固液分離装置
【課題】複数の固定板と、隣り合う固定板の間に配置された可動板と、固定板及び可動板を貫通して延びる脱液スクリューとを有し、脱液スクリューの回転によって汚泥を搬送しながら、その汚泥の水分を固定板と可動板の間の隙間から流下させる固液分離装置において、可動板の摩耗を防止して固液分離装置のランニングコストを低減させる。
【解決手段】可動板12に被加圧部材39を着脱可能に取り付け、その被加圧部材39に駆動スクリュー41を挿通し、駆動スクリュー41の回転により被加圧部材39を加圧して、可動板12を往復動させる。
【解決手段】可動板12に被加圧部材39を着脱可能に取り付け、その被加圧部材39に駆動スクリュー41を挿通し、駆動スクリュー41の回転により被加圧部材39を加圧して、可動板12を往復動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を含む処理対象物から液体を分離する固液分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体を含む処理対象物から液体を分離する固液分離装置は従来より周知である。かかる固液分離装置によって処理される処理対象物としては、例えば、廃豆腐、食品加工排水、下水処理物、或いは養豚場から排出される廃水などの有機系汚泥、切削屑を含む切削油、メッキ廃液、インク廃液、顔料廃液、塗料廃液などの無機系汚泥、或いは野菜屑や果実の皮、フスマ、食品残渣などが挙げられる。
【0003】
上述した固液分離装置として、複数の可動板と、これらの可動板を貫通して延びる脱液スクリューを有する固液分離装置が公知である(特許文献1乃至3参照)。この形式の固液分離装置においては、脱液スクリューの回転によって処理対象物を搬送しながら脱液し、しかもその脱液スクリューの回転により可動板を作動させて、濾液排出間隙に固形分が詰まることを防止している。
【0004】
ところが、この種の固液分離装置においては、可動板は、回転する脱液スクリューにより加圧されて作動するので、可動板の内周面が経時的に摩耗する。このため、摩耗の進んだ可動板を新たな可動板と交換する必要があるが、可動板はかなりコストの高い部材であるため、かかる部材の交換に伴う固液分離装置のランニングコストが上昇する欠点を免れない。
【0005】
【特許文献1】特開平5−228695号公報
【特許文献2】特許第3565841号公報
【特許文献3】特許第3638597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来よりもランニングコストを低減できる固液分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、複数の可動板と、これらの可動板に接触することなく該可動板を貫通して延びる少なくとも1本の脱液スクリューと、各可動板に着脱可能に取り付けられた被加圧部材と、該被加圧部材を貫通して延びる駆動スクリューとを具備し、各被加圧部材は、回転する駆動スクリューにより加圧されて各被加圧部材に取り付けられた可動板と共に往復動するように形成されていることを特徴とする固液分離装置を提案する(請求項1)。
【0008】
また、上記請求項1に記載の固液分離装置において、前記脱液スクリューに接触しない状態で配置された複数の固定板を有し、隣り合う固定板の間に少なくとも1つの可動板が配置されていて、前記脱液スクリューは、前記可動板と固定板を貫通して延びていると有利である(請求項2)。
【0009】
さらに、上記請求項1又は2に記載の固液分離装置において、処理対象物搬送方向上流側に位置する複数の上流側可動板を往復動させる第1の駆動スクリューと、前記上流側可動板よりも処理対象物搬送方向下流側に位置する複数の下流側可動板を往復動させる第2の駆動スクリューを有し、前記複数の上流側可動板が、前記複数の下流側可動板よりも高速で往復動するように、前記第1及び第2の駆動スクリューが回転駆動されるように構成されていると有利である(請求項3)。
【0010】
また、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の固液分離装置において、前記可動板に取り付けられた被加圧部材が隣り合う可動板の間から離脱しないように、該被加圧部材の厚さが、隣り合う可動板の間の隙間の大きさよりも厚く形成され、前記駆動スクリューの軸線方向各端部側に位置する各被加圧部材が、保持手段によって、可動板から抜け出ることがないように保持されていると有利である(請求項4)。
【0011】
さらに、上記請求項2又は3に記載の固液分離装置において、前記可動板に取り付けられた被加圧部材が、隣り合う固定板の間に位置すると共に、該可動板とその隣りに位置する固定板の間の隙間の大きさよりも、前記被加圧部材の厚さが厚く設定されていると有利である(請求項5)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、各可動板が脱液スクリューによって作動するのではなく、各可動板に着脱可能に取付けられた被加圧部材を貫通して延びる駆動スクリューの回転により作動し、可動板は脱液スクリューに接触していないので、可動板の摩耗を従来よりも著しく低減でき、ないしは可動板の摩耗を実質的に阻止することが可能である。被加圧部材の摩耗が進んだときは、これを新たな被加圧部材と交換する必要があるが、被加圧部材は、可動板よりも小サイズのコストの低い部材であるため、固液分離装置のランニングコストを確実に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0014】
図1は、本例の固液分離装置の平面図であり、図2はその固液分離装置の垂直断面図である。これらの図に示した固液分離装置によって、先に例示したいずれの処理対象物又は他の処理対象物も固液分離することが可能であるが、ここでは、多量の水分を含んだ汚泥を脱水処理する場合について説明する。
【0015】
本例の固液分離装置は、後述するギア52,53を収容したギアボックス1と、出口部材2とを有し、これらの部材1,2の間には、複数の固定板13と可動板12が配置されている。また、可動板12と固定板13の上部は、着脱可能なカバー5によって覆われており、このカバー5は、ボルト85とナットによって、ギアボックス1と出口部材2とに着脱可能に固定されている。図3は、このカバー5を取り除いた状態での固液分離装置の平面図である。また、ギアボックス1の近傍のカバー部分には、処理対象物を投入するための投入口4が形成されている。
【0016】
図1乃至図3に示すように、出口部材2は、水平断面がほぼ矩形に形成され、かつ上部と下部が開口した形状を有している。かかる出口部材2の、固定板13と可動板12を向いた側の側壁16には開口37が形成され、これに対向して位置する側壁17には切欠38が形成されている。側壁17に形成された切欠38には、軸受板28が配置され、この軸受板28はボルト3と、これに螺着したナットとによって出口部材2に着脱可能に固定されている。ボルト3を緩めることにより、軸受板28を、出口部材2から分離することができる。出口部材2の下部開口は、脱水処理された汚泥が排出される排出口36を構成している。
【0017】
図4は複数の固定板13と複数の可動板12の配置状態を示し、図5は隣り合う2つの固定板13と、これらの固定板13の間に配置された1つの可動板12を示す斜視図である。また、図6は図2のVI−VI線断面図であって、一部の要素を簡略化して示した図である。これらの図から判るように、各可動板12は、隣り合う固定板13の間に配置されていて、各可動板12と各固定板13には、上部が開口した凹部14,15がそれぞれ形成されている。また、隣り合う固定板13の間にはリング状の複数のスペーサ30が配置され、各固定板13に形成された取付孔32,33と、各スペーサ30の中心孔とに、ステーボルト18,19が挿通されている。図示した例では、各固定板13の凹部15の下方に形成された2つの取付孔32を貫通する2本のステーボルト18と、凹部15の各側方に形成された2つの取付孔33を貫通する2本のステーボルト19の合計が4本のステーボルトが用いられている。図5には、これらのステーボルトのうちの1本のステーボルト19と、これが嵌合する1つのスペーサ30だけを示してある。このようにして、スペーサ30によって、隣り合う固定板13の間に間隙が形成され、ここに可動板12が配置されている。
【0018】
図2及び図3に示すように、ステーボルト18,19は、ギアボックス1の一方の側壁50と、出口部材2の一方の側壁16を貫通し、その各ステーボルト18,19の各端部に形成された雄ねじにナット20,20Aがそれぞれ螺着されて締め付けられている。このように、各固定板13は、スペーサ30によって互いに所定の間隙をあけて、その軸線方向に配列され、かつステーボルト18,19とナット20,20Aとによって互いに一体的に固定され、ギアボックス1と出口部材2に対して固定されている。スペーサによって互いに間隙をあけて配置された各固定板を、わずかに遊動できるように組み付けることもできる。
【0019】
図4に示すように、各可動板12の厚さTは、各固定板13の間の間隙幅Gよりも小さく設定され、各固定板13の端面と、これに対向する可動板12の端面の間には、例えば0.1乃至1mm程度の濾液排出間隙gが形成される。この濾液排出間隙gは、後述するように汚泥から分離された液体、すなわち濾液を通過させるものである。可動板12の厚さTと固定板13の厚さtは、例えば1乃至3mm程度に設定される。
【0020】
図6に示すように、各可動板12は、下側の2本のステーボルト18に嵌合したスペーサ30上に載せられている。これにより、各可動板12が下方に落下することが阻止され、しかも各可動板12は、隣り合う固定板13の間の隙間において、固定板13の端面と平行な方向に動くことができる。
【0021】
また、図1乃至図4及び図6に示すように、固液分離装置は、2本の脱液スクリュー21,22を有し、その各脱液スクリュー21,22は、軸部23,24と、その各軸部23,24に一体に形成されたらせん状の羽根部25,26を有している。各脱液スクリュー21,22は、固定板13に形成された凹部15と、可動板12に形成された凹部14と、出口部材2の側壁16に形成された開口37を貫通して伸びている。かかる脱液スクリュー21,22は、可動板12と固定板13と側壁16に接触することはない。なお、図6においては、脱液スクリュー21,22を二点鎖線で簡略化して示してある(図7、図8、図18、図19及び図20においても同じ)。
【0022】
また、図1乃至図3に示すように、出口部材2の側壁17に形成された切欠38に対向配置された軸受板28には、内部に軸受45,46が収容された軸受カップ47,48が固定され、各脱液スクリュー21,22の軸部23,24の一方の端部が、出口部材2に形成された切欠38を貫通して、各軸受カップ47,48内にそれぞれ挿入され、各軸受45,46を介して、その各軸受カップ47,48に回転自在に支持されている。さらに、ギアボックス1の各側壁50,51には、ギア52の固定されたギア軸54が、軸受を介して回転自在に支持されている。また、側壁51には減速機付きのモータ55が固定支持され、その出力軸56が両側壁50,51を貫通して延びている。この出力軸56にも、前述のギア53が固定され、このギア53と上述のギア52は、ギアボックス1の内部で互いに噛み合っている。
【0023】
ギア軸54の一方の端部と、出力軸56の一方の端部は、図2、図3及び図9に示すように、内部が中空に形成され、その中空部57の中央部に係合片58が固定配置されている。一方、図9に示すように、各脱液スクリュー21,22の軸部23,24の他方の端部には、係合溝59が形成され、その各軸部23,24の各端部は、図3に示すように、ギア軸54と出力軸56の中空部57に挿入され、各軸部23,24に形成された係合溝59がギア軸54と出力軸56に設けられた係合片58にそれぞれ着脱可能に係合している。
【0024】
モータ55が作動して、出力軸56が回転すると、その回転がギア53,52を介してギア軸54に伝えられると共に、出力軸56とギア軸54の回転は、互いに係合した係合片58と係合溝59を介して、各脱液スクリュー21,22に伝達され、各脱液スクリュー21,22が、図6に矢印で示したように、それぞれその中心軸線X1,X2(図3)のまわりに回転駆動される。
【0025】
上述のように、本例の固液分離装置においては、モータ55と、その出力軸56と、ギア軸54と、その各軸に固定されたギア53,52とによって、各脱液スクリュー21,22を回転駆動する駆動手段が構成されている。勿論、他の適宜な形態の駆動手段を採用することもでき、例えば、各脱液スクリュー21,22を別々のモータにより回転駆動することもできる。この場合には、駆動手段が2つのモータを具備する。
【0026】
図3及び図4に示すように、本例の固液分離装置の2本の脱液スクリュー21,22は、接触することなく、その羽根部25,26の一部が互いに重なった状態で配置されている。すなわち、両脱液スクリュー21,22を、その中心軸線X1,X2の方向に見たとき、両羽根部25,26の一部がオーバラップした状態で位置しているのである。これに対し、両脱液スクリュー21,22を、これらが互いに重ならない状態に配置することもできる。
【0027】
また、図示した例では、両脱液スクリュー21,22が、図3に示すように互いに平行に並置されているが、これらの脱液スクリュー21,22の中心軸線X1,X2が、0°よりも大きな角度をもった状態に、両脱液スクリュー21,22を並置してもよい。さらに、本例の固液分離装置においては、各脱液スクリュー21,22の羽根部25,26のピッチが、入口部材1の側から出口部材2の側に向けて漸次、小さくなっているが、このピッチを、各脱液スクリューの全長に亘って等しく設定することもできる。
【0028】
図2に示すように、ギアボックス1の一方の側壁50は下方に延び、その下端から水平方向に突出したフランジ部60が、固液分離装置を支持する台枠のステー61に着脱可能に固定されている。同様に出口部材2の一方の側壁16に突設されたフランジ部62も、台枠のステー63に着脱可能に固定されている。このように、複数のフランジ部60,62が台枠のステー61,63に固定されることにより、固液分離装置の全体が台枠に支持されている。
【0029】
また、図3、図5及び図6に示すように、各可動板12はアーム部34を有している。図10は、1つの可動板12のアーム部34を示し、図11は図10の矢印XI方向に見た図である。図5、図6、図10及び図11に示すように、アーム部34の先端部に形成された取付孔35には、被加圧部材39が着脱可能ではあるが、可動板12に対して回転することがないように嵌合している。これらの被加圧部材39には長孔40が貫通形成され、その各長孔40には駆動スクリュー41が嵌合している。この駆動スクリュー41も、軸部42と、この軸部42に一体に形成されたらせん状の羽根部43とを有し、かかる駆動スクリュー41が長孔40に貫通して延びている。その際、図11に示すように、各被加圧部材39に形成された長孔40の短軸の長さWは、駆動スクリュー41の羽根部43の直径Hよりも小さく設定され、孔40の長軸の長さLは、羽根部43の直径Hよりも大きく設定されている。なお、図4には各可動板12に嵌合した被加圧部材39の図示は省略してある。
【0030】
上述のように、本例の固液分離装置は、各可動板に着脱可能に取付けられた被加圧部材と、その被加圧部材を貫通して延びる駆動スクリューを具備している。
【0031】
また、この駆動スクリュー41は、図3に示すように、出口部材2の側壁16に形成された開口37(図2)を貫通して延び、その一方の端部が、出口部材2に形成された切欠38を貫通して、軸受板28に固定された軸受カップ69に挿入され、この軸受カップ69に収容された軸受70を介して、軸受カップ69に回転自在に支持されている。
【0032】
一方、図3に示すように、ギアボックス1の各側壁50,51には、軸受を介して駆動軸44が回転自在に支持され、この駆動軸44に固定されたスプロケット64と、前述のギア軸54に固定されたスプロケット65には、無端状のチェーン71が巻き掛けられている。また、図12に示すように、駆動軸44も内部が中空に形成され、その中空部に係合片66が固定されている。かかる駆動軸44に同心状に駆動スクリュー41が配置され、その駆動スクリュー41の他方の端部が駆動軸44の中空部に挿入され、駆動スクリュー41の端部に形成された係合溝67が駆動軸44に固定された係合片66に着脱可能に係合している。駆動軸44と駆動スクリュー41は、脱液スクリュー21,22に対してほぼ平行に延びている。
【0033】
モータ55が作動すると、前述のように、その回転がギア53,52を介してギア軸54に伝えられ、そのギア軸54の回転は、スプロケット65,64及びチェーン71を介して駆動軸44に伝えられ、その駆動軸44の回転が駆動スクリュー41に伝達され、駆動スクリュー41がその中心軸線のまわりに回転する。
【0034】
図11に示すように、本例の可動板12に形成された取付孔35は矩形に形成され、かかる取付孔35に嵌合した被加圧部材39も矩形に形成されていて、これによって被加圧部材39が可動板12に対して回転することが阻止される。また、各被加圧部材39は、可動板12に形成された取付孔35に圧入され、被加圧部材39の外周面と取付孔35の内周面との摩擦力によって、被加圧部材39が取付孔35から離脱することなく保持されている。
【0035】
次に、固液分離装置の作用を説明しながら、固液分離装置の他の構成について明らかにする。
【0036】
図2に矢印Aで示すように、多量の水分を含んだ汚泥(図示せず)が投入口4から、固定板13及び可動板12の凹部15,14と、カバー5とにより区画された空間Sに流入する。処理前の汚泥の含水率は、例えば99重量%程度である。この汚泥には、予め凝集剤が混入され、その汚泥がフロック化されている。処理対象物によっては、凝集剤が混入されないものもある。
【0037】
このとき、モータ55の作動によって、出力軸56と脱液スクリュー22が回転駆動され、この回転は、ギア53,52を介してギア軸54に伝えられ、これによって脱液スクリュー21も回転駆動される。このように、2本のスクリュー21,22が、その中心軸線X1,X2の周りに回転することにより、投入口4からに流入した汚泥は、図2に矢印Bで示すように、出口部材2の側へ向けて搬送される。各脱液スクリュー21,22の羽根部25,26の巻き方向とその回転方向は、投入口4から流入した汚泥が、両脱液スクリュー21,22の回転によってギアボックス1の側から出口部材2の側に向けて搬送されるように設定されている。
【0038】
上述のように、交互に配置された可動板12と固定板13の凹部14,15と、カバー5により区画された空間S中を汚泥が移動するとき、その汚泥から水分が分離され、その分離された水分、すなわち濾液が各固定板13と可動板12の間の濾液排出間隙g(図4)を通して外部に排出される。このように排出された濾液は、図2に矢印C1,C2,C3,C4で示すように下方に流下し、各ステー61,63に固定された受皿6に受け止められ、その受皿6の排出口7から下方に排出される。この濾液中には、未だ固形分が多少含まれているので、当該濾液は、再度、他の汚泥と共に水処理され、次いで固液分離装置によって脱水処理される。
【0039】
上述のようにして、空間S中を搬送される汚泥の含水率が下げられ、含水量の減少した汚泥は、図2に矢印Dで示すように、出口部材2に形成された開口37を通して、出口部材2内に排出され、排出口36から下方に落下する。このようにして脱水処理された後の汚泥の含水率は、例えば80重量%前後である。図1乃至図3に示すように、出口部材2の一方の側壁16に対向して、各脱液スクリュー21,22の軸部23,24に背圧板73,74が固定されており、これによって空間S内の汚泥に加えられる圧力を高めることができる。
【0040】
一方、ギア軸54の回転は、この軸54に固定されたスプロケット65と、チェーン71と、駆動軸44に固定されたスプロケット64を介して駆動軸44に伝えられ、その駆動軸44の回転が駆動スクリュー41に伝達される。このとき、図11を参照して先に説明したように、被加圧部材39に形成された長孔40の短軸の長さWは、駆動スクリュー41の羽根部43の直径Hよりも小さく設定されているので、駆動スクリュー41が回転することによって、長孔40の長軸に平行な各面75,76が駆動スクリューの羽根部43によって交互に加圧される。これにより、被加圧部材39は、その被加圧部材39が取り付けられた可動板12と共に、長孔40の短軸の長さWと駆動スクリュー41の羽根部43の直径の大きさによって定まる所定のストロークで往復動する。各被加圧部材39は、回転する駆動スクリュー41により加圧されて、各被加圧部材39が取り付けられた可動板12と共に往復動するように形成されているのである。以下、この点をより具体的に説明する。
【0041】
図6に簡略化して示した駆動スクリュー41の羽根部43が長孔40の内周面に接触していないとき、その被加圧部材39と可動板12は中央位置を占めている。これに対し、駆動スクリュー41の回転に伴って、その羽根部43が、長孔40の一方の面75を加圧し始めると、被加圧部材39と可動板12は図6の右方に移動し、遂には図7に示した最右端位置に至る。駆動スクリュー41がさらに回転して、その羽根部43が長孔40の他方の面76を加圧し始めると、被加圧部材39と可動板12は図7の左方に移動し始め、遂には図8に示した最左端位置に至る。このようにして、駆動スクリュー41の回転によって、可動板12が、下側に位置する2つのスペーサ30に支持されながら、図6乃至図8における左右が往復するのである。なお、図7及び図8には、カバーの図示を省略してある。
【0042】
これに対し、固定板13は不動であるため、可動板12は固定板13に対して相対的に作動する。このため、可動板12と固定板13の間の濾液排出間隙g(図4)に入り込んだ固形分は、固定板13に対する可動板12の運動によって、その間隙gから効率よく排出され、ここに詰まったままとなることが阻止される。
【0043】
しかも、駆動スクリュー41は、固定板13にだけでなく、可動板12にも接触することはないので、その可動板12が駆動スクリュー41との接触によって摩耗したり、削り取られることはない。このため、可動板12の寿命が極めて長くなり、或いは可動板12を交換する必要がなくなる。可動板12は、かなり大サイズのコストの高い部材であるため、その交換頻度が高まれば、固液分離装置のランニングコストが上昇するが、本例の固液分離装置によれば、このような不具合を阻止できるのである。
【0044】
但し、被加圧部材39は駆動スクリュー41によって加圧されるので、被加圧部材39が経時的に摩耗することは避けられず、その摩耗が進んだ段階で、被加圧部材39を交換する必要があるが、被加圧部材39は、可動板12に比べて小サイズのコストの低い部材であるため、固液分離装置のランニングコストが従来のように高くなることはない。
【0045】
ところで、汚泥の脱水処理スピードを高めるには、固定板と可動板との間の濾液排出間隙に入り込んだ固形分を迅速に排出させ、濾液排出間隙を通して多量の濾液が排出されうようにする必要がある。その際、従来の固液分離装置は、脱液スクリューの回転によって可動板を押し動かしていたので、濾液排出間隙に入り込んだ固形分を迅速に排出させるには、脱液スクリューの回転速度を高め、可動板を高速度で作動させるほかはない。ところが、このようにすると、汚泥が搬送される速度も速くなるので、汚泥に対する脱水時間が短くなり、結局脱水効率が低下してしまう。
【0046】
これに対し、本例の固液分離装置においては、ギア軸54に固定されたスプロケット65と、駆動軸44に固定されたスプロケット64の歯数比を変えることによって、脱液スクリュー21,22の回転数と、駆動スクリュー41の回転数の比を実質的に自由に変えることができる。このため、脱液スクリュー21,22の回転速度を遅くして、汚泥に対する脱水に充分に長い時間をかけ、汚泥の脱水効率を高めると共に、駆動スクリュー41の回転速度を速め、可動板12を高速度で作動させて濾液排出間隙gに入り込んだ固形分を迅速に排出させ、脱水処理スピードを高めることができる。
【0047】
次に、被加圧部材39の交換方向の一例を説明する。
【0048】
先ず、モータ55の作動を停止させた状態で、図1に示したボルト85を緩めてカバー5を上方に持ち上げ、該カバーを取り外す。これにより、図3に示すように、脱液スクリュー21,22と可動板12と固定板13の上部が開放される。次に図3に示したボルト3を緩めてこれを取り外し、軸受板28を矢印E方向に引いて、各軸受カップ47,48,69を各スクリュー21,22,41の軸部23,24,42の一方の端部から離脱する。これにより、各スクリュー21,22,41の一方の端部側を拘束するものがなくなる。
【0049】
次いで、脱液スクリュー21,22を矢印F方向に引くことにより、図9に示したように、各脱液スクリュー21,22の軸部23,24の他方の端部を、ギア軸54と出力軸56の中空部57から外し、各脱液スクリュー21,22を出口部材2の側壁16,17に形成された開口37と切欠38を通して矢印F方向に抜き出す。特許第3638597号公報に記載されているように、脱液スクリュー21,22を上方に持ち上げて、これを取り外すように構成することもできる。
【0050】
同様に、駆動スクリュー41を矢印I方向に引き、図12に示したように、駆動スクリュー41の軸部42の端部を駆動軸44から外し、その駆動スクリュー41を、出口部材2の側壁16に形成された開口68と側壁17に形成された切欠38を通して矢印I方向に引き抜く。
【0051】
上述のように、スクリュー21,22,41を取り外した後、各可動板12を上方に持ち上げて、これを被加圧部材39と共に取り外す。このようにすれば、各可動板12に形成された取付孔35に摩擦係合した被加圧部材39を、手操作により、又は適宜な工具を用いて、取付孔35から容易に取り外すことができる。次いで、手操作により、又は適宜な工具を用いて、新たな被加圧部材39を取付孔35に押し込んで嵌合し、その取付孔35の内周面と被加圧部材39の外周面との摩擦力によって被加圧部材39を取付孔35に保持する。あとは、上述したところと逆の手順で、各可動板12とスクリュー21,22,41を組み付け、カバー5を装着すればよい。
【0052】
次に、図13に示した固液分離装置においては、駆動スクリューが軸線方向に2分割されている。すなわち、処理対象物が搬送される空間Sを、その搬送方向上流側と下流側に分け、前者を濃縮ゾーンZ1とし、後者を脱水ゾーンZ2とすると共に、濃縮ゾーンZ1に位置する可動板を上流側可動板12Aとし、脱水ゾーンZ2に位置する可動板を下流側可動板12Bとしたとき、上流側可動板12Aと、下流側可動板12Bをそれぞれ別個に作動させる第1の駆動スクリュー41Aと第2の駆動スクリュー41Bが設けられている。固液分離装置が、処理対象物搬送方向上流側に位置する複数の上流側可動板12Aを往復動させる第1の駆動スクリュー41Aと、上流側可動板12Aよりも処理対象物搬送方向下流側に位置する複数の下流側可動板12Bを往復動させる第2の駆動スクリュー41Bを有しているのである。これらの駆動スクリュー41A,41Bも、軸部42A,42Bと、その各軸部42A,42Bに一体に形成されたらせん状の羽根部43A,43Bを有している。
【0053】
上述の軸部42A,42Bの互いに隣接する側の各端部は、共通の軸受72に回転自在に支持されている。この軸受72は、図示していないブラケットを介して、固液分離装置の台枠に、第1及び第2の駆動スクリュー41A,41Bの軸線方向J,Kに移動可能に、かつそのブラケットに対して着脱可能に固定支持されている。軸受72が図11に示した位置にあるときは、その軸受はブラケットに対して固定されているが、この軸受け72を矢印J方向に移動させることによって、当該軸受72をブラケットから離脱することができるのである。
【0054】
また、図10に示すように、各可動板12A,12Bに形成された取付孔35A,35Bには、先に説明した固液分離装置の被加圧部材と同じく構成された被加圧部材39A,39Bが、着脱可能に嵌合し、その各被加圧部材39A,39Bに形成された長孔40A,40Bに第1及び第2の駆動スクリュー41A,41Bがそれぞれ嵌合している。この場合も、取付孔35A,35Bの内周面と、被加圧部材39A,39Bの外周面との摩擦力によって、被加圧部材39A,39Bが取付孔35A,35Bから離脱することが阻止される。また、図13に示すように、スペーサ30を介して互いに間隔をあけて配置された隣り合う固定板13,13Aの間に各可動板12A,12Bがそれぞれ配置され、第1及び第2の駆動スクリュー41A,41Bが固定板13,13Aと可動板12A,12Bに接触していないことも、先に説明した固液分離装置と変りはないが、図13に示した固液分離装置の軸受72に対向して位置する固定板13Aは、他の固定板13よりも、その厚さが厚く形成されている。
【0055】
第1の駆動スクリュー41Aにおける軸部42Aのギアボックス1の側の端部は、駆動軸44に、図12に示したところと同様に着脱可能に連結され、第2の駆動スクリュー41Bの軸部42Bは出口部材2の側壁16に形成された開口37を貫通し、かつその軸部42Bの出口部材2の側の端部が軸受カップ69に収容された軸受70に回転自在に支持されていることも図1乃至図12に示した固液分離装置と同様である。
【0056】
また、駆動軸44と、ギア軸54にスプロケット64,65がそれぞれ固定され、これらのスプロケット64,65にチェーン71が巻き掛けられていることも、先に示した固液分離装置と変りはないが、図13に示した固液分離装置においては、さらに出口部材2側の第2の駆動スクリュー41Bの軸部42Bと脱液スクリュー21の軸部23にもスプロケット77,78がそれぞれ固定され、これらのスプロケット77,78に無端状のチェーン79が巻き掛けられている。このため、モータ55の回転は、別々のチェーン71と79を介して、第1の駆動スクリュー41Aと第2の駆動スクリュー41Bにそれぞれ伝達される。これにより、先に説明した実施形態例の固液分離装置と同じく、各可動板12A,12Bに着脱可能に取り付けられた被加圧部材39A,39Bが第1及び第2の駆動スクリュー41A,41Bの羽根部43A,43Bによって加圧され、各可動板12A,12Bが所定のストロークで往復動する。その際、複数の上流側可動板12Aが、複数の下流側可動板12Bよりも高速で往復動するように、第1及び第2の駆動スクリュー41A,41Bが回転駆動される。例えば、上流側可動板12Aが下流側可動板12Bよりも高速で作動するように、スプロケット64と65の歯数比と、他のスプロケット77と78の歯数比が設定されるのである。
【0057】
一般に濃縮ゾーンZ1を移動する汚泥の含水率は非常に高いので、かかる汚泥から多量の水分を抜き出す必要がある。本例の固液分離装置においては、上流側可動板12Aは高速で往復動するので、濃縮ゾーンZ1を移動する汚泥から、可動板12Aと固定板13との間の濾液排出間隙に入り込んだ固形分を迅速に排出させることができ、多量の水分を抜き出すことができる。一方、脱水ゾーンZ2を移動する汚泥の含水率は、既に低下していて、この脱水ゾーンZ2における内圧が大きくなっている。このため、下流側可動板12Bが高速で往復動したとすると、脱水の進んだ汚泥が可動板12Bと固定板13との間の濾液排出間隙に多量に入り込んでしまう。ところが、本例の固液分離装置においては、下流側可動板12Bは低速で往復動するので、濾液排出間隙に多量の固形分が入り込む不具合を阻止することができる。
【0058】
次に図13に示した固液分離装置の被加圧部材の交換方法の一例を説明する。
【0059】
この場合も、先に説明した固液分離装置の場合と同じく、軸受板28を出口部材2から外し、脱液スクリュー21,22を矢印F方向に抜き出す。これと共に、第2の駆動スクリュー41Bを矢印I方向に引いて、その第2の駆動スクリュー41Bの軸受72側の端部をその軸受72から外して、当該第2の駆動スクリュー41Bを被加圧部材39B(図10)から抜き出す。次いで全ての下流側可動板12Bを上方に持ち上げて、これらの可動板12Bを固定板13の間から離脱する。引き続き、図13に示した軸受72を矢印J方向に移動させて、第1の駆動スクリュー41Aの軸部42Aの端部から軸受72を外すと共に、その軸受72をブラケットから離脱して該軸受72を上方に持ち上げる。さらに、第1の駆動スクリュー41Aを矢印M方向に引いて、その軸部42Aのギアボックス1の側の端部を駆動軸44から外し、第1の駆動スクリュー41Aを被加圧部材39A(図10)から抜き出す。
【0060】
その後、全ての上流側可動板12Aを上方に持ち上げて、これらの可動板12Aを固定板13の間から離脱する。このようにして固定板13の間から抜き出した各可動板12A,12Bの取付孔35A,35B(図10)に摩擦係合した被加圧部材39A,39Bを手操作又は工具を用いて取り外し、新たな被加圧部材39A,39Bをその取付孔35A,35Bに押し込んで嵌合する。あとは、上述した手順と逆の手順で、各要素を組み付ければよい。
【0061】
図13に示した固液分離装置の他の構成は、先に説明した固液分離装置と実質的に変りはない。
【0062】
以上説明した固液分離装置においては、その被加圧部材39,39A,39Bが可動板12,12A,12Bに形成された取付孔35,35A,35Bに、単に摩擦係合によって取り付けられているが、これに代えて次の構成を採用することもできる。
【0063】
図14は、各可動板12の取付孔35に嵌合した被加圧部材39の配置状態を示す概略図である。この図においては、駆動スクリューの図示を省略してあると共に、最もギアボックス1の近くに位置する被加圧部材39と、最も出口部材2の近くに位置する被加圧部材39に対して、特に符号39Xと39Yを付してある。この被加圧部材39Xは、これが嵌合した可動板12の取付孔35から抜け出ることがないように、ギアボックス1の側壁50によって押えられ、被加圧部材39Yも、これが嵌合した可動板12の取付孔35から抜け出ることがないように、出口部材2の側壁16によって押えられている。しかも、各被加圧部材39が隣り合う可動板12の間から離脱しないように、各被加圧部材39の厚さT1は、隣り合う可動板12の間の隙間Nの大きさよりも大きく設定されている。このため、各被加圧部材39は、各可動板12の取付孔35にそれぞれ嵌合した状態を維持し、各被加圧部材39が可動板12の取付孔35から離脱することが阻止される。ギアボックス1の側壁50と、出口部材2の側壁16は、端部に位置する被加圧部材39X,39Yが、可動板12の取付孔35から抜け出ることがないように、その各被加圧部材39X,39Yを押える保持手段の一例を構成するものである。
【0064】
上述のように、図14に示した固液分離装置においては、可動板12に取り付けられた被加圧部材39が隣り合う可動板12の間から離脱しないように、その被加圧部材39の厚さが、隣り合う可動板12の間の隙間Nの大きさよりも厚く形成され、しかも駆動スクリューの軸線方向各端部側に位置する各被加圧部材39X,39Yが、保持手段によって、可動板12から抜け出ることがないように保持されているのである。かかる構成により、被加圧部材39が可動板12に形成された取付孔35から離脱してしまうことをより確実に阻止できる。
【0065】
また、図15に示すように、各固定板13を、可動板12に形成された取付孔35に嵌合した被加圧部材39が位置するところまで長く延ばし、可動板12に取り付けられた被加圧部材39を、隣り合う固定板13の間に配置すると共に、可動板12とその隣りに位置する固定板の間の隙間g1の大きさよりも、被加圧部材39の厚さT1を厚く設定しても、被加圧部材39が可動板12に形成された取付孔35から離脱することを阻止できる。なお、図15においても、駆動スクリューの図示は省略してある。
【0066】
図14及び図15に示した固液分離装置によれば、各被加圧部材39を、可動板12の取付孔35に圧入せずに、多少の遊びをもって嵌合しても、その被加圧部材39が取付孔35から脱落することはない。このため、前述のように被加圧部材39を取付孔35から着脱するときの操作性を高めることができる。
【0067】
また、図16に示すように、被加圧部材39に形成された突起80を、可動板12に形成された凹溝81に着脱可能に嵌合して、被加圧部材39を可動板12に着脱可能に取り付けることもできる。この被加圧部材39にも、長孔40が形成され、ここに駆動スクリュー41が嵌合する。
【0068】
さらに、図17に示すように、可動板12に着脱可能に取り付けられた被加圧部材39に長溝82を形成し、この長溝82に駆動スクリュー41を嵌合し、その駆動スクリュー41の回転によって被加圧部材39と可動板12を往復動させるように構成することもできる。
【0069】
図14乃至図17に示した各構成は、図1乃至図10に示した固液分離装置だけでなく、図13に示した固液分離装置にも適用できることは当然である。
【0070】
また、以上説明した固液分離装置は、2本の脱液スクリュー21,22を有しているが、脱液スクリューの数は1本を含む適数に設定できる。図18は、1本の脱液スクリュー21を有する固液分離装置を示し、図19は、3本の脱液スクリュー21,22,22Aを有する固液分離装置を示す。また、図20は4本の脱液スクリュー21,22,22A,22Bを有する固液分離装置を示している。いずれの固液分離装置も、可動板12と固定板13を貫通して延びる脱液スクリューが、可動板12と固定板13に接触せず、駆動スクリュー41の回転により、被加圧部材39が加圧されて、可動板12が往復動する。他の構成は、先に説明した固液分離装置の構成と実質的に変りはない。このように、本発明に係る固液分離装置は、複数の可動板と、これらの可動板に接触することなく、該可動板を貫通して延びる少なくとも1本の脱液スクリューを有しているのである。
【0071】
さらに、それ自体周知なように、各可動板と固定板をリング状に形成し(例えば、特開平5−228695号公報及び特許第3565841号公報参照)、少なくとも1本の脱液スクリューが、その可動板と固定板の中心孔を貫通して延びるように構成することもできる。この場合も、脱液スクリューは、可動板と固定板に接触することはない。他の構成は、先に説明した各実施形態例の構成と実質的に変りはない。
【0072】
また、図示した例では、隣り合う固定板13の間に1つの可動板12が配置されているが、隣り合う固定板13の間に複数の可動板12を配置してもよいことは当然である。同様に、図示した固液分離装置の脱液スクリュー21,22,22A,22Bと、駆動スクリュー41,41A,41Bは、らせん状に延びる1つの羽根を有しているが、らせん状に延びる複数の羽根を有するスクリューを採用してもよいことも当然である。
【0073】
さらに、以上説明した固液分離装置は、脱液スクリューに接触しない状態で配置された複数の固定板13を有し、隣り合う固定板13の間に少なくとも1つの可動板が配置されていて、脱液スクリューが可動板と固定板を貫通して延びるように構成されているが、固定板を設けずに、可動板だけを多数枚重ねて配置し、その多数の可動板に、少なくとも1本の脱液スクリューを貫通させ、各可動板の間の間隙を通して濾液を排出させるように構成することもできる。
【0074】
また、それ自体公知のように、空間Sへの処理対象物投入側が、液体分の減少した処理対象物の排出側よりも低くなるように、複数の可動板を傾斜して配置し、空間S内の処理対象物が排出側に近づくに従って、その処理対象物により一層大きな圧力が加えられるように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】固液分離装置の平面図である。
【図2】図1に示した固液分離装置の垂直断面図である。
【図3】カバーを取り外した状態での固液分離装置の平面図である。
【図4】図3に示した固液分離装置の固定板と可動板と脱液スクリューの拡大平面図である。
【図5】隣り合う固定板と、その間に配置された可動板の斜視図である。
【図6】図2のVI−VI拡大断面図であって、一部の要素を簡略化して示した図である。
【図7】可動板の動きを説明する、図6と同様な断面図である。
【図8】可動板の動きを説明する、図6と同様な断面図である。
【図9】ギア軸及び出力軸と、スクリューの軸部の連結状態を示す斜視図である。
【図10】可動板と、この可動板に取り付けられた被加圧部材と、駆動スクリューの拡大説明図であり、図13に示した固液分離装置の説明にも用いた図である。
【図11】図10の矢印XI方向に見た図である。
【図12】駆動スクリューと駆動軸との連結状態を示す斜視図である。
【図13】固液分離装置の他の例を示す、図3と同様な平面図である。
【図14】可動板と、その可動板に取り付けられた被加圧部材の他の例を示す図である。
【図15】可動板と、その可動板に取り付けられた被加圧部材のさらに他の例を示す図である。
【図16】可動板に連結された被加圧部材の他の例を示す、図11と同様な図である。
【図17】可動板に連結された被加圧部材の他の例を示す、図11と同様な図である。
【図18】1本の脱液スクリューを有する固液分離装置を示す、図6と同様な断面図である。
【図19】3本の脱液スクリューを有する固液分離装置を示す、図6と同様な断面図である。
【図20】4本の脱液スクリューを有する固液分離装置を示す、図6と同様な断面図である。
【符号の説明】
【0076】
12,12A,12B 可動板
13,13A 固定板
21,22,22A,22B 脱液スクリュー
39,39A,39B,39X,39Y 被加圧部材
41,41A,41B 駆動スクリュー
g1,N 隙間
T1 厚さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を含む処理対象物から液体を分離する固液分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体を含む処理対象物から液体を分離する固液分離装置は従来より周知である。かかる固液分離装置によって処理される処理対象物としては、例えば、廃豆腐、食品加工排水、下水処理物、或いは養豚場から排出される廃水などの有機系汚泥、切削屑を含む切削油、メッキ廃液、インク廃液、顔料廃液、塗料廃液などの無機系汚泥、或いは野菜屑や果実の皮、フスマ、食品残渣などが挙げられる。
【0003】
上述した固液分離装置として、複数の可動板と、これらの可動板を貫通して延びる脱液スクリューを有する固液分離装置が公知である(特許文献1乃至3参照)。この形式の固液分離装置においては、脱液スクリューの回転によって処理対象物を搬送しながら脱液し、しかもその脱液スクリューの回転により可動板を作動させて、濾液排出間隙に固形分が詰まることを防止している。
【0004】
ところが、この種の固液分離装置においては、可動板は、回転する脱液スクリューにより加圧されて作動するので、可動板の内周面が経時的に摩耗する。このため、摩耗の進んだ可動板を新たな可動板と交換する必要があるが、可動板はかなりコストの高い部材であるため、かかる部材の交換に伴う固液分離装置のランニングコストが上昇する欠点を免れない。
【0005】
【特許文献1】特開平5−228695号公報
【特許文献2】特許第3565841号公報
【特許文献3】特許第3638597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来よりもランニングコストを低減できる固液分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、複数の可動板と、これらの可動板に接触することなく該可動板を貫通して延びる少なくとも1本の脱液スクリューと、各可動板に着脱可能に取り付けられた被加圧部材と、該被加圧部材を貫通して延びる駆動スクリューとを具備し、各被加圧部材は、回転する駆動スクリューにより加圧されて各被加圧部材に取り付けられた可動板と共に往復動するように形成されていることを特徴とする固液分離装置を提案する(請求項1)。
【0008】
また、上記請求項1に記載の固液分離装置において、前記脱液スクリューに接触しない状態で配置された複数の固定板を有し、隣り合う固定板の間に少なくとも1つの可動板が配置されていて、前記脱液スクリューは、前記可動板と固定板を貫通して延びていると有利である(請求項2)。
【0009】
さらに、上記請求項1又は2に記載の固液分離装置において、処理対象物搬送方向上流側に位置する複数の上流側可動板を往復動させる第1の駆動スクリューと、前記上流側可動板よりも処理対象物搬送方向下流側に位置する複数の下流側可動板を往復動させる第2の駆動スクリューを有し、前記複数の上流側可動板が、前記複数の下流側可動板よりも高速で往復動するように、前記第1及び第2の駆動スクリューが回転駆動されるように構成されていると有利である(請求項3)。
【0010】
また、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の固液分離装置において、前記可動板に取り付けられた被加圧部材が隣り合う可動板の間から離脱しないように、該被加圧部材の厚さが、隣り合う可動板の間の隙間の大きさよりも厚く形成され、前記駆動スクリューの軸線方向各端部側に位置する各被加圧部材が、保持手段によって、可動板から抜け出ることがないように保持されていると有利である(請求項4)。
【0011】
さらに、上記請求項2又は3に記載の固液分離装置において、前記可動板に取り付けられた被加圧部材が、隣り合う固定板の間に位置すると共に、該可動板とその隣りに位置する固定板の間の隙間の大きさよりも、前記被加圧部材の厚さが厚く設定されていると有利である(請求項5)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、各可動板が脱液スクリューによって作動するのではなく、各可動板に着脱可能に取付けられた被加圧部材を貫通して延びる駆動スクリューの回転により作動し、可動板は脱液スクリューに接触していないので、可動板の摩耗を従来よりも著しく低減でき、ないしは可動板の摩耗を実質的に阻止することが可能である。被加圧部材の摩耗が進んだときは、これを新たな被加圧部材と交換する必要があるが、被加圧部材は、可動板よりも小サイズのコストの低い部材であるため、固液分離装置のランニングコストを確実に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0014】
図1は、本例の固液分離装置の平面図であり、図2はその固液分離装置の垂直断面図である。これらの図に示した固液分離装置によって、先に例示したいずれの処理対象物又は他の処理対象物も固液分離することが可能であるが、ここでは、多量の水分を含んだ汚泥を脱水処理する場合について説明する。
【0015】
本例の固液分離装置は、後述するギア52,53を収容したギアボックス1と、出口部材2とを有し、これらの部材1,2の間には、複数の固定板13と可動板12が配置されている。また、可動板12と固定板13の上部は、着脱可能なカバー5によって覆われており、このカバー5は、ボルト85とナットによって、ギアボックス1と出口部材2とに着脱可能に固定されている。図3は、このカバー5を取り除いた状態での固液分離装置の平面図である。また、ギアボックス1の近傍のカバー部分には、処理対象物を投入するための投入口4が形成されている。
【0016】
図1乃至図3に示すように、出口部材2は、水平断面がほぼ矩形に形成され、かつ上部と下部が開口した形状を有している。かかる出口部材2の、固定板13と可動板12を向いた側の側壁16には開口37が形成され、これに対向して位置する側壁17には切欠38が形成されている。側壁17に形成された切欠38には、軸受板28が配置され、この軸受板28はボルト3と、これに螺着したナットとによって出口部材2に着脱可能に固定されている。ボルト3を緩めることにより、軸受板28を、出口部材2から分離することができる。出口部材2の下部開口は、脱水処理された汚泥が排出される排出口36を構成している。
【0017】
図4は複数の固定板13と複数の可動板12の配置状態を示し、図5は隣り合う2つの固定板13と、これらの固定板13の間に配置された1つの可動板12を示す斜視図である。また、図6は図2のVI−VI線断面図であって、一部の要素を簡略化して示した図である。これらの図から判るように、各可動板12は、隣り合う固定板13の間に配置されていて、各可動板12と各固定板13には、上部が開口した凹部14,15がそれぞれ形成されている。また、隣り合う固定板13の間にはリング状の複数のスペーサ30が配置され、各固定板13に形成された取付孔32,33と、各スペーサ30の中心孔とに、ステーボルト18,19が挿通されている。図示した例では、各固定板13の凹部15の下方に形成された2つの取付孔32を貫通する2本のステーボルト18と、凹部15の各側方に形成された2つの取付孔33を貫通する2本のステーボルト19の合計が4本のステーボルトが用いられている。図5には、これらのステーボルトのうちの1本のステーボルト19と、これが嵌合する1つのスペーサ30だけを示してある。このようにして、スペーサ30によって、隣り合う固定板13の間に間隙が形成され、ここに可動板12が配置されている。
【0018】
図2及び図3に示すように、ステーボルト18,19は、ギアボックス1の一方の側壁50と、出口部材2の一方の側壁16を貫通し、その各ステーボルト18,19の各端部に形成された雄ねじにナット20,20Aがそれぞれ螺着されて締め付けられている。このように、各固定板13は、スペーサ30によって互いに所定の間隙をあけて、その軸線方向に配列され、かつステーボルト18,19とナット20,20Aとによって互いに一体的に固定され、ギアボックス1と出口部材2に対して固定されている。スペーサによって互いに間隙をあけて配置された各固定板を、わずかに遊動できるように組み付けることもできる。
【0019】
図4に示すように、各可動板12の厚さTは、各固定板13の間の間隙幅Gよりも小さく設定され、各固定板13の端面と、これに対向する可動板12の端面の間には、例えば0.1乃至1mm程度の濾液排出間隙gが形成される。この濾液排出間隙gは、後述するように汚泥から分離された液体、すなわち濾液を通過させるものである。可動板12の厚さTと固定板13の厚さtは、例えば1乃至3mm程度に設定される。
【0020】
図6に示すように、各可動板12は、下側の2本のステーボルト18に嵌合したスペーサ30上に載せられている。これにより、各可動板12が下方に落下することが阻止され、しかも各可動板12は、隣り合う固定板13の間の隙間において、固定板13の端面と平行な方向に動くことができる。
【0021】
また、図1乃至図4及び図6に示すように、固液分離装置は、2本の脱液スクリュー21,22を有し、その各脱液スクリュー21,22は、軸部23,24と、その各軸部23,24に一体に形成されたらせん状の羽根部25,26を有している。各脱液スクリュー21,22は、固定板13に形成された凹部15と、可動板12に形成された凹部14と、出口部材2の側壁16に形成された開口37を貫通して伸びている。かかる脱液スクリュー21,22は、可動板12と固定板13と側壁16に接触することはない。なお、図6においては、脱液スクリュー21,22を二点鎖線で簡略化して示してある(図7、図8、図18、図19及び図20においても同じ)。
【0022】
また、図1乃至図3に示すように、出口部材2の側壁17に形成された切欠38に対向配置された軸受板28には、内部に軸受45,46が収容された軸受カップ47,48が固定され、各脱液スクリュー21,22の軸部23,24の一方の端部が、出口部材2に形成された切欠38を貫通して、各軸受カップ47,48内にそれぞれ挿入され、各軸受45,46を介して、その各軸受カップ47,48に回転自在に支持されている。さらに、ギアボックス1の各側壁50,51には、ギア52の固定されたギア軸54が、軸受を介して回転自在に支持されている。また、側壁51には減速機付きのモータ55が固定支持され、その出力軸56が両側壁50,51を貫通して延びている。この出力軸56にも、前述のギア53が固定され、このギア53と上述のギア52は、ギアボックス1の内部で互いに噛み合っている。
【0023】
ギア軸54の一方の端部と、出力軸56の一方の端部は、図2、図3及び図9に示すように、内部が中空に形成され、その中空部57の中央部に係合片58が固定配置されている。一方、図9に示すように、各脱液スクリュー21,22の軸部23,24の他方の端部には、係合溝59が形成され、その各軸部23,24の各端部は、図3に示すように、ギア軸54と出力軸56の中空部57に挿入され、各軸部23,24に形成された係合溝59がギア軸54と出力軸56に設けられた係合片58にそれぞれ着脱可能に係合している。
【0024】
モータ55が作動して、出力軸56が回転すると、その回転がギア53,52を介してギア軸54に伝えられると共に、出力軸56とギア軸54の回転は、互いに係合した係合片58と係合溝59を介して、各脱液スクリュー21,22に伝達され、各脱液スクリュー21,22が、図6に矢印で示したように、それぞれその中心軸線X1,X2(図3)のまわりに回転駆動される。
【0025】
上述のように、本例の固液分離装置においては、モータ55と、その出力軸56と、ギア軸54と、その各軸に固定されたギア53,52とによって、各脱液スクリュー21,22を回転駆動する駆動手段が構成されている。勿論、他の適宜な形態の駆動手段を採用することもでき、例えば、各脱液スクリュー21,22を別々のモータにより回転駆動することもできる。この場合には、駆動手段が2つのモータを具備する。
【0026】
図3及び図4に示すように、本例の固液分離装置の2本の脱液スクリュー21,22は、接触することなく、その羽根部25,26の一部が互いに重なった状態で配置されている。すなわち、両脱液スクリュー21,22を、その中心軸線X1,X2の方向に見たとき、両羽根部25,26の一部がオーバラップした状態で位置しているのである。これに対し、両脱液スクリュー21,22を、これらが互いに重ならない状態に配置することもできる。
【0027】
また、図示した例では、両脱液スクリュー21,22が、図3に示すように互いに平行に並置されているが、これらの脱液スクリュー21,22の中心軸線X1,X2が、0°よりも大きな角度をもった状態に、両脱液スクリュー21,22を並置してもよい。さらに、本例の固液分離装置においては、各脱液スクリュー21,22の羽根部25,26のピッチが、入口部材1の側から出口部材2の側に向けて漸次、小さくなっているが、このピッチを、各脱液スクリューの全長に亘って等しく設定することもできる。
【0028】
図2に示すように、ギアボックス1の一方の側壁50は下方に延び、その下端から水平方向に突出したフランジ部60が、固液分離装置を支持する台枠のステー61に着脱可能に固定されている。同様に出口部材2の一方の側壁16に突設されたフランジ部62も、台枠のステー63に着脱可能に固定されている。このように、複数のフランジ部60,62が台枠のステー61,63に固定されることにより、固液分離装置の全体が台枠に支持されている。
【0029】
また、図3、図5及び図6に示すように、各可動板12はアーム部34を有している。図10は、1つの可動板12のアーム部34を示し、図11は図10の矢印XI方向に見た図である。図5、図6、図10及び図11に示すように、アーム部34の先端部に形成された取付孔35には、被加圧部材39が着脱可能ではあるが、可動板12に対して回転することがないように嵌合している。これらの被加圧部材39には長孔40が貫通形成され、その各長孔40には駆動スクリュー41が嵌合している。この駆動スクリュー41も、軸部42と、この軸部42に一体に形成されたらせん状の羽根部43とを有し、かかる駆動スクリュー41が長孔40に貫通して延びている。その際、図11に示すように、各被加圧部材39に形成された長孔40の短軸の長さWは、駆動スクリュー41の羽根部43の直径Hよりも小さく設定され、孔40の長軸の長さLは、羽根部43の直径Hよりも大きく設定されている。なお、図4には各可動板12に嵌合した被加圧部材39の図示は省略してある。
【0030】
上述のように、本例の固液分離装置は、各可動板に着脱可能に取付けられた被加圧部材と、その被加圧部材を貫通して延びる駆動スクリューを具備している。
【0031】
また、この駆動スクリュー41は、図3に示すように、出口部材2の側壁16に形成された開口37(図2)を貫通して延び、その一方の端部が、出口部材2に形成された切欠38を貫通して、軸受板28に固定された軸受カップ69に挿入され、この軸受カップ69に収容された軸受70を介して、軸受カップ69に回転自在に支持されている。
【0032】
一方、図3に示すように、ギアボックス1の各側壁50,51には、軸受を介して駆動軸44が回転自在に支持され、この駆動軸44に固定されたスプロケット64と、前述のギア軸54に固定されたスプロケット65には、無端状のチェーン71が巻き掛けられている。また、図12に示すように、駆動軸44も内部が中空に形成され、その中空部に係合片66が固定されている。かかる駆動軸44に同心状に駆動スクリュー41が配置され、その駆動スクリュー41の他方の端部が駆動軸44の中空部に挿入され、駆動スクリュー41の端部に形成された係合溝67が駆動軸44に固定された係合片66に着脱可能に係合している。駆動軸44と駆動スクリュー41は、脱液スクリュー21,22に対してほぼ平行に延びている。
【0033】
モータ55が作動すると、前述のように、その回転がギア53,52を介してギア軸54に伝えられ、そのギア軸54の回転は、スプロケット65,64及びチェーン71を介して駆動軸44に伝えられ、その駆動軸44の回転が駆動スクリュー41に伝達され、駆動スクリュー41がその中心軸線のまわりに回転する。
【0034】
図11に示すように、本例の可動板12に形成された取付孔35は矩形に形成され、かかる取付孔35に嵌合した被加圧部材39も矩形に形成されていて、これによって被加圧部材39が可動板12に対して回転することが阻止される。また、各被加圧部材39は、可動板12に形成された取付孔35に圧入され、被加圧部材39の外周面と取付孔35の内周面との摩擦力によって、被加圧部材39が取付孔35から離脱することなく保持されている。
【0035】
次に、固液分離装置の作用を説明しながら、固液分離装置の他の構成について明らかにする。
【0036】
図2に矢印Aで示すように、多量の水分を含んだ汚泥(図示せず)が投入口4から、固定板13及び可動板12の凹部15,14と、カバー5とにより区画された空間Sに流入する。処理前の汚泥の含水率は、例えば99重量%程度である。この汚泥には、予め凝集剤が混入され、その汚泥がフロック化されている。処理対象物によっては、凝集剤が混入されないものもある。
【0037】
このとき、モータ55の作動によって、出力軸56と脱液スクリュー22が回転駆動され、この回転は、ギア53,52を介してギア軸54に伝えられ、これによって脱液スクリュー21も回転駆動される。このように、2本のスクリュー21,22が、その中心軸線X1,X2の周りに回転することにより、投入口4からに流入した汚泥は、図2に矢印Bで示すように、出口部材2の側へ向けて搬送される。各脱液スクリュー21,22の羽根部25,26の巻き方向とその回転方向は、投入口4から流入した汚泥が、両脱液スクリュー21,22の回転によってギアボックス1の側から出口部材2の側に向けて搬送されるように設定されている。
【0038】
上述のように、交互に配置された可動板12と固定板13の凹部14,15と、カバー5により区画された空間S中を汚泥が移動するとき、その汚泥から水分が分離され、その分離された水分、すなわち濾液が各固定板13と可動板12の間の濾液排出間隙g(図4)を通して外部に排出される。このように排出された濾液は、図2に矢印C1,C2,C3,C4で示すように下方に流下し、各ステー61,63に固定された受皿6に受け止められ、その受皿6の排出口7から下方に排出される。この濾液中には、未だ固形分が多少含まれているので、当該濾液は、再度、他の汚泥と共に水処理され、次いで固液分離装置によって脱水処理される。
【0039】
上述のようにして、空間S中を搬送される汚泥の含水率が下げられ、含水量の減少した汚泥は、図2に矢印Dで示すように、出口部材2に形成された開口37を通して、出口部材2内に排出され、排出口36から下方に落下する。このようにして脱水処理された後の汚泥の含水率は、例えば80重量%前後である。図1乃至図3に示すように、出口部材2の一方の側壁16に対向して、各脱液スクリュー21,22の軸部23,24に背圧板73,74が固定されており、これによって空間S内の汚泥に加えられる圧力を高めることができる。
【0040】
一方、ギア軸54の回転は、この軸54に固定されたスプロケット65と、チェーン71と、駆動軸44に固定されたスプロケット64を介して駆動軸44に伝えられ、その駆動軸44の回転が駆動スクリュー41に伝達される。このとき、図11を参照して先に説明したように、被加圧部材39に形成された長孔40の短軸の長さWは、駆動スクリュー41の羽根部43の直径Hよりも小さく設定されているので、駆動スクリュー41が回転することによって、長孔40の長軸に平行な各面75,76が駆動スクリューの羽根部43によって交互に加圧される。これにより、被加圧部材39は、その被加圧部材39が取り付けられた可動板12と共に、長孔40の短軸の長さWと駆動スクリュー41の羽根部43の直径の大きさによって定まる所定のストロークで往復動する。各被加圧部材39は、回転する駆動スクリュー41により加圧されて、各被加圧部材39が取り付けられた可動板12と共に往復動するように形成されているのである。以下、この点をより具体的に説明する。
【0041】
図6に簡略化して示した駆動スクリュー41の羽根部43が長孔40の内周面に接触していないとき、その被加圧部材39と可動板12は中央位置を占めている。これに対し、駆動スクリュー41の回転に伴って、その羽根部43が、長孔40の一方の面75を加圧し始めると、被加圧部材39と可動板12は図6の右方に移動し、遂には図7に示した最右端位置に至る。駆動スクリュー41がさらに回転して、その羽根部43が長孔40の他方の面76を加圧し始めると、被加圧部材39と可動板12は図7の左方に移動し始め、遂には図8に示した最左端位置に至る。このようにして、駆動スクリュー41の回転によって、可動板12が、下側に位置する2つのスペーサ30に支持されながら、図6乃至図8における左右が往復するのである。なお、図7及び図8には、カバーの図示を省略してある。
【0042】
これに対し、固定板13は不動であるため、可動板12は固定板13に対して相対的に作動する。このため、可動板12と固定板13の間の濾液排出間隙g(図4)に入り込んだ固形分は、固定板13に対する可動板12の運動によって、その間隙gから効率よく排出され、ここに詰まったままとなることが阻止される。
【0043】
しかも、駆動スクリュー41は、固定板13にだけでなく、可動板12にも接触することはないので、その可動板12が駆動スクリュー41との接触によって摩耗したり、削り取られることはない。このため、可動板12の寿命が極めて長くなり、或いは可動板12を交換する必要がなくなる。可動板12は、かなり大サイズのコストの高い部材であるため、その交換頻度が高まれば、固液分離装置のランニングコストが上昇するが、本例の固液分離装置によれば、このような不具合を阻止できるのである。
【0044】
但し、被加圧部材39は駆動スクリュー41によって加圧されるので、被加圧部材39が経時的に摩耗することは避けられず、その摩耗が進んだ段階で、被加圧部材39を交換する必要があるが、被加圧部材39は、可動板12に比べて小サイズのコストの低い部材であるため、固液分離装置のランニングコストが従来のように高くなることはない。
【0045】
ところで、汚泥の脱水処理スピードを高めるには、固定板と可動板との間の濾液排出間隙に入り込んだ固形分を迅速に排出させ、濾液排出間隙を通して多量の濾液が排出されうようにする必要がある。その際、従来の固液分離装置は、脱液スクリューの回転によって可動板を押し動かしていたので、濾液排出間隙に入り込んだ固形分を迅速に排出させるには、脱液スクリューの回転速度を高め、可動板を高速度で作動させるほかはない。ところが、このようにすると、汚泥が搬送される速度も速くなるので、汚泥に対する脱水時間が短くなり、結局脱水効率が低下してしまう。
【0046】
これに対し、本例の固液分離装置においては、ギア軸54に固定されたスプロケット65と、駆動軸44に固定されたスプロケット64の歯数比を変えることによって、脱液スクリュー21,22の回転数と、駆動スクリュー41の回転数の比を実質的に自由に変えることができる。このため、脱液スクリュー21,22の回転速度を遅くして、汚泥に対する脱水に充分に長い時間をかけ、汚泥の脱水効率を高めると共に、駆動スクリュー41の回転速度を速め、可動板12を高速度で作動させて濾液排出間隙gに入り込んだ固形分を迅速に排出させ、脱水処理スピードを高めることができる。
【0047】
次に、被加圧部材39の交換方向の一例を説明する。
【0048】
先ず、モータ55の作動を停止させた状態で、図1に示したボルト85を緩めてカバー5を上方に持ち上げ、該カバーを取り外す。これにより、図3に示すように、脱液スクリュー21,22と可動板12と固定板13の上部が開放される。次に図3に示したボルト3を緩めてこれを取り外し、軸受板28を矢印E方向に引いて、各軸受カップ47,48,69を各スクリュー21,22,41の軸部23,24,42の一方の端部から離脱する。これにより、各スクリュー21,22,41の一方の端部側を拘束するものがなくなる。
【0049】
次いで、脱液スクリュー21,22を矢印F方向に引くことにより、図9に示したように、各脱液スクリュー21,22の軸部23,24の他方の端部を、ギア軸54と出力軸56の中空部57から外し、各脱液スクリュー21,22を出口部材2の側壁16,17に形成された開口37と切欠38を通して矢印F方向に抜き出す。特許第3638597号公報に記載されているように、脱液スクリュー21,22を上方に持ち上げて、これを取り外すように構成することもできる。
【0050】
同様に、駆動スクリュー41を矢印I方向に引き、図12に示したように、駆動スクリュー41の軸部42の端部を駆動軸44から外し、その駆動スクリュー41を、出口部材2の側壁16に形成された開口68と側壁17に形成された切欠38を通して矢印I方向に引き抜く。
【0051】
上述のように、スクリュー21,22,41を取り外した後、各可動板12を上方に持ち上げて、これを被加圧部材39と共に取り外す。このようにすれば、各可動板12に形成された取付孔35に摩擦係合した被加圧部材39を、手操作により、又は適宜な工具を用いて、取付孔35から容易に取り外すことができる。次いで、手操作により、又は適宜な工具を用いて、新たな被加圧部材39を取付孔35に押し込んで嵌合し、その取付孔35の内周面と被加圧部材39の外周面との摩擦力によって被加圧部材39を取付孔35に保持する。あとは、上述したところと逆の手順で、各可動板12とスクリュー21,22,41を組み付け、カバー5を装着すればよい。
【0052】
次に、図13に示した固液分離装置においては、駆動スクリューが軸線方向に2分割されている。すなわち、処理対象物が搬送される空間Sを、その搬送方向上流側と下流側に分け、前者を濃縮ゾーンZ1とし、後者を脱水ゾーンZ2とすると共に、濃縮ゾーンZ1に位置する可動板を上流側可動板12Aとし、脱水ゾーンZ2に位置する可動板を下流側可動板12Bとしたとき、上流側可動板12Aと、下流側可動板12Bをそれぞれ別個に作動させる第1の駆動スクリュー41Aと第2の駆動スクリュー41Bが設けられている。固液分離装置が、処理対象物搬送方向上流側に位置する複数の上流側可動板12Aを往復動させる第1の駆動スクリュー41Aと、上流側可動板12Aよりも処理対象物搬送方向下流側に位置する複数の下流側可動板12Bを往復動させる第2の駆動スクリュー41Bを有しているのである。これらの駆動スクリュー41A,41Bも、軸部42A,42Bと、その各軸部42A,42Bに一体に形成されたらせん状の羽根部43A,43Bを有している。
【0053】
上述の軸部42A,42Bの互いに隣接する側の各端部は、共通の軸受72に回転自在に支持されている。この軸受72は、図示していないブラケットを介して、固液分離装置の台枠に、第1及び第2の駆動スクリュー41A,41Bの軸線方向J,Kに移動可能に、かつそのブラケットに対して着脱可能に固定支持されている。軸受72が図11に示した位置にあるときは、その軸受はブラケットに対して固定されているが、この軸受け72を矢印J方向に移動させることによって、当該軸受72をブラケットから離脱することができるのである。
【0054】
また、図10に示すように、各可動板12A,12Bに形成された取付孔35A,35Bには、先に説明した固液分離装置の被加圧部材と同じく構成された被加圧部材39A,39Bが、着脱可能に嵌合し、その各被加圧部材39A,39Bに形成された長孔40A,40Bに第1及び第2の駆動スクリュー41A,41Bがそれぞれ嵌合している。この場合も、取付孔35A,35Bの内周面と、被加圧部材39A,39Bの外周面との摩擦力によって、被加圧部材39A,39Bが取付孔35A,35Bから離脱することが阻止される。また、図13に示すように、スペーサ30を介して互いに間隔をあけて配置された隣り合う固定板13,13Aの間に各可動板12A,12Bがそれぞれ配置され、第1及び第2の駆動スクリュー41A,41Bが固定板13,13Aと可動板12A,12Bに接触していないことも、先に説明した固液分離装置と変りはないが、図13に示した固液分離装置の軸受72に対向して位置する固定板13Aは、他の固定板13よりも、その厚さが厚く形成されている。
【0055】
第1の駆動スクリュー41Aにおける軸部42Aのギアボックス1の側の端部は、駆動軸44に、図12に示したところと同様に着脱可能に連結され、第2の駆動スクリュー41Bの軸部42Bは出口部材2の側壁16に形成された開口37を貫通し、かつその軸部42Bの出口部材2の側の端部が軸受カップ69に収容された軸受70に回転自在に支持されていることも図1乃至図12に示した固液分離装置と同様である。
【0056】
また、駆動軸44と、ギア軸54にスプロケット64,65がそれぞれ固定され、これらのスプロケット64,65にチェーン71が巻き掛けられていることも、先に示した固液分離装置と変りはないが、図13に示した固液分離装置においては、さらに出口部材2側の第2の駆動スクリュー41Bの軸部42Bと脱液スクリュー21の軸部23にもスプロケット77,78がそれぞれ固定され、これらのスプロケット77,78に無端状のチェーン79が巻き掛けられている。このため、モータ55の回転は、別々のチェーン71と79を介して、第1の駆動スクリュー41Aと第2の駆動スクリュー41Bにそれぞれ伝達される。これにより、先に説明した実施形態例の固液分離装置と同じく、各可動板12A,12Bに着脱可能に取り付けられた被加圧部材39A,39Bが第1及び第2の駆動スクリュー41A,41Bの羽根部43A,43Bによって加圧され、各可動板12A,12Bが所定のストロークで往復動する。その際、複数の上流側可動板12Aが、複数の下流側可動板12Bよりも高速で往復動するように、第1及び第2の駆動スクリュー41A,41Bが回転駆動される。例えば、上流側可動板12Aが下流側可動板12Bよりも高速で作動するように、スプロケット64と65の歯数比と、他のスプロケット77と78の歯数比が設定されるのである。
【0057】
一般に濃縮ゾーンZ1を移動する汚泥の含水率は非常に高いので、かかる汚泥から多量の水分を抜き出す必要がある。本例の固液分離装置においては、上流側可動板12Aは高速で往復動するので、濃縮ゾーンZ1を移動する汚泥から、可動板12Aと固定板13との間の濾液排出間隙に入り込んだ固形分を迅速に排出させることができ、多量の水分を抜き出すことができる。一方、脱水ゾーンZ2を移動する汚泥の含水率は、既に低下していて、この脱水ゾーンZ2における内圧が大きくなっている。このため、下流側可動板12Bが高速で往復動したとすると、脱水の進んだ汚泥が可動板12Bと固定板13との間の濾液排出間隙に多量に入り込んでしまう。ところが、本例の固液分離装置においては、下流側可動板12Bは低速で往復動するので、濾液排出間隙に多量の固形分が入り込む不具合を阻止することができる。
【0058】
次に図13に示した固液分離装置の被加圧部材の交換方法の一例を説明する。
【0059】
この場合も、先に説明した固液分離装置の場合と同じく、軸受板28を出口部材2から外し、脱液スクリュー21,22を矢印F方向に抜き出す。これと共に、第2の駆動スクリュー41Bを矢印I方向に引いて、その第2の駆動スクリュー41Bの軸受72側の端部をその軸受72から外して、当該第2の駆動スクリュー41Bを被加圧部材39B(図10)から抜き出す。次いで全ての下流側可動板12Bを上方に持ち上げて、これらの可動板12Bを固定板13の間から離脱する。引き続き、図13に示した軸受72を矢印J方向に移動させて、第1の駆動スクリュー41Aの軸部42Aの端部から軸受72を外すと共に、その軸受72をブラケットから離脱して該軸受72を上方に持ち上げる。さらに、第1の駆動スクリュー41Aを矢印M方向に引いて、その軸部42Aのギアボックス1の側の端部を駆動軸44から外し、第1の駆動スクリュー41Aを被加圧部材39A(図10)から抜き出す。
【0060】
その後、全ての上流側可動板12Aを上方に持ち上げて、これらの可動板12Aを固定板13の間から離脱する。このようにして固定板13の間から抜き出した各可動板12A,12Bの取付孔35A,35B(図10)に摩擦係合した被加圧部材39A,39Bを手操作又は工具を用いて取り外し、新たな被加圧部材39A,39Bをその取付孔35A,35Bに押し込んで嵌合する。あとは、上述した手順と逆の手順で、各要素を組み付ければよい。
【0061】
図13に示した固液分離装置の他の構成は、先に説明した固液分離装置と実質的に変りはない。
【0062】
以上説明した固液分離装置においては、その被加圧部材39,39A,39Bが可動板12,12A,12Bに形成された取付孔35,35A,35Bに、単に摩擦係合によって取り付けられているが、これに代えて次の構成を採用することもできる。
【0063】
図14は、各可動板12の取付孔35に嵌合した被加圧部材39の配置状態を示す概略図である。この図においては、駆動スクリューの図示を省略してあると共に、最もギアボックス1の近くに位置する被加圧部材39と、最も出口部材2の近くに位置する被加圧部材39に対して、特に符号39Xと39Yを付してある。この被加圧部材39Xは、これが嵌合した可動板12の取付孔35から抜け出ることがないように、ギアボックス1の側壁50によって押えられ、被加圧部材39Yも、これが嵌合した可動板12の取付孔35から抜け出ることがないように、出口部材2の側壁16によって押えられている。しかも、各被加圧部材39が隣り合う可動板12の間から離脱しないように、各被加圧部材39の厚さT1は、隣り合う可動板12の間の隙間Nの大きさよりも大きく設定されている。このため、各被加圧部材39は、各可動板12の取付孔35にそれぞれ嵌合した状態を維持し、各被加圧部材39が可動板12の取付孔35から離脱することが阻止される。ギアボックス1の側壁50と、出口部材2の側壁16は、端部に位置する被加圧部材39X,39Yが、可動板12の取付孔35から抜け出ることがないように、その各被加圧部材39X,39Yを押える保持手段の一例を構成するものである。
【0064】
上述のように、図14に示した固液分離装置においては、可動板12に取り付けられた被加圧部材39が隣り合う可動板12の間から離脱しないように、その被加圧部材39の厚さが、隣り合う可動板12の間の隙間Nの大きさよりも厚く形成され、しかも駆動スクリューの軸線方向各端部側に位置する各被加圧部材39X,39Yが、保持手段によって、可動板12から抜け出ることがないように保持されているのである。かかる構成により、被加圧部材39が可動板12に形成された取付孔35から離脱してしまうことをより確実に阻止できる。
【0065】
また、図15に示すように、各固定板13を、可動板12に形成された取付孔35に嵌合した被加圧部材39が位置するところまで長く延ばし、可動板12に取り付けられた被加圧部材39を、隣り合う固定板13の間に配置すると共に、可動板12とその隣りに位置する固定板の間の隙間g1の大きさよりも、被加圧部材39の厚さT1を厚く設定しても、被加圧部材39が可動板12に形成された取付孔35から離脱することを阻止できる。なお、図15においても、駆動スクリューの図示は省略してある。
【0066】
図14及び図15に示した固液分離装置によれば、各被加圧部材39を、可動板12の取付孔35に圧入せずに、多少の遊びをもって嵌合しても、その被加圧部材39が取付孔35から脱落することはない。このため、前述のように被加圧部材39を取付孔35から着脱するときの操作性を高めることができる。
【0067】
また、図16に示すように、被加圧部材39に形成された突起80を、可動板12に形成された凹溝81に着脱可能に嵌合して、被加圧部材39を可動板12に着脱可能に取り付けることもできる。この被加圧部材39にも、長孔40が形成され、ここに駆動スクリュー41が嵌合する。
【0068】
さらに、図17に示すように、可動板12に着脱可能に取り付けられた被加圧部材39に長溝82を形成し、この長溝82に駆動スクリュー41を嵌合し、その駆動スクリュー41の回転によって被加圧部材39と可動板12を往復動させるように構成することもできる。
【0069】
図14乃至図17に示した各構成は、図1乃至図10に示した固液分離装置だけでなく、図13に示した固液分離装置にも適用できることは当然である。
【0070】
また、以上説明した固液分離装置は、2本の脱液スクリュー21,22を有しているが、脱液スクリューの数は1本を含む適数に設定できる。図18は、1本の脱液スクリュー21を有する固液分離装置を示し、図19は、3本の脱液スクリュー21,22,22Aを有する固液分離装置を示す。また、図20は4本の脱液スクリュー21,22,22A,22Bを有する固液分離装置を示している。いずれの固液分離装置も、可動板12と固定板13を貫通して延びる脱液スクリューが、可動板12と固定板13に接触せず、駆動スクリュー41の回転により、被加圧部材39が加圧されて、可動板12が往復動する。他の構成は、先に説明した固液分離装置の構成と実質的に変りはない。このように、本発明に係る固液分離装置は、複数の可動板と、これらの可動板に接触することなく、該可動板を貫通して延びる少なくとも1本の脱液スクリューを有しているのである。
【0071】
さらに、それ自体周知なように、各可動板と固定板をリング状に形成し(例えば、特開平5−228695号公報及び特許第3565841号公報参照)、少なくとも1本の脱液スクリューが、その可動板と固定板の中心孔を貫通して延びるように構成することもできる。この場合も、脱液スクリューは、可動板と固定板に接触することはない。他の構成は、先に説明した各実施形態例の構成と実質的に変りはない。
【0072】
また、図示した例では、隣り合う固定板13の間に1つの可動板12が配置されているが、隣り合う固定板13の間に複数の可動板12を配置してもよいことは当然である。同様に、図示した固液分離装置の脱液スクリュー21,22,22A,22Bと、駆動スクリュー41,41A,41Bは、らせん状に延びる1つの羽根を有しているが、らせん状に延びる複数の羽根を有するスクリューを採用してもよいことも当然である。
【0073】
さらに、以上説明した固液分離装置は、脱液スクリューに接触しない状態で配置された複数の固定板13を有し、隣り合う固定板13の間に少なくとも1つの可動板が配置されていて、脱液スクリューが可動板と固定板を貫通して延びるように構成されているが、固定板を設けずに、可動板だけを多数枚重ねて配置し、その多数の可動板に、少なくとも1本の脱液スクリューを貫通させ、各可動板の間の間隙を通して濾液を排出させるように構成することもできる。
【0074】
また、それ自体公知のように、空間Sへの処理対象物投入側が、液体分の減少した処理対象物の排出側よりも低くなるように、複数の可動板を傾斜して配置し、空間S内の処理対象物が排出側に近づくに従って、その処理対象物により一層大きな圧力が加えられるように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】固液分離装置の平面図である。
【図2】図1に示した固液分離装置の垂直断面図である。
【図3】カバーを取り外した状態での固液分離装置の平面図である。
【図4】図3に示した固液分離装置の固定板と可動板と脱液スクリューの拡大平面図である。
【図5】隣り合う固定板と、その間に配置された可動板の斜視図である。
【図6】図2のVI−VI拡大断面図であって、一部の要素を簡略化して示した図である。
【図7】可動板の動きを説明する、図6と同様な断面図である。
【図8】可動板の動きを説明する、図6と同様な断面図である。
【図9】ギア軸及び出力軸と、スクリューの軸部の連結状態を示す斜視図である。
【図10】可動板と、この可動板に取り付けられた被加圧部材と、駆動スクリューの拡大説明図であり、図13に示した固液分離装置の説明にも用いた図である。
【図11】図10の矢印XI方向に見た図である。
【図12】駆動スクリューと駆動軸との連結状態を示す斜視図である。
【図13】固液分離装置の他の例を示す、図3と同様な平面図である。
【図14】可動板と、その可動板に取り付けられた被加圧部材の他の例を示す図である。
【図15】可動板と、その可動板に取り付けられた被加圧部材のさらに他の例を示す図である。
【図16】可動板に連結された被加圧部材の他の例を示す、図11と同様な図である。
【図17】可動板に連結された被加圧部材の他の例を示す、図11と同様な図である。
【図18】1本の脱液スクリューを有する固液分離装置を示す、図6と同様な断面図である。
【図19】3本の脱液スクリューを有する固液分離装置を示す、図6と同様な断面図である。
【図20】4本の脱液スクリューを有する固液分離装置を示す、図6と同様な断面図である。
【符号の説明】
【0076】
12,12A,12B 可動板
13,13A 固定板
21,22,22A,22B 脱液スクリュー
39,39A,39B,39X,39Y 被加圧部材
41,41A,41B 駆動スクリュー
g1,N 隙間
T1 厚さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の可動板と、これらの可動板に接触することなく該可動板を貫通して延びる少なくとも1本の脱液スクリューと、各可動板に着脱可能に取り付けられた被加圧部材と、該被加圧部材を貫通して延びる駆動スクリューとを具備し、各被加圧部材は、回転する駆動スクリューにより加圧されて各被加圧部材が取り付けられた可動板と共に往復動するように形成されていることを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
前記脱液スクリューに接触しない状態で配置された複数の固定板を有し、隣り合う固定板の間に少なくとも1つの可動板が配置されていて、前記脱液スクリューは、前記可動板と固定板を貫通して延びている請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項3】
処理対象物搬送方向上流側に位置する複数の上流側可動板を往復動させる第1の駆動スクリューと、前記上流側可動板よりも処理対象物搬送方向下流側に位置する複数の下流側可動板を往復動させる第2の駆動スクリューを有し、前記複数の上流側可動板が、前記複数の下流側可動板よりも高速で往復動するように、前記第1及び第2の駆動スクリューが回転駆動される請求項1又は2に記載の固液分離装置。
【請求項4】
前記可動板に取り付けられた被加圧部材が隣り合う可動板の間から離脱しないように、該被加圧部材の厚さが、隣り合う可動板の間の隙間の大きさよりも厚く形成され、前記駆動スクリューの軸線方向各端部側に位置する各被加圧部材が、保持手段によって、可動板から抜け出ることがないように保持されている請求項1乃至3のいずれかに記載の固液分離装置。
【請求項5】
前記可動板に取り付けられた被加圧部材が、隣り合う固定板の間に位置すると共に、該可動板とその隣りに位置する固定板の間の隙間の大きさよりも、前記被加圧部材の厚さが厚く設定されている請求項2又は3に記載の固液分離装置。
【請求項1】
複数の可動板と、これらの可動板に接触することなく該可動板を貫通して延びる少なくとも1本の脱液スクリューと、各可動板に着脱可能に取り付けられた被加圧部材と、該被加圧部材を貫通して延びる駆動スクリューとを具備し、各被加圧部材は、回転する駆動スクリューにより加圧されて各被加圧部材が取り付けられた可動板と共に往復動するように形成されていることを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
前記脱液スクリューに接触しない状態で配置された複数の固定板を有し、隣り合う固定板の間に少なくとも1つの可動板が配置されていて、前記脱液スクリューは、前記可動板と固定板を貫通して延びている請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項3】
処理対象物搬送方向上流側に位置する複数の上流側可動板を往復動させる第1の駆動スクリューと、前記上流側可動板よりも処理対象物搬送方向下流側に位置する複数の下流側可動板を往復動させる第2の駆動スクリューを有し、前記複数の上流側可動板が、前記複数の下流側可動板よりも高速で往復動するように、前記第1及び第2の駆動スクリューが回転駆動される請求項1又は2に記載の固液分離装置。
【請求項4】
前記可動板に取り付けられた被加圧部材が隣り合う可動板の間から離脱しないように、該被加圧部材の厚さが、隣り合う可動板の間の隙間の大きさよりも厚く形成され、前記駆動スクリューの軸線方向各端部側に位置する各被加圧部材が、保持手段によって、可動板から抜け出ることがないように保持されている請求項1乃至3のいずれかに記載の固液分離装置。
【請求項5】
前記可動板に取り付けられた被加圧部材が、隣り合う固定板の間に位置すると共に、該可動板とその隣りに位置する固定板の間の隙間の大きさよりも、前記被加圧部材の厚さが厚く設定されている請求項2又は3に記載の固液分離装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2007−136311(P2007−136311A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332190(P2005−332190)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(591007022)アムコン株式会社 (28)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(591007022)アムコン株式会社 (28)
【Fターム(参考)】
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