説明

固有膜を備える高差圧電気化学セル

本発明は、高圧チャンバおよび低圧チャンバを包囲する高差圧電気化学セルであって、前記チャンバは膜によって分離され、膜はイオン伝導性、特にプロトン伝導性でかつ電気絶縁性であり、膜は、高圧チャンバ内に第1の表面および低圧チャンバ内に第2の表面を有し、第1の表面は第1の電極を備え、第2の表面は第2の電極を備え、第1および第2の電極は、電気回路を介して互いに導電的に接続される高差圧電気化学セルに関し、膜は少なくとも2つのイオン伝導性層を備え、前記イオン伝導性層の少なくとも1つは電気絶縁性であり、前記イオン伝導性層の少なくとも1つは導電性である。高差圧電気化学セルは、好ましくは、イオンガス圧縮器、イオンガス減圧器、または高圧電解槽である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンガス圧縮器、イオンガス減圧器、および高圧電解槽などの高差圧電気化学セルに関し、より詳細には、反応物クロスオーバ(reactant crossover)に対して改善された耐性を示す膜を備える膜電極接合体を備える高差圧電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0002】
イオン伝導性膜、特にプロトン伝導性膜が、当技術分野で知られている。一般に、膜の一方の側で、水素含有分子、たとえば水または分子水素は、触媒材料を使用して、プロトン、電子、および任意選択で他のガスを形成するために変換される。プロトンは、膜を通して輸送され、一方、電子は、膜上に存在する電極を通して除去される。電子は、外部回路を通過し、膜の他の側に存在する電極に給送され、そこで、電子は、アプリケーションに応じて、プロトンおよび任意選択で酸素のような他の成分と反応して、分子水素、水、または他の化合物を形成する。
【0003】
イオン伝導性膜は、種々の高差圧電気化学セルにおいて使用される。たとえば、イオン伝導性膜は、イオンガス圧縮器で使用される。イオンガス圧縮器のアノード側で、水素が反応して、電子とプロトンが形成される。プロトンは、膜を通過し、カソードで電子と反応して、分子水素を形成する。こうして、イオンガス圧縮器は、電気エネルギーを使用して低圧から高圧に水素を圧送する。
【0004】
イオン伝導性膜はまた、イオンガス減圧器で使用される。イオンガス減圧器では、イオンガス圧縮器の作動原理が反転され、それにより、高圧ガス内に貯蔵された圧縮エネルギーが、高圧から低圧へのガス流として収集される。
【0005】
なお別のアプリケーションでは、イオン伝導性膜はまた、高差圧電解槽で使用される。電解槽のアノード側で、水が反応して、酸素ガスとプロトンを形成する。プロトンは、膜を通過し、カソードで電子と反応して、分子水素を形成する。こうして、電解槽は、水を水素と酸素に変換する。
【0006】
米国特許出願公開第2004/0028965号明細書は、電気化学セルを備える燃料電池システムを開示しており、電気化学セルは、高い水素濃度を有する貯蔵ベッセルから低い酸素濃度を有する水素フロー回路へ、また、その逆に水素を搬送するために使用される。しかし、この従来技術のシステムでは、搬送セルにわたる圧力差が制限される。使用される材料および水素搬送セルの積重構造は、高い圧力差と共に使用するのに適さない。貯蔵ベッセルに搬送される水素をさらに加圧するために、別個の圧縮器が必要とされる。
【0007】
高差圧電気化学セルでは、高差圧が印加されるため、反応物クロスオーバが重要問題になる可能性があることがわかった。反応物クロスオーバは、電気化学セルの収量の減少をもたらすことになる。したがって、高差圧電気化学セルにおけるアプリケーション用の改善されたイオン伝導性膜、特にプロトンについて良好な浸透率を有するが、分子水素または分子酸素などの分子ガスについて低い浸透率を示す膜についての必要性が当技術分野に存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0028965号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
膜のイオン浸透率が悪影響を受けることなく、酸素または水素などの分子ガスのクロスオーバに敏感でない膜を備える高差圧電気化学セルを提供することが本発明の主要な目的である。
【0010】
前記アプリケーションで使用するのに適したイオン導電性膜を提供することが本発明の別の目的である。膜は、一方で、減少した反応物クロスオーバを示すべきであり、他方で、かなりの差圧に耐えることができるべきである。
【0011】
効率が増加し、耐久性が改善された、イオンガス圧縮器、イオンガス減圧器、および高圧電解槽装置を提供することが本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的が、以下でより詳細に明らかにされることになる本発明の種々の態様によって達成されることがわかった。
【0013】
本発明は、高圧チャンバおよび低圧チャンバを包囲する高差圧電気化学セルであって、前記チャンバは膜によって分離され、膜はイオン伝導性、特にプロトン伝導性でかつ電気絶縁性であり、膜は、高圧チャンバ内に第1の表面および低圧チャンバ内に第2の表面を有し、第1の表面は第1の電極を備え、第2の表面は第2の電極を備え、第1および第2の電極は、電気回路を介して互いに導電的に接続される高差圧電気化学セルを提供し、膜は少なくとも2つのイオン伝導性層を備え、前記イオン伝導性層の少なくとも1つは電気絶縁性であり、前記イオン伝導性層の少なくとも1つは導電性である。
【0014】
本発明はまた、高差圧電気化学セルで使用するのに適し、イオン伝導性、特にプロトン伝導性でかつ電気絶縁性である膜を提供し、膜は、少なくとも2つのイオン伝導性層を備え、前記イオン伝導性層の少なくとも1つは電気絶縁性であり、前記イオン伝導性層の少なくとも1つは導電性である。
【0015】
本発明はさらに、高差圧電気化学セルにおける本明細書で指定される膜の使用を提供する。
【0016】
本発明は、本発明による好ましい実施形態を概略的に示す添付図面を参照して、以下でより詳細に論じられるであろう。本発明は、これらの特定でかつ好ましい実施形態に制限されないことが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】イオン性水素ガス圧縮器用の高差圧電気化学セルを示す図である。
【図2A】本発明の第1の実施形態によるイオン伝導性膜を示す図である。
【図2B】本発明の第1の実施形態による膜電極を示す図である。
【図3A】本発明の第2の実施形態によるイオン伝導性膜を示す図である。
【図3B】本発明の第2の実施形態による膜電極を示す図である。
【図4】本発明のさらなる実施形態による膜電極接合体を示す図である。
【図5】本発明によるイオン減圧セルを示す図である。
【図6】図5の装置の断面を示す図である。
【図7】図5の装置の長手方向断面を部分的に示す図である。
【図8】図5のイオン減圧セルの膜電極接合体および低圧チャンバの断面を示す図である。
【図9】本発明による高圧ベッセルの第2の実施形態を長手方向断面で示す図である。
【図10】図9のベッセルの積重体のセルを略断面で示す図である。
【図11】本発明によるイオン減圧セル用の冷却システムを断面で示す図である。
【図12】本発明によるイオン減圧セル用の代替の冷却システムを断面で示す図である。
【図13】本発明によるイオン減圧セル用の冷却チャネルの代替の構成を断面で示す図である。
【図14】本発明によるイオン減圧セル用の冷却チャネルのさらなる代替の構成を断面で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明では、少なくとも2つのイオン伝導性層を備えるイオン導電性膜が使用され、前記イオン伝導性層の少なくとも1つは電気絶縁性であり、前記イオン伝導性層の少なくとも1つは導電性である。本発明の文脈では、電気絶縁性である層は、膜平面に垂直な方向に絶縁性がある。
【0019】
膜は全体として、イオン伝導性、特にプロトン伝導性でかつ電気絶縁性である。
【0020】
電気絶縁性層と導電性層の組合せが、膜が使用されるときにプロトンについての浸透率に影響を及ぼすことなく、分子酸素および分子水素についての減少した浸透率を有する膜を提供することが明らかになった。これは、高差圧電気化学セルは、たとえば、イオンガス圧縮器、イオンガス減圧器、および高圧電解槽の性能の増加をもたらす。これはまた、導電性充填材料、たとえばカーボンナノチューブが膜に対する補強材として働くことで、機械的応力に対する膜の耐性が増加するため、システムの耐久性の改善をもたらす可能性がある。
【0021】
イオン伝導性膜は、少なくとも2つのイオン伝導性層を備え、前記イオン伝導性層の少なくとも1つは電気絶縁性であり、前記イオン伝導性層の少なくとも1つは導電性である。
【0022】
本発明で使用される膜は、分子ガス、たとえば分子酸素および分子水素について減少した浸透率を有する。理論により拘束されるつもりはないが、これは、以下のメカニズムによってもたらされると信じられている。イオン伝導性層が、分子水素に接触状態にある膜の表面、たとえば、電解槽の水素チャンバ内の膜の表面に存在する場合、分子水素は、膜を浸透し始める可能性がある。イオン伝導性層では、水素は、反応して、プロトンと電子を形成する。プロトンは、イオン伝導性膜を通して輸送される。電子は、伝導性層を通して電極の背面に輸送される。その結果、導電性層内の局所水素濃度が、これらの反応によって特定の場所でかなり減少する。これらの場所は、同様に反応する可能性があるさらなる分子水素用のドレインを構成する。
【0023】
同様に、本発明による膜は、分子酸素用のバリアである。膜がプロトン伝導性でかつ電子伝導性であるため、膜内で溶解し、水素側に拡散する分子酸素は、触媒部位に存在するプロトンと膜内で反応しうる。これは、たとえば高圧電解槽の場合に、チャンバの1つが酸素を含む電気化学セルについて特に重要である。
【0024】
装置が使用中であるとき、これは、簡潔に言えば、膜を浸透している分子水素および分子酸素を遮り、それを装置の効率に寄与させることをもたらす。導電性層は、膜を通した分子水素および分子酸素の搬送に対するバリアとして働く。
【0025】
本明細書の文脈内で、イオン伝導層は、65℃でかつ100%RHにおいて、少なくとも0.01S/cmのイオン伝導率、特にプロトン伝導率を有する層である。電気絶縁層は、少なくとも10kV/mmの絶縁破壊強度を有する層である。当業者に明らかになるように、導電性層は、好ましい実施形態の電気化学セルの使用条件下で、絶縁破壊が起こらず、また、電気絶縁性層を通る電流漏洩が、動作中の平均電流の5%未満、通常1%未満であるようなものであるべきである。好ましい実施形態の高差圧電気化学セルの通常の電流密度は、5.000〜20.000A/mの範囲である。電気絶縁性層を通る最大電流は、一般に1000A/m、より詳細には500A/m、なおより詳細には100A/mである。
【0026】
イオン伝導性で電気絶縁性の膜を製造するのに適した材料は、当技術分野で知られており、本質的に無機または有機であってよく、有機材料は一般にプラスチックである。適した膜は、たとえばKH(POH)−SiO複合物のようなペロブスカイト膜などのセラミック膜を包含する。適したプラスチック膜は、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリフェニレンエーテル、たとえばスルホン化ポリフェニレンエーテルまたはPPE、およびポリフェニレン酸化物またはPPOを包含する。たとえば、スチレン、塩化ビニル、およびエテンを有するエテンスルホン酸の共重合体はまた、たとえばポリビニルアルコールのスルホン化ポリマー(硫酸エステル)、または、より一般的には、硫酸ヒドロキシ官能性ポリマー、スルホン化芳香性ポリアミドおよびポリイミド、および、より一般的には、スルホン酸官能性縮合ポリマーであってよいように使用されてもよい。さらに適したポリマーは、強酸、たとえばポリビニルピリジン、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダゾールを含むポリイミダゾールを有するベーシックポリマーの複合体、および、ジアリルアンモニウムポリマーを含む。水の存在下で使用されるとき、適したポリマーの例は、フッ化スルホン酸ポリマー(PFSA)、スルホン化ポリエーテルスルホン(SPES)ポリマー、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)(SPEEK)ポリマー、スルホン化ポリエーテルケトン(SPEK)、スルホン化ポリ(エーテルケトンケトン)(SPEKK)、およびスルホン化ポリ(エリレンエーテルスルホン)(SPSU)を含む。
【0027】
そのように所望される場合、電気絶縁層は、スペーサ粒子、すなわち層が所定の厚さを有することを保証するのに役立つ粒子を含む。これは、電気絶縁層が非常に薄い、たとえば0.1〜10ミクロンの範囲にある可能性があるため重要である。電気絶縁層は、薄過ぎるセクションを含むべきでない。その理由は、そのことが層の絶縁破壊強度に影響を及ぼすからである。0.1ミクロンと10ミクロンとの間のサイズのスペーサ粒子の使用は、電気絶縁層が、局所的に規定値より薄くないことを保証することになる。繊維性スペーサ粒子は、膜の機械的特性を向上するため好ましい。
【0028】
機械強度および耐久性のような特性を改善するために、膜は、繊維、たとえば、ガラス繊維(不織布)織布、PTFE(不織布)織布、たとえばSolupor(登録商標)のようなポリマーまたはシリカなどの強化粒子の多孔質フィルムまたは層によって補強されてもよい。そのように所望される場合、補強材料またはスペーサ材料は、使用される場合、膜層との改善された整合性を保証するために前処理されてもよい。
【0029】
本発明は、高差圧電気化学セルに関する。本明細書の文脈内で、高差圧電気化学セルは、電気化学セルの使用時に高圧チャンバと低圧チャンバとの間に少なくとも1MPaの圧力差を有する。一実施形態では、使用時の圧力差は、少なくとも10MPa、より詳細には少なくとも20MPa、なおより詳細には少なくとも40MPaである。一実施形態では、増加した圧力差は少なくとも60MPaである。圧力についての上限は、重要ではない。200MPaの値が述べられてもよい。60〜90MPaの好ましい範囲が述べられてもよい。
【0030】
高圧チャンバと低圧チャンバとの間の圧力差に耐えるために、本発明の好ましい実施形態では、支持構造が設けられてもよい。これは、たとえば、膜の低圧側の多孔質支持構造の形態でありうる。支持構造は、膜の低圧側と膜の高圧側との間の圧力差に耐えることができるべきである。この圧力差は、圧縮器/減圧器の場合、200MPaほどの高い値であるが、より典型的には80MPaである。一般に、膜の一方の側と他方の側との間の圧力差は、少なくとも1MPa、詳細には1〜200MPaの範囲、より詳細には60〜90MPaの範囲にある。本発明はまた、この構造の膜電極接合体に関する。
【0031】
一実施形態では、多孔質支持構造は、低圧チャンバ内の膜に隣接する層状構造であり、層状構造は、電極側から始まって、1ミクロン未満の孔を有する多孔質浸透性層、1〜100ミクロンの範囲の径を有する孔を有する多孔質浸透性層、および固形機械剛性層を備える。装置の構成に応じて、固形機械剛性層は、非多孔質でありかつ反応物に対して不浸透性であってよい。この実施形態では、反応物は、多孔質層を通して材料の側に輸送されることになる。この構造は、たとえば、次の通りに得られうる。第1のステップにて、高いガス浸透率および十分な機械強度を有するマクロ多孔質層が設けられる。適した材料は、たとえば、青銅、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、またはアルミニウムのような焼結金属粉末である。この焼結金属粉末の上部に、十分な機械強度および表面に垂直な方向への十分なガス浸透率を有するマクロ多孔質層が設けられる。マクロ多孔質層の孔は、通常、1ミクロンである。このマクロ多孔質支持層の上部に、多孔質電極層が塗布される。この多孔質電極層は、適した触媒を含み、プロトン伝導性であり、また、導電性である。適した材料は、微小多孔質パラジウム層またはパラジウムロジウム合金などのパラジウム合金層である。このカソード層の厚さは、通常、数ミクロンである。
【0032】
膜の種々の層の分子ガス、特に分子水素および分子酸素についての浸透率は、できる限り低くあるべきである。一般に、これは、膜層が非多孔質であることを意味することになる。万一1つまたは複数の膜層内に孔が存在するならば、孔構造は、分子ガスについての浸透率が実質的に影響を受けないようなものであるべきである。これは、一般に、孔構造が不連続であること、および、任意の孔が、膜層の厚さより十分に小さな径を有することを意味することになる。
【0033】
一実施形態では、膜のイオン伝導性で導電性の層は、イオン伝導性マトリクスを備え、導電性充填材がマトリクス内に分散する。イオン伝導性マトリクスは、たとえば、ポリマーマトリクスである。適したポリマーは、絶縁層用の先に論じたポリマーである。
【0034】
導電性充填材は、炭素などの粒状導電性材料を含む。本明細書では、用語、粒状物は、繊維性材料の使用も包含する。充填材の量は、ポリマーマトリクス内で充填材が粒子の導電性ネットワークを形成するように選択されるべきである。充填材の量が少な過ぎる場合、粒子のネットワークは、形成されないことになり、層の導電率は、悪影響を受ける。他方、充填材の量が多過ぎる場合、イオン伝導性マトリクスの量が少な過ぎ、層のイオン伝導率が影響を受ける。さらに、充填材の量が多過ぎる場合、マトリクスの量が、少なくなり過ぎるため、連続した膜層を得ることが難しくなる。これは、分子水素についての浸透率の増加をもたらす可能性がある。適切な量の充填材は、マトリクスの特質、充填材の導電率、ならびに同様にその粒子サイズおよび形状に依存する。適した充填材は、カーボンナノチューブおよび炭素粒子などの炭素材料を含む。適した炭素材料の例として、Akzo NobelのKetjenBlack EC 600またはCabotのVulcanが述べられてもよい。上記に基づいてイオン伝導性で導電性の層を調製することは、当業者の範囲内である。
【0035】
分子水素からプロトンおよび電子への、また、分子酸素およびプロトンから水への、イオン伝導性で導電性の層内での反応は、層内に存在する触媒活性部位によって触媒される。これらの部位は、たとえば、電極から導電性層への、白金などの何らかの触媒の移動によって自動的に形成する可能性がある。しかし、これらの部位は、製造中に膜内に触媒活性材料を組み込むことによって故意に形成されてもよい。一実施形態では、これは、触媒活性材料、たとえば白金を充填材材料上に塗布することによって行われてもよい。
【0036】
本発明の一実施形態では、導電性層内の触媒部位の濃度は、層の断面にわたって不均質であり、濃度は、層の電極側で低く、層の、電気絶縁性層の隣接する側で高い。この実施形態では、プロトンを形成する分子水素の反応は、電極からさらに離れて起こる。これは、膜内への分子ガス用の駆動力の形成を減少させる。一実施形態では、導電性層は、2つ以上の層から構築され、外側層、すなわち膜の電極側の層は、表面からさらに離れた層の含有量より少ない触媒活性材料の含有量を示し、触媒材料の含有量は、電極からの距離の増加に伴って増加する。
【0037】
本発明の1つの他の実施形態では、導電性層内の触媒部位の濃度はまた、層の断面にわたって不均質であり、濃度は、層の電極側で高く、層の、電気絶縁性層の隣接する側で低い。この実施形態では、プロトンを形成する分子水素の反応は、電極の近くで起こる。この実施形態では、導電性層は、2つ以上の層から構築され、外側層、すなわち膜の電極側の層は、表面からさらに離れた層の含有量より多い触媒活性材料の含有量を示し、触媒材料の含有量は、電極からの距離の増加に伴って減少する。
【0038】
全体の膜は、一般に、25〜1000ミクロン、より詳細には50〜500ミクロンの厚さを有する。導電性層は、一般に、膜の総合厚さの1%と99%との間を構成する。より具体的には、導電性層が膜の実質的な部分を構成することが好ましい場合がある。電気絶縁性層は、絶縁破壊強度が最大セル電圧より高い限り、比較的薄くてもよい。したがって、一実施形態では、導電性層は、膜の総合厚さの30%と90%との間、より詳細には50%と80%との間を構成する。
【0039】
導電性層は、分子酸素に接触する膜の表面、たとえば、電解槽の水チャンバ内に存在する膜の表面に存在する場合、導電性層は、過酸化物および酸素ラジカルの形成を低減するのに役立つ。これらの化合物の形成は、膜が高差圧電気化学セルとして使用されるため、膜の耐用年数を減少させることが知られている。
【0040】
この実施形態では、導電性膜層は、反応O+4H+4e→2HOによって、本発明による高差圧電気化学セル、特に高圧電解槽のアノード側からカソード側に向かって分子酸素が拡散するのを防止するのに寄与する。本発明の特に有利な実施形態では、本発明による膜は、第1の導電性でイオン伝導性の層と第2の導電性でイオン伝導性の層との間に挿入された電気絶縁性でイオン伝導性の層を備える。
【0041】
高圧電解槽での使用時に、第1の導電性でイオン伝導性の層は、水素形成電極(カソード)から酸素形成電極(アノード)に向かう分子水素の搬送に対する有効バリアとして働き、一方、第2の導電性でイオン伝導性の層は、酸素形成電極(アノード)から水素形成電極(カソード)に向かう分子酸素の搬送に対する有効バリアとして働く。
【0042】
やはり、膜の第2の導電性でイオン伝導性の層内の触媒活性部位の存在は、反応を補助し、本発明の一実施形態では、これらの部位は、この層内に存在する。導電性でイオン伝導性の層の特質に関する詳細について、先に述べたことが参照される。やはり、触媒活性材料が膜の厚さにわたって不均一であることが好ましい場合がある。
【0043】
本発明の一実施形態では、膜が使用され、膜は、アノード側から始まって、第1の導電性でイオン伝導性の層、第1の導電性でイオン伝導性の層内の触媒活性材料の濃度より高い触媒活性材料の濃度を有する第2の導電性でイオン伝導性の層、電気絶縁性でイオン伝導性の層、第3の導電性でイオン伝導性の層、および、第3の導電性でイオン伝導性の層内の触媒活性材料の濃度より低い触媒活性材料の濃度を有する第4の導電性でイオン伝導性の層を備える。
【0044】
本発明の1つの他の実施形態では、膜が使用され、膜は、アノード側から始まって、第1の導電性でイオン伝導性の層、第1の導電性でイオン伝導性の層内の触媒活性材料の濃度より低い触媒活性材料の濃度を有する第2の導電性でイオン伝導性の層、電気絶縁性でイオン伝導性の層、第3の導電性でイオン伝導性の層、および、第3の導電性でイオン伝導性の層内の触媒活性材料の濃度より高い触媒活性材料の濃度を有する第4の導電性でイオン伝導性の層を備える。
【0045】
一実施形態では、高圧電解槽で使用されるときの、膜のアノード側すなわち水チャンバの側のイオン伝導性層は、高圧電解槽内の膜のカソード側すなわち水素チャンバの側の導電性層内の触媒活性材料の濃度より高い触媒活性材料のローディングを有する。一般に、アノード側の層内の触媒活性材料の濃度は、それが堆積される炭素支持体の重量に関して計算された0.01重量%と60重量%との間である。一般に、カソード側の層内の触媒活性材料の濃度は、それが堆積される炭素支持体の重量に関して計算された0.01重量%と60重量%との間である。
【0046】
本発明のさらなる実施形態では、イオン伝導性で電気絶縁性の層は、たとえば規則的または不規則的な波状または鋸状パターンの形態でプロファイルを持つあるいは任意の他の非平坦プロファイルである。この実施形態の要点は、電気絶縁性層にわたる電界の方向が、電気絶縁性層の全表面にわたってプロトンの輸送方向に平行でかつ反対であることを保証することによって膜を通したプロトンの輸送が改善されることである。
【0047】
本発明の一実施形態では、膜は、2つの電気絶縁性層を備え、その間に導電性層を有し、導電性層は触媒活性材料を備える。この実施形態では、電気絶縁性層を通過する酸素は、絶縁性層間の導電性層内で水素と反応して、水を形成する。導電性層の存在は、電気化学セルの効率に寄与しない(電流が生成されない)が、酸素ラジカルおよび過酸化物の除去に寄与し、セル寿命を増加させる。この実施形態では、膜は、順次に、電極から始まって、導電性層、電気絶縁性層、導電性層、電気絶縁性層、および好ましくは、さらなる導電性層を備える。全ての導電性層は、少なくとも触媒活性なその断面の一部を覆う。
【0048】
本発明に従って使用される膜は、多層フィルムの製造のために当技術分野で知られている方法によって製造されてもよい。適した方法の例は、共押出、溶液鋳造、スロットダイコーティング、スライドコーティングなどを含む。たとえば、膜は、表面、たとえばフィルムまたはロール上で、適切な組成物を有するポリマー溶液を順次鋳造し、次の溶液を塗布する前に、溶液が固化することを可能にすることによって製造されてもよい。
【0049】
本発明による高差圧電気化学セルでは、先に論じた膜は、第1の電極を備える第1の表面および第2の電極を備える第2の表面を有する、先に論じた膜を備える膜電極接合体(MEA)の形態であることになる。イオンガス圧縮器での使用時、低圧チャンバ内に配置された第1の電極は、イオン性ガス、たとえば水素に接触し、アノードの役をすることになる。高圧チャンバ内に配置された第2の電極は、同じイオン性ガス、たとえば水素に接触し、カソードの役をすることになる。イオンガス減圧器での使用時、高圧チャンバ内に配置された第1の電極は、イオン性ガス、たとえば水素に接触し、アノードの役をすることになる。低圧チャンバ内に配置された第2の電極は、同じイオン性ガス、たとえば水素に接触し、カソードの役をすることになる。電解槽での使用時、第1の電極は、水に接触し、アノードの役をすることになる。第2の電極は、分子水素に接触し、カソードの役をすることになる。
【0050】
電極は、許容可能な電気抵抗損を有するのに十分な導電率を有する。このために、十分に高い比導電率および十分な厚さを有する電極が使用される。
【0051】
任意選択で、導電性触媒不活性材料と共に導電性触媒材料を含む電極が使用されうる。触媒材料は、イオンおよび電子への反応物の変換を保証することになり、導電性材料は、電子の輸送を保証する。別の実施形態では、そのように望まれる場合、一方または両方の電極の導電率は、電極の上部に導電性が高い電流分布材料またはグリッドを設けることによってさらに改善されうる。
【0052】
第1の電極は、たとえば分子水素のプロトンおよび電子への変換を触媒することができる材料を含む導電性層である。適した触媒は全て、白金、パラジウム、および他の白金族金属ならびにその合金のような、知られているイオン化触媒である。同様に、好ましい反応に向かう触媒活性があることが知られている非貴金属および遷移金属酸化物が使用されうる。一実施形態では、電極は、パラジウムまたはパラジウム合金の薄フィルムを備える。第1の電極は、一般に、0.2〜10ミクロンの範囲、より詳細には1〜5ミクロンの範囲の厚さを有することになる。
【0053】
第2の電極は、分子水素を形成するために、プロトンと電子との反応を触媒することができる材料を含む導電性層である。適した触媒は、当技術分野で知られており、たとえば白金、パラジウム、他の白金族金属、および一部のパラジウム合金を含むが、この反応で触媒活性を示す多くの他の材料も含む。好ましくは、第2の電極は、たとえば100MPa以上、たとえば200MPa以上の圧力に耐性がある多孔質構造を有することによって、分子水素およびプロトンについて浸透性がある導電性層である。第2の電極は、一般に、0.5〜100ミクロンの範囲、より詳細には1〜10ミクロンの範囲、通常2〜5ミクロンの範囲の厚さを有することになる。
【0054】
一実施形態では、プロトン伝導性膜は、たとえば水素浸透性支持体層を備えうる。支持体構造は、たとえば、第2の電極に重なり、第2の電極の側から始まって、1つまたは複数の水素浸透性層および高圧チャンバと低圧チャンバとの間の圧力差に耐えるのに十分に剛性がある機械剛性層を備えうる。支持体層は、水素移動を可能にする孔を有する導電性で熱伝導性の材料で作られるべきである。
【0055】
一実施形態では、本発明は、導電性層とイオン伝導性層との間に挟まれた電気絶縁性でイオン伝導性の層からなる膜を有するイオンガス圧縮器に関する。この実施形態では、大きな差圧による膜内の分子水素のクロスオーバが低減される。
【0056】
別の実施形態では、本発明は、導電性層とイオン伝導性層との間に挟まれた電気絶縁性でイオン伝導性の層からなる膜を有するイオンガス減圧器に関する。この実施形態では、大きな差圧による膜内の分子水素のクロスオーバが低減されることになる。
【0057】
別の実施形態では、本発明は、水チャンバ内の膜の表面の側に導電性層を有する高圧電解槽に関し、電気絶縁性層は、水素チャンバ内に存在する膜の側に存在する。この実施形態では、水チャンバ内の酸素ラジカルおよび過酸化物の形成が低減されることになる。一実施形態では、本発明による電解槽は、水チャンバおよび水素チャンバを包含し、前記チャンバは膜によって分離され、イオン伝導性、特にプロトン伝導性でかつ電気絶縁性であり、膜は、水チャンバ内に第1の表面および水素チャンバ内の第2の表面を有し、第1の表面は第1の電極を備え、第2の表面は第2の電極を備え、第1および第2の電極は、電気回路を介して互いに導電的に接続され、膜は少なくとも2つのイオン伝導性層を備え、前記イオン伝導性層の少なくとも1つは電気絶縁性であり、前記イオン伝導性層の少なくとも1つは導電性である。
【0058】
別の実施形態では、本発明は、水素チャンバ内の膜の表面の側に電気絶縁性層を有する高圧電解槽に関し、導電性層は、水チャンバ内に存在する膜の側に存在する。この実施形態では、分子水素についての膜の浸透率は、低減されることになる。
【0059】
さらなる実施形態では、導電性層は、カソードフローフィールド内の膜の表面の側に存在し、導電性層は、アノードフローフィールド内の膜の表面の側に存在し、絶縁性層は、2つの導電性層間に挿入される。この実施形態では、水チャンバ内での酸素ラジカルおよび過酸化物の形成ならびに分子水素についての膜の浸透率が低減されることになる。
【0060】
本発明はまた、水素を圧縮するプロセスに関し、水素含有ガスが、イオンガス圧縮器の低圧チャンバに給送され、電流が、前記イオンガス圧縮器の電気回路に提供され、水素が、イオンガス圧縮器の高圧チャンバ内に圧送される。
【0061】
本発明はまた、水素を減圧するプロセスに関し、水素含有ガスが、イオンガス減圧器の高圧チャンバに給送され、電流が、前記イオンガス減圧器の電気回路から引き出され、水素が、減圧されてイオンガス減圧器の低圧チャンバに入る。
【0062】
本発明はまた、水を水素と酸素に変換するプロセスに関し、水が、本発明の電解槽の水チャンバに給送され、電流が、前記電解槽の電気回路に提供され、酸素が、電解槽の水チャンバから取出され、水素が、電解槽の水素チャンバから取出される。
【0063】
本発明による高差圧電気化学セル、特にイオンポンプまたはイオン減圧器は、水素含有ガスを用いて動作しうる。水素含有ガスは、分子水素の少なくとも5モル%を含む。一実施形態では、水素(本発明のために、水素の少なくとも95モル%、特に少なくとも98モル%を含む水素ガスである)が使用される。本明細書では、本発明は、水素を参照して説明されることになるが、他の成分をさらに含む水素含有ガスの使用が考慮されてもよい場合が当業者には明らかであろう。一部の実施形態では、水素の少なくとも50モル%、より詳細には少なくとも70モル%、なおより詳細には少なくとも80モル%、なおより詳細には少なくとも90モル%を含む水素ガスの使用が好ましい場合がある。
【0064】
一実施形態では、本発明は、少なくとも1つの高圧チャンバおよびイオン伝導性膜によって高圧チャンバの少なくとも1つから分離された少なくとも1つの低圧チャンバを含む複数のチャンバを備えるイオンガス圧縮器またはイオンガス減圧器である高差圧電気化学セルを対象とし、チャンバのうちの少なくとも1つは、チャンバの2つの対向する側においてイオン伝導性膜によって境界付けられ、イオン伝導性膜はそれぞれ、高圧チャンバのうちの1つの高圧チャンバ内の第1の表面および低圧チャンバのうちの1つの低圧チャンバ内の第2の表面を有し、第1の表面は第1の電極を備え、第2の表面は第2の電極を備え、第1および第2の電極は、外部電気回路要素によって導電的に接続される。この文脈では、用語、外部は、電気回路要素が、膜自体を通して延びないことを意味する。
【0065】
プロトン伝導性膜は、たとえば、高圧チャンバまたは低圧チャンバの一方を完全に閉囲しうる。このために、プロトン伝導性膜は、たとえば、管状でありうる。
【0066】
低圧チャンバは、たとえば、高圧貯蔵ベッセルまたはタンクなどの高圧チャンバ内に一体的に配置されうる。好ましくは円柱であるこうした貯蔵タンクは、高圧水素供給ラインおよび/または水素ガス放出ラインにタンクを接続するためのコネクタブロックによって閉鎖された、一端または両端の開口、および、電気回路要素に接続するための電気接点を有しうる。これらのアダプタの一方または両方は、高圧チューブを備え、中心高圧チャンバと同軸低圧チャンバとの間の圧力差に抗することができる1つまたは複数の管状イオン減圧セルに接続されうる。本発明による装置のこうした実施形態は、冷却および/または加熱のために使用されうる、同軸熱交換チャネルおよび/または内部熱交換チューブを備えてもよい。管状イオン減圧セルは、たとえば、溶接またははんだ付けによって、または、高圧ガスケットと組合せた機械接続によって端部アダプタに接続されうる。管状装置の圧力変化および温度変化ならびに高圧タンクの温度は、動作中に長さ変化をもたらすことになる。この問題は、たとえば、管状イオン減圧セルを一方の側に固定し、摺動固定具を他方の側に設けることによって解決されうる。任意選択で、コネクタブロックは、高圧入口、圧力低減器、過流防止弁、ニードル弁、圧力および/または温度センサ、過圧逃がし弁、低圧出口、DC接点、接地および/または電力および制御電子部品などのさらなる機構を備えうる。
【0067】
あるいは、圧力チャンバは、プロトン伝導性膜の積重体を備えることができ、各膜は、表面カソードと表面アノードとの間に挟まれ、第1の多孔質層は、表面アノードに重なり、高圧チャンバと開放連通状態にあり、低圧チャンバに対してシールされ、一方、表面カソードは、低圧チャンバと開放連通状態にある第2の多孔質層によって覆われ、高圧チャンバに対してシールされる。積重体内の第1の膜上の第1の多孔質層は、水素(H)について不浸透性である導電性層によって、第1の膜の上で第2の膜の第2の多孔質層から分離される。こうして、直列接続が得られ、膜電極接合体のアノードからの電子が、より高い積重された膜電極接合体のカソードに移動して、より高い積重された膜によって伝導されたプロトンと再結合しうる。上部膜電極接合体は、外部電気回路によって最も下側の膜電極接合体に接続されうる。
【0068】
表面アノードは、多孔質構造に部分的に貫入しうる。これは、表面積が増加した粗構造化アノードをもたらす。これは、アノードの圧力耐性を改善することがわかった。同様に、カソードは、隣接する多孔質構造に部分的に貫入することができ、同様に、カソードの改善された圧力耐性をもたらす。
【0069】
あるいは、低圧チャンバの1つまたは複数は、2つの高圧チャンバ間に挟まれうる。平行なプロトン伝導性膜が使用されて、サンドイッチ状の低圧チャンバおよび/または高圧チャンバを境界付けうる。平行膜は、たとえば、平坦膜でありうる。一実施形態では、低圧チャンバは、両側に膜電極接合体および高圧チャンバがある平坦多孔質板である。対称性のため、一方の側の高圧は、他方の側の同じ高圧によって対抗される。
【0070】
高差圧電気化学セルがイオンガス減圧器である場合、動作時、高圧チャンバは、一般に、少なくとも0.6MPa、特に0.6MPaと200MPaとの間、より詳細には1MPaと100MPaとの間、なおより詳細には20MPaと90MPaとの間、または60MPaと90MPaとの間の圧力の加圧水素で充填されうる、一方、低圧チャンバは、たとえば、高圧チャンバの圧力より低い、特に1MPa未満、より詳細には0.15MPaと0.6MPaとの間の圧力の水素を含んでもよい。圧力は、チャンバに接続された、知られている機器によって測定されうる。
【0071】
本発明は、本発明による好ましい実施形態を概略的に示す添付図面を参照してさらに示されるであろう。本発明は、これらの特定のまた好ましい実施形態にいずれの点でも制限されないことが理解されるであろう。
【0072】
図1では、イオン性水素ガス圧縮器301用の高差圧電気化学セルは、2つの主要な表面を有する中央ポリマー電解質膜302と、2つの別個の触媒層303、304、たとえばアノード側の白金などの適した水素酸化反応(HOR)触媒およびカソード側の白金などの適した水素還元反応(HRR)触媒とを備え、それぞれの触媒層は、アノードおよびカソードとそれぞれ呼ばれる2つの主要な表面の一方に付着した内側層を有する。2つの微小多孔質支持体層305、306、たとえば高いガス浸透率および十分な機械強度を有する焼結金属層は、電極触媒層303、304の外側表面に付着される。電極303、304は、低圧チャンバ307および高圧チャンバ308内にそれぞれ存在する。
【0073】
低圧チャンバ307は、気体水素用の入口(図示せず)を有する。高圧チャンバ308は、気体水素用の出口(図示せず)を有する。
【0074】
ポリマー電解質膜302、アノード触媒層303、およびカソード触媒層304は共に、膜電極接合体(MEA)を構成する。
【0075】
本発明の実施形態では、膜302は、少なくとも2つのイオン伝導性層302Aおよび302Bを備える。イオン伝導性層302Aは導電性であり、他の層302Bは電気絶縁性である。図302Aおよび302Bは、それぞれ、こうした膜302ならびにアノード触媒層303とカソード触媒層304との間に配設されたこの多層膜を備えるMEAを示す。好ましくは、両方の膜層は、分子水素燃料ガス、存在する場合酸素ガスに対して実質的に浸透性がある。
【0076】
本発明のさらなる実施形態では、第1の導電性でイオン伝導性の層302Aと第2の導電性でイオン伝導性の層302Cとの間に挿入された電気絶縁性でイオン伝導性の層302Bを備える膜302が設けられる。こうした膜302およびこうした膜を備える膜電極接合体が、図3Aおよび3Bに示される。第1および第2の導電性でイオン伝導性の層302A、302Cは同じでも異なってもよい。
【0077】
図4では、導電性層302A、302Cは、導電性サブ層302A1、302A2および302C1および302C2からそれぞれ構成される。外側層302A1および302C1内の触媒活性材料の濃度は、内側層302A2および302C2内の触媒活性材料の濃度より低い。
【0078】
イオン圧縮器/減圧器の種々の実施形態は、以下の図5〜14を参照して論じられるであろう。
【0079】
図5は、たとえば自動車車両の燃料電池用の高圧水素タンク1を備える、本発明によるイオン減圧セルを示す。通常、こうした水素圧力タンクは、約2メートルの長さおよび約0.4〜0.5メートルの直径を有する。タンク1は、半球端部セクション3、4で蓋をされた円柱本体2を備える。端部セクションの一方3は、以降で説明されるように、種々のコネクタを装備したコネクタブロック6で塞がれた開口5を備える。タンク1の内部は、加圧水素Hを含む高圧チャンバ7を形成する。
【0080】
タンク1内には、膜チューブ10が、円柱本体2と同軸配置で一方の端部セクション4から対向する端部セクション3まで延在する。膜チューブの外径は約20mmである。図4により詳細に示すように、減圧チューブは、機械剛性耐圧管状壁12によって囲まれた中央低圧チャンバ11を備え、機械剛性耐圧管状壁12は、低圧チャンバ11内の圧力と圧力タンク1内の圧力と間の少なくとも圧力差に抗する。管状壁12は、たとえば、鋼グレード316などのステンレス鋼から構成されうる。管状壁12は、半径方向に延在するアパーチャ13を備える。その外側表面で、管状壁12は、1ミクロンより大きい孔を有するマクロ多孔質支持体層14でコーティングされる。この支持体層は、たとえばスラリーディッピングおよび焼結によって塗布された金属コーティングであり、たとえば約1mmの平均層厚を有しうる。このマクロ多孔質支持体層14の上部には、1ミクロン未満の孔を有する金属コーティングの焼結微小多孔質支持体層15が塗布される。この微小多孔質支持体層の上部には、第VIII族金属カソード層16が、たとえば真空スパッタリングによって塗布される。スパッタリングプロセス中、チューブは、均一なコーティング厚を得るために回転される。この多孔質カソード層16は、適した触媒を含み、プロトンならびに電子について伝導性がある。このために、カソード層16は、たとえば、白金、パラジウム、またはパラジウム合金層でありうる。このカソード層の厚さは、約1〜3ミクロンである。カソード層の上部には、たとえばセラミックまたはポリマー材料から構成され、100〜10000ミクロンの範囲の平均層厚を有する非多孔質のプロトン伝導性で電気絶縁性の膜層17が存在する。この電解質膜17の上部には、アノード層18が、約2ミクロンの厚さでスパッタリングされる。アノード層は、たとえば、パラジウムまたはパラジウム合金から構成されうる。銅グリッド19が、たとえば無電解銅めっき浴内でアノード層18上に塗布される。
【0081】
膜チューブ10の外側端部20、21は、端部壁によって閉鎖される。外側端部20は、接続ブロック6内に保持される。この外側端部の端部壁22は、コネクタブロック内の開口23を介して低圧チャンバ11からたとえば自動車車両の燃料電池へ減圧水素ガスを放出する放出ラインに動作可能に接続された放出開口を備える。放出ラインは弁(図示せず)によって閉鎖されうる。接続ブロック6はさらに、高圧水素供給ラインに接続するための入口開口24を備え、アノードおよびカソード層16、18を電気回路要素にそれぞれ接続する電気接点25を提供する。任意選択で、接続ブロック6はまた、圧力センサおよび/または温度センサなどの1つまたは複数のセンサ、過流防止弁、圧力開放弁(PRD)、および/またはニードル弁などの弁、流量制限器、高圧チャンバ内のガス温度を制御する冷却フィン、ならびに電力および制御電子部品を提供しうる。
【0082】
圧力変化および温度変化のため、膜チューブ10の長さは、高圧タンク1の長さに対して経時的に変化しうる。これを補償するために、接続ブロック6に接続される外側端部に対向する膜チューブ10の外側端部は、摺動固定具(図示せず)によって支持される。
【0083】
図5〜8の実施形態では、高圧タンク1は、1つの膜チューブ10だけを備える。他の実施形態では、2つ以上の膜チューブ10が、たとえば平行配置で使用されうる。たとえば、1つの中央減圧チューブ10は、高圧タンク1内で同軸に配置され、たとえば同じ径であってよい5つまたは6つの等距離配置された減圧チューブで囲まれうる。
【0084】
図9は、本発明による高圧ベッセル100を示す。ベッセル100は、たとえば800MPaの圧力下で、加圧水素ガスを充填される。ベッセル100は、イオン減圧セル103の積重体102で塞がれた出口101を備える。積重体102の上には、カバー板104が存在する。カバー板104は、たとえばタイロッドまたは引張り部材または同様なもの(図示せず)によって圧力ベッセル100内に固定されうる。積重体102内の中央に、また、ベッセル100と同軸に、管状低圧チャンバ105が配置される。
【0085】
図10は、イオン減圧セル103のうちの1つを、より詳細な断面で示し、矢印は、水素の流れをHおよびプロトンとしてそれぞれ示す。各セル103は、高圧ベッセル内部112に面する外側周縁111および低圧チャンバ105の軸方向セグメントを形成する内側開口113を有する。セル103は、開口113から周縁111まで延在するアルミニウム箔ベース層115を備える。ベース層115の上部には、開口113から、外側周縁111から短い距離にある地点まで延在する多孔質アルミニウム層116が存在し、多孔質アルミニウム層116は、高圧ベッセル内部112から多孔質層116をシールするアルミニウムのシーリングセグメント117によって蓋をされる。多孔質層116の上部には、共に約1μmの厚さを有するアノード表面120とカソード表面121との間に挟まれた約25μmのプロトン伝導性膜119を備える膜電極接合体118が存在する。膜電極接合体118と並んで、また、シーリングセグメント117の上部に、圧力ベッセル内部112から膜電極接合体をシールするシーリングストリップ122が存在する。膜電極接合体118およびシーリングストリップ122の上部には、銅合金の多孔質層123が存在する。膜電極接合体118および多孔質銅合金層123は、高圧ガスケット124によって中央開口113からシールされる。ガスケット124および銅合金層123は、圧力変化を補償するために、ある程度の圧縮性を示す。アルミニウム箔ベース層115は、開口113の周りにカラー125を備える。カラー125は、ガスケット124の内径との締りばめを形成する外径を有する。
【0086】
セル103を通る水素流は、矢印Hで示される。圧力が約80MPa程度に高い高圧ベッセル内部から、水素ガスが、多孔質銅合金層123内に流れ、多孔質銅合金層123内で、水素ガスがアノード表面120に接触する。アノード表面にて、水素ガスは、上述したように減圧されて電子とプロトンになる。プロトンは、プロトン伝導性膜119を通過してカソード表面121に至り、カソード表面121にて、プロトンは、下側セル103のアノード層からやって来る電子と再結合してH水素ガスになる。再結合した水素ガスは、図10を参照して以降で述べるように、多孔質層116を通して、水素放出チャネルが画定される開口113に移動する。外部電気回路(図示せず)は、積重体102の上側セル103の表面アノードを最も下側のセル103の表面カソードに接続する。こうして、たとえばDC/DC変換器または他のタイプの電気負荷を備えてもよい電気回路を通して電流が生成される。
【0087】
図11は、高圧ベッセルで使用するための管状イオン減圧セル170を断面で概略的に示す。イオン減圧セル170は、高耐圧円柱チャネル壁171を備え、高耐圧円柱チャネル壁171は、チャネル壁171によって限定される低圧チャンバ173に加圧水素ガスが通過するアパーチャまたは穿孔172を備える。チャネル壁171は、マクロ多孔質層175でコーティングされ、マクロ多孔質層175は、次に、微小多孔質層176でコーティングされ、両方の同心層は、水素ガスについて浸透性がある。微小多孔質層176は、カソード層177でコーティングされ、カソード層177は、非多孔質のプロトン伝導性で電気絶縁性の膜178でコーティングされ、膜178は、次に、多孔質アノード層179でコーティングされる。集電グリッド180は、アノード層179の外側に塗布される。管状チャネル壁182によって画定される4つの冷却材チャネル181が、低圧チャンバ173内に配置されて、効果的な温度制御を提供し、減圧プロセスを最適化する。
【0088】
別法としてまたは付加的に、熱交換チャネルが、たとえば図12で示すように配置されうる。図12では、同じ参照数字は、図11の場合と同様に、両方の実施形態において同じである部品のために使用される。この場合、減圧器セル184のカソード層179は、集電層185でコーティングされる。熱交換チャネル186は、イオン減圧セル184の高圧側に配置されて、高圧チャンバ内の加圧水素を所望の温度に維持する。
【0089】
図13および14は、たとえば図5に示すように、本発明によるイオン減圧セルで使用されうる押出しプロファイルを示す。使用時、プロファイルは、膜電極接合体またはこうした接合体の積重体(図示せず)によって囲まれる。図13では、押出しプロファイル200は、高圧に耐性がある管状プロファイルであり、アルミニウム合金から構成される。管状プロファイル200は、ドリルで開けられた複数の穴またはアパーチャ202(1つだけが図に示される)を備える外側円柱201を備える。直交配置された4つのスペーサ203は、内側に延在して、内側管状チャネル壁204を、外側円柱201に対して同軸配置で保持する。内側に延在する4つの大きなスペーサ205は、低熱伝導率の材料、たとえばポリマー材料の小さなチューブ206を保持する。各スペーサ205は、2つのスペーサ203間で等距離に配置される。ポリマーチューブ206は、冷却された熱交換液用の戻りチャネル207を形成する。ポリマーチューブ206と内側管状チャネル壁204との間の内側同軸チャネル208は、熱交換液用の供給チャネルを形成する。内側同軸チャネル208は、スペーサ205によって平行で等しい4つのチャネル部分209に分割される。外側円柱壁201と内側円柱壁204との間には、スペーサ204、205によって等しい平行な8つのチャネル部分211に分割された外側同軸チャネル210が存在する。低圧チャンバ用のこれらのチャネル部分211は、減圧水素ガスの再収集のためのものである。
【0090】
図14は、図13のものと同様の変形を示す。同じ参照数字は、同じである部品のために使用される。この実施形態では、スペーサ205は、スペーサ203と同じ長さである。ポリマーチューブ215は、内側円柱壁204の内部に嵌合する。このチューブ215とポリマーチューブ206との間に、熱交換媒体用の供給チャネル216が存在し、熱交換媒体は、ポリマーチューブ206によって限定された戻りチャネル207を介して戻る。
【0091】
以下は、本発明がそれにまたはそれにより制限されることなく、本発明の種々の実施形態の例証を与える。
【実施例1】
【0092】
本発明の高差圧電気化学セルは、導電性層とイオン伝導性層との間に挟まれた電気絶縁性でイオン伝導性の層からなる3層膜、繊維性材料による前記膜層の補強、および前記膜を支持する微小多孔質構造を含む、高差圧に耐えるいくつかの手段を組み込んでもよい。
【0093】
イオン性水素ガス圧縮器での用途のための図3Aおよび3Bの3層膜は、3つの溶液/分散液から製造されてもよい。
【0094】
導電性でイオン伝導性の層302A用の分散液は、分子水素のイオン化を補助する触媒活性位置を導電性層302A内に得るために、1〜10nm、好ましくは2〜5nmの範囲のサイズを有する1重量%白金粒子を備えるKetjenBlack EC 600を含む。分散液は、さらに、ポリマー、たとえばNafion(登録商標)EW1100および溶媒を含む。
【0095】
電気絶縁性でイオン伝導性の層302B用の分散液は、非導電性充填材として20nmの平均粒子サイズを有するAerosil(登録商標)を含む。分散液は、さらに、アイオノマー、たとえばNafion(登録商標)EW1100および溶媒を含む。
【0096】
導電性でイオン伝導性の層302C用の分散液は、分子水素のイオン化を補助する触媒活性位置を導電性層302C内に得るために、1〜10nm、好ましくは2〜5nmの範囲のサイズを有する1重量%白金粒子を備えるKetjenBlack EC 600を含む。分散液は、さらに、アイオノマー、たとえばNafion(登録商標)EW1100および溶媒を含む。
【0097】
各分散液は、高せん断力高回転速度Ultra Turrax混合デバイスを使用して均質化される。
【0098】
スライドコートマシンは、125ミクロンの厚さを有するマイラータイプポリエステルキャリアフィルムを備える。先に特定された分散液を含む3つの供給ベッセルは、マシンのスライドコートヘッドに接続され、1つまたは複数の定量注入ポンプが、マイラーフィルムに対する多種の分散液の供給比を制御する。さらに、塗布される薄フィルム層は、(不織布)織布ガラスファイバなどの繊維性材料で補強されうる。マシンは、たとえば、1分当たり1mの膜を提供するように設定される。スライドコートヘッドは、1回の運転で3層膜302を製造する。その後、膜302は、溶媒を気化させるために加熱デバイスに給送され、温度が、膜の特性が影響を受けるようにあまり高くなく、通常、溶媒の沸点未満に留まることが配慮される。
【0099】
実施例1に従って製造された膜は、膜電極接合体の製造について当技術分野で知られている方法でCCM(触媒コーティング膜)またはMEA(膜電極接合体)になるように処理されうる。1つの知られている方法は、デカル(decal)または転写コーティング法を使用して膜の両側に電極を塗布することである。この方法では、転写フィルムは、電極でコーティングされる。膜の一方の側で、転写フィルム上のアノードがプレスされ、他方の側で、カソードコーティングを有する転写フィルムがプレスされる。プレス、加熱、および冷却後に、転写フィルムが除去される。残留生成物は、CCM、触媒コーティング膜またはMEA、膜電極接合体と呼ばれる。
【0100】
このCCMまたはMEAは、当技術分野で知られるGDL(ガス拡散層)として働く、微小多孔質の導電性で機械剛性がある支持体構造の間に挟まれる。この構造は、前記CCMまたはMEAの耐圧を向上させる。
【0101】
この補強された、2つの微小多孔質支持構造間に挟まれた3層膜は、当業者に明らかになる方法で、高圧イオン性水素ガス圧縮器または減圧器に組み込まれうる。
【実施例2】
【0102】
上記実施例1の代替として、図3Aおよび3Bの3層膜が、次の通りに、3つの溶液/分散液から製造されてもよい。
【0103】
導電性でイオン伝導性の層302A用の分散液は、分子水素のイオン化を補助する触媒活性位置を導電性層302A内に得るために、1〜10nm、好ましくは2〜5nmの範囲のサイズを有する1重量%白金粒子を備えるKetjenBlack EC 600を含む。分散液は、さらに、ポリマー、たとえばNafion(登録商標)EW1100および溶媒を含む。
【0104】
電気絶縁性でイオン伝導性の層2B用の分散液は、非導電性充填材として20nmの平均粒子サイズを有するAerosil(登録商標)を含む。分散液は、さらに、アイオノマー、たとえばNafion(登録商標)EW1100および溶媒を含む。
【0105】
導電性でイオン伝導性の層302C用の分散液は、水を形成するために酸素ラジカルとプロトンとの反応を補助する触媒活性位置を導電性層302C内に得るために、1〜100nm、好ましくは2〜50nmの範囲のサイズを有する、酸素発生反応触媒粒子、たとえばイリジウム酸化物粒子を含む。分散液は、さらに、アイオノマー、たとえばNafion(登録商標)EW1100および溶媒を含む。
【0106】
各分散液は、高せん断力高回転速度Ultra Turrax混合デバイスを使用して均質化される。
【0107】
スライドコートマシンは、125ミクロンの厚さを有するマイラータイプポリエステルキャリアフィルムを備える。先に特定された分散液を含む3つの供給ベッセルは、マシンのスライドコートヘッドに接続され、1つまたは複数の定量注入ポンプが、マイラーフィルムに対する多種の分散液の供給比を制御する。マシンは、たとえば、1分当たり1mの膜を提供するように設定される。スライドコートヘッドは、1回の運転で3層膜302を製造する。その後、膜302は、溶媒を気化させるために加熱デバイスに給送され、温度が、膜の特性が影響を受けるようにあまり高くなく、通常、溶媒の沸点未満に留まることが配慮される。
【0108】
この実施例に従って製造された膜は、膜電極接合体の製造について当技術分野で知られている方法でCCM(触媒コーティング膜)またはMEA(膜電極接合体)になるように処理されうる。1つの知られている方法は、デカルまたは転写コーティング法を使用して膜の両側に電極を塗布することである。この方法では、転写フィルムは、電極でコーティングされる。膜の一方の側で、転写フィルム上のアノードがプレスされ、他方の側で、カソードコーティングを有する転写フィルムがプレスされる。プレス、加熱、および冷却後に、転写フィルムが除去される。残留生成物は、CCM、触媒コーティング膜またはMEA、膜電極接合体と呼ばれる。このCCMまたはMEAに対して、GDL(ガス拡散層)が、水素側に添加される。チタンメッシュまたは発泡体が、酸素形成側に添加される。これは、当技術分野で知られている方法で高圧電解槽に組み込まれうる。適切な構造完全性を保証するために、CCMまたはMEAは、当技術分野で知られるGDL(ガス拡散層)として働く、微小多孔質の導電性で機械剛性がある支持体構造の間に挟まれることが可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 タンク
2 円柱本体
3、4 半球端部セクション
5 開口
6 コネクタブロック(接続ブロック)
10 膜チューブ
11 低圧チャンバ
12 管状壁
13 アパーチャ
14 マクロ多孔質支持体層
15 焼結微小多孔質支持体層
16 カソード層
17 電解質膜
18 アノード層
19 銅グリッド
20、21 外側端部
22 端部壁
23 開口
24 入口開口
25 電気接点
100 高圧ベッセル
101 出口
102 積重体
103 イオン減圧セル
104 カバー板
105 低圧チャンバ
111 周縁
112 高圧ベッセル内部
113 内側開口
115 ベース層
116 アルミニウム多孔質層
117 シーリングセグメント
118 膜電極接合体
119 プロトン伝導性膜
120 アノード表面
121 カソード表面
122 シーリングストリップ
123 銅合金多孔質層
124 高圧ガスケット
125 カラー
170 管状イオン減圧セル
172 アパーチャ(穿孔)
171 チャネル壁
173 低圧チャンバ
175 マクロ多孔質層
176 微小多孔質層
177 カソード層
178 非多孔質のプロトン伝導性で電気絶縁性の膜
179 多孔質アノード層(図11)
179 カソード層(図12)
180 集電板グリッド
181 冷却材チャネル
182 管状チャネル壁
184 減圧器セル
185 集電層
186 熱交換チャネル
200 管状プロファイル
201 外側円柱
202 穴またはアパーチャ
203、205 スペーサ
204 内側管状チャネル壁
206、215 チューブ
207 戻りチャネル
208 内側同軸チャネル
209、211 チャネル部分
210 外側同軸チャネル
216 供給チャネル
301 イオン性水素ガス圧縮器
302 ポリマー電解質膜
303 アノード触媒層
304 カソード触媒層
305、306 微小多孔質支持体層
307 低圧チャンバ
308 高圧チャンバ
302A、302C 導電性でイオン伝導性の層
302B 電気絶縁性でイオン伝導性の層
302A1、302A2、302C1、302C2 導電性サブ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧チャンバおよび低圧チャンバを包囲する高差圧電気化学セルにおいて、前記チャンバは膜によって分離され、前記膜はイオン伝導性、特にプロトン伝導性でかつ電気絶縁性であり、前記膜は、前記高圧チャンバ内に第1の表面および前記低圧チャンバ内に第2の表面を有し、前記第1の表面は第1の電極を備え、前記第2の表面は第2の電極を備え、前記第1および第2の電極は、電気回路を介して互いに導電的に接続される高差圧電気化学セルであって、前記膜は少なくとも2つのイオン伝導性層を備え、前記イオン伝導性層の少なくとも1つは電気絶縁性であり、前記イオン伝導性層の少なくとも1つは導電性である高差圧電気化学セル。
【請求項2】
前記膜は、第1の導電性でイオン伝導性の層(2A)と第2の導電性でイオン伝導性の層(2C)との間に挿入される電気絶縁性でイオン伝導性の層(2B)を備える請求項1に記載の高差圧電気化学セル。
【請求項3】
前記膜内で、少なくとも1つのイオン伝導性で導電性の層(2A、2C)は、イオン伝導性マトリクスおよび導電性充填材を含む請求項1または2に記載の高差圧電気化学セル。
【請求項4】
前記導電性充填材は、前記イオン伝導性マトリクス内に粒子の導電性ネットワークを含む請求項3に記載の高差圧電気化学セル。
【請求項5】
前記導電性充填材は、触媒物質を付着することが可能である、かつ/または、触媒物質が付着している請求項3または4に記載の高差圧電気化学セル。
【請求項6】
前記膜内で、少なくとも1つの導電性層は、少なくとも2つの層で構成され、前記電極に近い層は、前記電気絶縁性層に近い層に比べて、低い濃度の触媒活性材料を有する請求項1から5のいずれか一項に記載の高差圧電気化学セル。
【請求項7】
前記膜内で、前記電気絶縁性層は、非導電性固体充填材料を含む請求項1から6のいずれか一項に記載の高差圧電気化学セル。
【請求項8】
前記膜内で、前記電気絶縁性層は、たとえば規則的または不規則的な波状または鋸状パターンの形態でプロファイルを持つあるいは任意の他の非平坦プロファイルである請求項1から7のいずれか一項に記載の高差圧電気化学セル。
【請求項9】
前記膜内で、少なくとも1つの導電性層は、少なくとも2つの層で構成され、前記電極に近い層は、前記電気絶縁性層に近い層に比べて、高い濃度の触媒活性材料を有する請求項1から8のいずれか一項に記載の高差圧電気化学セル。
【請求項10】
電気化学セルの使用時の前記高圧チャンバと前記低圧チャンバとの間の圧力差は、少なくとも1MPaである請求項1から9のいずれか一項に記載の高差圧電気化学セル。
【請求項11】
イオンガス圧縮器またはイオンガス減圧器であり、電気化学セルの使用時に、高差圧電気化学セルがイオンガス圧縮器である場合、前記高圧チャンバは水素ガスを含み、前記低圧チャンバは水素含有ガスを含み、高差圧電気化学セルがイオンガス減圧器である場合、前記高圧チャンバは水素含有ガスを含み、前記低圧チャンバは水素を含む請求項1から10のいずれか一項に記載の高差圧電気化学セル。
【請求項12】
電解槽であり、電気化学セルの使用時に、前記高圧チャンバは水素を含み、前記低圧チャンバは水を含む請求項1から11のいずれか一項に記載の高差圧電気化学セル。
【請求項13】
高差圧電気化学セルで使用するのに適し、イオン伝導性、特にプロトン伝導性でかつ電気絶縁性である膜であって、少なくとも2つのイオン伝導性層を備え、前記イオン伝導性層の少なくとも1つは電気絶縁性であり、前記イオン伝導性層の少なくとも1つは導電性である膜。
【請求項14】
高差圧電気化学セルにおける請求項13に記載の膜の使用。
【請求項15】
前記高差圧電気化学セルは、イオンガス圧縮器、イオンガス減圧器、または電解槽であり、前記膜にわたる圧力差は少なくとも1MPaである請求項14に記載の使用。
【請求項16】
水素を圧縮するプロセスであって、水素含有ガスが、請求項11に記載のイオンガス圧縮器の低圧チャンバに給送され、電流が、前記イオンガス圧縮器の電気回路に提供され、それにより、水素が、前記膜を通して前記イオンガス圧縮器の高圧チャンバ内に搬送されるプロセス。
【請求項17】
水素を減圧するプロセスであって、水素含有ガスが、請求項11に記載のイオンガス減圧器の高圧チャンバに給送され、電流が、前記イオンガス減圧器の電気回路から引き出され、それにより、水素が、減圧されて前記イオンガス減圧器の低圧チャンバに入り、電流が生成されるプロセス。
【請求項18】
水を水素と酸素に変換するプロセスであって、水が、請求項12に記載の電解槽の水チャンバに給送され、電流が、前記電解槽の電気回路に提供され、酸素は前記水チャンバから取出され、水素は前記電解槽の水素チャンバから取出されるプロセス。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2012−518081(P2012−518081A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549590(P2011−549590)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051864
【国際公開番号】WO2010/092175
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(511196696)ハイエット・ホールディング・ベー・フェー (1)
【Fターム(参考)】