説明

固液分離装置、濾過装置、および固液分離方法

【課題】濾過装置の2次脱水機構として用いて、被処理物(ケーキ)の含液率を十分に低減することができるとともに連続的な固液分離が可能な固液分離装置、この固液分離装置を2次脱水機構として備えた濾過装置、および固液分離方法を提供する。
【解決手段】周方向に回転させられる分離ロール7の外周に、無端状の一対の分離濾布1、8を重ね合わせて巻き掛けるとともに、分離濾布1、8の外周にはさらに圧搾ベルト15を巻き掛けて、これら一対の分離濾布1、8と圧搾ベルト15とを分離ロール7の回転方向Tに沿って走行させ、一対の分離濾1、8布の間に供給された被処理物Pを、分離ロール15の外周で分離濾布1、8間に挟み込んで圧搾ベルト15によって圧搾するとともに、分離ロール7の径方向に通気することによって脱水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に複数のロールに巻回されて走行する濾布上に供給された被処理物を濾過する水平式真空濾過装置、ドラム式真空濾過装置、および機械圧搾脱水機構のみのベルトプレス脱水機のような濾過装置の2次脱水機構として用いて好適な固液分離装置、該固液分離装置を用いたこのような濾過装置、および固液分離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような濾過装置のうち、例えば水平式真空濾過装置は一般に、真空トレイ上を連続的あるいは間欠的に走行する濾布の上に被処理物を供給し、この濾布を介して真空トレイにより真空吸引することによって濾過するものであり、またドラム式真空濾過装置は一般的に液槽内の被処理物スラリー中に浸漬された濾布を介する真空室により真空吸引することにより濾過するものであるが、通常は大気圧よりも大きな差圧を作用させることができない。このため、濾過されたケーキの到達含液率が目標値を達成することが難しく、当該濾過装置の後段にこれとは別に遠心分離器やフィルタープレス等の2次脱水装置を用意しなければならないことが多い。
【0003】
そこで、本発明の発明者等は、例えば特許文献1、2において、このような水平式真空濾過装置の真空トレイのみによる濾過の後段に、濾過されたケーキに向けて進退可能な枠状または環状のシール材を有するシール手段と、このシール材の開口面内側で加圧板や圧力流体(エアー等)によってケーキを加圧する加圧手段とを備えた固液分離装置を設け、この後段に濾布の走行によって移動してきたケーキにシール材を密着させ、その内側で加圧手段によりケーキを加圧して脱水するものを提案している。
【特許文献1】特開2006−297366号公報
【特許文献2】特開2007−83117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような固液分離装置を設けた水平式真空濾過装置等においても、被処理物の組成や性状によっては、加圧板や加圧ロールによる濾布に垂直な方向への面圧あるいは線圧だけでは、ケーキの含液率を十分に目標値を達成することが困難となる場合がある。また、上述のように濾布の走行によって後段に移動したケーキにシール材を前進させて密着させた上で加圧する固液分離装置では、濾布が連続的に走行する場合にそのまま適用することはできない。
【0005】
本発明は、このような背景の下になされたもので、特にこのような濾過装置の2次脱水機構として用いて、被処理物(ケーキ)の含液率を十分に低減することができるとともに連続的な固液分離が可能な固液分離装置、該固液分離装置を2次脱水機構として備えた濾過装置、および固液分離方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の固液分離装置は、周方向に回転させられる分離ロールの外周に、無端状の一対の分離濾布が重ね合わされて巻き掛けられるとともに、該一対の分離濾布の外周にはさらに圧搾ベルトが巻き掛けられて、これら一対の分離濾布と上記圧搾ベルトとが上記分離ロールの回転方向に沿って走行可能とされており、上記一対の分離濾布の間に供給された被処理物が、上記分離ロールの外周で該分離濾布の間に挟み込まれて上記圧搾ベルトによって圧搾されるとともに、上記分離ロールの径方向に通気されることによって脱水させられることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の固液分離方法は、周方向に回転させられる分離ロールの外周に、無端状の一対の分離濾布を重ね合わせて巻き掛けるとともに、該一対の分離濾布の外周にはさらに圧搾ベルトを巻き掛けて、これら一対の分離濾布と上記圧搾ベルトとを上記分離ロールの回転方向に沿って走行させ、上記一対の分離濾布の間に供給された被処理物を、上記分離ロールの外周で該分離濾布の間に挟み込んで上記圧搾ベルトによって圧搾するとともに、上記分離ロールの径方向に通気することによって脱水することを特徴とする。
【0008】
従って、このように構成された固液分離装置および固液分離方法においては、一対の分離濾布の間に被処理物が供給されて挟み込まれ、周方向に回転する分離ロールの外周に、その回転方向に沿って走行しつつ巻き掛けられて押圧されるとともに、さらにその外周から圧搾ベルトが同じく分離ロールの回転方向に走行しつつ巻き掛けられて押し付けられることにより圧搾される。このため、分離ロールの回転や、その回転方向に沿った分離濾布の走行が間欠的な場合は勿論、連続的な場合でも、供給された被処理物を確実に処理することができる。
【0009】
さらに、こうして回転する分離ロールの外周に押し付けられる際に、被処理物は、該分離ロールの径方向に押圧力を受けるだけでなく、被処理物を挟んで内周の分離ロール側の分離濾布と反対の外周側の分離濾布との走行速度の差、すなわち周速の差によって周方向にも剪断力を受けるため、効率的に圧搾される。そして、こうして圧搾された被処理物は、さらに分離ロールの径方向に通気されることによって液分が外周側の分離濾布を介して分離されるため、濾布に垂直な方向への面圧や線圧および加圧だけでは十分な含液率の低下が困難であった被処理物に対しても、効果的な液分の除去を促すことが可能となる。
【0010】
しかも、この外周側の分離濾布のさらに外周には圧搾ベルトが巻き掛けられていて、これにより分離濾布および被処理物を確実に分離ロール側に押さえ付けることができるので、例えば脱液の能力を上げるために通気の圧力を高くした場合でも、この分離ロールに巻き掛けられる圧搾ベルトの面圧を、分離ロールの径方向に通気する通気ガス圧よりも大きくすることにより、分離濾布が浮き上がることにより圧力流体(通気ガス)が分散してしまい通気による脱液効果が却って損なわれたり、分離濾布の幅方向の両側や走行方向の前後からケーキが吹き出して飛散したりするのを防止して、一層確実に脱液効果の向上を図ることが可能となる。
【0011】
なお、上記圧搾ベルトは、分離濾布を介しての被処理物からの脱液を阻害しないように、分離濾布よりも通気度が高いことが望ましい。このように通気度が高く、しかも上述のように通気ガス圧よりも大きな面圧を発生させる張力に耐えられるものであれば、圧搾ベルトは濾布でもよく、または金網やチェーン等からなる金属ベルト、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、カーボン繊維等の高強度繊維からなる樹脂ベルト、あるいはゴムベルトであってもよい。
【0012】
また、本発明の濾過装置は、複数のロールに巻き掛けられて走行させられる濾布上に、供給手段から被処理物が供給されて、この供給手段よりも上記濾布の走行方向側に備えられた濾過手段により上記被処理物が濾過される濾過装置であって、上記濾過手段よりも上記走行方向側には、上述した本発明の固液分離装置が配設されていて、上記複数のロールのうち上記濾過手段よりも上記走行方向側に位置するロールが上記分離ロールとされるとともに、上記濾布が上記一対の分離濾布のうちの一方とされていることを特徴とする。
【0013】
従って、このような、例えば上述した水平式真空濾過装置等の濾過装置では、その上記濾過手段よりも走行方向側の当該濾過装置のロールが、上記固液分離装置の分離ロールとされ、また濾過装置の上記濾布が固液分離装置の上記一対の分離濾布のうちの一方とされているので、濾過手段によって濾過された濾布上の被処理物は、そのままこの濾過手段よりも濾布の走行方向側すなわち濾過手段の後段に移動させられ、他方の分離濾布との間に挟まれて圧搾ベルトとともに分離ロールに巻き掛けられ、圧搾されるとともに通気させられて上述のように効果的に脱水させられる。
【0014】
ここで、本発明の固液分離装置では、上述のように分離ロールに巻き掛けられた一対の分離濾布の外周にさらに圧搾ベルトが巻き掛けられているため、通気による分離ロールと分離濾布との摩擦力の低下を抑えることができ、分離濾布を十分な面圧で分離ロールに押し付けて確実に分離ロールの回転に伴いその回転方向に走行させることができる。従って、この分離ロールが、水平式真空濾過装置等において濾布を走行させる駆動ロールであっても、その駆動力の低下を抑えることができて濾布の安定した走行を図ることができる。
【0015】
このため、この濾過装置の後段に、該濾過装置とは別に遠心分離器やフィルタープレス等の2次脱水装置を用意しなくとも、含液率の少ない被処理物を得ることができて効率的であり、こうして脱水された被処理物を乾燥させる場合などに乾燥装置の負担を軽減することが可能となる。しかも、濾過装置の濾布およびロールを固液分離装置の上記分離濾布および分離ロールとして利用することができるので、経済的でもある。そして、上記固液分離装置が被処理物の連続的な供給にも対応可能であることから、濾布が連続的に走行する水平式真空濾過装置、ドラム式真空濾過装置、およびベルトプレス脱水機のような濾過装置でも確実な被処理物の含水率低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の固液分離装置および固液分離方法によれば、回転する分離ロールに巻き掛けられる一対の分離濾布の間に被処理物が挟み込まれるとともに、さらにその外周に圧搾ベルトが巻き掛けられて、分離ロールの回転とともにその回転方向に走行させられることにより、この分離ロールの径方向による押圧力に加えて、周方向への剪断力を作用させて被処理物を効果的に圧搾することができる。さらに、径方向への通気によって分離濾布が分離ロールから浮き上がったり分離濾布の端からケーキが飛散したりするのを圧搾ベルトによって防ぐことができて、被処理物の液分を効果的に分離することが可能となる。
【0017】
また、本発明の濾過装置によれば、このような固液分離装置を用いて、2次脱水装置を要することなく効率的かつ経済的に、より低い含液率の被処理物を得ることができる。また、後段の乾燥設備へ製品を搬送する際にベルトコンベア、スクリューコンベア等の搬送機器への付着に起因する搬送トラブル等を解決することが可能となる。さらに、通気による分離ロールと分離濾布との摩擦力の低下を抑えることができ、上記圧搾ベルトによって確実に分離濾布を分離ロールの回転方向に一体的に走行させることができるので、該分離ロールを水平式真空濾過装置等の濾過装置の駆動ロールとするとともに、分離濾布を該濾過装置の濾過手段に用いる濾布としても、この濾布の安定走行を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1ないし図3は、本発明の固液分離装置および該固液分離装置を備えた濾過装置の一実施形態を示すものである。本実施形態における濾過装置は、図1に示すように、無端状の濾布1が、中心軸線を水平にして互いに平行に配置された複数のロール2に巻き掛けられて周回するように張り渡され、このうちの1つが駆動ロール2Aとされて上記中心軸線回りに回転駆動させられることにより、濾布1のうち装置上部に水平に渡された水平部1Aが矢線Fで示す走行方向に移動するように走行可能とされて、この水平部1Aの走行方向F後方側に配設された供給手段3から供給された被処理物Pが、その直ぐ走行方向F側の駆動ロール2Aとの間に配設された濾過手段4によって濾布1を介して濾過される、水平式真空濾過装置の構成とされている。
【0019】
ここで、上記駆動ロール2Aは、上記水平部1Aの走行方向F側の端部に位置し、図2に示すようにモータ等の駆動手段5により可変減速機6を介して回転させられることによって、連続的、あるいは所定のピッチで間欠的に濾布1を走行させる。また、濾過手段4において被処理物Pは、水平部1Aにおいて濾布1を支持する図示されない真空トレイにより液分が濾布1を介して吸引されて濾過される。そして、さらにこの濾過手段4よりも上記走行方向F側に、図1に破線で示すように本発明の一実施形態の固液分離装置が配設されている。
【0020】
この実施形態の固液分離装置は、図2および図3に示すように、回転方向Tに向けて周方向に回転させられる分離ロール7の外周に、無端状の一対の分離濾布1、8が、濾過手段4によって濾過された被処理物Pを間に挟み込むように重ね合わされて巻き掛けられつつ上記回転方向Tに沿って走行可能とされたものとされている。なお、分離濾布1、8は例えばポリエチレン繊維やポリエステル繊維などからなる。ここで、本実施形態では、上記濾過装置におけるロール2のうちの上記駆動ロール2Aが分離ロール7とされ、また一対の分離濾布1、8のうちの一方は、濾過装置の濾布1がそのままこの分離ロール7に巻き掛けられたものとされている。
【0021】
この分離ロール7(駆動ロール2A)は概略中空の円筒状とされるとともに、その円筒面部分には図3に示すように該分離ロール7の中心軸線方向において上記濾布1の幅の範囲よりも内側に、また周方向には分離ロール7の全周に亙って、多数の貫通孔9が開口させられている。一方、分離ロール7の内周部には、これらの貫通孔9にそれぞれ連通する複数の通気ガスチャンバー10が、上記中心軸線方向には貫通孔9が形成された範囲と略等しい範囲で、また周方向には分離ロール7の全周に亙って該分離ロール7の内周部をほぼ等間隔に弧状に仕切るようにして、互いに隔絶されて形成されている。
【0022】
また、分離ロール7のさらに内周部には、中心軸線方向一端側(図3における右側)から通気ガスチャンバー10と同数の通気配管11が挿通されていて、それぞれ各通気ガスチャンバー10と接続されており、各通気配管11に供給されたエアー(圧縮空気)やスチーム等の通気ガスAが、この通気ガスチャンバー10を介して上記貫通孔9から分離ロール7の外周に噴出して通気させられる。なお、通気ガスAは、図示されない供給源からロータリージョイント(あるいは多段回転継手)12を介して、回転する分離ロール7に固定された通気配管11に供給される。
【0023】
さらに、このロータリージョイント12に接続された分離ロール7側の通気ガス分岐チャンバー12Aと各通気配管11との間には、各通気配管11ごとに自動弁13が備えられている。ここで、この自動弁13の開閉操作は、分離ロール7に取り付けられて各通気バスチャンバー10の回転位置に応じて動作するリミットスイッチ13Aによって、上記通気ガス分岐チャンバー12Aからの通気ガスAが信号ガスとして供給配管13Bを介して該自動弁13に供給または非供給の状態となることにより、制御される。
【0024】
そして、こうして制御される自動弁13により、本実施形態では、分離ロール7の周方向に分離濾布1、8が巻き掛けられた範囲にある通気ガスチャンバー10のうち、さらに所定の回転位置にある通気ガスチャンバー10のみに、通気ガスAが、分離ロール7の回転に伴い順次切り替えられながら連続して供給されるようになされている。すなわち、通気ガスチャンバー10がこの所定の回転位置にあるときには、自動弁13が開いて常に通気ガスAが通気ガスチャンバー10に供給されて貫通孔9から噴出させられる一方、この所定の回転位置以外の位置では、自動弁13が閉じられて通気が行われないように制御される。
【0025】
一方、一対の分離濾布1、8のうち他方の分離濾布8は、濾布(一方の分離濾布)1とほぼ等しい幅とされており、分離ロール7の外周においては該濾布1の外側に巻き掛けられてこの分離ロール7(駆動ロール2A)の回転方向Tに向けて濾布1と一体的に走行方向Fと同じ走行方向Gに走行可能とされている。また、この走行方向Gにおいて分離ロール7の次に他方の分離濾布8が巻き掛けられるロール2Bは、図2に示すように濾布1が巻き掛けられたロール2と共通とされ、このロール2Bから他方の分離濾布8は下方に向けて濾布1と反対側に引き出されて離間し、複数のロール14に巻き掛けられて再び分離ロール7の外周に至るように無端状に巻回されている。
【0026】
そして、このように一対の分離濾布1、8が重ね合わされて巻き掛けられた分離ロール7の外周には、このうち上記他方の分離濾布8のさらに外周に圧搾ベルト15が巻き掛けられており、この圧搾ベルト15も上記一対の分離濾布1、8とともに分離ロール7の外周ではその回転方向Tに沿って走行方向F、Gと同じ走行方向Hに走行可能とされている。ここで、この圧搾ベルト15は、分離濾布1、8と同様の濾布、または金網やチェーン等からなる金属ベルト、あるいはアラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、カーボン繊維等の高強度繊維からなる樹脂ベルト、もしくはゴムベルトによって構成され、ただしその通気度は分離濾布1、8よりも高くされている。
【0027】
また、この圧搾ベルト15は、本実施形態では分離濾布1、8よりは幅広とされて、その幅方向の両端が図3に示すように該分離濾布1、8の幅方向の両端をそれぞれ越えて分離濾布1、8に覆い被さるように分離ロール7に巻き掛けられている。ただし、圧搾ベルト15の横幅は、一対の分離濾布1、8間に挟み込まれて圧搾される被処理物Pのケーキ幅よりも広ければ、必ずしも分離濾布1、8よりも幅広である必要はなく、すなわち分離濾布1、8とほぼ等しい幅であったり、これより幅狭であったりしてもよい。さらに、走行方向Hにおいて分離ロール7の次に圧搾ベルト15は、上記一対の分離濾布1、8が巻き掛けられた共通の上記ロール2Bに巻き掛けられ、次いで図2に示すように分離ロール7と上記ロール14に巻回された他方の分離濾布8との間に配設された複数のロール16に順次巻き掛けられた後、分離ロール7に至る直前で他方の分離濾布8が巻き掛けられるロール14Aに該他方の分離濾布8とともに巻き掛けられて、再び分離ロール7の外周に至るように無端状に巻回されている。
【0028】
なお、この圧搾ベルト15が巻き掛けられる上記ロール2A、14A、16は、他の分離濾布1、8だけが巻き掛けられるロール2、14よりも大径とされるとともに、分離ロール7よりは小径とされ、さらに複数のロール16のうちの1つは、支持軸17Aを中心にシリンダ装置17Bによって回動可能とされた圧搾ベルト緊張装置17のアーム17Cに取り付けられていて、こうしてアーム17Cを回動させて所定の位置で位置決めすることにより、圧搾ベルト15に所定の張力が与えられるようにされている。
【0029】
また、複数のロール16のうちの他の1つは、その少なくとも一端が、やはりシリンダ装置18Aにより圧搾ベルト15の走行方向Hに向けて進退する圧搾ベルト蛇行修正装置18のブラケット18Bに取り付けられていて、こうしてブラケット18Bを走行方向Hに進退させて該走行方向Hに対する当該ロール16の傾きを微調整することにより、圧搾ベルト15の走行に蛇行が生じたときには、これを修正するようにされている。ただし、これらのロール16も含めて、本実施形態の濾過装置および固液分離装置において、上記駆動ロール2A(分離ロール7)以外のロール2、14、16は、いずれも駆動手段に連結されない従動ロールとされている。
【0030】
さらに、圧搾ベルト15の走行経路には圧搾ベルト洗浄装置19が、他方の分離濾布8の走行経路には分離濾布洗浄装置20がそれぞれ設けられるとともに、一方の分離濾布1の走行経路にも図示されない洗浄装置が設けられ、また固液分離装置の底部には受け皿21が配設されている。さらにまた、上記ロール2Bの下方には、当該固液分離装置によって固液分離された被処理物Pのケーキを排出する排出口22が設けられるとともに、このロール2Bからそれぞれその走行方向Fに向けて互いに反対向きに離れてゆく一対の分離濾布1、8に対しては、被処理物Pと接していた面に接するようにスクレーパ23やワイヤー等が配設される。また、分離ロール7に分離濾布1、8および圧搾ベルト15が巻き掛けられた部分のさらに外周側には、断面円弧状の回収板24が圧搾ベルト15と間隔をあけて配設されていて、通気によって分離された液分を回収して上記受け皿21に導くようにされている。
【0031】
このような固液分離装置、この固液分離装置を備えた濾過装置、および該固液分離装置を用いた本発明の固液分離方法の一実施形態では、濾過装置の濾過手段4によって濾過された被処理物Pは、当該固液分離装置の分離ロール7の外周で一対の分離濾布1、8の間に挟み込まれるとともに、さらにその外周に圧搾ベルト15が高張力で巻き掛けられることによって、分離ロール7の径方向内周側に押圧力を受けて圧搾される。従って、この固液分離装置による被処理物Pの固液分離工程の後段に乾燥工程があるような場合でも、この乾燥工程における負荷を低減することができる。
【0032】
また、被処理物Pを挟み込んで分離ロール7に巻き掛けられた一対の分離濾布1、8は、被処理物Pの厚さ分だけ分離ロール7の中心軸線からの距離が異なり、しかも一方の分離濾布1が分離ロール7(駆動ロール2A)に直接巻き掛けられて走行させられるのに対し、他方の分離濾布5と圧搾ベルト15はこの一方の分離濾布1と被処理物Pを介して従動的に走行させられるために、分離ロール7の外周ではこれら一対の分離濾布1、5に周速差が生じ、この周速差により被処理物Pには、これを周方向に剪断しようとする剪断力が作用して、この剪断力と上記押圧力とによって被処理物Pは効率的に圧搾される。
【0033】
さらに、分離ロール7においては、上述のように一対の分離濾布1、8が巻き掛けられた範囲のうちの所定の回転位置において、通気配管11から通気ガスチャンバー10を介して通気ガスAが貫通孔9から噴出させられて分離濾布1、被処理物P、分離濾布8、および圧搾ベルト15を通して分離ロール7の径方向外周側に通気させられる。従って、被処理物Pから圧搾された液分は、この通気ガスAとともに分離濾布8および圧搾ベルト15を介して該被処理物Pから分離させられ、回収板24に滴下して回収されるため、従来は十分な固液分離が困難とされていた被処理物Pに対しても十分な含液率の低減を図ることが可能となる。
【0034】
そして、こうして通気ガスAを噴出させて被処理物Pからの液分の分離を行っても、分離ロール7に巻き掛けられた外周側の他方の分離濾布8のさらに外周には、圧搾ベルト15が巻き掛けられてこの分離濾布8ごと被処理物Pを押さえ付けているので、たとえ脱液能力を高めるために通気ガスAの圧力を大きくしても、分離濾布1、8が浮き上がって圧力流体(通気ガスA)の分散が生じたり、あるいは分離濾布1、8の幅方向両端や走行方向F、Gの前後からケーキが吹き出したりするのを防ぐことができる。従って、通気ガスAにより確実に液分を除去することができて脱液効果の一層の向上を図ることができる。
【0035】
また、特に本実施形態の固液濾過装置では、分離ロール7の内周部に複数の通気ガスチャンバー10が周方向に互いに隔絶されてほぼ等間隔に形成されるとともに、これらの通気ガスチャンバー10に接続されて通気ガスAを供給する通気配管11には自動弁13が備えられていて、分離濾布1、8が巻き掛けられた範囲にある通気ガスチャンバー10のうち、さらに所定の回転位置にある通気ガスチャンバー10のみに、通気ガスAが連続して供給されるようになされている。
【0036】
このため、被処理物Pの脱液に関与しない部分で通気が行われて通気ガスAの供給量や供給のための動力、ランニングコストが増大するのを防ぐことができるのは勿論、分離濾布1、8の走行方向F、Gの前後での分離濾布1、8の浮き上がりやケーキの吹き出しを一層確実に防ぐことができ、その一方で脱液に関与する部分では、分離ロール7の回転に伴い自動弁13の開閉が順次切り替えられながら、通気ガスチャンバー10の回転位置に関わらずに常に通気ガスAが噴き出した状態を維持することができるので、一層効率的な液分の除去を促すことが可能となる。
【0037】
なお、このように通気ガスAによる分離濾布1、8の浮き上がりやケーキの吹き出しを一層確実に防ぐには、分離ロール7に巻き掛けられる圧搾ベルト15の面圧を、この分離ロール7の径方向に通気する通気ガスAの圧力(通気ガス圧)よりも大きくすることが望ましい。例えば、通気ガス圧が0.4MPaの場合は、圧搾ベルト15の面圧は0.5MPa程度とされるのが望ましい。そして、上記構成の固液分離装置では、上述した圧搾ベルト緊張装置17によって圧搾ベルト15の張力を調整することにより、この面圧も所定の大きさに制御することができる。
【0038】
また、本実施形態では、この圧搾ベルト15の通気度が分離濾布1、8の通気度より高くされており、通気によって被処理物Pから分離させられた液分を速やかに排出して上記回収板24から受け皿21に回収することができる。
【0039】
一方、このような固液分離装置を濾過手段4に対して濾布1の走行方向F側に備えた本実施形態の濾過装置では、この濾布1が固液分離装置における一対の分離濾布1、8の一方とされるとともに、分離ロール7が濾過装置の複数のロール2の1つとされている。このため、濾過手段4によって濾過された濾布1上の被処理物Pを、そのまま濾布1の走行によって固液分離装置に供給し、上述のように効率的に脱水することができる。
【0040】
従って、この濾過装置の濾過手段4によって濾過した被処理物Pを該濾過装置から一旦回収して、これとは別の遠心分離器やフィルタープレス等の2次脱水装置により脱水したりする必要がなく、また例えば既設の水平式真空濾過装置等の濾過装置にも、多少の改造を加える程度で適用することも可能であって、経済的である。また、液分が分離された被処理物Pを後段の乾燥装置において乾燥させたりする場合でも、やはり該乾燥装置における負担を軽減することができるとともに、このような後段の乾燥装置に製品を搬送する際にも、ベルトコンベアやスクリューコンベア等の搬送機器に液分の多い被処理物Pが付着することによるトラブル等も解決することが可能となる。
【0041】
また、上記固液分離装置および固液分離方法においては、上述のように濾布1の走行とともに回転する分離ロール7の外周において被処理物Pの脱水が行われるため、濾過装置におけるこの濾布1の走行が連続的なものであっても、間欠的なものであっても、上記押圧力と剪断力とさらに通気とによって効率的な脱水を図ることができる。従って、分離ロール7が連続的または間欠的に回転させられて濾布1が走行する場合は勿論、例えば濾布1をクランプして所定のストロークで走行方向Fに間欠移動させることにより走行させるような水平式真空濾過装置にも対応して適用することが可能である。
【0042】
そして、さらに本実施形態の固液分離装置では、その分離ロール7に巻き掛けられた一対の分離濾布1、8の外周にさらに圧搾ベルト15が巻き掛けられて押し付けられることにより、濾布1を分離ロール7外周に強く密着させて大きな摩擦力を発生させることができる。このため、たとえ通気によってこの摩擦力が低下しても、分離ロール7と分離濾布1との間に滑りを生じさせたりすることなく、一体的に分離ロール7を回転方向Tに回転させるとともに濾布1を安定して走行方向Fに走行させることができる。
【0043】
従って、このような固液分離装置を備えた濾過装置においては、本実施形態のようにこの分離ロール7を当該濾過装置における濾布1の駆動ロール2Aとすることができ、一対の分離濾布1、8の一方が濾過装置の濾布1と共用であることとも相俟って、設備コストやランニングコストの低減を図ることができる。特に、このような駆動ロール2Aは、濾布1を確実に走行させるためにある程度の直径が必要となるのに対し、分離ロール7も、その内周部に通気ガスチャンバー10が形成されるためにある程度の直径を要することになるので、これらを共用することによって他のロール2、14、16は、該駆動ロール2Aや分離ロール7よりも小径とすることができて、一層経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の濾過装置の一実施形態の概略を示す側面図である。
【図2】図1に示す濾過装置に用いられる、本発明の固液分離装置の一実施形態を示す側面図である。
【図3】図2に示す固液分離装置を図2の右側から見た一部破断背面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 濾布(分離濾布)
2、14、16 ロール
2A 駆動ロール
3 供給手段
4 濾過手段
7 分離ロール
8 分離濾布
9 貫通孔
10 通気チャンバー
11 通気配管
13 自動弁
15 圧搾ベルト
17 圧搾ベルト緊張装置
A 通気ガス
P 被処理物
F 濾布1の走行方向
G 分離濾布8の走行方向
H 圧搾ベルト15の走行方向
T 分離ロール7の回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に回転させられる分離ロールの外周に、無端状の一対の分離濾布が重ね合わされて巻き掛けられるとともに、該一対の分離濾布の外周にはさらに圧搾ベルトが巻き掛けられて、これら一対の分離濾布と上記圧搾ベルトとが上記分離ロールの回転方向に沿って走行可能とされており、上記一対の分離濾布の間に供給された被処理物が、上記分離ロールの外周で該分離濾布の間に挟み込まれて上記圧搾ベルトによって圧搾されるとともに、上記分離ロールの径方向に通気されることによって脱水させられることを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
上記圧搾ベルトは、上記分離濾布よりも通気度が高いことを特徴とする請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項3】
複数のロールに巻き掛けられて走行させられる濾布上に、供給手段から被処理物が供給されて、この供給手段よりも上記濾布の走行方向側に備えられた濾過手段により上記被処理物が濾過される濾過装置であって、上記濾過手段よりも上記走行方向側には、請求項1または請求項2に記載の固液分離装置が配設されていて、上記複数のロールのうち上記濾過手段よりも上記走行方向側に位置するロールが上記分離ロールとされるとともに、上記濾布が上記一対の分離濾布のうちの一方とされていることを特徴とする濾過装置。
【請求項4】
上記分離ロールが、上記濾布を走行させる駆動ロールであることを特徴とする請求項3に記載の濾過装置。
【請求項5】
周方向に回転させられる分離ロールの外周に、無端状の一対の分離濾布を重ね合わせて巻き掛けるとともに、該一対の分離濾布の外周にはさらに圧搾ベルトを巻き掛けて、これら一対の分離濾布と上記圧搾ベルトとを上記分離ロールの回転方向に沿って走行させ、上記一対の分離濾布の間に供給された被処理物を、上記分離ロールの外周で該分離濾布の間に挟み込んで上記圧搾ベルトによって圧搾するとともに、上記分離ロールの径方向に通気することによって脱水することを特徴とする固液分離方法。
【請求項6】
上記分離ロールに巻き掛けられる上記圧搾ベルトの面圧を、上記分離ロールの径方向に通気する通気ガス圧よりも大きくすることを特徴とする請求項5に記載の固液分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−104892(P2010−104892A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278408(P2008−278408)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【特許番号】特許第4381462号(P4381462)
【特許公報発行日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】