説明

固形製剤包装体

【課題】誤飲を防止することが可能な固形製剤包装体を提供する。
【解決手段】この発明の固形製剤包装体は、上被覆部1と下被覆部2の間の収容部3に固形製剤4を収容した略長方形の袋状であって、上被覆部1と下被覆部2はイージーオープン性及びヒートシール性を有するものとし、前記収容部3の周縁5において上被覆部1と下被覆部2をヒートシールし、上被覆部1と下被覆部2を剥離することにより開封できるようにしており、上被覆部1と下被覆部2のいずれか又は両方の厚みを厚くし、意図的に曲げようとしなければ曲がらない硬度にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薬品やサプリメントの錠剤、カプセル剤等の固形製剤を包装した包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、薬品やサプリメントの固形製剤の包装態様として、PTP(プレススルーパッケージ)包装シートが利用されることが多い。このPTP包装シートは、固形製剤を個々に密閉できるようになっており、また、ミシン目によって、固形製剤1個分ごとに切り離すことができるため、便利に使用することができる。
【0003】
しかし、PTP包装シートは、固形製剤1個分ごとに切り離すと、小さいため、誤って固形製剤を開封しないまま包装ごと飲み込んでしまうことがあり、体内を傷つけることがあった(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】厚生労働省、“PTP包装シート誤飲防止対策について”、[平成22年11月2日検索]、インターネット<URL: http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20100915_1.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、固形製剤4を開封しないまま包装体ごと誤飲してしまうことを防止することが可能な固形製剤包装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、この発明は次のような技術的手段を講じている。
【0007】
この発明の固形製剤包装体は、上被覆部1と下被覆部2の間の収容部3に固形製剤4を収容した略長方形の袋状であって、上被覆部1と下被覆部2はイージーオープン性及びヒートシール性を有するものとし、前記収容部3の周縁5において上被覆部1と下被覆部2をヒートシールし、上被覆部1と下被覆部2を剥離することにより開封できるようにしており、上被覆部1と下被覆部2のいずれか又は両方の厚みを厚くし、意図的に曲げようとしなければ曲がらない硬度にしている。
【0008】
収容部3の周縁5の外側に、上被覆部1と下被覆部2とを剥離するための剥離用つまみ部6を設けることができる。
【0009】
また、前記剥離用つまみ部6の、上被覆部1と下被覆部2の剥離方向の、長さを異にできる。
【0010】
そして、収容部3の周縁5の一部分を、外側に向けて凸状にヒートシールするものとすることができる。
【0011】
更に、上被覆部1又は下被覆部2に視認できる表示するものとすることができ、また、前記収容部3に収容している固形製剤4を複数個にできる。
【発明の効果】
【0012】
この発明の固形製剤包装体は、上述のような構成を有しており、略長方形の袋状であり、厚みがあって簡単に折れ曲がらない硬度になっているため、視覚的、感覚的にそのまま飲めるものと誤認されにくく、また、口の中に入れにくいため、誤飲を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施形態1の固形製剤包装体の斜視図である。
【図2】この発明の実施形態1の固形製剤包装体の斜視図(開封状態)である。
【図3】この発明の実施形態2の固形製剤包装体の斜視図である。
【図4】この発明の実施形態3の固形製剤包装体の斜視図である。
【図5】凸状にヒートシールされた固形製剤包装体の例を示す正面図である。
【図6】この発明の実施形態2の固形製剤包装体に固形製剤4が2個入っている状態の斜視図である。
【図7】上被覆部1と下被覆部2の断面図である。
【図8】上被覆部1に視認できる表示を付している状態の、上被覆部1と下被覆部2の断面図である。
【図9】この発明の実施形態3の固形製剤4包装体の上被覆部1に視認できる表示を付している状態を示す斜視図である。
【図10】この発明の固形製剤4包装体をヒートシールするための自動包装機8の正面図である。
【図11】自動包装機8によって固形製剤4包装体の一部をヒートシールした後、固形製剤4が挿入される状態を表した要部拡大断面図である。
【図12】この発明の実施形態3の固形製剤4包装体をヒートシールするときに使用するシールドラム8eの斜視図である。
【図13】この発明の実施形態3の固形製剤4包装体が自動包装機8によってヒートシールされ、ミシン目9を入れる工程を表した説明図である。
【図14】複数個連結した固形製剤4包装体をミシン目9に沿って切り離している状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の好適な実施形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
〔実施形態1〕
図1は、この発明の実施形態1の固形製剤包装体の斜視図、図2は、その開封状態の斜視図である。この固形製剤包装体は、上被覆部1と下被覆部2の間の収容部3に固形製剤4を収容した略長方形の袋状であって、上被覆部1と下被覆部2はイージーオープン性及びヒートシール性を有するものとし、前記収容部3の周縁5において上被覆部1と下被覆部2をヒートシールし、上被覆部1と下被覆部2を剥離することにより開封できるようにしており、上被覆部1と下被覆部2のいずれか又は両方の厚みを厚くし、意図的に曲げようとしなければ曲がらない硬度にしたものである。
【0016】
上被覆部1と下被覆部2は、いずれも空気や湿気に対するバリア性が高い合成樹脂製のフィルム等を使用したもので、例えば、図7に示したように上被覆部1と下被覆部2をそれぞれ3層からなるものとすることができる。第1層1a,2a(表面側の層)は、グラシン紙とすることができる。第2層1b、2b(中間の層)は、バリア性を確保するためにPETのフィルムにシリカ又はアルミナ等の透明蒸着を行ったものとすることができる。第3層1c,2c(内側の層)は、イージーオープン性及びヒートシール性を付与するためのポリプロピレン、ポリエチレン等の適宜の合成樹脂製フィルムとすることができる。前記第1層〜3層は、それぞれ上下の層同士が接着しており、全体として収容部3内の固形製剤4が透過して見えるようになっている。
【0017】
図7の実施形態1の固形製剤包装体の第1層目の1a、2aは、それぞれ30μm〜50μmのグラシン紙、第2層目の1b、2bはそれぞれ略12μmのPETフィルムにシリカ又はアルミナの透明蒸着を行い、第3層目の1c、2cはそれぞれ25μm〜60μmのイージーオープン性及びヒートシール性を有する合成樹脂フィルムを使用している。
【0018】
上被覆部1と下被覆部2を合わせたときの厚さは、50μm〜500μmが好ましく、100μm〜350μmがさらに好ましく、120μm〜250μmがもっとも好ましい。この範囲にあれば、意図的に曲げようとしなければ曲がらない硬度を発現することができる。なお、500μm以上であることを妨げるものではない。
【0019】
上被覆部1と下被覆部2は、1又は複数(図6)の固形製剤4を挟んで互いの4辺ないしその付近をヒートシールしており、このヒートシールされた部分が収容部3の周縁5となっている。収容部3は、周縁5の内側の領域であり、周縁5における上被覆部1と下被覆部2が剥離されるまで密閉状態が保たれる。
【0020】
固形製剤4は、各種の薬品や、ビタミンその他の栄養素を含むサプリメントとしている。この実施形態では、固形製剤4を丸い錠剤としているが、カプセル剤とすることもでき、形状は特に限定されない。
【0021】
本実施形態1の固形製剤包装体は、厚みがあって意図的に曲げようとしなければ曲がらない硬度になっているため、指で一端をつまんだり、両側から挟んだりした程度では折れ曲がらず、略長方形の板状の形状が維持されるので、通常の判断能力があれば、視覚的、感覚的にそのまま飲むものではないことがわかる。
【0022】
なお、上被覆部1と下被覆部2は短辺が1cm〜10cmが好ましく、2cm〜7cmがさらに好ましく、3cm〜5cmがもっとも好ましい。一定の幅を有することによって、口の中に入れにくい大きさ・形状であるため、一見してそのまま口に入れたり、飲み込むものでないことがわかるからである。
【0023】
さらに、この固形製剤包装体は、上被覆部1と下被覆部2がイージーオープン性を有するため、ヒートシールされた周縁5における上被覆部1と下被覆部2を剥離することにより容易に開封でき、固形製剤4を迅速に取り出すことができ、暗い場所でも非常に取り扱いやすくなっている。
【0024】
また、この固形製剤包装体の一辺の縁部には、収容部3の周縁5の外側に、剥離用つまみ部6を設けている。この剥離用つまみ部6においては、上被覆部1と下被覆部2がシールされておらず、使用者は、その上被覆部1をつまんで反対側に引っ張ることにより、すばやく簡単にヒートシールされた周縁5における上被覆部1と下被覆部2を剥離させ、開封することができる。
【0025】
〔実施形態2〕
図3に示す実施形態は基本的な構成は第1実施形態と同様であるが、以下の点で異なる。
【0026】
収容部3の周縁5の外側に設けられた、上被覆部1と下被覆部2とを剥離するための剥離用つまみ部6の、剥離方向の上被覆部1と下被覆部2の長さが異なる。
【0027】
上記のような構成にすることで、剥離用つまみ部6の上被覆部1と下被覆部2の長さが同じ場合と比べ、剥離用つまみ部6に指や爪を引っ掛け易く、剥離用つまみ部6が視覚的にも感覚的にも分かり易く、更に容易に開封可能となる。
【0028】
〔実施形態3〕
図4、図5に示す実施形態は基本的な構成は第1実施形態と同様であるが、以下の点で異なる。
【0029】
収容部3の周縁5の一部を外側に向けて凸状になるようにヒートシールされている。図4に示す実施形態は周縁5の中央部が外側に向けて凸状になるようにヒートシールされている。凸部10の形状は、への字状になっており、ヒートシールされた凸状(への字状)の頂部の外側にヒートシールされていない部分、つまり剥離用つまみ部6を設けている。
【0030】
よって、固形製剤4包装体自体は略長方形状をしているため、周縁5をへの字状にヒートシールすることで、ヒートシールされていない外側部分に略三角形の剥離用つまみ部6が設けられることになる。
【0031】
このように構成することで、上記略三角形の剥離用つまみ部6に爪、指を入れ易く、視覚的にも感覚的にも剥離用つまみ部6を認識しやすくなる。また、収容部3のスペースを確保しながら、剥離用つまみ部6広くすることができるので、細かい作業が困難な人でも指と指でしっかり押さえながら剥離できることとなる。
【0032】
さらに、凸状にヒートシールされていることで、開封時に上被覆部1と下被覆部2が徐々に剥離していくので、より小さな力で開封が可能である。また、徐々に剥離できることで、収容部3に収容された固形製剤4が開封時に飛び出すといったことも防ぐことができる。
【0033】
また、実施形態3も実施形態2と同様に、剥離用つまみ部6の上被覆部1と下被覆部2の剥離方向の長さが異なるようにすることが好ましく、前記ヒートシールされた凸状の頂部から、剥離用つまみ部6の上被覆部1又は下被覆部2どちらか短い方の外縁との間隔が3mm程度であることがさらに好ましい。
【0034】
このように構成することで、ヒートシールされた凸状の頂部付近に、爪、指等を引っ掛けることが可能となる。
【0035】
なお、本実施形態は、図5に例示するように、収容部3の周縁5部の一部を、外側に向けて凸状にヒートシールしているならば、凸状の形状はどのような形でも良く、凸状の数も1つ又は複数でも構わない。
〔実施形態4〕
図9に示すように、上被覆部1に視認できる表示を付している。表示は、収容物である、固形製剤4の種類や商品名を表示したり、薬剤である場合は、朝食前、夕食前、食間等の表示、または、注意事項等を表示することができる。
【0036】
上被覆部1の第1層目1aであるグラシン紙にグラビア方式等により印刷可能である。このとき、第2層1b目と接着する側の第1層1a目の面側に表示内容を裏刷りして、第2層1b目を接着することが好ましい。このようにすることで、印刷が剥がれなくなる。また、第2層1b目と接着しない第1層1a目の面側は、手などが直接触れる面側であるため、インク7が擦れて剥がれたり、手などにインクが付着する場合があり、こちら側に印刷することは好ましくない。
【0037】
図8は上被覆部1側の第1層1a目の第2層1b目と接着する面側に印刷をしている状態を示す固形製剤包装体の断面図である。
【0038】
なお、下被覆部2側又は上被覆部1側と下被覆部2側の両方に表示することも出来る。
〔固形製剤包装体の製造方法について〕
図10は、本実施形態3の固形製剤包装体を製造する自動包装機8の正面図である。この自動包装機8によって製造した場合、図13に示すように、底部どうしが連結した2つの固形製剤包装体が帯状になって製造できるようになっている。
【0039】
この自動包装機8の説明をするにあたって、凸状にヒートシールしている方を上部とし、その反対側を底部とするがこれらの方向は説明の便宜上のものである。
【0040】
上記自動包装機8の製造工程を説明する。まず、固形製剤4包装体に収容する固形製剤4を貯蔵槽であるサブホッパー8aに入れる。そして固形製剤4は直線フィーダー8bによって適宜の量がホッパー8cに送り出される。ホッパー8cは底開式の漏斗型の口から供給ドラム8dに固形製剤4を落下させるものである。ホッパー8cの中に入った固形製剤4はホッパー8cの下部に設けられた供給ドラム8dに落下する。
【0041】
供給ドラム8dの直下には、ヒートシールするための二つのシールドラム8eが内設するように設けられている。そして、その内設された二つのシールドラム8eを挟むように、一定間隔を空けて左右に、左側巻回ドラム8fと右側巻回ドラム8fが設けられている。それぞれの巻回ドラム8fと二つのシールドラム8eの間には送りローラー8gが設けられている。
【0042】
それぞれの巻回ドラム8fの一方には、上被覆部1がシート状になって巻回されており、他方には下被覆部2がシート状になって巻回されている。左右の巻回ドラム8fに巻回された、上被覆部1と下被覆部2は、それぞれ送りローラー8gに引っ張られながら、二つのシールドラム8eが内設する部分で合流し、二つのシールドラム8eが内設しながら回転することでヒートシールされる。
【0043】
図12は実施例3の収容部3の周縁5の一部を外側に向けて凸状になるようにヒートシールする際に使用するシールドラム8eである。
【0044】
二つのシールドラム8eの両方が、上記のようにヒートシールしたい周縁5の形状と同一の凸部10を有するシールドラム8eとし、それらを回転させることによって、ヒートシールすることもできるが、どちらか片方のシールドラム8eを凹凸のないフラットなシールドラム8eとしても、ヒートシールすることができる。
【0045】
なお、この自動包装機8は底部どうしが連結した2つの固形製剤4包装体が帯状になって製造できるようにしているため、シールドラム8eの凸部10の形状は、本発明の二つの固形製剤包装体の底部どおしが連結した状態の周縁5の形状となっている。
【0046】
この二つのシールドラム8eが回転することにより、シールドラム8eが内設する部分に挟まれた上被覆部1と下被覆部2がヒートシールされる。
【0047】
そして、図11に示すように、固形製剤包装体の上被覆部1と下被覆部2の一部がヒートシールされたときに、供給ドラム8dから収容したい数の固形製剤4が落下し、その後、周縁5全部がヒートシールされ密閉状態となる。
【0048】
このように密閉された固形製剤包装体の底部どうしが連結した状態で帯状になって製造される。
【0049】
その後、センターミシン目カッター8hにより、底部どおしが連結している個所にミシン目9hを入れ、次に、横ミシン目カッター8iによって、固形製剤包装体の横部分となる箇所にミシン目9iを入れていく。
【0050】
図13は固形製剤包装体が自動包装機8によってヒートシールされ、ミシン目9h,9iを入れる工程を表した説明図である。
【0051】
このように、ミシン目9h,9iを入れることで、図14に示すように、ミシン目9h,9iに沿って切り離すことが可能になる。
【0052】
以上がこの発明の好適な実施形態であるが、この発明は上述の実施形態の構成に限定されるものではなく、形状、寸法、材質等を適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 上被覆部
2 下被覆部
3 収容部
4 固形製剤
5 収容部の周縁
6 剥離用つまみ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上被覆部(1)と下被覆部(2)の間の収容部(3)に固形製剤(4)を収容した略長方形の袋状であって、上被覆部(1)と下被覆部(2)はイージーオープン性及びヒートシール性を有するものとし、前記収容部(3)の周縁(5)において上被覆部(1)と下被覆部(2)をヒートシールし、上被覆部(1)と下被覆部(2)を剥離することにより開封できるようにしており、上被覆部(1)と下被覆部(2)のいずれか又は両方の厚みを厚くし、意図的に曲げようとしなければ曲がらない硬度にしていることを特徴とする固形製剤包装体。
【請求項2】
収容部(3)の周縁(5)の外側に、上被覆部(1)と下被覆部(2)とを剥離するための剥離用つまみ部(6)を設けた請求項1記載の固形製剤包装体。
【請求項3】
前記剥離用つまみ部(6)の、上被覆部(1)と下被覆部(2)の剥離方向の長さが異なる請求項2記載の固形製剤包装体。
【請求項4】
収容部(3)の周縁(5)の一部分を、外側に向けて凸状にヒートシールしている請求項1から3のいずれかに記載の固形製剤包装体。
【請求項5】
上被覆部(1)又は下被覆部(2)に視認できる表示を付している請求項1から4のいずれかに記載の固形製剤包装体。
【請求項6】
前記収容部(3)に収容している固形製剤(4)が複数個である請求項1から5のいずれかに記載の固形製剤包装体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−126458(P2012−126458A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232657(P2011−232657)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000111133)ニッポー株式会社 (24)
【Fターム(参考)】