板状部材12a,12bの貫通孔14a,14bに対し、複数の弾性可動片16bを貫通孔14a,14bの一端から挿し込んで他端へと貫通させて、その状態で複数の弾性可動片16b間に軸部18bを挿し込むと、貫通孔14a,14bの他端側から突出した状態にある各弾性可動片16bの先端が弾性変形して外周側へ拡開する。これにより、複数の板状部材12a,12bが複数の弾性可動片16bから相対的に抜けない状態となる。しかも、複数の弾性可動片16bを貫通孔14a,14bに挿し込んだ際に、コイルスプリング20が雌部材16と板状部材12a,12bとの間で圧縮されることにより、コイルスプリング20が雌部材16を貫通孔14a,14bから引き抜く方向へ付勢する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、家電製品や自動車部品、精密機器、医療器具等の一構成部材である複数の板状部材を互いに重ね合わせて固定する際に使用される固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の板状部材を重ね合わせて固定するための固定具としては、雌部材を板状部材に貫設された孔に差し込み、更に雄部材を雌部材の内側に嵌め込むことによって雌部材を拡径変形させ、これにより、固定具を複数の板状部材から抜けない状態とすることで、複数の板状部材を互いに固定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−35304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の固定具では、板状部材の振動が固定具に伝わると、固定具と板状部材との間でがたつきが発生しやすいという問題があった。また、このようながたつきが発生すると、雄部材と雌部材の相対的な位置が軸方向へ徐々にずれてゆくことがあり、そのようなずれが蓄積されると、雄部材が雌部材から外れてしまう、といったトラブルを招くこともあった。さらに、このように雄部材が雌部材から外れると、弾性変形して拡開していた雌部材の形状が元の形状に戻ってしまって、雌部材が貫通孔から抜けやすくなるため、そのような雌部材では複数の板状部材を互いに固定しておくことが出来なくなり、それらの板状部材がばらばらになる、あるいは、雌部材が板状部材から外れてしまう、という問題もあった。
【0005】
また、この種の固定具には、固定具を板状部材から容易に取り外すことを目的として、雌雄の部材にネジ構造を設けたものがある。このような固定具においては、雄部材を雌部材に対して相対的に回動させることで、雄部材を雌部材から取り外すことが出来る。しかし、このような固定具において、雄部材を雌部材から取り外そうとして雄部材を雌部材に対して相対的に回動させると、雄部材に追従して雌部材が雄部材と同一方向に回動してしまうことがあり、雄部材を雌部材から取り外す作業に手間取ることがあった。
【0006】
本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、本発明の目的は、板状部材に取り付けたときにがたつきが発生せず、板状部材から取り外す作業にも手間取ることのない固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために為された請求項1に記載の発明は、重ね合わせられた複数の板状部材を互いに固定する際に使用される固定具であって、外周側及び内周側のうち、何れか一方の側から力を受けると弾性変形して他方の側へ変位する複数の弾性可動片が突設された雌部材と、前記複数の弾性可動片間に挿し込まれる軸部を有し、当該軸部が前記複数の弾性可動片間に挿し込まれた際に、前記弾性可動片を弾性変形させて外周側へと変位させる雄部材と、前記雌部材に取り付けられたコイルスプリングとを備え、前記複数の板状部材を貫通する貫通孔に対し、前記複数の弾性可動片を前記貫通孔の一端から挿し込んで他端へと貫通させて、その状態で前記複数の弾性可動片間に前記軸部を挿し込むと、前記貫通孔の他端側から突出した状態にある各弾性可動片の先端が弾性変形して外周側へ拡開することにより、前記複数の板状部材が前記複数の弾性可動片から相対的に抜けない状態となる構造になっており、しかも、前記複数の弾性可動片を前記貫通孔に挿し込んだ際に、前記コイルスプリングが前記雌部材と前記板状部材との間で圧縮されることにより、前記コイルスプリングが前記雌部材を前記貫通孔から引き抜く方向へ付勢する構造になっていることを特徴とする。
【0008】
このような本発明の固定具においては、雄部材の軸部を雌部材の複数の弾性可動片間に挿し込むと、各弾性可動片の先端が弾性変形して外周側へ拡開することにより、複数の板状部材が複数の弾性可動片から相対的に抜けない状態となるため、複数の板状部材を互いに固定することが出来る。
【0009】
また、本発明の固定具では、コイルスプリングが雌部材に取り付けられており、複数の弾性可動片を貫通孔に挿し込んだ際に、コイルスプリングが雌部材と板状部材との間で圧縮されることにより、コイルスプリングが雌部材を貫通孔から引き抜く方向へ付勢する構造になっている。
【0010】
そのため、このようなコイルスプリングの付勢力により、雌部材の各弾性可動片は、板状部材との当接を維持する位置にあるので、各弾性可動片と板状部材との間に遊びとなる間隙が生じるものとは異なり、板状部材に取り付けたときにがたつきが発生するのを防止出来る。また、がたつきが防止されることで、雄部材が雌部材から外れ難くなるので、弾性可動片の先端の拡開状態を維持することが出来、複数の板状部材が互いに固定された状態を維持することが出来る。
【0011】
また、圧縮されたコイルスプリングが、雌部材及び板状部材の双方に対して圧接するので、雌部材を板状部材に対して相対的に回動させる方向へ外力が作用した場合には、コイルスプリングと板状部材との間、及びコイルスプリングと雌部材との間に摩擦抵抗が生じることとなる。そのため、コイルスプリングが無くて上記のような摩擦抵抗が生じないものに比べ、雌部材と板状部材の相対的な回動が起こりにくい構造とすることが出来る。
【0012】
したがって、例えば、雄部材を雌部材に対して相対的に回動させることによって雄部材を雌部材から取り外すことが出来る構造としてある場合に、雄部材を回動させても雌部材が雄部材と同一方向に回動しにくくなるので、雄部材を雌部材から容易に取り外すことが出来、複数の板状部材の固定を解除することも出来る。
【0013】
また、本発明の固定具では 例えば請求項2に記載されているように、前記雌部材と前記コイルスプリングとの軸方向の相対的な位置を変位させることによって、前記付勢力の大きさを調整可能に構成されていても良い。
【0014】
このような本発明によれば、雌部材とコイルスプリングとの軸方向の相対的な位置を変位させるという単純な仕組みで、付勢力の大きさを調整出来るので、板状部材に対するコイルスプリングの圧接力を最適化することが出来る。
【0015】
また、本発明の固定具では、例えば請求項3に記載されているように、前記複数の弾性可動片の内周側および前記軸部の外周側のうち、何れか一方には係合突起、他方には係合凹所がそれぞれ設けられて、該係合突起と該係合凹所が係合した際に、該雌部材と該雄部材の軸方向への相対的な変位が阻止される構造とした構成を採用しても良い。
【0016】
このような本発明によれば、係合突起と係合凹所が係合した際に、雌部材と雄部材の軸方向への相対的な変位が阻止される構造としたので、このような係合凸部や係合凹所が設けられていない場合に比べ、雄部材を雌部材から外れ難くすることが出来る。
【0017】
また、本発明の固定具では 例えば請求項4に記載されているように、前記雄部材と前記雌部材とを相対的に回動させた際に、前記雄部材を前記雌部材の内孔から抜け出る方向に変位させるネジ機構を備える構成を採用しても良い。
【0018】
このような本発明によれば、雄部材を雌部材から抜け出る方向に変位させるネジ機構を利用して、雄部材を雌部材から抜き出すことが出来る。それ故、複数の板状部材の固定を容易に解除することが出来る。
【0019】
また、本発明の固定具では、例えば請求項5に記載されているように、前記複数の板状部材は、第1の貫通孔を備えた第1の板状部材と前記第1の貫通孔よりも大径の第2の貫通孔を備えた第2の板状部材とを含んで構成されており、前記弾性可動片は、前記複数の板状部材に挿し込まれた際に、前記第1の板状部材の一方の面から前記第1の貫通孔に挿し込まれて、前記第1の板状部材の他方の面へと貫通し、当該第1の板状部材の他方の面へと貫通した部分が、さらに前記第2の板状部材の一方の面から前記第2の貫通孔に挿し込まれて、前記第2の板状部材の他方の面へと貫通し、その状態で前記複数の弾性可動片間に前記軸部が挿し込まれると各弾性可動片が弾性変形して外周側へと変位し、当該変位に伴って、各弾性可動片に設けられた段差又は突起が前記第1の板状部材の他方の面に引っ掛かる状態となって前記第1の板状部材が前記複数の弾性可動片から相対的に抜けない状態となり、しかも、各弾性可動片の先端が拡開した状態となって前記第2の板状部材が前記複数の弾性可動片から相対的に抜けない状態となる構成を採用しても良い。
【0020】
このような本発明によれば、弾性可動片は小径の第1の貫通孔を備えた第1の板状部材において前記他方の面に引っ掛かると共に、弾性可動片は大径の第2の貫通孔を備えた第2の板状部材において拡開した状態となることによって、第1及び第2の板状部材が、それぞれ複数の弾性可動片から抜けない状態となる。
【0021】
つまり、本発明では、弾性可動片を第2の板状部材の他方の端面に引っ掛けるのでなく、拡開した状態として第2の板状部材の抜けを防止したことによって、「弾性可動片を第1及び第2の貫通孔へと貫通させて、弾性可動片を弾性変形により外周側へと変位させて、弾性可動片を第2の板状部材の他方の端面に引っ掛けるもの」よりも、弾性可動片の寸法や変形量(変位量)を小さくすることが出来る。それ故、弾性可動片の寸法が小さくされることによって、固定具をコンパクトに構成することが出来る。しかも弾性可動片の変形量が小さくされることによって、固定具の第1および第2の板状部材への取り付けを容易にすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態としての固定具を用いて、第1及び第2の板状部材を固定した状態を示す図面であって、(a)はその平面図であり、(b)はその正面図であり、(c)はその底面図であり、(d)はその背面図であり、(e)はその斜め上から見た斜視図であり、(f)は(d)のF―F断面図である。
【図2】図1の固定具を示す図面であって、(a)はその正面図であり、(b)はその平面図であり、(c)はその底面図であり、(d)はその左側面図であり、(e)はその右側面図であり、(f)は(e)のF―F断面図である。
【図3】図1の固定具を示す図面であって、(a)はその斜め上から見た斜視図であり、(b)はその斜め下から見た斜視図である。
【図4】図1の固定具の一部を構成する雌部材を示す図面であって、(a)はその正面図であり、(b)はその底面図であり、(c)はその縦断面図であって(d)のC―C断面図であり、(d)はその平面図であり、(e)は(d)のE―E断面図であり、(f)はその斜め上から見た斜視図である。
【図5】図1の固定具の一部を構成する雄部材を示す図面であって、(a)はその正面図であり、(b)はその平面図であり、(c)はその底面図であり、(d)は(a)のD―D断面図であり、(e)はその斜め上から見た斜視図であり、(f)はその斜め下から見た斜視図である。
【図6】図1の固定具の一部を構成するコイルスプリングを示す図面であって、(a)はその平面図であり、(b)はその正面図であり、(c)はその斜め上から見た斜視図である。
【図7】図1の固定具を第1の板状部材にのみ取り付けた状態を示す図面であって、(a)はその平面図であり、(b)はその正面図であり、(c)はその底面図であり、(d)はその背面図であり、(e)はその斜め上から見た斜視図であり、(f)は(d)のF―F断面図である。
【図8】図1の固定具においてコイルスプリングの雌部材に対する固定位置を変更した態様を示す図面であって、(a)はその正面図であり、(b)は(a)のB―B断面図であり、(c)はその斜め上から見た斜視図である
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1には、本発明の一実施形態としての固定具10を用いて、第1の板状部材12aと第2の板状部材12bとを固定した状態が示されている。
【0024】
第1の板状部材12aと第2の板状部材12bは、例えば、パソコンハウジングの壁部の一部を構成し、且つ互いに重ね合わせられる外壁部分と内壁部分等に適用される。第1の板状部材12aには、第1の貫通孔14aが貫設され、第2の板状部材12bには、第1の貫通孔14aよりも大径の第2の貫通孔14bが貫設されている。
【0025】
固定具10は、図2,3に示されるように、雌部材16と雄部材18とコイルスプリング20を含んで構成されている。雌部材16および雄部材18は、アクリロニトリル―ブタジエン―スチレン樹脂(ABS樹脂)やポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、ポリアミド樹脂(PA樹脂)等の合成樹脂を用いて形成されている。
【0026】
雌部材16は、図4に示されるように、略円筒形状の雌部本体16aと、雌部本体16aの下端部から下方に突出し、且つ雌部本体16aの開口部の周りに離隔して複数設けられた弾性可動片16bとを含んで構成されている。
【0027】
雌部本体16aには、雌部本体16aの内周面に沿って次第に立ち上がるように傾斜したスロープ状部22が、周方向に離隔して複数設けられている。また、雌部本体16aの外周面には、コイルスプリング20の一部を軸方向に挟み込んで固定することが可能な挟持片24が設けられている。
【0028】
各弾性可動片16bは、雌部本体16aから離れるに従って径方向内側に折りこまれるような爪状をなしており、雌部本体16aに対して径方向に弾性変形可能に一体的に形成されている。また、弾性可動片16bの内周面の上方と下方には、第1係合突起26と第2係合突起28が突設されている。更に、弾性可動片16bの軸方向略中央部分の外周面には、段差面30が形成されている。
【0029】
雄部材18は、逆有底円筒形状のヘッド部18aと、ヘッド部18aの径方向中央部分から下方に突出する略円形の棒状の軸部18bとを含んで構成されている。ヘッド部18aの上端面には、プラスドライバ等を差し込むことが可能な十字溝32が形成されている。
【0030】
また、軸部18bのヘッド部18aへの基端部分には、板状の当接部34が、軸部18bから径方向両側に突設されている。
この軸部18bにおいてヘッド部18aから突出する先端部分の角部(端縁部)は、丸みを帯びている。また、軸部18bの外周面には、第1係合凹所36と第2係合凹所38が軸方向に離隔して設けられている。第1係合凹所36と第2係合凹所38は、何れも軸部18bの周方向に連続して延びており、また第1係合凹所36の軸方向寸法が、第2係合凹所38の軸方向寸法に比して大きくされている。
【0031】
コイルスプリング20は、圧縮コイルスプリングからなる。コイルスプリング20は、雌部材16に外挿されており、その一端部が、雌部本体16aの挟持片24に対して固定されている。コイルスプリング20の他端部は、雌部本体16aよりも下方に位置して、弾性可動片16bの軸方向中間部分に位置している(図2参照)。
【0032】
また、雄部材18の軸部18bが、雌部材16の雌部本体16aから内側に差し入れられて、軸部18bの第2係合凹所38に各弾性可動片16bの第1係合突起26が嵌め込まれる(図2(f)参照)。これにより、各弾性可動片16bが軸部18bによって径方向外方に押し広げられていない状態で、雄部材18と雌部材16を仮止めすることが出来、製品の搬送性が向上される。
【0033】
このような固定具10は、例えば、以下のようにして、第1および第2の板状部材12a,12bを互いに重ね合わせた形態で固定することが出来る。
先ず、第1の貫通孔14aと第2の貫通孔14bとを同心軸上に位置させると共に、第1の板状部材12aと第2の板状部材12bとを厚さ方向に対向させる。
【0034】
次に、複数の弾性可動片16bを、第1の板状部材12aの一方の面(第2の板状部材12bと対向する面と反対側の面)から第1の貫通孔14aに挿し込んで、第1の板状部材12aの他方の面へと貫通させる。
【0035】
また、弾性可動片16bにおける第1の板状部材12aの他方の面へと貫通した部分を、さらに第2の板状部材12bの一方の面から第2の貫通孔に挿し込んで、第2の板状部材12bの他方の面へと貫通させる。
【0036】
上述の状態で雄部材18の軸部18bを複数の弾性可動片16b間に挿し込み、軸部18bの第2係合凹所38に弾性可動片16bの第2係合突起28を嵌め込んで係合させることによって、軸部18bが複数の弾性可動片16b間に差し込まれた状態が保持される。
【0037】
この第2係合凹所38と第2係合突起28との係合に伴い、複数の弾性可動片16b間に軸部18bを挿し込まれると各弾性可動片16bが弾性変形して外周側へと変位する。この変位に伴って、各弾性可動片16bに設けられた段差面30が第1の板状部材12の他方の面に引っ掛かる状態となって、第1の板状部材12aが複数の弾性可動片16bから相対的に抜けない状態となる。しかも、各弾性可動片16bが拡開変形されることによって、弾性可動片16bの軸方向中間部分が第2の貫通孔14bの内壁面若しくは縁面に当り、弾性可動片16bの先端が第2の貫通孔14bの径寸法よりも大きく拡開した状態となって、第2の板状部材12bが複数の弾性可動片16bから相対的に抜けない状態となる。
【0038】
また、複数の弾性可動片16bを第1及び第2の貫通孔14a,14bに挿し込んだ際に、コイルスプリング20が雌部材16と第1の板状部材12aとの間で圧縮されることにより、コイルスプリング20が雌部材16を第1の貫通孔14aから引き抜く方向へ付勢する。
【0039】
これにより、雌部材16を第1及び第2の貫通孔14a,14bから引き抜く方向への付勢力が、雌部材16の各弾性可動片16bに及ぼされる。その結果、雌部材16の外周側へ拡開した各弾性可動片16bを、第1の板状部材12aの貫通孔14aの周囲または第2の板状部材12bの貫通孔14bの周囲に当てて、弾性可動片16bを介して雌部材16を第2の板状部材12bに強固に固定出来ることから、雌部材16の第1及び第2の板状部材12a,12bに対するがたつきを抑えることが出来る。
【0040】
また、がたつきが防止されると、雄部材18が雌部材16から外れ難くなって、弾性可動片16bの先端の拡開状態が維持されるのであり、それによって、第1及び第2の板状部材12a,12bの固定状態を維持することが出来る。
【0041】
また、本実施形態では、固定具によって固定された第1及び第2の板状部材12a,12bの固定状態を解除することが出来る。
具体的には、固定具10の雄部材18の十字溝32に図示しないプラスドライバを差し込んで、雄部材18と雌部材16に対して中心軸回りに相対的に回動させる。
【0042】
この回動に伴い、雄部材18の一対の当接部34,34が雌部材16の一対のスロープ状部22,22に当接する。更に、雄部材18を回動させることによって、当接部34をスロープ状部22に沿って変位させる。これにより、当接部34が雌部材16に対して螺旋状に上昇するように変位することに伴い、雄部材18を雌部材16から抜け出し方向に変位させて、雄部材18の弾性可動片16bへの挿し込み状態を解除する。その結果、弾性可動片16bの外周側への変形を解除して、雌部材16を第2の貫通孔14bから抜け出すことが出来る。
【0043】
なお、弾性可動片16bの外周面は、上記変形が解除された状態においても、第1の貫通孔14aよりも径方向外側に位置している。このことから、固定具10は、複数の弾性可動片16bによって、第1の貫通孔14aに対して抜け止めされており、従って、図7に示されるように、固定具10が、第1の板状部材12aに取り付いた状態で、第2の板状部材12から取り外すことが出来る。また、逆にこのように固定具10が、第1の板状部材12aに取り付いた状態で、再び弾性可動片16bを第2の貫通孔14bに差し込むことによって、第2の板状部材12に取り付けることも可能である。なお、上述の説明からも明らかなように、スロープ状部22や当接部34は、本発明のネジ機構に相当する。
【0044】
そこにおいて、本実施形態の固定具10では、上述のように雌部材16を第1及び第2の貫通孔14a,14bから引き抜く方向への付勢力が、雌部材16の各弾性可動片16bに及ぼされることによって、弾性可動片16bが第2の板状部材12bに強固に固定される。雌部材16において第1及び第2の板状部材12a,12bの貫通孔14b回りの回動が抑えられる。それ故、上述のスロープ状部22および当接部34からなるネジ構造を用いて、雄部材18を雌部材16に対して相対的に回動させても、雌部材16が雄部材18と同一方向に回動することが防止される。それ故、雄部材18を雌部材16に対して相対的に回動させて、雄部材18を雌部材16から容易に取り外すことが出来、第1及び第2の板状部材12a,12bの固定を解除することも出来る。
【0045】
また、本実施形態では 例えば図8に示されるように、コイルスプリング20の雌部材16に対する固定する位置を、雌部材16に設けられた挟持片24によって、軸方向端部から軸方向中間部に変更することが出来る。つまり、挟持片24は、雌部材16とコイルスプリング20との軸方向の相対的な位置を変位させることによって、雌部材16を貫通孔14から引き抜く方向への付勢力の大きさを調整にする付勢力調整機構として構成される。
【0046】
要するに、雌部材16とコイルスプリング20との軸方向の相対的な位置を変位させるという単純な仕組みで、付勢力の大きさを調整出来るので、板状部材12a,12bに対するコイルスプリング20の圧接力を最適化することが出来る。
【0047】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これら実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能である。また、そのような実施態様が本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【0048】
例えば、前記実施形態では、固定具10が、第1及び第2の板状部材12a,12bからなる一対の板状部材を固定するようになっていたが、3又は3以上の板状部材を固定することも勿論可能である。
【符号の説明】
【0049】
10…固定具、12a…第1の板状部材、12b…第2の板状部材、14a…第1の貫通孔、14b…第2の貫通孔、16…雌部材、16b…弾性可動片、18…雄部材、20…コイルスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わせられた複数の板状部材を互いに固定する際に使用される固定具であって、
外周側及び内周側のうち、何れか一方の側から力を受けると弾性変形して他方の側へ変位する複数の弾性可動片が突設された雌部材と、
前記複数の弾性可動片間に挿し込まれる軸部を有し、当該軸部が前記複数の弾性可動片間に挿し込まれた際に、前記弾性可動片を弾性変形させて外周側へと変位させる雄部材と、
前記雌部材に取り付けられたコイルスプリングと
を備え、
前記複数の板状部材を貫通する貫通孔に対し、前記複数の弾性可動片を前記貫通孔の一端から挿し込んで他端へと貫通させて、その状態で前記複数の弾性可動片間に前記軸部を挿し込むと、前記貫通孔の他端側から突出した状態にある各弾性可動片の先端が弾性変形して外周側へ拡開することにより、前記複数の板状部材が前記複数の弾性可動片から相対的に抜けない状態となる構造になっており、
しかも、前記複数の弾性可動片を前記貫通孔に挿し込んだ際に、前記コイルスプリングが前記雌部材と前記板状部材との間で圧縮されることにより、前記コイルスプリングが前記雌部材を前記貫通孔から引き抜く方向へ付勢する構造になっている
ことを特徴とする固定具。
【請求項2】
前記雌部材と前記コイルスプリングとの軸方向の相対的な位置を変位させることによって、前記付勢力の大きさを調整可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
前記複数の弾性可動片の内周側および前記軸部の外周側のうち、何れか一方には係合突起、他方には係合凹所がそれぞれ設けられて、該係合突起と該係合凹所が係合した際に、該雌部材と該雄部材の軸方向への相対的な変位が阻止される構造としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の固定具。
【請求項4】
前記雄部材と前記雌部材とを相対的に回動させた際に、前記雄部材を前記雌部材の内孔から抜け出る方向に変位させるネジ機構を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の固定具。
【請求項5】
前記複数の板状部材は、第1の貫通孔を備えた第1の板状部材と前記第1の貫通孔よりも大径の第2の貫通孔を備えた第2の板状部材とを含んで構成されており、
前記弾性可動片は、前記複数の板状部材に挿し込まれた際に、前記第1の板状部材の一方の面から前記第1の貫通孔に挿し込まれて、前記第1の板状部材の他方の面へと貫通し、当該第1の板状部材の他方の面へと貫通した部分が、さらに前記第2の板状部材の一方の面から前記第2の貫通孔に挿し込まれて、前記第2の板状部材の他方の面へと貫通し、その状態で前記複数の弾性可動片間に前記軸部が挿し込まれると各弾性可動片が弾性変形して外周側へと変位し、当該変位に伴って、各弾性可動片に設けられた段差又は突起が前記第1の板状部材の他方の面に引っ掛かる状態となって前記第1の板状部材が前記複数の弾性可動片から相対的に抜けない状態となり、しかも、各弾性可動片の先端が拡開した状態となって前記第2の板状部材が前記複数の弾性可動片から相対的に抜けない状態となる
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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