説明

固形物の加熱殺菌方法及びその装置

【課題】固形物を高温かつ短時間で殺菌し、短時間で冷却することが出来る固形物の加熱殺菌方法及びその装置を提供する。
【解決手段】側面および底面に複数の貫通孔12と、チャンバ本体21のスリーブ21aとの間にクリアランスを確保するリング13とを備えた殺菌容器10に、所定量の固形物を充填して殺菌容器詰め固形物14とし、その殺菌容器詰め固形物14をチャンバ本体21のスリーブ21aを通して底蓋23の凸部23aにセットする。そして、加熱用の蒸気または冷却用の無菌水を菌容器詰め固形物14の内部および外部から吹きかける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形物の加熱殺菌方法及びその装置、特に、固形物を高温かつ短時間で殺菌し、短時間で冷却することが出来る固形物の加熱殺菌方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固形物を加熱殺菌する方法として、レトルト殺菌が広く用いられている。近年、固形物を無菌で充填する技術が発案・実用化されている。中でも固形物を殺菌する方法は、内容器に固形物を充填した後にその容器詰め固形物を殺菌し、殺菌後に無菌下においてその容器詰め固形物を滅菌済み外容器に収容する加熱殺菌方法(例えば、特許文献1を参照。)や、固形物を殺菌専用容器で殺菌後、無菌下において別の滅菌済み容器に充填する方法など、多くの加熱殺菌方法が発案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−141015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した通り、固形物を加熱殺菌する方法としては、多くの加熱殺菌方法が発案されている。
しかしながら、いずれの方法においても、加熱時間の短縮化は達成されてはいるが、冷却工程の短縮化は未だ達成されていないのが現状である。
そこで、本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は固形物を高温かつ短時間で殺菌し、短時間で冷却することが出来る固形物の加熱殺菌方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために請求項1に記載の固形物の加熱殺菌方法では、所定量の固形物を殺菌容器に充填し殺菌容器詰め固形物とする充填工程と、加熱用または冷却用の無菌流体を噴射する上蓋と該無菌流体を排出する底蓋とから成る2重蓋構造を有するチャンバに前記殺菌容器詰め固形物を収容するチャンバ移載工程と、該殺菌容器詰め固形物を該チャンバの内部に密封する密封工程と、該チャンバの内部の空気を蒸気で置換する脱気工程と、前記殺菌容器詰め固形物を蒸気にて加熱する加熱工程と、殺菌加熱した固形物の温度を一定に保持する温度保持工程と、前記固形物を冷却する冷却工程と、前記殺菌容器詰め固形物を取り出す搬出工程とを具備した固形物の加熱殺菌方法であって、側面および底面に複数の貫通孔を備えた殺菌容器に前記固形物を充填し殺菌容器詰め固形物とし、該殺菌容器詰め固形物を前記チャンバの底蓋の内面より高く且つ該殺菌容器の外周面と前記チャンバの内周面との間に隙間を確保させて該殺菌容器詰め固形物を支持し、該殺菌容器詰め固形物の内部および外部に対し前記無菌流体を噴射し固形物を短時間で加熱すると共に同短時間で冷却することが出来ることを特徴とする。
上記固形物の加熱殺菌方法では、計量された固形物を充填する殺菌容器は、底面だけでなく側面に対しても貫通孔を備えているため、いわゆる熱の通りが良い特徴を有している。従って、その殺菌容器に固形物が充填された殺菌容器詰め固形物をチャンバの内部に収容する際に、チャンバの底蓋よりも高く且つ殺菌容器の外周面とチャンバの内周面との間にクリアランスを確保させて支持することにより、加熱用の蒸気または冷却用の無菌水及び/または無菌ガスが殺菌容器の貫通孔を通して流入出し易くなり、その結果、脱気工程や加熱工程や温度保持工程においてチャンバの内部に供された加熱用の蒸気は固形物の全体に満遍なく行き亘り且つ瞬時に熱を与えることが出来るようになる。他方、殺菌完了後の冷却工程において、無菌水等をチャンバ内に噴射することにより、蒸気と同様に無菌水等も固形物の全体に満遍なく行き亘り且つ瞬時に熱を奪い固形物を冷却することが出来るようになる。
【0006】
請求項2に記載の固形物の加熱殺菌方法では、前記脱気工程において、前記底蓋に接続された排気バルブを開にして、前記殺菌容器詰め固形物の上部および側面から蒸気を流入させながら前記チャンバ内の空気を蒸気で置換することとした。
上記固形物の加熱殺菌方法では、上記構成とすることにより、極短時間でチャンバの内部を蒸気で置換することが出来るようになる。
【0007】
請求項3に記載の固形物の加熱殺菌方法では、前記加熱工程において、前記底蓋に接続された排気バルブを閉にして、前記殺菌容器詰め固形物の上部および側面から蒸気を流入させながら前記固形物を加熱することとした。
上記固形物の加熱殺菌方法では、上記構成とすることにより、固形物を加圧しながら加熱することが出来るようになり極短時間で固形物に対する昇温が可能となる。
【0008】
請求項4に記載の固形物の加熱殺菌方法では、前記加熱工程において、流入した蒸気の一部が液化し前記チャンバの底部に溜まり貯留水となる場合は前記排気バルブを開として前記貯留水を排水した後に再び該排気バルブを閉とし、或いは同排水しながら前記固形物を加熱することとした。
上記固形物の加熱殺菌方法では、上記構成とすることにより、固形物に対する熱の伝導が妨げられなくなり、固形物は好適に所定の温度まで加熱されるようになる。
【0009】
請求項5に記載の固形物の加熱殺菌方法では、前記温度保持工程において、前記殺菌容器詰め固形物の上部および側面から蒸気を流入させながら前記底蓋に接続された排気バルブから蒸気の一部を排気することにより前記チャンバ内の温度と圧力を一定にして前記固形物の温度を一定に保持することとした。
上記固形物の加熱殺菌方法では、上記構成とすることにより、小さなチャンバに殺菌容器詰め固形物を収納し加熱する際に、固形物の温度分布に偏りがなく固形物に対する均一な加熱を行うことが出来る。
【0010】
請求項6に記載の固形物の加熱殺菌方法では、前記冷却工程において、前記殺菌容器詰め固形物に対し無菌水もしくは無菌ガス又はこれらの双方を噴射しながら減圧・冷却することとした。
上記固形物の加熱殺菌方法では、上記構成とすることにより、無菌水を使用する場合は、殺菌容器の通気性と相俟って無菌水が固形物の表面だけでなく内部に深く浸透し、固形物に対する冷却を好適に促進する。その結果、固形物内部の水分の蒸発および固形物の内外の圧力差による固形物の破損を防止し、短時間で固形物を冷却することが可能となる。
【0011】
請求項7に記載の固形物の加熱殺菌方法では、前記チャンバの内部空間を前記殺菌容器詰め固形物の一つを収容する内部空間に設定することとした。
上記固形物の加熱殺菌方法では、上記構成とすることにより、蒸気または無菌流体を直接かつ効率よく固形物に作用させることが出来るようになる。その結果、固形物を短時間で加熱し並びに同短時間で冷却することに対し好適に寄与するようになる。
【0012】
前記目的を達成するために請求項8に記載の固形物の加熱殺菌装置では、所定量の固形物を殺菌容器に充填し殺菌容器詰め固形物とする充填手段と、加熱用または冷却用の無菌流体を噴射する上蓋と該無菌流体を排出する底蓋とから成る2重蓋構造を有するチャンバに前記殺菌容器詰め固形物を収容するチャンバ移載手段と、該殺菌容器詰め固形物を該チャンバの内部に密封する密封手段と、該チャンバの内部の空気を蒸気で置換する脱気手段と、前記殺菌容器詰め固形物を蒸気にて加熱する加熱手段と、殺菌加熱した固形物の温度を一定に保持する温度保持手段と、前記固形物を冷却する冷却手段と、前記殺菌容器詰め固形物を取り出す搬出手段とを具備した固形物の加熱殺菌装置であって、前記殺菌容器は側面および底面に複数の貫通孔を備えて成り、かつ前記チャンバは前記殺菌容器詰め固形物を前記チャンバの底蓋の内面より高く且つ該殺菌容器の外周面と前記チャンバの内周面との間に隙間を確保させて該殺菌容器詰め固形物を支持し、該殺菌容器詰め固形物の内部および外部に対し前記無菌流体を噴射するように構成され、固形物を短時間で加熱すると共に同短時間で冷却することが出来ることを特徴とする。
上記固形物の加熱殺菌装置では、上記請求項1に記載の固形物の加熱殺菌方法を好適に実施することが出来る。
【0013】
請求項9に記載の固形物の加熱殺菌装置では、前記脱気手段は、前記底蓋に接続された排気バルブを開にして、前記殺菌容器詰め固形物の上部および側面から蒸気を流入させながら前記チャンバ内の空気を蒸気で置換するように構成されていることとした。
上記固形物の加熱殺菌装置では、上記請求項2に記載の固形物の加熱殺菌方法を好適に実施することが出来る。
【0014】
請求項10に記載の固形物の加熱殺菌装置では、前記加熱手段は、前記底蓋に接続された排気バルブを閉にして、前記殺菌容器詰め固形物の上部および側面から蒸気を流入させながら前記固形物を加熱するように構成されていることとした。
上記固形物の加熱殺菌装置では、上記請求項3に記載の固形物の加熱殺菌方法を好適に実施することが出来る。
【0015】
請求項11に記載の固形物の加熱殺菌装置では、前記加熱手段は、流入した蒸気の一部が液化し前記チャンバの底部に溜まり貯留水となる場合は前記排気バルブを開として前記貯留水を排水した後に再び該排気バルブを閉とし、或いは同排水しながら前記固形物を加熱するように構成されていることとした。
上記固形物の加熱殺菌装置では、上記請求項4に記載の固形物の加熱殺菌方法を好適に実施することが出来る。
【0016】
請求項12に記載の固形物の加熱殺菌装置では、前記温度保持手段は、前記殺菌容器詰め固形物の上部および側面から蒸気を流入させながら前記底蓋に接続された排気バルブから蒸気の一部を排気することにより前記チャンバ内の温度と圧力を一定にして前記固形物の温度を一定に保持するように構成されていることとした。
上記固形物の加熱殺菌装置では、上記請求項5に記載の固形物の加熱殺菌方法を好適に実施することが出来る。
【0017】
請求項13に記載の固形物の加熱殺菌装置では、前記冷却手段は、前記殺菌容器詰め固形物に対し無菌水もしくは無菌ガス又はこれらの双方を噴射しながら減圧・冷却するように構成されていることとした。
上記固形物の加熱殺菌装置では、上記請求項6に記載の固形物の加熱殺菌方法を好適に実施することが出来る。
【0018】
請求項14に記載の固形物の加熱殺菌装置では、前記チャンバの内空間は前記殺菌容器の一つを収容する内空間に設定されていることとした。
上記固形物の加熱殺菌装置では、上記請求項7に記載の固形物の加熱殺菌方法を好適に実施することが出来る。
【発明の効果】
【0019】
本発明の固形物の加熱殺菌方法によれば、固形物は熱の通りの良好な殺菌容器に充填され、その殺菌容器詰め固形物は熱の通りを阻害しない形態でチャンバの内部に収容され、更にその殺菌容器詰め固形物の内部および外部に対して蒸気または無菌水等の無菌流体を噴射することにより、蒸気等の無菌流体が固形物の全体に満遍なく行き亘り、その結果、固形物を短時間で高温殺菌し或いは同短時間で冷却するようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の固形物の加熱殺菌方法100の構成を示すフロー図である。
先ず、この固形物の加熱殺菌方法100は、固形物を後述する殺菌容器に計量し充填する充填工程と、固形物が充填された殺菌容器詰め固形物を専用のチャンバの内部にセットするチャンバ移載工程と、その殺菌容器詰め固形物をチャンバ内部に閉じ込める密封工程と、チャンバ内部の空気を蒸気で置換する脱気工程と、蒸気によって殺菌容器詰め固形物を加熱殺菌する加熱工程と、加熱殺菌した殺菌容器詰め固形物の温度を一定に保持する温度保持工程と、加熱殺菌処理が完了した殺菌容器詰め固形物を冷却する冷却工程と、冷却した殺菌容器詰め固形物を取り出す搬出工程とを具備して構成されている。なお、各工程については図2から図9を参照しながら後述する。
【0022】
図2は、本発明に係る充填工程を示す要部説明図である。
この充填工程は、下記専用の殺菌容器10に予め計量された所定量の固形物を充填することから成る。なお、以下の説明では、殺菌容器10に所定量の固形物が充填されて成るものを殺菌容器詰め固形物14として記すことにする。
【0023】
この殺菌容器10は、固形物を収容する容器本体11に、蒸気等の加熱流体または無菌水等の冷却流体が流入出するための複数の貫通孔12が側面および底面に施され、更に後述するチャンバの受け具(スリーブ)にセットされる際に、側面の貫通孔12が塞がれ蒸気等が流入出しにくくなることを防止するリング13とを具備して構成されている。殺菌容器10は、いわゆる熱の通りが良くなるように構成され、その結果、後述する加熱工程または冷却工程において短時間で固形物を殺菌または冷却することが出来るようになる。また、容器本体11の内周面は固形物が付着しにくいように、面粗さが小さくなるように仕上げられている。
【0024】
図3は、本発明に係るチャンバ移載工程を示す要部説明図である。
このチャンバ移載工程は、殺菌容器10に所定量の固形物が充填されて成る殺菌容器詰め固形物14を下記専用のチャンバ20の内部に収容することから成る。
【0025】
このチャンバ20は、上下面が片方ずつ開放出来る構造を有する殺菌専用の小型チャンバで、チャンバ本体21と上蓋22と底蓋23とから成る。また、チャンバ20は内部に殺菌容器詰め固形物14を密封し、蒸気による加熱殺菌あるいは無菌水等による冷却を行う。また、上蓋22は非無菌室に連通し底蓋23は無菌室に連通している。従って、上蓋22が開いていると底蓋23は閉じており、逆に底蓋23が開いていると上蓋22は閉じている。
【0026】
チャンバ本体21は、殺菌容器詰め固形物14を横方向に支持するスリーブ21aと、第2流路22bから流入する蒸気または無菌水等をスリーブ21aの外側に導入するパス21bとを備えている。これにより、殺菌容器詰め固形物14を外側から加熱殺菌または冷却することが出来るようになる。また、殺菌容器10のリング13によって、スリーブ21aの内周面と殺菌容器詰め固形物14の外周面との間にはクリアランス(隙間)が確保されるようになる。これにより、容器の内部に浸入した蒸気または無菌水等は固形物の全体に満遍なく行き亘りながら容器の外部に流出するようになる。その結果、殺菌容器詰め固形物14は、蒸気または無菌水等によって好適に加熱または冷却されるようになる。
【0027】
上蓋22には、蒸気または無菌水等をチャンバの内部に供給する第1流路22aおよび第2流路22bが形成されている。また、蒸気または無菌水等が殺菌容器詰め固形物14の貫通孔12を通して流入出して固形物の全体に満遍なく行き亘ることが出来るように、例えば第1流路22aを中心とした同芯状に第2流路22bが各々配設されている。
【0028】
底蓋23には、殺菌容器詰め固形物14を縦方向(軸方向)に支持する凸部23aと、固形物の加熱殺菌に使用された蒸気または同冷却に使用された無菌水を外部に排出する排出孔23bとが形成され、更に排出孔23bの下流には、排出されるその蒸気等の流れを止め、或いはその流量を調整する排出バルブ23cが接続されている。この凸部23aによって殺菌容器詰め固形物14の底面は底蓋23の内底面23dよりも高い位置で支持されて、容器の内部に浸入した蒸気等が外部に流出し易くなり、或いは蒸気等が容器の底面を通して内部に浸入し易くなる。
【0029】
図4は、本発明に係る密封工程を示す要部説明図である。
この密封工程は、殺菌容器詰め固形物14をチャンバ本体21のスリーブ21aおよび底蓋23の凸部23aにセットした後に上蓋22(加熱ヘッド)を下降させて殺菌容器詰め固形物14をチャンバ本体21の内部に密封することから成る。
【0030】
図5は、本発明に係る脱気工程を示す要部説明図である。
この脱気工程は、排出孔23bの下流に接続された排出バルブ23cを開として、上蓋22の第1流路22aおよび第2流路22bからチャンバ内部に高温の蒸気を供給し、チャンバ内部の空気をチャンバの外部に排気することにより、チャンバ内部の空気を蒸気で置換することから成る。先ず、第1流路22aからの蒸気は、殺菌容器詰め固形物14の内部に流入し容器の側面および底面の貫通孔12を通って容器外に出て容器内の空気を容器外に追い出す。他方、追い出された空気は外側に向かって流れるが、第2流路22bからの蒸気と混合して排出孔23bを通ってチャンバの外に排気されることになる。
【0031】
図6は、本発明に係る加熱工程を示す要部説明図である。
この加熱工程は、排出孔23bの下流に接続された排出バルブ23cを閉として、上蓋22の第1流路第1流路22aおよび第2流路22bからチャンバ内部に高温の蒸気を供給し、チャンバ内部を蒸気で加圧しながら殺菌容器詰め固形物14に充填された固形物を蒸気で加熱することから成る。排出バルブ23cを閉じた状態で蒸気にて固形物を加圧・加熱すると、図10にて後述するが固形物の温度が好適に瞬時に上昇する。
【0032】
また、蒸気の一部が液化しチャンバの底部に溜まり貯留水となる場合は、チャンバ内の圧力が極端に低下しない程度に排気バルブ23cを微開にし貯留水をドレインした後に、再び排気バルブ23cを閉として蒸気により固形物を加熱する。或いは、排気バルブ23cを微開にし貯留水をドレインしながら蒸気により固形物を加熱する。
【0033】
図7は、本発明に係る温度保持工程を示す要部説明図である。
この温度保持工程は、排出孔23bの下流に接続された排出バルブ23cを微小開とし凝縮水を抜きながら、上蓋22の第1流路22aおよび第2流路22bからチャンバ内部に高温の蒸気を供給し、殺菌容器詰め固形物14に充填された固形物を蒸気で加熱する。なお、この場合、チャンバ内部の温度と圧力が一定になるように固形物を蒸気で加熱する。
【0034】
図8は、本発明に係る冷却工程を示す要部説明図である。
この冷却工程は、殺菌完了後、蒸気の供給を停止し、蒸気に代えて無菌水を第1流路22aおよび第2流路22bから供給して固形物に噴射し且つ排出バルブ23cを微開にしながら減圧(除圧)・冷却する。温度保持完了後(殺菌終了後)、通常ならば蒸気の供給を停止し、排出バルブをゆっくり開としながら徐々に除圧しつつ温度を下げないと、固形物の内部と外部の圧力差によって固形物自身が破損したり、急激な圧力変化で固形物中の水分が蒸発したりするようになる。しかしながら、本冷却工程は、除圧時に無菌水を内容物あるいは殺菌容器に吹きかけることにより、固形物の冷却を促進し、固形物内部の水分が蒸発したり、圧力差によって破損したりすることなく短時間で冷却することが可能である。なお、無菌水の他に無菌ガスを使用することも可能である。或いは、無菌水と無菌ガスの双方を使用して固形物を冷却しても良い。
【0035】
図9は、本発明に係る搬出工程を示す要部説明図である。
この搬出工程は、冷却完了後、チャンバの底蓋23を開けて殺菌容器詰め固形物14をチャンバ外に取り出して無菌室側に搬送する。その後、殺菌容器詰め固形物14の内部の固形物が取り出され、殺菌容器10は、再び充填工程に供される。
【0036】
なお、底蓋23の内底面23dは、上記の如く凸部23aを備えた突起構造とする代わりにフラット面とし、他方、殺菌容器10は自身の底部に足部を設けた上げ底構造とし、蒸気が殺菌容器10の底部から自由に流入出するような構成としても良い。
【0037】
図10は、本発明に係る脱気工程、加熱工程、温度保持工程および冷却工程の温度プロファイルを示すグラフである。
このグラフから、本発明の固形物の加熱殺菌方法によれば、殺菌対象物である固形物の表面温度が約10秒間で約34℃から約150℃に昇温し、約30秒間150℃近傍に保持され、更には約20秒間で約153℃から約100℃まで下降するようになる。
【0038】
上記固形物の加熱殺菌方法100、殺菌容器10およびチャンバ20によれば、固形物を短時間で加熱殺菌および短時間で冷却することが出来るようになる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の固形物の加熱殺菌方法は、レトルト食品に充填される固形物の殺菌に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の固形物の加熱殺菌方法の構成を示すフロー図である。
【図2】本発明に係る充填工程を示す要部説明図である。
【図3】本発明に係るチャンバ移載工程を示す要部説明図である。
【図4】本発明に係る密封工程を示す要部説明図である。
【図5】本発明に係る脱気工程を示す要部説明図である。
【図6】本発明に係る加熱工程を示す要部説明図である。
【図7】本発明に係る温度保持工程を示す要部説明図である。
【図8】本発明に係る冷却工程を示す要部説明図である。
【図9】本発明に係る搬出工程を示す要部説明図である。
【図10】本発明に係る脱気工程、加熱工程、温度保持工程および冷却工程の温度プロファイルを示すグラフである。
【符号の説明】
【0041】
10 殺菌容器
11 容器本体
12 貫通孔
13 リング
14 殺菌容器詰め固形物
20 チャンバ
21 チャンバ本体
22 上蓋
23 底蓋
100 固形物の加熱殺菌方法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の固形物を殺菌容器に充填し殺菌容器詰め固形物とする充填工程と、加熱用または冷却用の無菌流体を噴射する上蓋と該無菌流体を排出する底蓋とから成る2重蓋構造を有するチャンバに前記殺菌容器詰め固形物を収容するチャンバ移載工程と、該殺菌容器詰め固形物を該チャンバの内部に密封する密封工程と、該チャンバの内部の空気を蒸気で置換する脱気工程と、前記殺菌容器詰め固形物を蒸気にて加熱する加熱工程と、殺菌加熱した固形物の温度を一定に保持する温度保持工程と、前記固形物を冷却する冷却工程と、前記殺菌容器詰め固形物を取り出す搬出工程とを具備した固形物の加熱殺菌方法であって、側面および底面に複数の貫通孔を備えた殺菌容器に前記固形物を充填し殺菌容器詰め固形物とし、該殺菌容器詰め固形物を前記チャンバの底蓋の内面より高く且つ該殺菌容器の外周面と前記チャンバの内周面との間に隙間を確保させて該殺菌容器詰め固形物を支持し、該殺菌容器詰め固形物の内部および外部に対し前記無菌流体を噴射し固形物を短時間で加熱すると共に同短時間で冷却することが出来ることを特徴とする固形物の加熱殺菌方法。
【請求項2】
前記脱気工程において、前記底蓋に接続された排気バルブを開にして、前記殺菌容器詰め固形物の上部および側面から蒸気を流入させながら前記チャンバ内の空気を蒸気で置換する請求項1に記載の固形物の加熱殺菌方法。
【請求項3】
前記加熱工程において、前記底蓋に接続された排気バルブを閉にして、前記殺菌容器詰め固形物の上部および側面から蒸気を流入させながら前記固形物を加熱する請求項1に記載の固形物の加熱殺菌方法。
【請求項4】
前記加熱工程において、流入した蒸気の一部が液化し前記チャンバの底部に溜まり貯留水となる場合は前記排気バルブを開として前記貯留水を排水した後に再び該排気バルブを閉とし、或いは同排水しながら前記固形物を加熱する請求項1又は3に記載の固形物の加熱殺菌方法。
【請求項5】
前記温度保持工程において、前記殺菌容器詰め固形物の上部および側面から蒸気を流入させながら前記底蓋に接続された排気バルブから蒸気の一部を排気することにより前記チャンバ内の温度と圧力を一定にして前記固形物の温度を一定に保持する請求項1に記載の固形物の加熱殺菌方法。
【請求項6】
前記冷却工程において、前記殺菌容器詰め固形物に対し無菌水もしくは無菌ガス又はこれらの双方を噴射しながら減圧・冷却する請求項1に記載の固形物の加熱殺菌方法。
【請求項7】
前記チャンバの内部空間を前記殺菌容器詰め固形物の一つを収容する内部空間に設定する請求項1から6の何れかに記載の固形物の加熱殺菌方法。
【請求項8】
所定量の固形物を殺菌容器に充填し殺菌容器詰め固形物とする充填手段と、加熱用または冷却用の無菌流体を噴射する上蓋と該無菌流体を排出する底蓋とから成る2重蓋構造を有するチャンバに前記殺菌容器詰め固形物を収容するチャンバ移載手段と、該殺菌容器詰め固形物を該チャンバの内部に密封する密封手段と、該チャンバの内部の空気を蒸気で置換する脱気手段と、前記殺菌容器詰め固形物を蒸気にて加熱する加熱手段と、殺菌加熱した固形物の温度を一定に保持する温度保持手段と、前記固形物を冷却する冷却手段と、前記殺菌容器詰め固形物を取り出す搬出手段とを具備した固形物の加熱殺菌装置であって、前記殺菌容器は側面および底面に複数の貫通孔を備えて成り、かつ前記チャンバは前記殺菌容器詰め固形物を前記チャンバの底蓋の内面より高く且つ該殺菌容器の外周面と前記チャンバの内周面との間に隙間を確保させて該殺菌容器詰め固形物を支持し、該殺菌容器詰め固形物の内部および外部に対し前記無菌流体を噴射するように構成され、固形物を短時間で加熱すると共に同短時間で冷却することが出来ることを特徴とする固形物の加熱殺菌装置。
【請求項9】
前記脱気手段は、前記底蓋に接続された排気バルブを開にして、前記殺菌容器詰め固形物の上部および側面から蒸気を流入させながら前記チャンバ内の空気を蒸気で置換するように構成されている請求項8に記載の固形物の加熱殺菌装置。
【請求項10】
前記加熱手段は、前記底蓋に接続された排気バルブを閉にして、前記殺菌容器詰め固形物の上部および側面から蒸気を流入させながら前記固形物を加熱するように構成されている請求項8に記載の固形物の加熱殺菌装置。
【請求項11】
前記加熱手段は、流入した蒸気の一部が液化し前記チャンバの底部に溜まり貯留水となる場合は前記排気バルブを開として前記貯留水を排水した後に再び該排気バルブを閉とし、或いは同排水しながら前記固形物を加熱するように構成されている請求項8又は10に記載の固形物の加熱殺菌装置
【請求項12】
前記温度保持手段は、前記殺菌容器詰め固形物の上部および側面から蒸気を流入させながら前記底蓋に接続された排気バルブから蒸気の一部を排気することにより前記チャンバ内の温度と圧力を一定にして前記固形物の温度を一定に保持するように構成されている請求項8に記載の固形物の加熱殺菌装置。
【請求項13】
前記冷却手段は、前記固形物および前記殺菌容器に対し無菌水もしくは無菌ガス又はこれらの双方を噴射しながら減圧・冷却するように構成されている請求項7に記載の固形物の加熱殺菌装置。
【請求項14】
前記チャンバの内空間は前記殺菌容器の一つを収容する内空間に設定されている請求項8から13の何れかに記載の固形物の加熱殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−118876(P2008−118876A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304049(P2006−304049)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】