説明

固形剤取り出し用中栓

【課題】固形剤が通過する経路に指が触れることなく、固形剤を一粒ずつ取り出せ、しかも製造が容易な中栓を提供する。
【解決手段】短円筒体2の上端に、外向きの止めフランジ3を、また短円筒体2の内側に内向きの内フランジ4bを形成する。この内フランジ4bと一体にその内周に沿って屈伸自在な弁体4を4片設け、これら弁体4と弁体4の境界に、固形剤10の外径より狭いスリット6を十字状に形成し、これら弁体4を短円筒体の中心に向けて内側に傾斜して、弁体4の内側に円錐形の固形剤導出部4cを形成すると共に、これら三角形の弁体4の4つの頂点により固形剤10の外径より小さい固形剤取出し口4dを形成する。そして、上記スリット6の上方に位置して短円筒体2の直径方向に配列した2本の帯状の操作片5の基端を短円筒体2に接続し、その他端を、隣り合う2片の弁体4の頂点にそれぞれ接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形剤(錠剤及びカプセル剤)を及びカプセル(以下「錠剤型という」)になった薬剤やサプリメントなどの薬剤及び食品(以下「薬剤等」という)を、薬瓶から一錠粒ずつ取り出せるようにした中栓に関する。
【背景技術】
【0002】
薬瓶から従来、固形剤を取り出す際、多すぎれば余分な固形剤を戻すが、そのとき手で摘むと固形剤に雑菌が付いて衛生的でない。このことから型薬剤等をバラで収容した容器では、所定数量の薬剤等を取り出す際に、多めに取り出して、所定数量より多いものを手で摘んで容器内に戻している。よって、手で摘む際に薬剤等に雑菌が付着し不衛生である。
これを改良し、一錠粒ずつ正しく取り出せるようにした中栓が提案されている(特許文献1,2)。
ところがしかし、特許文献1の中栓は、外筒2と可撓性内蓋の2つの部材が必要であり、部品点数が多く製造や組立が繁雑であるという問題がある。。また、特許文献2の中栓は、製造が簡便であるが、錠剤に触れることなく嘴状の先端部7を拡開する手段がなく、薬剤等を取り出す際に嘴状の先端部7に薬剤等が引っ掛かり傷付いたり、固形剤を摘み出す際に先端部7に指が触れ易く、先端部7に雑菌が付着しやすいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭44−4000号公報
【特許文献2】特開平11−147554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、固形剤(錠剤及びカプセル剤)が通過する経路に指が触れることなく、固形剤を一粒ずつ取り出せ、しかも製造が容易な中栓を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、薬瓶の口に嵌め入れる短円筒体の上端に、外向きの止めフランジを、また止めフランジより低い位置の短円筒体の内側に、内向きの内フランジを、それぞれ形成し、
さらに、この内フランジと一体にその内周に沿って三角形で屈伸自在な弁体を4片設け、これら弁体と弁体の境界に、固形剤の外径より狭いスリットを十字状に形成し、
そして、これら弁体を短円筒体の中心に向けて内側に傾斜して、弁体の内側に円錐形の固形剤導出部を形成すると共に、これら三角形の弁体の4つの頂点により固形剤の外径より小さい固形剤取出し口を形成し、
そして、上記スリットの上方に位置して短円筒体の直径方向に配列した2本の帯状の操作片の基端を短円筒体に接続し、その他端を、隣り合う2片の弁体の頂点にそれぞれ接続し、
これら操作片を下押しすることにより2片の弁体を同時に短円筒体の中心より離れる方向に反曲して上記固形剤取出し口を固形剤の径より大きく拡大することを特徴とする。
請求項2の発明は、薬瓶の口に嵌め入れる短円筒体の上端に、外向きの止めフランジを、また止めフランジより低い位置の短円筒体の内側に、内向きの内フランジを、それぞれ形成し、
さらに、この内フランジと一体にその内周に沿って三角形で屈伸自在な弁体を2片設けると共に、弁体と対向する位置に内フランジと一体にその内周に沿って台形状突起を1片設け、これら弁体と弁体及び弁体と台形状突起との境界に、固形剤の外径より狭いスリットをT字状に形成し、
そして、これら弁体及び台形状突起を短円筒体の中心に向けて内側に傾斜して、弁体及び台形状突起の内側に円錐形の固形剤導出部を形成すると共に、これら弁体の頂点及び台形状突起の上辺により固形剤の外径より小さい固形剤取出し口を形成し、
そして、上記スリットの上方に位置して短円筒体の直径方向に配列した1本の帯状の操作片の基端を短円筒体に接続し、その他端を、隣り合う2片の弁体の頂点に接続し、
操作片を下押しすることにより2片の弁体を同時に短円筒体の中心より離れる方向に反曲して上記固形剤取出し口を固形剤の径より大きく拡大することを特徴とする。
請求項3の発明は、操作片の表面に指掛け用突起を取り付け、裏面には指掛け用突起を取り付けた位置に相対する位置から前記弁体の頂点近傍に至る補強材を取り付けることを特徴とする。
【0006】
上記の固形剤は、錠剤及びカプセルである。また、上記固形剤の外径は固形剤の径で最小のものをいう。
薬瓶には、薬やサプリメント、錠剤状及びカプセル状の食品を収容する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明では、固形剤の外径より小さい固形剤取出し口を形成するので、蓋を外し薬瓶を反転させても固形剤が排出されない。また、弁体の内側に円錐形の固形剤導出部を形成されるので、固形剤導出部で固形剤が1錠ずつに配列される。そして、操作片を下押しすることにより固形剤取出し口を固形剤の径より大きく拡大することができるので、固形剤が1錠ずつ排出できる。また、固形剤取出し口に触れることなく、固形剤を取り出せるので、衛生的である。また、ワンショットで成形できる構成であるので、製造が容易である。
請求項2の発明では、上記効果に加え、弁体が2片で操作片が1本であるので、製造が一層容易であるという効果を有する。
請求項3の発明では、操作片の表面に指掛け用突起を取り付けるので、指で押しやすい。また、この指掛け用突起で押すことにより、操作片の補強材を取り付けてない箇所が変形し、固形剤取出し口が円滑に拡開する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】固形剤取り出し用中栓の正面図である。
【図2】固形剤取り出し用中栓の平面図である。
【図3】図1の縦断面図である。
【図4】中栓から固形剤を排出させる作用を説明する図であり、(a)は固形剤排出前の、(b)は固形剤排出後の図である。
【図5】蓋を閉めた状態での蓋と中栓との位置を示す図である。
【図6】別の実施形態になる固形剤取り出し用中栓の縦断面図である。
【図7】図6の固形剤取り出し用中栓の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る固形剤取り出し用中栓の実施形態について図を参照して説明する。
図1は中栓の正面図、図2は中栓の平面図、図3は図1の縦断面図、図4は中栓から固形剤を排出させる作用を説明する図である。
1は中栓であり、その構成は以下のとおりである。
2は上下が開放した短円筒体であり、外径が薬瓶8の口9の径と同じであり、上部に外向きの止めフランジ3を形成する。また、この止めフランジ3より低い位置の短円筒体2の内側に、内向きの内フランジ4bを形成する。
さらに、この内フランジと一体にその内周に沿って三角形で屈伸自在な弁体4を4片設け、これら弁体4と弁体4の境界に、固形剤10の外径より狭いスリット6を十字状に形成する。そして、これら弁体4を短円筒体2の中心に向けて内側に傾斜して、弁体4の内側に円錐形の固形剤導出部4cを形成すると共に、これら三角形の弁体4の4つの頂点4aにより固形剤10の外径より小さい固形剤取出し口4dを形成する。
なお、固形剤10の外径は、球形であれば同じであるが、ラグビーボール状などの場合では長径、短径などがある。上記固形剤10の外径は固形剤10の径で最小のものをいう。
頂点4aは、短円筒体2の上面部より高くても、また短円筒体2の上面部の高さ以下であってもよい。
そして、上記スリット6の上方に位置して短円筒体2の直径方向に配列した2本の帯状の操作片5の基端を短円筒体2に接続し、その他端を、隣り合う2片の弁体の頂点4aにそれぞれ接続する。この操作片5の裏面には、中央部から他端に至り補強材7を固着する。
以上の構成の中栓1は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの柔軟なプラスチック製であり、ワンショットで成形可能である。
【0010】
薬瓶8より固形剤10を取り出す際には、薬瓶8の口9を下又は斜め下に向けた後(図4(a))、少なくもいずれか一方の操作片5を押す。固形剤取出し口4dが拡開し、固形剤10(カプセル)が一粒ずつ排出される(図4(b))。
この際に、弁体4の頂点4aが短円筒体2の上面部より高いと、固形剤導出部4cが長く、固形剤10が一粒ずつ円滑に配列される。また、弁体4の頂点4aが短円筒体2の上面部以下であると、薬瓶の蓋12の上面と中栓1との間隔が狭いものにも使用できる(図5)。
【0011】
次に、別の実施形態の固形剤取り出し用中栓について図を参照して説明する。
この実施形態の中栓は上記実施形態と異なり、弁体4が2片であり、これと対向する位置に台形状突起を1片設けることである(図6、図7)。
すなわち、中栓1の構成は以下のとおりである。
外径が薬瓶8の口9の径と同じで、上下が開放した短円筒体2の部に外向きの止めフランジ3を形成する。また、この止めフランジ3より低い位置の短円筒体2の内側に、内向きの内フランジ4bを形成する。
さらに、この内フランジと一体にその内周に沿って三角形で屈伸自在な弁体4を2片設ると共に、弁体2と対向する位置に内フランジと一体にその内周に沿って台形状突起13を1片設ける。これら弁体4と弁体4及び弁体4と台形状突起13の境界に、固形剤10の外径より狭いスリット6をT字状に形成する。
そして、これら弁体4及び台形状突起13を短円筒体2の中心に向けて内側に傾斜して、弁体4及び台形状突起13の内側に円錐形の固形剤導出部4cを形成すると共に、これら弁体4及び台形状突起13の頂点4a及び上辺13aにより固形剤の外径より小さい固形剤取出し口4dを形成する。
そして、上記スリット6の上方に位置して短円筒体2の直径方向に配列した1本の帯状の操作片5の基端を短円筒体2に接続し、その他端を、隣り合う2片の弁体の頂点4aに接続する。この操作片5の表面の中央部には、指掛け用突起11を取り付ける。また、裏面には指掛け用突起を取り付けた位置に相対する位置から前記弁体の頂点4a近傍に至り補強材7を取り付ける。
薬瓶8より固形剤10を取り出す際には、薬瓶8の口9を下又は斜め下に向けた後、指掛け用突起11に指をかけて、操作片5を押す。操作片5の補強材を取り付けてない箇所(基端から中央)が変形し、固形剤取出し口4dが円滑に拡開する。
この実施形態の中栓1は、前記実施形態と比較し、弁体4が2片で操作片5が1本であるので、製造が容易である。
【0012】
上記各実施形態では、操作片5の裏面に補強材7を取り付けているが、設けなくてもよい。ただし、補強材7を所定位置に設けることにより、操作片がむやみに曲がらず、固形剤取出し口が円滑に拡開する。
【符号の説明】
【0013】
1 中栓
2 短円筒体
3 外向きの止めフランジ
4 弁体
4b 内フランジ
4c 固形剤導出部
4d 固形剤取出し口
5 操作片
6 スリット
8 薬瓶
10 固形剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬瓶の口に嵌め入れる短円筒体の上端に、外向きの止めフランジを、また止めフランジより低い位置の短円筒体の内側に、内向きの内フランジを、それぞれ形成し、
さらに、この内フランジと一体にその内周に沿って三角形で屈伸自在な弁体を4片設け、これら弁体と弁体の境界に、固形剤の外径より狭いスリットを十字状に形成し、
そして、これら弁体を短円筒体の中心に向けて内側に傾斜して、弁体の内側に円錐形の固形剤導出部を形成すると共に、これら三角形の弁体の4つの頂点により固形剤の外径より小さい固形剤取出し口を形成し、
そして、上記スリットの上方に位置して短円筒体の直径方向に配列した2本の帯状の操作片の基端を短円筒体に接続し、その他端を、隣り合う2片の弁体の頂点にそれぞれ接続し、
これら操作片を下押しすることにより2片の弁体を同時に短円筒体の中心より離れる方向に反曲して上記固形剤取出し口を固形剤の径より大きく拡大することを特徴とする固形剤取り出し用中栓。
【請求項2】
薬瓶の口に嵌め入れる短円筒体の上端に、外向きの止めフランジを、また止めフランジより低い位置の短円筒体の内側に、内向きの内フランジを、それぞれ形成し、
さらに、この内フランジと一体にその内周に沿って三角形で屈伸自在な弁体を2片設けると共に、弁体と対向する位置に内フランジと一体にその内周に沿って台形状突起を1片設け、これら弁体と弁体及び弁体と台形状突起との境界に、固形剤の外径より狭いスリットをT字状に形成し、
そして、これら弁体及び台形状突起を短円筒体の中心に向けて内側に傾斜して、弁体及び台形状突起の内側に円錐形の固形剤導出部を形成すると共に、これら弁体の頂点及び台形状突起の上辺により固形剤の外径より小さい固形剤取出し口を形成し、
そして、上記スリットの上方に位置して短円筒体の直径方向に配列した1本の帯状の操作片の基端を短円筒体に接続し、その他端を、隣り合う2片の弁体の頂点に接続し、
操作片を下押しすることにより2片の弁体を同時に短円筒体の中心より離れる方向に反曲して上記固形剤取出し口を固形剤の径より大きく拡大することを特徴とする固形剤取り出し用中栓。
【請求項3】
操作片の表面に指掛け用突起を取り付け、裏面には指掛け用突起を取り付けた位置に相対する位置から前記弁体の頂点近傍に至る補強材を取り付けることを特徴とする請求項1又は2に記載の固形剤取り出し用中栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−148509(P2011−148509A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9348(P2010−9348)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(509119197)株式会社エイエムジー (1)
【Fターム(参考)】