説明

固形内容物の加熱方法及び装置並びに固形内容物加熱用容器

【課題】 容器に充填された固形食品を短時間にムラなく均一に効率よく加熱でき、製造ラインを高速化することを可能とし、且つフランジのシール面への蒸気の結露を防止し、シール性を向上させる。
【解決手段】 容器に充填された固形内容物18をシール前に加熱媒体で加熱する方法であって、固形内容物充填済みの容器15の開口部を、個別容器毎にチャンバー体21で覆って密封空間を形成し、チャンバー体に上方に配置された噴射口から加熱媒体を容器の開口内壁面近傍に向けて噴射し、該加熱媒体が容器内部を通過するように流れを生じさせて、加熱媒体を内容物に接触させて内容物と熱交換させ、噴射口から離れてチャンバー体に配置された排気口から加熱媒体を排出することにより内容物を短時間でムラなく加熱して殺菌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器入り固形内容物の加熱方法及び装置に関し、特に、成形容器詰米飯等、容器詰固形食品の製造ラインにおいて、容器に固形食品を充填後密閉する前に固形食品を加熱する方法及び装置並びに固形内容物加熱用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック容器詰米飯の製造ラインにおいて、炊飯された米飯を個食トレー(プラスチック容器)に充填後、密封直前に米飯に加熱蒸気を噴射して米飯を殺菌してから容器を密封することが行なわれている。このようにすることによって、炊飯から密封までの工程において、たとえトラブルでラインが停止して米飯が冷えて外気の菌が付着しても密封直前に再び加熱されて殺菌された状態で密封でき、しかも加熱直後に密封することによって、むらし効果もあり良好な容器詰米飯が得られる。該方法において、本出願人は、米飯等の固形食品をムラなく均一に効率よく加熱して、食品の品質を低下させることなく短時間で殺菌する装置として、給気孔と排気孔が形成された第1の蒸気室を有する第1のチャンバーと、第2の蒸気室を有する第2のチャンバーを相対移動させ、該チャンバー間に容器群を供給して第1チャンバーと第2チャンバーで加圧室を構成し、該加圧室内で容器の開口部の上に配置された多孔板の多数の小孔を介して容器の開口部に向けて蒸気を流出させるようにして、バッチ処理で蒸気殺菌するものを提案した(特許文献1参照)。さらに、蒸気置換ライン全体で1つのチャンバーを形成し、連続処理ができ、且つスチームの吹きかけによる利点を確保しながら、スチームを用いることによる周囲環境が高温多湿になることを回避した装置を提案した(特許文献2参照)
【特許文献1】特開2002−176959号公報
【特許文献2】特開2004−182320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記提案の各従来技術は、容器充填の米飯等の固形食品を効率的に加熱殺菌するものであるが、前者は2つのチャンバーで加圧室を形成し、加圧殺菌するものであるので、装置が大掛かりになり、且つバッチ処理であるという問題点がある。また、後者は全体が1つのチャンバーで且つ連続処理できる利点はあるが、これら従来技術は何れも蒸気の供給位置と排出位置が個々の容器に対応してないので、蒸気の容器内への単位時間当りの流入量が少なく、その分処理時間が長くかかり、製造ラインの高速化に未だ満足するものではない。
特に、容器底壁面には固形物が密着していて殆ど隙間がなく蒸気の流れが阻害されるので、容器底部近傍の内容物まで均一に加熱するにはかなりの時間を要する。また、従来の方法はチャンバー内に供給された複数個の容器に向かって容器開口部上方から一斉に蒸気を噴射するので、蒸気が容器のフランジのシール面にかかり、そこに結露してシール性を阻害してしまう場合もあった。
【0004】
そこで、本発明は、容器に充填された固形食品を密封前に加熱用蒸気によって殺菌するために加熱する方法及び装置において上記従来技術の問題点を解決しようとするもので、短時間にムラなく均一に効率よく加熱でき、製造ラインを高速化することを可能とし、且つフランジのシール面への蒸気の結露を防止し、シール性を向上させることができる固形内容物の加熱方法及び装置並びに内容物の加熱に効果的な内容物加熱用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために種々研究した結果、チャンバー体で個別容器毎に密封空間を形成し、且つ個別容器毎に加熱媒体の噴射口と排気口を設けて個別容器毎に加熱媒体を直接供給・排出して、さらに、容器の可撓性に着目して簡単な方法で容器底壁面と内容物との間に空間を形成して容器の底部まで加熱媒体が通りやすくする方法を見出し、容器底面近傍の内容物まで短時間に効率よく加熱殺菌できる方法及び装置を知得し、本発明に到達できたものである。
【0006】
即ち、本発明の固形内容物の加熱方法は、容器に充填された固形内容物をシール前に加熱媒体で加熱する方法であって、固形内容物充填済みの容器開口部を、個別容器毎にチャンバー体で覆って密封空間を形成し、該チャンバー体に加熱媒体の噴射口と排気口を離れて配置し、前記噴射口から加熱媒体を容器の開口部に向けて噴射し、該加熱媒体が容器内部を通過するように流れを制御して、加熱媒体を内容物に接触させて内容物と熱交換させ、前記排気口から加熱媒体を排出することにより短時間で内容物を加熱することを特徴とするものである。前記加熱媒体としては蒸気が好適であり、より好適には飽和蒸気が望ましいが、過熱蒸気も使用できる。その他にも加熱空気(熱風)、加熱不活性ガスなども採用できる。噴射口と排気口は、容器開口部の範囲でできるだけ離れて配置することにより、加熱媒体の固形食品内を通過する流路が広がり、加熱範囲が広くなり望ましい。
【0007】
本発明の他の特徴は、前記容器は少なくとも底部が可撓性の容器であり、前記容器の底部を加熱中弾性変形させることにより、容器底壁内面と固形内容物との間に隙間を形成し、加熱媒体が容器底壁近傍を通過することを促進したことにある。また、容器の底部変形に代えて、前記容器の底部に前記内容物が落ち込まない程度の溝を形成することによって、該溝を介して容器底部と固形食品との間を加熱媒体が通過可能とし、容器底壁近傍の食品の加熱を促進することができ、内容物全体を短時間にムラなく加熱できる。
【0008】
さらに、本発明の他の特徴は、容器の噴射口側と排気口側との間に圧力差を設けることにより、噴射口側から排気口側への流速を大きくして、加熱媒体による固形内容物の加熱効率を高めたことにある。また、前記チャンバーに置換流体供給口を設け、前記内容物加熱終了後に不活性ガスを供給して、容器内のガス(残留加熱媒体)を置換流体(多くの場合不活性ガス)に置換することが望ましい。置換流体供給口は専用に設けてもよく、加熱媒体噴射口と共用にしてもよい。チャンバー内のガスを置換流体に置換することによって、容器内の残存酸素を除去する効果と共に、加熱媒体が加熱用蒸気である場合、加熱後の残存蒸気を置換流体によって積極的に容器外に排気でき、密封後に残存蒸気が蓋材に結露して付着することを防止できる。
【0009】
上記課題を解決する本発明の固形内容物の加熱装置は、搬送コンベヤにより搬送される容器に充填された固形内容物をシール前に加熱媒体で加熱する装置であって、搬送コンベヤで搬送される内容物充填済み容器の開口部に向けて相対的に接離可能に設けられ、個別容器毎に容器開口部を覆って密封空間を形成するチャンバー体を有し、該チャンバー体に加熱媒体の噴射口を容器の開口内壁面寄り上方に位置するように設けると共に、排気口を前記噴射口と離れた位置に設け、且つ供給口側から供給される加熱媒体が容器内部を通過するように誘導する流路誘導手段を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の他の特徴は、前記チャンバー体に対向して、前記チャンバー体で開口部を覆われた容器の底部を突き上げて弾性変形させる容器底部突き上げ手段を設けてなることである。それによって、簡単に容器底部を変形させて、容器底部近傍への加熱媒体の通過を促進することができる。さらに、本発明の他の特徴は、前記流路誘導手段として、前記加熱媒体噴射口近傍に該加熱媒体噴射口よりも容器内側に位置してチャンバー体天面壁から垂下して設けられた流路制限プレートを採用したことにある。該流路制限プレートが噴射口から噴射された加熱媒体を固形食品側に積極的に誘導し、固形食品を効率よく短時間に加熱することができる。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、前記密閉空間のスペースを供給口側よりも排気口側の容積が大きくなるように前記チャンバー体の天面壁を排気口側に向けて次第に高くなるように傾斜させてなるようにした点、前記加熱媒体の噴射口よりも排気口の断面積を大きくしてなる点にある。それにより、排気抵抗を少なくし噴射口側から排気口側への加熱媒体の流れを発生させ、固形食品を短時間に加熱することができ、ラインの高速化を図ることができる。さらに、前記噴射口に切替え可能に置換流体供給管を連接することによって、装置が簡略化できると共に加熱殺菌後に簡単に容器内のガスを不活性ガスに置換することができる。そして、加熱媒体と噴射口を共用することによって不活性ガスが、加熱媒体と同様に容器内を効率よく通過して、容器内部までガス置換率を向上させることができる。さらに、本発明の固形内容物加熱用容器は、充填された固形内容物を容器シール前に加熱媒体で加熱するのに適する固形内容物加熱用容器であって、底壁パネル面に前記固形内容物が落ち込まない程度の加熱媒体通過用溝を形成してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明の固形内容物の加熱方法及び装置によれば、個々の容器の開口部を覆った状態で容器の開口部内の上方に位置する噴射口から加熱媒体を噴射するので、確実に容器内を加熱媒体が通過することができ、短時間に固形内容物をムラなく加熱することができ、固形内容物が米飯等の固形食品である場合、効率的に固形食品の殺菌ができるとともに、固形食品の風味を損なうことがない。そして、容器のフランジ面に直接加熱媒体が作用することがなく、フランジのシール面に蒸気等の加熱媒体が付着して結露することがないので、シール時のシール性を損なうことがなく、良好にシールできる。また、従来のような加圧保持する必要がないので、装置が簡単になる利点もある。また、容器の底部を弾性変形させること、又は底部に溝がある容器を採用することによって、底部近傍まで加熱媒体の流路を確保でき、従来容器底部近傍の内容物を加熱するのに長時間を要していたものを短時間に加熱でき、固形食品全体を短時間に均一に加熱することができる。さらに、容器密封工程の直前に実施することによって、固形食品が高温状態で密封でき、シール後の容器外観を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を基に詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る米飯等の固形内容物の加熱殺菌装置を適用した容器詰固形食品の製造ラインを示す模式図である。
図中、1はポリプロピレン等の熱溶着性又はその処理を施した合成樹脂製トレイ状容器(以下、単に「容器」と称す)が嵌合する孔を有し、容器15のフランジ裏面を受ける受け台2が等ピッチに配置された搬送コンベヤである。該搬送コンベヤ1の搬送路に沿って、上流側から順に空容器移載ステーション5、内容物充填ステーション6、加熱ステーション7、蓋シールステーション8、密封済み容器の排出ステーション9が順に配置されている。加熱ステーション7以外の各ステーションは、例えば前記特許文献2に示すような従来公知のステーションと同様に構成を採用することができ、空容器移載ステーション5には空容器を搬送コンベヤ1の受け台2にフランジが載るように供給する供給装置(図示してない)が設けられ、内容物充填ステーション6には容器一個収容できる大きさに計量された固形物からなる内容物18を容器に順次供給する内容物充填装置(図示せず)が配置されている。そして、蓋シールステーション8には、容器の開口部を覆うようにフイルム状の蓋材11を順次供給し、且つ蓋材が打ち抜かれたスケルトンフイルムを排出する蓋材送り装置(図示せず)と、該蓋材を容器のフランジ部にヒートシールし、且つシール後に蓋材を打ち抜く蓋材シール装置12が配置されている。また、排出ステーション9には密封済み容器を搬送コンベヤ1の受け台2から押出して排出する排出装置13が配置されている。これらは、従来の技術と同様な手段を適宜採用できるので、詳細な説明は省略する。
【0014】
次に本発明の特徴である加熱ステーションに配置された本発明の固形内容物の加熱装置について、詳細に説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る固形内容物の加熱装置20の基本形態を示し、該装置の要部を概略的に図示した説明図である。
本発明の実施形態に係る固形内容物の加熱装置20の主な構成として、搬送コンベヤ受け台2に嵌合しフランジ17が支持されて搬送される内容物充填済みの容器15の開口部を個別容器毎に覆って容器との間に密封空間を形成するチャンバー体21と、該チャンバー体に対向して、容器の底部を突き上げて弾性変形させる容器底部突き上げ手段22を有している。チャンバー体21は、搬送コンベヤで搬送される容器開口部に向けて図示しない適宜の上下動駆動手段で上下動可能に支持され、その下方部に一端が開口して設けられた開口チャンバー23が形成されている。該開口チャンバー23は、その開口端の内周縁24が容器開口部内周縁と略同形同大に形成され、開口端部が容器のフランジ17を押圧するように形成され、容器開口部との間に密封空間を形成する。即ち、チャンバー体21は、加熱時には容器密閉蓋として機能する。なお、開口端部には、図示のように容器フランジ面を押圧してシールする適宜の無端状のシール材25を取り付けてもよい。また、チャンバー体21は、搬送コンベヤ1が間欠的に移動する場合は上下動のみであるが、搬送コンベヤが連続移動する場合は、チャンバー体21が容器に対して相対的に上下動するように、コンベヤの進行方向の前後にも移動可能に構成されている。
なお、搬送コンベヤ1は、一般に横方向(図1の紙面に垂直な方向)に複数の容器を並べて搬送するので、チャンバー体21も容器に対応して横方向に配置される。また図1では加熱装置20は搬送方向に沿って3台配置されている。そこでチャンバー体21の駆動手段は、個別のチャンバー体を動作させる代わりに、複数のチャンバー体を架台に固定し、その架台を動作させてもよい。複数のチャンバーを架台に固定する場合、横方向だけ又は搬送方向だけを連結しても、全体を1つの架台に固定してもよく、組合せ方は任意である。複数のチャンバーを連結する手段のひとつとして、一体のチャンバー体に複数の開口チャンバー23を形成する構成も可能である。
【0015】
本実施形態の開口チャンバー23は、天面壁は段差面を有するように形成され、外周縁近傍は低段差面26となっておりその内側部が高段差面27となっている。低段差面26の外周縁に近い位置に加熱媒体の噴射口28が形成され、該噴射口は連通管29を介して加熱媒体・置換流体供給切替ユニット30に連通している。噴射口28は、チャンバー体が容器開口部を覆った状態で、容器の一方の内壁面近傍に加熱媒体を噴出できるように、容器内周面寄りに設けるのが望ましい。加熱媒体・置換流体供給切替ユニット30の上流側には、加熱媒体供給源に連通する加熱媒体供給管31と、置換流体供給源に連通する置換流体供給管32が取付けられている。加熱媒体・置換流体供給切替ユニット30は、開口チャンバーに供給する流体を加熱媒体38又は置換流体39に切替制御できる。加熱媒体38及び置換流体39の供給量・圧力等の制御は、切替ユニット30で行っても、各供給管の図示していない上流側で行ってもよい。一方、高段差面27には、前記噴射口28と反対側でなるべく噴射口28から遠い位置に位置するように排気口33が設けられている。排気口33は図示のように噴射口28よりも径大に形成されている。それにより、小口径の噴射口28が大口径の排気口33より圧力が高くなり、噴射口から排気口側に加熱媒体の積極的な流れが生じるようにする。また、低段差面26には、噴射口28の近傍に該噴射口28よりも容器内側に位置して流路制限プレート34が設けられている。該流路制限プレート34は、加熱媒体を容器内部への流入と内容物上面への流れに誘導するもので、その高さは特に限定されないが、チャンバー体21が容器開口部を覆った状態で下端縁が容器内の内容物表面から所定間隔離れた位置まで設け、噴射口から噴射した加熱媒体が容器内壁面に沿って下方に流下して内容物を内側から加熱するようにすると共に、内容物の表面に沿って流れて内容物を表面からも加熱するようにする。
【0016】
また、本実施形態では、前記低段差壁面に高段差壁面の下方の開口部を覆うように多孔板からなる排気流速緩和プレート35を設けてある。該排気流速緩和プレート35は、排気口33の入口部を覆うように対向して設けられ、チャンバー内からの排気流の流速を緩和して、加熱媒体が内容物に作用しないで排気されるのを防止している。前記容器底部突き上げ手段22は、図示のように先端が鈍頭になっているロッド36を有するシリンダ装置、或は先端が鈍頭になっているロッド又は所定厚さを有する板をシリンダ機構や適宜のアクチュエータで上下動させて押し込むようにする等任意の押し込み機構が採用できる。
なお、ロッド36を固定配置し、容器15が移動に際してロッド36に乗り上げることで容器底部を変形させてもよく、この場合はロッド36を上下動する必要はない。
【0017】
なお、本実施形態では、噴射口28は1個の場合を示しているが、例えば容器がほぼ矩形状の容器である場合は、図において、紙面に垂直な方向に所定間隔で複数個設置して、容器の一側の側壁内面に沿って複数の噴射口から容器内面に向けて噴射されるようにしてもよい。その場合、連通管29は、下流側が各噴射口に連通するようにマニホルド管として形成する。また、容器が断面円形や楕円形等の容器である場合は、図示の噴射口を挟んで所定角度範囲(120°以下が望ましい)に容器の内周壁上方に沿って弧状に所定間隔で複数個配置してもよい。または、複数個の丸孔を形成するのに代えて、所定範囲にわたってスリット状に噴射口形成することも可能である。
【0018】
本実施形態の固形内容物の加熱装置は、以上のように構成され、例えば加熱媒体として加熱用蒸気を用いて内容物を加熱殺菌する場合、内容物充填ステーション6で米飯等の内容物18が充填された容器15が搬送コンベヤの受け台2に支持されて加熱殺菌ステーション7に達すると、チャンバー体21が図示しない上下動機構で下降して、その下端に設けられたシール材25が容器のフランジ面に当り、開口チャンバーの下端内周縁がほぼ一致し、その位置で保持することによって、容器とチャンバー体21の開口チャンバー23との間に密封空間を形成する。その状態では、図1及び図2に示すように、噴射口28がほぼ容器の内周面近傍に加熱媒体を噴射するように位置している。
【0019】
次いで、容器突き上げ手段22を作動させ、容器の底部を容器の弾性変形範囲以下で突き上げて底部を変形させる。それにより、図示のように、ロッド36の作用箇所を中心に変形するので、内容物が保形性を有するものである場合、容器底面と内容品下面との間に隙間ができ、加熱媒体の通過抵抗を少なくする。その状態で、加熱媒体・置換流体供給切替ユニット30を介して加熱媒体供給管31から供給される加熱媒体を噴射口28から所定の圧力で噴射させる。噴射された加熱媒体は、流路制限プレート34によってすぐに開口チャンバー23内に拡がるのを規制され、一部は流路制限プレート34の下端から内容物表面に沿って流れ、多くは下方側に案内されて容器側壁内周面と固形内容品との隙間に向けて流下して固形食品内を通過し、内容物を加熱し、排気口33から排気管37を通ってチャンバー外に排気される。その際、容器底部が変形させられて内容物との間に隙間ができているので、加熱媒体は容器の底面に沿っても流れ、図2に矢印で示すような流れになり、内容物を底部側からも加熱することになり、底部近傍まで短時間に加熱することができる。しかも、噴射口と比べて排気口の断面積を大きく形成してあるので、噴射側と排出口に圧力差を生じさせ加熱媒体の流れが形成されるので、内容物への接触効率が高く、加熱効率が高い。また、排気口に面して多孔板からなる排気流速緩和プレート35を設けてあるので、それが邪魔板となって排気口への加熱媒体の急激な流れが緩和され、加熱媒体が内容品に作用しないまま排出されるのが阻止され、加熱効率を高めている。
【0020】
以上のような加熱装置を本実施形態では、図示のようにコンベヤ流れ方向に沿って3台配置し、以上のような加熱を間欠的に3回繰り返すようにして内容物をより効果的に殺菌できるようにしてある。1個所で長時間行なうより、このように複数回に分けて行なうことによって、ラインの高速化を図ることができる。また、3台の加熱殺菌装置20、20、20の加熱媒体の噴射口と排気口の位置を、図示のように交互に変えて各回毎に加熱媒体の流れ方向を交互に逆方向にすることによって、内容物をより均一に加熱殺菌できる利点がある。
【0021】
以上のように所定時間或は所定流量の加熱媒体を噴射して、内容品の加熱殺菌が終了すると、加熱媒体・置換流体供給切替ユニット30により、連通管29が置換流体供給管32に連結され、噴射口28から不活性ガス等の置換流体39が噴射される。それにより、前記加熱媒体の場合と同様な作用で、置換流体が容器内及び上部を通って排気口から排出されることにより、密閉空間内のガスが置換流体に効率的に置換される。その際、容器内に残留している残留加熱媒体(蒸気)も置換ガスによって排出されるので、容器内への残留蒸気を従来と比べて特段に減少させることができる。
【0022】
以上のように加熱殺菌され且つ置換流体に置換された内容物充填容器は、すぐ次の蓋シールステーション8に進み蓋材11で密封シールされる。このようにして得られる容器詰固形食品は、容器内で短時間での加熱殺菌であるため、品質の劣化がなく且つ蓋材への水蒸気の結露も少なく、しかも加熱殺菌・置換工程後直ぐに密封されるので、内容物が高温状態でシールされることになり、冷えた後に容器が負圧状態となり、容器の外観が向上する。
【0023】
以上は、本発明の基本的な実施形態であるが、本発明は上記実施形態に限らず種々の設計変更が可能である。以下、種々の変更例を示す。以下に示す変更例の実施形態においては、上記実施形態と同様な部材には同一符号を付し、相違点のみ説明する。
図3は、本発明の他の実施形態を示す模式図である。本実施形態の固形内容物の加熱装置40は、開口チャンバー23の天面壁41に段差がなく、排気流速緩和プレート35を持たない以外は図2に示す実施形態の加熱装置20と同様である。
図4は、本発明の他の実施形態を示す模式図である。本実施形態の固形内容物の加熱装置42では、開口チャンバー23の天面壁43を前記密閉空間のスペースが噴射口側よりも排気口側の容積が大きくなるように前記チャンバー体の天面壁を排気口側に向けて次第に高くなるように傾斜させている。それにより、噴射口側の容積を小さくすることによって噴射口から排出口へ圧力勾配を形成し、噴射口側から排気口側への加熱媒体の流れを促進し、固形食品を短時間に加熱することができ、ラインの高速化を図ることができる。又噴射口側の天面壁を低くすることによって、加熱媒体による内容物の飛散防止効果も期待できる。
【0024】
図5(a)(b)に示す固形内容物の加熱装置45は、容器底部近傍に加熱媒体が流れやすくする手段として、前記実施形態における容器底部突き上げ手段に代えて、容器の底部に内容物を支持して内容物が入り込まずに内容物との間に隙間を形成するように、予め底壁パネル面48に噴射口側から排気口側方向に延びる加熱媒体通過用溝47を形成した固形内容物加熱用容器46を採用した場合である。したがって、その場合は、加熱媒体は自然に加熱媒体通過用溝47を通って固形食品を底壁近傍から加熱することができる。該加熱媒体通過用溝は容器パネル面に複数条設け、側壁49に沿って噴射した加熱媒体が加熱媒体通過用溝に沿って流れるように溝の両端は容器の側壁49側に面して開口しているのが望ましい。なお、加熱媒体通過用溝は必ずしも図示されているような縦溝に限らず、例えば碁盤目状に連続する溝であってもよい。なお、本実施形態では、噴射口28及び排気口33をそれぞれ3個づつ設けてある。
【0025】
図6(a)(b)に示す固形内容物の加熱装置50は、加熱媒体と置換流体の噴射口を別個に設けた例である。本実施形態では、加熱媒体の噴射口28は前記実施形態と同様に容器の側壁内面寄りに設けてあるが、置換流体噴射口51は容器の略中央部に設けてある。その場合、ガス置換は、チャンバー体52を容器開口部から上げて、容器開口部との間に外部に開放する間隙53を形成した状態で行なう。それにより、中央部から吹出した置換流体によりそれまで密封空間内に存在していた残留蒸気等のガスが外周部の隙間から排出されガス置換が行なわれる。
【実施例】
【0026】
実施例として、図1に示す加熱装置を用いて次の条件で内容物を加熱した。
用いた容器;
材質:中間層に酸素バリヤー層を持つ多層構造のポリプロピレン製
形状:矩形状成形容器
外形寸法:150mm×100mm×30mm
平均肉厚:約1mm
内容物及び充填量;
炊飯直後自然放冷で米飯表面が50℃に降温された米飯を1容器当り200g計量
充填
加熱媒体:飽和蒸気 圧力:0.1MPa
チャンバー体温度:110℃
加熱方法:加熱時間1.0秒、2.0秒放置を3回繰り返して行った。その際、蒸気噴
射口−排気口の方向を図1に示すように1回毎に変えた。加熱時間中は、容
器底面を厚み3mmの板状容器突き上げ具で底部より5mm突き上げた。
以上のように加熱後、直ちに容器とともに米飯を切断して、その断面を赤外線カメラで観察して断面の温度分布を測定した。その結果の温度分布を図7に示す。
【0027】
また、比較例1として、容器の底部を突き上げないで、実施例1と同じ条件で内容物を加熱殺菌した。その場合の温度分布を図8に示す。さらに、比較例2として、加熱媒体噴射口が中央部にあるチャンバー体を使用し、容器の底部を突き上げないで実施例1と同じ条件で内容物を加熱殺菌した。その場合の温度分布を図9に示す。
【0028】
図7〜図9から明らかなように、本実施例の場合は、やや底部寄り中心部に僅かに75℃域が存在するのみで、容器の底部近傍まで内部が85℃に加熱され表面付近は95℃に加熱されていた。この温度は米飯に黴等が発生しない十分な殺菌温度に達している。これに対し、比較例1及び比較例2の場合は、内容物は何れも容器の下方に近づくほど温度が低くなり、底部近傍は55℃にしか昇温してなく、充填点時の温度から殆ど昇温してなく、加熱不足であった。したがって、この場合はさらに長時間加熱しなければ内容物全体が殺菌温度である65℃以上には達成しない。
したがって、以上のことより、本発明による加熱方法・加熱装置が固形物の短時間の加熱殺菌に極めて効果的であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は内容物を短時間にムラなく均一に効率よく加熱でき、製造ラインを高速化することを可能とし、且つフランジのシール面への蒸気の結露を防止し、シール性を向上させることができるので、米飯、寒天、豆類等の固形食品を成形容器等に充填後加熱殺菌する固形食品の充填包装ラインにおける加熱装置として好適に適用できる。また、調理食品の製造ラインに適用することができ、その場合、容器に内容物を未調理又は半調理状態で充填し、その後本発明の加熱方法を適用することによって、内容物の調理を兼ねて殺菌することができる。あるいは、容器に充填された具材等の固形物を前記のように加熱して調理兼殺菌し、その後殺菌済みスープを充填することによって、具入り液状内容物容器詰食品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る固形内容物の加熱装置を適用した固形食品の成形容器への充填密封ラインの模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る固形内容物の加熱装置の断面概略図である。
【図3】その模式図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る固形内容物の加熱装置の断面模式図である。
【図5】本発明のさらに他の実施形態に係る固形内容物の加熱装置の断面模式図であり、(a)は正面断面模式図、(b)は側断面模式図である。
【図6】本発明のさらに他の実施形態に係る固形内容物の加熱装置の断面模式図であり、(a)は加熱中の状態、(b)はガス置換中の状態である。
【図7】実施例における容器ごと切断した米飯の赤外線カメラで測定した断面の温度分布図である。
【図8】比較例1における容器ごと切断した米飯の赤外線カメラで測定した断面の温度分布図である。
【図9】比較例2における容器ごと切断した米飯の赤外線カメラで測定した断面の温度分布図である。
【符号の説明】
【0031】
1 搬送コンベヤ 2 受け台
5 空容器移載ステーション 6 内容物充填ステーション
7 加熱殺菌ステーション 8 蓋シールステーション
9 密封済み容器の排出ステーション 11 蓋材
12 蓋材シール装置 13 排出装置
15、46 容器 17 フランジ
18 内容物
20、40、42、45、50 食品の加熱装置
21、52 チャンバー体
22 容器底部突き上げ手段 23 開口チャンバー
24 内周縁 25 シール材
26 天面壁(低段差面) 27 天面壁(高段差面)
28 噴射口 29 連通管
30 加熱媒体・置換流体供給切替ユニット 31 加熱媒体供給管
32 置換流体供給管 33 排気口
34 流路制限プレート 35 排気流速緩和プレート
36 突き上げロッド 37 排気管
38 加熱媒体 39 置換流体
41、43 天面壁 47 加熱媒体通過用溝
48 底壁パネル面 49 側壁
51 置換流体噴射口 53 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に充填された固形内容物をシール前に加熱媒体で加熱する方法であって、固形内容物充填済みの容器開口部を、個別容器毎にチャンバー体で覆って密封空間を形成し、該チャンバー体に加熱媒体の噴射口と排気口を離れて配置し、前記噴射口から加熱媒体を容器の開口部に向けて噴射し、該加熱媒体が容器内部を通過するように流れを制御して、加熱媒体を内容物に接触させて内容物と熱交換させ、前記排気口から加熱媒体を排出することにより短時間で内容物を加熱することを特徴とする固形内容物の加熱方法。
【請求項2】
前記容器は少なくとも底部が可撓性の容器であり、該容器の底部を変形させることにより、容器底壁内面と固形内容物との間に隙間を生じさせ、加熱媒体が容器底壁近傍を通過することを促進したことを特徴とする請求項1に記載の固形内容物の加熱方法。
【請求項3】
前記容器の底部に前記固形内容物が落ち込まない程度の溝を形成し、該溝を加熱媒体が通過することによって、容器底壁近傍からの食品の加熱を促進したことを特徴とする請求項1に記載の固形内容物の加熱方法。
【請求項4】
前記加熱媒体の噴射口側と排気口側に圧力差をつけて、加熱媒体の容器内部を通過する流速を高めたことを特徴とする請求項1〜3何れか記載の固形内容物の加熱方法。
【請求項5】
前記チャンバーに置換流体供給口を設け、内容物加熱終了後に不活性ガスを供給して、容器内のガスを不活性ガスに置換することを特徴とする請求項1〜4何れかに記載の固形内容物の加熱方法。
【請求項6】
搬送コンベヤにより搬送される容器に充填された固形内容物をシール前に加熱媒体で加熱する装置であって、搬送コンベヤでに搬送される内容物充填済み容器の開口部に向けて相対的に接離可能に設けられ、個別容器毎に容器開口部を覆って密封空間を形成するチャンバー体を有し、該チャンバー体に加熱媒体の噴射口を容器の開口内壁面寄り上方に位置するように設けると共に、排気口を前記噴射口と離れた位置に設け、且つ供給口側から供給される加熱媒体が容器内部を通過するように誘導する流路誘導手段を設けたことを特徴とする固形内容物の加熱装置。
【請求項7】
前記チャンバー体に対向して、前記チャンバー体で開口部を覆われた容器の底部を突き上げて弾性変形させる容器底部突き上げ手段を設けてなる請求項6に記載の固形内容物の加熱装置。
【請求項8】
前記流路誘導手段が、前記加熱媒体噴射口近傍に該加熱媒体噴射口よりも容器内側に位置してチャンバー体天面壁から垂下して設けられた流路制限プレートである請求項6又は7に記載の固形内容物の加熱装置。
【請求項9】
前記密閉空間のスペースを供給口側よりも排気口側の容積が大きくなるように前記チャンバー体の天面壁を排気口側に向けて次第に高くなるように傾斜させてなる請求項6〜8何れかに記載の固形内容物の加熱装置。
【請求項10】
前記加熱媒体の噴射口よりも前記排気口の断面積を大きくしてなる請求項6〜9何れかに記載の固形内容物の加熱装置。
【請求項11】
前記加熱媒体の噴射口に切替え可能に置換流体供給管を連接してなる請求項6〜10何れかに記載の固形内容物の加熱装置。
【請求項12】
充填された固形内容物を容器シール前に加熱媒体で加熱するのに適する固形内容物加熱用容器であって、底壁パネル面に前記固形内容物が落ち込まない程度の加熱媒体通過用溝を形成してなることを特徴とする固形内容物加熱用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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