説明

固形腫瘍の予後および処置のための方法およびシステム

本発明は、腎細胞ガン(RCC)または他の固形腫瘍の予後および処置のための方法、システムおよび機器を提供する。固形腫瘍の臨床成績の予後となる遺伝子が本発明に従って同定され得る。固形腫瘍を有する患者の末梢血単核球(PBMC)におけるこれらの遺伝子の発現プロフィールは、これらの患者の臨床成績と相関される。RCC予後遺伝子の例は表2および3に示される。これらの遺伝子は、目的のRCC患者の臨床成績を予測するための代用マーカーとして使用され得る。これらの遺伝子はまた、目的のRCC患者のために良好な処置の選択のために使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、固形腫瘍予後遺伝子、ならびに固形腫瘍の予後および処置のためにこれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
一次組織における発現プロフィール研究は、正常組織と悪性組織との間に転写の差異が存在することを示している。例えば、Su, et al., CANCER RES, 61:7388−7393 (2001);およびRamaswamy, et al., PROC NATL ACAD SCI U.S.A., 98:15149−15151 (2001)を参照のこと。最近の臨床分析はまた、臨床成績の正確な尺度と高度に相関されているようである腫瘍内の発現プロフィールを同定した。1つの研究は、一次腫瘍生検の発現プロフィールが、ガン患者における危険性の現在受け入れられている標準的な尺度に匹敵するかまたはそれに優り得る予後「サイン」を生じることを示した。van de Vijver, et al., N ENGL J MED, 347:1999−2009 (2002)を参照のこと。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の概要
本発明は、腎細胞ガン(RCC)または他の固形腫瘍の予後および処置のための方法、システムおよび機器を提供する。固形腫瘍の臨床成績の予後となる遺伝子が、本発明によって同定され得る。固形腫瘍を有する患者の末梢血単核球(PBMC)におけるこれらの遺伝子の発現プロフィールは、これらの患者の臨床成績と相関される。これらの遺伝子は、固形腫瘍を有する目的の患者の臨床成績を予測するための代用マーカーとして使用され得る。これらの遺伝子はまた、目的の患者について良好な成績を生じ得る処置を同定または選択するために使用され得る。
【0004】
1つの態様において、本発明は、目的の患者における固形腫瘍の処置の予後または選択のために有用な方法を提供する。この方法は、目的の患者の末梢血サンプルにおける1つ以上の予後遺伝子の発現プロフィールを、予後遺伝子の少なくとも1つの参照発現プロフィールに対して比較する工程を包含し、ここで、第2のクラスの患者のPBMCに比較して第1のクラスの患者のPBMCにおいて予後遺伝子の各々は差次的に発現される。第1および第2両方のクラスの患者は、目的の患者と同じ固形腫瘍を有するが、各クラスの患者は異なる臨床成績を有する。多くの実施態様において、Affymetrix HG−U133Aジーンチップによって決定される、2つのクラスの患者のPBMCにおけるその処置前発現プロフィールが、クラスに基づく相関分析(例えば、最近傍分析、またはマイクロアレイ法の有意性法)の下でのクラス区別(class distinction)と相関される少なくとも1つの遺伝子を含む。ここで、クラス区別は、2つのクラスの患者のPBMCにおける遺伝子の理想化された発現パターンを表す。
【0005】
本発明に従う固形腫瘍としては、限定するものではないが、RCC、前立腺ガン、頭部/頸部ガン、および血液またはリンパ細胞にその起源を有しない他の腫瘍が挙げられる。臨床成績は、任意の臨床指標によって測定され得る。1つの実施態様において、臨床成績は疾患進行までの時間(TTP)または死亡までの時間(TTD)によって測定される。治療的処置に対する他の患者の反応(例えば、完全反応、部分反応、小反応、安定疾患、進行性疾患、非進行性疾患、またはその任意の組み合わせ)もまた、臨床成績を測定するために使用され得る。本発明に従う固形腫瘍処置の例としては、限定するものではないが、薬物療法(例えば、CCI−779療法)、化学療法、ホルモン療法、放射線療法、免疫療法、外科手術、遺伝子治療、抗血管新生療法、対症療法、またはその任意の組み合わせが挙げられる。
【0006】
目的の患者の末梢血サンプルは、全血サンプル、または富化もしくは精製されたPBMCを含む血液サンプルであり得る。血液サンプルの他の型もまた本発明において使用され得る。多くの場合、目的の患者の発現プロフィールおよび参照発現プロフィールを調製するために使用される末梢血サンプルは、患者の治療的処置の前に単離されるベースラインサンプルである。
【0007】
参照発現プロフィールは、目的の患者と同じ固形腫瘍を有し、そしてその臨床成績が既知であるかまたは決定可能である患者の末梢血サンプルにおける予後遺伝子の平均発現プロフィールを含み得る。参照発現プロフィールはまた、目的の患者と同じ固形腫瘍、および既知または決定可能な臨床成績を有する特定の参照患者における予後遺伝子の末梢血発現パターンをその各々が表す個別の発現プロフィールのセットを含み得る。参照発現プロフィールの他の型もまた、本発明において使用され得る。多くの場合、目的の患者の発現プロフィールおよび参照発現プロフィールは、同じかまたは匹敵する方法を使用して調製される。
【0008】
任意の比較方法が、目的の患者の発現プロフィールを参照発現プロフィールに対して比較するために使用され得る。1つの実施態様において、比較は各予後遺伝子の絶対的または相対的末梢血発現レベルに基づく。別の実施態様において、比較は2つ以上の予後遺伝子の発現レベル間の比率に基づく。さらに別の実施態様において、比較は、k−最近傍アルゴリズム(k-nearest-neighbors algorithm)または重み付き投票アルゴリズム(weighted-voting algorithm)のような方法を使用することによって実施される。
【0009】
1つの実施態様において、評価される目的の患者はRCCを有し、そして臨床成績はCCI−779療法に対する患者反応によって測定される。RCC予後遺伝子の例は、表2および3に示される。1つの例において、成績予測において用いられるRCC予後遺伝子は、表2から選択される少なくとも1つの遺伝子を含む。多くの場合、RCC予後遺伝子は表2から選択される2つ以上の遺伝子(例えば、遺伝子番号1〜7から選択される少なくとも1つの遺伝子、および遺伝子番号8〜14から選択される少なくとも別の遺伝子)を含む。このようにして選択される遺伝子は、目的のRCC患者のTTDを予測するために使用され得る。別の例において、成績予測において用いられるRCC予後遺伝子は、表3から選択される少なくとも1つの遺伝子を含む。多くの場合、RCC予後遺伝子は、表3から選択される2つ以上の遺伝子(例えば、遺伝子番号1〜14から選択される少なくとも1つの遺伝子、および遺伝子番号15〜28から選択される少なくとも別の遺伝子)を含む。このようにして選択される遺伝子は、目的のRCC患者のTTPを予測するために使用され得る。さらなる例において、成績予測において用いられるRCC予後遺伝子は表4から選択される分類因子(classifier)を含み、そして目的のRCC患者の発現プロフィールはk−最近傍アルゴリズムまたは重み付き投票アルゴリズムを使用して、参照発現プロフィールに対して比較される。
【0010】
本発明はまた、目的の患者における固形腫瘍の処置の予後または選択のために有用なシステムを特徴とする。このシステムは、(1)目的の患者の末梢血サンプルにおける1つ以上の予後遺伝子の発現プロフィールを表すデータを含む第1の貯蔵媒体、(2)予後遺伝子の少なくとも1つの参照発現プロフィールを表すデータを含む第2の貯蔵媒体、(3)目的の患者の発現プロフィールを参照発現プロフィールに対して比較することが可能なプログラム、および(4)プログラムを実行することが可能なプロセッサを含む。Affymetrix HG−U133Aジーンチップによって測定される、固形腫瘍を有する患者のPBMCにおける予後遺伝子の発現レベルは、患者の臨床成績と相関される。1つの実施態様において、目的の患者はRCCを有し、そして予後遺伝子は表2および3から選択される。
【0011】
さらに、本発明は、目的の患者における固形腫瘍の処置の予後または選択のために有用なキットを特徴とする。各キットは、固形腫瘍予後遺伝子(例えば、表2および3から選択されるRCC予後遺伝子)のための少なくとも1つのプローブを含む。
【0012】
本発明の他の特徴、目的および利点は、以下の詳細な説明において明らかとなる。しかし、詳細な説明は、本発明の実施態様を示すが、説明のためのみに提供されるのであって、限定するものではないことを理解すべきである。本発明の範囲内での種々の変更および改変は、詳細な説明から当業者には明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
詳細な説明
本発明は、RCCまたは他の固形腫瘍の処置の予後および選択のための方法を提供する。これらの方法は、異なる臨床成績を有する固形腫瘍患者の末梢血サンプルにおいて差次的に発現される予後遺伝子を用いる。これらの予後遺伝子の多くの末梢血発現プロフィールが、クラスに基づく相関モデルの下、患者の臨床成績と相関される。多くの実施態様において、固形腫瘍患者は、その臨床成績に基づいて少なくとも2つのクラスに分割され得、そして予後遺伝子の処置前PBMC発現プロフィールが、近傍分析の下クラス区別と相関される。ここで、クラス区別は、患者の2つのクラスのPBMCにおけるこれらの遺伝子の理想化された発現パターンを表す。
【0014】
本発明の予後遺伝子は、RCCまたは他の固形腫瘍を有する患者の臨床成績の予測のための代用マーカーとして使用され得る。本発明の予後遺伝子はまた、RCCまたは他の固形腫瘍の良好な処置の同定または選択のために使用され得る。異なる患者は、疾患の分子機構の個体不均一性に起因して、治療的処置に対する異なる臨床反応を有し得る。患者反応と相関する遺伝子発現パターンの同定は、臨床医が、予測される患者反応に基づいて処置を選択し、そしてそれによって有害な反応を回避することを可能にする。これは臨床試験の改善された威力および安全性、ならびに薬物および他の治療的処置についての増加された利点/危険性比率を提供する。末梢血は、最小の浸襲性で患者から日常的に得られ得る組織である。患者成績と末梢血サンプルにおける遺伝子発現プロフィールとの間の相関を決定することにより、本発明は臨床薬理ゲノム学および固形腫瘍処置における重大な進歩を表す。
【0015】
本発明の種々の態様は、以下の小節においてさらに詳細に説明される。小節の使用は本発明を限定することを意味しない。各小節は本発明の任意の態様に適用され得る。この適用において、別段の記載がない限り、「または」の使用は「および/または」を意味する。
【0016】
I.固形腫瘍予後遺伝子を同定するための一般方法
以前の研究は、固形腫瘍患者由来のPBMCにおけるベースライン発現プロフィールは、疾患なしの対象のそれらとは有意に異なることを示した。2003年11月21日出願の米国特許出願第10/717,597号、2003年4月3日出願の米国仮出願第60/459,782号、および2002年11月21日出願の米国仮出願第60/427,982号を参照のこと(その全てを出典明示で援用する)。研究はまた、PBMCにおける遺伝子発現プロフィールがインビボでの抗ガン剤活性の予測となることを示した。2004年3月5日出願の米国特許出願第10/793,032号、2004年2月11日出願の米国特許出願第10/775,169号、および2003年2月11日出願の米国仮出願第60/446,133号を参照のこと(その全てを出典明示で援用する)。さらに、研究はPBMCベースライン発現プロフィールがRCCまたは他の非血液疾患の臨床成績と相関されることを示した。2004年4月29日出願の米国特許出願第10/834,114号、2004年1月23日出願の米国仮特許出願第60/538,246号、および2003年4月29日出願の米国仮特許出願第60/466,067号を参照のこと。
【0017】
本発明はさらに、末梢血遺伝子発現とRCCまたは他の固形腫瘍の臨床成績との間の相関を評価する。RCCまたは他の固形腫瘍のための予後遺伝子が本発明に従って同定され得る。これらの遺伝子は、異なる臨床成績を有する固形腫瘍患者の末梢血サンプルにおいて差次的に発現される。これらの遺伝子の多くの末梢血発現プロフィールは、異なる成績クラスの患者間のクラス区別と相関される。多くの実施態様において、末梢血発現プロフィールは、患者の処置の開始前の末梢血遺伝子発現を表すベースラインプロフィールである。末梢血発現プロフィールはまた、処置の過程の間の遺伝子発現を表すように選択され得る。本発明に適切な相関分析は、限定するものではないが、最近傍分析(Golub, et al., SCIENCE, 286: 531−537 (1999))、マイクロアレイの有意法(SAM)(Tusher, et al., PROC. NATL. ACAD. SCI. U.S.A., 98:5116−5121 (2001))、または他のクラスに基づく相関計量(metric)を含む。
【0018】
本発明に従う固形腫瘍としては、限定するものではないが、RCC、前立腺ガン、頭部/頸部ガン、卵巣ガン、精巣ガン、脳腫瘍、乳ガン、肺ガン、結腸ガン、膵臓ガン、胃ガン、膀胱ガン、皮膚ガン、子宮頸ガン、子宮ガンおよび肝臓ガンが挙げられる。固形腫瘍は、直接または間接可視化手順を使用して測定または評価され得る。適切な可視化方法としては、限定するものではないが、走査(例えば、X線、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁性共鳴画像法(MRI)、ポジトロン放出断層撮影(PET)または超音波断層法(U/S))、生検、触診、内視鏡検査、腹腔鏡検査および当業者により認められる他の適切な手段が挙げられる。
【0019】
固形腫瘍の臨床成績は、多数の診断基準によって評価され得る。多くの実施態様において、臨床成績は治療的処置に対する患者の反応に基づいて評価される。臨床成績尺度の例としては、限定するものではないが、完全反応、部分反応、小反応、安定疾患、進行性疾患、疾患進行までの時間(TTP)、死亡までの時間(TTDもしくは生存時間)またはその任意の組み合わせが挙げられる。固形腫瘍処置の例としては、限定するものではないが、薬物療法(例えば、CCI−779療法)、化学療法、ホルモン療法、放射線療法、免疫療法、外科手術、遺伝子治療、抗血管新生療法、対症療法または他の通常療法もしくは非通常療法、あるいはその任意の組み合わせが挙げられる。
【0020】
1つの実施態様において、臨床成績はWHO Reporting Criteria(例えば、WHO Publication, No.48(World Health Organization, Geneva, Switzerland, 1979)に記載のもの)に基づいて評価される。この診断基準の下、1次元または2次元的に測定可能な病変が各評価において測定される。多重の病変が任意の器官に存在する場合、6個までの代表的な病変が選択され得る(入手可能であれば)。
【0021】
1つの例において、臨床成績は臨床カテゴリー(例えば、完全反応、部分反応、小反応、安定疾患、進行性疾患またはその任意の組み合わせ)から構成される分類システムに基づいて決定される。「完全反応(CR)」は、4週間以上隔たった2つの観察によって決定される、全ての測定可能なそして評価可能な疾患の完全な消失を意味する。新たな病変および疾患に関連する症状は存在しない。2次元的に測定可能な疾患に関しての「部分反応(PR)」は、4週間以上隔たった2つの観察によって決定される、全ての測定可能な病変の最大垂直直径の積の合計の少なくとも約50%の減少を意味する。1次元的に測定可能な疾患に関しての「部分反応」は、4週間以上隔たった2つの観察によって決定される、全ての病変の最大直径の合計の少なくとも約50%の減少を意味する。全ての病変が退行して、部分反応として認定される必要はないが、いかなる病変も進行すべきでなく、そしていかなる新たな病変も出現すべきでない。評価は客観的であるべきである。2次元的に測定可能な疾患に関しての「小反応」は、全ての測定可能な病変の最大垂直直径の積の合計の約25%以上かつ約50%未満の減少を意味する。1次元的に測定可能な疾患に関しての「小反応」は、全ての病変の最大直径の合計の少なくとも約25%かつ約50%未満の減少を意味する。
【0022】
2次元的に測定可能な疾患に関しての「安定疾患(SD)」は、全ての測定可能な病変の最大垂直直径の積の合計の約25%未満の減少または約25%未満の増加を意味する。1次元的に測定可能な疾患に関しての「安定疾患」は、全ての病変の直径の合計の約25%未満の減少または約25%未満の増加を意味する。新たな病変は出現すべきでない。「進行性疾患(PD)」は、少なくとも1つの2次元的(最大垂直直径の積)もしくは1次元的に測定可能な病変の大きさの約25%以上の増加、または新たな病変の出現をいう。胸水または腹水の発生もまた、これが陽性の細胞学によって実証される場合、進行性疾患として考えられる。病理学的な骨折または骨の虚脱は、必ずしも疾患進行の証拠ではない。
【0023】
さらに別の実施態様において、1次元的および2次元的に測定可能な疾患の総合対象腫瘍反応(overall subject tumor response)は、表1に従って決定される。
【0024】
表1.総合対象腫瘍反応
【0025】
【表1】

【0026】
非測定可能疾患についての総合対象腫瘍反応は、例えば以下の状況において評価され得る:
a)総合完全反応:非測定可能疾患が存在する場合、それは完全に消失すべきである。そうでなければ、対象は「総合完全反応体」として考えられ得ない。
b)総合進行:非測定可能疾患の大きさの有意な増加または新たな病変の出現の場合、総合反応は進行である。
【0027】
臨床成績は、他の診断基準によっても評価され得る。例えば、臨床成績はTTPまたはTTDによって測定され得る。TTPは治療的処置の開始日から進行性疾患の測定の第1日までの間隔をいう。TTDは治療的処置の開始日から死亡の時刻、または生存が知られた最後の日の打ち切り(censored)までの間隔をいう。
【0028】
固形腫瘍患者は、そのそれぞれの臨床成績に基づいて分類され得る。固形腫瘍患者はまた、伝統的な臨床危険性評価法を使用することによって分類され得る。多くの場合、これらの危険性評価方法はいくつかの予後因子を用いて、患者を異なる予後または危険性群に分類する。1つの例は、RCCのためのモトザー(Motzer)危険性評価(Motzer, et al., J CLIN ONCOL, 17:2530−2540 (1999)に記載)である。異なる危険性群の患者は、治療に対して異なる反応を有し得る。
【0029】
多くの場合、予後遺伝子の同定のために使用される末梢血サンプルは、「ベースライン」または「処置前」サンプルである。これらのサンプルは治療的処置の前にそれぞれの患者から単離され、そしてそのベースライン末梢血発現プロフィールが処置に反応しての患者成績と相関される遺伝子を同定するために使用され得る。他の処置または疾患段階において単離される末梢血サンプルもまた、固形腫瘍予後遺伝子を同定するために使用され得る。
【0030】
種々の型の末梢血サンプルが本発明において使用され得る。1つの実施態様において、末梢血サンプルは全血サンプルである。別の実施態様において、末梢血サンプルは富化されたPBMCを含む。「富化」によって、サンプル中のPBMCの割合が全血液中のPBMCの割合より高いことが意味される。いくつかの場合に、富化されたサンプル中のPBMCの割合は、全血液中のPBMCの割合より少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍またはそれ以上高い。いくつかの他の場合において、富化されたサンプル中のPBMCの割合は少なくとも90%、95%、98%、99%、99.5%またはそれ以上である。富化されたPBMCを含む血液サンプルは、当該分野において公知の任意の方法(例えば、フィコール勾配遠心分離またはCPT(細胞精製チューブ))を使用して調製され得る。
【0031】
末梢血遺伝子発現プロフィールと患者成績との間の関係は、包括的遺伝子発現分析を使用することによって評価され得る。この目的に適切な方法は、限定するものではないが、核酸アレイ(例えば、cDNAまたはオリゴヌクレオチドアレイ)、2次元SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動/質量分析、および他の高処理量ヌクレオチドまたはポリペプチド検出技術を含む。
【0032】
核酸アレイは、一度に多数の遺伝子の発現レベルの定量的検出を可能にする。核酸アレイの例としては、限定するものではないが、Affymetrix(Santa Clara, CA)のGenechip(登録商標)マイクロアレイ、Agilent Technologies(Palo Alto, CA)のcDNAマイクロアレイならびに米国特許第6,288,220号および同第6,391,562号記載のビーズアレイが挙げられる。
【0033】
核酸アレイとハイブリダイズされるべきポリヌクレオチドは、ハイブリダイズしたポリヌクレオチド複合体の検出を可能にするように1つ以上の標識部分で標識され得る。標識部分は、分光学的、光化学的、生化学的、生物電子工学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段によって検出可能な成分を含み得る。例示的な標識部分としては、放射性同位体、化学発光化合物、標識結合タンパク質、重金属原子、分光学的マーカー(例えば、蛍光マーカーおよび色素)、磁性標識、結合酵素、質量分析タグ、スピン標識、電子伝達供与体および受容体などが挙げられる。非標識ポリヌクレオチドもまた用いられ得る。ポリヌクレオチドは、DNA、RNAまたはその改変形態であり得る。
【0034】
ハイブリダイゼーション反応は、絶対的なまたは差次的なハイブリダイゼーション型式で行われ得る。絶対的なハイブリダイゼーション型式において、1つのサンプル(例えば、選択される成績クラスの患者由来のPBMC)由来のポリヌクレオチドは、核酸アレイ上でプローブとハイブリダイズされる。ハイブリダイゼーション複合体の形成の後に検出されるシグナルは、サンプル中のポリヌクレオチドレベルと相関する。差次的なハイブリダイゼーション型式において、2つの生物学的サンプル(例えば、第1の成績クラスの患者由来の一方および第2の成績クラスの患者由来の他方)由来のポリヌクレオチドは、異なる標識部分で標識され得る。これらの異なる標識がされたポリヌクレオチドの混合物は、核酸アレイに添加される。次いで、2つの異なる標識由来の発光が独立して検出可能である条件下で、核酸アレイが精査される。1つの実施態様において、フルオロフォアCy3およびCy5(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway N.J.)は、差次的ハイブリダイゼーション型式用の標識部分として使用される。
【0035】
核酸アレイから集められたシグナルは、市販のソフトウェア(例えば、AffymetrixまたはAgilent Technologiesによって提供されるソフトウェア)を使用して分析され得る。コントロール(例えば、走査感度のための)、プローブ標識およびcDNA/cRNA定量化は、ハイブリダイゼーション実験に含まれ得る。多くの実施態様において、核酸アレイ発現シグナルは、さらなる分析に供される前にスケールまたは正規化される。例えば、1つより多いアレイが類似の試験条件下で使用される場合、各遺伝子についての発現シグナルは、ハイブリダイゼーション強度の変動を考慮するために正規化され得る。個々のポリヌクレオチド複合体ハイブリダイゼーションについてのシグナルもまた、各アレイ上に含まれる内部正規化コントロール由来の強度を使用して正規化され得る。さらに、サンプル間で相対的に一致した発現レベルを有する遺伝子は、他の遺伝子の発現レベルを正規化するために使用され得る。1つの実施態様において、遺伝子の発現レベルは平均が0であり、そして標準偏差が1となるようにサンプル間で正規化される。別の実施態様において、核酸アレイによって検出される発現データは、全てのサンプル間で最小または有意でない変動を示す遺伝子を排除する変動フィルターに供される。
【0036】
核酸アレイから収集される遺伝子発現データは、種々の方法を使用して臨床成績と相関され得る。適切な相関方法としては、限定するものではないが、統計学的方法(例えば、スピアマンの順位相関、コックス比例ハザード回帰モデル、ANOVA/t検定または他の適切な順位検定もしくは生存モデル)、およびクラスに基づく相関計量(例えば、最近傍分析)が挙げられる。
【0037】
1つの実施態様において、特定された固形腫瘍を有する患者はその臨床層別化に基づいて少なくとも2つのクラスに分けられる。末梢血遺伝子発現(例えば、PBMC遺伝子発現プロフィール)と臨床成績との間の相関は、教師ありクラスター(supervised cluster)または学習アルゴリズムによって分析される。例示的な教師ありクラスタリングまたは学習アルゴリズムとしては、限定するものではないが、最近傍分析、サポートベクターマシン、SAM法、人工神経ネットワークおよびSPLASHが挙げられる。教師ありアルゴリズムの下、各クラスの患者の臨床成績は、既知または決定可能のいずれかである。別のクラスの患者に比較して1つのクラスの患者の末梢血細胞(例えば、PBMC)において差次的に発現される遺伝子が同定され得る。多くの場合、このようにして同定される遺伝子は、患者の2つのクラスの間のクラス区別と実質的に相関される。このようにして同定される遺伝子は、目的の患者における固形腫瘍の臨床成績を予測するための代用マーカーとして使用され得る。
【0038】
別の実施態様において、特定された固形腫瘍を有する患者は、その末梢血遺伝子発現プロフィールに基づいて少なくとも2つのクラスに分けられる。この目的に適切な方法としては、教師なしクラスタリング(unsupervised clustering)アルゴリズム(例えば、自己組織化マップ(self-organized map)(SOM)、k−ミーンズ(k-means)、主成分分析および階層的クラスタリング)が挙げられる。1つのクラスにおける患者の実質的な数(例えば、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上)は、第1の臨床成績を有し得、そして別のクラスにおける患者の実質的な数は第2の臨床成績を有し得る。別のクラスの患者に比較して、1つのクラスの患者の末梢血細胞において差次的に発現される遺伝子が同定され得る。これらの遺伝子はまた、固形腫瘍のための予後遺伝子である。
【0039】
1つの例において、特定された固形腫瘍を有する患者は、その臨床層別化または末梢血遺伝子発現プロフィールに基づいて3つ以上のクラスに分けられ得る。マルチクラス相関計量は、これらのクラスにおいて差次的に発現される遺伝子を同定するために用いられ得る。例示的なマルチクラス相関計量としては、限定するものではないが、Whitehead InstituteのMIT Center for Genome Research(Cambridge, MA)によって提供されるGeneCluster 2ソフトウェアによって用いられるものが挙げられる。
【0040】
さらなる実施態様において、最近傍分析(近傍分析としても知られる)が核酸アレイから集められた遺伝子発現データを分析するために使用される。近傍分析用のアルゴリズムは、Golub, et al., SCIENCE, 286: 531−537 (1999)、Slonim, et al., PROCS. OF THE FOURTH ANNUAL INTERNATIONAL CONFERENCE ON COMPUTATIONAL MOLECULAR BIOLOGY, Tokyo, Japan, April 8−11, p263−272 (2000)、および米国特許第6,647,341号(その全てを出典明示で援用する)において記載される。近傍分析の1つの型によれば、各遺伝子の発現プロフィールは発現ベクトルg=(e、e2、、...、e)(ここで、eは第iのサンプルにおける遺伝子「g」の発現レベルに対応する)によって表され得る。クラス区別は理想化された発現パターンc=(c、c2、、...、c)(ここで、第iのサンプルがクラス0またはクラス1から単離されるかどうかに依存して、c=1または−1である)によって表され得る。クラス0は、第1の臨床成績を有する患者を含み得、そしてクラス1は第2の臨床成績を有する患者を含む。クラス区別の他の形態もまた用いられ得る。代表的には、クラス区別は理想化された発現パターンを表し、ここで遺伝子の発現レベルは一方のクラスにおけるサンプルについては均一に高く、そして他方のクラスにおけるサンプルについては均一に低い。
【0041】
遺伝子「g」とクラス区別との間の相関は、シグナル対ノイズスコア(signal-to-noise score)によって測定され得る:
P(g,c) = [μ(g) μ(g)]/[σ(g) + σ(g)]
ここで、μ(g)およびμ(g)はそれぞれクラス0およびクラス1における遺伝子「g」の対数変換した発現レベルの平均を表し、そしてσ(g)およびσ(g)はそれぞれクラス0およびクラス1における遺伝子「g」の対数変換した発現レベルの標準偏差を表す。シグナル対ノイズスコアのより高い絶対値は、遺伝子が一方のクラスにおいて他方のクラスより高く発現されていることを示す。1つの例において、シグナル対ノイズスコアを得るために使用されるサンプルは、富化または精製されたPBMCを含み、そしてそれゆえシグナルスコ対ノイズスコアP(g,c)はクラス区別とPBMCにおける遺伝子「g」の発現レベルとの間の相関を表す。
【0042】
遺伝子「g」とクラス区別との間の相関はまた、当業者によって認められるような他の方法によって(例えば、ピアソン相関係数またはユークリッド距離によって)測定され得る。
【0043】
末梢血遺伝子発現プロフィールとクラス区別との間の相関の有意性は、ランダム置換検定を使用して評価され得る。ランダムパターンに比較してのクラス区別の近傍内における遺伝子の非常に高い密度は、多くの遺伝子がクラス区別と有意に相関される発現パターンを有することを示唆する。遺伝子とクラス区別との間の相関は近傍分析プロットを通じて図表に示され得、ここでy軸はクラス区別の周辺の種々の近傍内における遺伝子数を表し、そしてx軸は近傍の大きさ(すなわちP(g,c))を示す。ランダムに置換されたクラス区別の対応する近傍内の遺伝子数についての異なった有意性レベルを示す曲線もまた、プロットに含まれ得る。
【0044】
多くの実施態様において、本発明において用いられる予後遺伝子は、2つの成績クラスの間のクラス区別と実質的に相関される。例えば、本発明において用いられる予後遺伝子は、近傍分析プロットにおける中央有意性レベルを超え得る。このことは、各予後遺伝子についての相関尺度P(g,c)が、P(g,c)の大きさを有するクラス区別の近傍内の遺伝子数が中央有意性レベルにおいてランダムに置換されたクラス区別の対応する近傍内の遺伝子数より多いというほどものであることを意味する。別の例として、本発明において用いられる予後遺伝子は、10%、5%、2%または1%の有意性レベルを上回り得る。本明細書で使用されるx%有意性レベルは、ランダム近傍のx%がクラス区別周辺の実近傍と同じくらい多くの遺伝子を含むことを意味する。
【0045】
クラス予測因子(class predictor)は、本発明の予後遺伝子を使用して構築され得る。これらのクラス予測因子は、クラスメンバーシップを目的の固形腫瘍患者に帰属させるために有用である。1つの実施態様において、クラス予測因子における予後遺伝子は、置換検定によってクラス区別と有意に相関されることが示されるもの(例えば、1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%または50%の有意性レベルを超えるもの)に限定される。別の実施態様において、クラス予測因子における各予後遺伝子の発現レベルは、患者の他方のクラスにおいてより患者の一方のクラスのPBMCにおいて実質的に高いかまたは実質的に低い。さらに別の実施態様において、クラス予測因子における予後遺伝子は、P(g,c)の最高の絶対値を有する。さらに別の実施態様において、クラス予測因子における各予後遺伝子についてのスチューデントt検定(例えば、両側分布、2サンプル非均等分散(two sample unequal variance))の下でのp値は、0.05、0.01、0.005、0.001、0.0005、0.0001以下、またはそれ以下である。p値は、1つののクラスの患者における予後遺伝子のPBMC発現プロフィールと別のクラスの患者における予後遺伝子のPBMC発現プロフィールとの間の差異の統計学的有意性を示唆する。より小さいp値は、固形腫瘍RCC患者の異なるクラス間で観察される差異についてのより大きな統計学的有意性を示す。
【0046】
SAM法もまた、末梢血遺伝子発現プロフィールを臨床成績クラスと相関させるために使用され得る。マイクロアレイの予測分析(PAM)法は、事前に規定された成績クラスを最良に特徴付け得る遺伝子セットを同定し、新たなサンプルのクラスメンバーシップを予測するために使用され得る。Tibshirani, et al., PROC. NATL. ACAD. SCI. U.S.A., 99:6567−6572 (2002)を参照のこと。
【0047】
多くの実施態様において、本発明のクラス予測因子はリーブワンアウト交差検定(leave-one-out cross validation)、10倍交差検定(10-fold cross validation)または4倍交差検定(4-fold cross validation)の下、少なくとも50%の予測精度を有する。代表的なk倍交差検定(k−fold cross validation)において、データはおよそ等しい大きさのk個のサブユニットに分割される。モデルはk回訓練され、毎回訓練からサブユニットの1つを除外し、省略されたサブユニットを検定サンプルとして使用して予測誤差を算出する。kがサンプルの大きさと等しい場合、それがリーブワンアウト交差検定になる。多くの場合、本発明のクラス予測因子は、リーブワンアウト交差検定、10倍交差検定または4倍交差検定の下、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または99%の精度を有する。
【0048】
他のクラスに基づく相関計量または統計学的方法もまた、その末梢血サンプルにおける発現プロフィールが固形腫瘍患者の臨床成績と相関される予後遺伝子を同定するため使用され得る。これらの方法の多くは、公開されたまたは市販のソフトウェアを使用することによって行われ得る。
【0049】
固形腫瘍予後遺伝子を同定することが可能な他の方法としては、限定するものではないが、RT−PCR、ノーザンブロット、インサイチュハイブリダイゼーションおよび免疫アッセイ(例えば、ELISA、RIA、またはウェスタンブロット)が挙げられる。これらの遺伝子は、別のクラスの患者に比較して1つのクラスの患者の末梢血細胞(例えば、PBMC)において差次的に発現される。多くの場合、1つののクラスの患者におけるこれらの遺伝子の各々の平均末梢血発現レベルは、別のクラスの患者におけるそれと実質的に異なる。例えば、観察される差異についての適切な統計学的有意性検定(例えば、スチューデントt検定)の下でのp値は、0.05、0.01、0.005、0.001、0.0005、0.0001以下、またはそれ以下であり得る。多くの他の場合、このようにして同定される各予後遺伝子は、1つのクラスの患者と別のクラスの患者との間で、少なくとも2、3、4、5、10または20倍の平均PBMC発現レベルの差異を有する。
【0050】
他の非血液疾患についての予後遺伝子は、本発明に従って同様に同定され得、ここでこれらの遺伝子の末梢血発現プロフィールと患者成績のとの間の相関は、統計学的に有意である。それゆえ、これらの予後遺伝子の末梢血発現パターンは、これらの非血液疾患を有する患者の臨床成績を示す。
【0051】
II.HG−U133Aマイクロアレイを使用したRCC予後遺伝子の同定
RCCは腎臓ガンの全ての症例の大部分を含み、先進国において最も一般的な10のガンの1つであり、2%の成人悪性腫瘍、および2%のガン関連死を含む。いくつかの予後因子およびスコア化指標がRCCと診断される患者のために開発されており、いくつかの重要な指標の多変量評価によって代表される。例として、1つの予後スコア化システムは、Motzer, et al., J CLIN ONCOL, 17:2530−2540 (1999)によって提案される5つの予後因子(すなわち、カルノフスキー動作状態、血清乳酸デヒドロゲナーゼ、ヘモグロビン、血清カルシウムおよび以前の腎摘出の有無)を用いる。
【0052】
本発明は、その末梢血発現プロフィールがCCI−779療法における患者成績と相関するRCC予後遺伝子を同定する。細胞増殖抑制性mTOR阻害剤CCI−779を、その抗ガン効果についてRCC患者において評価した。RCC患者由来の単核細胞が患者成績の予測となる転写パターンを有するかどうか決定するために、CCI−779療法以前に収集したPBMCをオリゴヌクレオチドアレイ(HG−U133A, Affymetrix, Santa Clara, CA, USA)上で分析した。
【0053】
PBMCを、CCI−779療法以前に、第2相臨床試験研究に参加する45人の進行型RCC患者(女性18人および男性27人)の末梢血から単離した。臨床研究の薬理ゲノム学部分についての書面によるインフォームドコンセントを全ての個人から受け取り、そしてプロジェクトは参加臨床場所における地方機関審査委員会によって承認された。患者のRCC腫瘍は、臨床場所において、通常(明細胞)ガン(24)、顆粒状(1)、乳頭状(3)、または混合サブタイプ(7)として分類された。10の腫瘍が未知として分類された。RCC患者は、主に白人家系に属し(白人44人、黒人1人)、そして58歳の平均年齢(40〜78歳の範囲)を有した。算入判断基準は、以前に進行型疾患についての治療を受けたか、または以前に進行型疾患についての治療を受けていないが、高用量のIL−2療法を受けることが適切な候補ではない、組織学的に確認された進行型腎ガンを有する患者を含んだ。他の算入判断基準は、以下を有する患者を含んだ:(1)疾患の2次元的に測定可能な証拠;(2)研究加入以前の疾患の進行の証拠;(3)18歳以上の年齢;(4)ANC>1500/μL、血小板>100,000/μL、およびヘモグロビン>8.5g/dL;(5)血清クレアチニン<1.5×正常の上限によって証明される適切な腎機能;(6)ビリルビン<1.5×正常の上限、およびAST<3×正常の上限(または、肝臓腫瘍転移が存在する場合AST<5×正常の上限)によって証明される適切な肝機能;(7)血清コレステロール<350mg/dL、トリグリセリド<300mg/dL;(8)ECOG動作状態0〜1;ならびに(9)少なくとも12週間の平均余命。除外判断基準は、以下を有する患者を含んだ:(1)既知のCNS腫瘍転移の存在;(2)投薬開始の3週間以内の外科手術または放射線療法;(3)投薬開始の4週間以内のRCCのための化学療法または生物学療法;(4)投薬開始の4週間以内の以前の治験薬での処置;(5)HIV陽性として知られるものを含む免疫無防備状態、または副腎皮質ステロイドを含む免疫抑制剤の併用を受けること;(6)能動感染;(7)抗痙攣療法での必要とされる処置;(8)6ヶ月以内の不安定な狭心症/心筋梗塞の存在/生命を危うくする不整脈の進行中の処置;(9)過去3年以内の以前の悪性腫瘍の病歴;(10)マクロライド系抗生物質に対する過敏性;および(11)妊娠、または研究への参加に関連する危険性を実質的に増加させる任意の他の疾病。
【0054】
これらの進行型RCC患者は、CCI−779の3つの用量(25mg、75mgまたは250mg)のうち1つを用いて処置され、これは治験の期間の間週に1度30分の静脈(IV)注入として投与された。CCI−779は、免疫抑制剤ラパマイシンのエステルアナログであり、それでラパマイシンの哺乳動物標的の強力な選択的阻害剤である。ラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)は、翻訳および細胞周期のG1期への進入に関与するタンパク質をコードする5’TOP mRNAの増加された翻訳を生じる複数のシグナル経路(p70s6キナーゼのリン酸化を含む)を活性化させる。mTORおよび細胞周期制御に対するその阻害効果によって、CCI−779は細胞増殖抑制剤および免疫抑制剤として機能する。
【0055】
残存性、再発性または転移性疾患の臨床的段階および大きさを、処置前およびCCI−779療法の開始以後8週間ごとに記録した。腫瘍の大きさをセンチメートル単位で測定し、そして最長の直径およびその垂線の積として報告した。測定可能な疾患を、CTスキャン、X線または触診によって両方の直径が>1.0cmである任意の2次元的に測定可能な病変として規定した。腫瘍反応を全ての測定可能な病変の積の合計によって決定した。臨床反応の帰属についてのカテゴリーを、臨床プロトコル定義(すなわち、進行性疾患、安定疾患、小反応、部分反応および完全反応)によって与えた。モトザー危険性評価(Motzer risk assessment)(良好対中間対不良)下での予後の帰属についてのカテゴリーもまた使用した。45人のRCC患者の内、6人が良好な危険性評価に帰属され、17人の患者が中間の危険性スコアを有し、そして22人の患者が不良予後分類を受けた。カテゴリー分類に加え、全体の生存時間および疾患進行までの時間もまた、臨床エンドポイントとしてモニターした。
【0056】
CCI−779療法の前に、ベースラインサンプルを45人のRCC患者から単離した。45個のベースラインサンプルの内、42個を製造者のガイドラインに従ってHG−U133Aジーンチップにハイブリダイズさせた。GeneChip(登録商標) Expression Analysis − Technical Manual (Part No. 701021 Rev. 3, Affymetrix, Inc. 1999−2002)を参照のこと(その全ての内容を出典明示で援用する)。シグナルをMAS5アルゴリズムによってプローブ強度から算出し、そしてシグナル強度を実施例に記載のスケール頻度正規化法を使用して頻度に変換した。
【0057】
U133Aジーンチップにハイブリダイズさせた全てのPBMCプロフィールを、106日のTTPまたは1年の長さのTTDの臨床層別化に基づいてカテゴリーに分割した。リーブワンアウト交差検定、10倍交差検定および4倍交差検定を含むいくつかの交差検定手順を、クラス評価の精度を評価するために用いた。最近傍アルゴリズムを、漸増する大きさの遺伝子分類因子を生じるために使用し、これを種々の交差検定アプローチによって評価した。3つの交差検定アプローチの各々によってクラス帰属の最高の精度を与えた分類因子を同定した。
【0058】
詳細には、表2または3から選択される遺伝子からなる分類因子を構築し、3つの交差検定法による予測精度について評価した。これらの分類因子の例を表4に示す。分類因子1〜7を、短期(365日未満)対長期(365日超)生存の患者の識別について評価し、そして分類因子8〜21を、短期(106日未満)対長期(106日超)TTPの患者の識別について評価した。
【0059】
両方の臨床層別化について、3つの交差検定アプローチはクラス帰属の類似の精度を与えた。1年の長さの生存に基づく分類についてのU133Aチップにハイブリダイズさせた42個のPBMCサンプルの交差検定分析の結果を図1A〜1Cに示し、3ヶ月のTTPに基づく分類についての結果を図2A〜2Cに示す。Affymetrix HG−U95Aチップにハイブリダイズさせたサンプルの訓練セットに基づく遺伝子分類因子における少しの転写物配列(米国特許出願第10/834,114号の表20および21を参照のこと)もまた、表2および3に存在する(例えば、短期TTPに高度に相関されるプロテインキナーゼCδ、およびより短期の生存に高度に相関されるMD−2タンパク質)。
【0060】
表2.短期(1年未満)対長期(1年超)生存を経験する患者の識別のための遺伝子
【0061】
【表2】

【0062】
表3.短期(106日未満)対長期(106日超)TTPを経験する患者のの識別のための遺伝子
【0063】
【表3−1】

【0064】
【表3−2】

【0065】
【表3−3】

【0066】
表4.分類因子の例
【0067】
【表4−1】

【0068】
【表4−2】

【0069】
表2および3における遺伝子の処置前PBMC発現レベルは、それぞれRCCを有する患者における生存時間または進行までの時間と相関され、それゆえ予測となる。表2および3において使用される場合、患者の一方のクラスにおける遺伝子の平均PBMC発現レベルが患者の他方のクラスにおける遺伝子の平均PBMC発現レベルより高い場合、遺伝子は患者の一方のクラスと「相関される」。例えば、365未満のTTDを有する患者のクラスにおける遺伝子FLJ20420の平均PBMC発現レベルは、365超のTTDを有する患者のクラスにおける遺伝子FLJ20420の平均PBMC発現レベルより高い(表2の遺伝子番号1を参照のこと)。
【0070】
表2および3における各HG−U133A資格因子(qualifier)は、HG−U133Aジーンチップ上のオリゴヌクレオチドプローブセットを表す。HG−U133A資格因子によって同定される遺伝子のRNA転写物は、核酸アレイハイブリダイゼーション条件下で、その資格因子の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブ(PMまたは完全マッチプローブ)に対しハイブリダイズし得る。好ましくは、遺伝子のRNA転写物は、核酸アレイハイブリダイゼーション条件下で、PMプローブのミスマッチプローブ(MM)に対してハイブリダイズしない。ミスマッチプローブは、ミスマッチプローブの中央または中央付近の単一のホモマー置換を除き、対応するPMプローブと同一である。25mer PMプローブについて、MMプローブは13位でホモマー塩基変化を有する。
【0071】
多くの場合、HG−U133A資格因子によって同定される遺伝子のRNA転写物は、核酸アレイハイブリダイゼーション条件下で、資格因子のPMプローブの少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または100%に対してハイブリダイズし得るが、これらのPMプローブの対応するミスマッチプローブに対してはハイブリダイズし得ない。多くの他の場合、これらのPMプローブの各々についての識別スコア(R)(全体のハイブリダイゼーション強度(すなわち、PM+MM)に対する対応するプローブ対(すなわち、PM−MM)のハイブリダイゼーション強度差異の割合によって測定される)は、0.015、0.02、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5以上、またはそれ以上である。1つの例において、遺伝子のRNA転写物は、製造者の説明書に従ってHG−U133Aジーンチップに対してハイブリダイズされる場合、デフォルト設定(すなわち、閾値τは0.015であり、そして有意性レベルαは0.4である)の下で「存在」コールを生じる。GeneChip(登録商標) Expression Analysis Data Analysis Fundamentals (Part No. 701190 Rev. 2, Affymetrix, Inc., 2002)を参照のこと(その全ての内容を出典明示で援用する)。
【0072】
HG−U133Aジーンチップ上の各PMプローブの配列、およびPMプローブがそれに由来する対応する標的配列は、Affymetrixの配列データベースから得られ得る。例えば、www.affymetrix.com/support/technical/byproduct.affx?product=hgu133を参照のこと。HG−U133Aジーンチップ上のPMプローブ配列および対応する標的配列の全てを出典明示で援用する。
【0073】
表2および3に列挙する各遺伝子、ならびに対応するユニジーンID(unigene ID)は、HG−U133Aジーンチップ注釈に従って同定される。ユニジーンは、遺伝子指向クラスター(gene-oriented cluster)の非重複セットから構成される。各ユニジーンクラスターは、特有の遺伝子を表す配列を含むと考えられている。表2および3に列挙する遺伝子、ならびにその対応するユニジーンについての情報はまた、National Center for Biotechnology Information (NCBI), Bethesda, MDのthe Entrez Gene and Unigene databasesから得られ得る。
【0074】
Affymetrixの注釈に加え、HG−U133A資格因子によって表される遺伝子はまた、BLASTによって、ヒトゲノム配列データベースに対して資格因子の標的配列を検索して同定され得る。この目的に適切なヒトゲノム配列データベースとしては、限定するものではないが、NCBIヒトゲノムデータベースが挙げられる。NCBIはBLASTプログラム(例えば、その配列データベースを検索するための「blastn」)を提供している。1つの実施態様において、NCBIヒトゲノムデータベースのBLASTサーチは、資格因子の標的配列の明確なセグメント(例えば、最長の明確なセグメント)を使用することによって実施される。資格因子によって表される遺伝子は、明確なセグメントに対して有意な配列同一性を有するものとして同定される。多くの場合、同定される遺伝子は少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を明確なセグメントに対して有している。
【0075】
本明細書で使用される、表2および3における資格因子によって同定される遺伝子は、そこに明確に記載されるものだけでなく、表に列挙はされていないが、それにもかかわらず表における資格因子のPMプローブに対してハイブリダイズすることが可能なものも含む。これらの遺伝子全ては、RCCまたは他の固形腫瘍の予後のための生物学的マーカーとして使用され得る。
【0076】
他の臨床的に関連する層別化の予後または予測となる遺伝子または分類因子は、HG−U133Aおよび最近傍分析、または別の教師ありもしくは教師なしクラスタリング/学習アルゴリズムを使用することによって同様に同定され得る。同様に、このようにして同定される各分類因子についての予測精度、感度または特異性は、リーブワンアウト交差検定またはk倍交差検定によって評価され得る。1つの例において、k−最近傍アルゴリズム(例えば、Armstrong, et al., Nature Genetics, 30:41−47 (2002)を参照のこと)は、遺伝子分類因子を選択および評価するために用いられる。本明細書で使用される「感度」は、真の陽性コール+偽陰性コールの合計に対する正しい陽性コールの割合をいい、そして「特異性」は、真の陰性コール+偽陽性コールの合計に対する正しい陰性コールの割合をいう。
【0077】
当業者によって認められるように、他の固形腫瘍を有する患者の臨床的層別化の予後または予測となる遺伝子は、本発明に従って同様に同定され得る。これらの遺伝子の末梢血発現レベルは、これらの患者の臨床成績と相関される。
【0078】
III.RCCまたは他の固形腫瘍の予後
本発明の予後遺伝子は、RCCまたは他の固形腫瘍の予後のための代用マーカーとして使用され得る。予後遺伝子はまた、RCCまたは他の固形腫瘍を有する患者のために良好な処置の選択のために使用され得る。
【0079】
任意の固形腫瘍またはその処置を、本発明に従って評価し得る。臨床成績は、限定するものではないが、TTP(例えば、特定の期間未満または超)、TTD(例えば、特定の期間未満または超)、進行性疾患、非進行性疾患、安定疾患、完全反応、部分反応、小反応、あるいはその組み合わせを含む種々の臨床判断基準によって測定され得る。治療的処置に対しての非反応性もまた、測定可能な成績と考えられる。
【0080】
成績予測は、代表的には、目的の固形腫瘍患者(例えば、RCC患者)における1つ以上の予後遺伝子の末梢血発現プロフィールの、少なくとも1つの参照発現プロフィールに対する比較を含む。成績予測において用いられる各予後遺伝子は、異なる臨床成績を有する固形腫瘍患者の末梢血サンプルにおいて差次的に発現される。これらの固形腫瘍患者は、目的の患者と同じ固形腫瘍を有する。
【0081】
1つの実施態様において、成績予測のために用いられる予後遺伝子は、Affymetrix HG−U133Aジーンチップによって測定される、各予後遺伝子の末梢血発現プロフィールが、クラスに基づく相関分析(例えば、最近傍分析またはSAM法)の下で、クラス区別と相関されるように選択される(ここで、クラス区別は異なる臨床成績を有する固形腫瘍患者の末梢血サンプルにおける選択された遺伝子の理想化された発現パターンを表す)。多くの場合、選択された予後遺伝子はランダム置換検定の下で、50%、25%、10%、5%または1%を超える有意性レベルでクラス区別と相関される。
【0082】
予後遺伝子はまた、固形腫瘍患者の1つのクラスの末梢血サンプルにおける各予後遺伝子の平均発現プロフィール(Affymetrix HG−U133Aジーンチップによって測定される)が、固形腫瘍患者の別のクラスにおけるものと統計学的に異なるように選択され得る。患者の両方のクラスは、目的の患者と同じ固形腫瘍(例えば、RCC)を有する。例えば、観察された差異についてのスチューデントt検定の下でのp値は、0.05、0.01、0.005、0.001以下、またはそれ以下であり得る。さらに、予後遺伝子は、患者の1つのクラスにおける各予後遺伝子の平均末梢血発現レベルが、患者の別のクラスにおけるものと少なくとも2、3、4、5、10または20倍異なるように選択され得る。
【0083】
目的の患者の発現プロフィールは、1つ以上の参照発現プロフィールに対して比較され得る。参照発現プロフィールは、目的の患者の発現プロフィールと同時に決定され得る。参照発現プロフィールはまた、電子的なまたは他の型の貯蔵媒体において事前に決定されるか、または事前に記録され得る。
【0084】
参照発現プロフィールは、平均発現プロフィール、または特定の患者における末梢血遺伝子発現パターンを表す個別のプロフィールを含み得る。1つの実施態様において、参照発現プロフィールは、目的の患者と同じ固形腫瘍を有し、そしてその臨床成績が既知または決定可能な参照患者の末梢血サンプルにおける予後遺伝子の平均発現プロフィールを含む。任意の平均化方法(例えば、算術平均、調和平均、絶対値の平均、対数変換値の平均、または重み付き平均)が使用され得る。1つの例において、参照患者の全てが同じ臨床成績を有する。別の例において、参照患者は少なくとも2つのクラスに分けられ得、患者の各クラスはそれぞれ異なった臨床成績を有する。患者の各クラスにおける平均末梢血発現プロフィールは、別々の参照発現プロフィールを構成し、そして目的の患者の発現プロフィールはこれらの参照発現プロフィールの各々に対して比較される。
【0085】
別の実施態様において、参照発現プロフィールは複数の発現プロフィールを含み、その各々は、目的の患者と同じ固形腫瘍を有し、そしてその臨床成績が既知または決定可能な特定の患者における予後遺伝子の末梢血発現パターンを表す。他の型の参照発現プロフィールもまた、本発明において使用され得る。
【0086】
目的の患者の発現プロフィールおよび参照発現プロフィールは、任意の形態で構築され得る。1つの実施態様において、発現プロフィールは成績予測において使用される各予後遺伝子の発現レベルを含む。発現レベルは絶対的レベル、正規化レベル、または相対的レベルであり得る。適切な正規化手順は、限定するものではないが、核酸アレイ遺伝子発現分析において使用されるもの、またはHill, et al., GENOME BIOL, 2:research0055.1−0055.13 (2001)において記載のものを含む。1つの例において、発現レベルは、平均が0でありそして標準偏差が1であるように正規化される。別の例において、発現レベルは、当業者に認められているように、内部または外部コントロールに基づいて正規化される。さらに別の例において、発現レベルは血液サンプルにおける既知の量を有する1つ以上のコントロール転写物に対して正規化される。多くの場合、目的の患者の発現プロフィールおよび参照発現プロフィールは、同じかまたは匹敵する方法を使用して構築される。
【0087】
別の実施態様において、比較される各発現プロフィールは、異なる予後遺伝子の発現レベル間での1つ以上の割合を含む。発現プロフィールはまた、遺伝子発現パターンを表すことが可能である他の尺度を含み得る。
【0088】
本発明において使用される末梢血サンプルは、全血サンプルまたは富化されたPBMCを含むサンプルのいずれかであり得る。1つの例において、参照発現プロフィールを調製するために使用される末梢血サンプルは富化または精製されたPBMCを含み、そして目的の患者の発現プロフィールを調製するために使用される末梢血サンプルは全血サンプルである。別の例において、成績予測において用いられる全ての末梢血サンプルは、富化または精製されたPBMCを含む。多くの場合、末梢血サンプルは目的の患者および参照患者から、同じかまたは匹敵する手順を使用して調製される。
【0089】
統計学的に有意な相関が、患者成績とこれらの血液サンプルにおける遺伝子発現プロフィールとの間に存在するのであれば、他の型の血液サンプルもまた、本発明において用いられ得る。
【0090】
末梢血サンプルにおける遺伝子発現パターンと臨床成績との間の相関が統計学的に有意であるのであれば、本発明において使用される末梢血サンプルは、任意の疾患または処置段階にあるそれぞれの患者から単離され得る。多くの実施態様において、臨床成績は治療的処置に対する患者の反応によって測定され、そして成績予測において使用される血液サンプルの全てが、治療的処置の前に単離される。これらの血液サンプル由来の発現プロフィールは、それゆえ治療的処置についてのベースライン発現プロフィールである。
【0091】
発現プロフィールの構築は、代表的には、成績予測において使用される各予後遺伝子の発現レベルの検出を含む。多くの方法がこの目的のために利用可能である。例えば、遺伝子の発現レベルは、遺伝子のRNA転写物のレベルを測定することによって決定され得る。適切な方法は、限定するものではないが、定量的RT−PCR、ノーザンブロット、インサイチュハイブリダイゼーション、スロットブロッティング、ヌクレアーゼ保護アッセイおよび核酸アレイ(ビーズアレイを含む)を含む。遺伝子の発現レベルはまた、遺伝子によってコードされるポリペプチドのレベルを測定することによって決定され得る。適切な方法は、限定するものではないが、免疫アッセイ(例えば、ELISA、RIA、FACSまたはウェスタンブロット)、2次元ゲル電気泳動、質量分析、またはタンパク質アッセイを含む。
【0092】
1つの態様において、予後遺伝子の発現レベルは末梢血サンプルにおける遺伝子のRNA転写物レベルを測定することによって決定される。RNAは、種々の方法を使用して末梢血サンプルから単離され得る。例示的な方法は、グアニジンイソチオシアネート/酸性フェノール法、TRIZOL(登録商標)Reagent(Invitrogen)、またはMicro−FastTrack(登録商標)2.0もしくはFastTrack(登録商標)2.0 mRNA Isolation Kit(Invitrogen)を含む。単離されるRNAは、全RNAまたはmRNAのいずれかであり得る。単離されたRNAは続く検出または定量の前にcDNAまたはcRNAへ増幅され得る。増幅は特異的または非特異的のいずれかであり得る。適切な増幅法は、限定するものではないが、逆転写酵素PCR(RT−PCR)、等温増幅、リガーゼ連鎖反応およびQβレプリカーゼを含む。
【0093】
1つの実施態様において、増幅プロトコルは逆転写酵素を用いる。単離されたmRNAは、逆転写酵素、ならびにオリゴd(T)およびファージT7プロモーターをコードする配列からなるプライマーを使用して、cDNAへ逆転写され得る。このようにして生成されたcDNAは1本鎖である。cDNAの第2の鎖は、DNA/RNAハイブリッドを分解するためにRNaseと組み合わせてDNAポリメラーゼを使用して合成される。2本鎖cDNAの合成の後で、T7 RNAポリメラーゼが添加され、そして次いでcRNAが2本鎖cDNAの第2の鎖から転写される。増幅されたcDNAまたはcRNAは、標識プローブに対するハイブリダイゼーションによって検出または定量され得る。cDNAまたはcRNAはまた増幅プロセスの間に標識され、次いで検出または定量され得る。
【0094】
別の実施態様において、定量的RT−PCR(例えば、TaqMan、ABI)が、目的の予後遺伝子のRNA転写物レベルを検出または比較するために使用される。定量的RT−PCRは、RNAのcDNAへの逆転写(RT)およびそれに続く相対的定量的PCR(RT−PCR)を含む。
【0095】
PCRにおいて、増幅された標的DNAの分子数は、いくつかの試薬が制限的になるまで、反応のサイクル毎に2に近づく係数で増加する。その後、サイクル間で増幅された標的の増加が存在しなくなるまで、増幅の速度は漸増的に減少される。サイクル数がX軸上にあり、そして増幅された標的DNAの濃度の対数がY軸上にあるグラフをプロットした場合、特徴的な形状の曲線が、プロットされた点を繋げることによって形成され得る。第1のサイクルで開始して、線の勾配は正かつ一定である。これは曲線の直線部分であるといわれる。いずれかの試薬が制限的になった後に、線の勾配は減少し始め、最終的に0になる。この時点で、増幅された標的DNAの濃度はいずれかの固定された値に漸近になる。これは曲線のプラトー部分であるといわれる。
【0096】
PCRの直線部分における標的DNAの濃度は、PCRが開始される前の標的の開始濃度に比例する。同じサイクル数を完了し、そしてその直線の範囲内にあるPCR反応において、標的DNAのPCR産物の濃度を決定することによって、もとのDNA混合物における特異的標的配列の相対濃度を決定することが可能である。DNA混合物が異なる組織または細胞から単離されたRNAから合成されたcDNAである場合、標的配列が由来する特異的mRNAの相対的な量は、それぞれの組織または細胞について決定され得る。PCR産物の濃度と相対的なmRNA量との間のこの直接的な比例性は、PCR反応の直線範囲部分において真実である。
【0097】
曲線のプラトー部分における標的DNAの最終的な濃度は、反応混合物における試薬の利用可能性によって決定され、標的DNAのもとの濃度からは独立している。それゆえ、1つの実施態様において、PCR反応がその曲線の直線部分内にあるときに、増幅されたPCR産物のサンプリングおよび定量が実施される。さらに、増幅可能なcDNAの相対的な濃度は、いずれかの独立した標準(内的に存在するRNA種または外的に導入されたRNA種のいずれかに基づき得る)に対して正規化され得る。特定のmRNA種の量はまた、サンプルにおける全てのmRNA種の平均量に対して相対的に決定され得る。
【0098】
1つの実施態様において、PCR増幅は標的とおよそ同量の内部PCR標準を利用する。PCR増幅の産物がその直線期の間にサンプリングされた場合、このストラテジーは有効である。反応がプラトー期に接近しているときに産物がサンプリングされると、より少ない量の産物が相対的に過剰に表され得る。多くの異なるRNAサンプルについてなされた相対量の比較(例えば、差次的な発現についてRNAサンプルを検討する場合のような)は、RNAの相対量における差異が、それが実際に存在するよりも少なく見せるように歪まされ得る。これは、内部標準が標的よりずっと多い場合に改善され得る。内部標準が標的より多い場合に、直接的な直線比較がRNAサンプル間でなされ得る。
【0099】
臨床サンプルに固有の問題は、それらが変動する量または質のものであることである。この問題は、RT−PCRが、内部標準が標的cDNAフラグメントより大きい増幅可能なcDNAフラグメントであり、そして内部標準をコードするmRNAの量が、標的をコードするmRNAよりおよそ5〜100倍高い内部標準を用いる相対的定量的RT−PCRとして実施される場合に克服され得る。このアッセイは、それぞれのmRNA種の相対量を測定し、絶対量を測定しない。
【0100】
別の実施態様において、相対的定量的RT−PCRは外部標準プロトコルを使用する。このプロトコルの下で、PCR産物はその増幅曲線の直線部分内でサンプリングされる。サンプリングに至適であるPCRサイクル数は、各標的cDNAフラグメントについて経験的に決定され得る。さらに、種々のサンプルから単離される各RNA集団の逆転写酵素産物は、増幅可能なcDNAの等価の濃度について正規化され得る。増幅曲線の直線範囲の経験的な決定、およびcDNA調製物の正規化は面倒で時間のかかるプロセスであるが、特定の場合に、得られるRT−PCRアッセイは内部標準を用いる相対的定量的RT−PCR由来のものより優れ得る。
【0101】
さらに別の実施態様において、核酸アレイ(ビーズアレイを含む)が、目的の予後遺伝子の発現プロフィールを検出または比較するために使用される。核酸アレイは、市販のオリゴヌクレオチドまたはcDNAアレイであり得る。それらはまた、本発明の予後遺伝子用の濃縮されたプローブを含むカスタムアレイであり得る。多くの例において、本発明のカスタムアレイ上の全プローブの少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、またはそれ以上が、RCCまたは他の固形腫瘍予後遺伝子用のプローブである。これらのプローブは、ストリンジェントなまたは核酸アレイハイブリダイゼーション条件下で、対応する予後遺伝子のRNA転写物またはその相補物とハイブリダイズし得る。
【0102】
本明細書で使用される「ストリンジェントな条件」は、例えば、少なくとも表5において示される条件G〜Lと同程度にストリンジェントである。「高度にストリンジェントな条件」は、少なくとも表5において示される条件A〜Fと同程度にストリンジェントである。ハイブリダイゼーションはハイブリダイゼーション条件(ハイブリダイゼーション温度および緩衝液)下で約4時間実施され、対応する洗浄条件(洗浄温度および緩衝液)下で20分間を2回の洗浄がそれに続く。
【0103】
表5.ストリンジェンシー条件
【0104】
【表5】

【0105】
1:ハイブリッド長は、ハイブリダイズするポリヌクレオチドのハイブリダイズされる領域について予測される長さである。ポリヌクレオチドが未知配列の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズする場合、ハイブリッド長はハイブリダイズするポリヌクレオチドの長さであると仮定される。既知配列のポリヌクレオチドがハイブリダイズされる場合、ハイブリッド長は、ポリヌクレオチドの配列を整列させ、そして至適配列相補性の領域を同定することによって決定され得る。
H:SSPE(1×SSPEは0.15M NaCl、10mM NaHPOおよび1.25mM EDTA、pH7.4である)は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄緩衝液においてSSC(1×SSCは0.15M NaClおよび15mMクエン酸ナトリウムである)の代わりに用いられ得る。
TB*〜TR*:長さが50塩基対未満であると予測されるハイブリッドについてのハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの融解温度(Tm)より5〜10℃低くあるべきであり、ここでTmは以下の方程式に従って決定される。長さが18塩基対未満のハイブリッドについて、Tm(℃)=2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)。長さが18〜49塩基対の間のハイブリッドについて、Tm(℃)=81.5+16.6(log10[Na])+0.41(%G+C)−(600/N)、ここでNはハイブリッド中の塩基数であり、そして[Na]はハイブリダイゼーション緩衝液におけるナトリウムイオンのモル濃度である(1×SSCについての[Na]=0.165M)。
【0106】
1つの例において、本発明の核酸アレイは少なくとも2個、5個、10個、またはそれ以上の異なったプローブを含む。これらのプローブの各々は、ストリンジェントなまたは核酸アレイハイブリダイゼーション条件下で本発明のそれぞれ異なった予後遺伝子にハイブリダイズすることが可能である。同じ予後遺伝子用の複数のプローブが、同じ核酸アレイ上で使用され得る。アレイ上のプローブ密度は、任意の範囲内であり得る。
【0107】
本発明の予後遺伝子用のプローブは、DNA、RNA、PNA、またはその改変形態であり得る。各プローブにおけるヌクレオチド残基は、天然の残基(例えば、デオキシアデニル酸、デオキシシチジル酸、デオキシグアニル酸、デオキシチミジル酸、アデニル酸、シチジル酸、グアニル酸およびウリジル酸)、または所望の塩基対関係を形成することが可能な合成的に生成されたアナログのいずれかであり得る。これらのアナログの例は、限定するものではないが、アザおよびデアザピリミジンアナログ、アザおよびデアザプリンアナログ、ならびに他の複素環塩基アナログ(ここで、プリンおよびピリミジン環の1つ以上の炭素および窒素原子がヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄、セレンおよびリン)によって置換される)を含む。同様に、プローブのポリペプチド骨格は、天然(例えば、5’から3’への結合)、または改変のいずれかであり得る。例えば、ヌクレオチド単位は、結合がハイブリダイゼーションを妨げない限り、非代表的結合(例えば、5’から2’への結合)を介して結合され得る。別の例では、ペプチド核酸(構成塩基がホスホジエステル結合ではなくペプチド結合によって結合されている)が使用され得る。
【0108】
予後遺伝子用のプローブは、核酸アレイ上の別々の領域に安定的に付着され得る。「安定的な付着」によって、プローブが、ハイブリダイゼーションおよびシグナル検出の間に、付着された別々の領域に関してその位置を維持することが意味される。核酸アレイ上の各別々の領域の位置は、既知または決定可能のいずれかであり得る。当該分野において公知の全ての方法は、本発明の核酸アレイを作製するために使用され得る。
【0109】
別の実施態様において、ヌクレアーゼ保護アッセイが、末梢血サンプルにおけるRNA転写物レベルを定量するために使用される。ヌクレアーゼ保護アッセイの多くの異なった型が存在する。これらのヌクレアーゼ保護アッセイの共通の特徴は、それらが定量されるべきRNAとのアンチセンス核酸のハイブリダイゼーションを含むことである。生じるハイブリッド2本鎖分子は、次いで2本鎖分子より1本鎖核酸を効率的に消化するヌクレアーゼを用いて消化される。消化後に残存するアンチセンス核酸の量は、定量されるべき標的RNA種の量の尺度である。適切なヌクレアーゼ保護アッセイの例としては、Ambion, Inc. (Austin, Texas)によって提供されるRNase保護アッセイが挙げられる。
【0110】
本発明の予後遺伝子用のハイブリダイゼーションプローブまたは増幅プライマーは、当該分野において公知の任意の方法を使用することによって調製され得る。そのゲノム上の位置が決定されていないか、あるいはその同一性がもっぱらESTまたはmRNAデータに基づく予後遺伝子について、これらの遺伝子用のプローブ/プライマーは、対応する資格因子の標的配列または対応するESTもしくはmRNA配列に由来し得る。
【0111】
1つの実施態様において、予後遺伝子用のプローブ/プライマーは、他の予後遺伝子の配列と有意に相違する。これは、ヒトゲノム配列データベース(例えば、the NCBIのthe Entrez database)に対して潜在的なプローブ/プライマー配列をチェックすることによって達成され得る。この目的に適切な1つのアルゴリズムは、BLASTアルゴリズムである。このアルゴリズムは、問い合わせ配列(query sequence)(データベース配列中の同じ長さのワード(word)と整列された場合に、いずれかの正の値の閾値スコアTとマッチするかまたはそれを満たす)において長さWの短いワードを同定することによって、高スコア配列対(HSP)をまず同定することを含む。Tは、近傍ワードスコア閾値という。最初の近傍ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見出すための検索を開始するための種として作用する。次いで、ワードヒットは各配列に沿って両方向に伸張されて、累積的アラインメントスコアを増加させる。累積的スコアは、ヌクレオチド配列について、パラメーターM(一対のマッチする残基についての報酬スコア(reward score):常に>0)およびN(ミスマッチの残基についてのペナルティースコア;常に<0)を使用して計算される。BLASTアルゴリズムパラメーターW、TおよびXは、アルゴリズムの感度および速度を決定する。これらのパラメーターは、当業者によって認められるように、異なる目的のために調整され得る。
【0112】
別の態様において、本発明の予後遺伝子の発現レベルは、予後遺伝子よってコードされるポリペプチドのレベルを測定することによって決定される。この目的に適切な方法は、限定するものではないが、免疫アッセイ(例えば、ELISA、RIA、FACS、ドットブロット、ウェスタンブロット、免疫組織化学的検査および抗体に基づく放射性イメージング)を含む。さらに、高処理量タンパク質配列決定、2次元SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、質量分析またはタンパク質アッセイが使用され得る。
【0113】
1つの実施態様において、ELISAが標的タンパク質のレベルを検出するために使用される。例示的なELISAにおいて、標的タンパク質に結合することが可能な抗体は、タンパク質親和性を示す選択された表面(例えば、ポリスチレンまたはポリ塩化ビニルマイクロタイタープレートのウェル)上に固定化される。次いで、試験されるべきサンプルがウェルに添加される。結合および非特異的に結合された免疫複合体を除去するための洗浄の後に、結合された抗原が検出され得る。検出は、標的タンパク質に特異的であり、そして検出可能な標識に結合された第2の抗体の添加によって達成され得る。検出はまた、第2の抗体の添加、続いて第2の抗体に対する結合親和性を有する第3の抗体の添加によって達成され得、第3の抗体は検出可能な標識に結合されている。マイクロタイタープレートに添加される前に、サンプル中の細胞は、潜在的に妨害する物質から標的タンパク質を分離するために、溶解または抽出され得る。
【0114】
別の例示的なELISAにおいて、標的タンパク質を含むと考えられているサンプルは、ウェル表面上に固定化され、そして次いで抗体と接触させられる。結合および非特異的に結合された免疫複合体を除去するための洗浄の後に、結合された抗原は検出される。最初の抗体が検出可能な標識に結合されている場合、免疫複合体は直接検出され得る。免疫複合体はまた、第1の抗体に対する結合親和性を有する第2の抗体を使用して検出され得、第2の抗体は検出可能な標識に結合されている。
【0115】
別の例示的なELISAは、検出における抗体競合の使用を含む。このELISAにおいて、標的タンパク質はウェル表面上に固定化される。標識された抗体がウェルに添加され、標的タンパク質に結合するようにされ、そしてその標識によって検出される。次いで、未知のサンプルにおける標的タンパク質の量は、コートされたウェルとのインキュベーションの前または間に、標識された抗体とともにサンプルを混合することによって決定される。未知のサンプルにおける標的タンパク質の存在は、ウェルへの結合に利用可能な抗体の量を減少させ、従って最終的なシグナルを減少させる。
【0116】
異なるELISA型式は、特定の特性を共通に有し得る(例えば、コーティング、インキュベートまたは結合、非特異的に結合された種を除去するための洗浄、および結合された免疫複合体の検出)。例えば、プレートを抗原または抗体でコートする時に、プレートのウェルは抗原または抗体の溶液とともに、一晩または特定の時間の間インキュベートされ得る。次いで、プレートのウェルは不完全に吸着された材料を除去するために洗浄される。次いで、ウェルのいずれもの残存する利用可能な表面は、試験サンプルに関して抗原的に中立である非特異的タンパク質で「コート」される。これらの非特異的タンパク質の例としては、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼインおよび粉乳の溶液が挙げられる。コーティングは、固定化表面上の非特異的吸着部位のブロッキングを可能にし、従って表面への抗血清の非特異的な結合によって引き起こされるバックグラウンドを減少させる。
【0117】
ELISAにおいて、2次または3次検出手段が使用され得る。タンパク質または抗体のウェルへの結合、バックグラウンドを減少させるための非反応性材料でのコーティング、および非結合材料を除去するための洗浄の後に、固定化表面は、免疫複合体(抗原/抗体)形成を可能にするために有効な条件下で、試験されるべきコントロール、臨床または生物学的サンプルと接触させられる。これらの条件は、例えば、抗原および抗体を溶液(例えば、BSA、ウシγグロブリン(BGG)およびリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)/Tween)で希釈すること、ならびに抗体および抗原を室温で約1〜4時間、または4℃で一晩インキュベートすることを含み得る。免疫複合体の検出は、標識された2次結合リガンドまたは抗体、あるいは標識された3次抗体または第3の結合リガンドと組み合わせた2次結合リガンドまたは抗体を使用することによって容易にされる。
【0118】
ELISAにおける全てのインキュベーション工程の後、接触させられた表面は非複合体化材料を除去するように洗浄され得る。例えば、表面は溶液(例えば、PBS/Tweenまたはホウ酸緩衝液)を用いて洗浄され得る。試験サンプルと本来的に結合された材料との間の特異的な免疫複合体の形成、およびそれに続く洗浄の後、免疫複合体の量の発生が決定され得る。
【0119】
検出手段を提供するために、第2または第3の抗体は検出を可能にする結合した標識を有し得る。1つの実施態様において、標識は、適切な色素生産性基質とともにインキュベートする際に発色を生じる酵素である。従って、例えば、第1または第2の免疫複合体を、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはヒドロゲンペルオキシダーゼ結合抗体とともに、さらなる免疫複合体形成の発展に好都合な期間および条件下で(例えば、2時間室温でPBS含有溶液(例えば、PBS/Tween)中でのインキュベーション)、接触およびインキュベートさせ得る。
【0120】
標識された抗体とのインキュベーション、および続く非結合材料を除去するための洗浄の後に、標識の量は定量され得る(例えば、色素生産性基質(例えば、ペルオキシダーゼが酵素標識である場合、尿素およびブロモクレゾールパープル、または2,2’−アジド−ジ−(3−エチル)−ベンズチアゾリン−6−スルホン酸(ABTS)およびH)とのインキュベーションによって)。定量は、発色の程度を測定することによって(例えば、分光光度計を使用して)達成され得る。
【0121】
ポリペプチドレベルを検出するために適切な別の方法は、RIA(放射免疫アッセイ)である。例示的なRIAは、放射標識されたポリペプチドと標識されていないポリペプチドとの間の限定された量の抗体とへの結合についての競合に基づく。適切な放射標識は、限定するものではないが、I125を含む。1つの実施態様において、固定された濃度のI125標識ポリペプチドが、ポリペプチドに特異的な抗体の段階希釈物とともにインキュベートされる。標識されていないポリペプチドが系に添加されると、抗体に結合するI125ポリペプチドの量は減少される。それゆえ、抗体に結合されたI125ポリペプチドの量を標識されていないポリペプチドの濃度の関数として表すように標準曲線が構築され得る。この標準曲線から、未知のサンプルにおけるポリペプチドの濃度が決定され得る。RIAを実施するためのプロトコルは当該分野において周知である。
【0122】
本発明に適切な抗体は、限定するものではないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、Fabフラグメント、またはFab発現ライブラリーによって産生されたフラグメントを含む。中和抗体(すなわち、2量体形成を阻害するもの)もまた使用され得る。これらの抗体を調製するための方法は当該分野において周知である。1つの実施態様において、本発明の抗体は、少なくとも10−1、10−1、10−110−1、またはそれ以上の結合親和性を有して、対応する予後遺伝子産物または他の所望の抗原に結合し得る。
【0123】
本発明の抗体は、1つ以上の検出可能な部分で標識されて、抗体−抗原複合体の検出を可能にし得る。検出可能な部分は、分光学的、酵素学的、光化学的、生化学的、生物電子工学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段によって検出可能な成分を含み得る。検出可能な部分は、限定するものではないが、放射性同位体、化学発光化合物、標識結合タンパク質、重金属原子、分光学的マーカー(例えば、蛍光マーカーおよび色素)、磁性標識、結合酵素、質量分析タグ、スピン標識、ならびに電子伝達供与体および受容体などを含む。
【0124】
本発明の抗体は、予後遺伝子の発現プロフィールの検出のためのタンパク質アレイを構築するためにプローブとして使用され得る。タンパク質アレイまたはバイオチップを作製するための方法は当該分野において周知である。多くの実施態様において、本発明のタンパク質アレイ上のプローブの実質的な部分は、予後遺伝子産物に特異的な抗体である。例えば、タンパク質アレイ上の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上のプローブが、予後遺伝子産物に特異的な抗体であり得る。
【0125】
さらに別の態様において、予後遺伝子の発現レベルは、これらの遺伝子の生物学的機能または活性を測定することによって決定される。遺伝子の生物学的機能または活性が既知の場合、適切なインビトロまたはインビボアッセイが、機能または活性を評価するために開発され得る。これらのアッセイは、予後遺伝子の発現のレベルを評価するために続いて使用され得る。
【0126】
各予後遺伝子の発現レベルが決定された後に、多くのアプローチが発現プロフィールを比較するために用いられ得る。目的の患者の発現プロフィールの参照発現プロフィールに対する比較は、手動でまたは電子的に行われ得る。1つの例において、比較は1つの発現プロフィールにおける各コンポーネントを参照発現プロフィールにおける対応するコンポーネントに対して比較することによって実施される。コンポーネントは、予後遺伝子の発現レベル、2つの予後遺伝子の発現レベル間の割合、または遺伝子発現パターンを表すことが可能な別の尺度であり得る。遺伝子の発現レベルは、絶対的な、正規化された、または相対的な値を有し得る。2つの対応するコンポーネント間の差異は、フォールドチェンジ(fold change)、絶対的差異、または他の適切な手段によって評価され得る。
【0127】
目的の患者の発現プロフィールの参照発現プロフィールに対する比較はまた、パターン認識または比較プログラム(例えば、Armstrong, et al., NATURE GENETICS, 30:41−47 (2002)に記載のk−最近傍アルゴリズム、または下記の重み付き投票アルゴリズム)を使用して行われ得る。さらに、遺伝子発現の連続分析(serial analysis of gene expression)(SAGE)技術、GEMTOOLS遺伝子発現分析プログラム(Incyte Pharmaceuticals)、GeneCalling and Quantitative Expression Analysis技術(Curagen)、ならびに他の適切な方法、プログラムまたはシステムが、発現プロフィールを比較するために使用され得る。
【0128】
複数の予後遺伝子が、発現プロフィールの比較において使用され得る。例えば、2、4、6、8、10、12、14、またはそれ以上の予後遺伝子が使用され得る。さらに、比較において使用される予後遺伝子は、比較的小さなp値(例えば、両側p値)を有するように選択され得る。多くの例において、p値は、患者の異なるクラスにおける遺伝子発現レベル間の差異の統計学的有意性を示す。多くの他の例において、p値は、遺伝子発現パターンと臨床成績との間の相関の統計学的有意性を示唆する。1つの実施態様において、比較において使用される予後遺伝子は、0.05、0.01、0.001、0.0005、0.0001以下、またはそれ以下のp値を有する。0.05超のp値を有する予後遺伝子もまた使用され得る。これらの遺伝子は、例えば、比較的少数の血液サンプルを使用することによって同定され得る。
【0129】
目的の患者の発現プロフィールと参照発現プロフィールとの間の類似性または差異は、目的の患者のクラスメンバーシップを示す。類似性または差異は、任意の適切な手段によって決定され得る。比較は、定性的、定量的またはその両方であり得る。
【0130】
1つの例において、参照プロフィールにおけるコンポーネントは平均値であり、そして目的の患者の発現プロフィールにおける対応するコンポーネントは、平均値の標準偏差内にある。このような場合、目的の患者の発現プロフィールは、その特定のコンポーネントに関して参照プロフィールと類似すると考えられ得る。他の判断基準(例えば、標準偏差の倍数もしくは分数または特定の程度の割合の増加もしくは減少)は、類似性を測定するために使用され得る。
【0131】
別の例において、少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、70%、80%、90%、またはそれ以上)の目的の患者の発現プロフィールにおけるコンポーネントは、参照発現プロフィールにおける対応するコンポーネントと類似すると考えられる。これらの状況で、目的の患者の発現プロフィールは、参照プロフィールと類似すると考えられ得る。発現プロフィールにおける異なるコンポーネントは、比較について異なる重みを有し得る。いくつかの場合に、より低い割合閾値(例えば、全コンポーネントの50%未満)が、類似性を決定するために使用される。
【0132】
予後遺伝子および類似性判断基準は、成績予測の精度(正確なコールおよび不正確なコールの合計に対する正確なコールの割合)が比較的高くなるように選択され得る。例えば、予測の精度は、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上であり得る。予測が統計学的に有意であれば、50%未満の予測精度を有する予後遺伝子もまた使用され得る。
【0133】
成績予測の有効性はまた、感度および特異性によって評価され得る。予後遺伝子および比較判断基準は、成績予測の感度および特異性の両方が比較的高くなるように選択され得る。例えば、用いられる予後遺伝子または分類因子の感度および特異性は、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上であり得る。予測が統計学的に有意であれば、50%未満の感度または特異性を有する予後遺伝子または分類因子もまた使用され得る。
【0134】
さらに、末梢血発現プロフィールに基づく成績予測は、成績予測の有効性または精度を改善するために他の臨床証拠または予後方法と組み合わせられ得る。
【0135】
多くの実施態様において、目的の患者の発現プロフィールは少なくとも2つの参照発現プロフィールに対して比較される。各参照発現プロフィールは、平均発現プロフィール、あるいは各々が特定の固形腫瘍(例えば、RCC)患者または疾患なしのヒトにおける末梢血遺伝子発現パターンを表す個別の発現プロフィールのセットを含み得る。1つの発現プロフィールを2つ以上の参照発現プロフィールに対して比較するために適切な方法は、限定するものではないが、重み付き投票アルゴリズムまたはk−最近傍アルゴリズムを含む。これらのアルゴリズムを行うことが可能なソフトウェアは、限定するものではないが、GeneCluster2ソフトウェアを含む。GeneCluster2ソフトウェアは、Whitehead InstituteのMIT Center for Genome Researchから入手可能である(例えば、www−genome.wi.mit.edu/cancer/software/genecluster2/gc2.html)。
【0136】
重み付き投票アルゴリズムおよびk−最近傍アルゴリズムの両方は、目的の患者を成績クラスに有効に帰属させ得る遺伝子分類因子を用いる。「有効に」によって、クラス帰属が統計学的に有意であることが意味される。1つの例において、クラス帰属の有効性はリーブワンアウト交差検定またはk倍交差検定によって評価される。これらの交差検定法の下での予測精度は、例えば、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上であり得る。これらの交差検定法の下での予測感度または特異性はまた、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上であり得る。低い帰属感度/特異性、または低い交差検定精度(例えば、50%未満)を有する予後遺伝子またはクラス予測因子もまた、本発明において使用され得る。
【0137】
重み付き投票アルゴリズムの1つの型の下で、クラス予測因子における各遺伝子は、重み付き投票を2つのクラス(クラス0およびクラス1)の一方に行う。遺伝子「g」の投票はv=a(x−b)として規定され得、ここで、aはP(g,c)と等しく、そして遺伝子「g」の発現レベルと2つのクラスの間のクラス区別との間の相関を反映し、bはb=[x0(g)+x1(g)]/2として計算され、そしてクラス0およびクラス1における遺伝子「g」の発現レベルの平均対数の平均を表し、xは目的のサンプルにおける遺伝子「g」の発現レベルの正規化対数である。正のvはクラス0のための投票を示し、そして負のvはクラス1のための投票を示す。V0は全ての正の投票の合計を示し、そしてV1は全ての負の投票の合計の絶対値を示す。予測強度PSはPS=(V0−V1)/(V0+V1)として規定される。従って、予測強度は−1と1との間で変動し、そして一方のクラス(例えば、正のPS)または他方のクラス(例えば、負のPS)についての支持を示し得る。「0」付近の予測強度は狭マージンオブビクトリー(narrow margin of victory)を示唆し、そして「1」または「−1」に近い予測強度は広マージンオブビクトリー(wide margin of victory)を示す。Slonim, et al., PROCS. OF THE FOURTH ANNUAL INTERNATIONAL CONFERENCE ON COMPUTATIONAL MOLECULAR BIOLOGY, Tokyo, Japan, April 8−11, p263−272 (2000);およびGolub, et al., SCIENCE, 286: 531−537 (1999)を参照のこと。
【0138】
適切な予測強度(PS)閾値は、予測強度に対して累積的な交差検定誤差率をプロットすることによって評価され得る。1つの実施態様において、目的のサンプルについてのPSの絶対値が0.3以上の場合、正の予測がなされる。他のPS閾値(例えば、0.1、0.2、0.4、または0.5以上)もまた、クラス予測のために選択され得る。多くの実施態様において、閾値は、予測の精度が至適化され、そして偽陽性の結果および偽陰性の結果の両方の発生率が最小化されるように選択される。
【0139】
本発明に従って構築された任意のクラス予測因子は、目的の固形腫瘍患者(例えば、RCC患者)のクラス帰属のために使用され得る。多くの例において、本発明において用いられるクラス予測因子は、近傍分析によって同定されるn個の予後遺伝子(ここで、nは1より大きな整数である)を含む。これらの予後遺伝子の半分は最大のP(g,c)スコアを有し、そしてもう一方の半分は最大の−P(g,c)スコアを有する。それゆえ、クラス予測因子を定義することにおいて、数nは唯一の自由なパラメーターである。
【0140】
目的の患者の発現プロフィールはまた、他の手段によって2つ以上の参照発現プロフィールに対して比較され得る。例えば、参照発現プロフィールは患者の各クラスについての平均末梢血発現プロフィールを含み得る。目的の患者の発現プロフィールが1つの参照プロフィールと、別のものよりも類似しているという事実は、目的の患者が後者の参照プロフィールと関連する臨床成績より前者の参照プロフィールと関連する臨床成績を有しそうであることを示唆する。
【0141】
1つの特定の実施態様において、本発明は目的のRCC患者の臨床成績の予測を特徴とする。この目的に適切な予後遺伝子または分類因子は、限定するものではないが、表2、3または4に記載のものを含む。
【0142】
1つの例において、治療的処置(例えば、CCI−779療法)に反応してのそのTTDに基づいて、RCC患者は少なくとも2つのクラスに分けられ得る。患者の第1のクラスは、第1の特定されたTTD(例えば、治療的処置の開始から365日未満のTTD)を有し、そして患者の第2のクラスは、第2の特定されたTTD(例えば、治療的処置の開始から365日超のTTD)を有する。患者のこれら2つのクラス間のクラス区別と実質的に相関する遺伝子は、同定され、そして目的のRCC患者のクラスメンバーシップを予測するために使用され得る。多くの場合に、成績予測において使用される全ての発現プロフィールは、治療的処置の前に単離された末梢血サンプルから調製されるベースラインプロフィールである。この目的に適切なRCC予後遺伝子の例は、表2から選択されるものを含み、そして適切な分類因子の例は表4の分類因子1〜7を含む。本発明は、目的のRCC患者の臨床成績の予測のための表2の遺伝子番号1〜14の任意の組み合わせの使用を意図する。この目的に適切な方法は、限定するものではないが、RT−PCR、ELISA、機能アッセイ、またはパターン認識プログラム(例えば、重み付き投票アルゴリズムまたはk−最近傍アルゴリズム)を含む。
【0143】
別の例において、RCC患者の第1のクラスは特定されたTTP(例えば、治療的処置(例えば、CCI−779療法)の開始から106日以上のTTP)を有し、そして患者の第2のクラスは別の特定されたTTP(例えば、治療的処置の開始から106日未満のTTP)を有する。目的のRCC患者を上記2つの成績クラスの1つに帰属させることが可能な予後遺伝子は、限定するものではないが、表3に示すものを含み、そして適切な分類因子は、表4における分類因子8〜21を含む。本発明は、目的のRCC患者の臨床成績の予測のための表3の遺伝子番号1〜28の任意の組み合わせの使用を意図する。この目的に適切な方法は、限定するものではないが、RT−PCR、ELISA、機能アッセイ、またはパターン認識プログラム(例えば、重み付き投票アルゴリズムまたはk−最近傍アルゴリズム)を含む。
【0144】
さらなる例において、目的のRCC患者の発現プロフィールは、重み付き投票アルゴリズムまたはk−最近傍アルゴリズム、および表4から選択される分類因子を使用することによって2つ以上の参照発現プロフィールに対して比較される。
【0145】
3つ以上の成績クラスを区別することができる予後遺伝子またはクラス予測因子もまた、本発明において用いられ得る。これらの予後遺伝子は、マルチクラス相関計量を使用して同定され得る。マルチクラス相関分析を実施するために適切なプログラムは、限定するものではないが、GeneCluster2ソフトウェア(Whitehead Institute, Cambridge, MAのMIT Center for Genome Research)を含む。分析の下で、特定された固形腫瘍(例えば、RCC)を有する患者は少なくとも3つのクラスに分けられ、そして患者の各クラスはそれぞれ異なる臨床成績を有する。マルチクラス相関分析の下で同定された予後遺伝子は、患者の一方のクラスのPBMCにおいて患者の他方のクラスのPBMCに比較して差次的に発現される。1つの実施態様において、同定された予後遺伝子は、置換検定の下で1%、5%、10%、25%、または50%より高い有意性レベルでクラス区別と相関する。クラス区別は、異なる臨床成績を有する患者の末梢血サンプルにおける同定された遺伝子の理想化された発現パターンを表す。
【0146】
本発明はまた、RCCおよび他の固形腫瘍の処置の予後または選択に有用な電子的システムを特徴とする。これらのシステムは、目的のRCC患者の発現プロフィールおよび参照発現プロフィールを受け取るための入力または伝達デバイスを含む。参照発現プロフィールは、データベースまたは別の媒体に貯蔵され得る。発現プロフィール間の比較は電子的に(例えば、プロセッサまたはコンピュータを通じて)行われ得る。プロセッサまたはコンピュータは、1つ以上のプログラムを実行して、目的の患者の発現プロフィールを参照発現プロフィールに対して比較し得る。プログラムはメモリ中に貯蔵されるか、または別のソース(例えば、インターネットサーバ)からダウンロードされ得る。1つの例において、プログラムはk−最近傍アルゴリズム、または重み付き投票アルゴリズムを含む。別の例において、電子的システムは、核酸アレイと結合され、核酸アレイによって生じる発現データを受け取るか、または処理し得る。
【0147】
さらに別の態様において、本発明はRCCまたは他の固形腫瘍の処置の予後または選択に有用なキットを提供する。各キットはRCCまたは固形腫瘍予後遺伝子(例えば、表2または3から選択される遺伝子)用の少なくとも1つのプローブを含む。プローブの任意の型(例えば、ハイブリダイゼーションプローブ、増幅プライマー、または抗体)が本発明において使用され得る。
【0148】
1つの実施態様において、本発明のキットは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上のポリヌクレオチドプローブまたはプライマーを含む。各プローブ/プライマーは、ストリンジェントなまたは核酸アレイハイブリダイゼーション条件下で、それぞれ異なるRCCまたは固形腫瘍予後遺伝子(例えば、表2または3から選択されるもの)に対しハイブリダイズし得る。1つの例において、本発明のキットは、ストリンジェントなまたは核酸アレイハイブリダイゼーション条件下で本発明の分類因子におけるそれぞれの遺伝子(例えば、表4から選択されるもの)に対しハイブリダイズすることが可能なプローブを含む。本明細書において使用される場合、ポリヌクレオチドが遺伝子のRNA転写物、またはその相補物に対しハイブリダイズし得る場合、ポリヌクレオチドは遺伝子に対しハイブリダイズし得る。
【0149】
別の実施態様において、本発明のキットは1つ以上の抗体を含み、その各々はそれぞれ異なったRCCまたは固形腫瘍予後遺伝子(例えば、表2または3から選択されるもの)によってコードされるポリペプチドに結合することが可能である。1つの例において、本発明のキットは、本発明の分類因子における遺伝子(例えば、表4から選択されるもの)によってコードされるそれぞれのポリペプチドに結合することが可能な抗体を含む。
【0150】
本発明において用いられるプローブは、標識または非標識のいずれかであり得る。標識されたプローブは、分光学的、光化学的、生化学的、生物電子工学的、免疫化学的、電気的、光学的、化学的、または他の適切な手段によって検出され得る。プローブについての例示的な標識部分は、放射性同位体、化学発光化合物、標識結合タンパク質、重金属原子、分光学的マーカー(例えば、蛍光マーカーおよび色素)、磁性標識、結合酵素、質量分析タグ、スピン標識、ならびに電子伝達供与体および受容体などを含む。
【0151】
本発明のキットはまた、緩衝液またはレポーター手段を含む容器を有し得る。さらに、キットはポジティブまたはネガティブコントロールを行うための試薬を含み得る。1つの実施態様において、本発明において用いられるプローブは、1つ以上の基材支持体に安定に付着される。核酸ハイブリダイゼーションまたは免疫アッセイは、基材支持体上で直接実施され得る。この目的に適切な基材支持体は、限定するものではないが、ガラス、シリカ、セラミックス、ナイロン、石英ウェーハ、ゲル、金属、紙、ビーズ、チューブ、ファイバー、フィルム、メンブラン、カラムマトリックス、またはマイクロタイタープレートウェルを含む。
【0152】
IV.RCCおよび他の固形腫瘍の処置の選択
本発明は、RCCまたは他の固形腫瘍の個人化された処置を可能にする。目的の患者の臨床成績は、いずれもの処置の前に本発明に従って予測され得る。患者の良好な予後は、処置が有効でありそうであることを示し、一方不良の予後は、異なる治療が患者のためにより適切であり得ることを示唆する。この処置前分析は、患者が不要で有害な反応を回避することを手伝い、そして処置についての改善された安全性および増加された利点/危険性比を提供する。
【0153】
1つの実施態様において、目的のRCC患者の予後は、CCI−779を用いた任意の処置の前に評価される。この目的に適切な予後遺伝子は、限定するものではないが、表2または3において示されるものを含む。本明細書に記載の任意の予後方法が使用され得る(例えば、RT−PCR、ELISA、タンパク質機能アッセイ、またはパターン認識プログラム(例えば、k−最近傍アルゴリズムまたは重み付き投票アルゴリズム))。良好な予後は、目的のRCC患者についてのCCI−779処置の適切性を示す。良好対不良予後は、TTD(例えば、1年超対1年未満)またはTTP(例えば、3ヶ月超対3ヶ月未満)によって測定され得る。他の尺度もまた、良好な予後または不良な予後を決定するために使用され得る。
【0154】
本発明はまた、目的の患者のために良好な処置の選択を特徴とする。多くの処置選択肢または養生が、本発明によって分析され得る。各処置についての予後遺伝子が同定され得る。目的の患者におけるこれらの予後遺伝子の末梢血発現プロフィールは、患者の臨床成績を示し、そしてそれゆえ患者のために良好な予後を有する処置の同定または選択のための代用マーカーとして使用され得る。本明細書で使用される「良好な」予後は、目的の患者についての全ての他の利用可能な処置の大部分の予後より良い予後である。最良の予後を有する処置養生もまた同定され得る。
【0155】
ガン処置の任意の型が本発明によって評価され得る。例えば、RCCは薬物療法によって処置され得る。適切な薬物は、サイトカイン(例えば、インターフェロンまたはインターロイキン2)、および化学療法剤(例えば、CCI−779、AN−238、ビンブラスチン、フロクスウリジン、5−フルオロウラシル、またはタモキシフェン)を含む。AN−238は、ソマトスタチン(SST)担体オクタペプチドに結合された2−ピロリノドキソルビシンを有する細胞毒性剤である。AN−238は、RCC腫瘍細胞の表面上のSST受容体に対して標的化され得る。化学療法剤は、個別に、または他の薬物、サイトカインもしくは治療と組み合わせて使用され得る。さらに、モノクローナル抗体、抗血管新生薬物、または抗成長因子薬物がRCCを処置するために用いられ得る。
【0156】
RCC処置はまた外科的であり得る。適切な外科的選択は、限定するものではないが、根治的腎摘出、部分的腎摘出、腫瘍転移の除去、動脈性塞栓術、腹腔鏡下腎摘出、寒冷切除、およびネフロン節約手術を含む。さらに、放射線照射、遺伝子治療、免疫療法、養子免疫療法、または任意の他の従来のまたは実験的な治療が使用され得る。
【0157】
前立腺ガン、頭部/頸部ガン、および他の固形腫瘍についての処置選択肢は、当該分野において公知である。例えば、前立腺ガン処置は、限定するものではないが、放射線療法、ホルモン療法、および寒冷療法を含む。本発明はまた、固形腫瘍の他の新規のまたは実験的な処置のための予後遺伝子の使用を意図する。
【0158】
処置選択は、手動でまたは電子的に行われ得る。参照発現プロフィールまたは遺伝子分類因子は、データベースに貯蔵され得る。アルゴリズム(例えば、k−最近傍アルゴリズムまたは重み付き投票アルゴリズム)を行うことが可能なプログラムは、目的の患者の末梢血発現プロフィールをデータベースに対して比較して、患者のためにどの処置が使用されるべきか決定するために使用され得る。
【0159】
予後遺伝子の同定は、固形腫瘍の疾患段階によって影響され得る。例えば、予後遺伝子は、特定の疾患段階における患者から同定され得る。このようにして同定された遺伝子は、同じくその疾患段階にある目的の患者の臨床成績の予測において、より有効であり得る。
【0160】
疾患段階もまた処置選択に影響し得る。例えば、段階IまたはIIにおけるRCC患者について、根治的または部分的腎摘出が一般に選択される。段階IIIにおけるRCC患者について、根治的腎摘出が好ましい処置の1つである。段階IVにおけるRCC患者について、サイトカイン免疫療法、組み合わせ免疫療法および化学療法、または他の薬物療法が用いられ得る。それゆえ、目的の患者の疾患段階は、患者の良好な処置についての遺伝子発現に基づく選択を補助するために使用され得る。
【0161】
上記に記載の実施態様および以下の実施例は例示として与えられるものであって限定するものではないことが理解されるべきである。本発明の範囲内での種々の変更および改変が本記載から当業者には明らかになる。
【0162】
V.実施例
実施例1.PBMCおよびRNAの精製
全血を、CCI−779療法の開始前のRCC患者から収集した。血液サンプルをCPT Cell Preparation Vacutainer Tube(Becton Dickinson)中へ引き出した。各サンプルについて、標的用量は8mlであった。製造者のプロトコル(Becton Dickinson)に従い、PBMCをフィコール勾配上で単離した。RNA用にサンプルを加工するまで、PBMCペレットを−80℃で貯蔵した。
【0163】
QIA shreddersおよびQiagen Rneasy(登録商標)ミニキットを使用してRNA精製を行った。0.1%βメルカプトエタノールを含むRLT溶解緩衝液(Qiagen, Valencia, CA, USA)中でサンプルを回収し、そしてRNeasyミニキット(Qiagen, Valencia, CA, USA)を使用して、全RNA単離のために加工した。溶出されたRNAを、96ウェルプレートUVリーダーを使用し、A260/280をモニターして定量した。RNAの品質(18Sおよび28Sについてのバンド)を、2%アガロースゲル中のアガロースゲル電気泳動によってチェックした。Affymetrixジーンチップハイブリダイゼーション用に加工するまで、残ったRNAを−80℃で保存した。
【0164】
実施例2.RNA増幅およびジーンチップハイブリダイゼーションプローブの生成
Lockhart, et al., NATURE BIOTECHNOLOGY, 14:1675−1680 (1996)に記載の手順の改変を使用して、オリゴヌクレオチドアレイ用の標識された標的を調製した。5’末端にT7 DNAポリメラーゼプロモーターを含むオリゴd(T)24プライマーを使用して、2μgの全RNAをcDNAに変換した。T7 DNAポリメラーゼキット(Ambion, Woodlands, TX, USA)、ならびにビオチン化されたCTPおよびUTP(Enzo, Farmingdale, NY, USA)を使用したインビトロ転写のためのテンプレートとしてこのcDNAを使用した。標識されたcRNAを、40mMトリス酢酸 pH8.0、100mM KOAc、30mM MgOAc中で35分間94℃で最終容量40mL中で断片化した。10μgの標識された標的を、100mg/mLニシン精子DNAおよび50mg/mLアセチル化BSAを含む1×MES緩衝液中に希釈した。アレイを互いに正規化し、そしてオリゴヌクレオチドアレイの感度を評価するために、Hill, et al., GENOME BIOL., 2:research0055.1−0055.13 (2001)に記載のようにインビトロで合成した11の細菌遺伝子の転写物を各ハイブリダイゼーション反応に含めた。これらの転写物の量は全転写物あたりのコントロール転写物数に換算して、1:300000(3ppm)〜1:1000(1000ppm)の範囲であった。これらのコントロール転写物からのシグナル反応によって決定した場合、アレイの検出の感度は、百万あたり2.33〜4.5コピーの間の範囲であった。
【0165】
標識された配列を99℃で5分間、次いで45℃で5分間変性し、そして多数のヒト遺伝子から構成されるオリゴヌクレオチドアレイ(HG−U95AまたはHG−U133A, Affymetrix, Santa Clara, CA, USA)に対してハイブリダイズした。60rpmで回転させながら45℃で16時間アレイをハイブリダイズした。ハイブリダイゼーションの後に、ハイブリダイゼーション混合物を除去し、貯蔵し、そしてアレイを洗浄し、GeneChip Fluidics Station 40)を使用してStreptavidin R−phycoerythrin(Molecular Probes)で染色し、製造者の説明書に従ってHewlett Packard GeneArray Scannerを用いて走査した。これらのハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を「核酸アレイハイブリダイゼーション条件」と総称する。
【0166】
実施例3.遺伝子発現頻度の決定および発現データの処理
【0167】
Affymetrix MicroArray Suiteソフトウェア(MAS)を使用してアレイ画像を処理し、MASのデスクトップ版を使用して、アレイスキャナーによって作製された生アレイ画像データ(.dat)ファイルをプローブ特徴レベル強度概要(probe feature-level intensity summary)(.celファイル)に処理した。Gene Expression Data System(GEDS)をグラフィック使用者インターフェイスとして使用して、使用者はサンプル描写をExpression Profiling Information and Knowledge System(EPIKS)Oracleデータベースに提供し、そして正確な.celファイルを描写と関連させる。次いで、データベースプロセスはMASソフトウェアを呼び出して、プローブセット概要値(probeset summary value)を作成し;各プローブセットについてAffymetrix Average DifferenceアルゴリズムおよびAffymetrix Absolute Detection計量(非存在、存在またはわずかな)を使用して、プローブ強度を各メッセージについて概要化する。MASはまた、トリムされた平均を100の値にスケールすることによって第1のパス正規化(pass normalization)のために使用される。データベースプロセスはまた、一連のチップ品質管理計量を計算し、そして全ての生データおよび品質管理計算をデータベース中に貯蔵する。
【0168】
MASソフトウェア(Affymetrix)を使用して、テータ分析および非存在/存在コール決定を生蛍光強度値に対して行った。「存在」コールを、MASソフトウェアによって、バックグラウンドに比較しての遺伝子のシグナルの強度に基づいて転写物がサンプルにおいて検出されるかどうかを評価することにより計算する。各ハイブリダイゼーション溶液中にスパイクされた既知量の11のコントロールcRNAについての平均差異を包括的な較正曲線を生じるために使用するスケール化頻度正規化法(scaled frequency normalization method)(Hill, et al., GENOME BIOL, 2:research0055.1−0055.13 (2001))を使用して、各転写物についての「平均差異」値を「頻度」値に対して正規化した。次いで、この較正を、全ての転写物についての平均差異値を頻度評価(1:300,000(約3ppm)〜1:1000(1000ppm)の範囲のppmの単位で記述される)に変換するために使用した。正規化は、各ハイブリダイゼーション溶液中にスパイクされた既知量の11のコントロール転写物についての平均差異値から構築された較正曲線に対する各チップ上の平均差異値をいう。多くの例において、正規化方法は、トリムされた平均正規化、続いて全てのチップにわたってのプールされた標準曲線の適合(これは「頻度」値およびチップあたりの感度評価を計算するために使用される)を利用する。生じる計量は、スケール化頻度(scaled frequency)といわれ、全てのアレイ間を正規化する。
【0169】
いずれの関連情報も有さない遺伝子をデータ比較から除外した。疾患なしのPBMCのRCC PBMCとの比較において、これを2つのデータ処理フィルターを使用して達成した:1)全てのGeneChip上で非存在とコールされたいずれの遺伝子(MAS中のAffymetrix Absolute Detection計量によって決定される)もデータセットから除去し;2)全てのGeneChip上で<10ppmの正規化頻度で発現されたいずれの遺伝子もデータセットから除去して、分析セットに保持されたいずれの遺伝子も少なくとも1度は少なくとも10ppmの頻度で検出されることを確実にした。いくつかの多変量予測分析について、遺伝子分類因子において低レベルのまたはまれに検出される転写物が同定される可能性を減少させるために、さらに厳密なデータ処理フィルターを使用した(25%P、および平均頻度>5ppm)。
【0170】
実施例4.異常値サンプルのピアソンに基づく評価
異常値サンプルを同定するために、Splus(version 5.1)を使用して、サンプルの全ての対の間で対ピアソン相関係数(pairwise Pearson correlation coefficient)の2乗(r2)を計算した。詳細には、発現値のG×Sマトリックスから計算を開始した(ここでGはプローブセットの総数であり、Sはサンプルの総数である)。このマトリックスにおけるサンプル間のr2値を計算した。結果はr2値の対称S×Sマトリックスであった。このマトリックスは、分析において各サンプルと全ての他のサンプルとの間の類似性を測定する。これらのサンプルの全ては一般的なプロトコルに従って回収されるヒトPBMCに由来するので、期待は、相関係数により一般に高い程度の類似性(すなわち、転写物配列の大部分の発現レベルが分析された全てのサンプルにおいて類似している)が明らかにされることである。サンプルの類似性を概要化するために、各サンプルおよび研究における他のサンプルの全てのMASシグナルの間のr2値の平均を計算し、そしてヒートマップにプロットして迅速な可視化を容易にした。平均r2の値が1に近ければ近い程、サンプルは分析内のその他のサンプルに似ている。低い平均r2値は、サンプルの遺伝子発現プロフィールが全体の遺伝子発現パターンの点から「異常値」であることを示す。異常値状態は、サンプルが分析内のその他のサンプルから有意に逸脱する遺伝子発現プロフィールを有するか、またはサンプルの技術的な質が劣った質であることのいずれかを示し得る。
実施例5.臨床研究プロトコル概要
PBMCを20人の疾患なしの志願者(女性12人および男性8人)、ならびに第II相研究に参加している45人の腎細胞ガン患者(女性18人および男性27人)の末梢血から単離した。臨床研究の薬理ゲノム学部分についてのコンセントを受け取り、そしてプロジェクトは参加臨床場所における地方機関審査委員会によって承認された。RCC腫瘍を各場所において、従来の(明細胞)ガン(24人)、顆粒状(1)、乳頭状(3)、または混合サブタイプ(7)として分類した。10の腫瘍についての分類は同定されなかった。ベースラインPBMC発現プロフィールの薬理ゲノム学分析についてのインフォームドコンセントに署名した45人の患者もまた、モトザーの多変量評価法によってスコア化した。この研究において登録された同意患者のうち、6人が良好危険性評価に帰属され、17人の患者が中間の危険性スコアを有し、そして22人の患者が本研究において不良予後分類を受けた。
【0171】
RCCの進行型症例を有する患者を、治験の期間の間週に一度、30分間のIV注入として投与されるCCI−779の3つの用量(25mg、75mg、250mg)の1つを用いて処置した。残存、再発性または転移性疾患の臨床段階および大きさを、処置の前、およびCCI−779療法開始以降8週間毎に記録した。腫瘍の大きさをセンチメートル単位で測定し、そして最長直径およびその垂線の積として報告した。測定可能な疾患を、CTスキャン、X線または触診によって両方の直径が>1.0cmである任意の2次元的に測定可能な病変として規定した。腫瘍反応(完全反応、部分反応、小反応、安定疾患、または進行性疾患)を、全ての測定可能な病変の垂直直径の積の合計によって決定した。本薬理ゲノム学研究において利用された2つの主要な臨床成績尺度は、進行までの時間(TTP)、および生存時間または死亡までの時間(TTD)であった。TTPを、最初のCCI−779処置の日から進行性疾患の測定の第1日、または進行なしとして知られる最後の日おける打ち切りまでの間隔として規定した。生存時間またはTTDを、最初のCCI−779処置の日から死亡の時刻、または生存が知られた最後の日における打ち切りまでの間隔として規定した。
【0172】
実施例6.統計学的分析
Eisen, et al., PROC NATL ACAD SCI U.S.A., 95:14863−14868 (1998)の手順を使用して、その発現プロフィールの類似性に基づく遺伝子および/またはアレイの教師なし階層的クラスタリングを行った。これらの分析において、非厳密なデータ処理フィルターに合う転写物のみを使用した(少なくとも1つの存在コール、10ppm以上のデータセットにわたっての少なくとも1の頻度)。発現データを対数変換および標準化して、0の平均値および1の分散を有するようにし、そして非集中相関類似性計量(uncentered correlation similarity metric)とともに平均連関クラスタリングを使用して、階層的クラスタリングの結果を生じた。
【0173】
疾患関連転写物を同定するために、平均フォールドチェンジおよびスチューデントt検定を使用して、正常PBMC発現プロフィールを腎ガンPBMCプロフィールに対して比較した。
【0174】
臨床成績の処置前プロフィールとの相関に関して、処置前発現レベルと臨床成績の連続的尺度との間の関係の単純一変量評価のために、発現とTTPとの間、および発現とTTDとの間の相関を、スピアマンの順位相関を使用して、各転写物について計算した。また、遺伝子発現データを、コックス比例ハザード回帰モデルを使用して臨床成績(TTP、TTD)の打ち切り尺度について評価した。
【0175】
患者の種々の群の生存データを、カプランメイアー分析によって評価し、そしてウィルコクソン検定を使用して有意性を確立した。
【0176】
遺伝子選択および教師ありクラス予測を、Golub, et al., SCIENCE, 286: 531−537 (1999)に記載され、そしてwww.genome.wi.mit.edu/cancer/software/genecluster2.htmlから入手可能なGenecluster version2.0を使用して行った。より厳密なデータ処理フィルターに合う転写物(少なくとも25%の存在コール、および全RCC PBMCにわたっての平均頻度5ppm)を、臨床成績を予測するために使用した。このより厳密なフィルターは、予測モデルにおける低レベル転写物の算入を回避または最小化し得る。
【0177】
最近傍分析のために、訓練セットおよび試験セットにおける全ての発現データを、分析の前に対数変換した。データの訓練セットにおいて、特徴(転写物配列)の漸増数を含むモデルを、クラス評価のために中央値を使用するS2N類似性計量とともに両側アプローチ(各クラスにおいて等しい特徴数)を使用して構築した。全ての比較は2進区別であり、そして各モデル(特徴の数が漸増する)を、リーブワンアウト交差検定、10倍交差検定、または4倍交差検定によって評価した。試験セットにおけるクラスメンバーシップの予測を、Geneclusterにおいても見出され得るk−最近傍アルゴリズムを使用して行った。Armstrong, et al., NATURE GENETICS, 30:41−47 (2002)も参照のこと。多くの予測について、近傍の数はk=3に設定し、コサイン距離尺度を使用し、そして全てのk近傍に等しい重みを与えた。
【0178】
本発明の上記の記載は例示および説明を与えるが、網羅的であることも本発明を厳密に開示されるものに限定することも意図しない。改変および変形が、上記の教示と一致して可能であるか、または本発明の実施から得られ得る。従って、本発明の範囲は、請求の範囲およびその等価物によって規定されることが留意される。
【0179】
図面は説明のために提供されるものであり、限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1A】図1Aは、リーブワンアウト交差検定下で、長期対短期TTDを予測するための、大きさの漸増する(2〜200)最近傍分類因子の精度を示す。最高の精度を有する最小の至適予測モデルは6遺伝子分類因子であり、これは71%の全体精度を提供し、図において矢印で示される。
【図1B】図1Bは、10倍交差検定下で、長期対短期TTDを予測するための、大きさの漸増する(2〜200)最近傍分類因子の精度を示す。最高の精度を有する最小の至適予測モデルは14遺伝子分類因子であり、これは71%の全体精度を提供し、図において矢印で示される。
【図1C】図1Cは、4倍交差検定下で、長期対短期TTDを予測するための、大きさの漸増する(2〜200)最近傍分類因子の精度を示す。最高の精度を有する最小の至適予測モデルは14遺伝子分類因子であり、これは69%の全体精度を提供し、図において矢印で示される。
【図2A】図2Aは、リーブワンアウト交差検定下で、長期対短期TTDを予測するための、大きさの漸増する最近傍分類因子の精度を示す。最高の精度を有する最小の至適予測モデルは8遺伝子分類因子であり、これは86%の全体精度を提供し、図において矢印で示される。
【図2B】図2Bは、10倍交差検定下で、長期対短期TTDを予測するための、大きさの漸増する最近傍分類因子の精度を示す。最高の精度を有する最小の至適予測モデルは28遺伝子分類因子であり、これは88%の全体精度を提供し、図において矢印で示される。
【図2C】図2Cは、4倍交差検定下で、長期対短期TTDを予測するための、大きさの漸増する最近傍分類因子の精度を示す。最高の精度を有する最小の至適予測モデルは8遺伝子分類因子であり、これは88%の全体精度を提供し、図において矢印で示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腎細胞ガン(RCC)の予後のための方法であって、該方法は目的のRCC患者の末梢血サンプルにおける1つ以上の遺伝子の発現プロフィールを該1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの参照発現プロフィールに対して比較する工程を包含し、
ここで、該1つ以上の遺伝子は表2または3から選択される遺伝子を含み、ここで表2または3から選択される遺伝子はPRKCD、MD−2またはVNN2ではなく、そして
ここで、目的の患者の発現プロフィールと少なくとも1つの参照発現プロフィールとの間の差異または類似性は目的の患者におけるRCCの予後を示す、方法。
【請求項2】
目的の患者の末梢血サンプルが全血サンプルであるか、または富化されたPBMCを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの参照発現プロフィールが以下を含む、請求項2記載の方法:
抗ガン療法に反応しての第1の臨床成績を有するRCC患者における該1つ以上の遺伝子の平均ベースライン末梢血発現プロフィール、または
抗ガン療法に反応しての第1または第2の臨床成績を有する異なるそれぞれのRCC患者における該1つ以上の遺伝子のベースライン末梢血発現プロフィールをその各々が表す複数のプロフィール。
【請求項4】
目的の患者の発現プロフィールが抗腫瘍療法についてのベースライン発現プロフィールである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
抗腫瘍療法がCCI−779療法である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の遺伝子が表2の遺伝子番号1〜7から選択される遺伝子、および表2の遺伝子番号8〜14から選択される別の遺伝子を含み、そして第1および第2の成績がCCI−779療法に反応しての患者TTDによって測定される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の遺伝子が表3の遺伝子番号1〜14から選択される遺伝子、および表3の遺伝子番号15〜28から選択される別の遺伝子を含み、そして第1および第2の成績がCCI−779療法に反応しての患者TTPによって測定される、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の遺伝子が表4から選択される分類因子を含み、そして目的の患者の発現プロフィールがk−最近傍または重み付き投票アルゴリズムを使用することによって、少なくとも1つの参照発現プロフィールに対して比較される、請求項5記載の方法。
【請求項9】
以下の工程を包含する、請求項5記載の方法:
目的の患者が、CCI−779療法に反応しての第1または第2の臨床成績を有するかどうかを予測する工程。
【請求項10】
以下の工程を包含する、腎細胞ガン(RCC)のための処置を選択する方法:
請求項1記載の方法によって複数の処置について目的のRCC患者の予後を提供する工程;および
複数の処置から目的のRCC患者のために良好な予後を有する処置を選択する工程。
【請求項11】
以下を含むシステム:
固形腫瘍を有する患者の末梢血サンプルにおける1つ以上の遺伝子の発現プロフィールを表すデータを含む第1の貯蔵媒体;
該1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの参照発現プロフィールを表すデータを含む第2の貯蔵媒体;
発現プロフィールを少なくとも1つの参照発現プロフィールに対して比較することが可能なプログラム;および
プログラムを実行することが可能なプロセッサ、
ここで、該1つ以上の遺伝子は表2または3から選択される遺伝子を含み、そして該遺伝子はPRKCD、MD−2またはVNN2ではない。
【請求項12】
腎細胞ガン(RCC)の処置の予後または選択のためのキットであって、該キットは表2または3から選択される遺伝子のためのプローブを含み、ここで該遺伝子はPRKCD、MD−2またはVNN2ではない、キット。
【請求項13】
固形腫瘍の予後のための方法であって、該方法は目的の患者の末梢血サンプルにおける1つ以上の遺伝子の発現プロフィールを該1つ以上の遺伝子の少なくとも1つの参照発現プロフィールに対して比較する工程を包含し、
ここで、目的の患者は固形腫瘍を有しており、そして該1つ以上の遺伝子の各々は、第2のクラスの患者の末梢血単核球(PBMC)に比較して第1のクラスの患者のPBMCにおいて差次的に発現されており、
ここで、第1および第2両方のクラスの患者は固形腫瘍を有しており、そして第1のクラスの患者は第1の臨床成績を有し、そして第2のクラスの患者は第2の臨床成績を有しており、
ここで、該1つ以上の遺伝子は、第1のクラスおよび第2のクラスの患者におけるそのHG−U133Aによって決定されるPBMC発現プロフィールが、クラスに基づく相関計量の下でクラス区別と相関される遺伝子を含み、ここでクラス区別は第1および第2のクラスの患者のPBMCにおける該遺伝子の理想化された発現パターンを表し、
ここで、目的の患者の該発現プロフィールと該少なくとも1つの参照発現プロフィールとの間の差異または類似性は目的の患者における固形腫瘍の予後を示す、方法。
【請求項14】
第1および第2の臨床成績が抗腫瘍療法に対する成績である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
HG−U133Aによって決定されるPBMC発現プロフィールが抗腫瘍療法についてのベースライン発現プロフィールである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
固形腫瘍が腎細胞ガン(RCC)であり、そして目的の患者の末梢血サンプルが全血サンプルであるか、または富化されたPBMCを含み、そして少なくとも1つの参照発現プロフィールが以下を含む、請求項15記載の方法:
固形腫瘍および第1の臨床成績を有する患者における1つ以上の遺伝子の平均ベースライン末梢血発現プロフィール;または
固形腫瘍ならびに第1の臨床成績および第2の臨床成績からなる群より選択される臨床成績を有する異なるそれぞれの患者における該1つ以上の遺伝子のベースライン末梢血発現プロフィールをその各々が表す複数のプロフィール。
【請求項17】
第1および第2の臨床成績が、CCI−779療法に反応してのTTDまたはTTPによって測定される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
1つ以上の遺伝子が以下を含む、請求項17記載の方法:
表2の遺伝子番号1〜7から選択される遺伝子、および表2の遺伝子番号8〜14から選択される別の遺伝子;または
表3の遺伝子番号1〜14から選択される遺伝子、および表3の遺伝子番号15〜28から選択される別の遺伝子。
【請求項19】
前記1つ以上の遺伝子が表4から選択される分類因子を含み、そして目的の患者の発現プロフィールが、k−最近傍または重み付き投票アルゴリズムを使用することによって、少なくとも1つの参照発現プロフィールに対して比較される、請求項17記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公表番号】特表2008−520251(P2008−520251A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543490(P2007−543490)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/042591
【国際公開番号】WO2006/060265
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】