説明

固形描画具

【課題】固形描画材の外周を保護シートで被覆しつつ、この保護シートに剥離や離断等のためのミシン目や切れ目等の特別の構造を設けることなく、固形描画材の摩耗に伴って描画可能な先端部分を新たに露出させることが可能な固形描画具を提供する。
【解決手段】棒状に成形される固形描画材20と、該固形描画材20の外周面に2周以上巻き回される保護シート30とを備え、該固形描画材20は該保護シート30ごと鉛筆削り器で切削可能であることを特徴とする固形描画具10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状に成形される、クレヨン、色芯又は全芯タイプの固形描画材の外周に保護シートを巻き回した固形描画具であって、従来の鉛筆同様鉛筆削り器にて切削して使用可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の固形描画具は、クレヨン、全芯タイプの描画材、チョーク等多種にわたる。これらはいずれも描画材で全体が形成されているため、描画材に直接手指が触れると汚れてしまうという課題がある。
たとえば、クレヨンは、軟らかく、くっきり描けるが、その分強度が弱いため、概ね径が太く成形されている。また、手指に色材が付着しやすいので、その汚れ防止のため、外周に紙を巻き回しているのが普通である。そして描画に伴い短くなってくればこの紙を適宜の長さ分剥いて使用することとなる。しかしこの紙は、クレヨン表面に貼り付いてしまうことが多く、そのため剥きにくくなっていることもしばしばである。また、必要以上にこの紙を剥き過ぎるとその露出した部分で手や周りを汚してしまいがちである。さらに、材料の融点が低いため、高温下ではベタつき使いにくいという点にも課題がある。
【0003】
この点を解決するため、クレヨンの周りに合成樹脂フィルムを巻き回すことも提案されている(特許文献1)。しかし、このフィルムは紙に比べ強靱で裂けにくいものである。よって、ミシン目や切れ目等を入れて剥く際の手がかりにしたりする(特許文献2、3)。ところが、このようなミシン目を入れてもなお剥きにくいため、結局使い勝手が悪いものである。また、フィルム自体を破りやすくするために、固形描画材の外周に巻き回したフィルムの合わせ目の接着力を弱くしたものもある(特許文献4)。
さらに、合成樹脂フィルムは通常、引っ張り強度はある程度強くても、ある特定の方向への「裂け」には弱いものである。この点により、フィルムの方向によっては強度的に不十分である。一方、フィルムを巻き回す代わりに、熱収縮チューブ、熱収縮フィルムでコーティングすることも提案されているが、これもまた上記と同様の問題点が解決されていない。
【0004】
また、チョークも手指に炭酸カルシウムの粉が付着するという同様の問題点があり、これに対して紙あるいは合成樹脂で外周を被覆するという技術も提供されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−181698
【特許文献2】特表2002−517342
【特許文献3】特開2007−283650
【特許文献4】特開2001−10283
【特許文献5】特開昭53−143424
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑み、固形描画材の外周を保護シートで被覆しつつ、この保護シートに剥離や離断等のためのミシン目や切れ目等の特別の構造を設けることなく、固形描画材の摩耗に伴って描画可能な先端部分を新たに露出させることが可能な固形描画具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明に係る固形描画具10は、棒状に成形される固形描画材20と、該固形描画材20の外周面に2周以上巻き回される保護シート30とを備え、該固形描画材20は該保護シート30ごと鉛筆削り器で切削可能であることを特徴とする。
ここで、「固形描画材20」とは、たとえば、クレヨン、全芯タイプの描画材、チョーク等、描画材自体が棒状に成形されているものであって、それ自体以外の支持構造なしで描画や筆記が可能であるものをいう。
「保護シート30」とは、この固形描画材20の外周面に、手指の汚れ防止や固形描画材20の保護あるいは補強のために巻き回されるシート状構造物をいう。
そして、この固形描画材20にこの保護シート30が巻き回されているものが「固形描画具10」である。
【0008】
本発明において用いられる、固形描画材20に2周以上巻き回す保護シート30は、鉛筆削り器で切削可能であれば、合成樹脂、天然樹脂等プラスチック、セラミック、金属、紙、木材等、特に限定されず、いずれも使用できるが、2周以上巻き回すことを考慮し、適宜その材質が選択される。すなわち、保護シート30の材質は、複数回巻き回すことによる柔軟性、厚さ、及び鉛筆削り器で切削する際の削り器の刃の耐久性、切削性を考慮すると、紙又は合成樹脂が望ましい。
なお、保護シート30の材質としての紙については、吸湿により繊維が膨潤することで切削性が悪くなることを考慮し、アート紙又はコート紙等表面加工した紙や、ポリプロピレン製等の樹脂を配合した合成紙が望ましい。
【0009】
また、保護シート30の材質としての合成樹脂については、公知のシート材又はフィルム材であれば特に限定されず、使用可能である。しかし、強度や鉛筆削り器による切削性を考慮すると、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又は二軸延伸ポリプロピレンを使用することが望ましい。
また、強度及び切削時のカスの散乱防止の点で、保護シート30の内面側の一部又は全部に接着剤が塗布されていることが望ましい。この接着剤の材質は、これまでシール、シート、フィルム等に使用されてきたものであれば、特に限定はなく、いずれも使用可能である。
【0010】
なお、固形描画材20と保護シート30を固定するため、保護シート30の最内層に当たる部位には接着剤が塗布されていることが望ましい。また、保護シート30の最外層は、その直下の層に対し接着剤で固定することが必要である。そして、これらの中間部分には接着剤は塗布されていてもされていなくてもいずれでもよく、あるいは接着力の弱い接着剤を使用するなど、接着強度を変えたり、求める特性に応じて適宜選択することが可能である。
また、本発明では固形描画材20に保護シート30を2周以上巻き回すが、極端に薄いと皺になりやすい。また、あまりに厚ければ、最内層の辺縁と重なる部分に段差ができやすく、常温では巻きにくく、そして時間が経てば剥れやすい。よって保護シート30の厚さは概ね1μm以上かつ200μm以下が好ましく、5μm以上かつ150μm以下がさらに望ましい。
【0011】
また、保護シート30の巻き回しの回数が2周未満であれば強度的補強効果が少ないが、あまり多くてもずれが生じたりして製造上の問題となる。よって、内部の固形描画材20の径と保護シート30の厚さとを調整し、概ね3周から20周巻き回すことが望ましい。
本発明における固形描画材20は、従来公知の固形描画材20であれば、いずれも使用可能である。
また、これまで強度的に不十分であった全芯タイプの固形描画材20にも本発明は適用可能であるが、最も適しているのは、材質が柔らかくこれまで切削して使用することが難しかったクレヨンタイプの固形描画材20である。特に、平滑面に濃厚に描画できるタイプ、水で描線を溶かせるタイプ、消しゴムで消去できるタイプである。すなわち、このような柔らかい固形描画材20を保護シート30で補強することで、鉛筆削り器での切削が可能となったものである。
【0012】
このような固形描画材20を具体的に挙げると、樹脂としてロジン及びロジン変成物のうちの少なくとも一方と、ワックス類として融点45℃以上のグリセリン脂肪酸エステル及びペンタエリスリトール脂肪酸エステルのうちの少なくとも一方と、顔料と、二酸化チタンと、体質材とを含む組成物、
樹脂としてテルペン樹脂、テルペン樹脂変性物、石油樹脂、マレイン酸樹脂、マレイン酸樹脂誘導体、クマロン・インデン樹脂、クマロン・インデン樹脂誘導体、スチレン系樹脂、イソプレン系樹脂から成る群から選ばれる1種又は2種以上の混合物と、ワックス類として融点45℃以上、80℃以下のパラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックスのうちの少なくとも一方と、顔料と、二酸化チタンと、体質材とを含む組成物、
融点45℃以上の界面活性剤と、顔料と、体質材とを含む組成物、及び、
撥水撥油性物質と、結合材と、顔料と、体質材と、液体オイルとを含む組成物
のうちのいずれかとして形成されているものが例示できる。
【0013】
なお、上記組成物の成分のうち「ロジン変成物」とは、ロジンのグリセリンエステルのような、ロジンの変成物をいう。
なお、本発明においては、鉛筆削り器で切削して使用することが前提ではあるが、手許に鉛筆削り器がない場合でも使用可能なように、従来例の如く、あらかじめ保護シート30シートにミシン目を入れたり、つまんで剥がす起点となるような小片を形成したりすることも可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、鉛筆削り器で切削可能なシートで、クレヨン、色芯、全芯タイプ等の固形描画材の外周面を2周以上巻き回し、前記固形描画材が摩耗した際は、従来の鉛筆同様鉛筆削り器にて切削して使用することにより、容易に先端を尖らせることができる。また、高温下でも優れた機械的強度を有し、折れにくい固形描画具が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係る固形描画具を斜視図で示す。
【図2】図1のII−II断面の一部を拡大して示す。
【図3】鉛筆削り器により切削した図1の固形描画具を斜視図で示す。
【図4】本発明の他の実施例に係る固形描画具の製造工程(A〜D)を示す。
【図5】図4の固形描画具の一部を拡大断面図(A)で示し、さらにこの実施例に対する参考例を一部拡大断面図(B)で示す。
【実施例】
【0016】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに具体的に説明する。
(1)実施例及び比較例の組成及び製法
(1−1)実施例1
ステアリン酸グリセリド(融点61℃):43重量%
ロジンエステル:16重量%
タルク:18重量%
二酸化チタン:12重量%
パーマネントレッド:11重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物をプランジャー型押出機にて押出成形して、図1に示すような直径7.0mm、長さ120mmの赤色の固形描画材20を得た。これに、接着剤を含めた厚さ100μm、横138mm、縦120mmのポリプロピレン合成紙製の保護シート30を図2に示すように5周巻き回し、図1に示すような直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具10を得た。
【0017】
(1−2)実施例2
上記実施例1の保護シート30を、接着剤を含めた厚さ100μm、横138mm、縦120mmの二軸延伸ポリプロピレン製の保護シート30に置き換えたこと以外は、上記実施例1と同様の製法で直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具10を得た。
【0018】
(1−3)実施例3
上記実施例1の保護シート30を、接着剤を含めた厚さ100μm、横138mm、縦120mmのアート紙製の保護シート30に置き換えたこと以外は、上記実施例1と同様の製法で直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具10を得た。
【0019】
(1−4)実施例4
ハゼロウ(融点52℃):43重量%
ロジン:16重量%
タルク:17重量%
二酸化チタン:14重量%
ジスアゾイエローAAA:2重量%
フタロシアニングリーン:8重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物をプランジャー型押出機にて押出成形して、直径7.0mm、長さ120mmの緑色の固形描画材20を得た。これに、接着剤を含めた厚さ80μm、横141mm、縦120mmのポリ塩化ビニル製の保護シート30を6周巻き回し、直径7.9mm、長さ120mmの固形描画具10を得た。
【0020】
(1−5)実施例5
上記実施例4の保護シート30を、接着剤を含めた厚さ80μm、横141mm、縦120mmのスチレン製の保護シート30に置き換えたこと以外は、上記実施例4と同様の製法で直径7.9mm、長さ120mmの固形描画具10を得た。
【0021】
(1−6)実施例6
パラフィンワックス135F(日本精蝋):44重量%
マイクロクリスタリンワックス2045(融点67℃、日本精蝋):5重量%
マルカレッツR−100AS(石油樹脂、丸善石油化学):8重量%
タルク:18重量%
二酸化チタン:15重量%
ピラゾロンオレンジ:10重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物をプランジャー型押出機にて押出成形して、直径7.3mm、長さ120mmの橙色の固形描画材20を得た。これに、接着剤を含めた厚さ80μm、横96mm、縦120mmのポリエチレンテレフタレート製の保護シート30を4周巻き回し、直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具10を得た。
【0022】
(1−7)実施例7
ハゼロウ(融点52℃):20重量%
パラフィンワックス155F(日本精蝋):10重量%
モノステアリン酸ポリエチレングリコール:20重量%
カオリン:26重量%
二酸化チタン:14重量%
ジスアゾイエローAAA:2重量%
フタロシアニングリーン:8重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物をプランジャー型押出機にて押出成形して、直径7.0mm、長さ120mmの緑色の固形描画材20を得た。これに、接着剤を含めた厚さ100μm、横138mm、縦120mmのポリプロピレン合成紙製の保護シート30を5周巻き回し、直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具10を得た。
【0023】
(1−8)実施例8
窒化ホウ素:8重量%
カルボキシメチルセルロース:5重量%
タルク:67重量%
二酸化チタン:10重量%
パーマネントレッド:10重量%
上記配合組成物に同重量に相当する水を加え、ニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練しながら水分調整し、この混練物をプランジャー型押出機にて押出成形した後、120℃で3時間乾燥し、直径7.0mm、長さ120mmの、多孔質の赤色の固形描画材20を得た。この固形描画材20に120℃でジメチルシリコーンオイルを含浸させた後、接着剤を含めた厚さ100μm、横138mm、縦120mmの二軸延伸ポリプロピレン製の保護シート30を5周巻き回し、直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具10を得た。
【0024】
(1−9)比較例1
上記実施例1の保護シート30を、接着剤を含めた厚さ100μm、横138mm、縦120mmの上質紙製の保護シートに置き換えたこと以外は、上記実施例1と同様の製法で直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具を得た。
【0025】
(1−10)比較例2
上記実施例1と同様の配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物をプランジャー型押出機にて押出成形して、直径7.8mm、長さ120mmの赤色の固形描画材を得た。これに、厚さ80μm、横28mm、縦120mmのポリプロピレン合成紙製の保護シートを巻き回し、合わせ部を接着剤で貼り合わせ、直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具を得た。
【0026】
(1−11)比較例3
上記比較例2の保護シートを、厚さ80μm、横28mm、縦120mmのアート紙製の保護シートに置き換えたこと以外は、上記比較例2と同様の製法で直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具を得た。
【0027】
(1−12)比較例4
ウルシロウ(融点52℃):15重量%
フィッシャー・トロプシュワックス(融点110℃):21重量%
モンタンワックス:12重量%
低密度ポリエチレン(住友化学):21重量%
カオリン:6重量%
二酸化チタン:15重量%
ジスアゾイエローAAA:2重量%
フタロシアニングリーン:8重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物を射出機にて射出成形し、直径8.0mmの緑色の固形描画材を得た。
【0028】
(1−13)比較例5
上記実施例8と同様の多孔質の固形描画材に120℃でジメチルシリコーンオイルを含浸させた後、外周面に接着剤を塗布し、外径8.0mm、内径7.1の木軸に装填し、直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具を得た。
【0029】
(2)評価方法
上記実施例1〜8及び比較例1〜5の固形描画具について、強度及び鉛筆削り器による切削性について評価した。
(2−1)強度
各固形描画材について、23℃又は40℃の温度下、支点間60mmで3点曲げ強度測定し、折損した際の荷重(単位:N)を求めた。
【0030】
(2−2)鉛筆削り器による切削性
モニター5名に、三菱鉛筆製ミニ鉛筆削り器(商品名:ポケットシャープナーDPS−101 PLT)を用いて常温・常湿(23℃、50%)の環境下及び高温・高湿(35℃、80%)の環境下にて先端が尖るように(図3参照)切削させたうえで、その切削性を下記の1〜5点の5段階で官能評価させ、その平均点を求めた。
1:著しく悪い。
2:悪い。
3:良くも悪くもない。
4:良い。
5:著しく良い。
【0031】
(2−3)評価結果
各実施例及び比較例を用いた上記評価方法についての評価結果を、下記表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
上記のとおり、本発明の実施例1〜8に係る固形描画具はいずれの評価方法も良好な結果を示した。すなわち、固形描画具自体の強度は、23℃及び40℃の両方の温度条件を通じて、少なくとも50N以上の値を示した。また、切削性についても、常温・常湿及び高温・高湿の両方の測定条件を通じて、いずれの実施例でも平均にして4点を上回る高評価であった。また、切削の際、保護シートが剥がれたり破れたりすることもなかった。
これに対し、本発明の範囲外である比較例1〜5の試験結果においては、各々少なくとも1個の項目において評価結果が劣ることとなった。
【0034】
比較例1で保護シートとして使用した上質紙は、堅く吸湿しやすいため、これを巻き回した比較例1では、固形描画材を同じくする実施例1に比べ、明らかに切削性が劣ることとなった。特に高温・高湿の条件下では、保護シートが破れるという結果となった。
比較例2及び3は、保護シートの巻き回しが1周のため弱くて折れやすく、固形描画具としては強度不足であった。また、保護シートの接着材は重ね合わせる部位のみに塗布されていたため、保護シートが固形描画材から剥れやすかった。このことによって、固形描画材を同じくする実施例1に比べ、明らかに切削性が劣ることとなった。
比較例4は切削性については問題なかったが、強度が著しく弱く、折れやすいため実用には適さないと思われる。
比較例5は、同じ固形描画材を使用した実施例8と同様、堅牢で強度は強かった。しかし、木軸の厚さが0.1mmと薄かったため、固形描画材との接着強度が弱く、特に高湿条件下では軸が割れてしまい、実施例8に比べ切削性の評価が著しく低下することとなった。
【0035】
(3)その他
本発明の他の実施例として、図4に示すような、保護シート30の両端にミシン目31が入ったものもある。
すなわち、固形描画材20に対して巻き始めの辺縁と、巻き終わりの辺縁とにそれぞれミシン目31が入っている(図4(A))。具体的には、各々の辺縁から0.4〜3.0mmのところにミシン目31が入っている。そして、巻き始めの辺縁を、固形描画材20の外周面に接着する(図4(B))。ここで、巻き始めの辺縁にミシン目31が入っているため、ミシン目31の部分で保護シート30を折り曲げやすくなっている。これにより、巻き始めの辺縁が固形描画材20に密着しやすくなっている。ここから、保護シート31を巻き回していき(図4(C))、最後に巻き終わりの辺縁を接着して保護シート31の巻き回しは完了する(図4(D))。ここで、巻き終わりの辺縁にもミシン目31が入っているので、巻き始めの辺縁の場合と同様、このミシン目31の部分で保護シート30を折り曲げやすくなっている。
【0036】
ここで、巻き終わりの辺縁にミシン目31が入っていない場合には、保護シート30の材質の弾性により、図5(B)に示すように辺縁が浮き上がりやすくなり、ここから保護シート30が剥がれやすくなってしまう。これに対し、本実施例のように巻き終わりの辺縁にミシン目が入っていることにより、図5(A)に示すようにこのミシン目31で保護シート30が折れ曲がり、結果として辺縁が浮き上がりにくくなっている。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、棒状に成形される、クレヨン、色芯又は全芯タイプの固形描画材を用いた固形描画具に利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 固形描画具 20 固形描画材 30 保護シート
31 ミシン目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状に成形される固形描画材と、
該固形描画材の外周面に2周以上巻き回される保護シートとを備え、
該固形描画材は該保護シートごと鉛筆削り器で切削可能であることを特徴とする固形描画具。
【請求項2】
前記保護シートは、表面加工紙又は合成紙で形成されていることを特徴とする請求項1記載の固形描画具。
【請求項3】
前記保護シートは、ポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又は二軸延伸ポリプロピレンにより形成されていることを特徴とする請求項1記載の固形描画具。
【請求項4】
前記保護シートの内面側の一部又は全部に接着剤が塗布されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の固形描画具。
【請求項5】
前記固形描画材は、
樹脂としてロジン及びロジン変成物のうちの少なくとも一方と、ワックス類として融点45℃以上のグリセリン脂肪酸エステル及びペンタエリスリトール脂肪酸エステルのうちの少なくとも一方と、顔料と、二酸化チタンと、体質材とを含む組成物、
樹脂としてテルペン樹脂、テルペン樹脂変性物、石油樹脂、マレイン酸樹脂、マレイン酸樹脂誘導体、クマロン・インデン樹脂、クマロン・インデン樹脂誘導体、スチレン系樹脂、イソプレン系樹脂から成る群から選ばれる1種又は2種以上の混合物と、ワックス類として融点45℃以上、80℃以下のパラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックスのうちの少なくとも一方と、顔料と、二酸化チタンと、体質材とを含む組成物、
融点45℃以上の界面活性剤と、顔料と、体質材とを含む組成物、及び、
撥水撥油性物質と、結合材と、顔料と、体質材と、液体オイルとを含む組成物
のうちのいずれかとして形成されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の固形描画具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−35166(P2013−35166A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171442(P2011−171442)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】